JP2015222613A - 金属Na電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】重量もしくは体積あたりのエネルギー密度が向上した電池を提供する。【解決手段】Na+イオン伝導性を有するNa+イオン伝導体1と、Na+イオン伝導体1の一方の側に配置された実質的に金属Naからなる負極活物質4と、負極活物質4に少なくとも一部が接するように配置され、金属Naがイオン化する際に生じる電子を伝導可能な負極5と、負極5とNa+イオン伝導体1の一方の面と接するように貯留された有機電解液2と、Na+イオン伝導体1の他方の側に配置された正極8と、正極8とNa+イオン伝導体1の他方の面と接するように貯留された水溶性電解液3と、水溶性電解液3を収容し、耐塩基性を有する収容部13と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、金属Na電池に関する。
近年、化石燃料の代替として、化学反応を利用して電気を得る電気自動車用の電池が開発されてきた。このような電池の1つとして、従来からLiイオン(以下、リチウムイオン、Li+イオン、または単にLi+ともいう)電池が注目されてきた。しかし、Liイオン電池を蓄電池とした電気自動車に、従来の内燃機関車と同等の航続距離を持たせることは難しい。商用のLiイオン電池は100〜200Wh/kg程度のエネルギー密度しか有さないためである。内燃機関車と同等の航続距離を得るためには、Liイオン電池では現状の4倍以上のエネルギー密度が必要となる。このように大幅にエネルギー密度を向上させることは、従来のLiイオン電池の延長にある技術だけでは難しい。そのため、新しいしくみのエネルギー変換デバイスが求められてきた。
高いエネルギー密度を実現するための手段のひとつとして、酸化反応による反応自由エネルギー変化が大きく、かつ軽いアルカリ金属自体を負極の活物質とする技術が知られている。その中では主に、所謂Li−空気電池が検討されてきた。例えば、Li金属箔を負極にして、酸素を透過する炭素複合電極正極、高分子膜セパレータ、有機電解液を用いたLi−空気電池が知られている(非特許文献1)。このLi−空気電池は、その後開発されるLi−空気電池の基本型とされてきた。Li−空気電池は、理想的な条件下では4Li+O2→2Li2Oの電池反応によって、O2を電池反応物重量に含んだ計算値で5,200Wh/kg、O2を含まない計算値で11,140Wh/kgという高い理論エネルギー密度を持つ。そのため、理論エネルギー密度が250〜350Wh/kgのLiイオン電池と比較して、実験的にも高いエネルギー密度が得られるとされている。
また、非特許文献1の問題(後述)を改善する技術として、セパレータにLi+高速イオン伝導体の固体電解質リシコン(LISICON)を用い、正極側に水溶性電解液と酸素を透過する電極を配置した構造を有するLi−空気電池(ここでは「Li−水−空気電池」と称する)も開発されてきた。このLi−水−空気電池は、放電時の反応生成物が水溶性電解液に溶解するLiOHであるため、完全に電池反応を行うことができるとされている。このLi−水−空気電池の理論エネルギー密度は、反応に要する酸素の重量を除外して、約5,700Wh/kgである。また、実験では800Wh/kg程度の放電が実証されている(非特許文献2)。
電池に高いエネルギー密度を持たせるための別の手段として、ナトリウム−硫黄(Na−S)電池の固体電解質としてβアルミナを用いる技術が知られている。βアルミナとは、スピネルブロックと呼ばれる構造層がNa+イオン(以下、ナトリウムイオン、Naイオン、または単にNa+ともいう)から成る層を挟み込んだ層状構造を有する結晶である。βアルミナは、六方晶系のβ相および稜面体晶系のβ″相という層の重なり方が若干異なる二つの構造を持つ。例えば、後者の基本的な組成はNa1+xMgxAl11−xO17 (x=0.59〜0.72)である。配向制御された多結晶体は、層間のNa+イオンが高速拡散できるため、約350℃で0.1S・cm−1以上の高速Na+イオン伝導性を示す固体電解質となる。
Na−S電池は当初、鉛蓄電池の4〜5倍の高エネルギー密度が達成できる電気自動車向け二次電池として開発された。しかしNa−S電池は、約350℃という高温で動作する等の理由によって、現在は定置向けとして商用化されている。Na−S電池では、負極に金属Na、正極に硫黄および多硫化ナトリウムS/Na2Sxの活物質、正極溶融塩の集電材としてグラファイトウールがそれぞれ用いられる。典型的な運転温度は、硫化ナトリウムが溶融して電解質の伝導度も十分に高い300〜350℃である。Na−S電池は充放電エネルギー効率の高さを特徴とする。
また、高いNa+イオン伝導度およびβもしくはβ″アルミナに近いイオン伝導率を有する固体電解質として、ナシコン(NASICON)が知られている。ナシコンは、AMM′P3O12(Aはアルカリイオンを含む種々の陽イオン、M,M′は、2価から5価の陽イオン)の一般式で表される、菱面体晶系もしくは単斜晶系の一連の結晶である。Na+イオンを伝導するナシコンの代表的な化学組成は、Nal+xSixZr2P3−xO12(0≦x≦3)と表される。上記のリシコンは、AをLiとしたナシコンの一連の派生物質を指す。しかし、ナシコンは、Na−S電池の運転温度である300℃付近で金属Naと直接接触すると分解するため(非特許文献3)、Na−S電池に応用するには化学的耐久性に劣ると考えられてきた。
電池に高いエネルギー密度を持たせるためのさらに別の手段として、βもしくはβ″アルミナ電解質と金属Naとを負極活物質として用いる技術も知られている。この技術では、室温から100℃以下の温度域で一次電池を作動させる。そのため、負極をNa−Hgのアマルガム、セパレータをβアルミナ系電解質、正極活物質を水溶性電解液もしくは炭酸プロピレン等の有機溶媒に含有させたBr2、I2、H2O、O2としている(非特許文献4)。金属Naが室温では固体であるため、固体の金属Naのみを負極とすると、Na化学種が充分に拡散できず、放電特性が著しく低い。この問題を解決するために、Hgが使用されてきた。HgはNaと共に室温では液相を形成することで、拡散を改善する。この電池の理論エネルギー密度は500〜1,550Wh/kgの範囲にある。また、電池試験による実際のエネルギー密度は、それらの1/2〜1/3であり、実際上もエネルギー密度がLiイオン電池より高い。
J.Electrochem.Soc. 第143巻第1号第1頁〜第5頁(1996年)
J.Powder Sources 第195巻第1号第358頁〜第361頁(2010年)
Solid State Ionics 第6巻第1号第57頁〜第63頁(1982年)
J.Electrochem.Soc. 第122巻第1号第457頁〜第461頁(1975年)
上述のように、従来のLiイオン電池よりもエネルギー密度が向上したいくつかの電池が検討されてきた。しかし、いずれの技術でも、高価な部材を主要部材として用いていたため、コスト面で改善の余地があった。また、非特許文献1の技術では、実際の反応生成物であるLi2O2が有機電解液には溶解せず正極に目詰まりを起こすため、電池反応が完全に進まず、上記の理論密度が得られないという問題があった。また、非特許文献2の技術でも、リシコン電解質がLi金属と直接接触した場合や、強酸性や強塩基性の水溶液中に入れられた場合に分解するという問題があった。また、非特許文献4の技術では、有害なHgを使用するという問題があった。また、エネルギー密度に改善の余地があった。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、主要部材にありふれた材料のみを用いてコストを抑えつつも、重量もしくは体積あたりのエネルギー密度が大幅に向上した金属Na電池を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の金属Na電池は、Na+イオン伝導性を有するNa+イオン伝導体と、Na+イオン伝導体の一方の側に配置された実質的に金属Naからなる負極活物質と、負極活物質に少なくとも一部が接するように配置され、金属Naがイオン化する際に生じる電子を伝導可能な負極と、負極とNa+イオン伝導体の一方の面と接するように貯留された有機電解液と、Na+イオン伝導体の他方の側に配置された正極と、正極とNa+イオン伝導体の他方の面と接するように貯留された水溶性電解液と、水溶性電解液を収容し、耐塩基性を有する収容部と、を備える。
この態様によると、軽量で活性な金属Naと水、および必要な場合には外部から取り込むことができる酸素を活物質として用いているため、重量もしくは体積あたりのエネルギー密度が大幅に向上した金属Na電池を提供することができる。また、負極に金属Naを用いているため、従来の金属Li−水−空気電池やLiイオン電池と比較して、有機電解液や集電材、Na+イオン伝導体として用いるセラミックス・セパレータの分解を引き起こし難い。またNa+イオン伝導性の固体電解質のイオン伝導度自体も良好であるため、電池の出力密度を改善するための障壁とならない。
また、金属Na電池は、主要部材にありふれた材料や元素のみが用いられているため、安価に製造することができて、大規模な利用の妨げとならない。特に電池中の電荷移動を担うNaは、Liイオン電池に使用されるLiと比較すると、存在量や資源偏在の問題がない。また、金属Naを保持する負極では、Liを用いる際にしばしば必要とされる銅を用いる必要が無く、より安価なアルミニウム(Al)を好適に使用することができる。Na+イオン伝導体として用いるβアルミナ系やナシコンセラミックスを構成する元素や原料も安価でありふれている。
本発明によれば、主要部材にありふれた材料のみを用いてコストを抑えつつも、重量もしくは体積あたりのエネルギー密度が大幅に向上した金属Na電池を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本発明者らは、Na+イオン伝導性固体電解質である、βおよびβ″アルミナ、ならびにNa−Zr−Si−P−O系のナシコンセラミックスをNa+イオン伝導体(以下、セパレータともいう)として、金属Naを主成分とする負極を用いた電池(金属Na電池)を開発した。その上で、金属Na電池が好適に動作する電池構造や動作条件に関して、鋭意研究を重ねた。その結果、Naに関連する化学種の反応を介することで、ありふれた資源で構成でき、かつ高いエネルギー密度を有する金属Na電池を提供できることを見出した。なお、本明細書中で「Na+イオン伝導性」とは、Na+イオンを選択的に伝導可能であることをいう。選択的に伝導可能であるとは、必ずしもNa+イオンのみを伝導して他の物質を全く伝導しないことを意味しない。つまり、Na+イオンを他の物質に比べて有意に高頻度に伝導可能な場合も、選択的に伝導可能な場合に含むものとする。
金属Na電池を放電させる場合、負極活物質のNaがイオン化してNa+イオンとなって有機電解液に溶解し、負極に電子を供給する。Na+イオンはNa+イオン伝導体を経て水溶性電解液へと拡散する。即ち負極での部分反応は、Na→Na++e−である。
酸素ガスを正極に供給する場合や金網を正極として用いる場合には、正極での部分反応は1/2H2O+e−+1/4O2→OH−となる。この場合、金属Na電池における全反応は、Na+1/2H2O+e−+1/4O2→NaOH(aq)となる。即ち、放電が進行するにつれて水溶性電解液中のNaOH濃度が増加する。しかし、正極の表面から水素ガスは発生しない。金属Na電池20のこの運転状態を「ナトリウム−水−空気電池」と称する。ナトリウム−水−空気電池は、実施の形態1として図1(A)を用いて説明する。
一方、酸素ガスを正極に供給しない場合、負極側からの電子の供給により、正極での部分反応は、H2O+e−→OH−+1/2H2となる。この場合、金属Na電池における全反応は、Na+H2O→NaOH(aq)+1/2H2↑となる。即ち、放電が進行するにつれて水溶性電解液中のNaOH濃度が増加すると共に、正極の表面から水素ガスが発生する。金属Na電池のこの運転状態を「ナトリウム−水電池」と称する。ナトリウム−水電池は、実施の形態2として図1(B)を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1(A)は、実施の形態1に係る金属Na電池20(ナトリウム−水−空気電池)の構造を示す概略図である。まず金属Na電池20の構造の概略を説明した上で、次に各構成を詳細に説明する。
図1(A)は、実施の形態1に係る金属Na電池20(ナトリウム−水−空気電池)の構造を示す概略図である。まず金属Na電池20の構造の概略を説明した上で、次に各構成を詳細に説明する。
本実施の形態の金属Na電池20は、Na+イオン伝導性を有するNa+イオン伝導体1と、Na+イオン伝導体1の一方の側に配置された実質的に金属Naからなる負極活物質4と、負極活物質4に少なくとも一部が接するように配置され、金属Naがイオン化する際に生じる電子を伝導可能な負極5と、負極5とNa+イオン伝導体1の一方の面と接するように貯留された有機電解液2と、Na+イオン伝導体1の他方の側に配置された正極8と、正極8とNa+イオン伝導体1の他方の面と接するように貯留された水溶性電解液3と、水溶性電解液3を収容し、耐塩基性を有する正極側収容部13と、を備える。
筺体7は、金属Na電池20の主要な部材を収容する。筺体7は、負極側収容部12と正極側収容部13とを含む。負極側収容部12は、金属Na電池20の負極側の部材である負極5、負極活物質4、有機電解液2を収容する。負極側収容部12は、これらを収容した上で、内部を気密に保つ構造を有する。この状態で負極側収容部12の内部から外部へと負極外部端子6が延びている。
一方、正極側収容部13は、金属Na電池20の正極側の部材である正極8、水溶性電解液3を収容する。また、正極側収容部13の内部から外部へと正極外部端子10が延びている。さらに、正極側収容部13には必要に応じて外部からガス導入管11が挿入されてもよい。
金属Na電池20の放電開始後、反応が進行するにつれて水溶性電解液3中のNaOH(水酸化ナトリウム)濃度が増大する。その結果、水溶性電解液3のpHは13を超えることがある。そのため、筺体7の正極側収容部13のうち、少なくとも水溶性電解液3と接する部分が耐塩基性の材料、望ましくはpH14以上にも耐えられる耐強塩基性の材料で形成されている。このような正極側収容部13として、例えばパイレックス(登録商標)ガラス、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ピーク(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂(VICTREX社製)等の容器を好適に使用することができる。筺体7の負極側収容部12と正極側収容部13とは一体的に形成されていてもよいし、別々に形成されていてもよい。
Na+イオン伝導体1は、負極側収容部12に入れられた有機電解液2と、正極側収容部13に入れられた水溶性電解液3とを隔てる。Na+イオン伝導体1は、緻密なNa+イオン伝導性固体電解質セラミックスからなる。Na+イオン伝導性固体電解質セラミックスは、Na+イオンを選択的に伝導可能な固体材料、つまり緻密な気相や液相が直接透過しない、Na+イオン伝導性の固体材料である。Na+イオン伝導体1に好適な材料として、次に挙げる2つの材料が主に考えられる。
Na+イオン伝導体1に好適な1つめの材料は、菱面体晶系のβ−アルミナおよび六方晶系のβ″−アルミナセラミックスである。これらをまとめて多結晶体の「βアルミナ系セラミックス」と称する。Na+イオン伝導度が高い方が電池性能が高まるため、β−アルミナよりもβ″−アルミナが望ましい。しかし、二相共存であっても大きな性能差は生じないし、実際に作成されるβアルミナ系セラミックスはβ−アルミナとβ″−アルミナの両方を主要な相として含む場合が多い。金属Na電池20には水溶性電解液3を用いるため、金属Na電池20は0〜100℃の範囲で運転できるが、80℃を超えると水溶液の蒸発が著しくなるため、80℃以下の温度が望ましい。この場合、これらのβアルミナ系セラミックスのイオン伝導度は、典型的には10−3〜0.1S・cm−1の範囲にある。このイオン伝導度は、1M HCl水溶液の1/10程度と、固体電解質としては非常に高い。また、βアルミナ系セラミックスは、Na−S電池への適用で実証されているように、金属Naと直接接しても分解することは無く、高い安定性を有する。そのため、βアルミナ系セラミックスは、高い活性を有する金属Naを電池構造に組み込みながらも安全性を確保するために重要な役割を果たす。
Na+イオン伝導体1に好適な2つめの材料は、単斜晶もしくは菱面体晶系(多結晶体)のナシコンセラミックスである。その結晶構造の特徴は、陽イオンに四面体と六面体配位した酸化物イオンのネットワーク中に埋め込まれたNa+イオンが、容易に移動できる構造を有している点である。ナシコンセラミックスでは0〜100℃にて、典型的には10−4〜0.1 S・cm−1の電気伝導を示す。ナシコンセラミックスは、水溶液中に長時間浸漬しても安定であるため(J.J.Auborn&D.W.Johnson., Solid State Ionics, 第5巻第315頁、1981年)、水溶性電解液3を有機電解液2から隔てるために優れた特性を示す。
βアルミナ系セラミックスおよびナシコンセラミックス中のイオン伝導種は、Na+イオンに限定されるように組成調整されることが望ましい。即ち、K(カリウム)等、Na以外の一価の陽イオンとなる化学種の量を極力少なくすることが望ましい。Na+イオン以外の一価陽イオンの量が多くなると、イオン伝導度が低下する他、電池の運転中に一価陽イオンの交換が起こり、これらのセラミックス中の体積変化を引き起こすことで、セラミックスの破損が生じやすくする。これらのセラミックスは緻密な隔膜状に成型される。電池の内部抵抗を低減させるためにはその厚さは薄いほど有利である。ただし、金属Na電池20の内部で自己的に支持させる場合は、強度の観点からNa+イオン伝導体1の厚さを0.1〜2mmとすることが望ましい。また、Na+イオン伝導体1として、多孔質アルミナなどの絶縁性で水溶性電解液3に対しても劣化しない材質からなる基材に、緻密なβアルミナ系やナシコンの膜を形成した構造体を用いてもよい。この場合、抵抗を更に低減させることができる。
負極5の材料は、金属Na電池20の運転温度(0〜100℃)において固体(融点が100℃超)であって、金属Naが溶解することにより生じた電子を伝導可能な程度に良導性を有し、金属Naと著しく反応しない材質であれば、どのような材質でもよい。このような材料として、例えばAl、Cu、Fe、Cr、Ni、Tiや、これらを主要成分とする合金などを好適に使用することができる。コストや重量の観点からは、Alを主要成分とする金属が好適である。負極5を多孔質金属として形成すると、ナトリウムの拡散が促進されるためさらに有利である。
負極側収容部12には、負極5の少なくとも一部と接するように、負極活物質4が収容されている。負極活物質4は、金属Naを主成分とする。負極活物質4は、実質的に金属Naからなることが望ましい。「実質的に金属Naからなる」とは、負極活物質4における金属Naの含有量が90質量%以上であることをいう。負極活物質4は、負極5および負極5に接続された負極外部端子6と電気的に接続されている。負極活物質4の主成分である金属Naは、負極5を含む平板状の金属板、金属線、金網等で保持してもよい。または、負極5が多孔質金属で形成されている場合には、孔の中にNaを含侵させ、負極活物質4と負極5を一体化させてもよい。
負極活物質4に中には、水銀とNaの液体合金であるアマルガムを実質的に含有させないことが好ましい。具体的には、負極活物質4における水銀の含有量は、1.0質量%未満であることが望ましく、0.1質量%未満であることがより望ましい。負極活物質4中の水銀の含有量をこの範囲に抑えることによって、金属Na電池20の重量あたりのエネルギー密度を向上させ、環境への負荷を低減させ、安全性を向上させることができる。同様に、Kも実質的に含有させないことが望ましい。もし負極活物質4の金属NaにKなど一価の陽イオンとなる金属が含まれるのであれば、含有量が低いほど望ましく、特に5質量%未満であることが望ましい。負極活物質4中のKの含有量をこの範囲に抑えることによって、Na+イオン伝導体1を構成するセラミックスの伝導率や耐久性を維持させることができる。
有機電解液2は、Na+イオン伝導性を有する物質である。有機電解液2としては、炭酸プロピレン(PC)や炭酸エチレン(EC)が好適である。また、NaはLiよりも標準酸化還元電位の絶対値が小さいため、従来のLiイオン電池やLi−水−空気電池の有機電解液ほどの安定性は必要ない。そのため、Liイオン電池向けには不適切とされた電解液を利用できると考えられる。有機電解液2を省いてNa+イオン伝導体1と負極活物質4とを直接接触させても原理的には起電力を発生する。しかし、ナトリウムの拡散が著しく遅くなるため、充分な電流を得ることができない。つまり、有機電解液2はNa+イオン伝導体1と負極活物質4との間のナトリウム拡散を充分にするために重要な役割を果たす。有機電解液2には、Na+イオン伝導性を付与させるために、NaPF6やNaClO4、NaBO4などのナトリウム塩や、必要に応じて負極活物質4と有機電解液2との界面の電気特性を改善させるための添加剤が加えられる。NaPF6などのナトリウム塩の濃度は、0.5M以上が好ましく、0.8M以上がより好ましく、0.95M以上がより好ましく、1.0M以上がさらに好ましい。また、添加剤としてフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加えると、金属Na電池20の安定性が向上する。金属Na電池20におけるFECの役割は、金属Na表面に安定な皮膜を形成することで、ナトリウムの拡散の促進と、有機電解液の安定化に寄与することであると推測される。
本実施の形態では、正極8は、板または金網のいずれの形状でもよい。このような材質として、例えば炭素を好適に使用することができる。一方、ガス導入管11と正極8を通じて水溶性電解液3に酸素を供給する場合、正極8には、カーボン板、ニッケル(Ni)を主成分とする金属製の電極、白金(Pt)やパラジウム(Pd)などの貴金属製の電極、またはステンレス金網などに貴金属をコーティングした電極を用いることが望ましい(カーボン板は例えば東海カーボン株式会社より、金属材料は例えばニラコ株式会社より、それぞれ購入可能)。電流密度を向上させるためには、正極8としてカーボン板を使用することが特に好適である。また、価格等を考慮すると、ニッケルを主成分とする金属製の電極が特に好適である。
ガス導入管11および正極8を通じて酸素を水溶性電解液3に供給するためには、圧縮ガスボンベを用いて酸素や空気を供給してもよい。または、必要に応じてポンプ等を用いることによって、大気を供給してもよい。
水溶性電解液3は正極側収容部13に収容されている。水溶性電解液3には、Na+イオン伝導性を付与するためにナトリウム塩が添加される。ナトリウム塩としては、NaOHが好適である。正極8は、正極外部端子10と電気的に接触されている。図1(A)には、正極8として白金製の金網(Pt金網)を用いる場合を示す。正極8は、水溶性電解液3中に浸される。金網からなる正極8を利用する場合は、図1(A)に示すように、酸素を含む気体を供給するガス導入管11をさらに設けてもよい。
水溶性電解液3には、Na+イオン伝導性を付与するために、Na塩が添加される。水溶性電解液3中のNa+イオン濃度が高いほど金属Na電池20の内部抵抗低減の観点から有利であるが、金属Na電池20の起電力が僅かに減少する。そのため、水溶性電解液3として典型的には約0.1〜約1.0Mの濃度のNaOH水溶液が適当である。水溶性電解液3は、pH>7(塩基性)であることが望ましい。酸性になると水溶性電解液3中のH3O+イオン濃度が高くなり、そのH3O+がNa+イオン伝導体1へ拡散して、有機電解液2や負極活物質4に到達すると還元分解され、そこで水素ガスの発生を伴う酸化物のイオン拡散障壁層を形成する恐れがあるためである。また、βアルミナ系およびナシコンは、リシコンと異なり強塩基性でも分解しないためである。また、金属Na電池20の放電と共に有機電解液2から水溶性電解液3中へとNa+イオンが移動するため、NaOH濃度が高くなる。しかし、放電深度をさらに高めても特に問題はない。水溶性電解液3のpHの上昇がNa+イオン伝導体1に悪影響を及ぼさないためである。また、水溶性電解液3では、K+などNa+イオン以外の一価の陽イオン濃度は、低い方が望ましい。具体的には、Na+イオン濃度比で5%未満であることが望ましい。
以上、本実施の形態によると、軽量で活性な金属Naと水、および必要な場合には外部から取り込むことができる酸素を活物質として用いているため、重量もしくは体積あたりのエネルギー密度が大幅に向上した金属Na電池20を提供することができる。また、負極に金属Naを用いているため、従来の金属Li−水−空気電池やLiイオン電池と比較して、有機電解液や集電材、Na+イオン伝導体1として用いるセラミックス・セパレータの分解を引き起こし難い。またNa+イオン伝導性の固体電解質のイオン伝導度自体も良好であるため、電池の出力密度を改善するための障壁とならない。
また、金属Na電池20は、主要部材にありふれた材料や元素のみが用いられているため、安価に製造することができて、大規模な利用の妨げとならない。特に電池中の電荷移動を担うNaは、Liイオン電池に使用されるLiと比較すると、存在量や資源偏在の問題がない。また、金属Naを保持する負極5では、Liを用いる際にしばしば必要とされる銅を用いる必要が無く、より安価なAlを好適に使用することができる。Na+イオン伝導体1として用いるβアルミナ系やナシコンセラミックスを構成する元素や原料も安価でありふれている。
また、水銀とナトリウムの液体合金であるアマルガムを負極活物質4として実質的に使用しないため、金属Na電池20のエネルギー密度を向上させることができる。加えて、金属Na電池20は製造だけではなく廃棄の観点からも優れている。
また、本実施の形態の金属Na電池20は、Na+イオン伝導体1を介して負極5側に固体の金属NaとNa塩を溶解した有機電解液2を、正極8側に水溶性電解液3を用いることにより、室温から80℃までの条件で安定に動作することができる。特にβおよびβ″アルミナ、ならびにナシコンセラミックスをNa+イオン伝導体1として使用した場合、Na+イオンを良好に伝導することで、放電に関する主要な抵抗成分とならず、電池反応を阻害する主要な要因となることなく有機電解液2および水溶性電解液3の混合を防ぐことができる。また、金属Na電池20は、Na+イオン伝導体1によって正極8側が負極5側の構造体から完全に分離された構造を有する。そのため、水溶性電解液3の補充や交換が容易である。
(実施の形態2)
図1(B)は、実施の形態2に係る金属Na電池20(ナトリウム−水電池)の構造を示す概略図である。ここでは、実施の形態1のナトリウム−水−空気電池との相違点のみ説明する。
図1(B)は、実施の形態2に係る金属Na電池20(ナトリウム−水電池)の構造を示す概略図である。ここでは、実施の形態1のナトリウム−水−空気電池との相違点のみ説明する。
本実施の形態では、正極8が正極側収容部13の一方の面を形成することにより、水溶性電解液3が正極側収容部13に収容されている。この場合、正極8は、内部で発生した水素を透過して外部へと放出するガス透過性を有する。一方、正極8は、水溶性電解液3により適度に浸潤されつつも水溶性電解液3を通過させない。本実施の形態では、水の還元に対する過電圧の大きな材質を正極8に用いることが望ましい。加えて、正極8の少なくとも水溶性電解液3と接する面には、多孔質炭素や金属製金網、もしくは反応性を高めるために微細な金属粒を担持した多孔質炭素などが積層もしくは複合された材質を用いることが好適である。
本実施の形態によっても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
(金属Na電池20の性能)
表1は、ナトリウム−水−空気電池(実施の形態1)およびナトリウム−水電池(実施の形態2)の25℃における理論起電力(V)、25℃における理論エネルギー密度(Wh/kg)(O2を含まない場合と含む場合)を示す。表中、「s」「l」「aq」「g」は、それぞれ固体、液体、水溶液、気体を表す。
表1は、ナトリウム−水−空気電池(実施の形態1)およびナトリウム−水電池(実施の形態2)の25℃における理論起電力(V)、25℃における理論エネルギー密度(Wh/kg)(O2を含まない場合と含む場合)を示す。表中、「s」「l」「aq」「g」は、それぞれ固体、液体、水溶液、気体を表す。
実施の形態1および2の金属Na電池では、典型的なLiイオン電池の3〜15倍程度のエネルギー密度が得られる。
(実施例1:ナシコン・セパレータを用いた金属Na電池)
Na3Zr2Si2PO12の組成となるように、Na3PO4、ZrO2、SiO2原料を秤量および混合し、1100℃にて12時間仮焼した。これをボールミルによって粉砕後、一軸加圧成型、冷間静水圧プレス後1275℃にて15時間の条件で焼結することにより、ナシコン相の純度が98%以上、直径約16mmの円盤状で、相対密度98%以上でガス透過性の無い焼結体を得た。これを厚さ1mmとなるように研磨して、ナシコンセラミックス製のナシコン・セパレータ(Na+イオン伝導体1)を得た。交流インピーダンス法で、上記のナシコン製セラミックスの結晶粒内および結晶粒界の抵抗成分の和の温度特性を評価した。電気伝導度の活性化エネルギーは、典型的な値である0.27eVを示した。セパレータとしての直流抵抗値は、50℃にて53Ω・cm−2であった。
Na3Zr2Si2PO12の組成となるように、Na3PO4、ZrO2、SiO2原料を秤量および混合し、1100℃にて12時間仮焼した。これをボールミルによって粉砕後、一軸加圧成型、冷間静水圧プレス後1275℃にて15時間の条件で焼結することにより、ナシコン相の純度が98%以上、直径約16mmの円盤状で、相対密度98%以上でガス透過性の無い焼結体を得た。これを厚さ1mmとなるように研磨して、ナシコンセラミックス製のナシコン・セパレータ(Na+イオン伝導体1)を得た。交流インピーダンス法で、上記のナシコン製セラミックスの結晶粒内および結晶粒界の抵抗成分の和の温度特性を評価した。電気伝導度の活性化エネルギーは、典型的な値である0.27eVを示した。セパレータとしての直流抵抗値は、50℃にて53Ω・cm−2であった。
図2は、電池試験の概要を示す概略図である。本実施例で使用した金属Na電池20を以下のように構成した。本実施例では、筺体7をO−リング14、冶具15、グローブボックス16、蓋部17を含む負極側収容部12、および正極側収容部13により構成した。まず、得られたNa+イオン伝導体1を、その有効面積が1.1cm2となるように設計されたピーク樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)製の冶具15に取り付けた。この冶具15はゴム製のO−リング14によって、負極5側となる内部と正極8側となる外部とを気密に隔てる構造を有する。酸素と水分を除去した精製雰囲気を提供するグローブボックス16内で、金属Na片20mgを白金線に括りつけ、上記の冶具15に収容した。さらに、炭酸プロピレンに0.5MのNaPF6および0.05Mのフルオロエチレンカーボネートを溶解させた有機電解液2を、金属Naが全て浸るように注いだ後、O−リング14および蓋部17にて気密シールして負極側収容部12を形成した。上記の白金線を気密が保たれるように負極側収容部12から外部へと引き出し、負極外部端子6とした。
水溶性電解液3として、0.1M NaOH水溶液を使用した。水溶性電解液3は、パイレックス(登録商標)ガラス製の正極側収容部13に収容させた。大気中で、水溶性電解液3中に上記のNaを封入した負極側収容部12を、Na+イオン伝導体1が全て水溶性電解液3に浸るように設置した。水溶性電解液3中に250メッシュのPt金網(金属材料をニラコ株式会社より購入)4cm2を設置して正極8とした。正極8に溶接された白金線を正極側収容部13から外部へと引き出して、正極外部端子10とした。正極8近傍には、プラスチック製のガス導入管11を通して、100%O2ガスもしくは、5%H2−95%Arガスを50cm3/min.の流量で供給した。正極外部端子10および負極外部端子6を通じて、電池特性をポテンショ・ガルバノスタット18(Solartron,1287型)を用いて評価した。
図3は、実施例1のナシコン・セパレータを用いた金属Na電池に対して、50℃にて得られた電流−電圧特性を示す。電流0における電圧(V)が開放起電力に相当する。ガス導入管を通じて100%酸素を供給した場合、本実施例の金属Na電池はNa−水−空気電池として作動した。この場合、得られた開放起電力(V)は理論起電力とほぼ一致した。理論起電力よりも実測値が僅かに小さかった。これは、水溶性電解液中に予め0.1MのNaOHを溶解させたためであると考えられる。一方、ガス導入管を通じて5%H2−95%Arを供給した場合、本実施例の金属Na電池はNa−水電池として作動した。この場合、得られた開放起電力(V)は理論起電力に近い値を示した。理論起電力よりも実測値が大きかった。これは、水溶性電解液中の溶存酸素を完全に除去できていなかったためであると考えられる。電流−電圧特性の勾配から見積もった電池の内部抵抗は、Na−水−空気電池において約200Ω/cm2、Na−水電池において、約400Ω/cm2であった。これは、ナシコンセラミックスのセパレータの抵抗値よりも数倍大きな値であった。従って、ナシコンセラミックス自体は内部抵抗の主要成分ではなく、Na+イオン伝導体として電池性能自身を損なうことなく有効に働いていると判断された。
図4は、実施例1のナシコン・セパレータを用いた金属Na電池に対して、50℃にて得られた放電特性を示す。ナトリウム−水−空気電池、ナトリウム−水電池のいずれの場合も、仕込んだ金属Na量から予想される積算電流値(放電量/mAh)の直後に、起電力(電圧/V)が急激に低下した。このことから、いずれの運転状態でも金属Na電池を完全に放電可能であることが示された。また、本実施例の金属Na電池は、正極側収容部が強塩基性(pH>13)の水溶性電解液に浸漬された状態で2日間以上安定して動作した。
(実施例2:ナシコン・セパレータを用いた金属Na電池)
本実施例は、実施例1と同じ組成を有する焼結体を、厚さ0.5mmとなるように研磨してナシコンセラミックス製のセパレータを得た点が、実施例1とは異なる。
本実施例は、実施例1と同じ組成を有する焼結体を、厚さ0.5mmとなるように研磨してナシコンセラミックス製のセパレータを得た点が、実施例1とは異なる。
得られたナシコン・セパレータを用いた金属Na電池20について、実施例1と同様に図2に示す電池試験を行った。白金線に括りつけた金属Na片が23mgであった点、1.0MのNaPF6を用いた点、正極8として12cm2のカーボン板(東海カーボン株式会社製等方性黒鉛)を用いた点、および正極8に100% O2ガスのみを供給した点以外は実施例1と同様に電池試験を行った。
図5は、実施例2のナシコン・セパレータを用いた金属Na電池に対して、50℃にて得られた電流−電圧を示す。開放起電力(V)は、理論起電力とほぼ一致していた。そのため、本実施例の金属Na電池は、Na−水−空気電池として作動したことが確認された。出力密度(W/kg)の最大値は、封入した金属ナトリウム重量23mgおよびその完全反応に要する水18mgの合計4.1mgおよび、ナシコンセパレータの有効面積当りの換算値で、200W/kgであり、その際の電流密度は6mA/cm2であった。図5に示すように、本実施例では、実施例1(図3)で見られた不安定な挙動が確認されなかった。このことから、電流密度が実施例1よりもさらに増加した主な要因は、正極をPt金網からカーボン板に交換したことであると考えられる。また、有機電解液中のNaPF6濃度を増加させたことも一因であると考えられる。
表2は、実施例1および2のナシコン・セパレータを用いた金属Na電池により得られた開放起電力(V)、50℃におけるエネルギー密度(Wh/kg)、出力密度(W/kg)を示す。電流−電圧特性における最大電力での値、および電池反応に関与した、酸素ガスを除く負極および正極活物質量から、エネルギーおよび出力密度を算出した。
本実施例の金属Na電池では、典型的なLiイオン電池の3〜15倍程度のエネルギー密度が得られた。また出力密度は、100W/kgの目標目安値に対して充分応え得る値であることが確認された。
例えば車重が1000kg程度のガソリン車と同等の航続距離を得るためには、従来のLiイオン電池では1200kg程度の電池が必要であった。そのため、従来のLiイオン電池は実用化には非現実的であった。一方、約6倍のエネルギー密度(表2)をもつ本実施例のNa−水−空気電池を用いると、電池の重量は約200kgで済む。これは現状の電気自動車と同程度の現実的な重量である。常用的な自動車では、80kW程度の最大出力を1分程度、20kW程度の定常出力を恒常的に得られればよい。そのため、短時間に80kWの出力を得るために、例えば30kg程度のLiイオン電池やそれと同等の性能をもつスーパーキャパシター等を併用する。これにより、Na−水−空気電池に必要とされる出力密度は100W/kg程度と、Liイオン電池の1/5〜1/30で済む。また、本実施例の金属Na電池が有するエネルギー密度が高い、即ち軽いという特徴は、必ずしも自動車のような移動体に限定されるものではなく、家庭用電気機器向けの電池としても好適である。
(実施例3:βアルミナ系・セパレータを用いた金属Na電池)
Na2CO3、g−Al2O3、MgOを原料にボールミル混合し、1600℃で2時間仮焼した。これをボールミル粉砕、一軸加圧成型、冷間静水圧プレス後1650℃にて24時間の条件で焼結することにより、βアルミナおよびβ″アルミナ相の重量比率が約6:4の、直径約16mm円盤状で、相対密度98%以上のガス透過性のない焼結体を得た。これを厚さ1.5mmとなるように研磨して、βアルミナ系セラミックスのセパレータ(Na+イオン伝導体)を得た。交流インピーダンス法で上記のβアルミナ系セラミックスの、結晶粒内および結晶粒界の抵抗成分の和の温度特性を評価した。電気伝導度の活性化エネルギーは、典型的な値である0.30eVを示した。Na+イオン伝導体としての直流抵抗値は、50℃にて40Ω・cm−2であった。
Na2CO3、g−Al2O3、MgOを原料にボールミル混合し、1600℃で2時間仮焼した。これをボールミル粉砕、一軸加圧成型、冷間静水圧プレス後1650℃にて24時間の条件で焼結することにより、βアルミナおよびβ″アルミナ相の重量比率が約6:4の、直径約16mm円盤状で、相対密度98%以上のガス透過性のない焼結体を得た。これを厚さ1.5mmとなるように研磨して、βアルミナ系セラミックスのセパレータ(Na+イオン伝導体)を得た。交流インピーダンス法で上記のβアルミナ系セラミックスの、結晶粒内および結晶粒界の抵抗成分の和の温度特性を評価した。電気伝導度の活性化エネルギーは、典型的な値である0.30eVを示した。Na+イオン伝導体としての直流抵抗値は、50℃にて40Ω・cm−2であった。
次に、実施例1と同様に、図2に示す電池試験を行った。βアルミナ系セラミックスのセパレータをNa+イオン伝導体1として用いた点、白金線に括りつけた金属Na片が10mgであった点、およびNaPF6に代えて0.5Mの過塩素酸ナトリウム(NaClO4)を用いた点以外は実施例1と同様に電池試験を行った。
図6は、実施例3のβアルミナ系・セパレータを用いた金属Na電池に対して、30℃,40℃,50℃にて得られた電流−電圧特性を示す。開放起電力(V)は、Na−水−空気電池としての理論起電力とほぼ一致した。このことから、本実施例の金属Na電池が所望の通りに動作したことが確認された。50℃における電流−電圧特性の勾配から見積もった電池の内部抵抗は、約900W/cm2であった。これは、βアルミナ系セラミックスセパレータの抵抗値よりも10倍以上大きな値であった。従って、βアルミナセラミックス自体は内部抵抗の主要成分ではないと判断された。また、Pt金網を1cm2のNi板に変更しても、電流−電圧特性の変化は認められなかった。
1 Na+イオン伝導体、2 有機電解液、3 水溶性電解液、4 負極活物質、5 負極、6 負極外部端子、7 筺体、8 正極、10 正極外部端子、11 ガス導入管、12 負極側収容部、13 正極側収容部、20 金属Na電池
Claims (5)
- Na+イオン伝導性を有するNa+イオン伝導体と、
前記Na+イオン伝導体の一方の側に配置された実質的に金属Naからなる負極活物質と、
前記負極活物質に少なくとも一部が接するように配置され、金属Naがイオン化する際に生じる電子を伝導可能な負極と、
前記負極活物質と前記Na+イオン伝導体の一方の面と接するように貯留された有機電解液と、
前記Na+イオン伝導体の他方の側に配置された正極と、
前記正極と前記Na+イオン伝導体の他方の面と接するように貯留された水溶性電解液と、
前記水溶性電解液を収容し、耐塩基性を有する収容部と、を備える金属Na電池。 - 前記Na+イオン伝導体は、β″アルミナ、βアルミナまたはNal+xSixZr2P3−xO12(0≦x≦3)で表されるナシコンから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属Na電池。
- 前記負極は、Hgを実質的に含まないことを特徴とする請求項1または2に記載の金属Na電池。
- 前記有機電解液は、炭酸プロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属Na電池。
- 前記水溶性電解液は、NaOH水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属Na電池。
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