JP2015227493A - 複合硬質皮膜部材及びその製造方法 - Google Patents

複合硬質皮膜部材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015227493A
JP2015227493A JP2014114149A JP2014114149A JP2015227493A JP 2015227493 A JP2015227493 A JP 2015227493A JP 2014114149 A JP2014114149 A JP 2014114149A JP 2014114149 A JP2014114149 A JP 2014114149A JP 2015227493 A JP2015227493 A JP 2015227493A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
carbon
containing silicon
metal material
ferrous metal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014114149A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6318430B2 (ja
Inventor
匠 福田
Takumi Fukuda
匠 福田
幸夫 井手
Yukio Ide
幸夫 井手
裕史 大淵
Yuji Obuchi
裕史 大淵
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
YAMAGUCHI PREFECTURAL IND TECHNOLOGY INST
Yamaguchi Prefectural Industrial Technology Institute
Original Assignee
YAMAGUCHI PREFECTURAL IND TECHNOLOGY INST
Yamaguchi Prefectural Industrial Technology Institute
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by YAMAGUCHI PREFECTURAL IND TECHNOLOGY INST, Yamaguchi Prefectural Industrial Technology Institute filed Critical YAMAGUCHI PREFECTURAL IND TECHNOLOGY INST
Priority to JP2014114149A priority Critical patent/JP6318430B2/ja
Publication of JP2015227493A publication Critical patent/JP2015227493A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6318430B2 publication Critical patent/JP6318430B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

【課題】DLC膜を成膜した鉄系金属材料部材又は非鉄系金属材料部材の腐食を抑制できる複合硬質皮膜部材を提供する。【解決手段】本発明の一態様は、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材2と、前記被成膜部材の表面に形成された炭素含有珪素膜10と、炭素含有珪素膜10上に形成された酸化珪素膜7と、酸化珪素膜7上に形成された炭素含有珪素膜8と、炭素含有珪素膜8上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜9と、を具備する複合硬質皮膜部材である。【選択図】 図2

Description

本発明は、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材に中間層を介してダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)膜を成膜した複合硬質皮膜部材及びその製造方法に関する。
部材の表面にめっき法により形成しためっき膜、塗料を部材に吹き付けて乾燥させた塗装膜等は、有機溶剤の使用や廃液処理の必要性などから環境負荷が大きい。このため、これらに変わる技術として、高い硬度、耐摩耗性等に優れた機械的特性を有するDLC膜が様々な分野で検討されている。
しかしながら、基材の表面に成膜したDLC膜は一般的に貫通ピンホール等の微小欠陥を膜中に多数有しているとされており、これを基点として基材が腐食するという課題がある。
これに対して本発明者らはバリア性に優れる酸化珪素膜に着目し、これと炭素含有珪素膜を中間層に持つDLC複合膜を非鉄金属材料からなる被成膜部材に成膜することで高い耐食性を有することを明らかにしている(特許文献1参照)。
特開2011−162865号公報
上記のDLC複合膜を鉄系金属材料からなる被成膜部材に適用しようとしても、酸化珪素膜と鉄系金属材料との密着性が悪く、成膜後にDLC複合膜全体、または一部が剥離してしまい、それによって被成膜部材が腐食されるという課題がある。また、一部の非鉄金属材料に対しては酸化珪素膜の密着性がやや不十分で、より高い耐食性が得られるDLC複合膜が求められる。
本発明の一態様は、DLC膜を成膜した鉄系金属材料部材又は非鉄系金属材料部材の腐食を抑制できる複合硬質皮膜部材又はその製造方法を提供することにある。
DLC膜はスパッタリング法やプラズマCVD法等の有機溶剤を使用しない環境負荷の少ない成膜方法で作製されるので、上記の課題を解決できれば鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる部材へのDLC膜の利用が飛躍的に加速されると考えられる。
そこで、本発明者らは、酸化珪素膜と被成膜部材の間に炭素含有珪素膜を有する複合膜、詳細には、部材側から部材−炭素含有珪素膜−酸化珪素膜−炭素含有珪素膜−DLC膜を成膜することで密着性を改善し、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料に対して高い耐食性を得る複合皮膜を開発した。
DLC膜は、高硬度、低摩擦、低摩耗、化学的安定性、表面平滑性を有している。また、DLC膜は、膜厚が薄い場合は半透明であるが、膜厚が厚い場合は干渉色を有したブラックである。このため、DLC膜を成膜した被成膜部材は、他の硬質皮膜を成膜した場合に比べて優れた装飾性及び意匠性を有することができる。
本発明の一態様は、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材と、前記被成膜部材の表面に形成された第1の炭素含有珪素膜と、前記第1の炭素含有珪素膜上に形成された酸化珪素膜と、前記酸化珪素膜上に形成された第2の炭素含有珪素膜と、前記第2の炭素含有珪素膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、を具備することを特徴とする複合硬質皮膜部材である。
上記本発明の一態様によれば、被成膜部材の表面とダイヤモンドライクカーボン膜との間に第1の炭素含有珪素膜、酸化珪素膜及び第2の炭素含有珪素膜を形成することにより、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材の腐食を効果的に抑制することができる。
また、上記本発明の一態様において、前記鉄系金属材料は、鉄又は鉄を主成分とする鉄基合金であり、前記非鉄系金属材料は、アルミニウム、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムを主成分とするマグネシウム合金、チタン、チタンを主成分とするチタン合金、亜鉛、亜鉛主成分とする亜鉛合金、ニッケル及びニッケルを主成分とするニッケル合金からなる群から選択される一の材料である。
また、上記本発明の一態様において、前記被成膜部材の表面にはメッキ層が形成されており、前記第1の炭素含有珪素膜は前記メッキ層上に形成されており、前記メッキ層は、非鉄系金属材料からなる層である。この非鉄系金属材料は、例えばニッケル又はニッケルを主成分とするニッケル合金からなる。
なお、鉄を主成分とする鉄基合金は、50重量%以上の鉄を含有する合金、好ましくは65重量%以上の鉄を含有する合金、より好ましくは80重量%以上の鉄を含有する合金である。また、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金は、65重量%以上のアルミニウムを含有する合金、好ましくは80重量%以上のアルミニウムを含有する合金である。また、マグネシウムを主成分とするマグネシウム合金は80重量%以上のマグネシウムを含有する合金であり、チタンを主成分とするチタン合金は70重量%以上のチタンを含有する合金であり、亜鉛を主成分とする亜鉛合金は90重量%以上の亜鉛を含有する金属である。また、ニッケルを主成分とするニッケル合金は、50重量%以上のニッケルを含有する合金、好ましくは65重量%以上のニッケルを含有する合金、より好ましくは80重量%以上のニッケルを含有する合金である。
また、上記本発明の一態様において、前記被成膜部材は、工具、金型、自動車用ホイール(Al、Mg)、携帯電話やカメラ筐体(Al、Mg)等、鉄系、非鉄系部品からなる群から選択される一の部材である。
また、上記本発明の一態様において、前記被成膜部材は、自動車用アルミホイール、自動車用マグネシウムホイール、アルミニウム製アイロン、自動車用のアルミニウム合金製ドアノブ、ノートパソコンのマグネシウム合金製筐体、カメラのアルミ合金製筐体、カメラのマグネシウム合金製筐体及び携帯電話器のマグネシウム合金製筐体からなる群から選択される一の部材であることが好ましい。これにより、優れた装飾性及び意匠性を付与することができるとともに、被成膜部材の腐食を効果的に抑制することができる。
また、上記本発明の一態様に係る複合硬質皮膜部材において、前記第1の炭素含有珪素膜の膜厚が0.01〜5μmであることが好ましい。0.01〜5μmの範囲とする理由は、炭素含有珪素膜の膜厚は厚すぎても薄すぎても(つまり0.01μm未満としても5μmより厚くしても)、複合硬質皮膜部材の密着強度が低下してしまうためである。
また、上記本発明の一態様に係る複合硬質皮膜部材において、前記酸化珪素膜の膜厚が0.01〜5μmであることが好ましい。0.01〜5μmの範囲とする理由は、酸化珪素膜の膜厚を0.01μm未満とすると、被成膜部材が腐食されやすくなり、酸化珪素膜の膜厚を5μmより厚くすると、複合硬質皮膜部材が剥離しやすくなるためである。
また、上記本発明の一態様に係る複合硬質皮膜部材において、前記第2の炭素含有珪素膜の膜厚が0.01〜5μmであることが好ましい。0.01〜5μmの範囲とする理由は、炭素含有珪素膜の膜厚は厚すぎても薄すぎても(つまり0.01μm未満としても5μmより厚くしても)、複合硬質皮膜部材の密着強度が低下してしまうためである。
本発明の一態様は、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材の表面にプラズマCVD法により第1の珪素化合物ガスを用いた第1の炭素含有珪素膜を成膜し、前記第1の炭素含有珪素膜上に第2の珪素化合物ガスと酸素ガスを用いたプラズマCVD法により酸化珪素膜を成膜し、前記酸化珪素膜上にプラズマCVD法により第3の珪素化合物ガスを用いた第2の炭素含有珪素膜を成膜し、前記第2の炭素含有珪素膜上にプラズマCVD法によりダイヤモンドライクカーボン膜を成膜することを特徴とする複合硬質皮膜部材の製造方法である。
また、上記本発明の一態様において、前記被成膜部材の表面にはメッキ層が形成されており、前記第1の炭素含有珪素膜は前記メッキ層上に成膜されており、前記メッキ層は、非鉄系金属材料からなる層である。この非鉄系金属材料は、例えばニッケル又はニッケルを主成分とするニッケル合金である。
また、上記本発明の一態様において、前記第1乃至第3の珪素化合物ガスそれぞれは、ヘキサメチルジシラザン(C19NSi)、ヘキサメチルジシロキサン(C18OSi)又はテトラメチルシラン(C12Si)であることが好ましい。
本発明によれば、DLC膜を成膜した鉄系金属材料部材又は非鉄系金属材料部材の腐食を抑制できる複合硬質皮膜部材又はその製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態1によるプラズマCVD装置を概略的に示す構成図である。 (A)は実施形態1の複合硬質皮膜を示す断面図であり、(B),(C),(D)は比較例の複合硬質皮膜を示す断面図である。 図2(D)に示す酸化珪素膜7、DLC膜9の成膜後のSCMからなる基材2及びマグネシウム板からなる基材2それぞれの外観観察結果を示す図である。 (A)〜(C)は、複合サイクル試験結果を示す図である。 名刺ケースに実施形態1と同様の方法で複合硬質皮膜を成膜した状態を示す写真である。
以下では、本発明の実施形態及び実施例について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施形態の記載内容及び実施例に限定して解釈されるものではない。
大量の大型製品に硬質皮膜を成膜するには、大型の反応槽を用いて大量生産する必要があり、装置の構造が複雑となる物理的蒸着法(PVD法)よりも構造が簡単な化学的蒸着法(CVD法)が有利である。CVD法の長所は、真空排気系、プラズマ用電源、原料ガス供給装置といったシンプルな構造でプラズマを形成し、大型、複雑形状のものでも付き回りの良い成膜が可能な点であり、メンテナンスもPVD法と比較すると格段に簡単である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1によるプラズマCVD装置を概略的に示す構成図である。このプラズマCVD装置は100kHzの高周波電源を用いて複合硬質皮膜を成膜するための装置である。
プラズマCVD装置は、真空槽(チャンバー)1を有しており、この真空槽1内にはワーク2を保持するワークホルダー(図示せず)が配置されている。ワーク2は、鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材であって、工具、金型、自動車用ホイール(Al、Mg)、携帯電話やカメラ筐体(Al、Mg)等、鉄系、非鉄系部品からなる群から選択される一の部材であるとよい。
また、ワーク2は、例えばアルミホイール、マグネシウムホイール、アルミニウム製アイロン、自動車用のアルミニウム合金製ドアノブ、ノートパソコンのマグネシウム合金製筐体、カメラのアルミ合金製筐体、カメラのマグネシウム合金製筐体及び携帯電話器のマグネシウム合金製筐体からなる群から選択される一の部材であってもよい。
また、ワーク2は、その表面にはメッキ層が形成されており、このメッキ層は、非鉄系金属材料からなる層であってもよいし、この非鉄系金属材料は、例えばニッケル又はニッケルを主成分とするニッケル合金からなるとよい。
鉄系金属材料は、鉄又は鉄を主成分とする鉄基合金である。鉄基合金は、50重量%以上の鉄を含有する合金、好ましくは65重量%以上の鉄を含有する合金、より好ましくは80重量%以上の鉄を含有する合金である。
非鉄系金属材料は、アルミニウム、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムを主成分とするマグネシウム合金、チタン、チタンを主成分とするチタン合金、亜鉛、亜鉛主成分とする亜鉛合金、ニッケル及びニッケルを主成分とするニッケル合金からなる群から選択される一の材料である。アルミニウム合金は、65重量%以上のアルミニウムを含有する合金、好ましくは80重量%以上のアルミニウムを含有する合金である。マグネシウム合金は80重量%以上のマグネシウムを含有する合金であり、チタン合金は70重量%以上のチタンを含有する合金であり、亜鉛合金は90重量%以上の亜鉛を含有する金属である。ニッケル合金は、50重量%以上のニッケルを含有する合金、好ましくは65重量%以上のニッケルを含有する合金、より好ましくは80重量%以上のニッケルを含有する合金である。
ワーク2にはワークホルダーを介して基板バイアス電源系4が電気的に接続されており、この基板バイアス電源系4は基板整合器および100kHzの高周波電源(RF電源)を有している。ワークホルダーはRF電極としても作用する。基板バイアス電源系4は、ワークホルダーを介してワーク2に高周波電力を印加するものである。つまり、このプラズマCVD装置は、基板バイアス電源系4によって、100kHzの高周波電流をワークホルダーに供給して、ワーク2の近傍に原料ガスのプラズマを発生させるようになっている。
尚、本実施形態では、100kHzの周波数を用いているが、50〜500kHzの範囲内であれば他の周波数を用いても良いが、より好ましくは300kHz以下の周波数を用いることであり、さらに好ましくは250kHz以下の周波数を用いることである。300kHz以下の高周波電源を用いた場合、マッチングトランスなどを用いた低価格な整合器でマッチングをとることができる利点がある。また、高周波電源の周波数が50kHzより低くなると、ワーク2に誘導加熱が生じるという問題が発生する。また、高周波電源の周波数が500kHzを超えると、ワーク2に加えられるバイアスが低下し、硬質膜が成膜されにくいといった問題が発生する。
真空槽1にはガス系5が接続されており、このガス系5によって原料ガスが導入口より真空槽1内に供給される。原料ガスは、アルゴンガス、酸素ガス、珪素化合物ガスおよびトルエンである。珪素化合物ガスは、例えばヘキサメチルジシラザン(C19NSi)又はヘキサメチルジシロキサン(C18OSi)(以下、これらを総称してHMDSともいう)又はテトラメチルシラン(C12Si)である。このガス系5は、真空槽1内に原料ガスを導入するガス導入経路を有しており、ガス導入経路はガス配管を有している。ガス配管には、ガス流量を計測する流量計及びガス流量を制御するガスフローコントローラーが設けられている。流量計により適量のアルゴンガス、酸素ガス、HMDS及びトルエンがガス導入口より真空槽1内に供給されるようになっている。また、真空槽1には、その内部を真空排気する排気系6が接続されている。排気系6は真空ポンプを有しており、この真空ポンプは、高価でメンテナンスの煩雑なターボ分子ポンプや拡散ポンプを用いず、安価でメンテナンスの簡単なメカニカルブースターポンプと油回転ポンプで構成されている。このような簡単な構成のポンプでは0.5〜1Pa程度の真空度しか得られないが、本実施形態による方法では、このような低真空でも高品質の皮膜を製造することが可能である。
次に、図1のプラズマCVD装置を用いて図2(A)に示すようなワーク表面に複合硬質皮膜を成膜する方法について説明する。
まず、ワーク(被成膜部材)として、鉄系基材であるクロムモリブデン鋼(SCM,サイズ:20mm×50mm×3mm)からなる基材2、及び非鉄系基材であるマグネシウム板(サイズ:20mm×50mm×5mm)からなる基材2を用意し、基板2をアセトン中にて30分間の超音波洗浄を行った後、真空槽1内のワークホルダーに装着する。
次いで、排気系6によって真空槽1内を0.7Pa以下まで排気し、その後、真空槽1内にアルゴンガスを導入する。次いで、250Wの出力で高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、基材2の近傍にアルゴンプラズマを形成し、基材2の表面清浄化のため20分間イオンエッチングする。これにより、基材2の表面が洗浄される。
この後、排気系6によって真空槽1内の圧力を0.6Pa以下に維持し、炭素含有珪素膜の原料ガスであるヘキサメチルジシラザンを8cc/分の流量で真空槽1内に導入する。次いで、250Wの出力で高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、基材2の表面上に膜厚が0.2μmの炭素含有珪素膜(Si膜)10が成膜される。この炭素含有珪素膜10は、10〜50at%の炭素、20〜50at%の珪素及び10〜40at%の水素を含有することが好ましく、窒素及び酸素等をさらに含んでいても良い。なお、炭素含有珪素膜10の組成は、成膜条件等によって変動するものと考えられる。
次いで、酸化珪素膜の原料ガスとしてヘキサメチルジシラザンを5cc/分の流量、酸素ガスを50cc/分の流量で真空槽1内に導入する。次いで、300Wの出力で高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、炭素含有珪素膜10の上に膜厚が0.4μmの酸化珪素膜(SiO膜)7が成膜される。
この後、原料ガスの酸素ガスを停止し、炭素含有珪素膜の原料ガスであるヘキサメチルジシラザンを8cc/分の流量で真空槽1内に導入する。次いで、250Wの出力で高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、酸化珪素膜7の上に膜厚が0.8μmの炭素含有珪素膜(Si膜)8が成膜される。この炭素含有珪素膜8は、10〜50at%の炭素、20〜50at%の珪素及び10〜40at%の水素を含有することが好ましく、窒素及び酸素等をさらに含んでいても良い。なお、炭素含有珪素膜8の組成は、成膜条件等によって変動するものと考えられる。
次いで、原料ガスのヘキサメチルジシラザンを停止し、DLC膜の原料ガスであるトルエンを10cc/分の流量で真空槽1内に導入する。次いで、300Wの出力で高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、炭素含有珪素膜8の上に膜厚が2.3μmのDLC膜9が成膜される。
次に、比較例として図2(B),(C),(D)に示すDLC複合膜を図1のプラズマCVD装置を用いて作製し、図2(A)〜(D)に示すDLC複合膜の腐食試験を行ったので、これについて説明する。
まず、図2(B)に示すDLC複合膜を図1のプラズマCVD装置を用いて成膜する方法について説明する。
図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、同様の基材2を超音波洗浄し、真空槽1内のワークホルダーに装着し、20分間イオンエッチングする。この後、図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、ヘキサメチルジシラザンを真空槽1内に導入する。次いで、高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、基材2の表面上に炭素含有珪素膜(Si膜)10が成膜される。この炭素含有珪素膜10は、図2(A)に示す炭素含有珪素膜10と同様のものである。
次いで、図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、原料ガスのヘキサメチルジシラザンを停止し、トルエンを真空槽1内に導入する。次いで、高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、炭素含有珪素膜8の上にDLC膜9が成膜される。このDLC膜9は、図2(A)に示すDLC膜9と同様のものである。
次に、図2(C)に示すDLC複合膜を図1のプラズマCVD装置を用いて成膜する方法について説明する。
基材2の表面上に炭素含有珪素膜(Si膜)10を成膜するまでは、図2(B)に示す工程と同様である。
次いで、図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、原料ガスとしてヘキサメチルジシラザン、酸素ガスを真空槽1内に導入する。次いで、高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、炭素含有珪素膜10の上に酸化珪素膜(SiO膜)7が成膜される。この酸化珪素膜7は、図2(A)に示す酸化珪素膜7と同様のものである。
次いで、図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、原料ガスのヘキサメチルジシラザン、酸素ガスを停止し、トルエンを真空槽1内に導入する。次いで、高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、酸化珪素膜7の上にDLC膜9が成膜される。このDLC膜9は、図2(A)に示すDLC膜9と同様のものである。
次に、図2(D)に示すDLC複合膜を図1のプラズマCVD装置を用いて成膜する方法について説明する。
図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、基材2を超音波洗浄し、真空槽1内のワークホルダーに装着し、20分間イオンエッチングする。この後、図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、原料ガスとしてヘキサメチルジシラザン、酸素ガスを真空槽1内に導入する。次いで、高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、基材2の表面上に酸化珪素膜(SiO膜)7が成膜される。この酸化珪素膜7は、図2(A)に示す酸化珪素膜7と同様のものである。
次いで、図2(A)に示すDLC複合膜と同様の方法で、原料ガスのヘキサメチルジシラザン、酸素ガスを停止し、トルエンを真空槽1内に導入する。次いで、高周波電源を用いてワークホルダーに100kHzの高周波電流を供給することにより、酸化珪素膜7の上にDLC膜9が成膜される。このDLC膜9は、図2(A)に示すDLC膜9と同様のものである。
次に、図2(D)に示す酸化珪素膜7、DLC膜9の成膜後のSCMからなる基材2及びマグネシウム板からなる基材2それぞれの外観観察結果を図3に示す。この図から、SCM板(基材)では全面剥離が生じ、Mg板(基材)では部分剥離が生じていることが分かる。これは基材2と酸化珪素膜7の密着性が悪いことが原因であると考えられる。皮膜剥離により表面保護の機能は期待出来ないため、以下の腐食試験には図2(A)〜(C)のみを使用した。
次に、DLC複合膜の腐食試験を以下の方法で行った。
図2(A)〜(C)に示す試験片について、塩水噴霧(2時間)→乾燥(4時間)→湿潤(2時間)のサイクルを繰り返す複合サイクル試験を7日間行った。この複合サイクル試験によってDLC複合膜の耐食性を評価したところ、図4に示すような結果を得た。
図4(B)は、基材2とDLC膜9との間に中間層として炭素含有珪素膜10を形成した図2(B)の試験片(Si−DLC)に複合サイクル試験を行った後の表面状態を示している。この図から、SCM板(基材)では全面的に腐食しており、Mg板(基材)では多数の孔食が生じていることが分かる。
図4(C)は、基材2とDLC膜9との間に中間層として炭素含有珪素膜10と酸化珪素膜7を形成した図3(C)の試験片(Si−SiO−DLC)に複合サイクル試験を行った後の表面状態を示している。この図から、SCM板(基材)では全面的に腐食しており、Mg板(基材)ではDLC膜の剥離が生じていることが分かる。
これに対し、図4(A)は、基材2とDLC膜9との間に中間層として炭素含有珪素膜10と酸化珪素膜7と炭素含有珪素膜8を形成した図3(A)の試験片(Si−SiO−Si−DLC)に複合サイクル試験を行った後の表面状態を示している。この図から、SCM板(基材)では数カ所の点状の腐食が確認されるが、図4(b)、(C)と比較して良好であること、Mg材(基材)では腐食、剥離が全く認められないことが分かる。
以上の結果から、バリア性が良好な酸化珪素膜(SiO膜)が基材、及びDLC膜と良好な密着性が得られるように、その界面に炭素含有珪素膜(Si膜)を成膜したSi−SiO−Si−DLC膜が鉄系基材、非鉄系基材に対して高い耐食性を有することが明らかとなった。
(実施形態2)
図5は、実施形態1と同様の方法で、図1のプラズマCVD装置を用いて名刺ケースの表面に複合硬質皮膜を成膜した状態を示す写真である。この複合硬質皮膜は、名刺ケース上に成膜された炭素含有珪素膜、酸化珪素膜、炭素含有珪素膜、DLC膜である。名刺ケースの材質はマグネシウム合金である
図5に示す名刺ケースは、実施形態1で説明したように優れた耐食性を有し、且つ耐摩耗性、装飾性及び意匠性にも優れている。装飾性及び意匠性を付与するには、DLC膜の膜厚を1.0μm以上にすることが好ましい。これにより、図5に示すような色とすることができる。
なお、図1に示すプラズマCVD装置であれば小型の装置でも有効成膜ゾーンが広くとれるため名刺ケース以外の大型製品についても成膜が容易である。
1…真空槽
2…ワーク
4…基板バイアス電源系
5…ガス系
6…排気系
7…酸化珪素膜
8…炭素含有珪素膜
9…DLC膜
10…炭素含有珪素膜

Claims (7)

  1. 鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材と、
    前記被成膜部材の表面に形成された第1の炭素含有珪素膜と、
    前記第1の炭素含有珪素膜上に形成された酸化珪素膜と、
    前記酸化珪素膜上に形成された第2の炭素含有珪素膜と、
    前記第2の炭素含有珪素膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、
    を具備することを特徴とする複合硬質皮膜部材。
  2. 請求項1において、
    前記鉄系金属材料は、鉄又は鉄を主成分とする鉄基合金であり、
    前記非鉄系金属材料は、アルミニウム、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウムを主成分とするマグネシウム合金、チタン、チタンを主成分とするチタン合金、亜鉛、亜鉛主成分とする亜鉛合金、ニッケル及びニッケルを主成分とするニッケル合金からなる群から選択される一の材料であることを特徴とする複合硬質皮膜部材。
  3. 請求項1又は2において、
    前記被成膜部材の表面にはメッキ層が形成されており、
    前記第1の炭素含有珪素膜は前記メッキ層上に形成されており、
    前記メッキ層は、非鉄系金属材料からなる層であることを特徴とする複合硬質皮膜部材。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項において、
    前記第1の炭素含有珪素膜の膜厚が0.01〜5μmであり、前記酸化珪素膜の膜厚が0.01〜5μmであり、前記第2の炭素含有珪素膜の膜厚が0.01〜5μmであることを特徴とする複合硬質皮膜部材。
  5. 鉄系金属材料又は非鉄系金属材料からなる被成膜部材の表面にプラズマCVD法により第1の珪素化合物ガスを用いた第1の炭素含有珪素膜を成膜し、
    前記第1の炭素含有珪素膜上に第2の珪素化合物ガスと酸素ガスを用いたプラズマCVD法により酸化珪素膜を成膜し、
    前記酸化珪素膜上にプラズマCVD法により第3の珪素化合物ガスを用いた第2の炭素含有珪素膜を成膜し、
    前記第2の炭素含有珪素膜上にプラズマCVD法によりダイヤモンドライクカーボン膜を成膜することを特徴とする複合硬質皮膜部材の製造方法。
  6. 請求項5において、
    前記被成膜部材の表面にはメッキ層が形成されており、
    前記第1の炭素含有珪素膜は前記メッキ層上に成膜されており、
    前記メッキ層は、非鉄系金属材料からなる層であることを特徴とする複合硬質皮膜部材の製造方法。
  7. 請求項5又は6において、
    前記第1乃至第3の珪素化合物ガスそれぞれは、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン又はテトラメチルシランであることを特徴とする複合硬質皮膜部材の製造方法。
JP2014114149A 2014-06-02 2014-06-02 複合硬質皮膜部材及びその製造方法 Active JP6318430B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014114149A JP6318430B2 (ja) 2014-06-02 2014-06-02 複合硬質皮膜部材及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014114149A JP6318430B2 (ja) 2014-06-02 2014-06-02 複合硬質皮膜部材及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015227493A true JP2015227493A (ja) 2015-12-17
JP6318430B2 JP6318430B2 (ja) 2018-05-09

Family

ID=54885116

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014114149A Active JP6318430B2 (ja) 2014-06-02 2014-06-02 複合硬質皮膜部材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6318430B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63286576A (ja) * 1987-05-19 1988-11-24 Idemitsu Petrochem Co Ltd 硬質炭素膜の製造方法
JPH01132779A (ja) * 1987-11-17 1989-05-25 Nikon Corp 硬質炭素膜被覆を施した金属基体
JP2000073171A (ja) * 1998-08-25 2000-03-07 Toshiba Ceramics Co Ltd 化学蒸着法多層SiC膜の製造方法
JP2006527791A (ja) * 2003-06-16 2006-12-07 コミサリア、ア、レネルジ、アトミク 少なくとも一つの水素含有アモルファスカーボンを含んでなる、機械部品用コーティング、およびコーティングの堆積方法
JP2011162865A (ja) * 2010-02-12 2011-08-25 Yamaguchi Prefectural Industrial Technology Institute 複合硬質皮膜部材及びその製造方法
JP2012224925A (ja) * 2011-04-21 2012-11-15 Shinko Seiki Co Ltd 表面処理装置および表面処理方法
JP2013028861A (ja) * 2011-07-29 2013-02-07 Miyako Roller Industry Co 基材への親水性dlc膜の成膜方法と親水性dlc成膜基材

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS63286576A (ja) * 1987-05-19 1988-11-24 Idemitsu Petrochem Co Ltd 硬質炭素膜の製造方法
JPH01132779A (ja) * 1987-11-17 1989-05-25 Nikon Corp 硬質炭素膜被覆を施した金属基体
JP2000073171A (ja) * 1998-08-25 2000-03-07 Toshiba Ceramics Co Ltd 化学蒸着法多層SiC膜の製造方法
JP2006527791A (ja) * 2003-06-16 2006-12-07 コミサリア、ア、レネルジ、アトミク 少なくとも一つの水素含有アモルファスカーボンを含んでなる、機械部品用コーティング、およびコーティングの堆積方法
JP2011162865A (ja) * 2010-02-12 2011-08-25 Yamaguchi Prefectural Industrial Technology Institute 複合硬質皮膜部材及びその製造方法
JP2012224925A (ja) * 2011-04-21 2012-11-15 Shinko Seiki Co Ltd 表面処理装置および表面処理方法
JP2013028861A (ja) * 2011-07-29 2013-02-07 Miyako Roller Industry Co 基材への親水性dlc膜の成膜方法と親水性dlc成膜基材

Also Published As

Publication number Publication date
JP6318430B2 (ja) 2018-05-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3330143B2 (ja) 低温プラズマおよび電着を使用した金属被覆方法
US8741111B2 (en) Coated article and method for making said article
US20120121856A1 (en) Coated article and method for making same
US20110318558A1 (en) Coating, article coated with coating, and method for manufacturing article
TW201236876A (en) Vacuum depositing articles and method for making same
CN108977781B (zh) 一种硬质合金表面磁控溅射复合技术沉积w-n硬质膜的方法
CN107858684B (zh) 金属-类金刚石复合涂层及其制备方法与用途以及涂层工具
CN106637155A (zh) 镁合金表面耐磨耐腐蚀薄膜及其制备方法
JP2017040373A5 (ja)
CN105779943A (zh) 一种物理气相沉积氟硅烷制备疏水膜的方法
JP2003268571A (ja) 複合硬質皮膜、その製造方法及び成膜装置
US20120308810A1 (en) Coated article and method for making the same
US20120263941A1 (en) Coated article and method for making the same
CN100497741C (zh) 一种镁合金防护方法
WO2014103318A1 (ja) プラズマcvd法による保護膜の形成方法
JP6318430B2 (ja) 複合硬質皮膜部材及びその製造方法
JP5585954B2 (ja) 複合硬質皮膜部材及びその製造方法
CN110438421A (zh) 一种铝合金材料及铝合金固溶处理+pvd涂层同步强化方法
US8367225B2 (en) Coating, article coated with coating, and method for manufacturing article
US8722180B2 (en) Coated article and method for making said article
US8663795B2 (en) Coated article and method for making same
JP2013044382A (ja) 船舶用ピストンリング及びその製造方法
US8609241B2 (en) Coated article and method of making the same
US8614000B2 (en) Coated article and method of making the same
TWI471440B (zh) 殼體及其製作方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170526

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170526

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180223

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180306

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180314

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6318430

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250