JP2015224177A - 光学部品 - Google Patents

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茂則 木下
Shigenori Kinoshita
茂則 木下
中山 茂
Shigeru Nakayama
茂 中山
長谷川 幹人
Mikito Hasegawa
幹人 長谷川
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Abstract

【課題】長時間の過酷環境下での使用においても、赤外線透過特性が低下しない、優れた耐候性を有する光学部品を提供する。【解決手段】光学部品は、ZnS焼結体を含む基材と、基材の主面上に積層される2種類以上の中間層を含む多層中間膜と、多層中間膜上に積層されるダイヤモンドライクカーボンで形成される表面層とを有し、多層中間膜は、ダイヤモンドライクカーボンで形成される中間層を含む。【選択図】なし

Description

本発明は光学部品に関し、より特定的には赤外線光学部品に関する。
近年、物体から放射又は放散される熱による赤外線を検知する各種の赤外線検出機器の開発が進められている。これらの赤外線検出機器の光学窓などを構成する赤外線光学部品は、必要な波長帯の赤外線を透過する材料で作製することが要求される。
赤外線透過材料としては、硫化亜鉛(ZnS)、フッ化マグネシウム(MgF)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、セレン化亜鉛(ZnSe)、フッ化リチウム(LiF)、酸化ケイ素(SiO)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)などの誘電体や、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体が挙げられる。これらの材料のうち、ZnSは、透光性を示す波長領域が0.4μm以上14.4μm以下と広く、比較的大きな多結晶バルク材料を得ることができるので、赤外線光学部品の構成材料として、今後の応用が期待されている。
しかしながら、ZnSはヌープ硬度が約250kg/mm程度で、機械的接触に対してやや弱く、表面損傷を受けやすいため、長期間の使用に伴い赤外線透過特性が低下するという問題があった。
特開平4−217202号公報(特許文献1)には、赤外線光学部品の表面の機械的強度を向上するために、基材の少なくとも一表面に、最外層に形成したダイヤモンド層またはダイヤモンド状炭素層と、このダイヤモンド層またはダイヤモンド状炭素層の内側に隣接させて形成したGe層とを含む多層コート膜を形成した赤外線光学部品が開示されている。
特開平4−217202号公報 米国特許第5510186号明細書 特開平5−065625号公報
近年では、赤外線光学部品は、たとえば防犯カメラ、航空機や人工衛星などの屋外で使用されることが多くなっている。このような環境下では、赤外線光学部品は雨滴や紫外線に暴露されることになる。赤外線光学部品に使用されるZnSは、水分および紫外線により容易に酸化する。したがって、ZnSを用いた赤外線光学部品は、屋外での使用により、赤外線透過特性が低下してしまうという問題があった。
そこで、本目的は、長時間の過酷環境下での使用においても、赤外線透過特性が低下しない、優れた耐候性を有する光学部品を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る光学部品は、ZnS焼結体を含む基材と、基材の主面上に積層される2種類以上の中間層を含む多層中間膜と、多層中間膜上に積層されるダイヤモンドライクカーボンで形成される表面層とを有し、多層中間膜は、ダイヤモンドライクカーボンで形成される中間層を含む、光学部品である。
上記態様によれば、長時間の過酷環境下での使用においても、赤外線透過特性が低下しない、優れた耐候性を有する光学部品を提供することが可能となる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
本発明の一態様に係る光学部品は、(1)ZnS焼結体を含む基材と、前記基材の主面上に積層される2種類以上の中間層を含む多層中間膜と、前記多層中間膜上に積層されるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond−Like Carbon,以下DLCとも記す)で形成される表面層(以下、DLC表面層とも記す)とを有し、前記多層中間膜は、ダイヤモンドライクカーボンで形成される中間層(以下、DLC中間層とも記す)を含む、光学部品である。
本発明の一態様に係る光学部品は、ZnS焼結体上に、DLC中間層およびDLC表面層が形成されているため、外部環境の影響でDLC表面層が破壊または剥離されても、DLC中間層によって、ZnS焼結体を保護することができる。したがって、光学部品を過酷環境下で長期間使用しても、光学部品の赤外線透過特性の低下を抑制することができ、優れた耐候性を有する光学部品を提供することが可能となる。
(2)前記多層中間膜はZnSで形成される中間層を含まないことが好ましい。従来、基材の保護膜としてダイヤモンドライクカーボンを使用する際には、膜設計の容易性の観点から中間層としてゲルマニウムとZnSの組合せを使用していた。しかし、ZnSは水分や紫外線の影響により酸化されやすいため、外部環境によって赤外線透過性が低下しやすい。したがって、光学部品の多層中間膜がZnSで形成される中間層を含まないと、光学部品の耐候性が向上する。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光学部品の具体例を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<光学部品>
本発明の一実施形態に係る光学部品は、ZnS焼結体を含む基材と、前記基材の主面上に積層される2種類以上の中間層を含む多層中間膜と、前記多層中間膜上に積層されるダイヤモンドライクカーボンで形成される表面層とを有し、前記多層中間膜は、ダイヤモンドライクカーボンで形成される中間層を含む。
<基材>
本発明の一実施形態に係る光学部品は、基材として、ZnS焼結体を用いる。従来、光学部品の基材には、気相合成(CVD:Chemical Vapor Deposition)を用いて作製される高純度な緻密体であるZnSが用いられていた。しかし、気相合成によるZnSの作製では、合成装置や原材料にコストがかかるため、コスト面の改善が望まれていた。
本発明で用いるZnS焼結体は、共沈法などの粉末合成法で安価に作製可能なZnS粉末を焼結して得られるため、コスト面で有利である。
ZnS焼結体はたとえば下記の製造方法によって得ることができる。まず、原料粉末を準備する。この工程では、平均粒径1〜3μm、純度が95%以上であるZnSの原料粉末を準備することが好ましい。
次に、成形工程が実施される。この工程では、たとえば超硬合金、工具鋼などからなる硬質の金型を使用した一軸式金型プレスを用いた成形により、前工程において準備された原料粉末がプレス成形されて、所望の概略形状を有する成形体が作製される。
次に、予備焼結工程が実施される。この工程では、成形工程において作製された成形体に対して、たとえば30Pa以下の真空雰囲気下または大気圧の窒素ガス等の不活性雰囲気下で500℃以上1000℃以下の温度に加熱され、0.5時間以上15時間以下保持される熱処理が実施されて、予備焼結体が作製される。これにより、たとえば相対密度55〜80体積%程度の予備焼結体が得られる。
次に、加圧焼結工程が実施される。この工程では、予備焼結工程において作製された予備焼結体が、型により拘束されつつ加圧され、かつ加熱されることにより変形されて、加圧焼結体が作製される。具体的には、まず、たとえばガラス状カーボンからなり、鏡面研磨された拘束面を有する1対の型(上型および下型)の間に予備焼結体を載置する。そして、当該1対の型を用いて予備焼結体をたとえば温度550℃以上1200℃以下、圧力10MPa以上300MPa以下の条件で1分以上60分以下保持して、加圧しつつ加熱する。これにより、上記予備焼結体が加圧されつつ焼結され、加圧焼結体(ZnS焼結体)が得られる。その後、必要に応じてZnS焼結体に対して仕上げ加工が実施される。この仕上げ加工は、加圧焼結工程が完了した時点において、ZnS焼結体が目的の形状となっている場合、省略することができる。
<多層中間膜>
前記基材の主面上には2種類以上の中間層を含む多層中間膜が積層されており、前記中間層のうち、少なくとも1層はダイヤモンドライクカーボンで形成される。ダイヤモンドライクカーボンは、結晶構造中にダイヤモンドのsp3結合と、グラファイトのsp2結合の両方を含むアモルファス(非晶質)構造の炭素膜である。
ダイヤモンドライクカーボン中に含まれるsp3結合とsp2結合の比率や、結晶構造中の水素原子の比率、結晶構造中の他の金属元素の有無などによって、DLCの物性が変化する。一般的に、DLC中のsp3結合の比率が高ければ、ダイヤモンドに似た物性になり、sp2結合の比率が高ければグラファイトに似た物性となる。また、DLC中の水素原子の比率が高くなると、ポリマー様の物性になる傾向がある。
DLCは、たとえば、sp3結合、sp2結合および水素含有量に基づき、ta−C(テトラへドラルアモルファスカーボン)、a−C(アモルファスカーボン)、ta−C:H(水素化テトラへドラルアモルファスカーボン)、a−C:H(水素化アモルファスカーボン)に分類することができる。中でも、ta−Cは高硬度であるため、中間層の材料として適している。
ダイヤモンドライクカーボンで形成される中間層は、ヌープ硬度が2000〜10000kg/mmと非常に高く、機械的強度および耐候性に優れている。したがって、基材上にDLCで形成される中間層が積層されると、機械的接触や長期間の過酷環境下での使用による基材の損傷を防止することができる。
中間層の材料としては、DLC以外に、シリコン、ゲルマニウム、GaP、BP、Y、Al、TiO、YF、LaF、CeF、MgF、ZnSeからなる群より選ばれる1種類以上を用いることができる。中でも、シリコンおよびゲルマニウムは、DLCとの接着性に優れているため、中間層の材料として用いると、DLC中間層およびDLC表面層の剥離を抑制することができる。
多層中間膜における中間層の積層順は、多層中間膜の表面層と接する層がDLC中間層でなければ特に限定されない。たとえば、基材の上にDLC中間層を積層し、その上にDLC以外の材料で形成される中間層を積層してもよい。また、基材の上にDLC以外の材料で形成される中間層を積層し、その上にDLC中間層を積層し、さらにDLC中間層上にDLC以外の材料で形成される中間層を積層してもよい。
多層中間膜中のDLC中間層の数は1層以上であれば特に限定されない。DLC中間層の数が多いほど、光学部品の強度および耐候性が向上する。生産性の観点から、多層中間膜中のDLC中間層の数は4層以下が好ましい。各DLC中間層の厚みは適宜選択すればよいが、たとえば、5nm以上200μm以下とすることが好ましく、50nm以上5μm以下とすることがさらに好ましい。
多層中間膜中のDLC以外の材料で形成される中間層の数は1層以上であれば特に限定されない。生産性の観点から、DLC以外の材料で形成される中間層の数は4層以下が好ましい。DLC以外の材料で形成される各中間層の厚みは適宜選択すればよいが、たとえば、5nm以上200μm以下とすることが好ましく、50nm以上20μm以下とすることがさらに好ましい。
多層中間膜全体の厚みは適宜選択すればよいが、たとえば、10nm以上400μm以下とすることが好ましく、100nm以上25μm以下とすることがさらに好ましい。
DLC中間層は、公知のプラズマCVD法、熱フィラメント法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法などにより形成することができる。DLC以外の材料で形成される中間層は、公知のスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法およびプラズマCVD法などにより形成することができる。
<表面層>
表面層はダイヤモンドライクカーボンで形成される。表面層を形成するDLCとしては、DLC中間層のDLCと同様のものを用いることができる。
表面層の厚みは適宜選択すればよいが、たとえば、20nm以上200μm以下とすることが好ましく、100nm以上10μm以下とすることがさらに好ましい。
表面層は公知のプラズマCVD法、熱フィラメント法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、イオンビーム法などにより形成することができる。
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
<ZnS焼結体の準備>
原料粉末としてZnSからなり、平均粒径が2μm、純度98%であるZnSの粉末を準備した。次に、当該原料粉末を一軸式金型プレス(冷間プレス)により成形し、直径φ20mm、厚み5mmの円盤状の予備成形体を作製した。次に、得られた予備成形体を窒素雰囲気中で800℃に加熱し、5時間保持することにより、相対密度約60%の予備焼結体を得た。
次に、ガラス状カーボンからなり、鏡面研磨された拘束面を有する1対の型(上型および下型)の間に予備焼結体を載置し、当該1対の型を用いて50MPaの圧力で予備焼結体を加圧しつつ、1000℃に加熱して300秒間保持した。以上のプロセスにより、直径φ20mm、厚み3mmのZnS焼結体からなる基材を得た。
<多層中間膜および表面層の形成>
[製造例1]
得られた基材上に、中間層としてシリコン層を積層して形成し、さらに中間層上に表面層としてDLC層を形成し、光学部品を得た。
[製造例2]
得られた基材上に、多層中間膜としてシリコン層、ゲルマニウム層、DLC層、シリコン層およびゲルマニウム層を前記の順に積層して形成し、さらに多層中間膜上に表面層としてDLC層を形成し、光学部品を得た。
[製造例3]
得られた基板上に、多層中間膜としてシリコン層、DLC層、シリコン層およびゲルマニウム層を前記の順に積層して形成し、さらに多層中間膜上に表面層としてDLC層を形成し、光学部品を得た。
なお、製造例1〜3において、シリコン層およびゲルマニウム層は電子ビームを用いる真空蒸着法により、基板温度150℃で形成した。DLC層は、原料としてメタンガスを用い、13.56mHzの高周波によるプラズマCVD法により基板温度150℃で形成した。シリコン層の厚みは5nm以上2μm以下、ゲルマニウム層の厚みは5nm以上10μm以下、DLC層の厚みは20nm以上200μm以下、多層中間膜の合計の厚み100nm以上25μm以下となるように設計した。
<評価>
得られた光学部品について、耐候性試験および付着試験を行った。
(耐候性試験)
JIS D 0205(自動車部品の耐候性試験方法)に準拠して、耐候性試験を行った。具体的には、光学部品に温度63±3℃、湿度50±5%の環境下で、サンシャインカーボンアーク灯(255W/m)を1000時間照射した。試験の前後で、光学部品の波長8μm以上12μm以下の赤外光の平均透過率を測定した。試験前の赤外光の平均透過率に対する、試験後の赤外光の平均透過率の低下率について、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
赤外光の平均透過率の低下率が15%以内:A
赤外光の平均透過率の低下率が15%を超える:B
(付着試験)
多層中間膜および表面層の付着性に関して、MIL−F−48616に準拠して、テープテストで評価した。具体的には、コーティング表面にセロハンテープをしっかりと貼付、剥がした。製造例1の付着性を基準(良好)として、各製造例について相対評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2015224177
<評価結果>
製造例1の光学部品はDLC層を1層含み、製造例2および製造例3の光学部品は、DLC層を2層含む。製造例2および製造例3は、製造例1と同等の良好な付着性を維持したまま、耐候性が向上していた。
本発明の光学部品は、屋外の劣悪環境下で使用される機器に用いると有益である。

Claims (2)

  1. ZnS焼結体を含む基材と、
    前記基材の主面上に積層される2種類以上の中間層を含む多層中間膜と、
    前記多層中間膜上に積層されるダイヤモンドライクカーボンで形成される表面層とを有し、
    前記多層中間膜は、ダイヤモンドライクカーボンで形成される中間層を含む、光学部品。
  2. 前記多層中間膜はZnSで形成される中間層を含まない、請求項1に記載の光学部品。
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