JP2015229630A - 水素発生合金、水素発生合金の製造方法、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】高価なレアメタルの使用量を大幅に削減可能とする一方、反応金属材の含有量を著しく高めて、低コストで水素発生量を増大させることが可能な水素発生合金、水素発生合金の製造方法、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材の表面に常温で液体のガリウム・インジウム・スズ共晶合金を付着させて不動態皮膜溶解層を形成し、前記不動態皮膜溶解層から前記粒状金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層を形成させてなる水素発生合金の製造方法、水素発生合金、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システムを提供する。
【選択図】図1
【解決手段】 アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材の表面に常温で液体のガリウム・インジウム・スズ共晶合金を付着させて不動態皮膜溶解層を形成し、前記不動態皮膜溶解層から前記粒状金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層を形成させてなる水素発生合金の製造方法、水素発生合金、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システムを提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は水素発生材及び水素発生方法に関し、特に、水素発生合金、水素発生合金の製造方法、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システムに関する。
近年、水から水素を発生させる様々な技術が提案されている。特許文献1には、インジウム・ガリウム合金に拡散させたアルミニウム金属等を水と接触させるようにした水素ガス生成用組成物及び水素ガス発生方法が開示されている。特許文献2には、アルミニウムにガリウムを作用させて打撃粉砕して得た微粒子と水とを反応させて水素を発生させるようにした水素発生材が開示されている。特許文献3には、スズ−ガリウム合金に、スズ−ガリウム合金基準にて合計量で0.1質量%以上で25質量%以下の、標準電極電位がガリウムより低いアルミニウム等の金属元素を添加してなる水素発生用合金とこれを利用した水素発生方法が開示されている。特許文献4には、常温で液体のガリウムにスズや銀の粉末を含有させた液状組成物に標準電極電位がガリウムより低いアルミニウム等の金属元素を添加してなる水素発生用合金が開示されている。
特許文献1の水素ガス生成用組成物では、容器に収納したガリウム・インジウム低融点合金に1〜5重量%の純アルミニウム金属を添加して水と反応させていた。水と反応して水素を発生する物質は飽くまでアルミニウム金属であるが、この方式では、アルミニウム金属の使用量が1〜5重量%と少量であるため、水素発生量が僅かであり、実用的ではなかった。しかも、ガリウム・インジウム合金は極めて高価なレアメタルを使用しているため、この合金をバルク状で使用した水素ガス生成用組成物はとても高価なものとなり、実用的ではなかった。
特許文献2で開示された水素発生材では、空気中に放置されたガリウム及び金属財の酸化を防止するため、無酸素室を利用していた。無酸素室内にガリウム金属容器を収納して、ガリウムの融点(29.8℃)以上の温度に加熱してガリウムを溶融していたため、余計なエネルギーコストがかかっていた。また、ガリウムが金属内に浸透するには長時間かかるため、アルミニウムを溶融ガリウムに長時間に亘って浸漬させていた。さらに、ガリウム金属容器から取り出したアルミニウムを打撃粉砕機により粉砕して微粒子を形成していた。こうした水素発生材の製造法はレアメタルとして高価なガリウムを大量消費し、さらには、複雑な作業工程と長時間の労働を必要とするため、製造価格が大幅に上昇する要因となっていた。
特許文献3で開示された水素発生用合金では、低融点のスズ−ガリウム合金に対して標準電位が異なるアルミニウム金属等の金属元素を添加することによって、中性の水でも水素を発生させることを可能としている。しかしながら、スズ−ガリウム合金に対する反応金属としての添加金属元素の使用量が僅かに5%と極めて少なく、添加金属元素の使用量を増加すると、水素発生効率が急激に低下していた。水素発生量は飽くまで添加金属元素の使用量によって定まるため、このように少ない添加金属元素の使用量では、水素発生量を増大させることができなかった。さらに、ガリウムは極めて高価なレアメタルであり、しかも、水素発生用合金におけるガリウム金属の含有量が極めて高いため、低コストにて水素を製造することはできず、実用的ではなかった。さらに、特許文献4で開示された水素発生用合金では、スズや銀の粉末を含有させたガリウム合金に金属アルミニウムを混合させているが、この方式では、アルミニウムの使用量は4%と極く僅かな比率にとどまっており、反応に寄与するのはアルミニウムであるため、水素発生量が極めて微量であり、実用性が低かった。しかも、ガリウム含有量が極めて高く、しかもこの金属は極めて高価であるため、低コストにて水素を製造することはできなかた。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、高価なレアメタルの使用量を大幅に削減可能とする一方、反応金属材の含有量を著しく高めて、低コストで水素発生量を増大させることが可能な水素発生合金、水素発生合金の製造方法、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1局面による水素発生合金は、アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材を備え、前記粒状金属材が常温で液体のガリウム・インジウム・スズ共晶合金からなる不動態皮膜溶解層と、前記不動態皮膜溶解層から前記粒状金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層とを備え、前記不動態皮膜溶解層と前記共晶合金拡散層とが大気中において前記粒状金属材の酸化を抑制していることを特徴とする。
本発明の第2局面による水素発生合金の製造方法では、アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材の表面に常温で液体のガリウム・インジウム・スズ共晶合金を付着させて不動態皮膜溶解層を形成し、前記不動態皮膜溶解層から前記粒状金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層を形成させることを特徴とする。
本発明の第3局面による水素発生カートリッジは、水供給口と水素吐出口とを有する容器内に請求項1及び2のいずれかに記載の水素発生合金を収納したことを特徴とする。
本発明の第4局面による水素製造装置は、水供給口と水素吐出口とを有する容器と、前記容器に収納された請求項1及び2のいずれかに記載の水素発生合金と、前記容器内の水素発生合金に水を供給する水供給装置とを備えることを特徴とする。
本発明の第5局面による水素製造方法は、請求項1及び2のいずれかに記載の水素発生合金に水を接触反応させることにより水素を発生させることを特徴とする。
本発明の第6局面による燃料電池システムは、水素が燃料として供給される陽極と、酸素が供給される陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された電解質膜とを有する燃料電池と、請求項5に記載の水素製造装置と、前記水素製造装置内の前記水素発生合金に水を供給する水供給装置とを備え、前記水素発生合金に含まれる粒状金属材と水との反応により発生する水素を燃料源とすることを特徴とする。
本発明によれば、極めて高価なレアメタルの使用量を大幅に削減可能とする一方、反応金属の含有量を高めて、低コストで水素発生量を著しく増大させることが可能水素発生合金、水素発生合金の製造方法、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システムを提供することが可能となる。
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態)
本発明の実施形態の水素発生合金10の製造方法につき、図1を参照して説明する。先ず、例えば、フッ素樹脂層等の非濡れ性内壁を有する回転ドラム(図示せず)にガラス、セラミック及び金属から選ばれた少なくとも一種のコア材12aからなる高濡れ性粒状担持体12と、常温で液体のガリウム・インジウム・スズの共晶合金を所定の体積比(例えば、10:1)で投入して回転ドラムをモータ駆動ローラその他の適切な駆動手段で回転駆動する。すると、高濡れ性粒状担持体12の表面に常温で液体のガリウム・インジウム・スズの共晶合金が均一に付着して共晶合金皮膜12bが形成されて共晶合金被覆粒状体12が得られる。
本発明の実施形態の水素発生合金10の製造方法につき、図1を参照して説明する。先ず、例えば、フッ素樹脂層等の非濡れ性内壁を有する回転ドラム(図示せず)にガラス、セラミック及び金属から選ばれた少なくとも一種のコア材12aからなる高濡れ性粒状担持体12と、常温で液体のガリウム・インジウム・スズの共晶合金を所定の体積比(例えば、10:1)で投入して回転ドラムをモータ駆動ローラその他の適切な駆動手段で回転駆動する。すると、高濡れ性粒状担持体12の表面に常温で液体のガリウム・インジウム・スズの共晶合金が均一に付着して共晶合金皮膜12bが形成されて共晶合金被覆粒状体12が得られる。
次に、常温で液体の共晶合金皮膜12bが形成され共晶合金被覆粒状体12と、アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材14とを所定体積比(例えば、4:6)で前記と同様に非濡れ性内壁を有する回転ドラム(図示せず)に収納する。次いで、この回転ドラムを回転駆動すると、共晶合金被覆粒状体12と粒状金属材14が混合接触しながら、回転移動する。この時、共晶合金被覆粒状体12の共晶合金皮膜12bの一部が粒状金属材14の表面に転着して不動態皮膜溶解層14aが形成される。不動態皮膜溶解層14aが形成された瞬間から、ガリウム・インジウム・スズ共晶合金は常温で粒状金属材14の内部に深く浸透拡散して行き、結晶粒界に無数の微細状共晶合金拡散層14bを形成する。ガリウム・インジウム・スズ共晶合金はこのように金属の不動態皮膜(酸化皮膜)を溶解し、表面処理後に該金属材を室温で大気中に放置しても金属酸化物の形成を抑制するとともに、室温において大気中で該金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層14bを形成する。
次に、粒状金属材14へのガリウム・インジウム・スズ共晶合金の転着工程が完了した後、共晶合金被覆粒状体12と粒状金属材14との混合物の体積に対してアルカリ性無機化合物粒子又は無水クエン酸(結晶クエン酸)粒子16を所定体積比(例えば、9:1)で回転ドラムに投入する。粒状金属材14をマグネシウム金属で構成して食品(飲料水)の水素発生用として利用する場合には、無水クエン酸(結晶クエン酸)粒子を用いる。一方、産業用の水素発生用に本発明の水素発生合金を利用する場合には、アルカリ性無機化合物粒子を用いる。
アルカリ性無機化合物粒子としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩などの粒子が挙げられる。アルカリ性無機化合物としては、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、特に酸化カルシウムが好ましい。アルカリ性無機化合物粒子は、その平均粒径が1〜50μmであることが好ましい。アルカリ性無機化合物粒子の平均粒径が1μm未満であると、水素発生時間が遅くなる傾向があり、50μmを超えると、水と激しく反応して発熱し、水を多く使用する傾向がある。アルカリ性無機化合物の含有量は、全水素発生剤組成物中に、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.2〜5重量%であり、より好ましくは0.5〜3重量%である。アルカリ性無機化合物の含有量が0.1重量%未満であると、初期の反応速度を向上させることができず、また、10重量%を超えると、発生した水素ガス中に多量にカルシウムイオンなどの不純物が含まれるからである。
次いで、回転ドラムを回転させると、隣接した粒状金属材14の隙間に形成された境界領域15において不動態皮膜溶解層14aに接触した状態でアルカリ金属水酸化物又は金属酸化物の粒状物質16が介在している。この際、これら混合物を公知のメッシュセパレータ等の適切な分離手段を利用して粒状金属材14とアルカリ金属水酸化物又は金属酸化物の粒状物質16との混合物から共晶合金被覆粒状体12を分離しても良い。この分離工程を効率的に行うため、共晶合金被覆粒状体12の外径は粒状金属材14の平均粒径よりも大きくなるように選定される(図1参照)。境界領域15に介在しているアルカリ金属水酸化物又は金属酸化物の粒状物質16に対して、好ましくは、粒状金属材が85%質量以上を含有していると良い。
水素発生合金10から分離した共晶合金被覆粒状体12を回収して、再度、初期の共晶合金担持工程で再利用して共晶合金皮膜層を形成した後に次工程で利用しても良い。或いは、共晶合金被覆粒状体12には共晶合金皮膜12bが残存しているため、粒状金属材14に共晶合金を補給することを目的として水素発生合金10に含ませた状態で利用しても良い。
高濡れ性粒状担持体12aとしては、濡れ性表面を有するものであれば、どのような素材でも良いが、低価格でしかも高い濡れ性を有する点から、好ましくは、直径0.5〜3mm程度のガラスビーズが用いられる。粒状金属材14としては、好ましくは、ガスアトマイズ法で急冷凝固することにより作製されたアルミニウムや機械的に削って形成したマグネシウムの粒子状粉末やこれらの合金を用い、針状粒子、円筒状(ペレット状)、球状、若しくは紡錘状粒状体が用いられる。アトマイズ法により作製された粒状金属材は、急冷凝固する際に、結晶粒が微細化して活性点となる粒界が増大して水との反応が促進される点で好ましい。粒状金属材14は平均粒径が、好ましくは、100μ〜3.0mm、さらに好ましくは、0.5〜2.0mmのものが用いられる。
ガリウム・インジウム・スズの低融点共晶合金は、常温(25〜28℃)で液体として存在し、毒性が低く、ハンドリング及び回収が容易である。この共晶合金は、金属材の不動態皮膜(酸化皮膜)を大気中において室温で溶解するだけでなく、大気中において室温で該金属材を放置しても該金属材の結晶粒界に浸透して無数の微細状共晶合金拡散層を形成する。この共晶合金拡散層によって金属材の結晶粒界においても酸化皮膜の発生が抑制される。このことは、後述の、実施例の結果から明らかなように、水素発生合金に水を接触させた際に、瞬時に激しい反応が開始して金属材が完全に反応して大量の水素が発生したことから証明された。この共晶合金は水とは反応しない。反応完了後の副生物をNaOH水溶液等のアルカリ水溶液に浸漬すれば、アルカリ水溶液の中で共晶合金液体として析出するのでリサイクルが容易である。従って、更なる水素生産の低コスト化を図れるメリットがある。
低融点共晶合金としては、好ましくは、表1に示されるものが挙げられる。
ガリウム・インジウム・スズ合金1はガリンスタン(商標)としても知られているが、ガリウム・インジウム・スズ合金は、好ましくは、55−75%Ga,15−25%In及び5−20%Snの組成を有する。
ガリウム・インジウム・スズ合金1はガリンスタン(商標)としても知られているが、ガリウム・インジウム・スズ合金は、好ましくは、55−75%Ga,15−25%In及び5−20%Snの組成を有する。
次に、本発明の実施形態による水素発生カートリッジ18を組み込んだ水素製造装置20について図2を参照しながら説明する。図2において、水素発生カートリッジ18は、水導入室22aと、水分配室22bと、カートリッジ収納室22cとを有するカートリッジケース22を備える。水導入室22aは水供給源(図示せず)に接続された水供給口24と、複数の水通路26とを有し、水分配室22bは水を分散させるための多孔質部材28を支持するための底部壁30を備えていて、底部壁30は開口部30aを有する。カートリッジ収納室22cには水素発生合金10が収納されている。水素発生合金10には、例えば、ビスマス・インジウム・スズ接着合金(例えば、48−52Bi;、17−20In;残部Sn:融点70.0〜77.7℃)その他の接着合金の粉末を拡散させてこの接着合金の融点以上に加熱溶融させて所定の円筒形状に形成しても良い。この接着合金は水素発生合金10と水との反応時には100℃以上に昇温した時に融解するため、水素発生合金10の性能を劣化させない。
図2において、水素発生合金10は第1反応部10aと、第2反応部10bとを有し、底部壁30の開口部30aから供給された水は第1反応部10aで金属材14と接触反応して水素を発生する。この時、高温の反応熱が発生して一部の水は水蒸気になるが、この水蒸気は第2反応部10bで金属材14と接触して水素H2が発生する。この水素は矢印Aで示すように水素発生合金10の底部から噴出する。カートリッジケース22は水素製造装置20のアウターケース32の内側に配置されたインナーケース34内に収納されるカートリッジケース22とインナーケース34との間には環状水素流路36が形成されている。アウターケース32の上部には水素吐出口38が配置される。水素発生合金10から吐出した水素は矢印Aを通過した後、環状水素流路36を経由して水素回収室40に流入し、そこから矢印Bで示すように水素吐出口38を介して外部に取り出される。
次に、本発明の実施形熊の燃料電池システムについて図3を参照しながら説明する。図3において、燃料電池システム50は、水素が燃料として供給される陽極52と、コンプレッサ54により圧縮空気が酸素として供給される陰極56と、陽極52と陰極56との間に配置された電解質膜58とを有する燃料電池60と、陽極52の排気ライン52aに接続されていて水素透過膜62aが収納されたセパレータ62と、水素製造装置20と、水素製造装置内の水素発生合金10(図2参照)に水を供給する水供給装置64とを備え、水素発生合金に含まれる粒状金属材と水との反応により発生する水素を燃料源とする。セパレータ62により排ガスから回収された水素はリサイクルライン66を介して水供給ライン68を通過する共給水と混合されて水素製造装置20に還流される。
以下、本発明の実施例に基づき説明する。
水素発生合金10の製造において、高濡れ性粒状担持体12として平均粒径0.5mmのガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製ガラスビーズ品名:GB503)100gと常温で液状の低融点合金(ガリウム・インジウム・スズの低融点共昌合金Ga:In:Sn=68.5%:21.5%:10%)(米国ロロメタル社製ガリンスタン)10gを投入して密栓した後、該プラスチック容器を約5分間回転させた。このとき、ガラスビーズが容器内で回転移動し、該容器内に投入したガリンスタンの全てがガラスビーズの表面に付着して低融点合金皮膜12bが均一に形成されて、ガラスビーズがまるで白銀色に輝いていた。ガリンスタンはガラスビーズに対して重量比で約10%の添加量であったにもかかわらず、ガリンスタンの全量がガラスビーズの表面に完全に付着していて均一な低融点合金皮膜12bが形成された共晶合金被覆粒状体12が得られた。
次に、粒状金属材14としてガスアトマイズ法で急冷凝固することにより作製された、平均粒径0.2〜2mmの金属アルミニウム粒状体(ミナルコ(株)製:製品名#220SP)を共晶合金被覆粒状体12に対して質量比で4:6の割合で前記容器内に投入して前記容器を回転させた。容器の回転開始後、約5分後に、容器を開栓したところ、共晶合金被覆粒状体12のガリンスタン液体金属がアルミニウム粒状体14の表面に転着してアルミニウム粒状体14の表面に均一に不動態皮膜溶解層14aが形成されていた。不動態皮膜溶解層14に含まれるガリンスタン共晶合金はアルミニウム粒状体14の内部にまで常温で浸透拡散し、結晶粒界に無数の微細状共晶合金拡散層14bが形成されていた。このことは、容器から取り出したアルミニウム粒状体14の一部に指で軽く圧力をかけたところ、容易に平均粒径10μm〜50μmの微粒子サイズにまで細かく粉砕できたことから推測された。
粒状金属材14へのガリンスタン共晶合金の転着工程が完了した後、ガリンスタン被覆粒状体12とアルミニウム粒状体14との混合物に粒状物質16として酸化カルシウム粉末を前記混合物の体積に対して約5%の量を前記容器に投入して容器を回転させた。容器の回転開始後、役3分後に、これら混合物からガリンスタン被覆粒状体12を分離して、アルミニウム粒状体14と酸化カルシウム粉末からなる組成のものを水素発生合金として作製した。こうして得たサンプルの水素発生合金10gをステンレス容器にいれて室温24℃でミネラルウオータを徐々に添加したところ、水の添加と同時に直ぐに、激しい反応が開始して発熱しながら大量の水素が連続的に発生した。水分解反応が停止した段階で、ステンレス容器内の副生物を目視したところ、金属アルミニウムは全て完全に反応していて副生物は最初の銀白色から灰色の酸化アルミニウムが残存していた。この反応結果を通じて、ガリウム・インジウム・スズの低融点共昌合金で表面処理した反応金属材を室温に放置しても金属酸化物の形成を抑制しており、水を接触させた際には全て金属アルミニウムが反応して水素を発生させていることが分かった。この実施例は、反応性金属として金属アルミニウムの場合について説明したが、本発明は、必ずしも、この反応性金属に限定されるものではなく、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた粒状金属材にも適用可能であることは言うまでもない。
本発明の水素発生合金によれば、ガラスビーズ等の粒子状コア材の濡れ性表面に低融点合金が容易に付着して低融点合金皮膜を形成するため、極めて高価な低融点合金の使用量を削減して大幅な低コスト化が実現可能となる。しかも、水素発生合金に占める反応性金属の割合が85%以上と高いため、水素発生量を飛躍的に増大させることができる。また、実際の利用に当たっては、水素発生合金をカートリッジに充填しておけば、該カートリッジを常温で安全に保管・貯蔵が可能なため、極めてハンドリングが容易である。原料水としては、水道水、ミネラルウオータ、蒸留水、純水、過酸化水素、海水、工業用水、河川水、湖水、雨水、排水、下水、廃液等も利用可能である。水素発生合金により生産した高純度水素(5N〜8N)は極めて安価であるため、工業用途で様々な分野に利用可能である。オンデマンド・オンサイトでいつでも必要量の水素を生産可能なため、設備コストや輸送コストも大幅な低減が可能である。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に示された構成に限定されず、様々な変更が可能である。例えば、液状共晶合金を付着させたガラスビーズを水素発生合金から分離していたが、水素発生合金に含ませたまま水と接触させても良い。
10...水素発生合金
12...高濡れ性粒状担持体
14...粒状金属材
14a...不動態皮膜溶解層
14b...微細状共晶合金拡散層
18...水素発生カートリッジ
20...水素製造装置
60...燃料電池
62...セパレータ
64...水供給装置
12...高濡れ性粒状担持体
14...粒状金属材
14a...不動態皮膜溶解層
14b...微細状共晶合金拡散層
18...水素発生カートリッジ
20...水素製造装置
60...燃料電池
62...セパレータ
64...水供給装置
Claims (7)
- アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材を備え、前記粒状金属材が常温で液体のガリウム・インジウム・スズ共晶合金からなる不動態皮膜溶解層と、前記不動態皮膜溶解層から前記粒状金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層とを備え、前記不動態皮膜溶解層と前記共晶合金拡散層とが大気中において前記粒状金属材の酸化を抑制していることを特徴とする水素発生合金。
- 前記ガリウム・インジウム・スズ共晶合金が重量比で、55−75%Ga,15−25%In及び5−20%Snの組成を有し、前記粒状金属材が85質量%以上含有し、残部が前記共晶合金であることを特徴とする請求項1に記載の水素発生合金。
- アルミニウム、マグネシウム、シリコン及び亜鉛から選ばれた少なくとも一種の粒状金属材の表面に常温で液体のガリウム・インジウム・スズ共晶合金を付着させて不動態皮膜溶解層を形成し、前記不動態皮膜溶解層から前記粒状金属材の結晶粒界に延びる無数の微細状共晶合金拡散層を形成させることを特徴とする水素発生合金の製造方法。
- 水供給口と水素吐出口とを有する容器内に請求項1及び2のいずれかに記載の水素発生合金を収納したことを特徴とする水素発生カートリッジ。
- 水供給口と水素吐出口とを有する容器と、前記容器に収納された請求項1及び2のいずれかに記載の水素発生合金と、前記容器内の水素発生合金に水を供給する水供給装置とを備えることを特徴とする水素製造装置。
- 請求項1及び2のいずれかに記載の水素発生合金に水を接触反応させることにより水素を発生させることを特徴とする水素製造方法。
- 水素が燃料として供給される陽極と、酸素が供給される陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された電解質膜とを有する燃料電池と、
請求項5に記載の水素製造装置と、前記水素製造装置内の前記水素発生合金に水を供給する水供給装置とを備え、
前記水素発生合金に含まれる粒状金属材と水との反応により発生する水素を燃料源とすることを特徴とする燃料電池システム。
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JP2014129648A JP5753987B1 (ja) | 2014-06-06 | 2014-06-06 | 水素発生合金、水素発生合金の製造方法、水素発生カートリッジ、水素製造装置、水素製造方法及び燃料電池システム |
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