本出願は、その内容の全体が本明細書に援用される、「生理学的に有用なニトロキシル(HNO)供与体としての、炭素ベースの脱離基があるN置換ヒドロキシルアミン誘導体」と題した米国仮特許出願第61/548,036号(2011年10月17日出願)に対する優先権を主張する。
本発明の一部は、米国科学財団(NSF)によって授与された認可番号:CHE−0911305の政府支援でなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
ニトロキシル(HNO)は、その酸化還元の同類分子(redox cousin)である一酸化窒素(NO)や関連する酸化窒素のそれとは異なる生理活性を有することが示されている1−11。HNOにおける最近の関心の多くは、それが心不全の治療にとって新規の治療薬になり得ることを示唆する研究によるものである1−5。化学トラップ非存在下での中性pHで、HNOは、次亜硝酸(HON=NOH)へ効率的に二量体化し(k=8×106M−1s−1)、これは、引き続き脱水化して、亜酸化窒素(N2O)になる12。この固有の反応性を考慮すると、HNOは直接使用することができず、HNOのその場での(in situ)産生には供与体分子が必要である。しかしながら、アンジェリ塩、パイロッチ酸の誘導体、及びアシルオキシニトロソ化合物の他に、生理学的に有用なHNO供与体はほとんど存在しない。
N−ヒドロキシシアナミドは、炭素ベースの脱離基があるヒドロキシルアミン誘導体であって、カタラーゼによるシアナミドの酸化的な生体内活性化において提唱された中間体であり、不均化によりHNOとシアン化物を発生することができる。N−ヒドロキシシアナミドは、単離されてその反応性を実証化されてはいない。N−ヒドロキシシアナミドのさらなる酸化により、やはりHNOを産生することが可能である中間体を生じるとする証拠が存在する。Nagasawaと共同研究者らは、N−ヒドロキシシアナミドのN,O−ビス−アシル化誘導体を合成したが、この誘導体は、酵素的又は塩基性の条件下でのみアシルニトロソ中間体を介してHNOをシアン化物とともに放出する。シアン化物の毒性を考慮すれば、代わりの炭素ベースの脱離基が所望される。
米国特許第4,663,351号
米国特許第4,369,174号
米国特許第4,842,866号
米国特許第6,638,534号
米国特許第5,217,720号
米国特許第6,569,457号
米国特許第4,798,824号
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本明細書に記載するのは、酵素的活性化を伴わない中性pHでのHNO産生に適した、炭素ベースの脱離基があるN置換ヒドロキシルアミン誘導体である。加えて、これらの誘導体では、有毒なシアン化物の放出が回避される。
図1Aは、10% D2O、リン酸緩衝化生理速塩水(PBS)、pH7.4における室温での4aから4bへの分解の1H NMR分析を示す。下のスペクトルは、実験の開始時に採取して、上のスペクトルは、完全な分解の後で採取した。挿入図では、分解の反応速度を示す。三角印は、4aのN−CH3(複数)(6H)とオキシムC−CH3(3H)を表し、丸印は、カルバニオン4bのN−CH3(複数)(6H)とオキシムC−CH3(3H)を表す。実線は、単一指数関数に対して計算された最良適合(各適合につきk=2.4×10−3s−1)である。
図1Bは、10% D2O、リン酸緩衝化生理速塩水(PBS)、pH7.4における室温での6aから6bへの分解の1H NMR分析を示す。下のスペクトルは、実験の開始時に採取して、上のスペクトルは、完全な分解の後で採取した。アステリスク(*)は、微量のanti−6b異性体によるシグナルを示す。
図2Aは、4b、4b−H+の濃度をpHの関数としてプロットするグラフを示す。四角印は、4b−H+(λmax=298nm)を表し、丸印は、カルバニオン4b(λmax=261nm)を表す。
図2Bは、6b、6b−H+の濃度をpHの関数としてプロットするグラフ(a)を示す。四角印は、6b−H+(λmax=270nm)を表し(ここで最後の3つのデータ点は、スペクトルの重なりにより省略した)、そして丸印は、カルバニオン6b(λmax=253nm)を表す。
図3Aは、PBS、pH7.4における37℃での4a(トレース間の時間=30秒)の分解のUV−Visスペクトルを示す。
図3Bは、PBS、pH7.4における37℃での6a(トレース間の時間=240秒)の分解のUV−Visスペクトルを示す。
図3Cは、4a(261nmでモニターする)及び6a(253nmでモニターする)の分解速度(UV−Vis分析によって決定されるような)を25℃でのpHの関数としてプロットするグラフを示す。
発明の詳細な説明
定義
「Hr」又は「h」は、時間を意味する。
「Min」又は「m」は、分を意味する。
「Sec」又は「」は、秒を意味する。
「D」は、日数を意味する。
「置換された」とは、1以上の水素原子が同じでも異なっていてもよい1以上の置換基で置き換えられた基又は化合物を表す。いくつかの態様において、1以上の置換基は、化合物の安定性も活性も実質的には損なわないものである。
「アルキル」とは、炭素−炭素単結合だけを含有する一価の炭化水素基を意味する。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、環式、又はこれらの組合せでもよい。他に示さなければ、「アルキル」という用語の使用には、それぞれのアルキル基又は炭素原子が特定数であるようなアルキル基の範囲が明確かつ個別に収載されるかのように、すべての変異体及び幾何異性体が含まれる。例えば、C1−C8アルキルには、C1−C6アルキル、C1−C4アルキル、C1−C2アルキル、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル及びtert−ブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、並びに(シクロプロピル)メチルが含まれる。いくつかの態様において、アルキルは、C1−C20アルキルである。いくつかの態様において、アルキルは、C1−C8アルキルである。いくつかの態様において、アルキルは、C1−C4アルキルである。
「アルケニル」とは、1以上の炭素−炭素単結合の代わりに1以上の炭素−炭素二重結合を有するアルキル基を意味する。アルケニル基の例には、限定なしに、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イル、1,3−ブタジエニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、及び1,3−シクロヘキサジエニルが含まれる。
「アルキニル」とは、1以上の炭素−炭素単結合の代わりに1以上の炭素−炭素三重結合を有するアルキル基を意味する。アルキニル基の例には、限定なしに、エチニル、2−プロピニル、1−プロピニル、ペンチニル、2−ヘキシニル、ヘプチニルが含まれる。
「ヘテロシクロアルキル」とは、酸素、窒素、及び硫黄より独立して選択される1以上の環(annular)ヘテロ原子を有する単環式、二環式、又は多環式のアルキル基を意味し、ここで、窒素及び硫黄のヘテロ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化していてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、炭素又はヘテロ原子を介して親構造へ結合することができる。ヘテロシクロアルキル基の例には、限定なしに、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフララニル、オキサラニル、チオラニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ジオキソラニル、ジチオラニル、ピペリジニル、オキサニル、チアニル、ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ジオキサニル、ジチアニル、トリオキサニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリノ、3−モルホリノ、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルが含まれる。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルキルは、1〜3個のヘテロ原子を含有する。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルキルは、1〜2個のヘテロ原子を含有する。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルキルは、アリール若しくはヘテロアリール基へ縮合している。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルキルは、C5−C10ヘテロシクロアルキルである。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルキルは、C5−C6ヘテロシクロアルキルである。
「ヘテロシクロアルケニル」とは、酸素、窒素、及び硫黄より独立して選択される1以上の環ヘテロ原子を有する単環式、二環式、又は多環式のアルケニル基を意味し、ここで、窒素及び硫黄のヘテロ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化していてもよい。ヘテロシクロアルケニル基は、炭素又はヘテロ原子を介して親構造へ結合することができる。ヘテロシクロアルケニル基の例には、限定なしに、ピラニル、チオピラニル、及びテトラヒドロピリジルが含まれる。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルケニルは、1〜3個のヘテロ原子を含有する。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルキルは、1〜2個のヘテロ原子を含有する。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルケニルは、アリール若しくはヘテロアリール基へ縮合している。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルケニルは、C5−C10ヘテロシクロアルケニルである。いくつかの態様において、ヘテロシクロアルケニルは、C5−C6ヘテロシクロアルケニルである。
「アリール」とは、単環式、二環式、又は多環式であり得る一価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基の例には、限定なしに、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、及びテトラリニルが含まれる。いくつかの態様において、アリールは、C5−C6アリールである。いくつかの態様において、アリールは、二環式C9−C10アリールである。いくつかの態様において、アリールは、三環式C13−C14アリールである。いくつかの態様において、アリールは、フェニルである。いくつかの態様において、アリールは、ナフチルである。
「ヘテロアリール」とは、酸素、窒素、及び硫黄より独立して選択される1以上の環ヘテロ原子を有するアリール基を意味する。ヘテロアリール基は、炭素又はヘテロ原子を介して親構造へ結合することができる。ヘテロアリール基の例には、限定なしに、イミダゾリル、ピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、ベンゾピラノ、チアゾリル、フラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラゾリル、及びピラゾリルが含まれる。いくつかの態様において、ヘテロアリールは、C5−C6ヘテロアリールである。いくつかの態様において、ヘテロアリールは、二環式C9−C10ヘテロアリールである。いくつかの態様において、ヘテロアリールは、三環式C13−C14ヘテロアリールである。いくつかの態様において、ヘテロアリールは、ピリジニルである。
「アルコキシ」とは、酸素原子を介して親構造へ連結するアルキル基(−O−アルキル)を意味する。アルコキシ基の例には、限定なしに、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、及びシクロヘキシルオキシが含まれる。
「医薬的に許容される」とは、薬理学及び/又は毒性学の観点から患者に受容される、及び/又は組成、製剤化、安定性、患者受容性、バイオアベイラビリティ、及び他の成分との適合性に関して物理的及び/又は化学的な観点から製薬薬剤師に受容される、特性及び/又は物質を表す。
「医薬的に許容される塩」とは、式(I)、(Ia)、若しくは(II)の化合物、又は他のニトロキシル供与体のような本明細書に記載の化合物の医薬的に許容される塩を意味するものであり、当該技術分野で周知の多様な有機及び無機の対イオンより誘導することができ、例を挙げると、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、等の塩;分子が塩基性の官能基を含有する場合は、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、等のような、有機酸又は無機酸の塩が含まれる。例示の塩には、限定されるものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシレート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、及びp−トルエンスルホン酸塩が含まれる。従って、塩は、カルボン酸官能基のような酸性官能基を有する本明細書に開示される式のいずれか1つの化合物と、医薬的に許容される無機又は有機塩基より調製することができる。好適な塩基には、限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、及びリチウムのようなアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛のような他の金属の水酸化物;アンモニアと、未置換又はヒドロキシ置換されたモノ、ジ、又はトリアルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ、ビス、又はトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、又はトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミンのようなモノ、ビス、又はトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン);N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンのようなN,N−ジ低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン、又はトリ(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミンといった有機アミン;並びに、アルギニン、リジン、等のようなアミノ酸、等が含まれる。塩は、アミノ官能基のような塩基性官能基を有する本明細書に開示される式のいずれか1つの化合物と、医薬的に許容される無機又は有機酸より調製することもできる。好適な酸には、硫酸水素、クエン酸、酢酸、塩酸(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)、硝酸、リン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸が含まれる。
「医薬的に許容される賦形剤」とは、担体、希釈剤、アジュバント、結合剤、及び/又は治療薬を患者へ送達するための媒体として使用されるか、あるいは医薬組成物の取扱い若しくは保存特性を改善すること又は化合物若しくは組成物を投与用単位剤形に形成することを可能にするか若しくは促進するために医薬組成物へ加えられる、それ自体は治療薬ではないあらゆる物質を表す。医薬的に許容される賦形剤は、医薬分野で周知であり、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。当業者に公知のように、医薬的に許容される賦形剤は、多様な機能を提供することができ、湿潤剤、緩衝剤、懸濁剤、滑沢剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤,界面活性剤、着色剤、香味剤、及び甘味剤として記載することができる。医薬的に許容される賦形剤の例には、限定なしに:(1)乳糖、ブドウ糖、及びショ糖のような糖類;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンのようなデンプン類;(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロースとその誘導体;(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココア脂及び坐剤ワックスのような賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びタイズ油のような油剤;(10)プロピレングリコールのようなグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールのようなポリオール類;(12)オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルのようなエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝化剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質除去水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝化溶液剤;(21)ポリエステル、ポリカーボネート、及び/又はポリ無水物;並びに(22)医薬製剤において利用される他の非毒性適合性物質が含まれる。
「単位剤形」とは、ヒト患者又は他の動物患者への単一投与剤として適した、物理的に別個の単位を意味する。それぞれの単位剤形は、所望の効果をもたらすように計算された、活性化合物(例えば式(I)、(Ia)、又は(II)の化合物)の所定量を含有し得る。
他に明確に示さなければ、「個体」又は「患者」とは、限定されるものではないがヒトを含めた哺乳動物のような動物を表す。従って、本明細書に記載の方法は、ヒトの療法及び獣医学上の応用において有用であり得る。いくつかの態様において、個体又は患者は哺乳動物である。いくつかの態様において、個体又は患者はヒトである。
「有効量」とは、効力と毒性のパラメータとの組合せで、並びに臨床専門医の知識に基づいて、所与の治療形態において有効であるような、化合物又はその医薬的に許容される塩の量を意味する。当該技術分野で理解されているように、有効量は、1以上の用量中にあり得る。
「治療」又は「治療すること」とは、臨床結果を含めた有益な結果又は所望の結果を入手するためのアプローチである。本発明の目的では、有益な結果又は所望の結果には、限定されるものではないが、疾患又は病態(condition)の発現及び/又は発症を阻害すること及び/又は抑制すること、あるいはそのような疾患又は病態の重症度を低下させること、例えば疾患又は病態に関連した症状の数及び/又は重症度を低下させること、疾患又は病態に罹患している人々の生活の質を高めること、疾患又は病態を治療するのに必要とされる他の医薬品の用量を減少させること、個体が疾患又は病態のために服用している別の医薬品の効果を増強させること、及び疾患又は病態を有する個体の生存を延長させることが含まれる。
「予防すること」とは、障害又は病態を有さないが、それを発症するリスクがある個体において障害又は病態を発症する確率を低下させることを意味する。「リスクがある」個体とは、検出可能な疾患又は病態を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載の治療方法に先立って、検出可能な疾患又は病態を呈していてもいなくてもよい。「リスクがある」とは、個体が1以上の所謂リスク因子を有することを意味し、リスク因子とは、疾患又は病態の発症と相関し、当該技術分野で公知の測定可能なパラメータである。1以上のこれらのリスク因子を有する個体は、これらのリスク因子(複数)の無い個体よりもその疾患又は病態を発症する確率がより高い。
「ニトロキシル」とは、分子種:HNOを意味する。
「ニトロキシル供与体」又は「HNO供与体」とは、生理学的条件下でニトロキシルを供与する化合物を意味する。本明細書において、ニトロキシル供与体は、代替的に、「化合物」又は「該化合物」として言及される場合がある。いくつかの態様において、ニトロキシル供与体は、有効量のニトロキシルを生体内で供与することが可能であって、該化合物が治療効果を達成するのに必要な量において個体に許容されることを示す安全性のプロフィールを有する。当業者であれば、特定の化合物及び投与量を生きた被験者へ投与することの安全性を決定することが可能であろう。当業者はまた、ある化合物が生理学的条件下でHNOを放出するかどうかを評価することによって、それがニトロキシル供与体であるかどうかを決定することができよう。化合物は、ニトロキシル供与性について日常的な実験で容易に試験される。ニトロキシルが供与されるかどうかを直接測定することは非現実的であるが、ある化合物がニトロキシルを供与するかどうかを決定するためにいくつかの試験法が受け入れられている。例えば、密封容器において、目的化合物を溶液中に、例えばpH約7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)又はリン酸緩衝化溶液中に入れることができる。数分から数時間のような解離に十分な時間が経過した後で、ヘッドスペースガスを抜き出し、ガスクロマトグラフィー及び/又は質量分析法などで分析してその組成を決定する。気体N2Oが形成されていれば(HNO二量体化によって生じる)、その試験はニトロキシル供与性陽性であって、該化合物はニトロキシル供与体である。ニトロキシル供与能のレベルは、化合物の理論最大値の百分率として表現され得る。「有意レベルのニトロキシル」を供与する化合物とは、その理論最大量の40%以上又は50%以上のニトロキシルを供与する化合物を意味する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の60%以上のニトロキシルを供与する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の70%以上のニトロキシルを供与する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の80%以上のニトロキシルを供与する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の90%以上のニトロキシルを供与する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の約70%〜約90%のニトロキシルを供与する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の約85%〜約95%のニトロキシルを供与する。いくつかの態様において、本発明の化合物は、理論最大量の約90%〜約95%のニトロキシルを供与する。その理論量の40%未満又は50%未満のニトロキシルを供与する化合物もやはりニトロキシル供与体であって、記載の方法に使用することができる。記載の方法において、その理論量の50%未満のニトロキシルを供与する化合物を使用することができるが、有意レベルのニトロキシルを供与する化合物と比べて、より高い投薬レベルが必要される場合がある。ニトロキシル供与性は、試験化合物をメトミオグロビン(Mb3+)へ曝露することによって検出することもできる。ニトロキシルは、Mb3+と反応して、Mb2+−NO錯体を形成し、これは、紫外線/可視スペクトルにおける変化又は電子常磁性共鳴(EPR)によって検出することができる。Mb2+−NO錯体は、約2のg値付近を中心とするEPRシグナルを有する。一方、一酸化窒素は、Mb3+と反応して、EPR無変化であるMb3+−NO錯体を形成する。従って、候補化合物がMb3+と反応して、紫外線/可視(スペクトル)又はEPRのような通常の方法で検出可能な錯体を形成すれば、その試験は、ニトロキシル供与性陽性である。ニトロキシル供与性についての試験は、生理学的に意義のあるpHで実施することができる。
「陽性変力剤」とは、心筋収縮機能の増加を引き起こす薬剤を意味する。そのような薬剤には、β−アドレナリン作用性受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼ活性の阻害剤、及びカルシウム増感剤が含まれる。β−アドレナリン作用性受容体アゴニストには、数ある中でも、ドーパミン、ドブタミン、テルブタリン、及びイソプロテレノールが含まれる。そのような化合物の類似体及び誘導体も企図される。例えば、特許文献1は、経口的に投与し得るドブタミンプロドラッグについて記載している。当業者は、ある化合物が陽性変力効果を引き起こすことが可能であって、追加のβ−アゴニスト化合物でもあるかどうかを決定することができよう。特定の態様において、β−受容体アゴニストは、β1受容体に選択的である。他の態様において、β−アゴニストは、β2受容体に選択的であるか又は特定の受容体に選択的でない。
「ニトロキシル療法に反応性」である疾患又は病態には、有効量のニトロキシルを生理学的条件下で供与する化合物の投与により治療及び/又は予防される疾患又は病態が含まれる(上記の用語は、本明細書に定義される通りである)。その症状がニトロキシル供与体の投与時に抑制されるか又は減衰する疾患又は病態は、ニトロキシル療法に反応性の疾患又は病態である。ニトロキシル療法に反応性の疾患又は病態の非限定的な例には、冠動脈閉塞、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心臓発作、心筋梗塞、高血圧、虚血性心筋症及び梗塞、拡張期心不全、肺鬱血、肺浮腫、心臓線維症、心臓弁膜症、心膜疾患、循環鬱血状態、末梢浮腫、腹水症、シャーガス病、心室肥大、心臓弁膜症、限定されるものではないが急性鬱血性心不全及び急性非代償性心不全などの鬱血性心不全を含めた心不全、が含まれる。虚血/再灌流障害との関連が示唆される疾患又は病態のような、他の心臓血管系の疾患又は病態も企図される。癌は、ニトロキシル療法に反応性の疾患又は病態のもう1つの例である。
「肺高血圧症」又は「PH」とは、肺動脈圧が上昇している病態を意味する。現行のPHの血行力学上の定義は、安静時の平均肺動脈圧(MPAP)が25mmHg以上であることである1。PHの例には、限定されるものではないが、PHの更新分類(表1)2に収載された病態が含まれる。
表1. 肺高血圧症(PH)の分類
開示の主題は、ある種のN置換ヒドロキシルアミン誘導体化合物、そのような化合物を使用する方法、並びにそのような化合物を含んでなる医薬組成物及びキットを提供する。
N置換ヒドロキシルアミン誘導体化合物
いくつかの態様において、開示の主題は、式(I)若しくは(II):
の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物[式中:
XとZは、−O−、−NR3−、−S−、−CR3−、及び−CR3R4−より独立して選択され;
Yは、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=NR5)−、及び−CR5R6−より選択され;
Rは、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C1−C8アルコキシ、C5−C10アリール、−C(=O)R7、−C(=S)R7、−C(=NR7)R8、及び−C(=NOR7)R8より選択され(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、及びアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される);
R1は、−H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロシクロアルキル、C5−C10ヘテロシクロアルケニル、及びC5−C10ヘテロアリールより選択され(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される);そして
R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、−H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロシクロアルキル、C5−C10ヘテロシクロアルケニル、C5−C10ヘテロアリールより独立して選択される(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される)]を提供する。
置換基の例には、限定なしに、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード)、ヒドロキシル(−OH)、アミノ(−NH2)、シアノ(−C≡N)、ニトロ(−NO2)、メルカプト(−SH)、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、イミノ(−N−アルキル)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ホルミル(−C(=O)H)、カルバモイル(−C(=O)NH2)、カルボキシル(−C(O)OH)、ウレイド(−NH−C(=O)−NH2)、チオウレイド(−NH−C(=S)−NH2)、チオシアネート(−SC≡N)、スルホンアミド(−SO2NH2)、−COR’、−C(O)OR’、−C(O)NHR’、−C(O)NR’R”、−NHR’、−NR’R”、−SR’、−SOR’、−SO2R’、及び−OR’が含まれ、ここで、R’とR”は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロシクロアルケニルより独立して選択され、ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びヘテロシクロアルケニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。
式(I)の化合物
いくつかの態様において、開示の主題は、式(I):
の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を提供する[式中:
XとZは、−O−、−NR3−、−S−、−CR3−、及び−CR3R4−より独立して選択され;
Yは、−C(=O)−、−C(=S)−、−C(=NR5)−、及び−CR5R6−より選択され;
Rは、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C1−C8アルコキシ、C5−C10アリール、−C(=O)R7、−C(=S)R7、−C(=NR7)R8、及び−C(=NOR7)R8より選択され(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、及びアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される);そして
R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、−H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロシクロアルキル、C5−C10ヘテロシクロアルケニル、C5−C10ヘテロアリールより独立して選択される(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される)]。
いくつかの態様では、XとZの少なくとも1つが−O−である。いくつかの態様では、XとZの少なくとも1つが−NR3−である。いくつかの態様では、XとZの少なくとも1つが−CR3−である。いくつかの態様では、XとZの少なくとも1つが−CR3R4−である。
いくつかの態様では、XとZが同じ成分である。いくつかの態様では、XとZがそれぞれ−O−である。いくつかの態様では、XとZが独立して−NR3−である。いくつかの態様では、XとZがそれぞれ−NR3−であり;そしてR3は−Hである。いくつかの態様では、XとZが独立して−NR3−であり;そしてR3はC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、XとZが独立して−NR3−であり;そしてR3はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、XとZが独立して−NR3−であり;そしてR3はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、XとZが独立して−NR3−であり;そしてR3はメチルである。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3−である。いくつかの態様では、XとZがそれぞれ−CR3−であり;そしてR3は−Hである。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3−であり;そしてR3はC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3−であり;そしてR3はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3−であり;そしてR3はC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3−であり;そしてR3はフェニル又はナフチルであって、ここで、該フェニル又はナフチルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3R4−である。いくつかの態様では、XとZが独立して−CR3R4−であり;そしてR3とR4は、−H、C1−C8アルキル、及びC5−C10アリールより独立して選択され、ここで、該アルキル及びアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。
いくつかの態様では、Yが−C(=O)−である。いくつかの態様では、Yが−C(=S)−である。いくつかの態様では、Yが−C(=NR5)−である。いくつかの態様では、Yが−C(=NR5)−であり;そしてR5は−H及びC1−C8アルキルより選択される。いくつかの態様では、Yが−CR5R6−である。いくつかの態様では、Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6は、−H及びC1−C8アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6の少なくとも1つはC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6は独立して、C1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6の少なくとも1つはC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6は独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Yが−CR3R4−であり;そしてR3とR4の少なくとも1つはメチルである。いくつかの態様では、Yが−CR3R4−であり;そしてR3とR4はそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rがメチル又はエチルである。いくつかの態様では、Rがメチルである。いくつかの態様では、Rがエチルである。いくつかの態様では、Rがトリフルオロメチルである。いくつかの態様では、RがC1−C8アルコキシであり、ここで該アルコキシは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rがフェニル又はナフチルであり、ここで、該フェニル及びナフチルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7である。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7であり;そしてR7は−Hである。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7であり;そしてR7はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7である。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7であり;そしてR7は−Hである。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7であり;そしてR7はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NR7)R8である。いくつかの態様では、Rが−C(=NR7)R8であり;そしてR7とR8は−H及びC1−C8アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8は−H及びC1−C8アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8はC1−C8アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であって、R7とR8はC1−C4アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であって、R7とR8はそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてXとZがそれぞれ−O−である。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてYが−CR5R6−である。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;そしてYが−CR5R6−である。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6は独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;Yが−CR5R6−である。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6はそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてXとZが独立して−NR3−である。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;XとZが独立して−NR3−であり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;XとZが独立して−NR3−であり;R3はC1−C8アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;XとZが独立して−NR3−であり;R3は、C1−C4アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、Rがエチルであり;XとZが独立して−NR3−であり;R3はC1−C4アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;XとZがそれぞれ−NCH3であり;そしてYが−C(=O)−である。
いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてXとZがそれぞれ−O−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてYが−CR5R6−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;XとZがそれぞれ−O−であり;そしてYが−CR5R6−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;R7とR8は独立してC1−C4アルキルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6は独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;R7とR8はそれぞれメチルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6は独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;R7とR8は独立してC1−C4アルキルであり;XとZがそれぞれ−O−であり;Yが−CR5R6−であり;そしてR5とR6はそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてXとZが独立して−NR3−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;XとZが独立して−NR3−であり;R3はC1−C8アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;R7とR8は独立してC1−C4アルキルであり;XとZが独立して−NR3−であり;R3はC1−C4アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;R7とR8はそれぞれメチルであり;XとZが独立して−NR3−であり;R3はC1−C4アルキルであり;そしてYが−C(=O)−である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;R7とR8は独立してC1−C4アルキルであり;XとZがそれぞれ−N(CH3)−であり;そしてYが−C(=O)−である。
式Iの代表的な化合物には、限定なしに、表2に収載される化合物が含まれる。
表2. 式(I)の代表的な化合物
いくつかの態様において、該化合物は、
である。
いくつかの態様において、該化合物は、
である。
式(II)の化合物
いくつかの態様において、開示の主題は、式(II):
の化合物又はその医薬的に許容される塩若しくは水和物を提供する[式中:
Rは、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C1−C8アルコキシ、C5−C10アリール、−C(=O)R7、−C(=S)R7、−C(=NR7)R8、及び−C(=NOR7)R8であり(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、及びアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される);
R1は、−H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロシクロアルキル、C5−C10ヘテロシクロアルケニル、及びC5−C10ヘテロアリールより選択され(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される);そして
R2、R7、及びR8は、−H、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C5−C10アリール、C5−C10ヘテロシクロアルキル、C5−C10ヘテロシクロアルケニル、C5−C10ヘテロアリールより独立して選択される(ここで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、及びヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される)]。
いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rがメチルである。いくつかの態様では、Rがトリフルオロメチルである。いくつかの態様では、RがC1−C8アルコキシであり、ここで、該アルコキシは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rがフェニル又はナフチルであり、ここで、該フェニル及びナフチルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rがフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rがフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードで置換される。いくつかの態様では、Rがフェニルである。いくつかの態様では、Rがクロロで置換されたフェニルである。いくつかの態様では、Rがo−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがm−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがp−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7である。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7であり;そしてR7は−Hである。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7であり;そしてR7はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7である。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7であり;そしてR7は−Hである。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7であり;そしてR7はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NR7)R8である。いくつかの態様では、Rが−C(=NR7)R8であり;そしてR7とR8は−H及びC1−C8アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8である。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8は−H及びC1−C8アルキルより独立して選択され、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8の少なくとも1つはC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8はC1−C8アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8はC1−C4アルキルより独立して選択される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8の少なくとも1つはメチルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR7)R8であり;そしてR7とR8はそれぞれメチルである。いくつかの態様では、RがC2−C8アルケニルであり、ここで、該アルケニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC2−C8アルキニルであり、ここで、該アルキニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC1−C8アルコキシであり、ここで、該アルコキシは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rがフェニル又はナフチルであり、ここで、該フェニル及びナフチルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=O)R7である。いくつかの態様では、Rが−C(=S)R7である。いくつかの態様では、Rが−C(=NR7)R8である。いくつかの態様では、Rが、−C(=O)R7、−C(=S)R7、又は−C(=NR7)R8であり、ここで、R7とR8は−H及びC1−C8アルキルより独立して選択される。
いくつかの態様では、R1が−Hである。いくつかの態様では、R1がC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、R1がC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、R1がメチルである。いくつかの態様では、R1がC2−C8アルケニルであり、ここで、該アルケニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC2−C8アルキニルであり、ここで、該アルキニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がフェニルである。いくつかの態様では、R1が、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換されたフェニルである。いくつかの態様では、R1がクロロで置換されたフェニルである。いくつかの態様では、R1がC5−C10ヘテロシクロアルキルであり、ここで、該ヘテロシクロアルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC5−C10ヘテロシクロアルケニルであり、ここで、該ヘテロシクロアルケニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がC5−C10ヘテロアリールであり、ここで、該ヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がピリジニルであり、ここで、該ピリジニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R1がピリジニルである。
いくつかの態様では、R2が−Hである。いくつかの態様では、R2がC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R2がC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、R2がC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、R2がメチルである。いくつかの態様では、R2がC2−C8アルケニルであり、ここで、該アルケニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R2がC2−C8アルキニルであり、ここで、該アルキニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R2がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R2がC5−C10ヘテロシクロアルキルであり、ここで、該ヘテロシクロアルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R2がC5−C10ヘテロシクロアルケニルであり、ここで、該ヘテロシクロアルケニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R2がC5−C10ヘテロアリールであり、ここで、該ヘテロアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。
いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換され;そしてR1が−Hである。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてR1が−Hである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;そしてR1が−Hである。いくつかの態様では、Rがメチルであり;そしてR1が−Hである。
いくつかの態様では、RとR1が独立してC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RとR1が独立してC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、RとR1が独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;そしてR1がメチルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり;そしてR1がC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、RとR1がそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてR1がC5−C10アリールであり、ここで、該アルキル及びアリールは、独立して未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてR1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RがC1−C8アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はクロロで置換される。いくつかの態様では、Rがメチルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はクロロで置換される。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;そしてR1がフェニルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり;そしてR1がフェニルである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;そしてR1が、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり;そしてR1が、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり、R1がo−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり、R1がo−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり、R1がm−クロロフェニルである。いくつかの態様では、Rがメチルであり、R1がp−クロロフェニルである。
いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換され;そしてR1が−H又はC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり;そしてR1が−H又はC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1が−Hである。いくつかの態様では、Rがメチルであり;R1が−Hであり;そしてR2がC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;R1が−Hであり;そしてR2がメチルである。いくつかの態様では、R、R1、及びR2が独立してC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、R、R1、及びR2が独立してC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、R、R1、及びR2が独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、R、R1、及びR2が独立してC1−C4アルキルであり;そしてR、R1、及びR2の少なくとも1つはメチルである。いくつかの態様では、RとR1が独立してC1−C4アルキルであり;そしてR2がメチルである。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;そしてR1とR2がそれぞれメチルである。いくつかの態様では、R、R1、及びR2がそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換され;そしてR1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり;そしてR1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C8アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードで置換される。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はクロロで置換される。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はクロロで置換される。いくつかの態様では、RがC1−C4アルキルであり;そしてR1がフェニルである。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであり;そしてR1がフェニルである。いくつかの態様では、RとR2が独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1が、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであり;そしてR1が、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであって、R1がo−クロロフェニルである。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであって、R1がo−クロロフェニルである。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであって、R1がm−クロロフェニルである。いくつかの態様では、RとR2がそれぞれメチルであって、R1がp−クロロフェニルである。
いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;そしてR1とR2が独立してC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;そしてR1とR2が独立してC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R1、R2、R5、及びR6は独立してC1−C8アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;そしてR1、R2、R5、及びR6は独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R5とR6は独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1とR2がそれぞれメチルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R5とR6はそれぞれメチルであり;そしてR1とR2が独立してC1−C4アルキルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;そしてR1、R2、R5、及びR6はそれぞれメチルである。
いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換され;そしてR2がC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R5とR6は独立してC1−C8アルキルであり;R1がC5−C10アリールであり;そしてR2がC1−C8アルキルであり、ここで、該アルキル及びアリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6は独立してC1−C8アルキルであり;そしてR1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6は独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1がC5−C10アリールであり、ここで、該アリールは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6は独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又は1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6は独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6はそれぞれメチルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードより独立して選択される1以上の置換基で置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6はそれぞれメチルであり;そしてR1がフェニルであり、ここで、該フェニルは、未置換であるか又はフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードで置換される。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6はそれぞれメチルであり;そしてR1がフェニル又はクロロフェニルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6は独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1がフェニルである。いくつかの態様では、Rが−C(=NOR5)R6であり;R2、R5、及びR6は独立してC1−C4アルキルであり;そしてR1が、o−クロロフェニル、m−クロロフェニル、又はp−クロロフェニルである。
式IIの代表的な化合物には、限定なしに、表3に収載される化合物が含まれる。
表3. 式IIの代表的な化合物
いくつかの態様において、該化合物は:
である。
いくつかの態様において、該化合物は、pH7.4及び/又は温度37℃といった生理学的条件下でニトロキシルを供与するものである。いくつかの態様において、該化合物は、生理学的条件下でその理論最大量の40%以上のニトロキシルを供与するものである。いくつかの態様において、該化合物は、生理学的条件下でその理論最大量の50%以上のニトロキシルを供与するものである。いくつかの態様において、該化合物は、生理学的条件下でその理論最大量の60%以上のニトロキシルを供与するものである。いくつかの態様において、該化合物は、生理学的条件下でその理論最大量の70%以上のニトロキシルを供与するものである。いくつかの態様において、該化合物は、生理学的条件下でその理論最大量の80%以上のニトロキシルを供与するものである。いくつかの態様において、該化合物は、生理学的条件下でその理論最大量の90%以上のニトロキシルを供与するものである。
本明細書に開示するすべての化合物に関し、立体中心の存在により当てはまる場合、該化合物には、図示されるか又は記載される該化合物のすべての可能な立体異性体が含まれると企図される。開示の主題には、少なくとも1つの立体中心がある化合物を含んでなる組成物も含まれ、ラセミ混合物、又は鏡像体過剰な1つの鏡像異性体を含有する混合物、又は単一のジアステレオマー若しくはジアステレオマー混合物が含まれる。本発明には、上記化合物のすべてのそのような異性体型が、いずれもすべての異性体型が具体的かつ個別に収載されるのと同じように、明確に含まれる。本発明の化合物は、連結(例えば炭素−炭素結合)を含有してもよく、ここで、結合の回転は、その特定の連結に関して制限される(例えば環又は二重結合の存在より生じる制限)。従って、開示の主題には、すべてのシス/トランス異性体及びE/Z異性体も明確に含まれる。本発明の化合物はまた、多数の互変異性型において表してよくて、そのような事例においても、開示の主題には、たとえ単一の互変異性型だけが表示されたとしても、本明細書に記載の化合物のすべての互変異性型が含まれる。
いくつかの態様において、開示の主題は、実質的に純粋な化合物を提供する。「実質的に純粋な」とは、25%以下(例えば重量%)の不純物を含有する化合物の調製物を企図し、ここで、不純物は全く別の化合物であっても該化合物の異なる形態(例えば異なる塩又は異性体)であってもよい。パーセント純度は、当該技術分野で公知の方法によって評価することができる。いくつかの態様では、15%以下の不純物を含有する、実質的に純粋な化合物の調製物を提供する。いくつかの態様では、10%以下の不純物を含有する、実質的に純粋な化合物の調製物を提供する。いくつかの態様では、5%以下の不純物を含有する、実質的に純粋な化合物の調製物を提供する。いくつかの態様では、3%以下の不純物を含有する、実質的に純粋な化合物の調製物を提供する。いくつかの態様では、1%以下の不純物を含有する、実質的に純粋な化合物の調製物を提供する。
いくつかの態様において、開示の主題は、例えば、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶、又は他の精製技術の後に、純化及び/又は単離された形態の化合物を提供する。開示の主題の化合物の特定の立体異性体が示される場合、そのような立体異性体は、他の立体異性体を実質的に含まない場合がある。
医薬組成物
いくつかの態様において、開示の主題は、本明細書に記載の化合物又はその医薬的に許容される塩の有効量を、医薬的に許容される賦形剤と一緒に含んでなる医薬組成物を提供する。
医薬的に許容される賦形剤の例には、担体、界面活性剤、濃化剤又は乳化剤、固体結合剤、分散助剤又は懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、保存剤、等張剤、及びこれらの組合せなどの、上記に記載のものが含まれる。医薬的に許容される賦形剤の選択及び使用については、その開示が本明細書に援用される非特許文献3に教示されている。
医薬組成物は、固体又は液体の形態での投与用に製剤化することができ、以下のために適合されたものが含まれる:(1)経口投与、例えば、飲薬(例えば水性又は非水性の溶液剤又は懸濁液剤)、錠剤(例えば口腔、舌下、及び全身吸収を狙いとするもの)、カプレット剤、ボーラス剤、散剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤、硬ゼラチンカプセル剤、軟ゼラチンカプセル剤、口腔噴霧剤、トローチ剤、口内錠剤、ペレット剤、シロップ剤、懸濁液剤、エリキシル剤、液剤、乳液剤、及びミクロ乳液剤;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、又は硬膜外注射による(例えば無菌溶液剤又は懸濁液剤として);(3)局所適用(例えば、皮膚へ適用されるクリーム剤、軟膏剤、パッチ剤、パッド、又はスプレー剤として);(4)膣内又は直腸内投与(例えば、ペッサリー剤、クリーム剤、又はフォーム剤として);(5)舌下投与;(6)眼への投与;(7)経皮投与;あるいは(8)経鼻投与。医薬組成物は、即時、持続、又は制御放出用であってよい。
いくつかの態様において、医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。いくつかの態様において、医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。
本明細書に記載の化合物及び医薬組成物は、カプセル剤、サシェ剤、錠剤のような任意の適正な単位剤形;散剤、顆粒剤、溶液剤、水性液体又は非水性液体中の懸濁液剤、水中油型の液体乳液剤、油中水型の液体乳液剤、リポソーム剤、及びボーラス剤として調製することができる。
錠剤は、1以上の補助成分を伴っていてもよく、圧縮又は成型によって作製することができる。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性剤、又は分散剤と混合されてもよい、粉末又は顆粒のような自由浮遊型の有効成分を好適な機械において圧縮することによって製造することができる。成型錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械において成型することによって作製することができる。錠剤は、被覆しても割線を入れてもよく、その中の有効成分の遅延又は制御放出をもたらすように製剤化してよい。本発明の化合物や当該技術分野で公知の他の化合物などの医薬活性成分のそのような遅延又は制御放出組成物を製剤化する方法については、当該技術分野で公知であり、いくつかの発行済みの米国特許(この中には、限定されるものではないが、特許文献2及び特許文献3が含まれる)とそこで引用された参考文献に記載されている。コーティング剤は、化合物の腸への送達のために使用することができる(例えば、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6と、そこで引用された参考文献を参照のこと)。当業者は、有効成分の遅延又は制御放出をもたらすために、錠剤に加えて、他の剤形も製剤化することができることを認識するであろう。そのような剤形には、限定されるものではないが、カプセル剤、顆粒剤(granulations)、ジェルカプセル剤(gel-caps)が含まれる。
局所投与に適した医薬組成物には、限定なしに、ショ糖、アカシア、及びトラガカントのような香味基剤に、有効成分を含んでなる口内錠剤;及び、香味基剤又はゼラチン及びグリセリンのような不活性基剤に、有効成分を含んでなる香錠剤が含まれる。
非経口投与に適した医薬組成物には、限定なしに、例えば、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を企図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有する水性及び非水性の無菌注射溶液剤;及び、例えば、懸濁剤及び濃化剤を含有する水性及び非水性の無菌懸濁液剤が含まれる。製剤は、単回投与又は頻回投与の容器、例えば、密封アンプル剤及びバイアル剤で提供することができ、使用直前に水のような無菌の液体担体の添加だけを必要とする、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。いくつかの態様において、水性組成物は酸性であり、pHは約5.5〜約7である。
即時注射用の溶液剤及び懸濁液剤は、無菌の散剤、顆粒剤、及び錠剤より調製することができる。
化合物及び医薬組成物を使用する方法
いくつかの態様において、開示の主題は、生体内ニトロキシルレベルを調節する(増加させるか又は低下させる)方法を提供するものであり、該方法は、それを必要とする個体へ本明細書に記載のような化合物又は医薬組成物を投与することを含んでなる。いくつかの態様において、個体は、ニトロキシル療法に反応性の疾患又は病態を有するか、有することが疑われるか、又はそれを有するか若しくは発症するリスクがある。
いくつかの態様において、開示の主題は、疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防するか又は遅延させる方法を提供するものであり、該方法は、本明細書に記載のような化合物又は医薬組成物の有効量を個体(そのような治療、予防、又は遅延が必要であると認定された個体が含まれる)へ投与することを含んでなる。そのような必要がある個体を認定することは、医師、臨床スタッフ、緊急対応人員、又は他の医療専門家の判断であり得、主観的(例えば見解)又は客観的(例えば検査又は診断法によって測定可能)であり得る。
本明細書に記載の方法に含まれる特定の疾患又は病態には、限定なしに、心臓血管系疾患、虚血、再灌流障害、癌性疾患、肺高血圧症、及びニトロキシル療法に反応性の病態が含まれる。
心臓血管系疾患
いくつかの態様において、開示の主題は、心臓血管系疾患を治療する方法を提供するものであり、該方法は、それを必要とする個体へ本明細書に記載の化合物又は医薬組成物の有効量を投与することを含んでなる。
心臓血管系疾患の例には、限定なしに、ニトロキシル療法に反応性の心臓血管系疾患、冠動脈閉塞、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心臓発作、心筋梗塞、高血圧、虚血性心筋症及び梗塞、肺鬱血、肺浮腫、心臓線維症、弁膜性心疾患、心膜疾患、循環鬱血状態、末梢浮腫、腹水症、シャーガス病、心室肥大、心臓弁膜症、心不全、拡張期心不全、鬱血性心不全、急性鬱血性心不全、急性非代償性心不全、及び心臓肥大が含まれる。
いくつかの態様において、個体は心不全を経験している。いくつかの態様において、個体は、心不全を経験し、及び/又は陽性変力剤での治療を受けている。いくつかの態様において、個体は、心不全を経験し、及び/又はβ−アドレナリン作用性受容体アンタゴニスト(本明細書では、β−アンタゴニスト又はβ−ブロッカーとしても言及される)の治療を受けている。β−アンタゴニストには、個体のβ−アドレナリン作用性受容体のアンタゴニストとして有効に作用するどの化合物も含まれ、血管緊張及び/又は心拍数の減衰などの所望の治療上又は医薬上の結果をもたらす。β−アンタゴニストの治療を受けている個体とは、β−アンタゴニストがすでに投与されており、β−アンタゴニストがその個体のβ−アドレナリン作用性受容体でアンタゴニストとして作用し続けているあらゆる個体である。β−アンタゴニストの例には、限定なしに、プロプラノロール、メトプロロール、ビソプロロール、ブシンドロール、及びカルベジロールが含まれる。
いくつかの態様において、個体は、心不全を経験し、及び/又はβ−アドレナリン作用性受容体アゴニスト(本明細書では、β−アゴニストとしても言及される)の治療を受けている。β−アゴニストの例には、限定なしに、ドーパミン、ドブタミン、イソプロテレノール、並びにこのような化合物の類似体及び誘導体が含まれる。
個体が、陽性変力剤、β−アンタゴニスト、又はβ−アゴニストの治療を受けているかどうかの判定は、個体の治療歴の検証によって、又は非特許文献4に記載のような高速液体クロマトグラフィーなどの化学検査により、そのような薬剤の存在について個体をスクリーニングすることによってなし得る。
いくつかの態様において、該方法は、少なくとも1つの他の陽性変力剤の有効量を個体へ投与することをさらに含む。いくつかの態様において、該方法は、β−アンタゴニストの有効量を個体へ投与することをさらに含む。いくつかの態様において、該方法は、β−アゴニストの有効量を個体へ投与することをさらに含む。
いくつかの態様において、心臓血管系疾患は心不全である。心不全は、どの種類でもどの型でもよく、本明細書に記載の心不全のいずれもが含まれる。心不全の非限定的な例には、早期心不全、クラスI、II、III、又はIVの心不全、急性心不全、鬱血性心不全(CHF)、及び急性鬱血性心不全が含まれる。いくつかの態様において、心不全は急性非代償性心不全である。
いくつかの態様において、心臓血管系疾患はCHFであり、該方法は、少なくとも1つの他の陽性変力剤の有効量を該個体へ投与することをさらに含む。いくつかの態様において、個体は心不全を経験している。いくつかの態様において、少なくとも1つの他の陽性変力剤は、β−アドレナリン作用性アゴニストである。いくつかの態様において、β−アドレナリン作用性アゴニストはドブタミンである。
虚血又は再灌流障害
いくつかの態様において、開示の主題は、虚血又は再灌流障害を治療する、その発現及び/又は発症を予防するか又は遅延させる方法を提供するものであり、該方法は、本明細書に記載の化合物又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする被験者へ投与することを含んでなる。
いくつかの態様において、該方法は、虚血又は再灌流障害を予防するためのものである。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、虚血の発現に先立って投与される。いくつかの態様において、該医薬組成物は、心筋虚血が起こり得る処置、例えば冠動脈バイパス移植手術のような血管形成術又は手術に先立って投与される。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、虚血の後、しかし再灌流の前に投与される。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、虚血と再灌流の後で投与される。
いくつかの態様において、被験者は個体である。いくつかの態様において、被験者は、虚血イベントのリスクがある個体である。いくつかの態様において、個体は、さらなる虚血イベントのリスクがあるが、現行では虚血の証拠がない。個体に虚血イベントのリスクがあるかどうかの判定は、個体又は個体の治療歴を検証することなどの当該技術分野で公知の方法によって実施することができる。いくつかの態様において、個体は、先行の虚血イベントを有したことがある。このように、該個体は、初発又は後発の虚血イベントのリスクがあり得る。虚血イベントのリスクがある個体の例には、公知の高コレステロール血症、虚血に関連したEKG変化(例えば、適正な臨床状況における、先鋭化若しくは陰性T波、又はST部分の上昇若しくは下降)、アクティブ虚血に関連しない異常EKG、上昇CKMB、虚血の臨床証拠(例えば、胸骨下の激しい胸痛又は上肢痛、息切れ、及び/又は発汗)、心筋梗塞の既往歴、上昇した血清コレステロール、座りがちの生活様式、部分冠動脈閉塞の血管造影の証拠、心筋損傷の心エコーの証拠、又は将来の虚血イベントリスクの他のあらゆる証拠のある個体が含まれる。虚血イベントの例には、限定なしに、心筋梗塞(MI)、及び脳血管障害(CVA)のような神経血管系虚血が含まれる。
いくつかの態様において、対象は移植される臓器である。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、移植レシピエントにおける臓器の再灌流に先立って投与される。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、ドナーからの臓器摘出に先立って、例えば臓器摘出プロセスにおいて使用される灌流カニューレを通して投与される。臓器ドナーが生きたドナー(例えば腎臓ドナー)であれば、該化合物又は医薬組成物は、その臓器ドナーへ投与することができる。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、該化合物又は医薬組成物を含んでなる溶液にその臓器を保存することによって投与される。例えば、該化合物又は医薬組成物は、ウィスコンシン大学「UW」液のような臓器保存溶液に含めることができる。これは、エチレングリコール、エチレンクロロヒドリン、及びアセトンを実質的に含まないヒドロキシエチルデンプンを含んでなる溶液剤である(特許文献7を参照のこと)。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物の量は、移植臓器のレシピエントにおける再灌流時に、その臓器の組織に対する虚血又は再灌流障害を抑えるような量である。いくつかの態様において、該方法は、リスクがある組織において組織壊死(梗塞の大きさ)を低下させる。
虚血又は再灌流障害は、心筋以外の組織を傷害する場合があるので、開示の主題には、そのような傷害を治療するか又は予防する方法が含まれる。いくつかの態様において、虚血又は再灌流障害は非心筋性である。いくつかの態様において、該方法は、脳、肝臓、消化管、腎臓、腸、又は心筋以外の身体のあらゆる部分の組織における虚血又は再灌流からの障害を抑える。いくつかの態様において、個体にはそのような障害のリスクがある。非心筋虚血のリスクがあるヒトを選択することには、心筋虚血のリスクを評価するために使用される指標の判定を含めることができる。しかしながら、他の因子も、他の組織における虚血/再灌流のリスクを示し得る。例えば、外科患者は、しばしば外科関連虚血を経験する。従って、手術が予定された個体は、虚血イベントのリスクがあるとみなすことができよう。卒中についての以下のリスク因子(又はこれらリスク因子のサブセット)は、個体の脳組織の虚血リスクを明示する可能性がある:高血圧、喫煙、頚動脈狭窄、身体の不活動性、糖尿病、高脂血症、一過性虚血発作、心房細動、冠動脈疾患、鬱血性心不全、過去の心筋梗塞、壁在血栓を伴う左心室機能不全、及び僧房弁狭窄(非特許文献5)。さらに、高齢者における未治療の感染性下痢症の合併症には、心筋、腎臓、脳血管、及び腸の虚血が含まれる可能性がある(非特許文献6)。あるいは、虚血性の腸、腎臓、又は肝臓疾患のリスク因子に基づいて個体を選択することができよう。例えば、低血圧エピソード(手術による血液損失など)のリスクがある高齢の個体において治療が開始されるであろう。このように、そのような徴候を提示している個体は、虚血イベントのリスクがあるとみなされよう。いくつかの態様において、個体は、糖尿病又は高血圧のような、本明細書に収載した病態を1つ以上有する。脳動静脈奇形のような、虚血を生じ得る他の病態も、個体の虚血イベントのリスクを明示する可能性がある。
いくつかの態様において、該方法は、追加の治療薬を投与することをさらに含む。この治療薬は、例えば、アンジェリ塩若しくは本明細書に記載の別の化合物のようなニトロキシル供与化合物、β−ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、抗血小板剤、又は個体において虚血障害を抑制するか若しくは心筋を保護するための他のあらゆる治療薬であり得る。
癌性疾患
いくつかの態様において、開示の主題は、癌性疾患を治療する、その発現及び/又は発症を予防するか又は遅延させる方法を提供するものであり、該方法は、本明細書に記載のような化合物又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与することを含んでなる。
いくつかの態様において、個体は、癌性疾患、例えば癌を有するか又は有することが疑われる。
本明細書に記載の方法によって治療され得る癌には、限定なしに、頭部、頚部、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺、及び傍神経節腫の腫瘍を含めた頭頚部癌;肝細胞癌のような肝臓及び胆管の癌;結直腸癌のような腸癌;卵巣癌;小細胞及び非小細胞肺癌;乳癌;線維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞巣状軟部肉腫のような肉腫;脳腫瘍のような中枢神経系の新生物;ホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系列大細胞型リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞未分化大細胞型リンパ腫のようなリンパ腫が含まれる。
いくつかの態様において、該方法は、有効量の追加の治療薬を個体へ投与することをさらに含む。いくつかの態様において、追加の治療薬は抗癌剤又は細胞傷害剤である。そのような薬剤の例には、限定なしに、アルキル化剤、血管新生阻害剤、代謝拮抗薬、DNA切断剤、DNA架橋剤、DNA挿入剤、DNA副溝結合剤、エンジイン、熱ショックタンパク質90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、微小管安定化剤、ヌクレオシド(プリン又はピリミジン)類似体、核外移行阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ(I又はII)阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤が含まれる。具体的な抗癌剤又は細胞傷害剤には、例えば、β−ラパコン、アンサマイトシンP3、アウリスタチン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カリケアマイシン、カリスタチンA、カンプトテシン、カペシタビン、シスプラチン、クリプトフィシン類、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュオカマイシン、ディネマイシンA、エトポシド、フロキシウリジン、フロキシウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲンシタビン、ヒドロキシ尿素、イマチニブ、インターフェロン類、インターロイキン類、イリノテカン、メトトレキセート、マイトマイシンC、オキサリプラチン、パクリタキセル、スポンジスタチン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、チオテパ、トポテカン、トリコスタチンA、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビンデシンが含まれる。
肺高血圧症
いくつかの態様において、開示の主題は、肺高血圧症を治療する、その発現及び/又は発症を予防するか又は遅延させる方法を提供するものであり、該方法は、本明細書に記載のような化合物又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与することを含んでなる。いくつかの態様において、肺高血圧症は、上記の表1に収載した疾患及び病態より選択される。いくつかの態様において、肺高血圧症は肺動脈高血圧症(PAH)である。いくつかの態様において、肺高血圧症は左心疾患による肺高血圧症である。いくつかの態様において、左心疾患は左心不全である。いくつかの態様において、左心不全は収縮期心不全である。いくつかの態様において、左心不全は拡張期心不全である。いくつかの態様において、左心不全は慢性であるか又は急性非代償性である。いくつかの態様において、肺高血圧症は慢性血栓塞栓性肺高血圧症である。
いくつかの態様において、開示の主題は、平均肺動脈圧(MPAP)を低下させる方法を提供するものであり、該方法は、本明細書に記載の化合物又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする個体へ投与することを含んでなる。いくつかの態様において、MPAPは最大約50%低下する。いくつかの態様において、MPAPは最大約25%低下する。いくつかの態様において、MPAPは最大20%低下する。いくつかの態様において、MPAPは最大15%低下する。いくつかの態様において、MPAPは最大10%低下する。いくつかの態様において、MPAPは最大5%低下する。いくつかの態様において、MPAPは約12〜16mmHgまで低下する。いくつかの態様において、MPAPは約15mmHgまで低下する。
投与形式、レジメン、及び用量レベル
本明細書に記載の方法において、薬物送達の時機及び順序を調節するための当業者に周知の投与レジメンを使用し、必要に応じて繰り返すことで、治療を有効にすることができる。例えば、該化合物又は医薬組成物は、単一用量、複数の個別用量、又は持続点滴によって、1日に1、2、3、又は4回投与することができる。
該化合物又は医薬組成物は、追加の治療薬の投与に先立って、それと実質的に同時に、又はその後で投与してよい。この投与レジメンには、追加の治療薬による予備治療、及び/又はそれとの同時投与を含めることができる。そのような場合、該化合物又は医薬組成物と追加の治療薬は、同時に、別々に、又は連続的に投与することができる。
投与レジメンの例には、限定なしに以下が含まれる:
それぞれの化合物、医薬組成物、及び治療薬の連続的投与;及び
それぞれの化合物、医薬組成物、及び治療薬の実質的同時投与(例えば単一の単位剤形として)、又はそれぞれの化合物、医薬組成物、及び治療薬について複数の別々の単位剤形による同時投与。
該化合物又は医薬組成物の投与は、当業者に公知のどの受容された形式を介してもよく、例えば、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによる、局所的に、直腸より、経鼻的に、頬内に、膣内に、眼内に、肺内に、又は移植レザバーを介して投与することができる。「非経口的に」という用語には、限定なしに、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、鞘内に、心室内に、胸骨内に、頭蓋内に、骨内注射により、及び点滴技術により投与することが含まれる。投与は、全身曝露を伴っても、あるいは化合物又は医薬組成物を目的部位に投与する場合のように局所的であってもよい。目的部位に投与するには、カテーテル、トロカール、発射器具(projectiles)、プルロニックゲル剤、ステム、持続薬物放出ポリマー、又は内部アクセスをもたらす他のデバイスのような様々なツールを使用することができる。該化合物又は医薬組成物を供与されるべき臓器へ投与する場合、該化合物又は医薬組成物を含有する媒体にそのような臓器を浴してよい。あるいは、該化合物又は医薬組成物は、臓器の上へ塗布しても、どの好適なやり方で適用してもよい。
当業者には、「有効量」又は「用量レベル」が、選択される特定の投与形式、投与レジメン、化合物、及び組成物、並びに治療される特定の疾患及び患者のような様々な要因に依存することが理解されよう。例えば、適正な用量レベルは、利用される具体的な化合物又は組成物の活性、排出速度、及びあり得る毒性;治療される患者の年齢、体重、健康状態、性別、及び食事;投与頻度;同時投与される他の治療薬;並びに疾患の種類及び重症度に依存して変動し得る。
本明細書に記載の化合物及び医薬組成物は、好適な用量レベルで投与してよい。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、成人に対して、1日1回、約0.0001〜4.0gの用量レベル(又は分割用量で1日複数回の投薬)で投与される。このように、いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、範囲の下限が0.1mg/日〜400mg/日の任意量であって、範囲の上限が1mg/日〜4000mg/日の任意量である用量レベル範囲(例えば、5mg/日と100mg/日、150mg/日と500mg/日)で投与される。いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、範囲の下限が0.1mg/kg/日〜90mg/kg/日の任意量であって、範囲の上限が1mg/kg/日〜100mg/kg/日の任意量である用量レベル範囲(例えば、0.5mg/kg/日と2mg/kg/日、5mg/kg/日と20mg/kg/日)で投与される。
いくつかの態様において、該化合物又は医薬組成物は、体重ベースの用量で投与される。いくつかの態様において、用量レベルは、約0.001〜約10,000mg/kg/日である。いくつかの態様において、用量レベルは、約0.01〜約1,000mg/kg/日である。いくつかの態様において、用量レベルは、約0.01〜約100mg/kg/日である。いくつかの態様において、用量レベルは、約0.01〜約10mg/kg/日である。いくつかの態様において、用量レベルは、約0.1〜約1mg/kg/日である。いくつかの態様において、用量レベルは、約1g/kg/日未満である。
静脈内投与について用量レベルを調整することができる。そのような場合、該化合物又は医薬組成物は、約0.01μg/kg/分〜約100μg/kg/分、約0.05μg/kg/分〜約95μg/kg/分、約0.1μg/kg/分〜約90μg/kg/分、約1.0μg/kg/分〜約80μg/kg/分、約10.0μg/kg/分〜約70μg/kg/分、約20μg/kg/分〜約60μg/kg/分、約30μg/kg/分〜約50μg/kg/分、約0.01μg/kg/分〜約1.0μg/kg/分、約0.01μg/kg/分〜約10μg/kg/分、約0.1μg/kg/分〜約1.0μg/kg/分、約0.1μg/kg/分〜約10μg/kg/分、約1.0μg/kg/分〜約5μg/kg/分、約70μg/kg/分〜約100μg/kg/分、約80μg/kg/分〜約90μg/kg/分の間の量で投与することができる。
投薬間隔は、個体の必要量に従って調整することができる。より長い投与間隔では、持続放出製剤又はデポー製剤を使用することができる。
該化合物又は医薬組成物を含んでなるキット
いくつかの態様において、開示の主題は、本明細書に記載の化合物又は医薬組成物を含んでなるキットを提供する。
いくつかの態様において、該キットは、該化合物又は医薬組成物を使用するための説明書をさらに含む。この説明書は、書面形式又は電子形式のような適正な形式であり得る。いくつかの態様において、説明書は書面の説明書である。いくつかの態様において、説明書は電子保存媒体(例えば磁気ディスケット又は光ディスク)に含まれる。いくつかの態様において、説明書には、該化合物又は医薬組成物についての情報と、該化合物又は医薬組成物を個体へ投与する方法についての情報が含まれる。いくつかの態様において、説明書は、本明細書に記載の使用方法(例えば、心臓血管系疾患、虚血、再灌流障害、癌性疾患、肺高血圧症、及びニトロキシル療法に反応性の病態より選択される疾患又は病態を治療すること、その発現及び/又は発症を予防すること、及び/又は遅延させること)に関する。
いくつかの態様において、該キットは好適な包装をさらに含む。キットが1より多い化合物又は医薬組成物を含む場合、該化合物又は医薬組成物は、別々の容器に個別に包装しても、交差反応性と貯蔵寿命が許容される場合は1つの容器に組み合わせてもよい。
実施例における以外、又は他に示す場合を除いて、明細書及び特許請求の範囲において使用される成分、反応条件などの量を表すすべての数は、「約」という用語によって修飾されていると理解されたい。従って、反対に示さなければ、そのような数は近似値であって、開示の主題によって入手されることが求められる所望の特質に依存して変動する場合がある。いずれにしても、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、それぞれの数的変数は、有効数字の数と通常の四捨五入技術に照らして解釈されるべきである。
開示の主題の広い範囲を示す数的範囲及び変数が近似値であるのに対し、実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、どの数値も、そのそれぞれの検査測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本質的に含有するものである。
以下の実施例は、例証目的で提示するものであり、開示の主題の範囲を制限することに役立ててはならない。
実施例1: 化合物の合成
本明細書に記載の化合物は、スキーム1〜3に記載の一般的な方法に従って、又は当該技術分野で公知の手順によって作製することができる。この反応のための出発材料は、市販品を利用しても、公知の手順又はその明らかな修飾法によって製造してもよい。例えば、5−ブロモ−5−メチル−メルドラム酸1は、5−メチル−メルドラム酸の臭素化(重炭酸ナトリウム、臭素、水)により得た。5−アセチル−メルドラム酸2は、メルドラム酸のアシル化(酢酸、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、4−ジメチルアミノピリジン、ジクロロメタン)により得た。5−アセチル−N,N−ジメチルバルビツール酸2,3は、N,N−ジメチルバルビツール酸のアシル化(塩化アセチル、ピリジン、ジクロロメタン)により得た。5−エチル−バルビツール酸4は、5−アセチル−メルドラム酸の還元(シアノ水素化ホウ素ナトリウム、酢酸)により得た。4−アセチル−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン5は、N−フェニル−5−メチル−ピラゾロンのアシル化(塩化アセチル、水酸化カルシウム、ジオキサン)により得た。N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル)−ヒドロキシルアミン6は、塩酸ヒドロキシルアミンのN,O−ジBoc保護化(二炭酸ジt−ブチル、トリエチルアミン、石油エーテル、t−ブチルメチルエーテル、水)により得た。いずれの出発材料も試薬グレードであって、さらに精製せずに使用した。
NMRスペクトルは、Bruker Avance 400MHz FT−NMR分光計で得た。すべての化学シフトは、残留CHCl3(1Hに対して7.26ppm、13Cに対して77.23ppm)、残留DMSO(1Hに対して2.50ppm、13Cに対して39.52ppm)、又は残留H2O(1Hに対して4.8ppm)と比較した百万分率(ppm)で報告する。高解像質量スペクトルは、高速原子衝突(FAB)形式において作動するVG Analytical VG70SE磁場型質量分析計で得た。紫外線−可視(UV−Vis)吸収スペクトルは、Hewlett Packard 8453ダイオードアレイ分光器を使用して得た。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液(0.1M)を、140mM NaCl及び3mM KClより調製し、100μMジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を加えてpH7.4に調整した。UV−Vis実験用の緩衝化溶液(0.1M)は、HCl/NaCl(pH1.7)、AcOH/AcONa(pH3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5)、又はNaPO3H2/Na2PO3(pH6.0、6.5、7.0、8.0、9.0、9.5、9.8、10.0、10.5、10.6)より調製した。
スキーム1. メルドラム酸供与体1a及び2aの合成
一般的なスキーム:
具体例:
スキーム2. バルビツール酸供与体3a及び4aの合成
一般的なスキーム:
具体例:
スキーム3. ピラゾロン供与体6a〜12aの合成
一般的なスキーム: 方法A
具体例:
一般的なスキーム: 方法B
化合物1a〜6aについての一般的な手順
1b〜4b、6bの臭化物 化合物1bは、市販品を利用して、2b〜5bは、公知文献の方法1−3によって合成した(非特許文献7;非特許文献8;及び非特許文献9)。
5−(N−(N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル))−ヒドロキシルアミン)−5−メチル−メルドラム酸(1b−ジBoc) N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル)−ヒドロキシルアミン(1.81g、7.75ミリモル)のジメチルホルムアミド(25mL)溶液へ、室温で60%水素化ナトリウム(0.340g、8.52ミリモル)を加えて、この反応物を1時間撹拌した。この溶液へ1b−Br(1.84g、7.75ミリモル)を加えて、この反応を室温でさらに17時間進行させた。この反応物をエーテル(50mL)で希釈して、塩化アンモニウム(2回)、水、及び塩水で洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、空気を含んで真空で固化するオイルとして表題化合物を得た。ジクロロメタンとヘキサンからの再結晶により、表題化合物を白色の固形物として得た(1.79g、59%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.90(s, 3H), 1.83 (s, 3H), 1.80 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 167.04, 163.92, 154.77, 151.91, 107.49, 85.51, 84.88, 64.80, 28.78, 28.00, 27.59, 21.84。
5−(N−ヒドロキシルアミン)−5−メチル−メルドラム酸塩酸塩一水和物(1a) 1b−ジBoc(0.190g、0.488ミリモル)のジクロロメタン(10mL)及びメタノール(0.99mL)溶液へ、0℃で塩化アセチル(1.7mL,24ミリモル)を2分間にわたって加えた。この反応物を氷浴においてそのまま室温まで温め、一晩撹拌し続けた。白色の沈殿を濾過して、表題化合物(0.094g、86%)として特性決定した。メタノール及びジクロロメタンからの再結晶により、X線品質の結晶を得た。1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 10.32 (s, 1H), 8.40 (br. s, 3H), 1.73 (s, 3H), 1.71 (s, 3H), 1.44 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, d6-DMSO) δ: 168.99, 105.57, 66.14, 28.88, 28.33, 20.96。
5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−メルドラム酸(2b−H + ) 5−アセチル−メルドラム酸(1.644g、8.831ミリモル)のメタノール(50mL)溶液へ、室温でO−メトキシヒドロキシルアミン塩酸塩(0.738g、8.84ミリモル)と重炭酸ナトリウム(0.743g、8.84ミリモル)を加え、この反応を室温で24時間続けた。この反応物を真空で濃縮し、ジクロロメタンに再溶解し、濾過して真空で濃縮し、表題化合物を淡黄色の固形物として得た(1.714g、90%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 13.11 (s, 1H), 3.88 (s, 3H), 2.71 (s, 3H), 1.69 (6H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 169.77, 166.95, 162.58, 103.12, 80.79, 64.68, 26.46, 14.86. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 216.08696 (MH+); C9H13NO5の計算値: 216.08720。
5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−5−ブロモ−メルドラム酸(2b−Br) 4b−H+(0.681g、2.87ミリモル)及びトリエチルアミン(0.40mL、2.87ミリモル)のジクロロメタン(20mL)溶液へ、0℃で臭素(0.15mL、2.87ミリモル)のジクロロメタン(2mL)溶液を加えた。この反応物を5分間撹拌し、水と塩水で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空で濃縮し、表題化合物を橙色の固形物として得た(0.810g、96%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.94 (s, 3H), 2.19 (s, 3H), 1.85 (s, 3H), 1.78 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 161.53, 151.23, 107.27, 63.19, 55.82, 28.74, 28.38, 12.71. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 295.99537 (MH+); C9H12BrNO5の計算値: 295.99566。
5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−5−(N−(N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル))−ヒドロキシルアミン)−メルドラム酸(2b−ジBoc) N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル)−ヒドロキシルアミン(0.642g、2.75ミリモル)のジメチルホルムアミド(20mL)溶液へ、室温で60%水素化ナトリウム(0.121g、3.03ミリモル)を加えて、この反応物を1時間撹拌した。この溶液へ2b−Br(0.810g,2.75ミリモル)を加え、この反応を室温でさらに24時間進行させた。この反応物をエーテル(50mL)で希釈し、塩化アンモニウム(2回)、水、及び塩水で洗浄し、真空で濃縮して、粗製の2b−ジBoc(1H NMRによれば純度約30〜40%)を得、これをさらに精製せずに使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.94 (s, 3H), 1.99 (br. s.,3H), 1.82 (br. s., 3H), 1.73 (s, 3H), 1.51 (s, 9H), 1.48(s, 9H)。
5−(N−ヒドロキシルアミン)−5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−メルドラム酸(2a) 先の反応からの2b−ジBocのメタノール(20mL)溶液へ、0℃で塩化アセチル(4mL)を3分間にわたって加えた。この反応物を氷浴においてそのまま室温まで温め、一晩撹拌し続けた。この反応物を真空で濃縮し、ジクロロメタンに再溶解し、濾過し、濾液を真空で濃縮した。ジクロロメタン及びヘキサンからの再結晶により、表題化合物を薄橙色の針状物として得た(0.68g、2工程で10%)。1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 8.38 (d, 1H, J = 2.3 Hz), 6.94 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 3.81 (s, 3H), 1.91(s, 3H), 1.74 (s, 3H), 1.71 (s, 3H). HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 247.09360 (MH+); C9H14N2O6の計算値: 247.09301。
5−ブロモ−5−エチル−N,N−ジメチルバルビツール酸(3b−Br) 3b−H+(1.06g、5.74ミリモル)及びトリエチルアミン(0.81mL、5.74ミリモル)のジクロロメタン(50mL)溶液へ、0℃で臭素(0.30mL、5.74ミリモル)のジクロロメタン(2mL)溶液を加えた。この反応物を5分間撹拌してから水と塩水で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空で濃縮して、表題化合物を白色の固形物として得た(1.42g、94%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.38 (s, 6H), 2.61 (q, 2H), 0.85(t, 3H). 13C NMR(100 MHz, CDCl3) δ: 166.07, 150.09, 49.93, 30.30, 29.66, 10.70. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 265.00118 (MH+); C8H11BrN2O3の計算値: 265.00108。
5−(N−(N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル))−ヒドロキシルアミン)−5−エチル−N,N−ジメチルバルビツール酸(3b−ジBoc) N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル)−ヒドロキシルアミン(1.26g、5.41ミリモル)のジメチルホルムアミド(50mL)溶液へ、室温で60%水素化ナトリウム(0.238g、5.95ミリモル)を加え、この反応物を1時間撹拌した。この溶液へ3b−Br(1.42g,5.41ミリモル)を加え、その反応を室温でさらに20時間進行させた。この反応物をエーテル(50mL)で希釈し、塩化アンモニウム(2回)、水、及び塩水で洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、空気を含んで真空で固化するオイルとして表題化合物を得た。ジクロロメタンとヘキサンからの再結晶により、表題化合物を白色の固形物として得た(1.67g、74%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.35 (s, 3H), 3.33 (s, 3H), 2.17 (m, 2H), 1.54 (s, 9H), 1.41 (br.s., 9H), 0.89 (t, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 169.60, 166.47, 151.81, 150.74, 85.20, 84.40, 70.70, 29.41, 29.03, 28.82, 27.99, 27.94, 27.61, 27.57, 7.88. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 416.20253 (MH+); C18H29N3O8の計算値: 416.20329。
5−(N−ヒドロキシルアミン)−5−エチル−N,N−ジメチルバルビツール酸塩酸塩(3a) 3b−ジBoc(0.415g、1ミリモル)のジクロロメタン(20mL)及びメタノール(2.0mL)溶液へ、0℃で塩化アセチル(3.5mL、50ミリモル)を3分間にわたって加えた。この反応物を氷浴においてそのまま室温まで温め、一晩撹拌し続けた。白色の沈殿を濾過して、表題化合物(0.109g、43%)として特性決定した。メタノールとジクロロメタンからの再結晶により、X線品質の結晶を得た。1H NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 10. 27 (s, 1H), 7.24 (t, 1H, J = 50.8 Hz), 3.21 (s, 6H), 1.78 (q, 2H, J = 7.4 Hz), 0.72 (t, 3H, J =7.7 Hz)。(5)への転位により、13C−NMRの収集は不可能であった。HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 216.09879 (MH+); C8H13N3O4の計算値: 216.09843。
5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−N,N−ジメチルバルビツール酸(4b−H + ) 5−アセチル−N,N−ジメチルバルビツール酸(15.43g、77.8ミリモル)のメタノール(125mL)懸濁液へ、O−メトキシヒドロキシルアミン塩酸塩(6.50g、77.8ミリモル)と重炭酸ナトリウム(6.54g、77.8ミリモル)を加えた。この反応物を1時間加熱して還流させてから、そのまま氷上で冷やした。沈殿を濾過し、ジクロロメタンに再溶解し、濾過し、この溶液を真空で濃縮して、表題化合物を白色の固形物として得た(15.36g、87%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 14.54 (s, 1H), 3.88 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.30(s, 3H), 2.76 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 169.63, 166.11, 162.55, 151.42, 86.97, 64.55, 27.87, 14.75. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 228.09857 (MH+); C9H13N3O4の計算値: 228.09843。
5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−5−ブロモ−N,N−ジメチルバルビツール酸−N,N−ジメチルバルビツール酸(4b−Br) 4b−H+(7.27g、32ミリモル)及びトリエチルアミン(4.5mL、32ミリモル)のジクロロメタン(50mL)溶液へ、0℃で臭素(1.65mL、32ミリモル)のジクロロメタン(10mL)溶液を加えた。この反応物を5分間撹拌してから水と塩水で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空で濃縮し、表題化合物を白色の固形物として得た(9.51g、97%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.87 (s, 3H), 3.35 (s, 6H), 2.06 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 163.77, 151.70, 150.02, 62.87, 60.13, 30.00, 12.69. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 308.00717 (MH+); C9H12BrN3O4の計算値: 308.00690。
5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−5−(N−(N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル))−ヒドロキシルアミン−N,N−ジメチルバルビツール酸(4b−ジBoc) N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル)−ヒドロキシルアミン(5.83g、25ミリモル)のジメチルホルムアミド(100mL)溶液へ、室温で60%水素化ナトリウム(1.1g、27.5ミリモル)を加え、この反応物を1時間撹拌した。この溶液へ4b−Br(7.65g、25ミリモル)を加え、その反応を室温でさらに20時間進行させた。この反応物をエーテル(150mL)で希釈し、塩化アンモニウム(2回)、水、及び塩水で洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、空気を含んで真空で固化するオイルとして表題化合物を得た。この材料をさらに精製せずに使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.84 (s, 3H), 3.32 (s, 6H), 1.94(br. m., 3H), 1.52 (s, 9H), 1.46 (br. m.,9H). HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 459.20898 (MH+); C19H30N3O9の計算値: 459.20910。
5−(N−ヒドロキシルアミン)−5−(アセチル−O−メトキシオキシム)−N,N−ジメチルバルビツール酸(4a) メタノール(100mL)に、0℃で塩化アセチル(25mL)を10分間にわたって加え、さらに5分間撹拌した。この酸性溶液へ4b−ジBocのメタノール(70mL)溶液を加え、濁った反応物をそのまま氷浴において室温まで一晩温めた。この反応物を真空で濃縮し、ジクロロメタンに再溶解し、濾過し、濾液を真空で濃縮して、表題化合物を粘稠な固形物として得た。ジクロロメタンとヘキサンからの再結晶により、白色の針状物を得た(3.98g、2工程で62%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 6.38 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 5.32 (d, 1H, J = 4.0 Hz), 3.82 (s, 3H), 3.36 (s, 6H), 1.89(s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 167.10, 152.47, 150.86, 74.93, 62.80, 29.38, 10.93. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 259.10454 (MH+); C9H14N4O5の計算値: 259.10424。
4−(アセチル−O−メトキシオキシム)−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン(6b−H + ) 4−アセチル−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン(3.69g、17.1ミリモル)のメタノール(50mL)懸濁液へ、O−メトキシヒドロキシルアミン塩酸塩(1.43g、17.1ミリモル)と重炭酸ナトリウム(1.44g、17.1ミリモル)を加えた。この反応物を1時間加熱して還流させてから、そのまま室温まで冷やした。この反応物を真空で濃縮し、ジクロロメタンに再溶解し、濾過し、濾液を真空で濃縮して、静置時に固化する赤褐色のオイルとして表題化合物を得た(4.15g、99%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.85 (m, 2H), 7.44(m, 2H), 7.26(m, 1H), 3.92 (s, 3H), 2.43 (s, 3H), 2.29 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 170.58, 156.30, 155.54, 154.44, 146.17, 138.22, 128.93, 125.89, 120.67, 120.62, 118.75, 96.46, 62.15, 43.06, 16.94, 15.75, 12.95. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 246.12350 (MH+); C13H15N3O2の計算値: 246.12425。
4−(アセチル−O−メトキシオキシム)−4−ブロモ−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン(6b−Br) ジクロロメタン(20mL)及び水(20mL)中の6b−H+(1.078g、4.4ミリモル)及び重炭酸ナトリウム(0.369g、4.4ミリモル)の二相性混合物へ、室温で臭素(0.23mL、4.4ミリモル)を一度に加えた。この反応物を5分間激しく撹拌し、分液漏斗へ移し、澄明な無色の水層が生じるまで振り混ぜた。有機層を分離させ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過して真空で濃縮し、表題化合物を茶褐色のオイルとして得た(1.38g、97%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.88 (m, 2H), 7.40 (m, 2H), 7.22 (m, 1H), 3.90(s, 3H), 2.44 (s, 3H), 2.22 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 167.06, 157.83, 151.27, 137.69, 129.11, 125.78, 119.08, 62.73, 56.61, 15.71, 11.70. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 326.03272 (MH+); C13H14BrN3O2の計算値: 326.03219。
4−(アセチル−O−メトキシオキシム)−4−(N−(N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル))−ヒドロキシルアミン−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン(6b−ジBoc) N,O−ビス(t−ブトキシカルボニル)−ヒドロキシルアミン(0.992g、4.25ミリモル)のジメチルホルムアミド(20mL)溶液へ、室温で60%水素化ナトリウム(0.187g、4.68ミリモル)を加え、この反応物を1時間撹拌した。この溶液へ6b−Br(1.38g、4.25ミリモル)を加え、この反応を室温で30分間進行させた。この反応物をエーテル(50mL)で希釈し、塩化アンモニウム(2回)、水、及び塩水で洗浄した。溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、空気を含んで真空で固化するオイルとして表題化合物を得た。この材料をさらに精製せずに使用した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.89 (m, 2H), 7.37 (m, 2H), 7.16 (m, 1H), 3.85(s, 3H), 2.24 (br. s., 3H), 2.05 (br. m.,3H), 1.52 (s, 9H), 1.40(br. m., 9H)。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−(アセチル−O−メトキシオキシム)−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン(6a) 先の反応からの6b−ジBocのメタノール(50mL)溶液へ、0℃で塩化アセチル(3mL)を3分間にわたって加えた。この反応物を氷浴においてそのまま室温まで温め、一晩撹拌し続けた。この反応物を真空で濃縮し、ジクロロメタンに再溶解し、濾過し、濾液を真空で濃縮して、表題化合物を粘稠な固形物として得た。ジクロロメタンとヘキサンからの再結晶により、表題化合物を白色の針状物として得た(0.412g、2工程で35%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.92 (m, 2H), 7.41 (m, 2H), 7.20 (m, 1H), 6.25 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 4.68 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 3.92 (s, 3H),2.23 (s, 3H), 1.79 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 170.23, 159.62, 148.66, 137.85, 129.07, 125.59, 119.03, 78.10, 62.59, 14.43, 11.05. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 277.12953 (MH+); C13H16N4O3の計算値: 277.13007。
7a〜12aについての一般的な手順
メタノール(10mL)及び水(10mL)中のピラゾロン7b〜12b(1ミリモル)及び塩化アンモニウム(10ミリモル)の溶液へ、室温でアンジェリ塩(2ミリモル)を一度に加え、この反応物を1時間撹拌した。生じる溶液をジクロロメタンで抽出し(2回)、合わせた層を塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させて真空で濃縮し、7a〜12aを81%の変換(7a)と定量的な変換(8a〜12a)で得た。ジクロロメタンとヘキサンからの再結晶により、ピラゾロンHNO供与体(7a〜12a)を白色の固形物として得た。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−(アセチル−O−メトキシオキシム)−N−メチル−5−メチル−ピラゾロン(7a) 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.89 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 1.73 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 171.68, 158.97, 76.62, 62.53, 31.77, 14.39, 10.96. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 215.11454(MH+); C8H14N4O3の計算値: 215.11442 (MH+)。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−メチル−N−フェニル−5−メチル−ピラゾロン(8a) 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.93 (dd, 2H), 7.40 (dd, 2H), 7.18 (t, 1H), 5.70 (bs, 1H), 4.77 (s, 1H), 2.21 (s, 3H), 1.28 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 174.06, 162.07, 138.12, 129.05, 125.31, 118.86, 71.23, 16.97, 13.33. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 220.10932 (MH+); C11H13N3O2の計算値: 220.10860 (MH+)。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−メチル−N−メチル−5−メチル−ピラゾロン(9a) 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 5.59 (bs, 1H), 4.93 (s, 1H), 3.31 (s, 3H), 2.09 (s, 3H), 1.18 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 175.58, 162.00, 69.88, 31.50, 16.60, 13.11. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 158.09320(MH+); C6H11N3O2の計算値: 158.09295 (MH+)。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−メチル−N−(4−クロロフェニル)−5−メチル−ピラゾロン(10a) 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.90 (d, 2H), 7.35 (d, 2H), 2.20 (s, 3H), 1.28 (s, 3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 173.96, 162.18, 136.77, 130.36, 129.09, 119.92, 71.19, 16.92, 13.31. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 254.06968 (MH+,35Cl), 256.06703 (MH+,37Cl); C11H12ClN3O2の計算値: 254.06963 (MH+,35Cl), 256.06668 (MH+,37Cl)。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−メチル−N−(2−クロロフェニル)−5−メチル−ピラゾロン(11a) 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.50 (m, 1H), 7.43 (m, 1H), 7.33 (m, 2H), 2.19 (3H), 1.34 (3H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 174.71, 162.25, 134.58, 132.09, 130.64, 130.07, 129.14, 127.74, 70.09, 16.97, 13.35. HR-MS (FAB): 実測値 m/z = 254.06967 (MH+,35Cl), 256.06718 (MH+,37Cl); C11H12ClN3O2の計算値: 254.06963 (MH+,35Cl), 256.06668 (MH+,37Cl)。
4−(N−ヒドロキシルアミン)−4−メチル−5−メチル−ピラゾロン(12a) 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 2.09 (s, 3H), 1.21 (s, 3H)。
実施例2: HNO産生
本明細書に記載の化合物は、スキーム4(Xは脱離基である)に示す一般的な戦略に基づいてHNOを供与すると考えられている。スルフィン酸脱離基があるパイロッチ酸とその誘導体は、この戦略の典型的な例である。本明細書に記載の化合物は、中性pHで安定したカルバニオンとともにHNOを放出するように、炭素ベースの脱離基を利用する。
スキーム4. HNO放出
一般的なスキーム:
具体例:
(a)メルドラム酸誘導体1a及び2aからのpH7.4、37℃でのHNO放出
(b)バルビツール酸3a及び4aからのpH7.4、37℃でのHNO放出
(c)ピラゾロン6a〜12aからのpH7.4、37℃でのHNO放出
亜酸化窒素は、HNOの二量体化及び脱水より産生され、HNO産生の最も一般的なマーカーである(非特許文献10)。しかしながら、HNOは、酸素によって一部クエンチし、N2Oを産生しない生成物も生じ得る(非特許文献11;及び非特許文献12を参照のこと)。アンジェリ塩(AS)をベンチマークとして使用し、化合物より放出されるN2Oの相対量を、ガスクロマトグラフィー(GC)ヘッドスペース分析により検証した。
ガスクロマトグラフィーは、1041マニュアルインジェクター、電子捕獲型検出器、及び25m 5Å分子ふるいキャピラリーカラムを取り付けたVarian CP−3800装置で実施した。キャリアガス(8mL/分)及びメイクアップガス(22mL/分)としてグレート5.0窒素を使用した。インジェクターオーブンと検出器オーブンは、それぞれ200℃と300℃に保った。いずれの亜酸化窒素分析も、150℃で一定に保ったカラムオーブンを用いて実施した。いずれのガス注入も、サンプルロック付き100μL気密シリンジを使用して行った。試料は、15mLヘッドスペースの琥珀色バイアルにおいて、試料均一性のために予め測定した容量で調製した(実際のバイアル容量は、15.19〜15.20mLの範囲に及ぶ)。バイアルにDTPAを含有する5mLのPBS緩衝液を入れ、アルゴンでパージし、ゴム栓で密封した。このバイアルを乾燥蓄熱式ヒーターにおいて37℃で少なくとも10分間平衡化した。アンジェリ塩(AS)の10mMストック溶液を10mM水酸化ナトリウムで調製し、HNO供与体1a〜4a、6a(10mM)をアセトニトリル又はメタノールで調製し、調製後すぐに使用した。上記ストック溶液から50μLを個々の熱平衡化ヘッドスペースバイアル中へ気密シリンジを使用して導入し、0.1mMの最終基質濃度を得た。次いで、N2Oの完全な分解とヘッドスペースとの平衡化を確実にするのに十分長くインキュベートした。次いで、サンプルロック付き気密シリンジを使用してヘッドスペース(60μL)をサンプリングし、5回連続で注入した。これを供与体あたり3個以上のバイアルで繰り返した。亜酸化窒素収率を平均し、基準品のアンジェリ塩と比較して報告した。HNOの化学的捕捉のために、HNO供与体添加に先立ってグルタチオン(10mMのPBS溶液100μL)を加え、0.2mMの最終グルタチオン濃度を得て、N2Oについてのヘッドスペースサンプリングを上記に述べたのと同様に実施した、結果を表4に示す。
表4. N2Oヘッドスペース分析の結果
化合物1a〜4a及び6aに関して提示したデータは、これらのN置換ヒドロキシルアミンのHNO産生能は脱離基の性質に主に基づくことを示唆している。HNOを効率的に産生するには、安定したカルバニオン形成への推進力が他の非HNO生成反応経路のそれに上回らなければならない。
メルドラム酸誘導体1aに関して、ごく微量のN2Oしか観測されなかった。メルドラム酸(pKa=4.8)はpH7.4で完全にイオン化され、その2,2−ジメチル誘導体は生理学的条件下で約12時間の加水分解半減期を有するが、1H NMR分光法によって観測される主要生成物はアセトンであり、1aでは開環反応経路が優勢であることを示唆している。
1aと比較して、メルドラム酸誘導体2aでは、HNO収率の増加が観測された。しかしながら、依然としてアセトンが主要生成物であり、非HNO生成の開環反応経路が所望の経路と競合したままであることを示している。
1aと同様に、バルビツレート3aはHNOをほとんど生成しなかった。大規模な分解後、主要な有機副生物を単離してX線結晶解析によって同定し、pH7.4緩衝溶液では、バルビツレート3aが主に分子内転位を受けて化合物5になることを明らかにした(スキーム5)。
スキーム5. バルビツレート3aの主要反応経路
電子不足性のO−メチルオキシム基が、メルドラム酸誘導体1a及び2aからのHNO産生に及ぼしたプラスの影響を考慮して、バルビツール酸の環系における類似の置換について分析した。3a中のエチル基をバルビツレート4a中のO−メチルオキシムと交換することは、分解後に観測される高収率N2Oに反映されるように、HNOの産生にきわめて有利である(表4)。これ、及びHNOに対する公知の効率的トラップであるグルタチオンでクエンチさせることによって検証した他の前駆体について、HNOはN2O供給源として確認された。
4aの分解をPBS(pH7.4、室温)中で1H NMR分光法によってモニターすると、唯一の検出可能な有機副生物は、カルバニオン4bであった(図1A)。pKaを4.2と推定すると(図2)、この副生物は、中性pHで完全にイオン化している。O−メチルオキシム基によって影響されて、このpKaは、N,N−ジメチルバルビツール酸のそれ(pKa=4.7)よりやや低い。4aから4bへの分解の反応速度について、アニオン4bに特有の吸光度(λmax=261nm)を考慮して、UV−Vis分光法によってモニターした(図3A)。分解速度をpHの関数として分析すると、pH8付近の鋭い増加が明らかになる(図3B)。バルビツレート4aは、pH7.4及び37℃で約1分の半減期を有する(図3A)が、pH4.0及び室温では比較的安定であって、上記条件下での半減期は約1日である。
HNO産生についての上記アプローチの普遍性を実証するために、好適な炭素ベースの脱離基がある別のN置換ヒドロキシルアミンについて検証した。バルビツレート3a及び4aのように、ピラゾロン6a(化合物1a〜4aと同様に合成した)も、芳香族副生物(6b)の形成を利用して(スキーム4c)、pH7.4、37℃での半減期が約10分であるHNOを効率的に生成する(表4)。前駆体6aによって享けられる別の潜在的に実用的な利益は、HNOと共に形成される副生物6bが、卒中及び心臓血管系疾患の治療にすでに臨床使用されている強力な抗酸化剤であるエダラボンの誘導体であることである。
6aの分解について、4aのそれと同様に、PBS(pH7.4、室温)中で1H NMR分光法によって分析した(図1B)。この分析によって観測された唯一の有機副生物は、6bのsyn異性体(主)とanti異性体(副)であり(スキーム4c)、これら異性体の相対量は、高pHと低pHで変わらない。供与体6aでは、2a及び4aと同様に、NMR分析とX線結晶解析によって、すべてsynであることが観測されている。6b/6b−H+のpKaは、約6であると推定され(図2B)、O−メチルオキシム置換によってエダラボンのそれ(pKa=7)未満にシフトされ、pH7.4ではこの副生物のほとんどすべてがイオン化していることを示している。前駆体4aの場合と同様に、ピラゾロン6aの分解速度はきわめてpH依存性であり、ここではpH10付近に鋭い増加がある(図3C)が、6aはpH4.0ではずっと安定しており、室温の半減期が約25時間である。化合物6a、7a、8a、9a、10a、11a、及び12の半減期と、該化合物の副生物のpKaを表5に示す。
表5. 半減期と副生物のpKa
実施例3: 急性の心臓血管系効果
化合物4a及び6aの急性的な心臓血管系への効果について、スプラーグ・ドーリーラットへ注入速度100μg/kg/分で静脈内投与したときの圧容積(PV)曲線(ループ)分析によって検証した。負荷前変動によりPV系統図/相関図を作成し、血行動態指数をベースライン値と比較した。それぞれの被験物質を5匹のラットへ投与した。
ラットをペントバルビタール(約50mg/kg)の腹腔内(IP)投与で麻酔し、剃毛して、背殿位に置き、調整可能な小動物用ベンチレータ(Harvard Apparatus)で気管内に挿管して換気した(95% O2/5% CO2で、呼吸約90回/分、1回換気量約2.5mL)。実験の完了まで、大腿静脈に入れた留置カテーテルを介した持続的なペントバルビタール注入(有効にするには、約3〜5mg/kg/時間、IV)で麻酔状態を維持した。その後、単極誘導ECGを形成する経胸針電極を入れた。LV(左心室)の力学−エネルギー評価のために、右頚動脈を単離し、周囲組織より切り離して、2F高忠実度コンダクタンス/微圧計カテーテル(Millar Instruments)でカニューレ処置した。このカテーテルは、大動脈弁を横切ってLV室へ逆行し、左心室の圧及び容積を(伝導率より)同時に測定した。適切な大きさにしたバルーンカテーテル(蒸留水で満たす)を、大腿静脈を介して下大静脈の中へ入れて進めた;この閉塞器(occuluder)/バルーンの短時間の膨張を使用して、心筋の前負荷を急激に減少させる。一方、動脈圧を記録するには、2F高忠実度微圧計カテーテル(Millar Instruments)を大腿動脈に挿入して、腹大動脈の方へ進めた。最後に、被験物質の投与用に留置カテーテルを頚静脈の中へ入れた。
計装後、定常的な血行動態状態に達したら、短時間の大静脈閉塞によって(血管閉塞器の一過性の膨張による)左心室前負荷を急激に低下させ、一群の圧容積曲線/ループを作成し;3回まで閉塞を実施して、試験の間で血行動態の回復を可能にした。ベースラインの血行動態データの採取に続き、被験物質の注入を、注入速度100μg/kg/分にて;10μL/分で開始した。投薬の開始後ほぼ30分と45分で圧容積分析を再び実施した。
得られた左心室の圧容積データをオフラインで解析し(IOX/ECG Auto;EMKA Technologies)、心筋の収縮及びエネルギー状態を表す関係図を作成した。収縮期動脈血圧(SAP)、拡張期動脈血圧(DAP)、及び平均動脈血圧(MAP)を採取した。血圧(ESP、EDP、dP/dt 最大/最小、弛緩の時定数−τ[非ゼロ漸近線を伴う単一指数関数的減衰に基づく])及び容積(ESV、EDV、SV)のシグナルより左心室の力学的及び/又は幾何学的な指標を入手した。加えて、短時間の前負荷低下の間に生じる左心室の圧容積データ(PVループ)より、以下の測定値を導いた:
・圧容積面積(PVA)と1回仕事量(SW)。
・収縮末期圧容積関係(ESPVR)と拡張末期圧容積関係(EDPVR)。
・収縮末期圧と1回拍出量の相関性(大動脈弾性率、Ea)。
表6において標準誤差付きの平均値(平均±SEM)としてデータを提示する。
表6. スプラーグ・ドーリーラットにおける急性の心臓血管系効果
実施例4: 疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、化合物又は医薬組成物の能力を決定するための生体外(in vitro)モデル
心臓血管系の疾患又は病態
心臓血管系疾患の生体外モデルは、個体中の心臓血管系疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の能力を決定するために使用することもできる。心疾患の例示の生体外モデルを下記に記載する。
生体外モデルを利用すれば、化合物及び医薬組成物の血管弛緩特性を評価することができよう。単離したラット胸部大動脈環切片における等尺性張力を、非特許文献13に先に記載されたようにして測定することができる。と殺後すぐに大動脈環切片を切り出して、脂肪と付着組織を洗い流す。次いで、血管を個々の環切片(幅2〜3mm)に切断して、力変位変換器から組織浴に懸垂させる。環切片は、37℃で、以下の組成:118mM NaCl;4.6mM KCl;27.2mM NaHCO3;1.2mM KH2PO4;1.2mM MgSO4;1.75mM CaCl2;0.03mM Na2EDTA;及び11.1mMブドウ糖の重炭酸緩衝化クレブス−ヘンゼライト(K−H)溶液に浸し、21% O2/5% CO2/74% N2で持続的に灌流させる。すべての環切片に2gの受動負荷をかけ、実験を通してこのレベルで維持する。各実験の開始時にインドメタシン処理した環切片をKCl(70mM)で脱分極させ、その血管の最大収縮能を決定する。次いで、環を十分に洗浄してそのまま平衡化させる。後続の実験では、環をフェニレフリン(PE、3×10−8〜10−7M)で準最大的に(KCl応答の50%)収縮させ、0.1mM L−NMMAも加えて、eNOSと内因性NOの産生を阻害する。張力発生がプラトーに達した後、この血管浴へ化合物又は医薬組成物を累積的に加えて、張力に対する効果をモニターする。
生体外モデルを利用して、心筋における発生力及び細胞内カルシウムの変化における、化合物及び医薬組成物の効果を決定することができる。発生力と細胞内カルシウムは、非特許文献14に記載のように、正常又は疾病ラット(即ち、鬱血性心不全又は心肥大があるラット)由来のラット肉柱(trabeculae)において測定することができる。上記の実験では、ラット(スプラーグ・ドーリー、250〜300g)を使用する。このラットをペントバルビタール(100mg/kg)の腹腔内注射により麻酔して、心臓を胸骨正中切開によって露出させ、速やかに切除して解剖皿に入れる。大動脈にカニューレ処置し、95% O2及び5% CO2で平衡化した解剖用クレブス−ヘンゼライト(H−K)溶液(約15mM/分)で心臓を逆向きに灌流する。解剖用K−H溶液は、室温(21〜22℃)で、以下より構成される:120mM NaCl、20mM NaHCO3、5mM KCl、1.2mM MgCl2、10mMブドウ糖、0.5mM CaCl2、及び20mM 2,3−ブタンジオンモノオキシミン(BDM)、pH7.35〜7.45。心臓の右心室由来の肉柱を切断して力変換器とモーターアームの間に載せ、通常のK−H溶液(KCl、5mM)にて約10ml/分の速度で表面灌流し、0.5Hzで刺激する。筋肉の寸法は、解剖顕微鏡(×40、解像度約10μm)の接眼レンズ中の較正レチクルで測定する。
力変換器システムを使用して力を測定し、mN/断面積mm2で表す。レーザー回折法によって、サルコメア(筋節)の長さを測定する。実験を通して、休止サルコメア長を2.20〜2.30μmに設定する。
細胞内カルシウムは、先の研究(Gao et al., 1994; Backx et al., 1995; Gao et al., 1998)に記載されたように、fura−2の遊離酸型を使用して測定する。fura−2カリウム塩を1個の細胞中へイオン泳動的に微量注入し、そのまま筋肉全体に(ギャップ結合を介して)拡散させる。電極の先端(直径約0.2μm)をfura−2塩(1mM)で満たし、電極の残りは150mM KClで満たす。非刺激筋肉中の表層細胞中への上首尾な穿刺の後、5〜10nAの過分極電流を約15分間持続的に通す。380及び340nmで励起させることによって、Fura−2落射蛍光を測定する。蛍光は、光電子倍増管によって510nmで採取する。光電子倍増管の出力を採取してデジタル化する。リアノジン(1.0μM)を使用して定常状態の活性化を可能にする。リアノジンに15分間曝露後、変動する細胞外カルシウム(0.5〜20mM)でその筋肉を10Hzで刺激することによって、様々なレベルの強直化を瞬時に(約4〜8秒)誘発する。実験はいずれも室温(20〜22℃)で実施する。
虚血/再灌流が関与する疾患又は病態
生体外モデルは、個体中の虚血/再灌流障害が関与する疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の能力を決定するために使用することもできる。
癌
非特許文献15に記載のような周知の方法により、腫瘍細胞の生体外増殖アッセイを使用して、本明細書に記載の化合物の抗腫瘍活性を評価することができる。
適切な細胞株の細胞、例えばヒト乳癌細胞株MCF−7を、96ウェル組織培養マイクロタイタープレートに約4000個/ウェルで播いて一晩インキュベーションする。被験化合物の10倍希釈系列溶液を加えて、この細胞を72時間インキュベートする。CellTiter−GloTM発光細胞生存度アッセイ(プロメガ;ウィスコンシン州マジソン)を使用して、細胞生存度を測定する。細胞増殖を50%阻害するのに必要とされる薬物の濃度としてIC50を測定する。
実施例5: 疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、化合物及び医薬組成物の能力を決定するための生体内及び/又は体外(ex vivo)モデル
心臓血管系の疾患又は病態
心臓血管系疾患の生体内(in vivo)モデルも、個体中の心臓血管系疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の能力を決定するために使用することができる。心疾患の例示の動物モデルを下記に記載する。
対照(正常)犬において、化合物又は医薬組成物で得られる生体内心臓血管系効果を評価することができる。この試験は、既報(非特許文献16)のように、意識下の血行動態分析及び血液サンプリング用に慢性的に器具装着した成体(25kg)雑種(雄性)犬において実施する。左心室中の微圧計変換器は圧力をもたらし、一方で右心房及び下行大動脈のカテーテルは、流体圧力及びサンプリングの導管を提供する。心内膜のソノマイクロメーター(前後、中隔−外側)が短軸寸法を測定し、下大静脈周囲の含気性閉塞器により、圧関連分析用の前負荷操作が容易になる。心外膜ペーシングリードを右心房上に配置し、長期ペースメーカーへ連結した右心室自由壁上に別の対を配置して、迅速なペーシングの心不全を誘発する。10日間の回復の後で、ベースライン洞調律及び心房ペーシング(120〜160bpm)にて動物を評価する。測定値には、心臓力学についての意識下血行動態記録が含まれる。
本明細書に記載の化合物を健常な対照犬へ1〜5μg/kg/分の用量で投与し、生じる心臓血管系データを入手する。
本明細書に記載の化合物が鬱血性不全の心臓において心血行動態を改善することの実証: ベースライン条件下でのプロトコールを完了した後、既報(非特許文献16)のように、頻回ペーシング(210bpm×3週間、240bpm×1週間)により鬱血性心不全を誘発させる。簡潔には、拡張末期圧とdP/dtmaxを毎週測定して、心不全の進行をモニターする。動物が2倍より高いEDPの上昇とベースラインより50%以上大きいdP/dtmaxを示したとき、それらは、鬱血性心不全試験への準備ができたとみなされる。
被験化合物及び医薬組成物についての数値は、対照及び心不全の調製動物(preparations)それぞれにおいて、血液量回復のない場合とある場合で、15分間の持続的な静脈内点滴(2.5又は1.25μg/kg/分)の後で入手する。比較のために、心不全調製動物においてASを用いて、同じ血行動態測定値を入手しておく。
虚血/再灌流が関与する疾患又は病態
虚血/再灌流の体外モデルは、個体中の虚血/再灌流障害が関与する疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、本明細書に記載の化合物の能力を決定するために使用することもできる。虚血/再灌流障害の例示の体外モデルを下記に記載する。
雄性ウィスターラットを同じケージに収容して、水道水と標準齧歯動物飼料へ自由にアクセスさせる。各動物をヘパリン処理(2,500U、筋注)の10分後に、1g/kgのウレタンの腹腔内注射で麻酔させる。胸を切開し、心臓を速やかに切除し、氷冷緩衝溶液に入れて秤量する。単離したラット心臓に灌流装置を取り付け、酸素添加した緩衝溶液で37℃にて逆向きに灌流する。この心臓に、非特許文献17及び非特許文献18において先に記載のように器具を装着させる。流量を一定に維持(およそ9mL/分/g湿重量)し、85〜90mmHgの典型的な冠灌流圧に達する。大動脈カニューレに接続した50mLシリンジを使用し、2つの灌流ポンプ(テルモ社、東京、日本)の1つを利用して流速の10%の一定割合を適用する。緩衝液のみを含有するシリンジから、心臓において所望される最終濃度の10倍の濃度でビヒクルに溶解させた薬物(本明細書に記載の化合物又は医薬組成物)を含有する他のポンプのシリンジへスイッチすることによって、薬物の適用を実施する。左心室壁中の小穴によりテベシウス静脈流の漏出を可能にし、左心室の中へ塩化ポリビニルバルーンを配置して、左心室圧(LVP)の記録用に電気血圧計へ接続する。心臓を電気的に280〜300bpmでペーシングし、温度制御チャンバ(37℃)に保つ。冠灌流圧(CPP)及び冠灌流量を、灌流ラインに沿って配置した第2の電気血圧計及び電磁流量プローブでそれぞれモニターする。TEAC R−71レコーダーを使用して左心室圧、冠灌流量、及び冠灌流圧を記録し、1000Hzでデジタル化し、DataQ-Instruments/CODASソフトウェアでオフライン解析し、心収縮の間のLVPの最大増加率(dP/dtmax)の定量を可能にする。
心臓は、95% O2と5% CO2でガス注入した、以下の組成のクレブス−ヘンゼライト溶液で灌流する:17.7mM 重炭酸ナトリウム、127mM NaCl、5.1mM KCl、1.5mM CaCl2、1.26mM MgCl2、11mM D−ブドウ糖に、5μg/mL リドカインを添加。
被験化合物又は医薬組成物は、使用直前に緩衝液に希釈する。心臓をそのまま30分間安定させ、ベースライン変数を記録する。典型的には、冠灌流量を最初の10分以内に調整し、その後一定に保つ。30分の安定化の後、心臓を処理群の1つへ無作為に割り当て、30分の全域的なノーフロー虚血に処し、その後30分再灌流する(I/R)。虚血期の始めに心臓のペーシングを止め、再灌流の3分後に再スタートさせる。
対照群の心臓は、安定化の後でさらに29分間、緩衝液で灌流される。処理群の心臓は、被験化合物又は医薬組成物へ曝露する(例えば、1μMの最終濃度で約20分間、その後10分の緩衝液洗浄期間)。
すべての心臓において、虚血の開始時にペーシングを中断し、再灌流の3分後に再スタートさせる。単離した心臓調製物は経時的に(典型的には、2〜2.5時間の灌流後)劣化する可能性があるので、再フローの期間は30分に制限し、結晶性の灌流液によって生じる心機能の影響を最少にし、他の報告と一致させる。
心室機能の評価: 最大発生LVPを得るために、心室内バルーンの容積は、非特許文献18及び非特許文献19に報告されているように、安定化期間の間は10mmHgの拡張末期LVPに調整する。I/Rプロトコールによって誘発される発生LVP、dP/dtmax、及び拡張末期値の変化を継続的にモニターする。虚血期間終了前の拡張末期LVP(EDLVP)と虚血前状態の間のそれとの差を、拘縮発生の程度の指標として使用する。再灌流の間の発生LVP及びdP/dtmaxの最大回復を、それぞれの虚血前の数値と比較する。
心筋損傷の評価: 酵素放出は、不可逆な細胞損傷へまだ進行していない重篤な心筋損傷の尺度である。肺動脈を介して右心室へ挿入したカテーテルで冠流出液の試料(2mL)を吸引する。試料を採取するのは、虚血の直前と、再灌流3、6、10、20、及び30分の時点である。先に非特許文献20に記載のようにして、LDH放出を測定する。再フロー期間全体の累積値としてデータを表す。
LDH放出によって測定された心筋損傷に関連するデータを裏付けるために、梗塞領域についても盲検形式で評価する。試験経過の最後(30分の再灌流)の時点でそれぞれの心臓を灌流装置より速やかに取り外して、そのLVを円周2〜3mmの薄片に切断する。非特許文献21に記載のように、ニトロブルーテトラゾリウムの0.1%リン酸緩衝溶液中で37℃において15分のインキュベーション後、非染色の壊死組織を染色された生組織から分離する。生組織と壊死組織の領域は、この心臓の出所を知らない独立した観察者によって慎重に分離される。次いで、壊死組織と非壊死組織の重さを測定して、壊死の大きさを左心室全体の大きさの百分率として表す。
データは、事後t検定のボンフェローニ補正を伴うANOVAのような統計学的手法に付すことができる。
癌
本明細書に記載の化合物の抗癌活性は、非特許文献15及び非特許文献22に記載の方法を用いて、生体内マウス異種移植片モデルを使用して評価することができる。
下脇腹への皮下注射によって、マウスに適切な腫瘍細胞を接種する。1〜3週後、腫瘍が約50〜60mm3の平均体積に達したときに、療法を開始することができる。腫瘍の寸法をデジタルノギスで測定して腫瘍体積を計算する。被験化合物の抗腫瘍効果は、試験群の腫瘍サイズと対照群のそれとの比較によって評価する。
実施例6: 生体内動物試験(急性処置、静脈内注入)
本実施例では、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、肺動脈圧を低下させる効力を実証する。
ケタミン/キシラジン(80/10mg/kg)の筋肉内注射によりラット(250〜250g)を麻酔する。追加の麻酔が必要とされる場合は、半量(ケタミン40mg/kg、キシラジン5mg/kg)を与える。体温をほぼ37℃に維持するように設定した加熱パッドの上に動物を置く。実験を通して体温をモニターする。意識が失われたらすぐに、圧力変換器を大腿動脈の中へ挿入して動脈血圧を測定する。液体充填カテーテルを、右頚動脈を通して肺動脈の中へ挿入し、圧力変換器を介して肺動脈圧を測定する。カニューレを投薬用に左頚動脈の中へ配置する。
この最終処置のおよそ3週間前、モノクロタリンを単回皮下注射(60mg/kg)により投与する。本明細書に記載の化合物の試験を開始するには、30mmHgより高いベースライン肺動脈圧が必要とされる。ニトロキシル供与体又は本明細書に記載の化合物又は医薬組成物を、用量増加のやり方で、10〜300μg/kg/分の用量で20分間隔にて静脈内投与する。MAP(平均動脈圧)、SAP(収縮期動脈圧)、DAP(拡張期動脈圧)、HP(心拍数)、MPAP(平均肺動脈圧)、SPAP(収縮期肺動脈圧)、DPAP(拡張期肺動脈圧)を含めた血行動態指数を測定する。被験化合物の結果を図1、図2、及び図3に例示する。
最終手順では、外科的な器具装着とおよそ10分の投薬前平衡化期間の後で、被験化合物又は医薬組成物の溶液を頚静脈カテーテル経由で注入する。実験の最後に、ラットをペントバルビタール過量投与により麻酔下で安楽死させる。
実施例7: 生体内動物試験(急性処置、静脈内注入又は吸入投与)
本実施例は、低酸素症誘発性PHを有するイヌにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、肺動脈圧を低下させる効力を実証する。
健常犬(10〜15kg)をペントバルビタール(20〜40mg/kg、静脈内注射)で麻酔し、流速5〜10mg/kg/時間のペントバルビタール持続注入によって麻酔を維持する。気管切開術によりイヌに挿管して人工的に呼吸させる(吸気酸素と呼気CO2をモニターしながら)。用量投与と動脈血圧の記録のために左大腿静脈及び動脈をカニューレ処置する。右頚静脈を肺動脈圧カテーテル(スワンガンツカテーテル)でカニューレ処置し、肺動脈圧(PAP)と肺動脈楔入圧(PWP)をともに測定する。このカテーテルは、5mLの冷生理食塩水を迅速注射した後の熱希釈技術による心拍出量の測定にも使用する。実験を通して心電図をモニターする。
ベースライン及び対照の測定の間、吸気酸素を40%に維持する。呼吸酸素を10%(FiO2=10%)まで低下させるのに十分な速度で窒素を呼吸ガスに加えることによって低酸素症を誘発させる。それぞれの低酸素状態を15〜30分間維持してから、正常酸素圧(FiO2=40%)の対照状態に戻す。各用量の被験化合物又は医薬組成物を30分の低酸素状態の間に静脈内投与し、その後の正常酸素状態の間は、次の用量が投与されるまでどの薬物も注入しない。被験化合物又は医薬組成物を1〜100μg/kg/分の範囲で静脈内投与し、様々な血行動態指標を記録する。あるいは、この実験では、それぞれの低酸素期間の間に、5〜10分の時間帯に0.1〜1g/kgの用量レベルで、吸入ネブライザーを用いて被験化合物又は医薬組成物を投与する。
実施例8: 生体内動物試験(慢性処置、静脈内持続注入)
本実施例は、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、疾患の進行を遅延させる効力を実証する。
ラット(200〜250g)に、圧力変換器を装着した遠隔測定送信器を外科的に移植する。この送信器アセンブリーを体内に固定し;液体充填カテーテルを頚静脈の中に入れ、圧力変換器の先端は、右心室圧(RVP)データの採取のために右心室中に定位する。加えて、投薬の目的のために、シャム群を例外としてすべての動物に大腿静脈カニューレを移植する。
ビヒクル−対照動物へ皮下注射によってモノクロタリン(MCT)を投与する。MCT注射の1週間後、ビヒクル−対照動物に生理食塩水又は低用量若しくは高用量の被験化合物又は医薬組成物を静脈内持続注入によって2週間投与する。被験物質とビヒクル対照物質は外部ポンプによって投与する。動物に対して週1回の臨床観察を実施する。
心臓血管系の評価では、ホームケージ中で自由に運動させた動物を用いてRVPデータを採取する。この動物について、MCT投与前の少なくとも24時間モニターする。RVPは2週間の注入終了後24時間にもモニターし、少なくとも24時間モニターする。試験終了時にすべての動物を剖検する。両肺と肺動脈、心臓、及びそれぞれ個々の房室の重量について評価する。心臓、LV、RVの重量と、その体重比を報告する。各動物由来の小肺動脈について、中膜肥厚、内膜新生、及び平滑筋肥大を評価する。
実施例9: 生体内動物試験(慢性処置、経口投与)
本実施例は、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、疾患の進行を遅延させる効力を実証する。
本実験の全般の方法論は、上記の実施例7のそれと同様である。1つの違いは、投与経路が経口であって、投薬レジメンが0.1〜1g/kgの用量レベルで1日1回〜4回であることである。
実施例10: 生体内動物試験(慢性処置、静脈内持続注入)
本実施例は、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、疾患の進行を逆転させる効力を実証する。
本試験では、ラット(200〜250g)に、圧力変換器を装着した遠隔測定送信器を外科的に移植する。この送信器アセンブリーを体内に固定し;液体充填カテーテルを頚静脈の中へ入れ、圧力変換器の先端は、右心室圧(RVP)データの採取のために右心室中に定位する。加えて、投薬の目的のために、シャム群を例外としてすべての動物に大腿静脈カニューレを移植する。
ビヒクル及び対照物質、モノクロタリン(MCT)を皮下注射により投与する。MCT注射の3週間後、動物に生理食塩水又は低用量若しくは高用量の被験化合物又は医薬組成物を静脈内持続注入によって3週間投与する。被験化合物又は医薬組成物とビヒクル対照物質は外部ポンプによって投与する。動物に対して週1回の臨床観察を実施する。
心臓血管系の評価では、ホームケージ中で自由に運動させた動物を用いてRVPデータを採取する。この動物について、MCT投与前の少なくとも24時間モニターする。RVPは、2週間の注入終了後少なくとも24時間の間もモニターする。試験終了時にすべての動物を剖検する。両肺と肺動脈、心臓、及びそれぞれ個々の房室の重量について評価する。心臓、LV、RVの重量と、その体重比を報告する。各動物由来の小肺動脈について、中膜肥厚、内膜新生、及び平滑筋肥大を評価する。
実施例11: 生体内動物試験(慢性処置、経口投与)
本実施例は、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、疾患の進行を逆転させる効力を実証する。
投与経路が経口であって、投薬レジメンが0.1〜1g/kgの用量レベルで1日1回〜4回であることを除けば、全般の方法論は、実施例9のそれと同様である。
実施例12: 生体内動物試験(慢性処置、吸入投与)
本実施例は、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、疾患の進行を遅延させる効力を実証する。
投与経路が吸入によるものであって、投薬レジメンが0.1〜1g/kgの用量レベルで1日1回〜4回であることを除けば、全般の方法論は、実施例7のそれと同様である。
実施例13: 生体内動物試験(慢性処置、吸入投与)
本実施例は、モノクロタリン誘発性PHを有するラットにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、疾患の進行を逆転させる効力を実証する。
投与経路が吸入によるものであって、投薬レジメンが0.1〜1g/kgの用量レベルで1日1回〜4回であることを除けば、全般の方法論は、実施例7のそれと同様である。
実施例14: 生体内動物試験(急性処置、静脈内注入及び吸入投与)
本実施例は、トロンボキサン誘発性PHを有するイヌにおいて、本明細書に記載の化合物及び医薬組成物の、肺動脈圧を低下させる効力を実証する。
トロンボキサンA2受容体アゴニスト類似体(例えばU46619、Tocris Bioscience)の持続注入によって、実験的PHを誘発する。麻酔されて人工呼吸器を装着されたイヌの収縮期肺動脈圧(PAP)を40mmHgに維持するように、トロンボキサンA2受容体アゴニスト類似体の注入速度(0.1〜1mg/kg/分)を調整する。用量投与と動脈血圧の記録のために左大腿静脈及び動脈をカニューレ処置する。右頚静脈を肺動脈圧カテーテル(スワンガンツカテーテル)でカニューレ処置し、肺動脈圧(PAP)と肺動脈楔入圧(PWP)をともに測定する。このカテーテルは、5mLの冷生理食塩水を迅速注射した後の熱希釈技術による心拍出量の測定にも使用する。実験を通して心電図をモニターする。
血行状態の安定した定常状態が達成されたらすぐに、様々な用量の被験化合物又は医薬組成物を1〜100μg/kg/分の範囲の投薬速度で静脈内投与し、様々な血行動態指標を記録する。あるいは、この実験では、5〜10分の時間帯に0.1〜1g/kgの用量レベルで、吸入ネブライザーを用いて被験化合物又は医薬組成物を投与する。
実施例15: 生体内ヒト試験(急性治療、静脈内注入及び吸入投与)
本実施例は、様々な原因の肺高血圧症があるヒト被験者において、肺動脈圧を低下させるHNO供与体の効力を実証する。
本試験では、様々な原因の肺高血圧症患者(男性又は女性)を選択する。右心カテーテル法(例えば右動脈圧、平均肺動脈圧、心係数)と血液ガスプロファイリングを利用して収集した様々な血行動態指標によって、該患者のベースライン血行動態特性について評価する。連続心電図検査を使用して心律動をモニターし、血圧測定用カフを使用して動脈圧をモニターする。一酸化窒素(NO)を吸入によって使用し、患者について、肺高血圧症の可逆性を試験する。次いで、血行動態指標を再評価する。NO送達の中止とともにすべての指標がベースラインへ復帰し、ベースライン状態が確立されたらすぐに、様々な用量のHNO供与体を1〜100μg/kg/分の範囲の投薬速度で(持続投薬又は用量増加形式のいずれかで)静脈内投与し、様々な血行動態指標を記録する。あるいは、この実験では、5〜10分の時間帯に0.1〜1g/kgの用量レベルで、吸入ネブライザーを用いてHNO供与体を投与する。この注入期間の間の様々な時点で血行動態指標を評価する。数名の患者は、二重盲検無作為化形式において、HNO供与体の代わりにプラセボを受ける。この試験の様々な期間の間に採取したデータより、肺血管及び全身血管の抵抗を算出する。
実施例16: 疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、化合物又は医薬組成物の能力を決定するためのヒト臨床試験
本明細書に記載の化合物及び医薬組成物のいずれも、ヒトにおいて試験し、疾患又は病態を治療する、その発現及び/又は発症を予防する及び/又は遅延させる、その化合物又は医薬組成物の能力を決定することもできる。これらの臨床試験では、標準的な方法を使用することができる。1つの例示的方法では、本明細書に記載の化合物を標準プロトコールで使用する療法の耐容性、薬物動態学、及び薬力学の第I相試験に、鬱血性心不全のような本明細書に記載の疾患又は病態を有する個人を登録する。次いで、第II相の二重盲検無作為化比較試験を実施し、標準プロトコールを使用するときの該化合物の効力を決定する。
当業者には、本発明の具体的な態様が、上記及び下記に示した態様の1つ、いくつか、又は全部に対して、あらゆる組合せで向けられ得ることが明らかであろう。
本発明について、理解の明確化の目的で例示と実施例によりやや詳しく記載したが、当業者には、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な変更をなし得、種々の等価物を代用し得ることが明らかである。故に、本明細書の記載及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
本明細書に開示するすべての参考文献、刊行物、特許、及び特許出願は、本明細書にその全体が援用される。