JP2015222642A - マイクロ波イオン源およびマイクロ波イオン源の制御方法 - Google Patents

マイクロ波イオン源およびマイクロ波イオン源の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロ波イオン源の信頼性を高める。
【解決手段】マイクロ波イオン源10は、引出開口24が設けられるイオン引出部22を有するプラズマ室12と、イオン引出部22に対向して設けられる引出電極である第1電極42と、を備える。引出電極である第1電極42は、イオン引出部22に対向する主面61と、引出開口24と連通する位置に設けられる開口部と、を有するベース部材60と、開口部の周囲を覆うようにイオン引出部22と主面61の間に設けられるカバー部材62と、ベース部材60とカバー部材62の間に設けられるスペーサ部材64と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロ波イオン源およびマイクロ波イオン源の制御方法に関する。
マイクロ波をプラズマ生成に用いるイオン源が知られている。真空のプラズマ室にマイクロ波が導入される。プラズマ室に供給された原料ガスがマイクロ波によって励起され、プラズマが生成される。プラズマからイオンが引き出される。
特開平2−162638号公報
プラズマ室で生成されるイオンは、引出電極によりプラズマ室の外へ引き出される。引き出されるイオンの一部は引出電極の表面に付着し、イオン種によっては引出電極の表面に絶縁膜を形成する。絶縁膜は、プラズマ室と引出電極の間の電界によって帯電し、プラズマ室と引出電極の間での放電を誘引しうる。放電が起こると、マイクロ波イオン源の安定的な運転に影響を及ぼすおそれがある。
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、マイクロ波イオン源の信頼性を高めることにある。
本発明のある態様のマイクロ波イオン源は、引出開口が設けられるイオン引出部を有するプラズマ室と、イオン引出部に対向して設けられる引出電極と、を備える。引出電極は、イオン引出部に対向する主面と、引出開口と連通する位置に設けられる開口部と、を有するベース部材と、開口部の周囲を覆うようにイオン引出部と主面の間に設けられるカバー部材と、ベース部材とカバー部材の間に設けられるスペーサ部材と、を含む。
本発明の別の態様は、マイクロ波イオン源の制御方法である。この方法は、引出開口が設けられるイオン引出部を有するプラズマ室と、イオン引出部に対向する引出電極と、を備えるマイクロ波イオン源の制御方法であって、引出電極は、イオン引出部に対向する主面と、引出開口と連通する位置に設けられる開口部と、を有するベース部材と、開口部の周囲を覆うようにイオン引出部と主面の間に設けられるカバー部材と、ベース部材とカバー部材の間に設けられるスペーサ部材と、を含む。第1の態様で引出開口からイオンを引き出すことと、引出開口から引き出されるイオンが、第1の態様よりもカバー部材に衝突しやすい第2の態様で引出開口からイオンを引き出すことと、を備え、第1の態様でイオンを引き出す前の準備期間において第2の態様でイオンを引き出す。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、マイクロ波イオン源の信頼性を高めることができる。
実施の形態に係るマイクロ波イオン源の構成を模式的に示す図である。 引出電極の構成を模式的に示す正面図である。 引出電極の構成を模式的に示す断面図である。 比較例に係る引出電極に付着する堆積物を模式的に示す図である。 実施の形態に係る引出電極に付着する堆積物を模式的に示す図である。 第1の態様で引き出されるイオンを模式的に示す図である。 第2の態様で引き出されるイオンを模式的に示す図である。 変形例に係る引出電極の構成を模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
図1は、実施の形態に係るマイクロ波イオン源10の構成を模式的に示す。
マイクロ波イオン源10は、マイクロ波によってソースガスのプラズマをプラズマ室12に生成し、そのプラズマからプラズマ室12の外部へイオンを引き出すように構成されている。マイクロ波イオン源10は、例えばイオン注入装置又は粒子線治療装置のためのイオン源に使用される。プラズマ室12は、プラズマが生成される空間であるプラズマ生成空間14を囲む容器である。
マイクロ波イオン源10は、プラズマ室12を備える。プラズマ室12は、その内部空間にプラズマを生成し維持するよう構成されている真空チャンバである。プラズマ室12は、両端をもつ筒状の形状を有する。プラズマ室12の一端から他端に向かう方向を以下では便宜上、軸方向と呼ぶことがある。また、軸方向に直交する方向を径方向と呼び、軸方向を包囲する方向を周方向と呼ぶことがある。しかしこれらは、プラズマ室12が回転対称性を有する形状であることを必ずしも意味するものではない。また、プラズマ室12の軸方向長さは、プラズマ室12の端部の径方向長さより長くてもよいし短くてもよい。
プラズマ室12は、側壁部20と、イオン引出部22と、引出開口24と、マイクロ波導入部26と、を備える。イオン引出部22とマイクロ波導入部26とは、プラズマ生成空間14を挟んで対向している。
側壁部20は、イオン引出部22とマイクロ波導入部26とを接続し、プラズマ生成空間14を囲む。側壁部20は、イオン引出部22およびマイクロ波導入部26のそれぞれの外周部分に固定されている。側壁部20は、例えばステンレス鋼またはアルミニウムのような非磁性金属材料で形成されている。
側壁部20は、側壁部20を冷却するための冷却部を備えてもよい。この冷却部は側壁部20に内蔵されていてもよいし、側壁部20の外側に付設されていてもよい。また、側壁部20をプラズマから保護するために、側壁部20の内面を被覆するライナが設けられていてもよい。ライナは、例えば窒化ホウ素(BN)で構成されていてもよい。
プラズマ室12は、側壁部20、イオン引出部22およびマイクロ波導入部26によって内部にプラズマ生成空間14が画定される。プラズマ室12は、側壁部20、イオン引出部22およびマイクロ波導入部26が一体にプラズマ生成空間14を囲むよう構成されているから、イオン引出部22に接続される側壁部20の末端はイオン引出部22の一部であるとみなすこともできる。同様に、マイクロ波導入部26に接続される側壁部20の末端はマイクロ波導入部26の一部であるとみなすこともできる。
プラズマ室12は例えば円筒形状を有する。この場合、マイクロ波導入部26及びイオン引出部22は概ね円板形状であり、側壁部20は概ね円筒である。なおプラズマ室12は、プラズマを適切に収容し得る限り、いかなる形状であってもよい。
マイクロ波導入部26は、真空窓32を備える。真空窓32はプラズマ室12の内部を真空に封じる。真空窓32の一方の側がプラズマ生成空間14に面しており、真空窓32の他方の側がマイクロ波供給系またはマイクロ波導波管30に向けられている。マイクロ波の伝搬方向Pは真空窓32に垂直である。本実施形態では真空窓32はマイクロ波導入部26の全体を占めているが、真空窓32はマイクロ波導入部26の一部(例えば中心部)に形成されていてもよい。
プラズマ室12へのマイクロ波の入射電力は例えば、約100Wより大きい。あるいは、プラズマ室12へのマイクロ波の入射電力は、約500W以上または約1kW以上でもよい。このような高電力のマイクロ波の供給には、同軸線のような他の供給手段に比べて、マイクロ波導波管30及び真空窓32が適する。
真空窓32は、例えばアルミナ(Al)または窒化ホウ素(BN)などの誘電体で形成されている。真空窓32は、窓本体34と、窓保護材36を備える。窓本体34は、例えばアルミナで構成され、窓保護材36は窒化ホウ素で構成される。これにより、窓保護材36は、プラズマ室12の外から引出開口24を通じてプラズマ室12に逆流する電子に対して窓本体34を保護する。
イオン引出部22には少なくとも1つの引出開口24が形成されている。引出開口24は、例えば紙面に垂直な方向に細長いスリットである。引出開口24はイオン引出部22の中心部分に形成されている。引出開口24は、プラズマ生成空間14を挟んで真空窓32に対向する位置に形成されている。真空窓32、プラズマ生成空間14および引出開口24は、プラズマ室12の中心軸に沿って配列されている。
プラズマ室12は、正の高電圧を印加するための第1電源38に接続される。プラズマ室12に高電圧が印加されるとき、その一部であるイオン引出部22にも同じ高電圧が印加されるので、イオン引出部22はプラズマ電極と呼ばれることもある。
マイクロ波イオン源10は、磁場発生器16を備える。磁場発生器16は、プラズマ室12の中心軸上において軸方向に向けられた磁場を発生させるために、プラズマ室12の側壁部20を囲むように配設されている。その磁力線方向を図1に矢印Bで示す。磁場発生器16による磁力線方向Bは、マイクロ波の伝搬方向Pと同一の方向である。また、この磁場Bは、プラズマ室12の中心軸上の少なくとも一部分において共鳴磁場またはそれよりも高強度である。なお、磁場発生器16は、プラズマ室12の軸線上の少なくとも一部分に共鳴磁場よりも低い磁場を発生させることも可能である。
磁場発生器16は、環状に形成されるコイルを有し、プラズマ室12の周方向に導線が巻かれている。磁場発生器16は、コイルに電流を流すためのコイル電源(図示せず)を有する。なお、磁場発生器16は、プラズマ室12の軸方向に沿って複数配列されていてもよく、コイルの代わりに永久磁石を備えてもよい。
マイクロ波イオン源10は、プラズマの原料ガスをプラズマ生成空間14に供給するためのガス供給系(不図示)を備える。ガス供給系は、生成すべきイオン種に応じて適切な原料ガスをプラズマ生成空間14に供給する。原料ガスとして、例えば、三フッ化ホウ素(BF)、ジボラン(B)、アルシン(AsH)、ホスフィン(PH)などを用いる。なおガス供給系は、原料ガスとしてヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)などの希ガスをプラズマ生成空間14に供給してもよい。
マイクロ波イオン源10は、イオンをプラズマ室12の外に引き出すための引出電極系40を備える。引出電極系40は、プラズマ室12の引出開口24を通じてプラズマからイオンを引き出すよう構成されている。引出電極系40は、第1電極42と第2電極52を含む。第1電極42はプラズマ室12と第2電極52との間に設けられている。引出開口24を有するイオン引出部22と第1電極42とは隙間を隔てて配列され、第1電極42と第2電極52とは隙間を隔てて配列されている。第1電極42および第2電極52は、例えばそれぞれ環状に形成されており、プラズマ室12から引き出されたイオンを通すための第1開口部44および第2開口部54をそれぞれ中心部に有する。
第1電極42は、プラズマから陽イオンを引き出すとともに、プラズマ室12の外からプラズマ室12への電子の戻りを妨げるために設けられている。そのために、第1電極42には負の高電圧が印加されている。第1電極42に負の高電圧を印加するために、第2電源48が設けられている。第2電極52は接地されている。第1電源38によりプラズマ室12に印加される正の高電圧の絶対値は、第2電源48により第1電極42に印加される負の高電圧の絶対値よりも大きい。このようにして、プラズマ室12から陽イオンのイオンビームが引き出される。プラズマ室12からのイオンビームの引出方向はマイクロ波の伝搬方向Pと同一方向である。
第1電極42は、ベース部材60と、カバー部材62と、スペーサ部材64を含む。ベース部材60は、第1電極42を構成する基部であり、ステンレスなどの非磁性金属材料で構成される。ベース部材60には、引出開口24と連通する位置に第1開口部44が設けられる。カバー部材62は、ベース部材60のイオン引出部22に対向する主面61の少なくとも一部を被覆する保護部材であり、タングステン(W)などの高融点材料で構成される。カバー部材62は、プラズマ室12から引き出されるイオンからベース部材60を保護する機能を有する。ベース部材60の主面61とカバー部材62の間にはスペーサ部材64が設けられ、ベース部材60とカバー部材62とが直接接触しないようにする。これにより、ベース部材60とカバー部材62との間の熱的絶縁性が高められる。
第1電極42には、プラズマ室12と第1電極42の対向距離を変化させる駆動機構46が接続される。駆動機構46は、マイクロ波イオン源10が備える制御部80により動作が制御される。制御部80は、マイクロ波イオン源10の全般的な動作を制御する。制御部80は、第1電源38および第2電源48により印加される電圧値や、駆動機構46により規定されるプラズマ室12と第1電極42の対向距離などを制御して、プラズマ室12から引き出されるイオンの引出態様を調整する。また、制御部80は、ガス供給系を制御することによりプラズマ室12に導入するソースガスを切り替え、プラズマ室12から引き出されるイオン種を切り替える。
つづいて、図2および図3を参照しながら引出電極である第1電極42の構成を詳述する。図2は、第1電極42の構成を模式的に示す正面図であり、図3は、第1電極42の構成を模式的に示す断面図である。なお、図3は、図2のC−C線断面を示し、図2のA−A線断面は、図1に対応する。
第1電極42は、開口保護部材66を含む。開口保護部材66は、細長いスリット形状を有する第1開口部44を規定する部材であり、グラファイト(C)などの高融点材料で構成される。開口保護部材66は、ベース部材60のベース開口部60aに嵌め込まれ、取付部材70を介してベース部材60にねじ止めされる(図3参照)。取付部材70は、ベース部材60と開口保護部材66を接続する部材であり、ステンレスなどで構成される。取付部材70は、第2ねじ68bにより開口保護部材66に固定され、第3ねじ68cによりベース部材60に固定される。
開口保護部材66が設けられる位置は、プラズマ室12から引き出されるイオンの一部が衝突しやすい箇所であり、第1電極42の他の部位と比較して損耗の大きい箇所である。このような箇所に開口保護部材66を設け、開口保護部材66をねじ止めによりベース部材60に固定することで、損耗しやすい開口保護部材66の交換容易性が高められる。
カバー部材62は、ベース部材60の第1開口部44の周囲を覆うようにしてベース部材60の主面61から離れて設けられる。カバー部材62は、例えば細長いスリット形状の第1開口部44に対応して、第1開口部44の長手方向に長い略楕円形状を有する。これにより、カバー部材62は、開口保護部材66が設けられていないベース部材60の主面61のうち、第1開口部44に近い領域を被覆してベース部材60を保護する。また、カバー部材62には、第1開口部44よりも開口範囲の大きいカバー開口部62aが設けられる。したがって、カバー部材62は、第1開口部44を塞がない位置に設けられる。
カバー部材62は、スペーサ部材64を介してベース部材60にねじ止めされる。スペーサ部材64は、ベース部材60とカバー部材62とを接続する第1ねじ68aが挿通可能となるように中空形状を有する。スペーサ部材64は、ステンレスやアルミナ(Al)などの熱伝導性の低い部材で構成される。スペーサ部材64は、主面61において第1ねじ68aが設けられる位置に部分的に設けられる。スペーサ部材64は、例えば図2に示されるように、第1ねじ68aとともに第1開口部44の上下に3箇所ずつ配置される。スペーサ部材64を主面61の総面積に対して十分に小さい面積となる局所的な領域に配置することで、ベース部材60とカバー部材62との熱的絶縁性が高められる。
ベース部材60とカバー部材62を接続する第1ねじ68aは、ステンレスなどの導電性の部材で構成され、ベース部材60とカバー部材62は第1ねじ68aを介して電気的に導通する。これにより、カバー部材62は、第2電源48が接続されるベース部材60と同電位に保たれる。
つづいて、本実施の形態に係るマイクロ波イオン源10の動作を説明する。プラズマ生成空間14にプラズマ生成の原料となるソースガスが供給される。磁場発生器16により軸方向磁場Bがプラズマ生成空間14に印加される。マイクロ波が真空窓32を通じてプラズマ生成空間14に導入される。マイクロ波と軸方向磁場Bとの作用によってソースガスが励起され、プラズマ生成空間14にプラズマが生成される。引出電極系40によりプラズマ生成空間14の外へとイオンが引出開口24を通じて引き出される。
本実施の形態においては、ベース部材60の主面61を保護するカバー部材62がベース部材60と熱的に絶縁されているため、カバー部材62を高温に維持することができる。なお、カバー部材62は、プラズマ室12からの輻射熱や、カバー部材62に入射するイオンなどにより昇温される。これにより、カバー部材62の表面に付着する堆積物を高温にして昇華させ、カバー部材62の表面に堆積物が多量に付着することを防ぐ。本効果について図4及び図5を参照しながら説明する。
図4は、比較例に係る引出電極142に付着する堆積物90を模式的に示す図である。比較例に係る引出電極142は、上述の実施の形態に係る第1電極42と同様に、ベース部材60とカバー部材62を含むが、ベース部材60とカバー部材62の間にスペーサ部材が設けられない点で第1電極42と相違する。引出電極142は、プラズマ室12のプラズマ生成空間14から引出開口24を通じてイオンDを引き出す。引き出されるイオンDの一部は、カバー部材62の表面に付着し、堆積物90を形成する。例えば、リン(P)のイオンビームを生成するためにソースガスとしてホスフィン(PH)を用いる場合、堆積物90として絶縁性のリン(P)膜が形成される。カバー部材62の表面に絶縁性の膜が形成されると、プラズマ室12とカバー部材62の間で放電しやすくなり、マイクロ波イオン源の安定的な運転に影響を及ぼすおそれがある。
堆積物90として形成されるリン膜は、500℃程度の高温にすることで昇華することが発明者の知見として知られている。しかしながら、比較例では、ベース部材60とカバー部材62の接触面積が大きいために両者の熱的絶縁性が低く、カバー部材62はベース部材60を通じて放熱され、カバー部材62の温度は上がりにくい。特に、マイクロ波イオン源は、高温のカソードから放出される熱電子を利用する傍熱型(IHC;Indirectly Heated Cathode)のイオン源と比べてプラズマ室の温度が低いため、プラズマ室12に隣接する引出電極142の温度も上がりにくい。そうすると、引出電極142に付着する絶縁性のリン膜を昇華させることができず、リン膜の堆積による放電が発生しやすくなる。放電を防ぐためには、引出電極142に付着する絶縁膜を除去する必要が生じる。除去のためのメンテナンス頻度が高まると、マイクロ波イオン源110及びマイクロ波イオン源110を用いる装置の稼働率が低下してしまう。
図5は、実施の形態に係る第1電極42に付着する堆積物90を模式的に示す図である。カバー部材62は、プラズマ室12からの輻射熱や、引出開口24から引き出されるイオンDの衝突により温度が高められる。本実施の形態では、スペーサ部材64によりベース部材60とカバー部材62の間の熱的絶縁性が高められているため、カバー部材62を高温に保ちやすい。そのため、カバー部材62に堆積物90が付着したとしても、カバー部材62を高温に保ち、堆積物90を昇華させて除去することができる。これにより、絶縁性の堆積物90が付着することによる放電の発生を防ぐことができ、マイクロ波イオン源10の信頼性を高めることができる。また、堆積物90が付着しにくいため、除去のためのメンテナンス頻度が下げることができ、マイクロ波イオン源10の稼働率が高めることができる。
なお、カバー部材62の温度を高めるために、引出開口24から引き出されるイオンDの引出態様を変化させてもよい。後続のビームラインにイオンビームを供給するための通常のイオン引出態様(以下、第1の態様ともいう)の他に、第1の態様よりもカバー部材62に引き出されるイオンが衝突しやすいイオン引出態様(以下、第2の態様ともいう)を用いる。通常運転の合間に第2の態様でイオンを引き出すことにより、カバー部材62に多くのイオンを衝突させて、カバー部材62の温度をより高めることができる。
図6は、第1の態様で引き出されるイオンDを模式的に示す図である。通常のイオン引出態様である第1の態様では、引き出されるイオンビームのビーム電流量が大きくなるように、引き出されるイオンDの多くが第1開口部44を通過するようにイオンDが引き出される。第1の態様では、引出開口24から引き出されるイオンDの広がり角θが小さくなるようにイオンDが引き出される。
図7は、第2の態様で引き出されるイオンDを模式的に示す図である。第2の態様では、引き出されるイオンビームのビーム電流量を犠牲にして、引き出されるイオンDの多くがカバー部材62に衝突するようにイオンが引き出される。したがって、第2の態様では、引出開口24から引き出されるイオンDの広がり角θが第1の態様における角度θよりも大きくなるようにイオンDが引き出される。
イオンDの引出態様を変化させるには、例えばプラズマ室12と第1電極42の間の電位差を変化させたり、プラズマ室12と第1電極42の距離Lを変化させたりすればよい。制御部80は、イオンの引出態様を変化させるために駆動機構46を駆動させて第1電極42を動かし、プラズマ室12のイオン引出部22と引出電極である第1電極42の距離を変化させてもよい。また、制御部80は、イオンの引出態様を変化させるために第1電源38や第2電源48の印加電圧を変化させてイオン引出部22と第1電極42の電位差を変化させてもよい。このようにして、制御部80は、イオンの引出態様を第1の態様と第2の態様との間で切り替える。
制御部80は、マイクロ波イオン源10の運転開始時や準備期間等に第2の態様でイオンを引き出すことによりカバー部材62の温度を高めることとしてもよい。マイクロ波イオン源10の起動時はカバー部材62の温度が比較的低い状態にあるため、第2の態様でイオンを引き出すことによりカバー部材62の温度をより短時間で高めることができる。また、制御部80は、定期的に引出態様を第1の態様から第2の態様に切り替えることで、カバー部材62の温度が高温に保たれるようにしてもよい。例えば、ビームラインの下流にてイオンビームが利用されない期間内の引出態様を第2の態様とすることにより、イオンビームの利用を制限することなくカバー部材62を高温に保つことができる。その後、イオンの引出態様を第1の態様に切り替えて、後続のビームラインにイオンビームを供給する。
さらに、制御部80は、イオンの引出態様を第2の態様とする場合に、ソースガスを希ガスに切り替えることとしてもよい。例えば、リン(P)のイオンビームを引き出すためにホスフィン(PH)を使用したままイオンの引出態様を第2の態様に切り替えると、Pイオンがカバー部材62に多く付着して、リンの堆積物が増えるおそれがある。そこで、第2の態様に切り替える際にアルゴン(Ar)などの希ガスをソースガスとして導入し、Arイオンをカバー部材62に衝突させる。これにより、第2の態様にてマイクロ波イオン源10を運転させる場合であっても、カバー部材62への堆積物の増加を防ぎつつ、カバー部材62の温度を高めることができる。これにより、カバー部材62への堆積物の付着をより低減させることができる。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
図8は、変形例に係る第1電極42の構成を模式的に示す。本変形例は、ベース部材60とカバー部材62の間に設けられる第1のスペーサ部材64aとは別に、取付部材70と開口保護部材66の間に第2のスペーサ部材64bが設けられる点で上述の実施の形態と異なる。したがって、開口保護部材66は、第2のスペーサ部材64bを介してベース部材60に固定されており、ベース部材60と開口保護部材66の間の熱的絶縁性が高められる。これにより、第2のスペーサ部材64bを設けない場合と比べて開口保護部材66を高温に保ちやすくなり、開口保護部材66に堆積物を付着させにくくすることができる。
上述の実施の形態においては、プラズマ室12からの輻射熱や、引出開口24から引き出されるイオンを用いてカバー部材62の温度を高めることとした。変形例においては、カバー部材62に加熱機構を設けてカバー部材62を加温することとしてもよい。例えば、ベース部材60の主面と対向するカバー部材62の裏面や、カバー部材62の内部に埋め込む形でヒータを取り付けてもよい。これにより、イオンの引出態様を第2の態様に切り替えることなくカバー部材62を高温に保つことができる。また、加熱機構を設ける場合であってもベース部材60とカバー部材62の間にスペーサ部材64が設けることで、カバー部材62を高温に保ちやすくすることができる。
上述の実施の形態においては、引出電極系40として第1電極42と第2電極52を組み合わせる構成を用いた。変形例においては、引出電極系としてプラズマ室12のイオン引出部22に対向する一枚の引出電極のみを用いてもよいし、三枚以上の電極を引出電極系として用いてもよい。また、引出電極の表面を保護するカバー部材は、イオン引出部22に隣接する引出電極のみに設けてもよいし、引出電極系が複数の引出電極を有する場合には、複数の引出電極のそれぞれにカバー部材を設けてもよい。
上述の実施の形態においては、ソースガスとしてホスフィンを使用し、堆積物90としてリンが付着する場合について示したが、本実施の形態は、その他のソースガスを用いる場合においても堆積物の付着を抑制することができる。例えば、ソースガスとしてアルシンを用いる場合には、砒素(As)の堆積物の付着を抑制することができる。
10…マイクロ波イオン源、12…プラズマ室、22…イオン引出部、24…引出開口、60…ベース部材、61…主面、62…カバー部材、64…スペーサ部材、66…開口保護部材。

Claims (11)

  1. 引出開口が設けられるイオン引出部を有するプラズマ室と、
    前記イオン引出部に対向して設けられる引出電極と、
    を備え、
    前記引出電極は、
    前記イオン引出部に対向する主面と、前記引出開口と連通する位置に設けられる開口部と、を有するベース部材と、
    前記開口部の周囲を覆うように前記イオン引出部と前記主面の間に設けられるカバー部材と、
    前記ベース部材と前記カバー部材の間に設けられるスペーサ部材と、
    を含むことを特徴とするマイクロ波イオン源。
  2. 前記スペーサ部材は、前記主面上において部分的に設けられており、前記カバー部材を前記ベース部材から熱的に絶縁することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波イオン源。
  3. 前記カバー部材は、前記スペーサ部材を貫通するねじにより前記ベース部材にねじ止めされており、前記ねじを介して前記ベース部材と電気的に導通していることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ波イオン源。
  4. 前記ベース部材はステンレスで構成され、前記カバー部材はタングステンで構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源。
  5. 前記引出電極は、前記ベース部材に固定され、前記開口部を規定する開口保護部材をさらに含み、
    前記開口保護部材は、グラファイトで構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源。
  6. 前記開口保護部材は、前記スペーサ部材とは別のスペーサ部材を介して前記ベース部材に固定されることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波イオン源。
  7. 引出開口が設けられるイオン引出部を有するプラズマ室と、イオン引出部に対向する引出電極と、を備えるマイクロ波イオン源の制御方法であって、
    前記引出電極は、前記イオン引出部に対向する主面と、前記引出開口と連通する位置に設けられる開口部と、を有するベース部材と、前記開口部の周囲を覆うように前記イオン引出部と前記主面の間に設けられるカバー部材と、前記ベース部材と前記カバー部材の間に設けられるスペーサ部材と、を含み、
    第1の態様で前記引出開口からイオンを引き出すことと、
    前記引出開口から引き出されるイオンが、前記第1の態様よりも前記カバー部材に衝突しやすい第2の態様で前記引出開口からイオンを引き出すことと、を備え、
    前記第1の態様でイオンを引き出す前の準備期間において前記第2の態様でイオンを引き出すことを特徴とするマイクロ波イオン源の制御方法。
  8. 前記第2の態様でイオンを引き出す際に、前記第1の態様でイオンを引き出す場合とは異なるソースガスを前記プラズマ室に導入することを特徴とする請求項7に記載のマイクロ波イオン源の制御方法。
  9. 前記第2の態様でイオンを引き出す際に、前記ソースガスとして希ガスを導入することを特徴とする請求項8に記載のマイクロ波イオン源の制御方法。
  10. 前記イオン引出部と前記引出電極との電位差を変化させることにより、前記第1の態様と前記第2の態様とを切り替えることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源の制御方法。
  11. 前記イオン引出部と前記引出電極とが対向する距離を変化させることにより、前記第1の態様と前記第2の態様とを切り替えることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載のマイクロ波イオン源の制御方法。
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