JP2015229128A - 物品の加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】物品に保護膜形成液を塗布して保護膜を形成する工程と、該工程後の物品を加工する工程と、該工程後の物品の保護膜を、剥離液を用いて除去する工程とを含む物品の加工方法において、保護膜形成工程の生産性に優れているとともに、保護膜除去後の物品に水シミやヤケを発生させることない物品の加工方法を提供すること。
【解決手段】物品に保護膜形成液を塗布して保護膜を形成する工程と、該工程後の物品を加工する工程と、該工程後の物品の保護膜を、剥離液を用いて除去する工程とを含む物品の加工方法。前記保護膜形成液として、水溶性樹脂と水と揮発性の極性有機溶媒とを必須とするものを用いる。剥離液として、ハイドロフルオロエーテル類又はハイドロフルオロカーボン類と、アルコール類とを含有し、かつ、脱水含水率が平衡含水率の20%以下に調整されたものを用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、物品に保護膜形成液を塗布して保護膜を形成する保護膜形成工程と、該保護膜が形成された物品を加工する加工工程と、該加工済みの物品を剥離液に浸漬して前記保護膜を除去処理する洗浄工程(保護膜除去工程)とを含む物品の加工方法に関する。
特に、精密機械工業、光学機械工業、電気電子工業、プラスチック工業等における物品の加工方法に好適な発明に係る。
以下の説明で、配合単位や含水率を示す「%」および「ppm」は、特に断らない限り、質量単位を意味する。
上記産業分野において、例えば、樹脂製レンズ、光学フィルタなどの樹脂成形物や、シリコンウェハ、光学用ガラス成形物など精密部品等の物品は、その機械加工等の加工に際して、非加工面を保護するために保護膜を形成する必要があるとともに、加工後、保護が不要になったときに該保護膜を除去する必要がある。
特に、物品の切削・研磨等の機械加工時には、物品の非加工面を治具に固定する必要がある。このとき、非加工面(非切削面)が治具に接触することによって、傷がつく。また、加工時に発生するカスや加工油、溶剤が、非加工面等に付着し、該非加工面等を汚染してしまう。
このような問題点を解消するために、物品の加工前に保護膜を形成する方法がある。例えば、特許文献1・2には、ポリビニルアルコール(PVAL)等の水溶性樹脂で保護膜を形成し、加工後、水系洗浄により溶解除去させる技術が記載されている。
当該溶解除去は、加工後の物品に残存している保護膜に対して、噴霧や浸漬により純水を接触させて行い、その後、適宜、純水リンスして、さらに、乾燥して行っていた(特許文献1段落0029、特許文献2段落0072・0073)。なお、特許文献1・2等には明記されていないが、この乾燥には自然乾燥や、乾燥炉による熱風乾燥が用いられていると考えられる。
国際公開WO2009/101938号公報 特開2010−267638号公報
上記保護膜形成工程においては、物品(ワーク)に保護膜形成液を浸漬塗布後、熱風乾燥等によって、保護膜形成液の溶媒(主として水)を揮発させて、保護膜を形成する。このとき、保護膜形成液は、水の含有率が高い。例えば、特許文献1段落0020では、水溶性樹脂濃度(含有率):5〜25%(水の含有率換算:75〜95%)と記載されている。このため、保護膜乾燥には相当な時間が必要であるとともに、水溶性樹脂自体吸水性を有するものが多く、平衡含水率まで脱水(乾燥)するには時間がかかる。したがって、乾燥が十分にされていない状態で加工機に物品を投入してしまい、その物品の固定治具に水溶性樹脂膜のカスが付着し易かった。
乾燥時間を短縮するため、熱風炉等を用いた高温雰囲気下(例えば、80℃以上)での乾燥も考えられる。しかし、物品が樹脂製レンズのような場合、高温環境下では変形してしまうなどの不良が発生するおそれがある。
また、保護膜を除去処理する洗浄工程(保護膜除去工程)において、水系洗浄では、前述の如く、リンス工程とともに、乾燥工程も必要となる。そして、乾燥に際して、物品の表面で水を揮発させるため、水滴中に含まれている極少量の不揮発性の不純物に起因して乾燥後に水シミができやすかった。
本発明の目的は、上記にかんがみて、物品に保護膜形成液を塗布して保護膜を形成する保護膜形成工程と、該保護膜が形成された物品を加工する加工工程と、加工済みの物品の保護膜を剥離液に接触させて前記保護膜を除去処理する洗浄工程とを含む物品の加工方法において、保護膜形成工程の生産性に優れているとともに、保護膜除去後の物品に水シミやヤケを発生させることない物品の加工方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の物品の加工方法に想到した。
物品に保護膜形成液を塗布して保護膜を形成する保護膜形成工程と、該保護膜が形成された物品を加工する加工工程と、加工済みの物品の保護膜を剥離液に接触させて保護膜を除去処理する洗浄工程とを含む物品の加工方法であって、
前記保護膜形成液として、水溶性樹脂と水と揮発性の極性有機溶媒とを必須とするものを用いるとともに、
前記剥離液として、ハイドロフルオロエーテル類(HFE類)およびハイドロフルオロカーボン類(HFC類)から選ばれる少なくとも1種と、アルコール類とを含有し、かつ、含水率が平衡含水率の20%以下に調整されたものを用いること、を特徴とする。
保護膜形成工程においては、保護膜形成液が、極性有機溶媒を含むため、保護膜の乾燥時間の短縮が可能であり、熱に弱い材質からなる樹脂製レンズ等の物品でも高温雰囲気下に置くことなく、乾燥させて保護膜を形成することが可能である。
また、洗浄工程において、保護膜が除去された物品に水シミやヤケが発生することがない。
さらには、洗浄剤の処理が簡便で、加えて安定的に連続運転ができるとともに、排水処理が不要となり、剥離液は繰り返し使用可能となる。このため、保護膜除去に関わる洗浄工程のコストが大幅に低減できる。
本発明の保護膜除去に用いられる洗浄装置の一例を示す概略構成図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。
本発明は、基本的には、精密機械工業、光学機械工業、電気電子工業、プラスチック工業等において、例えば、樹脂製レンズ、光学フィルタなどの樹脂成形物及びシリコンウェハ、光学用ガラス成形物など精密部品等の物品の製造工程において、非加工面を保護するための保護膜(樹脂薄膜)を形成した物品の加工をした後、保護膜を除去して、さらなる加工を行う際に適用可能な方法に係る。
なお、本発明を適用する物品としては、樹脂製、ゴム製、セラミック製、金属製を問わない。機械加工時等に治具等により傷つきやすい樹脂製物品、中でも、肉眼で判別できないような傷や凹みでも物品特性に影響を与えて不良品となる光学要素等に適用することが、本発明の効果が顕著となり好ましい。
本発明は、(1)保護膜形成工程、(2)加工工程および(3)洗浄工程を、順次含むものである。
(1)保護膜形成工程:
物品の全体又は必要部分を、下記保護膜形成液を充填した浸漬槽に浸漬する。浸漬時間は、保護膜形成液における水溶性樹脂の種類により、5秒〜1分、望ましくは5〜10秒の範囲で適宜設定する。
保護膜形成液は、水溶性樹脂と水と揮発性の極性有機溶媒を必須成分とする。
上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース、等を好適に用いることができる。これらの内で、PVAL、特に、加水分解度80〜95mol%、Mw:1万〜100万、更には1万〜10万のPVALを用いることが、コスト、実用性(保護膜特性)の観点から好ましい。
揮発性の極性有機溶媒としては、炭素数1〜5で沸点が100℃未満の低級一価アルコールおよびそれらの混合物を好適に用いることができる。例えば、エタノール(77〜80℃)、メタノール(64〜66℃)、イソプロピルアルコール(IPA)(79〜82℃)、t−ブチルアルコール(78〜85℃)を挙げることができる。特にこれらのうち、エタノール、メタノールを使用することがコスト、安全性の観点より好ましい。
保護膜形成液の必須成分組成は、水溶性樹脂をPVALとした場合、PVAL:0.01〜30%、水:10〜90%、極性有機溶媒:9.99〜89.99%の範囲で設定することが望ましい。さらには、PVAL:0.2〜30%、水:20〜49.8%、極性有機溶媒:50〜80%の範囲で設定することがより望ましい。
物品に前述の方法によって前記水溶性の樹脂を含む保護膜形成液を塗布後に乾燥させ、保護膜形成液中の溶媒が揮発除去されることによって、物品表面に保護膜を形成することができる。
乾燥方法としては、常温乾燥、熱風乾燥又は窒素ガス乾燥等の慣用手段を用いることができる。乾燥時間は、保護膜の水溶性高分子の種類、乾燥温度・湿度により異なる。例えば、常温乾燥の場合、1〜10分、熱風乾燥の場合、1〜3分、窒素ガス乾燥の場合、30〜60秒で保護膜の乾燥が可能である。熱風乾燥を行う場合には、熱風条件は樹脂レンズならTg(ガラス転移点)温度以下(例えば、PMMAの場合、Tg:70〜90℃)、その他物品でも物品の耐熱温度以下とすることが品質上の観点から好ましい。
これらの保護膜形成工程により、水を含む溶剤を用いる従来よりも短時間で保護膜の形成が可能となる。
(2)加工工程においては、例えば、物品との接触面がゴム製ないし合成樹脂製とされた治具に上下吸着の方法で固定し、切削、研磨やバリ取り等の機械加工を行う。この際、物品の非加工面に形成した保護膜は、途中で亀裂が入ったり穴があいたりして非加工面を損傷することなく、物品の機械加工を行うことが可能である。
(3)洗浄工程:
前記工程にて保護膜が形成された物品を、特定の剥離液に浸漬洗浄することにより、物品から保護膜を剥離除去できる。
上記特定の剥離液は、HFE類およびHFC類から選ばれる少なくとも1種と、アルコール類とを含有し、かつ、含水率が平衡含水率の20%以下(望ましくは18%以下)に調整されたものを使用する。
当該特定の剥離液を用いて保護膜の除去を行うことにより、物品に水系洗浄する場合におけるシミやヤケなどの洗浄不良が発生することがない。さらには、洗浄時間も短縮可能であり、洗浄後の乾燥工程も不要となる。
加えて、物品から剥離した保護膜は、フィルタ等を用いて、剥離液から容易に分離除去できるため、剥離液は繰り返し使用可能である。このため、水系洗浄で課題とされていた保護膜、あるいはアルカリ洗浄剤が溶解した使用後洗浄水の処理が不要となる。
図1は、本発明の保護膜の除去方法に用いられる洗浄装置の一例を示す概略構成図である。
この洗浄装置は、剥離処理槽11の右側にリンス槽12、左側に分離槽13、さらに分離槽13の左側に蒸気発生槽14がそれぞれ溢流可能に配されている。
剥離処理槽11は物品(ワーク)Wの保護膜の剥離除去をする槽である。リンス槽12は、剥離処理槽11で剥離浸漬後の物品Wのリンスをするとともに、剥離処理槽11から持ち出された剥離液の補充を溢流により行う槽である。分離槽13は、剥離処理槽11で剥離した保護膜と剥離液とを分離する槽である。さらに、蒸気発生槽14は剥離液の蒸気を発生させて蒸気リンスを行うための槽である。
これらの連続槽11〜14を備えた洗浄装置は、さらに、蒸気回収手段(剥離液回収手段)24を備えている。該蒸気回収手段24は、連続槽11〜14の上方に位置し、蒸気発生槽14にて発生した蒸気を凝縮させるための冷却コイル15と、冷却コイルにて凝縮した剥離液を受けるための樋16と、剥離液に含まれる水分濃度を調節するための脱水装置17からなる。
剥離処理槽11は、剥離液を加温するためのヒータ18や、超音波洗浄をするための超音波発生装置19を備えている。蒸気発生槽14には剥離液を沸点以上の温度に加温して、蒸気を発生させるヒータ20を備えている。なお、剥離処理槽11には、剥離処理槽11内の剥離液の水分濃度を調節するための脱水装置23や、該脱水装置23へ剥離液を送るためのポンプ22が接続されていてもよい。
また、分離槽13は、剥離液と剥離した保護膜を分離するためのフィルタ21を備えている。フィルタ21は剥離した保護膜を剥離液から分離できる構造のものであれば、特に限定されない。例えば、100〜300メッシュのSUS製の金網などを用いることができる。
前記脱水装置17、23には、剥離液に混入した水分を吸着し、剥離液の水分濃度を下げることのできる、分子篩(モレキュラーシーブ)や吸水性樹脂などからなる脱水フィルタや脱水剤がセットされている。これらは、吸水能力が低下した場合には適宜交換する。
本洗浄装置において、剥離液は、リンス槽12から剥離処理槽11、剥離処理槽11から分離槽13へと溢流する。剥離処理槽11から分離槽13へ溢流する際には、フィルタ21にて、さらには、潜り板25により剥離液に含まれている保護膜等、その他の沈降性の不純物が沈降除去される。分離槽13を通過した剥離液は、蒸気発生槽14へと送られる。蒸気発生槽14では、剥離液は蒸気となり、上部の冷却コイル15または被洗浄物である物品(ワーク)Wへの接触によって凝縮して液体となる。冷却コイル15によって、凝縮されて液体となった剥離液は、樋16を通って、脱水装置17にて、剥離液中の水分濃度を調節された後にリンス槽12へ送られる。剥離処理槽11内の剥離液は、脱水装置23にて水分濃度を調節することも可能である。
次に、図1の洗浄装置を用いた保護膜の除去方法について説明する。
まず、物品Wを、剥離処理槽11内の超音波が印加された剥離液に浸漬し保護膜の除去及び洗浄を行う。このとき、物品表面に付着している切削カスなど保護膜以外の汚れも剥離液に印加された超音波作用で除去される。剥離処理槽11での浸漬時間は、1〜5分の間で適宜設定する。また剥離処理槽11の剥離液の温度は、超音波照射による剥離液のキャビテーション効果を十分に得るため、「剥離液沸点−10℃」から剥離液沸点の範囲で適宜設定することが望ましい。
剥離処理槽11の浸漬によって、保護膜及びその他の汚れが除去された物品Wは、次いで浸漬リンス槽12の剥離液に浸漬して浸漬リンスをする。浸漬リンス槽12での浸漬時間は、通常、30秒〜5分間の範囲で適宜設定する。浸漬リンス槽12の温度は、常温から剥離処理槽11の液温以下の範囲で適宜設定することが好ましく、さらに剥離液の沸点よりも15℃以下、望ましくは20℃以下の温度であると、次工程の蒸気リンスでの凝縮によるリンス効果が向上するため、より好ましい。浸漬リンス槽12においても、リンス効果を向上させるために浸漬リンス槽12の浸漬液(剥離液)に超音波を印加してもよい。
浸漬リンス槽12での浸漬リンスの後には、物品Wを各槽11〜14と冷却コイル15の下部との間に保持し、剥離液の蒸気に曝して蒸気リンスをする。このとき、物品Wの表面では、剥離液の蒸気が凝縮し、その凝縮した剥離液によって、物品Wが蒸気リンスされる。
こうして物品Wは剥離液の沸点温度にまで加温される。加温された物品は、十分な熱量を有しているため、洗浄装置から取り出した際には、物品Wの表面に存在する剥離液がその熱量で瞬時に乾燥する。
こうして保護膜除去処理、浸漬リンス、蒸気リンスからなる一連の洗浄工程により、シミやヤケ、保護膜やその他汚れの残留がない物品を得ることができる。
剥離液としては、HFE類およびHFC類から選ばれる少なくとも1種と、アルコール類との混合液からなる剥離液を使用することにより、水溶性の保護膜を剥離除去することができる。保護膜は、HFE類、およびHFC類には溶解せず、さらにアルコール類への溶解性も乏しく、保護膜は剥離液への溶解による除去はできない。しかし、保護膜は、水分の含有量が高い場合には物品表面との接着性(密着性)が強いが、保護膜中の水分含有量が減少すると、物品表面との接着性(密着性)が弱くなる。これら剥離液および保護膜の特性により、保護膜が付着した物品を剥離液へ浸漬すると、保護膜中の水分が剥離液へ吸収されることにより保護膜と物品表面の接着性が弱くなったところで、物品表面と保護膜の間に、表面張力が小さいフッ素系溶剤が入り込むことにより、保護膜が物品表面から剥離除去される。よって、剥離液中の水分濃度は、その組成物の平衡水分率(飽和水分濃度)の20%以下であることが好ましく、さらには15%以下であることが、保護膜に含まれる水分を吸収しやすいために好ましい。
剥離液の含水率(水分濃度)は、例えば、図1のように脱水装置17や脱水装置23を用いることにより調節可能である。
剥離液に好適に使用されるHFE類としては、式1で表される化合物が好ましい。
1−O−R2 ・・・式1
(ただし、R1 、R2 は、各々独立にアルキル基または含フッ素アルキル基を示す。R1 、R2 に含まれるフッ素原子の数が同時に0であることはなく、かつR1 およびR2 に含まれる炭素数の合計は4〜8である。)
なかでも、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)プロパン、(パーフルオロブトキシ)メタン、(パーフルオロブトキシ)エタンが好ましく、これらは単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
HFC類としては、C455、C464、C473、C482、C49H、C566、C575、C584、C593、C5102、C511H、C677、C686、C695、C6104、C6113、C6122、C613Hの各分子式で表される化合物や、環状のC573が例示される。
また、HFC類として具体的には以下の化合物が挙げられる。
<C5のHFC類>
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、
1,1,2,3,4,4−ヘキサフルオロブタン、
2−メチル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
1,2,2,3,3,4−ヘキサフルオロブタン、
1,1,1,2,3,3,4−ヘプタフルオロブタン、
1,1,2,2,3,4,4−ヘプタフルオロブタン、
1,1,1,2,3,4,4−ヘプタフルオロブタン、
1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロブタン、
1,1,1,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン、
1,1,1,2,2,3,3,4−オクタフルオロブタン、
1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン、
1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロブタン。
<C5のHFC類)
1,1,2,3,3,4,5,5−オクタフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,5,5,5−オクタフルオロペンタン、
1,1,2,2,3,3,4,4,5−ノナフルオロペンタン、
1,1,1,2,3,3,4,4,5−ノナフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,3,5,5,5−ノナフルオロペンタン、
1,1,1,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,3,3,4,5,5−デカフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−ウンデカフルオロペンタン。
<C6のHFC類>
1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,4,4−ヘキサフルオロブタン、
1,1,1,2,2,5,5,6,6,6−デカフルオロヘキサン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,3,4,5,5−ヘプタフルオロペンタン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5−ヘプタフルオロペンタン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,3,4,4−オクタフオロブタン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,3,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5,5−オクタフルオロペンタン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,5,5,5−オクタフルオロペンタン、
1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキサン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、
2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、
1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、
1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,6,6,6−トリデカフルオロヘキサン、
1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン。
これらのHFC類のうちで、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、2−トリフルオロメチル−1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサンが好ましく、これらは単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
市販のHFE類としては、例えば、旭硝子(株)製の「アサヒクリンAE−3000」(1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル)、住友スリーエム(株)製の「Novec7100」((パーフルオロブトキシ)メタン)や「Novec7200」((パーフルオロブトキシ)ブタン)等の各登録商標名で上市されているものが挙げられる。
市販のHFC類としては、例えば、旭硝子(株)製の「アサヒクリンAC−2000」(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン)や「アサヒクリンAC−6000」(1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン)、三井・デュポンフロロケミカル(株)製の「バートレルXF」(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン)、日本ソルベイ(株)製の「Solkane−365mfc」(1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン)等の各登録商標名で上市されているものが挙げられる。
剥離液に好適に使用されるアルコールとしては、アリルアルコール、アルカノール等が挙げられるが、なかでもメタノール、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜3の飽和1価アルコールが好ましい。これらのアルコールは供給安定性が高いとともに、フッ素系溶剤と水の両方への親和性も高いためである。これらは、単独でも、2種以上を混合して使用してもよい。
剥離液におけるアルコール類の含有率が小さすぎると、常温における剥離液の平衡含水率(飽和水分濃度)が低くなるため、組成物の水分濃度管理が困難となり、保護膜の除去性が悪くなる。一方、アルコール類の含有率が大きすぎると、溶剤組成物が引火点を有する組成となり取扱いが煩雑となる。このような観点から、本発明において、溶剤組成物におけるアルコール類の含有率は、1〜20%、さらには3〜15%であることが好ましい。
また、上記アルコール類の含有率において、HFE類またはHFC類と、アルコール類とが共沸組成を有する場合は、蒸発する際の組成変動を抑制できることから、溶剤組成物として共沸組成であるものを用いるのが最も好ましい。
以下、本発明の効果を確認するために、比較例および参照例とともに行った実施例について説明する。なお、実施例等で使用したPVALは、製造会社表示が加水分解率:87〜89mol%、Mw:2200であるものを使用した。
A.実施例1〜9・比較例1〜9
各実施例で使用した保護膜形成液および剥離液は次の通りである。
(1)保護膜形成液は、エタノール:60%、PVAL(Mw22000):1%、水:39%の組成のものを使用した。参照例1では、エタノール:30%、PVAL:35%、水:35%の組成のものを使用した。
(2)剥離液は、それぞれ、下記各登録商標名で市販されている下記組成・沸点のものを使用した。なお、混合物はいずれも共沸混合物である。
下記において、剥離液の「平衡含水率(飽和水分濃度)」は、常温(25℃)、湿度(常湿:45〜85%RH)において平衡に達したときの含水率をいい、「脱水含水率」は、脱水して剥離に使用する際の常温(25℃)における剥離液の含水率をいう。
・「アサヒクリンAE−3100E」旭硝子(株)製・・・1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル/エタノール=94/6、沸点54℃、
・「アサヒクリンAE−3000」旭硝子(株)製・・・1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、沸点56℃
・「アサヒクリンAC−2220」旭硝子(株)製・・・1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン/エタノール=91/9、沸点61℃、
・「アサヒクリンAC−2000」旭硝子(株)製・・・1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、沸点71℃
・「NOVEC71IPA」住友スリーエム(株)製・・・(パーフルオロブトキシ)メタン95/イソプロピルアルコール=95/5、沸点54.5℃、
・「バートレルXE」三井・デュポンフロロケミカル(株)製・・・1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン/エタノール=96/4、沸点52℃、
<レンズ成形工程>
表1・2に示す各成形材料を用いて、モールド成形(注型)によって、各実施例・比較例のプラスチックレンズを5個ずつ成形した。
<樹脂保護膜形成工程>
上記モールド成形工程後にプラスチックレンズに対して下記の如く樹脂保護膜を形成した。
該樹脂保護膜を形成する保護膜形成液の塗布工程では、1Lの前述の保護膜形成液が充填された保護膜形成液貯留槽(図示せず)に、プラスチックレンズが5枚組でセットされているレンズ用治具全体を浸漬して保護膜を形成した。
そして、浸漬後にレンズ用治具を引き上げて液切りをした後、レンズ用治具から組プラスチックレンズを取り出す。該組プラスチックレンズを、3m/minの速度で進行するコンベア上に載せ、90℃の熱風乾燥トンネル内を通過させて乾燥させた。
<切削加工工程>
上記保護膜形成工程後の組プラスチックレンズは、吸着式の切削機に投入し、切削加工を行う。切削加工後のレンズには、切削クズ、樹脂保護膜が付着しており、次のコーティング工程(プライマー塗布、ハードコート、蒸着膜形成等)の前に、切削クズ、樹脂保護膜の除去処理を行う。
<洗浄工程>
図1に示す洗浄装置の各槽には剥離液を、剥離処理槽11:約5L、浸漬リンス槽12:約5L、分離槽13:約2L、蒸気発生槽14:約3L、蒸気回収手段24の脱水装置17:約3L、脱水装置23:約1L、貯液した。そして、各槽の液温は、剥離処理槽11:表1・2に表示、浸漬リンス槽12:約25℃、蒸気発生槽14:下記剥離液の沸点温度、にそれぞれ設定した。上記回収手段24の脱水装置17および剥離処理槽11の脱水装置23には、分子篩(4A:ゼオライト)を1kgおよび500gをそれぞれ充填したカラムを装填した。
剥離液は、約1.5時間で1循環するように、ヒータ18によって蒸気発生量を調節した。
上記のように準備をした洗浄装置を用い、前記加工工程後に保護膜と切削クズが付着しているプラスチックレンズ5枚からなるワーク(物品)Wをレンズ用治具に搭載し、下記の如く保護膜の剥離除去の処理(洗浄)を行った(ただし、実施例8・9および比較例8を除く)。
1)剥離処理槽11に貯液され、表示の各設定液温とした剥離液に、超音波を印加しながら物品Wを浸漬して、保護膜剥離の処理を5分行う。
2)浸漬リンス槽12に物品Wを浸漬して浸漬リンスを2分行う。
3)その後、蒸気発生槽14と冷却コイル15下部の間に物品Wを保持することにより蒸気リンスを90秒行った後に、ワークWを洗浄装置から取り出した。
実施例8は、上記において保護膜剥離の処理時間、浸漬リンス時間、蒸気リンス時間を、それぞれ1分間とし、実施例9は、保護膜剥離の処理のみ5分、比較例8は、蒸気リンスのみを90秒行った。
そして、上記の如く、保護膜除去の洗浄を行ったワークWである各レンズの外観を目視で観察した。その結果は、下記の如くである。
・実施例1〜9:
5枚全てのレンズにおいて、レンズ両面の保護膜は除去され、シミや傷、切削クズ等の汚れもなかった。本発明の範囲内である剥離液の平衡含水率が脱水含水率の20%以下にある各実施例はいずれも保護膜の除去性に優れていることが分かる。なお、実施例9の如く、浸漬リンス・蒸気リンスなしでも、保護膜除去が可能であることが分かる。
さらに、保護膜除去後のレンズに、慣用のプライマーコート、ハードコート、反射膜処理を行ったところ、従来品と比較しても何ら変化がなかった。すなわち、斑、気泡、均一性、密着性、擦傷性、耐温水、耐衝撃等において、何ら変化がなかったことを確認している。
・比較例1・2:
各比較例は、5枚全てのレンズにおいて、切削クズ等の汚れは除去されていたが、レンズ両面の保護膜は除去されずに残留していた。この結果は、脱水含水率が平衡含水率の20%を大きく超えた場合(60%超)では、保護膜の除去が困難なことが分かる。
・比較例3・4:
各5枚全てのレンズにおいて、切削クズ等の汚れは除去されていたが、レンズ両面の保護膜は除去されずに残留していた。この結果は、HFE類やHFC類のみでは、平衡含水率が相対的に低く脱水含水率が平衡含水率の20%以下とすることが困難(せいぜい40%前後)で、結果的に、保護膜の除去ができないことが分かる。
・比較例5:
3枚のレンズにおいてはレンズ両面の保護膜は除去され、シミや傷、切削クズ等の汚れもなかったが、2枚のレンズでは、切削クズは除去されていたが、レンズの一部分に保護膜が残留した。その結果は、脱水含水率(脱水剥離液の含水率)が平衡含水率の20%を少し超えると、保護膜の除去性が低下することが分かる。
比較例6:
1枚のレンズにおいてレンズ両面の保護膜は除去され、シミや傷、切削クズ等の汚れもなかったが、4枚のレンズでは、切削クズは除去されていたが、レンズの一部分に保護膜が残留した。この結果は、脱水含水率が平衡含水率の40%近くになると、さらに保護膜除去性が低下することが分かる。
・比較例7:
5枚のレンズの全てにおいて、切削クズ等の汚れは除去されていたが、レンズ両面の保護膜は除去されずに残留していた。この結果は、脱水含水率が平衡含水率の90%超になると、さらに保護膜除去性が低下することが分かる。
・比較例8:
レンズの保護膜除去処理は、蒸気発生槽14と冷却コイル15の間で蒸気洗浄5分間のみを行い、レンズを洗浄装置から引き上げて、レンズの外観を目視で観察した。5枚全てのレンズにおいて、切削クズ等の汚れは除去されていたが、レンズ両面の保護膜は除去されずに残留していた。脱水含水率が平衡含水率の90%超になると、比較例7同様、ほとんど保護膜除去性がないことが分かる。
・比較例9:
実施例1における切削加工後のレンズを、40℃、湿度(RH)80%の恒温恒湿槽のなかに一晩保管したものを、実施例1と同様に保護膜の洗浄除去を行った。
5枚全てのレンズにおいて、切削クズ等の汚れは除去されていたが、レンズ両面の保護膜は除去されずに残留していた。PVALが水分を吸収してしまって保護膜が剥離し難くなったためと考えられる。
本実施例、比較例の条件、結果をまとめたものを、表1・2に示す。
Figure 2015229128
Figure 2015229128
B.参照例1・2:
<参照例1>
エポキシ樹脂製のプラスチックレンズを、エタノール:80%、PVAL:0.05%、水;19.95%の保護膜形成液が充填された上述の保護膜形成液貯留槽に浸漬し、トンネル内温度が90℃の熱風乾燥トンネル内を速度3m/分でコンベアが進行することにより乾燥させたが、熱風乾燥トンネル通過後のプラスチックレンズは十分に乾燥されておらず、保護膜が形成されていなかった。保護膜形成液のPVAL含有率が少なすぎては保護膜形成が困難なことが分かる。
<参照例2>
参照例2は、実施例1において、保護膜形成液として、エタノール:30%、PVAL:35%、水:5%の組成からなるもの以外は、同様にして、保護膜形成、切削加工、保護膜除去処理を行った。液が充填された上述の保護膜形成液貯留槽に浸漬し、トンネル内温度が90℃の熱風乾燥トンネル内を速度3m/分でコンベアが進行することにより乾燥させて樹脂保護膜を作成したレンズを切削機で切削加工を行った後に、加工したレンズから保護膜を、除去洗浄した。5枚全てのレンズにおいて、切削クズは除去されたが、レンズ両面の保護膜は除去されずに残留していた。保護膜形成液の濃度が高すぎる場合、該保護膜の除去処理が困難なことが分かる。すなわち、PVALの濃度が高くて乾燥が十分にできないためと考えられる。
11 剥離処理槽
12 浸漬リンス槽
13 分離槽
14 蒸気発生槽
15 冷却コイル
24 蒸気回収手段
W 物品(ワーク)

Claims (12)

  1. 物品に保護膜形成液を塗布して保護膜を形成する保護膜形成工程と、該保護膜が形成された物品を加工する加工工程と、加工済みの物品の保護膜を剥離液に接触させて保護膜を除去処理する保護膜除去工程とを含む物品の加工方法であって、
    前記保護膜形成液として、水溶性樹脂と水と揮発性の極性有機溶媒とを必須とするものを用いるとともに、
    前記剥離液として、ハイドロフルオロエーテル類およびハイドロフルオロカーボン類から選ばれる少なくとも1種と、アルコール類とを含有し、かつ、脱水含水率が平衡含水率の20%以下に調整されたものを用いること、
    を特徴とする物品の加工方法。
  2. 前記保護膜の除去処理を、前記加工済みの物品を超音波が印加された剥離液に浸漬して行うことを特徴とする請求項1記載の物品の加工方法。
  3. 前記保護膜形成液における水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール(PVAL)であることを特徴とする請求項1又は2記載の物品の加工方法。
  4. 前記保護膜形成液の組成が、PVAL:0.01〜30質量%、水:10〜90質量%、極性有機溶媒:9.99〜89.99質量%であることを特徴とする請求項3記載の物品の加工方法。
  5. 前記保護膜形成工程における保護膜の乾燥を熱風乾燥とし、該熱風乾燥における加熱条件を、物品のTg(ガラス転移点)温度以下又は耐熱温度以下とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物品の加工方法。
  6. 保護膜除去工程において、浸漬直前の前記剥離液の温度を、「剥離液沸点−10℃」から剥離液沸点の間に調節することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物品の加工方法。
  7. 前記剥離液におけるハイドロフルオロエーテル類が、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、パーフルオロブトキシメタンおよびパーフルオロブトキシエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の物品の加工方法。
  8. 前記剥離液におけるハイドロフルオロカーボン類が、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の物品の加工方法。
  9. 前記剥離液におけるアルコール類が、炭素数1〜3のアルカノールの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の物品の加工方法。
  10. 前記剥離液におけるアルコール類の含有率が1〜20質量%であることを特徴とする請求項9に記載の物品の加工方法。
  11. 前記剥離液が、ハイドロフルオロエーテル類及びハイドロフルオロカーボン類の少なくとも1種と前記アルコール類との共沸組成物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の物品の加工方法。
  12. 前記物品が樹脂製光学要素であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の物品の加工方法。
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