JP2015229187A - 消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法、溶接装置 - Google Patents
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Abstract
Description
この消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法において、前記初期溶接電流の大きさが100(A)以上且つ300(A)以下となる範囲から選択され、前記定常溶接電流の大きさが350(A)以上且つ550(A)以下となる範囲から選択されることを特徴とすることができる。
また、前記設定期間が25(msec)以上且つ700(msec)未満となる範囲から選択されることを特徴とすることができる。
さらに、前記初期溶接電流を供給する工程と前記定常溶接電流を供給する工程との間に、立ち上がり傾斜を設ける工程を有することを特徴とすることができる。
さらにまた、前記立ち上がり傾斜を設ける工程では、当該立ち上がり傾斜を1500(A/100msec)以下に設定することを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、本発明の溶接装置は、溶接ワイヤを介して被溶接物に溶接電流を供給する電源部と、前記被溶接物に向けて送給される前記溶接ワイヤが当該被溶接物に接触した際に、前記溶接電流として初期溶接電流を前記電源部から供給させ、当該初期溶接電流の供給を開始してから予め決められた設定期間が経過した後、当該溶接電流として当該初期溶接電流よりも大きい定常溶接電流を当該電源部から供給させる電流制御部とを含んでいる。
この溶接装置において、前記被溶接物に対する溶接作業を制御する制御装置と、前記溶接ワイヤおよび前記被溶接物に前記初期溶接電流が流れたことを検知する判定部と、前記電源部を駆動する電源駆動部と、をさらに備え、前記制御装置は、前記判定部により前記溶接ワイヤおよび前記被溶接物に前記初期溶接電流が流れたと判定され、さらに予め決められた設定時間が経過した後に、前記電源駆動部に対して前記電源部から前記定常溶接電流を供給させる電流設定信号を出力することを特徴とすることができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る溶接システム1の概略構成を示す図である。この溶接システム1は、消耗電極式(溶極式)のガスシールドアーク溶接法のうち、炭酸ガスをシールドガスとして用いる炭酸ガスアーク溶接法によって、被溶接物200の溶接を行うものである。
また、この溶接システム1で用いる溶接電流としては、直流および交流のどちらであってもよい。
電源制御手段としての電源装置50は、作業者による溶接開始の指示を受け付けるスイッチ51と、溶接ワイヤ100に供給する溶接電流を設定する溶接電流設定部52と、ワイヤ送給装置30を用いた溶接ワイヤ100の送給速度を設定する送給速度設定部53と、溶接電流設定部52によって設定された溶接電流の設定値を送給速度設定部53における送給速度の設定値に変換する溶接電流/送給速度変換部54とを備える。また、電源装置50は、溶接トーチ10(溶接ワイヤ100)と被溶接物200との間に溶接電流を供給する電源部55と、溶接電流設定部52による設定に基づいて電源部55を駆動する電源駆動部56と、溶接トーチ10から溶接ワイヤ100を介して被溶接物200に流れる溶接電流を検知する溶接電流検知部57とを備える。さらに、電源装置50は、溶接電流検知部57による溶接電流の検知結果に基づいて溶接電流が流れたことを判定し、その判定結果(電流検知結果)を出力する電流判定部58と、電流判定部58による判定結果に基づいて溶接電流が予め決められた時間だけ流れたことを判定し、その判定結果(通電判定結果)を出力する通電判定部59とを備える。なお、本実施の形態では、溶接電流設定部52が、電流制御部としての機能を有している。
図3は、本実施の形態の溶接システム1におけるアークスタートの手順を説明するためのフローチャートである。また、図4は、本実施の形態の溶接システム1におけるアークスタートの手順の一例を説明するためのタイミングチャートである。
まず、スイッチ51から入力されてくる溶接開始信号Sが「L」か「H」かの識別を行う(ステップ10)。ステップ10において溶接開始信号Sが「L」であった場合(NO)は、ステップ10に戻って処理を続行する。
これにより、アークスタートが完了する。
これにより、アークスタートが完了する。
図5に示すように、第3時刻t3において、溶接電流設定信号Cを初期溶接電流設定値Caから定常溶接電流設定値Crに切り替える際の溶接電流設定信号Cに傾斜設定値Csを設け、第3時刻t3から所定の時間が経過した第4時刻t4において、定常溶接電流設定値Crに到達させるようにしてもよい。この場合には、第3時刻t3において初期溶接電流Iaとなっている溶接電流Iが、第3時刻t3から第4時刻t4に向けて立ち上がり傾斜Isにて漸次増加し、第4時刻t4において定常溶接電流Irに到達することになる。また、この例においては、溶接電流設定信号Cに傾斜設定値Csが設けられることに伴って、送給速度設定信号Fにも傾斜設定値Fsが設定されることになり、結果として、送給速度Vにも立ち上がり傾斜Vsが設定されることになる。
これにより、アークスタート直後の溶接電流Iによって生じる溶接ワイヤ100の溶断(ワイヤ溶断)、および、ワイヤ溶断に伴うスパッタの増加を抑制することができる。
初期溶接電流Iaから定常溶接電流Irへの切り替え時においては、溶接ワイヤ100に供給される電流量が一時的に多くなる。これに伴い、切り替え時においては、溶接ワイヤ100の赤熱が大きくなることで、溶接ワイヤ100が軟化しやすくなるとともに、ワイヤ溶断が生じやすくなる。
このため、立ち上がり傾斜Isを設けることにより、溶接ワイヤ100の急峻な赤熱を抑制できる。その結果、特に定常溶接電流Irが高く設定される場合にあっては、ワイヤ溶断およびこれに伴うバーンバックを抑制することが可能となり、スパッタの増加も抑制することが可能になる。
初期溶接電流Iaを流す期間は、定常溶接電流Irに至る前にアークを安定させるために設けられる。溶接電流Iが小さいほど、溶接ワイヤ100に生じるジュール熱が小さく、かつ安定した溶滴移行となるため、下限は規定しない。ただし、溶接電流Iが350(A)を超えると、溶接ワイヤ100に発生するジュール熱が高くなってワイヤ溶断が生じやすくなり、更に溶滴移行もワイヤ直下の溶滴が大きくなるグロビュール移行溶接になるため、ワイヤ溶断が発生しやすくなりスパッタも増加しやすくなる。よって、初期溶接電流Iaは300(A)以下とすることが好ましい。加えて、短絡移行は、溶接電流Iが100(A)〜250(A)となる範囲内において最もアークが安定することから、初期溶接電流Iaのより好ましい範囲は、100(A)〜250(A)となる。なお、初期溶接電流Iaは0(A)を含まない。
初期溶接電流Iaから移行する定常溶接電流Irの値によって、ワイヤ溶断の頻度が変わり、定常溶接電流Irが高くなるほど、赤熱効果によるワイヤ溶断が生じやすい傾向となる。ここで、定常溶接電流Irが350(A)を下回る場合においては、赤熱が生じ難いため、本発明の効果が現れにくい。一方、定常溶接電流Irが600(A)を超える場合には、溶接が安定しない。よって、定常溶接電流Irの範囲は350(A)〜600(A)と規程する。さらに、安定した溶接を行うには、350(A)〜550(A)であることがより好ましい。
設定期間Tを20(msec)以上とした場合、初期溶接電流Iaを流している間にアークが安定することから、初期溶接電流Iaから定常溶接電流Irに移行する際のワイヤ溶断をより抑制することが可能になる。よって、設定期間Tは20(msec)以上とすることが好ましく、50msec以上とすると、よりアークが安定するため、より好ましい。ただし、初期溶接電流Iaを流す設定期間Tを長くしすぎても、効率の低下を招くため、設定期間Tについては、700(msec)未満とすることが好ましい。
定常溶接電流Irと初期溶接電流Iaとに差がある場合は、溶接ワイヤ100が赤熱しやすくなり、両者の電流差が大きいほど、溶接ワイヤ100が赤熱によって軟化しやすくなる。これに伴い、初期溶接電流Iaから定常溶接電流Irに移行する際にワイヤ溶断が発生し易くなるため、初期溶接電流Iaから定常溶接電流Irへの移行において、1500(A/100msec)以下の立ち上がり傾斜Isを設けることが好ましい。このような立ち上がり傾斜Isをつけることにより、急峻なワイヤの赤熱が抑制できるため、50(A/100msec)以上の傾きを設けることがより好ましい。
なお、立ち上がり傾斜Isは、図5に示したような直線的で連続した値(時間の一次関数)である必要はなく、曲線状、ステップ状などであってもよい。
図2に示した構成例では、電源装置50に設けられた機能により、本実施の形態によるアークスタートの制御を実現した。これに対し、本実施の形態によるアークスタートの制御を実現する機能の一部をロボット制御装置60にて担う構成とすることもできる。
図6に示す構成例では、図2に示した構成例で電源装置50に設けられていたスイッチ51、溶接電流設定部52および通電判定部59が、ロボット制御装置60に設けられている。また、電源装置50はロボット制御装置60との間で各種信号の授受を行うための電源装置インタフェース部501を備えており、ロボット制御装置60は電源装置50との間で各種信号の授受を行うための制御装置インタフェース部601を備えている。
本発明者は、図1に示す溶接システム1を用い、溶接条件として、溶接ワイヤ100の種別、溶接ワイヤ100の線径、溶接ワイヤ100に供給する初期溶接電流Iaおよび定常溶接電流Ir、設定期間T、立ち上がり傾斜Isを種々異ならせて被溶接物200を溶接する実験を行い、アークスタート時におけるアーク切れの発生状態について評価を行った。
また、この実験では、溶接ワイヤ100の線径として、φ1.2(mm)、φ1.4(mm)のものを用いた。
さらに、この実験では、シールドガスとして炭酸ガス(100%CO2)を用いた。
さらにまた、この実験では、溶接対象となる被溶接物200として、JIS G3106 SM490Aで規定される鋼板を用いた。
さらに、この実験では、250(A)以上550(A)以下の範囲から、定常溶接電流Irを選択した。
さらにまた、この実験では、0(mesc)以上800(msec)以下の範囲から、設定期間Tを選択した。
そして、この実験では、傾き無しから1500(A/100msec)以下の範囲から、立ち上がり傾斜Isを選択した。
表1は、溶接ワイヤ100としてφ1.2のソリッドワイヤを用い、従来のアークスタート法である初期溶接電流Iaおよび定常溶接電流Irを同じ大きさとした場合(Ia=Ir)を示している。なお、このときの初期溶接電流Iaおよび定常溶接電流Irの大きさは、250(A)〜500(A)とした。
表5は、溶接ワイヤ100としてφ1.2のソリッドワイヤを用い、定常溶接電流Irに比べて初期溶接電流Iaを小さくした場合(Ia<Ir)を示している。なお、このときの定常溶接電流Irの大きさは500(A)とし、初期溶接電流Iaの大きさは100(A)とした。
表6は、溶接ワイヤ100としてφ1.2のソリッドワイヤを用い、定常溶接電流Irに比べて初期溶接電流Iaを小さくする(Ia<Ir)とともに、初期溶接電流Iaを100(A)に固定した場合を示している。なお、このときの定常溶接電流Irの大きさは、350(A)〜500(A)とした。
表9は、溶接ワイヤ100としてφ1.2のフラックス入りワイヤを用い、定常溶接電流Irに比べて初期溶接電流Iaを小さくする(Ia<Ir)とともに、初期溶接電流Iaを100(A)に固定した場合を示している。なお、このときの定常溶接電流Irの大きさは、350(A)〜500(A)とした。
表12は、溶接ワイヤ100としてφ1.4のソリッドワイヤを用い、定常溶接電流Irに比べて初期溶接電流Iaを小さくする(Ia<Ir)とともに、初期溶接電流Iaを100(A)に固定した場合を示している。なお、このときの定常溶接電流Irの大きさは、400(A)〜550(A)とした。
表15は、溶接ワイヤ100としてφ1.4のフラックス入りワイヤを用い、定常溶接電流Irに比べて初期溶接電流Iaを小さくする(Ia<Ir)とともに、初期溶接電流Iaを100(A)に固定した場合を示している。なお、このときの定常溶接電流Irの大きさは、400(A)〜550(A)とした。
表1〜表4から明らかなように、定常溶接電流Irが比較的小さい条件(線径φ1.2の場合にはIr≦300(A)、線径φ1.4の場合にはIr≦325(A))では、アークスタートにおけるアーク切れ発生率が低下(良化)する。ただし、この範囲は、本発明に係る課題の範囲外となる。一方、定常溶接電流Irが比較的大きい条件(線径φ1.2の場合にはIr≧325(A)、線径φ1.4の場合にはIr≧350(A))では、アークスタートにおけるアーク切れ発生率が上昇(悪化)する。
本発明者は、図1に示す溶接システム1を用い、溶接条件として、溶接ワイヤ100の種別、溶接ワイヤ100の線径、溶接ワイヤ100に供給する初期溶接電流Iaおよび定常溶接電流Ir、設定期間T、立ち上がり傾斜Isを種々異ならせて被溶接物200を溶接する実験を行い、アークスタート時における飛散物の発生状態について評価を行った。ここで、飛散物は、溶接のスタートからエンドまでに発生するスパッタやワイヤ溶断時に飛散する溶接ワイヤ100のワイヤ片等を指す。
また、この実験では、溶接ワイヤ100の線径として、φ1.2mmのものを用いた。
さらに、この実験では、シールドガスとして炭酸ガス(100%CO2)を用いた。
さらにまた、この実験では、溶接対象となる被溶接物200として、JIS G3106 SM490Aで規定される鋼板を用いた。
さらに、この実験では、350(A)以上500(A)以下の範囲から、定常溶接電流Irを選択した。
さらにまた、この実験では、0(mesc)以上50(msec)以下の範囲から、設定期間Tを選択した。
そして、この実験では、傾き無しから200(A/100msec)以下の範囲から、立ち上がり傾斜Isを選択した。
表18および表19から明らかなように、定常溶接電流Irよりも初期溶接電流Iaを小さく設定し、且つ、初期溶接電流Iaから定常溶接電流Irへの移行において立ち上がり傾斜Isを設けることにより、アークスタート中における飛散物の量が減少することが理解される。また、定常溶接電流Irと初期溶接電流Iaとの差が大きい場合に、飛散物の減少率がより大きくなることがわかる。
Claims (7)
- 溶接ワイヤを被溶接物に向けて送給し、送給される当該溶接ワイヤが当該被溶接物に接触することで当該溶接ワイヤと当該被溶接物とに溶接電流を流し、当該溶接電流にてアークを発生させることにより溶接を開始する消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法において、
前記溶接ワイヤと前記被溶接物とが接触した際に、前記溶接電流として初期溶接電流を供給する工程と、
前記初期溶接電流の供給を開始してから予め決められた設定期間が経過した後、前記溶接電流として当該初期溶接電流よりも大きい定常溶接電流を供給する工程と
を有することを特徴とする消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法。 - 前記初期溶接電流の大きさが100(A)以上且つ300(A)以下となる範囲から選択され、
前記定常溶接電流の大きさが350(A)以上且つ550(A)以下となる範囲から選択されること
を特徴とする請求項1記載の消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法。 - 前記設定期間が25(msec)以上且つ700(msec)未満となる範囲から選択されることを特徴とする請求項1または2記載の消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法。
- 前記初期溶接電流を供給する工程と前記定常溶接電流を供給する工程との間に、立ち上がり傾斜を設ける工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法。
- 前記立ち上がり傾斜を設ける工程では、当該立ち上がり傾斜を1500(A/100msec)以下に設定することを特徴とする請求項4記載の消耗電極式アーク溶接のアークスタート制御方法。
- 溶接ワイヤを介して被溶接物に溶接電流を供給する電源部と、
前記被溶接物に向けて送給される前記溶接ワイヤが当該被溶接物に接触した際に、前記溶接電流として初期溶接電流を前記電源部から供給させ、当該初期溶接電流の供給を開始してから予め決められた設定期間が経過した後、当該溶接電流として当該初期溶接電流よりも大きい定常溶接電流を当該電源部から供給させる電流制御部と
を含む溶接装置。 - 前記被溶接物に対する溶接作業を制御する制御装置と、
前記溶接ワイヤおよび前記被溶接物に前記初期溶接電流が流れたことを検知する判定部と、
前記電源部を駆動する電源駆動部と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記判定部により前記溶接ワイヤおよび前記被溶接物に前記初期溶接電流が流れたと判定され、さらに予め決められた設定時間が経過した後に、前記電源駆動部に対して前記電源部から前記定常溶接電流を供給させる電流設定信号を出力することを特徴とする請求項6記載の溶接装置。
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