JP2015219434A - 照明光学系および画像投射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被照明面に対して斜めに照明光を照射する場合の照明エリアの歪みを低減して光利用効率を向上させる。【解決手段】照明光学系は、光源1からの光束をその光束断面形状が被照明面6の矩形形状に近づくように整形する第1の光学系αと、被照明面の法線Nに対して傾いた光軸RAを有し、第1の光学系からの光束を被照明面に導く第2の光学系βとを含む。照明光学系は、第2の光学系の光軸と被照明面の法線とを含む平面内において第2の光学系の光軸に対してなす傾き角度θ1,θ2が互いに異なる2つの平面である入射面および出射面を有する透光素子を含む。透光素子は、第1の光学系と被照明面との間に配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、光源からの光束を被照明面に導く照明光学系に関し、特に被照明面にデジタルマイクロミラーデバイス(以下、DMDという)等の光変調素子を配置した画像投射装置に好適な照明光学系に関する。
上記のような画像投射装置は、光源からの光(照明光)を被照明面に配置された光変調素子に照射し、該光変調素子にて変調された光(画像光)を投射光学系を介して被投射面に投射することで画像を表示する。
光変調素子として代表的なものにDMDがある。DMDは、一般には、図8(a)に示すように、その変調領域全体が矩形に形成され、その変調領域内に複数の正方形のマイクロミラーがマトリックス状に配置されて構成されている。各マイクロミラーは、その対角線aを軸として、画像情報の各画素の画素値に応じてON位置とOFF位置の2つの回動位置間で回動する。例えば、図8(b)に示すように、ON位置はDMDにおいて複数のマイクロミラーが配置された平面である変調面(図中の水平面)に対して+12°傾いた位置であり、OFF位置は変調面に対して−12°傾いた位置である。
照明光学系は、変調面の法線に対して24°傾いた方向から各マイクロミラーに照明光を入射させる。ON位置にあるマイクロミラーは、入射した照明光を変調面の法線が延びる方向(法線方向)に反射する。この法線方向には投射光学系が配置されているため、反射光は被投射面に投射される。一方、OFF位置にあるマイクロミラーは、入射した照明光を変調面の法線方向から外れた方向(投射光学系に向かわない方向)に反射するため、反射光は被投射面に投射されない。画像情報の1フレーム内においてマイクロミラーをON位置とOFF位置との間で高速で回動させ、ON位置にある時間とOFF位置にある時間との比率を変更することで階調表現を行い、他階調の画像を表示する。
照明光学系は、光源からの発散光束をその断面形状(以下、光束断面形状という)がDMDの有効範囲の矩形に近づくように整形して、光の利用効率を高める。DMDが配置されている被照明面での光束が到達する範囲(以下、照明エリアという)は、照明光学系を構成する光学素子の製造誤差や位置決め精度を考慮して、DMDの変調領域の外周にマージンを有するように設定される。
ただし、照明光をDMDにその変調面の法線に対して斜めから照射すると、図9の上側の図に示すように、照明エリアは照明光の入射方向(マイクロミラーの回動方向)を被照明面に投影した方位に歪みやデフォーカスを生じる。具体的には、照明光はDMDにその変調面の法線方向から見て+45°の方位から、該変調面の法線に対して24°傾いて入射する。このとき、45°の方位の断面(xz断面)では、照明光学系の光軸と変調面とが直交していないので、照明エリアの見かけ上の倍率が拡大する。
DMDの変調面の法線に対して角度θだけ傾いた方向から照明光が入射する場合のxz断面での照明エリアの大きさをaとする。図9の下側の図に示すように変調面の法線に対して傾かない方向から照明光が入射する場合のyz断面での照明エリアの大きさbを1とする。このとき、aは、1/cosθで表される。さらに、照明光学系の光軸に対してDMDの変調面の法線が傾くと、照明光学系の焦点位置に対して変調面内のマイクロミラーが変位するため、デフォーカスも発生する。一方、−45°の方位では、照明光学系の光軸がDMDの変調面の法線に対して傾いていないので、見かけ上の倍率の変化やデフォーカスは発生しない。
この結果、被照明面上での照明エリアは、図10に示すように、本来の矩形からその対角方向に歪み、またデフォーカスも生じるため、平行四辺形(菱形)のような形状となる。このよう歪んだ照明エリアでは、その斜めの輪郭部がDMDの変調領域にかかると、投射画像の一部が暗くなるので好ましくない。このため、照明エリアの斜めの輪郭部がDMDの変調領域にかからないように照明エリアのマージンを大きく確保する必要があるが、これでは光利用効率が低下し、投射画像全体が暗くなる。また、照明エリアのうちデフォーカス部分では、デフォーカスしていない部分に対して照度が下がるので、該デフォーカス部分に対応する投影画像の部分が暗くなり、投射画像の明るさの均一性が低下する。
特許文献1には、照明光学系(ロッドインテグレータ)の出射面を菱形とし、被照明面上での照明エリアの菱形の歪みを補正する方法が開示されている。また、特許文献2には、照明光学系のうち少なくとも1つの光学素子(レンズ)を光軸に対して回転および偏心させることで、照明エリアの菱形の歪みを補正する方法が開示されている。
特開2000−267044号公報 特開2004−45718号公報
しかしながら、特許文献1にて開示された方法では、照明光をDMDに対して斜めに入射させるため、ロッドインテグレータの射出面に対してDMDの変調面が平行ではない。このため、矩形の照明エリアの対角方向で依然としてデフォーカスが生じる。
一方、特許文献2にて開示された方法では、レンズを回転および偏心させると偏心収差が発生し、照明光学系のDMDに対する結像性能が低下する。この結果、照明エリアの鮮鋭度が低下して、デフォーカス部分と同様に照度を低下させる。
本発明は、被照明面に対して斜めに照明光を照射する場合の照明エリアの歪みを低減するとともに照明エリアでのデフォーカスの発生や鮮鋭度の低下を回避して光利用効率を向上させることができるようにした照明光学系およびこれを用いた画像投射装置を提供する。
本発明の一側面としての照明光学系は、光源からの光束をその光束断面形状が被照明面の矩形形状に近づくように整形する第1の光学系と、被照明面の法線に対して傾いた光軸を有し、第1の光学系からの光束を被照明面に導く第2の光学系とを含む。該照明光学系は、第2の光学系の光軸と被照明面の法線とを含む平面内において第2の光学系の光軸に対してなす傾き角度が互いに異なる2つの平面である入射面および出射面を有する透光素子を含む。そして、透光素子は、第1の光学系と被照明面との間に配置されていることを特徴とする。
なお、上記照明光学系と、被照明面に配置された光変調素子とを有し、光源からの光束を光変調素子により変調し、該変調された光束を被投射面に投射する画像投射装置も本発明の他の一側面を構成する。
本発明によれば、平面である入射面および出射面を有する、いわゆるくさび形状の透光素子を用いて、被照明面に対して斜めに照明光を照射する場合の照明エリアの歪みを低減するとともに照明エリアでのデフォーカスの発生や鮮鋭度の低下を回避することができる。したがって、照明エリアのマージンを大きくする必要をなくすることができ、この結果、光利用効率を向上させることができる。そして、この照明光学系を用いれば、明るい投射画像を提示可能な画像投射装置に実現することができる。
本発明の実施例1である画像投射装置の構成を示す図。 実施例1の画像投射装置の照明光学系における照明エリアの歪みの補正効果を示す図。 実施例1と従来技術との差異を示す図。 実施例1の照明光学系の変形例を示す図。 照明光学系中の透光素子の位置により歪み補正効果が異なる理由を説明する図。 上記透光素子の形状についての条件を示す図。 実施例1の照明光学系の他の変形例を示す図。 従来のDMDの構成および動作を示す図。 従来において照明エリアの菱形歪みが発生する理由を説明する図。 上記菱形歪みが生じた照明エリアを示す図。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施例1である画像投射装置の構成を示す。超高圧水銀ランプ等の放電発光管により構成される光源1から発せられた光束は、楕円リフレクタ2によって反射されて照明光学系に入射する。照明光学系は、楕円リフレクタ2からの光束が入射する集光レンズ3と、該集光レンズ3からの光束が入射するロッドインテグレータ4とにより構成される第1の光学系αを有する。集光レンズ3は、楕円リフレクタ2からの光束をロッドインテグレータ4の入射面の近傍に集光させる。集光レンズ3およびロッドインテグレータ4の中心を通る軸を、第1の光学系αの光軸という。また、光源1としては、LEDやレーザ等の他の発光素子を用いてもよい。
ロッドインテグレータ4は、ガラス製の中実角柱状の光学素子であり、第1の光学系αの光軸に直交する断面として矩形断面を有する。ロッドインテグレータ4にその入射面から入射した光は、ロッドインテグレータ4の内部で全反射を繰り返し、ロッドインテグレータ4の出射面にて均一な照度分布を形成する。
なお、ロッドインテグレータ4を、中空角柱状の本体と、該本体の4つの内側面に誘電体多層膜や金属膜を蒸着して形成した反射ミラーとにより中空タイプのロッドインテグレータとして構成してもよい。また、ロッドインテグレータ4に代えて、フライアイタイプのインテグレータを用いてもよい。
照明光学系は、さらにリレー光学系5と全反射プリズム7とにより構成される第2の光学系βを含む。ロッドインテグレータ4の出射面から出射した光束はリレー光学系5を通過し、全反射プリズム7で反射して、照明光学系の被照明面に配置されたデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)6に照射される。
本実施例では、リレー光学系5は複数の球面レンズ5a〜5dによって構成されている。これら球面レンズ5a〜5dの中心を通る軸を、リレー光学系5の光軸、さらには第2の光学系βの光軸という。なお、リレー光学系を、球面ミラーや非球面レンズを用いて構成してもよいし、レンズ間に光を反射して第2の光学系βの光軸を折り曲げるミラーやプリズムを配置してもよい。
全反射プリズム7は、空気層を挟んで配置された2つのプリズムブロック7a,7bにより構成されている。リレー光学系5から射出した光束は、プリズムブロック7aに入射し、該プリズムブロック7aにおける空気層との界面にて全反射してDMD6に入射する。プリズムブロック7aでの反射によって第2の光学系の光軸は折り曲げられる。
DMD6は、図8(a)を用いて前述したように、その矩形の変調領域内に複数の正方形のマイクロミラーがマトリクス状に配置された光変調素子である。各マイクロミラーは、図8(b)を用いて前述したように、複数のマイクロミラーが配置された平面である変調面に対して、該マイクロミラーの対角線aを軸として、+12°傾いたON位置と−12°傾いたOFF位置との間で回動する。変調面は、基板面上に回動可能な複数のマイクロミラーが配置されたDMD6における該基板面に平行な面ということもできる。
本実施例では、第2の光学系βの光軸は、DMD6の変調面の法線に対して24°の傾きを有する。言い換えれば、第2の光学系βからの光束(照明光)は、DMD6に対して、その変調面の法線に対して24°傾いた方向から入射する。そして、図8(b)を用いて前述したように、ON位置にあるマイクロミラーにより反射された光束のみが変調面の法線方向に反射されて不図示の投射光学系に入射し、被投射面に投射される。
本実施例におけるDMD6の変調領域はアスペクト比16:10の矩形形状を有し、これに対応してロッドインテグレータ4の出射面もアスペクト比16:10の矩形形状に形成されている。これにより、照明光はDMD6の矩形の変調領域と概ね相似な形状の照明エリアを形成する。つまり、第1の光学系αは、光源1からの光束をその光束断面形状が被照明面の矩形形状に近づくように整形する光学系である。この第1の光学系αを設けることで、光源1からの光の利用効率を高めることができる。
しかし、図9および図10を用いて説明したのと同様に、DMD6の各マイクロミラーのON位置とOFF位置との間で回動する方向は、正方形のマイクロミラーの対角方向であり、DMD6の矩形の変調領域の各辺に対して45°傾いた方向である。したがって、DMD6の矩形の変調領域は、DMD6の変調面の法線方向から見たとき、全反射プリズム7の外形に対して45°傾いている。言い換えれば、照明光は、DMD6の矩形の変調領域に対して+45°の方位から入射する。これにより、照明エリアの対角方向での見かけ上の倍率が大きくなり、照明エリアに菱形の歪みが生じる。さらに、第2の光学系βの光軸に対してDMD6の変調面の法線が傾くと、第2の光学系βの焦点位置に対して変調面内のマイクロミラーが変位するため、デフォーカスも発生する。
このため、本実施例では、図1に示すように、リレー光学系5内(第2の光学系内)におけるレンズ5bとレンズ5cの間に、くさび形状を有するくさび状の透光素子(以下、くさび素子という)8を配置している。くさび素子8の材料は一般的な光学ガラス等の透光性材料であればよく、本実施例ではBK7を用いている。以下の説明において、第2の光学系βの光軸のうち、くさび素子8が配置されたリレー光学系5の光軸の部分を、リレー光軸RAという。
くさび素子8は、図1の上側の図に示すように、DMD6の変調面(被照明面)の法線とリレー光軸とを含む平面内、すなわちxz面内において、リレー光軸RAに対する傾き角度が互いに異なる2つの平面である入射面8aおよび出射面8bを有する。くさび素子8に入射してこれを透過する光線は、傾き角度が互いに異なる2つの平面(入射面8aおよび出射面8b)にて屈折するため、入射前に比べてリレー光軸RAに対する進行角度が変化する。
一方、図1の下側の図に示すxz面に直交するyz面内では、くさび素子8の2つの平面(入射面8aおよび出射面8b)はリレー光軸RAに対して直交するように配置されている。このため、くさび素子8は、単なる平行平板となる。これにより、くさび素子8は、xz面内のみにおいて結像倍率を変化させる効果を持つ。
図2(a)にはリレー光学系5内にくさび素子8を設けない場合の照明エリアを示している。図2(a)では、照明光の入射方位である45°方位に歪みが生じることで、照明エリアが菱形に歪んでいる。ここで図中の黒枠はDMDの変調領域を示す。変調領域に対して45°方位に照明エリアの歪みが発生し、さらにデフォーカスも発生しているので、特に照明エリアの45°方位の角部の鮮鋭度が低下する。これにより、この角部に隣接する部分に対して照明エリアの照度が大きく低下する。このような低照度部分がDMDの変調領域にかかると、投射画像の明るさの均一性が損なわれる。このため、変調領域に対する照明エリアのマージンを大きくする必要があり、この結果、光源1からの光の利用効率が低下し、投影画像の明るさが低下する。
図2(b)にはくさび素子8を設けず、従来のようにリレー光学系5中のレンズ(5a〜5dのうち1つ)をリレー光軸RAに対して回転および偏心させて菱形歪みを補正した照明エリアを示す。図2(b)では、図2(a)に比べて照明エリアの菱形の歪みは小さくなっているが、レンズを回転および偏心させることによって生じた偏心収差の影響により、照明エリアの外縁部の鮮鋭度が低下している。このため、変調領域に対する照明エリアのマージンをある程度大きくする必要がある。
これに対して、図2(c)には、本実施例のようにリレー光学系5中にくさび素子8を設けて菱形歪みを補正した照明エリアを示す。図2(c)では、くさび素子8のxz面内のみでの倍率補正効果により、DMDの変調領域の矩形とほぼ相似なほとんど歪みがない照明エリアを形成することができる。しかも、図2(c)を図2(b)と比べると、照明エリアの外縁部の鮮鋭度が改善していることが分かる。これは、レンズを回転および偏心させることなく、くさび素子8の挿入しているため、結像性能を低下させる偏心収差が新たに発生しないためである。これにより、図2(c)では、図2(b)と比べて、照明エリアのマージンがさらに確保されている。結果としてマージンを図2(b)の状態と同量にした場合、画像として投射できる光量を増加させることにつながる。
図3(a)には、リレー光学系5中のレンズをリレー光軸RAに対して回転および偏心させて照明エリアの菱形歪みを補正した場合のスポットダイアグラムを示す。図中の0,0、0,x、0,−x、y,0および−y,0は、被照明面上でのxy座標(像高)を示す。RMSは、二乗平均平方根(Root Mean Square)であり、その値が小さいほどスポットの収斂性が高いことを示す。図3(b)には、本実施例のようにリレー光学系5中にくさび素子8を設けて照明エリアの菱形歪みを補正した場合のスポットダイアグラムを示す。図3(a)に比べて、図3(b)の方がスポットの収斂性が高いことが分かる。つまり、リレー光学系5中にくさび素子8を設けることで、図2(c)に示したような鮮鋭度が高い照明エリアを形成することができる。
このように、本実施例によれば、くさび素子8を設けることで、照明エリアの菱形の歪みを良好に補正することができ、かつ照明エリアの外縁部を含む全域において鮮鋭度を改善することができる。これにより、照明エリアのマージンを大きくする必要をなくすることができ、より高い光利用効率が得られる照明光学系を実現することができる。
図1ではくさび素子8をリレー光学系5内のレンズ5b,5cの間に配置した場合を示したが、くさび素子8を第1の光学系α(ロッドインテグレータ4)の出射面とDMD6との間でのどの位置に配置しても歪み補正効果は得られる。ただし、図1に示すようにリレー光学系5の中で光源1である放電発光管の放電アークの像(光源像)が形成される位置(その近傍範囲を含む)、つまりはレンズ5b,5cの間にくさび素子8を配置すると、照明エリアの外縁部の鮮鋭度がより改善するので、好ましい。本実施例の照明光学系では、ロッドインテグレータ4の入射面に2次光源像が形成され、さらにリレー光学系5のレンズ5b,5cの間に3次光源像が形成される。以下の説明では、この3次光源像が形成される面を、3次光源面という。
3次光源面にくさび素子8を配置することで、照明エリアの菱形歪みが補正され、かつ照明エリアの外縁部の鮮鋭度が改善する理由について説明する。まず、ロッドインテグレータ4の出射面を物体面Oとし、DMD6の変調面を像面Iとしたときの結像関係を図4(a),(b)に示す。図4(a)はリレー光学系5内にくさび素子8が配置されていない場合を、図4(b)はリレー光学系5内にくさび素子8が配置されている場合をそれぞれ示す。物体面Oの中心点(中心画角)F1から出射した主光線R1、上部光線R2および下部光線R3は、正のパワーを持つ素子9,10間で平行光線となる。素子9は図1中のレンズ5bに、素子10はレンズ5c,5dにそれぞれ相当する。また、物体面Oにおいて中心点F1を挟んで互いに反対側に位置する2つの周辺点(周辺画角)F2,F3のそれぞれから出射した光線R1,R2,R3も、素子9,10間で平行光線となる。
そして、これらの点F1,F2,F3からの同じ符号(R1,R2またはR3)を付した平行光線同士が交差する位置Pが3次光源面である。周辺点F2からの光線R1,R2,R3と周辺点F3からの光線R1,R2,R3はそれぞれ、3次光源面Pにて、中心点F1からの光線R1,R2,R3に対して角度が異なる平行光線となる。これは、物体面Oで位置情報を表していた各点からの光線が、3次光源面Pでは角度情報に光学的に変換されていることを示している。すなわち、物体面Oにおいて中心点F1から周辺点(F2,F3)までの距離が遠いほど、その周辺点からの光線R1,R2,R3は、3次光源面Pにおいて中心点F1からの光線R1,R2,R3に対して大きな角度をなす平行光線となる。
図4(b)に示すように、3次光源面Pにくさび素子8が配置されると、物体面O上の点F1,F2,F3のそれぞれからの光線R1,R2,R3は平行光線を維持したまま、進行する方向(角度)が変えられる。そして、これにより点F1,F2,F3のそれぞれからの平行光線同士がなす角度が変わる。
前述したように3次光源面Pでは物体面Oでの位置情報が角度情報に光学的に変換されている。このため、点F1,F2,F3のそれぞれからの平行光線同士がなす角度が変わると、像面Iでは位置情報が変わる。具体的には、周辺点F2から出射してくさび素子8に入射する平行光線は、周辺点F3から出射してくさび素子8に入射する平行光線に比べて、より最小偏角(偏角は、光線を屈折させる角度)の条件に近い。このため、周辺点F3から出射してくさび素子8に入射する平行光線の偏角は、周辺点F2から出射してくさび素子8に入射する平行光線の偏角よりも大きくなる。これにより、図1の上側の図に示したくさび素子8においてリレー光軸RAに対する傾き角度が異なる2つの平面が存在するxz面内でのみ結像倍率を変更することができ、照明エリアの菱形歪みの補正が可能となる。
また、くさび素子8をリレー光学系5内に挿入しても、物体面O上の各点からの平行光線の進行する角度が変わり、像面Iにおける位置情報が変わるだけであるので、像面Iにおける光線の収斂性、つまりは収差に与える影響をきわめて小さく抑えることができる。
一方、くさび素子8を物体面(ロッドインテグレータ4の出射面)Oと素子9との間に配置した場合を図5(a)に示す。物体面O上の各点から出射する光線R1,R2,R3は発散光線であり、くさび素子8はその発散光線の中に配置される。くさび素子8はプリズムの一種であり、光線の入射角に応じてその光線に対する偏角が異なる特性を持つ。図5(b)には、くさび素子8に相当するプリズムに対する入射角と偏角との関係を示す。偏角は、最小偏角δを最小値として入射角に応じて大きく変わる。このように、プリズムは、入射角に対する偏角の分散が大きい素子と言える。
したがって、くさび素子8が発散光線中に配置されると、物体面O上の各点からの主光線、上部光線および下部光線に対してくさび素子8が与える偏角が大きく異なる。図5(b)では、上部光線はプリズムの最小偏角δ近傍であるが、主光線および下部光線は段階的に偏角が大きくなっている。これによってコマ収差が発生し易くなり、3次光源面Pにくさび素子8を配置した場合に比べて、照明エリアの外縁部の鮮鋭度が低下しやすい。
以上の理由により、3次光源面Pにくさび素子8を配置することにより、くさび素子8自体による新たな収差の発生を抑えることができるため、照明エリアの外縁部の鮮鋭度をより改善することができる。
本実施例において、くさび素子8の望ましい形状について説明する。前述したように、くさび素子8は、リレー光軸RAに対して傾き角度が互いに異なる2つの平面である入射面8aおよび出射面8bを有する。これら入射面8aおよび出射面8bのリレー光軸RAに対する傾き方向は互いに同じであることが望ましい。さらに、傾き方向が互いに同じ入射面8aおよび出射面8bのリレー光軸RAに対する傾き角度をそれぞれθおよびθとするとき、θとθは以下の条件を満足することが望ましい。
θ>θ ・・・(1)
くさび素子8を上述した3次光源面に配置する場合には、入射面8aおよび出射面8bが条件(1)を満足することで、照明エリアの菱形歪みをより確実に補正することが可能となる。以下、その理由を説明する。
照明エリアの菱形歪みを補正するためには、照明光が斜めに入射する被照明面での見かけ上の倍率が大きくなった断面において、倍率を縮小方向に補正する必要がある。図4(a)を用いて説明したように、3次光源面Pでは物体面O上で位置情報を表していた各点からの光線R1,R2,R3が角度情報に変換されている。このため、物体面Oにおける中心点F1から周辺点(F2,F3)までの距離が遠いほど、該周辺点からの光線R1,R2,R3は、3次光源面Pでは中心点F1から出射した光線(平行光線)に対して大きな角度を持った平行光線となる。したがって、くさび素子8を3次光源面Pに配置して倍率を縮小させる作用を持たせるためには、3次光源面P上における各点からの平行光線同士がなす角度が小さくなるようにくさび素子8の形状を設定する必要がある。
図6(a)には、くさび素子8を透過する平行光線同士がなす角度の変化を示す。図6(a)では、物体面上にて中心点を挟んで該中心点から等距離の2つの周辺点からの平行光線同士が3次光源面にてなす角度(変化前の角度)をθとする。また、3次光源面に挿入されたくさび素子8を透過したこれら平行光線同士がなす角度(変化後の角度)をθとする。図6(b)には、θ=10°,20°,30°に対する様々なθを横軸にとり、くさび素子8の挿入による角度θ,θの変化率θ/θを縦軸にとったグラフを示す。
倍率を縮小すべき断面において倍率縮小作用を得るためには、くさび素子8の挿入によって変化率θ/θが1以下になる必要がある。図6(b)のグラフを見ると分かるように、変化率θ/θが1以下になる範囲は条件(1)が満足されている範囲である。ただし、条件(1)を満足する範囲のうち、正の値のθに対してθの値が負になる、つまり入射面8aと出射面8bがリレー光軸RAに対して互いに逆方向に傾いた範囲では変化率θo/θが1より大きくなる場合がある。したがって、θとθが同じ符号を有し(つまり入射面8aと出射面8bがリレー光軸RAに対して互いに同じ方向に傾き)、条件(1)を満足すれば、変化率θ/θが1以下になる。
さらに、くさび素子8(入射面8aおよび出射面8b)がリレー光軸RAに対して傾いた方向が、DMD6の変調面(被照明面)の法線がリレー光軸RAに対して傾いた方向と同じであることが望ましい。これにより、照明エリアの外縁部の鮮鋭度をより改善することができる。以下、その理由を説明する。
図7(a)には、図4(a)と同様に、ロッドインテグレータ4の射出面を物体面Oとし、DMD6の変調面を像面Iとしたときの結像関係を示す。像面Iの法線Nは、DMD6の変調面の法線を意味する。
図7(a)には、リレー光学系5内にくさび素子8が配置されていない場合を示す。この場合、照明光は像面Iにその法線Nに対して斜めに入射するため、像面Iがリレー光軸RAに対して傾いている。これにより、物体面O上の中心点F1からの光線R1,R2,R3の焦点位置P1は像面I上に位置するが、周辺点F2からの光線R1,R2,R3の焦点位置P2は像面Iに対して後側にずれる。また、周辺点F3からの光線R1,R2,R3の焦点位置P3は像面Iに対して前側にずれる。これにより、デフォーカスが生じ、照明エリアの外縁部の鮮鋭度が低下する。
一方、図7(b)には、リレー光学系5内にくさび素子8が配置され、該くさび素子8がリレー光軸RAに対して、像面Iの法線Nがリレー光軸RAに対して傾いた方向と同じ方向に傾いている場合を示す。この場合、物体面O上の周辺点F2からの光線R1,R2,R3の光路は、くさび素子8が配置されていない場合に比べてリレー光軸RAから離れ、その光路長が長くなる。この結果、周辺点F2からの光線R1,R2,R3の焦点位置P2は、くさび素子8が配置されていない場合に比べて像面Iに近づく。一方、周辺点F3からの光線R1,R2,R3の光路は、くさび素子8が配置されていない場合に比べてリレー光軸RAに近づき、その光路長が短くなる。この結果、周辺点F3からの光線R1,R2,R3の焦点位置P2も、くさび素子8が配置されていない場合に比べて像面Iに近づく。
このように、くさび素子8のリレー光軸RAに対する傾き方向が、DMD6の変調面(被照明面)の法線Nのリレー光軸RAに対する傾き方向と同じであると、照明エリアの外縁部の鮮鋭道をより改善することができる。
なお、本実施例では、光変調素子としてDMDを用いる場合について説明したが、他の光変調素子を用いてもよい。また、本実施例では、画像投射装置に用いられる照明光学系について説明したが、同様に構成される照明光学系を他の装置において、光源からの照明光に被照明面上にて所定形状の照明エリアを形成させるために用いることもできる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
1 光源
α 第1の光学系
β 第2の光学系
6 DMD
8 くさび素子

Claims (7)

  1. 光源からの光束をその光束断面形状が被照明面の矩形形状に近づくように整形する第1の光学系と、前記被照明面の法線に対して傾いた光軸を有し、前記第1の光学系からの光束を前記被照明面に導く第2の光学系とを含む照明光学系であって、
    前記第2の光学系の前記光軸と前記被照明面の前記法線とを含む平面内において前記第2の光学系の前記光軸に対してなす傾き角度が互いに異なる2つの平面である入射面および出射面を有する透光素子を含み、
    前記透光素子は、前記第1の光学系と前記被照明面との間に配置されていることを特徴とする照明光学系。
  2. 前記透光素子は、前記第2の光学系内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
  3. 前記透光素子は、前記第2の光学系内において前記光源の像が形成される位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の照明光学系。
  4. 前記透光素子の前記入射面および前記出射面はいずれも前記第2の光学系の前記光軸に対して同じ方向に傾いており、前記入射面および前記出射面の前記第2の光学系の前記光軸に対する傾き角度をそれぞれθおよびθとするとき、
    θ>θ
    なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の照明光学系。
  5. 前記透光素子が前記第2の光学系の前記光軸に対して傾いた方向が、前記被照明面の前記法線が前記第2の光学系の前記光軸に対して傾いた方向と同じであることを特徴とする請求項4に記載の照明光学系。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の照明光学系と、
    前記被照明面に配置された光変調素子とを有し、
    光源からの光束を前記光変調素子に導き、該光変調素子により変調された光束を被投射面に投射することを特徴とする画像投射装置。
  7. 前記光変調素子は、該光変調素子の変調面に対して傾くように回動が可能な複数のミラーを含むデジタルマイクロミラーデバイスであり、
    前記第2の光学系の前記光軸は、前記変調面の法線に対して傾いていることを特徴とする請求項6に記載の画像投射装置。
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