(特徴1) 本明細書に開示する眼科装置においては、レンズ駆動機構は、レンズが直交平面内で移動可能となる第1状態と、レンズが直交平面内で移動不能となる第2状態と、に切り替え可能な切替え機構と、切替え機構が第2状態に切替えたときに、レンズを光軸に対して予め定められた設定位置に案内するガイド機構と、をさらに有していてもよい。このような構成によると、被検眼の測定を終了したときに第1状態から第2状態に切り替えることで、レンズを予め定められた設定位置に案内し、設定位置において保持することができる(即ち、設定位置で移動不能状態とすることができる)。このため、測定開始時(第2状態から第1状態に切り替える時)のレンズの位置を一定(すなわち、設定位置)とすることができ、被検眼の測定をスムーズに行うことができる。
(特徴2) 本明細書に開示する眼科装置においては、レンズ駆動機構は、光軸に対するレンズの位置を検出する位置検出部をさらに有していてもよい。制御装置は、位置検出部の検出結果に基づいて、レンズ駆動機構を制御してもよい。このような構成によると、光軸に対するレンズの位置を検出し、その検出したレンズの位置に基づいてレンズを駆動するため、光源からの光を所望の位置に適切に照射することができる。
図1に示すように、本実施例の眼科装置は、被検眼100を検査するための測定部10を有している。測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されている。
光源12は、波長掃引型(波長走査型)の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化する。本実施例では、光源12から出射される光の波長を変化させながら、被検眼100からの反射光と参照光とを干渉させ、その干渉光を測定する。そして、測定した干渉光(干渉信号)をフーリエ変換することで、被検眼100の内部の各部位(例えば、水晶体104、網膜106等)の位置を特定することができる。なお、光源12は、1μm帯域の波長(例えば、950nm〜1100nm程度)の光が出射される光源とされている。
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、ビームエキスパンダー40と、ミラー46と、ホットミラー48によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、ビームエキスパンダー40、ミラー46及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ミラー46、ビームエキスパンダー40、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。0点調整機構30とビームエキスパンダー40については、後で詳述する。
参照光学系は、ビームスプリッタ24と参照ミラー22によって構成されている。光源12から出射された光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、干渉計20内に配置され、その位置が固定されている。このため、本実施例の眼科装置では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、干渉光学系の光源12からの光を反射する一方で、観察光学系の光源からの光を透過する。このため、本実施例の眼科装置では、干渉光学系による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
ここで、測定光学系に設けられる0点調整機構30とビームエキスパンダー40について説明する。0点調整機構30は、コーナキューブ32と、コーナキューブ32をミラー28,34に対して進退動させる第2駆動装置56(図2に図示)を備えている。第2駆動装置56がコーナキューブ32を図1の矢印Aの方向に駆動することで、光源12から被検眼100までの光路長(すなわち、測定光学系の物体光路長)が変化する。ここで、光源12から被検眼100の検出面(例えば、被検眼100の角膜102の表面)までの物体光路長(詳細には、光源12〜検出面+検出面〜受光素子26)と、光源12から参照ミラー22までの参照光路長(詳細には、光源12〜参照ミラー22+参照ミラー22〜受光素子26)とに光路差Δzが存在する場合、光路差Δzが大きくなるほど、検出面から反射される反射光と参照光とを合成した干渉光の強度は弱くなる。逆に、光路差Δzが小さいほど、干渉光の強度は強くなる。このため、本実施例では、0点調整機構30により物体光路長を変化させることで、参照光路長と物体光路長とが一致する位置(いわゆる、0点)を少なくとも角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。
ビームエキスパンダー40は、光源12側に配置される凸レンズ42と、被検眼100側に配置される凸レンズ44と、凸レンズ44に対して凸レンズ42を光軸方向(z軸方向(矢印Bの方向))に進退動させると共に、凸レンズ44を光軸に対して直交する平面(xy平面(例えば、矢印Cの方向))内で移動させる第3駆動装置58を備えている。凸レンズ42と凸レンズ44は、光軸上に配置されている。
凸レンズ42が凸レンズ44に対して光軸方向に進退動することで、凸レンズ42に入射する平行光の焦点の位置が変化する。すなわち、第3駆動装置58が凸レンズ42を図1の矢印Bの方向に駆動することで、被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の深さ方向に変化する。具体的には、凸レンズ44から照射される光が平行光となるように凸レンズ42と凸レンズ44との間隔を調整した状態から、凸レンズ42を凸レンズ44から離れる方向に移動させると、凸レンズ44から照射される光は収束光となり、凸レンズ42を凸レンズ44に近づく方向に移動させると、凸レンズ44から照射される光は発散光となる。これによって、被検眼100に照射される光の焦点の位置を被検眼100の角膜102の表面や網膜106の表面に一致させることができる。光の焦点をこれらの表面に一致させると、これらの面から反射される光の強度を強くでき、これらの面の位置を精度よく検出することができる。
また、凸レンズ44は、凸レンズ42に対して光軸に対して直交する平面(xy平面(矢印のC方向))内で2次元的に移動可能となっている。すなわち、第3駆動装置58は、凸レンズ42に対して凸レンズ44を、光軸に対して直交する平面(xy平面)内で2次元的に駆動する。これによって、光源12からの光の被検眼100への入射位置が、被検眼100に対して2次元的に変化する。例えば、凸レンズ44を凸レンズ42に対してy方向に移動させると、入射位置もy方向に変化する。また、凸レンズ44を凸レンズ42に対してx方向に移動させると、入射位置もx方向に変化する。したがって、凸レン
ズ44を凸レンズ42に対してx方向及び/又はy方向に移動させることで、入射位置がxy平面内で変化する。このため、第3駆動装置58で凸レンズ44を駆動することで、被検眼100の表面に設定された設定領域を光で2次元的に走査することができる。設定領域としては、例えば、被検眼100を正面視したときに、被検眼100の角膜頂点を含む所定の領域を設定することができる。なお、被検眼100への光の入射位置が変化すると、被検眼100への光の入射角度も変化する。凸レンズ44をxy平面内で駆動する機構については、後で詳述する。
なお、本実施例のビームエキスパンダー40では、凸レンズ42を光軸方向に移動させることで光の焦点の位置を調整し、凸レンズ44を光軸に対して直交する平面内で移動させることで光の入射位置を調整したが、このような構成には限られない。例えば、凸レンズ42に代えて凸レンズ44を光軸方向に移動させることで、光の焦点の位置を変更するようにしてもよい。また、凸レンズ44に代えて凸レンズ42を光軸に対して直交する平面内で移動させることで、光の入射位置を調整するようにしてもよい。あるいは、凸レンズ42と凸レンズ44の一方を他方に対して、光軸方向及び光軸と直交する平面内で移動させることで、光の焦点の位置及び光の入射位置の両者を調整するようにしてもよい。また、本実施例では、2つの凸レンズ42,44でビームエキスパンダー40を構成したが、3以上のレンズによってビームエキスパンダーを構成してもよい。例えば、凸レンズ42を複数のレンズによって構成してもよい。
アライメント光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができ、また、被検眼100の角膜頂点の位置を検出する検出装置60(図2に図示)を備えている。本実施例では、角膜頂点検出装置60が被検眼100の角膜頂点を検出し、その検出結果に基づいて測定部10の位置が調整される。これによって、測定部10が被検眼100の角膜頂点に対して所定の位置に位置決めされる。測定部10の位置を調整するための機構として、本実施例の眼科装置は、被検眼100に対して測定部10の位置を調整するための位置調整機構16(図2に図示)と、その位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(図2に図示)を備えている。なお、アライメント光学系及び角膜頂点検出装置60は、公知の構成を採ることができるため、その詳細な説明は省略する。
次に、凸レンズ44を光軸に直交する平面内で駆動するためのレンズ駆動機構について、図3〜5を参照して説明する。図3〜5に示すようにレンズ駆動機構70は、ベース部材80と、ホルダ82と、コイル固定基板90と、位置検出装置92a〜92cと、揺動板72を備えている。
ベース部材80は、正面視すると略矩形状の部材であり、光軸に対して固定されている。ベース部材80の中央には、貫通孔80aが形成されている。貫通孔80aの軸線は、光軸と一致している。光源12からの光は、貫通孔80a内(詳細には、貫通孔80aに配置される案内筒71)を通ってミラー46に導かれる。ベース部材80の下端部には支軸78が形成されている。支軸78の軸線は、ベース部材80の側面に対して直交する方向に伸びている。支軸78には、揺動板72の下端が回動可能に取付けられている。ベース部材80の上面には、ソレノイド75が固定されている。ソレノイド75は、プランジャ74と、プランジャ74を駆動するコイル76を備えている。プランジャ74の前端(図4の左端)はコイル76内に位置し、プランジャ74の後端(図4の右端)はコイル76より後方に突出している。コイル76をオンすると、プランジャ74がコイル76に吸引され、コイル76内に進入するようになっている。また、ベース部材80の後面(図4の右側の面)には凹部80bが形成されている。凹部80bには、コイルばね81が圧縮された状態で配置されている。
ホルダ82は、ベース部材80の前面側(図4の左側)に配置されている。ホルダ82とベース部材80の間には、複数個(本実施例では3個)の支持部材83が配置されている。ホルダ82は、支持部材83によってベース部材80に対して移動可能に支持されている。すなわち、ホルダ82は、ベース部材80に対して2次元的に移動可能(xy平面内で移動可能)となっている。複数の支持部材83は、ホルダ82の外周部に設けられ、周方向に等しい間隔を空けて配置されている。本実施例では、複数の支持部材83は、図3に示す3つの軸A,B,Cの軸線を、凸レンズ44の光軸に対して点対称となる位置に移動させた線上に配置されている。各支持部材83は、ホルダ82及びベース部材80に接触するボールを備えている。ホルダ82は、支持部材83のボールによってベース部材80に点接触で支持されている。ホルダ82がベース部材80に対して複数の位置において点接触で支持されるため、ホルダ82はベース部材80に対してスムーズに移動することができる。
ホルダ82の前面の外周部には、複数個(本実施例では3個)の磁石86が取付けられている。複数個の磁石86は、周方向に等しい間隔を空けて配置されている。本実施例では、複数個の磁石86は、3つの軸A,B,Cの軸線上に1個ずつ配置されている。ホルダ82の前面の中央には凹部87が形成されている。凹部87には、凸レンズ44が収容されている。凹部87の底面には貫通孔が形成されており、この貫通孔はベース部材80の貫通孔80aと連通している。このため、凸レンズ44を透過した光がベース部材80の貫通孔80aに導かれるようになっている。ホルダ82の後面の中央には、ガイド部材84が取付けられている。ガイド部材84の内周面には、先端に向かって(凸レンズ44側に向かって)徐々に拡径するガイド面84aが形成されている。ホルダ82とガイド部材84は、案内筒71の先端を挟み込むように配置されている。これによって、案内筒71がホルダ82とガイド部材84との間に保持されている。
コイル固定基板90は、ホルダ82の前面側(図4の左側)に配置されている。コイル固定基板90の外周部は、ベース部材80に固定されている。コイル固定基板90のホルダ82側の面には、複数個(本実施例では3個)のコイル88が配置されている。複数個のコイル88は、周方向に等しい間隔を空けて配置されている。本実施例では、複数個のコイル88は、3つの軸A,B,Cの軸線上に1個ずつ配置されている。各コイル88は、ホルダ82に取付けられた磁石86の一つと対向している。各コイル88は、第3駆動装置58に接続されている。第3駆動装置58が各コイル88に流れる電流を制御することで、ホルダ82はベース部材80に対して変位する。すなわち、軸Aの軸線上に配置されたコイル88に流れる電流を制御することで、ホルダ82は軸Aの軸線方向に変位する。同様に、軸B,Cの軸線上に配置された各コイル88に流れる電流を制御することで、ホルダ82は軸B,Cの軸線方向に変位する。したがって、第3駆動装置58が3つのコイル88に流れる電流を制御することで、ホルダ82はxy平面内で所望の位置に移動することができる。なお、コイル固定基板90にコイル88が配置されているため、コイル88への配線を容易に行うことができる。
位置検出装置92a〜92cは、コイル固定基板90の前面側(図4の左側)に配置されている。位置検出装置92a〜92cは、周方向に等しい間隔を空けて配置されている。具体的には、位置検出装置92a〜92cは、3つの軸A,B,Cの軸線上に1個ずつ配置されている。位置検出装置92aは軸A方向のホルダ82の位置を検出し、位置検出装置92bは軸B方向のホルダ82の位置を検出し、位置検出装置92cは軸C方向のホルダ82の位置を検出する。位置検出装置92a〜92cは、後述する演算装置64に接続されている。位置検出装置92a〜92cで検出されるホルダ82の位置は、演算装置64に入力されるようになっている。本実施例では、3つの軸A,B,Cの軸線上に、それぞれ駆動源(磁石86,コイル88)と位置検出装置92a〜92cを配置することで、軸A,B,Cのそれぞれの方向に関するホルダ82の位置制御を容易に行うことができる。
位置検出装置92(図2)は、光センサ94a〜94cと、反射板96により構成されている。反射板96は、ホルダ82の凹部87の周囲にリング状に設けられている(図3を参照)。ホルダ82に反射板96は固定されているため、ホルダ82が変位すると、それに応じて反射板96も変位する。光センサ94a〜94cは、光センサ基板93a〜93cに固定されている。光センサ基板93a〜93cは光センサ基板取付板95に固定され、光センサ基板取付板95はコイル固定基板90に固定されている。光センサ基板取付板95には、光センサ94a〜94cとの干渉を避けるための貫通孔が形成されている。光センサ基板93a〜93c及び光センサ94a〜94cは、周方向に等しい間隔を空けて、3つの軸A,B,Cの軸線上に1個ずつ配置されている。光センサ94a〜94cは、発光部と受光部を備えている。図6(a)〜(c)に示すように、反射板96が軸A,B,Cの方向に変位すると、光センサ94a〜94cからの光が反射板96に投射される面積(以下、投射面積ということがある)が変化する。投射面積が変位すると、光センサ94a〜94cで受光される光の強度が変化する。例えば、光センサ94a〜94cが反射板96と完全に対向する状態(図6(c)に示す状態)では、光センサ94a〜94cの発光部からの光の大部分(反射板96で散乱する部分を除く)が受光部で受光される。一方、光センサ94a〜94cが反射板96の一部と対向する状態(図6(b)に示す状態)では、光センサ94a〜94cの発光部からの光の一部であって反射板96a〜96cで反射される光のさらに一部(反射板96で散乱する部分を除く)が受光部で受光される。また、光センサ94a〜94cが反射板96と対向しない状態(図6(a)に示す状態)では、光センサ94a〜94cの発光部からの光は反射板96で反射されず、発光部からの光を受光部で受光することはない。このため、光センサ94a〜94cの出力によって、反射板96の位置(すなわち、ホルダ82の位置)を検出することができる。本実施例では、光センサ94a〜94cと反射板96を利用することで、簡易な構成でホルダ82の位置を精度良く検出することができる。
揺動板72は、ベース部材80の後面側(図4の右側)に配置されている。揺動板72は、その下端が支軸78に回動可能に支持され、その上端には支軸74aが形成されている。支軸74aは、支軸78と平行に伸びており、プランジャ74の後端に形成された貫通孔に遊嵌されている。このため、プランジャ74が進退動すると、揺動板72は支軸78周りに回動する。すなわち、揺動板72は、支軸78を支点として揺動する。既に説明したように、ベース部材80の凹部80bには、コイルばね81が圧縮された状態で配置されている。すなわち、ベース部材80とフランジ71a(後述)の間には、コイルばね81が圧縮された状態で配置されている。フランジ71aが後方に付勢されることで、揺動板72は後方に向かって付勢されている。
揺動板72の前面中央には、光源12からの光を案内する案内筒71が配置されている。案内筒71は、ベース部材80の貫通孔80a内に進退動可能に配置されている。案内筒71は、案内筒本体71bと、案内筒本体71bの後端に設けられたフランジ71aを備えている。フランジ71aは、揺動板72に対向して配置されている。案内筒本体71bは、ベース部材80の貫通孔80a内に配置されている。案内筒本体71bの先端は拡径されており、その拡径部にガイド面71cが形成されている。ガイド面71cは、ガイド部材84のガイド面84aと当接可能に対向している。上述したように案内筒本体71bの先端は、ホルダ82とガイド部材84
との間に保持されている。
上述したレンズ駆動機構70において、ソレノイド75のコイル76をオフした状態では、プランジャ74はコイル76に吸引されていない。このため、コイルばね81の付勢力によってフランジ71aが後方に付勢される。フランジ71aが後方に移動すると、フランジ71aが揺動板72の図示しない突起に当接し、これによって、揺動板72が支軸78の周りを時計回りに回動する。この状態では、ガイド部材84のガイド面84aと案内筒71の先端のガイド面71cとが当接し、ガイド部材84(すなわち、ホルダ82)はベース部材80に対して移動不能な状態となる(図5の状態)。図5に示す状態では、ガイド部材84が案内筒71のガイド面71cに案内されるため、ホルダ82が初期位置に案内される。ホルダ82が初期位置に案内されて位置決めされると、凸レンズ44の光軸と測定光学系の光軸とが一致する。一方、ソレノイド75のコイル76をオンすると、コイル76に電流が流れ、プランジャ74がコイル76に吸引される。すると、揺動板72が支軸78の周りを反時計回りに回動する。これによって、揺動板72の図示しない突起がフランジ71aに当接してフランジ71aを前方に移動させ、ガイド部材84のガイド面84aと、案内筒71のガイド面71cとが離間する状態となる(図4の状態)。その結果、ホルダ82は、ベース部材80に対して変位可能な状態となる。なお、図4に示す状態からコイル76をオフすると、コイルばね81の付勢力によって揺動板72が時計回りに回動し、図5に示す状態に復帰する。その結果、ホルダ82(すなわち、凸レンズ44)が初期位置に案内されて位置決めされる。したがって、ソレノイド75をオフすることで凸レンズ44の位置が一定となるため、被検眼100の測定をスムーズに行うことができる。また、凸レンズ44の絶対位置を検出しなくても、凸レンズ44の初期位置からの変位を検出することで、凸レンズ44の位置を検出することができる。なお、ソレノイド75をオフすることで可動部(すなわち、凸レンズ44、ホルダ88等)が移動不能となるため、眼科装置を運搬する際の振動によって、レンズ駆動機構70が破損することを抑制することができる。
次に、本実施例の眼科装置の制御系の構成を説明する。図2に示すように、眼科装置は演算装置64によって制御される。演算装置64は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置64には、光源12と、第1〜第3駆動装置54〜58と、モニタ62と、観察光学系50が接続されている。演算装置64は、光源12のオン/オフを制御し、第1〜第3駆動装置54〜58を制御することで各機構16,30,40を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。また、演算装置64には、受光素子26が接続され、受光素子26で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力する。演算装置64は、受光素子26からの干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸方向の寸法(例えば、前房深度、水晶体厚み等)を算出する。また、演算装置64には、角膜頂点検出装置60が接続され、角膜頂点検出装置60からの信号が入力する。演算装置64は、角膜頂点検出装置60からの信号に基づいて、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動する。また、演算装置64には、位置検出装置92が接続され、位置検出装置92からの信号が入力する。演算装置64は、位置検出装置92からの信号に基づいて、第3駆動装置58を介してビームエキスパンダー40(詳細には、レンズ駆動機構70)を駆動する。これによって、被検眼100に照射される光を所望の領域で走査することができる。なお、演算装置64による被検眼100の各部位の位置を特定する処理の詳細については後述する。
次に、本実施例の眼科装置を用いて水晶体104の厚み(水晶体104の前面から後面までの寸法)及び前房深度(角膜102の表面又は後面から水晶体104の前面までの寸法)を測定する際の手順を説明する。図7に示すように、まず、検査者が図示しないスイッチ(測定開始を入力するスイッチ)を操作すると、演算装置64は、角膜頂点検出装置60で検出した角膜102の頂点の位置に基づいて、測定部10の位置合わせを行う(S10)。すなわち、演算装置64は、角膜頂点検出装置60からの信号を処理することによって、被検眼100の角膜102の頂点の位置を特定する。そして、演算装置64は、被検眼100の角膜102の頂点が測定光学系の光軸上に位置するように、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動して測定部10を位置決めする。これによって、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。測定部10が位置決めされると、観察光学系50で撮像される前眼部像の中心に角膜102の頂点が位置する。また、演算装置64は、第2,第3駆動装置56,58を駆動して、0点調整機構30及びビームエキスパンダー40を調整する。これによって、光源12から被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、水晶体104の前面)となり、また、物体光路長と参照光路長が一致する0点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、水晶体104の前面)となる。なお、ステップS10では、ビームエキスパンダー40の凸レンズ44は光軸と直交する方向には駆動されない。
次に、演算装置64は、被検眼100に対して光源12からの光を照射する領域を設定し、かつ、その設定領域内に走査線を設定する(S12)。すなわち、本実施例の眼科装置では、被検眼100に照射される光の位置を変更することで、被検眼100の設定領域の全体に光が照射されるようにする。したがって、演算装置64は、まず、設定領域内に走査線を設定し、設定領域の全域に光が照射されるようにする。
設定領域及び走査線の設定が終わると、演算装置64は、設定した複数の走査線の中から1つの走査線を選択する(S14)。次いで、演算装置64は、まず、ソレノイド75のコイル76をオンして凸レンズ44を平面内で移動可能な状態とし、次いで、光源12から照射される光の周波数を変化させながら、光源12からの光の被検眼100への入射位置が走査線上を移動するように、第3駆動装置58によりビームエキスパンダー40を駆動する(S16)。この際、演算装置64は、受光素子26から入力する干渉信号を処理することで、ステップS14で選択された走査線の位置の2次元断層情報を取得することができる。すなわち、既に説明したように、光源12から照射される光の周波数を変化させると、測定光と参照光とが干渉して干渉波を生じる位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、受光素子26から出力される干渉信号は、図8に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号となる。そこで、演算装置64は、受光素子26から入力する信号をフーリエ変換することで、その信号から被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された反射光による干渉信号成分を分離する。これにより、演算装置64は、被検眼100の各部の位置を特定することができる。また、上記の処理を行うと同時に、光源12からの光は走査線112上をスキャンされる。すなわち、演算装置64は、第3駆動装置58によりビームエキスパンダー40を駆動(詳細には、凸レンズ44を光軸に直交する平面内で駆動)し、光の入射位置が走査線上を移動するようにする。これによって、演算装置64は、走査線112の位置に対応した2次元の断層情報を取得することができる。なお、既に説明したように、被検眼100の各部から反射される反射光の強度は、光の入射位置によって変化する。したがって、走査線112上をスキャンすることで得られる2次元断層情報は、入射位置によって被検眼100の各部からの反射光の強度が異なり、被検眼100の各部の位置を特定できない場合も生じ得る。
次に、演算装置64は、上述したステップS16の測定を、ステップS12で設定した全ての走査線について実施したか否かを判断する(S18)。全ての走査線についてステップS16の測定を実施していない場合(ステップS18でNO)は、ステップS14に戻って、ステップS14からの処理が繰り返される。これによって、ステップS12で設定された全ての走査線について、各走査線に対応する位置の2次元断層情報が取得される。
全ての走査線についてステップS16の測定を実施している場合(ステップS18でYES)は、演算装置64は、各走査線について得られた2次元断層情報から、水晶体104の前面の位置を特定し、また、水晶体104の後面の位置を特定し、さらに、角膜102の前面又は後面の位置を特定する(S20)。上述したように、被検眼100に照射される光を設定領域内で走査するため、被検眼100に白内障部位が存在しても、被検眼100の各面の位置を特定することができる。これによって、被検眼100の各部位の位置を精度よく特定することができる。これらの位置が特定されると、演算装置64は、被検眼100の水晶体104の厚み(水晶体104の前面から後面までの寸法)及び前房深度(角膜102の表面又は後面から水晶体104の前面の位置までの寸法)を算出する(S22)。算出された値は、モニタ62に表示される。上述したように、水晶体104の前面及び後面の位置と、角膜102の前面及び後面の位置が精度よく特定されるため、水晶体104の厚み及び前房深度も精度よく算出することができる。
上述の説明から明らかように、本実施例に係る眼科装置では、ビームエキスパンダー40を構成する一方の凸レンズ44を光軸に対して直交する面内で駆動することで、被検眼100に照射される光の入射位置及び入射角度を変更する。このため、光学系にガルバノミラーを装備する必要はなく、眼科装置の光学系の大型化・複雑化を抑制することができる。
また、本実施例に係る眼科装置は、ビームエキスパンダー40に焦点調整機能と入射位置調整機能の両者が具備されている。このため、ビームエキスパンダー40にレンズを駆動(移動)させる機能を集約することができる。その結果、部品点数の削減、及び、製造コストの削減を図ることができる。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上述した実施例では、水晶体の厚みと前房深度を算出する例であったが、それ以外の部位の眼軸方向の寸法を算出してもよい。また、上述した実施例のように、水晶体の厚みと前房深度の両者を測定する必要は必ずしもなく、水晶体の厚みのみを測定してもよいし、前房深度のみを測定してもよい。
上述した実施例では、ビームエキスパンダー40を2つの凸レンズ42,44で構成したが、このような構成に限られず、種々の構成(例えば、凹レンズと凸レンズの組合せ、凸レンズと凹レンズの組合せ等)を採用することができる。すなわち、凸レンズと凹レンズの組合せ等のように異なる構成を用いても、本実施例と同様の機能(すなわち、焦点位置の調整、入射位置の調整)を果たすことできる。
また、上述した実施例では、凸レンズ44を駆動するレンズ駆動機構70に、3つの軸A,B,Cを設定し、各軸A,B,Cに駆動源(磁石86,コイル88)と光センサ94
a〜94cを設置したが、このような構成に限られない。例えば、レンズ駆動機構にx軸及びy軸の2軸を設定し、x軸及びy軸のそれぞれに駆動源と位置検出機能を設けてもよい。このような構成によっても、被検眼100に照射される光を走査することができる。また、上述したレンズ駆動機構では、ホルダ82に磁石86を配置し、コイル固定基板90にコイル88を配置したが、このような構成に限られず、移動側のホルダ82にコイルを配置し、固定される側の部材に磁石を配置してもよい。ホルダ82にコイルを配置することで、可動部の重量が軽くなり、ホルダ82を高速で駆動することができる。また、上述した実施例では、光センサ94a〜94cによって光学的に位置検出を行ったが、位置検出の方法としては光学式以外の方法を用いることができる。
また、上述した実施例は、フーリエドメイン方式の干渉計を利用した例であったが、タイムドーメイン方式の干渉計を利用してもよい。また、上述した実施例では、測定部10を被検眼100に対して位置調整したが、測定部10の全体を位置調整する必要はなく、例えば、測定部10干渉計20を除いた部分の光学系のみを位置調整してもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。