JP2015226934A - 4電極片面1層サブマージアーク溶接方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この溶接方法では、各電極のワイヤ径は4.8mm以上で、第1電極の電流(I1)を1200〜2000Aとして、第2電極の電流(I2)および第3電極の電流(I3)はI1>I2≧I3で、かつ第1電極と第2電極の電極間距離を20〜70mm、第2電極と第3電極の電極間距離を3電極溶接の場合100〜150mm、4電極溶接の場合150〜300mmで溶接することを特徴としている。
特許文献1に記載の技術では、第2電極と第3電極との電極間距離が長いため、第3電極の溶け込みが浅く、第1電極と第2電極との電極間で発生した溶接金属中の割れを除去できないという問題がある。
また、ワイヤ突出し長さによっては、第1電極および第2電極で発生したスラグが第3電極および第4電極のチップに付着し、表ビード外観が不良になるという問題がある。
また、ワイヤ突出し長さによっては、第1電極および第2電極で発生したスラグが第3電極および第4電極のチップに付着し、表ビード外観が不良になるという問題がある。
また、片面1層サブマージアーク溶接では、溶接金属における融合不良の発生を抑制することも必要である。
かかる溶接方法によれば、第3電極のアークがより安定し、ビード形状がより良好となる。
かかる溶接方法によれば、裏ビードがより安定し、また、ビード幅がより広くなりやすく、耐高温割れ性がより向上しやすくなる。
かかる溶接方法によれば、厚板であっても、良好な高温割れを抑制できるとともに、良好なビード形状を得ることができる。
かかる溶接方法によれば、裏ビードがより安定しやすくなる。
かかる溶接方法によれば、第3電極のワイヤ径を好ましい値とすることで耐高温割れ性がより向上しやすくなる。また、第4電極のワイヤ径を好ましい値とすることで表ビードがより安定しやすくなる。
本発明の4電極片面1層サブマージアーク溶接方法は、4電極を用いて片面1層の溶接を行う4電極片面1層サブマージアーク溶接方法である。そして、本発明の溶接方法は、電極間距離、電極のワイヤ径、電極のワイヤ突出し長さ、電流と電極間距離と被溶接鋼板の板厚との関係を規定したものである。
(溶接装置)
図1に示すように、溶接装置100は、架台フレーム11と、溶接機12と、溶接機ビーム13と、を主に備える。
溶接機ビーム13は、溶接機12を鋼板20の長手方向に沿って移動させるものである。
溶接機12は、架台フレーム11の上方(鋼板20の上方)に配置され、鋼板20の溶接開先部M(図2参照)の表側から鋼板20を溶接するものである。溶接機12は、ここでは4本の電極(溶接トーチ)15を備える。溶接機12は、溶接機ビーム13に沿って所定速度で移動しながら、溶接開先部Mの表側から電極15によって片面サブマージアーク溶接により鋼板20を溶接する。
鋼板20としては、例えば造船用鋼板が挙げられ、その長さは、例えば10〜30mである。図2に示すように、この鋼板20には、鋼板20同士を突き合わせ、溶接開先部Mの位置で、断続あるいは連続した面内仮付がなされている。
この鋼板20の始端31および終端32には、クレータを処理するためのタブ21,22が取り付けられている。
また、ワイヤ突出し長さA1〜A4とは、溶接を行う際の電極の配置において、チップ17a〜17dの先端の中央、すなわち、チップ17a〜17dの先端とワイヤ16a〜16dとの接点から、ワイヤ16a〜16dの先端に対して水平に基準線を引いた場合の前記基準線までの垂直な長さをいう。なお、ワイヤ16a〜16dの先端が鋼板20に接している場合は、ワイヤ突出し長さA1〜A4とは、チップ17a〜17dの先端とワイヤ16a〜16dとの接点から、鋼板20までの垂直な長さとなる。
以下、各条件について説明する。
第1電極15aと第2電極15bとの電極間距離B1が25〜65mmであれば、アーク同士が干渉しにくく、第1電極と第2電極夫々のアークが安定し、裏ビードが安定する。電極間距離B1が25mm未満では、アーク同士が干渉しアーク不安定となり、裏ビードが不安定になる。一方、電極間距離B1が65mmを超えると、溶融金属の湯溜まりが不安定となり、裏ビードが不安定となる。したがって、第1電極15aと第2電極15bとの電極間距離B1は25〜65mmとする。なお、裏ビードをより安定させる観点から、電極間距離B1は、好ましくは30mm以上、より好ましくは35mm以上とする。また、裏ビードをより安定させる観点から、電極間距離B1は、好ましくは60mm以下、より好ましくは55mm以下とする。
第2電極15bと第3電極15cとの電極間距離B2が100〜149mmであれば、裏ビードが安定し、また、耐高温割れ性が向上する。電極間距離B2が100mm未満では、裏ビードが不安定となる。一方、電極間距離B2が149mmを超えると、第3電極15cの溶け込みが浅くなり、耐高温割れ性が劣化する。したがって、第2電極15bと第3電極15cとの電極間距離B2は100〜149mmとする。なお、裏ビードをより安定させる観点から、電極間距離B2は、好ましくは110mm以上、より好ましくは115mm以上とする。また、耐高温割れ性をより向上させる観点から、電極間距離B2は、好ましくは145mm以下、より好ましくは140mm以下とする。
第3電極15cと第4電極15dとの電極間距離B3が20〜80mmであれば、大電流でもアーク干渉が少なくなるため、表ビードが安定する。電極間距離B3が20mm未満では、アーク干渉の影響が大きくなり、表ビードが不安定となる。一方、電極間距離B3が80mmを超えると、表ビードが不安定となる。したがって、第3電極15cと第4電極15dとの電極間距離B3は20〜80mmとする。なお、表ビードをより安定させる観点から、電極間距離B3は、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上とする。また、表ビードをより安定させる観点から、電極間距離B3は、好ましくは70mm以下、より好ましくは65mm以下とする。
第1電極15aのワイヤ径が3.2mmφを超え6.4mmφ未満であれば、安定した溶け込みが実現され、裏ビードが安定する。ワイヤ径が3.2mmφ以下では、アークが不安定となり、裏ビードが不安定となる。一方、ワイヤ径が6.4mmφ以上では、溶け込みが浅くなり、裏ビードが不安定となる。したがって、第1電極15aのワイヤ径は3.2mmφを超え6.4mmφ未満とする。なお、裏ビードをより安定させる観点から、第1電極15aのワイヤ径は、好ましくは4.0mmφ以上とする。また、裏ビードをより安定させる観点から、第1電極15aのワイヤ径は、好ましくは4.8mmφ以下、より好ましくは4.8mmφとする。
第2電極15bのワイヤ径が3.2mmφを超えるものであれば、裏ビードが安定し、また、ビード幅が広くなり、耐高温割れ性が向上する。ワイヤ径が3.2mmφ以下では、アークが不安定となり、裏ビードが不安定となる。したがって、第2電極15bのワイヤ径は3.2mmφを超えるものとする。一方、ワイヤ径が6.4mmφ以下であれば、ビード幅が広くなり、耐高温割れ性が向上しやすくなる。したがって、第2電極15bのワイヤ径は6.4mmφ以下とすることが好ましい。すなわち、第2電極15bのワイヤ径は、4.0mmφ、4.8mmφ、6.4mmφのいずれでも使用することができる。なお、裏ビードをより安定させ、また、ビード幅をより広くしやすく、耐高温割れ性をより向上しやすくする観点から、第2電極15bのワイヤ径は、好ましくは4.8mmφ以上、より好ましくは4.8mmφとする。
第3電極15cのワイヤ径が4.8mmφを超えるものであれば、溶け込みが深くなり、耐高温割れ性が向上する。ワイヤ径が4.8mmφ以下では、アークが集中して融合不良が発生する。したがって、第3電極15cのワイヤ径は4.8mmφを超えるものとする。一方、ワイヤ径が6.4mmφ以下であれば、溶け込みが深くなり、耐高温割れ性が向上しやすくなる。したがって、第3電極15cのワイヤ径は6.4mmφ以下とすることが好ましい。なお、耐高温割れ性をより向上させる観点から、第3電極15cのワイヤ径は、好ましくは6.4mmφとする。
第4電極15dのワイヤ径が4.8mmφを超えるものであれば、表ビードが安定する。ワイヤ径が4.8mmφ以下では、余盛が高く、オーバーラップが発生し、表ビードが不安定となる。したがって、第4電極15dのワイヤ径は4.8mmφを超えるものとする。一方、ワイヤ径が6.4mmφ以下であれば、ビード幅が広がらず、中央部が凸化しにくく、表ビードが安定しやすくなる。したがって、第4電極15dのワイヤ径は6.4mmφ以下とすることが好ましい。なお、表ビードをより安定させる観点から、第4電極15dのワイヤ径は、好ましくは6.4mmφとする。
第3電極15cのワイヤ突出し長さA3が40mm以上であれば、表ビードが安定する。ワイヤ突出し長さA3が40mm未満では、第3電極15cにスラグが付着し、溶接中にこのスラグが溶融プールへ落下する。そのため、表ビードが不安定となる。したがって、第3電極のワイヤ突出し長さは40mm以上とする。なお、表ビードをより安定させる観点から、ワイヤ突出し長さA3は、好ましくは45mm以上、より好ましくは50mm以上とする。また、上限については特に規定されるものではないが、表ビードをより安定させる観点から、電ワイヤ突出し長さA3は、好ましくは80mm以下、より好ましくは75mm以下とする。
第4電極15dのワイヤ突出し長さA4が40mm以上であれば、表ビードが安定する。ワイヤ突出し長さA4が40mm未満では、第4電極15dにスラグが付着し、溶接中にこのスラグが溶融プールへ落下する。そのため、表ビードが不安定となる。したがって、第4電極のワイヤ突出し長さは40mm以上とする。なお、表ビードをより安定させる観点から、ワイヤ突出し長さA4は、好ましくは45mm以上、より好ましくは50mm以上とする。また、上限については特に規定されるものではないが、表ビードをより安定させる観点から、電ワイヤ突出し長さA4は、好ましくは80mm以下、より好ましくは75mm以下とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、電流、電極間距離、板厚を相互に調整することにより、耐高温割れ性を向上できることを見出した。すなわち、
第3電極15cの電流をI3(A)、被溶接鋼板20の板厚をt(mm)としたときに、下記式(1)「I3≧7×(第2電極と第3電極との電極間距離(mm)+12.5t−350・・・(1)」であれば、耐高温割れ性が向上する。式(1)を満たさないと、第3電極15cの溶け込みが浅くなり、耐高温割れ性が劣化する。したがって、「I3≧7×(第2電極と第3電極との電極間距離(mm)+12.5t−350」とする。なお、本関係式は実験により導かれたものである。
ただし、これに限定されるものではなく、V形開先の鋼板を対象としたものであってもよい。また、溶融フラックスを用いた溶接であってもよく、RF(Resin Flux)方式(図4参照)で溶接するものであってもよい。
(準備工程)
準備工程では、まず、タブ21,22が取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板20,20を準備する。次に、裏当装置50aの裏当銅板55上面に、図示しないフラックス供給手段により裏当フラックス52を供給する。あるいは、裏当装置50bの耐火性キャンバス56内の耐熱カバー57上面に、図示しないフラックス供給手段により下敷フラックス58を供給し、更にその上に裏当フラックス52を供給する。そして、鋼板20,20を溶接装置100にセットし、裏当装置50aあるいは裏当装置50bの上方に鋼板20,20によって形成された溶接開先部Mを配置させる。そして、図示しない駆動装置を作動させて溶接開先部Mの直下に裏当銅板55あるいは耐火性キャンバス56が位置するように微調整を行う。次に、エアホース59に圧縮空気を導入し、エアホース59を膨張させて裏当銅板55あるいは下敷フラックス58を溶接開先部Mの裏側に押圧し、溶接開先部Mの裏面に裏当フラックス52を押し当てる。
電極調整工程では、4つの各電極間距離B1〜B3を調整するとともに、ワイヤ突出し長さA1〜A4を調整する。また、各電極15a〜15dの電流値を設定する。これにより、本発明の溶接方法の規定となるように調整する。なお、準備工程と電極調整工程の順序は特に規定されるものではなく、どちらの工程が先でもよく、同時に行ってもよい。
溶接工程では、まず、溶接装置100の溶接機12を溶接開始の位置に移動させる。次に、電極15に、本発明の規定の電流値となるように電流を供給し、溶接機12を作動させる。そして、鋼板20の始端31から終端32に向かって溶接機ビーム13に沿って溶接機12を所定速度で移動させながら、表フラックス51を供給しながら鋼板20,20を溶接する。
この鋼板の組成、使用したワイヤの組成、および、フラックスの組成を下記表1に示す。
溶接装置は、図3に示す裏当装置50aあるいは図4に示す裏当装置50bを有するものを用い、表フラックスとして高温焼結フラックス、裏フラックスとして焼結フラックスを用いた。なお、表2〜4に示す条件以外の条件は従来公知の条件であり、すべて同一条件とした。なお、本発明の範囲を満たさないものは数値に下線を引いて示す。
ビード形状は、表ビードおよび裏ビードを目視にて観察して評価した。表ビードおよび裏ビードは、それぞれ、余盛高さが2〜4mm、かつ、余盛高さおよびビード幅がほぼ均一なものを極めて良好(◎)、余盛高さが2〜4mm、かつ、余盛高さおよびビード幅がやや均一なものを良好(○)とした。また、表ビードおよび裏ビードは、それぞれ、余盛が過少もしくは過剰であるもの、アンダーカットが多発したもの、ビード幅が不均一なもの、あるいは、ビード外観が不良となったものを不良(×)とした。
図6に示すように、本溶接方法で形成される溶接金属は、第1電極(L極)および第2電極(T1極)で形成される溶接金属60と、第3電極(T2極)および第4電極(T3極)で形成される溶接金属61からなる。第1電極および第2電極で発生する溶接金属60の組織はデンドライトが真横に成長し高温割れが発生しやすい。そのため、第3電極で発生する溶接金属が深く溶け込み、その脆弱な組織を溶かすことで耐高温割れ性は良好となる。よって断面マクロ組織から第3電極および第4電極の溶け込み深さTを計測して評価した。鋼板20の板厚をtとしたとき、鋼板20の表面(上面)から、第3電極および第4電極で形成される溶接金属61の溶け込み深さTが「4/4t>T≧3/4t」の関係になる場合を、耐高温割れ性が良好(◎)、「3/4t>T」、「T≧4/4t」の関係になる場合を不良(×)とした。
融合不良は、X線透過試験により評価し、溶接金属に欠陥がなければ良好(◎)、欠陥があれば不良(×)とした。
これらの結果を表5〜7に示す。
一方、表6、7に示すように、本発明の範囲を満足しないNo.42〜113は、以下の結果となった。
12 溶接機
13 溶接機ビーム
15 電極
15a 第1電極
15b 第2電極
15c 第3電極
15d 第4電極
16a〜16d ワイヤ
17a〜17d チップ
20 鋼板
21,22 タブ
31 始端
32 終端
50a,50b 裏当装置
51 表フラックス
52 裏当フラックス
53 スラグ
54 溶接金属
55 裏当銅板
56 耐火性キャンバス
57 耐熱カバー
58 下敷フラックス
59 エアホース
60 第1電極および第2電極で形成される溶接金属
61 第3電極および第4電極で形成される溶接金属
100 溶接装置
A1〜A4 ワイヤ突出し長さ
B1〜B3 電極間距離
T 第3電極および第4電極で形成される溶接金属の溶け込み深さ
t 板厚
Claims (6)
- 4電極を用いて片面1層の溶接を行う4電極片面1層サブマージアーク溶接方法であって、
第1電極と第2電極との電極間距離:25〜65mm
第2電極と第3電極との電極間距離:100〜149mm
第3電極と第4電極との電極間距離:20〜80mm
第1電極のワイヤ径:3.2mmφを超え6.4mmφ未満
第2電極のワイヤ径:3.2mmφを超え
第3電極および第4電極のワイヤ径:4.8mmφを超え
第3電極および第4電極のワイヤ突出し長さ:40mm以上
第3電極の電流をI3(A)、被溶接鋼板の板厚をt(mm)としたときに、下記式(1)
I3≧7×(第2電極と第3電極との電極間距離(mm))+12.5t−350・・・(1)
の条件で溶接を行うことを特徴とする4電極片面1層サブマージアーク溶接方法。 - 前記第3電極の電流が750〜1600Aであることを特徴とする請求項1に記載の4電極片面1層サブマージアーク溶接方法。
- 前記第2電極のワイヤ径が4.8mmφであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の4電極片面1層サブマージアーク溶接方法。
- 前記被溶接鋼板の板厚が10〜40mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の4電極片面1層サブマージアーク溶接方法。
- 前記第1電極のワイヤ径が4.0〜4.8mmφであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の4電極片面1層サブマージアーク溶接方法。
- 前記第3電極および第4電極のワイヤ径が6.4mmφであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の4電極片面1層サブマージアーク溶接方法。
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