JP2015224136A - エスカレーターの手摺ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来の手摺ベルトは、その表面に音声情報等発信用の複数個のICチップを設けようとした場合、乗降口の半円曲げ部分において伸びる手摺ベルトと、伸びないICチップとの間に伸び率差による滑りが発生し、剥がれ落ちる問題があった。【解決手段】 この問題を解決するため、本発明は音声情報等発信用の小片である複数個のICチップHaを、手摺ベルト6の半円部曲げ半径Rに対する横断面中立軸Mに接する位置付近の、手摺ベルト6断面の平坦部6Aと縁円部6Bの境界部よりも縁円部6B寄りに位置させ、この状態で手摺ベルト6のほぼ全表面と複数個のICチップHaを覆うように長尺の印刷シート7を貼り付けて設けたエスカレーターの手摺ベルトとしたのである。【選択図】図4
Description
本発明は、乗客輸送用の踏段と同期して移動する手摺ベルト表面に音声情報等発信用のICチップを設けるに好適な構成のエスカレーターの手摺ベルトに関する。
従来、手摺ベルトの表面にICチップ等を設けた例はないが、そこに印刷シートを貼付けて移動方向等の表示を行う構成は、例えば特許文献1に開示されているように、すでに提案されて視覚弱者の安全利用に貢献している。
本発明者が過去に提案した特許文献1に記載のエスカレーターの手摺ベルトは、その表面の長手方向に適宜の間隔をおいて、安全効果を意図した方向表示マークを印刷表示した長尺の印刷シートを貼付けるようにしたものである。
特許文献1に記載のものは、それの出願以前のエスカレーター利用においては、エスカレーターの乗降口(乗り場側)で動く踏段に乗り移る際の体重移動のタイミング取りに失敗したり、エスカレーターの動き方向が認識できなくて逆に乗り込むなどして転倒してしまう、高齢者を含めた視覚弱者の人身事故を防止するためになされたものである。
そして、これまで実用された安全施策について詳述すれば、上記特許文献1においては移動する手摺ベルトに対して、エスカレーターに乗り移る際のタイミングを計る目印となる菱形や丸形で手摺ベルトとは色を異にする一方、手摺ベルト反転部の半円周範囲に略1個存在する間隔の方向表示マークを有する印刷シートを手摺ベルトの表面に貼り付ける構成としたのである。このようにしたことで、エスカレーターの存在とその速度感を視覚によって認知(乗り込み時の運転速度に対する体重移動バランスの安定化等)させる効果を発揮している。この特許文献1を下敷にしたと思われる2007年公表の国土交通省「バリアフリー整備ガイドライン」に「印を付けることなどにより、ベルトの進行方向を表示する」項が規定されて方向表示マーク付き手摺ベルトが普及し、その効果が視覚弱者に対する利便は勿論、健常者の手摺ベルト利用率向上効果も評価されている。実際、2012年3月に首都圏の駅構内に設置された方向表示マーク付きエスカレーターで実利用状態を調査したところ、手摺ベルト利用率(手摺を掴む乗客の比率)は施工前が10%以下であったのに対して施工後は20%強と3倍近くに増加し、また、視覚弱者や高齢者に接触して転倒の巻き添えにする危険性を孕む健常層の踏段歩行(踏段の駆け上がり、下りなど)率が、施工前が40%強であったのに対して5%と、約1/8まで低下し、エスカレーターの安全利用、特に転倒防止への貢献が実証されている。
しかしながら、上記の視認に頼る安全施策は全盲レベルの視覚障害者にとっては無意味なことであり、この障害がある人に対しては音声による誘導案内が有効と考えられる。このため、一部研究者は手摺ベルトに音声情報等発信用のICチップを貼り付けておき、その情報を全盲レベルの障害がある人が、手持ちのスマートフォンなどで聞き取るというような発想をしている。ただし、この発想は、直線状、半円曲げ状移動で伸縮を繰り返えす手摺ベルトにあっては、貼り付けたICチップが簡単に剥がれ落ちて用をなさないという問題があって実現が不可能視されていた。
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、エスカレーターを構成する乗客輸送用の踏段と、この踏段と同期して乗降口の半円部で反転して移動する手摺ベルトと、この手摺ベルトの表面に音声情報等発信用の複数個のICチップを設けるものにおいて、前記ICチップを、前記手摺ベルトの半円部における曲げ半径に対する手摺ベルト断面内の中立軸付近に配置する一方、この手摺ベルト断面の平坦部と縁円部の境界部よりも縁円部寄りに位置させ、手摺ベルトのほぼ全表面と複数個のICチップ覆うように長尺の印刷シートを貼り付けて設け、かつ手摺ベルトと印刷シートの間にICチップを介在させた装着構成としたエスカレーターの手摺ベルトとしたのである。
そして前記印刷シートには、従来と同様に、手摺ベルト表面の平坦部の幅とほぼ同じ幅で、半円部の半円周範囲に略1個存在する間隔で、乗り移る際のタイミングを計る目印機能を有する方向表示マーク等を印刷したものとしたのである。
上記解決手段は、発明者らの試行錯誤によりその装着安定性を検証したもので、音声情報等発信用の小片である複数個のICチップを、手摺ベルトの半円部曲げ半径に対する横断面中立軸に接する位置付近の、手摺ベルト断面の平坦部と縁円部の境界部よりも縁円部寄りに位置させ、この状態で手摺ベルトのほぼ全表面と複数個のICチップを覆うように長尺の印刷シートを貼り付けて設けた手摺ベルトとしたのである。
本発明によれば、ICチップが、手摺ベルトの半円部曲げ半径における最も伸縮率(伸縮の差)の小さい横断面中立軸に近接しているので、ICチップの位置ずれ等の影響はほとんどない位置にあって、最終的には印刷シートで覆われるので、極めて安定的な装着構成を得ることができる。また、印刷シートによる方向表示マークの効果も従来と同様に発揮して高齢者を含めた視覚弱者向け安全機能も有する。
以下、本発明によるエスカレーター手摺ベルトにICチップを装着した一実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1と図2において、本発明の対象となるエスカレーター1は、上階床2Aと下階床2Bに装架される主フレーム3と、無端状に連結されて往路から復路にかけて反転して移動する乗客輸送用の踏段4と、この踏段4と同期して欄干5の周縁に沿って半円部5Aと半円部5Bで反転して下部曲線部、上部曲線部等を無端状に移動する。そして、手摺ベルト6は、図3に示すようにその断面形状が幅W2の平坦部6Aとこれに連なる両側の縁円部6Bとで略C字形をなす幅W1で形成されている。さらに図4に示すように、最終的に、貼り付け前は幅W3である印刷シート7を手摺ベルト6に貼り付けるものであるが、その貼り付け過程の途中状態(図4)において、平坦部6Aから縁円部6Bに連なる境界部よりも縁円部6B寄りの位置にICチップHaを配置し、さらにこの手摺ベルト6の長手方向に沿い、そのほぼ全表面を覆うように、裏面の接着層により接着固定(接着部の図示省略)された長尺の印刷シート7を有する手摺ベルト6としている。
前記手摺ベルト6の経路は、駆動歯車8の動力をチェーン9を介して駆動ローラ10等に伝達された動力によって摩擦駆動されるもので復路を案内ローラ11、往路を欄干5に案内され、半円部5A、5Bで折り返して移動する構成となっている。
そして、手摺ベルト6は、この手摺ベルト6と印刷シート7の間に介在するようにICチップHaが手摺ベルト6の全長に沿って適宜の間隔をおいて複数個配置され、さらに印刷シート7は図3に示すように手摺ベルト6とは異色の黄色や白色など目立ち易い色に着色印刷された方向表示マーク7A(図3、図4の図示では円形を例とした)が間隔Pをもって配置され、この印刷シート7にあらかじめ積層された接着剤(図示省略)で手摺ベルト6表面の平坦部6Aと縁円部6Bを覆うように貼り付けて設けている。また、方向表示マーク7Aの間隔Pの枠Km内には利用上の注意文言や広告を表示する場合もある。ここで、ICチップHaを設けた位置の優位性について説明するには、図5と図6を用いて手摺ベルト6が欄干5の半円部5A、5Bにおいて反転移動するための曲げ状態について言及する必要がある。図5と図6には説明用としてごく一般的な寸法を記入してあるが、図3に示した手摺ベルト6の断面形状は、幅W1が80mm、厚さが28mmの略C字形であって、その開口部6kを曲げ半径の中心点側の内周面として反転移動させる構成である。この構成において図6に示したように欄干5の高さを920mm、床面との距離を200mmとした場合、半円部5Aの曲げ半径はR:360mmとなり、この場合の手摺ベルト6の横断面中立軸Mを計算すると外周面よりも内側約8mmの所に位置する。符号Mで示した中立軸とは、工学的定義で「あるはり(本発明の場合、手摺ベルト6)に曲げモーメントをかけた場合、材料に全く負荷が生じない場所のこと。中立軸の曲げ半径外側を引張り層、内側を圧縮層という」とされているが、これを図6の部分側面図によって詳述すれば、手摺ベルト6に対して引張り力も圧縮力も作用しない中立軸R線上の伸び率値0の状態に比べて、その外周面G(図6に示す曲げ半径R360mmの面)の上記で仮定した伸び率値Naの計算値は2.3%となる。そして、もしも平坦部6Aでもあるこの外周面GにICチップHaを例えば接着などにより装着した場合は、伸び率値Na=2.3%の伸びとなる手摺ベルト6に対し、これと、一般に伸縮性が全くないICチップHaとの間に「伸び率差による滑り」が発生して、剥がれ落ちてしまう。このため、本発明では、ICチップHaを、伸び率値0状態の手摺ベルト6断面内の中立軸Mの線に近接する位置の、図5に示す平坦部6Aと縁円部6Bの境界部より縁円部6B寄りに配置し、手摺ベルト6のほぼ全表面と複数個のICチップHaを覆うように印刷シート7を貼り付けにより設けてある。なお、本発明で呼称したICチップHaは、シールラベルなどにICチップと小型アンテナを埋め込んだもので音声情報等を発信できるものであればよく、それの仕組みや原理を特定するのは本発明の主旨ではない。そして、このICチップHaは「乗り口です」「降り口です」「改札は左側です」の案内誘導や広告宣伝を行う音声や映像を発信する一方、全盲レベルの人は音声サービスを、高齢者を含む視覚弱者や健常者は音声や映像サービスを手持ちの端末機器(スマートフォンなど)で受ける仕組みである。
さらに、印刷シート7に表示した方向表示マーク7Aは、特許文献1と同様に手摺ベルト6表面の平坦部6Aの幅W2とほぼ同じ大きな幅で目立ち易い目印としている。加えて、印刷シート7は、例えばポリウレタン製シートを基材として手摺ベルト6への接着層、印刷が施されるシート層、表面のラミネート層などの複層で形成される。
以上説明したように、本実施形態によれば、ICチップHaを備えた手摺ベルト6において、ICチップHaの装着位置が手摺ベルト6の伸縮に対して安定的であり、かつ印刷シート7により覆われるので、剥がれや脱落の恐れのない手摺ベルト6に対する装着構成を提供することができる。また、全盲レベルの障害がある人は転倒事故や逆乗り込み等を防止するための注意喚起、あるいは案内誘導を音声で、視認力がある人は音声や映像で情報サービスを得ることができる。さらに、上記実施の形態は、一般のエスカレーターを一例に説明したが、隣接踏段同士に段差を有しない動く歩道と通称されるエスカレーターにもそのまま適用することができる。
1 エスカレーター
4 踏段
5A、5B 半円部
6 手摺ベルト
6A 平坦部
6B 縁円部
7 印刷シート
7A 方向表示マーク
Ha ICチップ
M 中立軸
R:360 半円部曲げ半径
4 踏段
5A、5B 半円部
6 手摺ベルト
6A 平坦部
6B 縁円部
7 印刷シート
7A 方向表示マーク
Ha ICチップ
M 中立軸
R:360 半円部曲げ半径
Claims (1)
- エスカレーターを構成する乗客輸送用の踏段と、この踏段と同期して乗降口の半円部で反転して移動する手摺ベルトと、この手摺ベルトの表面に音声等情報発信用の複数個のICチップを設けるものにおいて、前記ICチップを、前記手摺ベルトの半円部における曲げ半径に対する手摺ベルト断面内の中立軸付近に配置する一方、手摺ベルト断面の平坦部と縁円部の境界部よりも縁円部寄りに位置させ、手摺ベルトのほぼ全表面と複数個のICチップを覆うように長尺の印刷シートを貼り付けて設け、かつ手摺ベルトと印刷シートの間にICチップを介在させた装着構成としたことを特徴とするエスカレーターの手摺ベルト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014120950A JP2015224136A (ja) | 2014-05-27 | 2014-05-27 | エスカレーターの手摺ベルト |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014120950A JP2015224136A (ja) | 2014-05-27 | 2014-05-27 | エスカレーターの手摺ベルト |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015224136A true JP2015224136A (ja) | 2015-12-14 |
Family
ID=54841184
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014120950A Pending JP2015224136A (ja) | 2014-05-27 | 2014-05-27 | エスカレーターの手摺ベルト |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2015224136A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2022120866A (ja) * | 2021-02-08 | 2022-08-19 | 株式会社Udエスカレーター | 手摺ベルト、及びエスカレーター |
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2014
- 2014-05-27 JP JP2014120950A patent/JP2015224136A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2022120866A (ja) * | 2021-02-08 | 2022-08-19 | 株式会社Udエスカレーター | 手摺ベルト、及びエスカレーター |
JP7122024B1 (ja) | 2021-02-08 | 2022-08-19 | 株式会社Udエスカレーター | 手摺ベルト、及びエスカレーター |
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