JP2015218624A - 固体ロケットモータとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工を容易にし、加工後におけるモータケース全体の重量の増加を抑え、かつインシュレーション全体の気密性を保ち、インシュレーションの素材の選択の幅を従来のものより広くすることができる固体ロケットモータとその製造方法を提供する。【解決手段】固体推進薬13が内部に装填される中空のモータケース11と、耐熱性を有し、モータケース11の内面に設けられ固体推進薬13の燃焼ガスからモータケース11を熱的に保護する繊維質のインシュレーション12と、を備えた固体ロケットモータ10であって、インシュレーション12内に存在する気密性のないリークパス部12aの外面に密着して設けられたシール部材20を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、飛翔体に推力を与える固体ロケットモータとその製造方法に関する。
固体ロケットモータは、その内部で推進薬を燃焼させることにより、飛翔体に対して推進力を与えるものである。
このロケットモータにおいて、推進薬の燃焼によって発生する熱からモータケースを保護するために、一般的にはモータケースの内側にインシュレーションを接着させる場合がある。
このような方法として、例えば以下の特許文献1に記載された発明が既に知られている。
特許文献1に記載された「固体ロケットモータ」のインシュレーションは、モータケース側のアウターインシュレーション層と推進薬側のインナーインシュレーション層との二層構造として形成され、モータケースの内面に貼着されて設けられている。
そして特許文献1のインナーインシュレーション層とアウターインシュレーション層とは、基本ゴム材質を同じくすることにより、両者の親和性や接着性を良くし、常法の一体成形法によって不離一体に加硫接着している。
特許第2982540号公報
インシュレーションに耐熱性をもたせるために、上述のインナーインシュレーション層には、EPDM等のゴム配合物に繊維(例えばアラミド繊維)が混ぜ込まれている。ゴム配合物の中に多量のアラミド繊維を強化繊維として含むという特性により、インナーインシュレーション層は、耐熱性がある一方、伸縮性に乏しいという特徴をもつ。またインナーインシュレーション層は、その層内の繊維が十分に分散していれば、ゴム配合物により気密性を保つことができる。
しかしインナーインシュレーション層の製造において、多量の繊維とゴム配合物との混和は難しく、層の内部に繊維が塊のまま存在する部分(以下、リークパス部とする)が発生することがある。このような繊維の塊の内部にはゴム成分が浸透しづらいため、リークパス部は、インシュレーションの板厚方向に通気性が生じるおそれがある。その結果、推進薬の燃焼により発生する燃焼ガスがインナーインシュレーション層の外部に漏れる(すなわち、気密性がなくなる)原因に、リークパス部の存在がなり得る。
そのため、特許文献1のインシュレーションには、インナーインシュレーション層にリークパス部が存在していても、インシュレーション全体として気密性を保つことができるように、気密性を有するアウターインシュレーション層をインシュレーションの外表面(インナーインシュレーション層とモータケースとの間)に設けている。
アウターインシュレーション層は、その基本ゴム材質が、インナーインシュレーション層と同じでありながら強化繊維を含まないEPDM等のゴム配合物のみから形成されている。そのため、インナーインシュレーション層よりも伸びが大きく、かつ気密性のあるインシュレーション層を構成する。
特許文献1の固体ロケットモータは、アウターインシュレーション層を有することにより、モータケース全体としての気密性を十二分に確保し、また、モータケースの熱変形に対してインシュレーションが十二分に追従できるようにしたものである。
しかし加工により、アウターインシュレーション層を設けるためには、相応の手間を要する必要があった。また、アウターインシュレーション層を設けることによってモータケース全体の重量の増加してしまうため、他の設備(機器)や推進薬等の搭載量が制限されるという問題があった。
一方で、インシュレーションにこのアウターインシュレーション層を全く設けない場合、モータケース全体として、気密性を十分に確保することができないという問題があった。
さらに特許文献1で、インナーインシュレーション層とアウターインシュレーション層との親和性や接着性を良くし、不離一体に加硫接着させるためには、同じ基本ゴム材質を、インナーインシュレーション層の素材とアウターインシュレーション層の素材として選択しなければならなかった。そのため、インシュレーションとして使用する素材の選択の幅が狭く限定されていた。
またアウターインシュレーション層を構成する気密ゴムをインナーインシュレーションに追加して購入するため、追加の費用が発生するうえ、アウターインシュレーション層を施工する際には、気密ゴムの貼り付けの工程や表面処理の工程等、工数が多いため、加工費もかかる。そのため、従来のインシュレーションは製造費が高くなってしまっていた。
そこで、本発明の目的は、加工を容易にし、加工後におけるモータケース全体の重量の増加を抑え、かつインシュレーション全体の気密性を保ち、インシュレーションの素材の選択の幅を従来のものより広くすることができる固体ロケットモータとその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明によれば、固体推進薬が内部に装填される中空のモータケースと、
耐熱性を有し、前記モータケースの内面に設けられ前記固体推進薬の燃焼ガスから前記モータケースを熱的に保護する繊維質のインシュレーションと、を備えた固体ロケットモータであって、
前記インシュレーション内に存在する気密性のないリークパス部の外面に密着して設けられたシール部材を備える、ことを特徴とする固体ロケットモータが提供される。
また、本発明の実施形態によれば、前記シール部材は、前記リークパス部の外面側から塗布され、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤からなる層である。
また、本発明の別の実施形態によれば、前記シール部材は、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有する気密ゴムからなる小片と、
前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有し前記リークパス部の外面に前記小片を接着させるゴム系接着剤と、を有する。
また、本発明によれば、固体推進薬が内部に装填される中空のモータケースと、
耐熱性を有し、前記モータケースの内面に設けられ前記固体推進薬の燃焼ガスから前記モータケースを熱的に保護する繊維質のインシュレーションと、を備えた固体ロケットモータの製造方法であって、
(ア)前記インシュレーションを製造し、
(イ)次に、前記インシュレーション内に存在する気密性のないリークパス部の位置を特定し、
(ウ)次いで前記位置の前記リークパス部の外面にシール部材を貼り付けて密着させ、該シール部材を硬化させる、ことを特徴とする固体ロケットモータの製造方法が提供される。
また本発明の実施形態によれば、前記(ウ)において、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤を前記位置の前記リークパス部の外面に塗布し、その後、該ゴム系接着剤を硬化させることにより層を形成し、該層を前記シール部材とする。
また、本発明の別の実施形態によれば、前記(ウ)において、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤で、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有する気密ゴムからなる小片を前記位置の前記リークパス部の外面に密着させ、
その後、前記ゴム系接着剤を硬化させることにより前記小片を前記外面に接着させ、
前記小片と前記ゴム系接着剤とを前記シール部材とする。
上述した本発明によると、インシュレーション内に存在する気密性のないリークパス部の外面に密着して設けられたシール部材を備えることによって、気密性のない部分に対してのみ加工を行うことが可能になり、インシュレーションの外表面全体に対して加工を行う必要がなくなる。そのため、加工を容易にし、加工後におけるモータケース全体の重量の増加を抑え、かつインシュレーション全体の気密性を保つことが可能になる。
本発明における固体ロケットモータの構成図である。 本発明における固体ロケットモータの第1実施形態の説明図である。 本発明における固体ロケットモータの第2実施形態の説明図である。 被検接着剤の評価試験の結果を示す表である。 被検接着剤の気密性評価試験に用いる試験片と加圧容器の断面図である。 被検接着剤の気密性評価試験で使用した配管図である。
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明における固体ロケットモータ10の構成図である。
本発明の固体ロケットモータ10は、モータケース11とインシュレーション12とを備えている。
本発明における固体ロケットモータ10は、例えば図1に示すような目標地点に向けて空中を飛翔するロケット1に搭載されており、固体ロケットモータ10の内部で推進薬13を燃焼させることによってロケット1に対して推進力を与えるものである。
モータケース11は、この例においては、中空形状からなるものであって固体推進薬13が内部に装填されるものである。
また、この例におけるモータケース11は、その軸心部に点火薬15を備えた点火装置16を有しており、この点火装置16によって点火薬15の点火を行うことによって、推進薬13の燃焼が開始し、ロケット1に推進力を与えるものを想定している。
インシュレーション12は、耐熱性を有しており、モータケース11の内面に設けられ推進薬13(この例においては固体推進薬)の燃焼ガスからモータケース11を熱的に保護する繊維質である。具体的に、例えばアラミド繊維を強化繊維として含む耐熱性のあるEPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエン)ゴム等のゴム配合物で構成されているものを想定している。インシュレーション12は、その内部の繊維が十分に分散していれば、ゴム配合物により気密性を保つことができる。
ノズル14は、この例においては、モータケース11の飛翔方向後端に連通して設けられており、推進薬13が発生するガスを飛翔方向後方に噴射するものである。
本発明における固体ロケットモータ10は、インシュレーション12内に存在する気密性のないリークパス部12aの外面に密着して設けられたシール部材20を備える。このシール部材20の詳細について以下に説明する。
図2は、本発明における固体ロケットモータ10の第1実施形態の説明図であり、図1におけるA部を拡大した図である。
この実施形態において、固体ロケットモータ10は、シール部材20としてゴム系接着剤19からなる層21をインシュレーション12の外面に有している。
インシュレーション12は、その内部において繊維が塊のまま存在している部分であるリークパス部12aを有している場合があり、インシュレーション12内においてリークパス部12aは気密性がなくなっている。つまり、繊維の塊の内部にはゴム配合物が浸透しづらいため、インシュレーション12のリークパス部12aは、板厚方向に気密性を失っている。
なお、インシュレーション12のリークパス部12a以外の部分は、気密性を有している。
このリークパス部12aに対して、層21は、インシュレーション12より伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤19からなるものであり、この例においては、リークパス部12aの外面側から塗布されるものを想定している。
なお、インシュレーション12は、モータケース11内部における推進薬13の燃焼時において圧力により膨張することが想定されるため、この層21は、インシュレーション12の膨張時においてこれに合わせて伸びるものである必要があり、さらにこの伸びた状態においても気密性を失わないゴム系接着剤19からなるものである必要がある。また層21は、インシュレーション12(リークパス部12a)の外側に塗布されるものであるため、インシュレーション12の膨張時においてインシュレーション12以上に伸びることが可能であるものであり、さらにインシュレーション12以上に伸びた状態においても気密性を失わないものであることが好ましい。
また、この例において、インシュレーション12におけるリークパス部12aの検知は、インシュレーション12の外面の各部分について画像を取得し、これを解析することによってリークパス部12aの位置を特定する方法を想定している。
なお、層21は、リークパス部12aの外面側のみでなく、インシュレーション12の外面側全体に塗布する構成であってもよい。
この構成によって、インシュレーション12の全体において、上述したようなリークパス部12aの位置を特定するための検査工程を省略することができるため、加工がさらに容易になるというメリットがある。
ゴム系接着剤19からなる層21は、例えば、インシュレーション12でも用いているEPDMゴム等のゴム配合物であってよいが、インシュレーション12とは異なり、気密性を確保するためにアラミド繊維等を含まないものが好ましい。また、例えば、HTPBゴム接着剤やエポキシ系樹脂等からなるものを用いてもよい。
またゴム系接着剤19は、インシュレーション12に塗布した後に固まるように主剤と硬化剤との2液を混ぜ合わせ化学反応により硬化させるものであってよいが、その他のゴム系の接着剤であってもよい。
図3は、本発明における固体ロケットモータ10の第2実施形態の説明図であり、図1におけるA部を拡大した図である。
この実施形態において、固体ロケットモータ10は、シール部材20として、気密ゴムからなる小片23と、インシュレーション12の外面に小片23を貼り付けるゴム系接着剤22とを有している。
この実施形態においても第1実施形態と同様に、インシュレーション12内のリークパス部12aが存在するために、その部分の気密性がなくなっているものを想定している。
このリークパス部12aに対して、小片23は、インシュレーション12より伸びた状態で気密性を有する気密ゴムからなるものであり、この例においては、リークパス部12aに対してインシュレーション12の外面側からゴム系接着剤22により貼り付けるものである。小片23は、平板状やシート状が好ましいが、インシュレーション12の外面に密着可能であれば、それに限らず、小片23の形状は多様な形状でよい。
また、第1実施形態と同様に、この小片23は、インシュレーション12の膨張時においてこれに合わせて伸びるものである必要があり、さらにこの伸びた状態においても気密性を失わない気密ゴムからなるものである必要がある。
なお、ここで用いられるゴム系接着剤22は、インシュレーション12より伸びた状態で気密性を有しリークパス部12aの外面に小片23を接着させる。第2実施形態のゴム系接着剤22は、第1実施形態で用いたゴム系接着剤19と同じものを用いてもよい。
また、この例における気密ゴムは、上述したような繊維質を含まないポリマーゴムと充填剤からなるゴムであって、例えば、EPDMゴムとIR(イソプレン)ゴムとを混ぜ合わせたものを想定している。
また、この例におけるモータケース11は、FRP製のものを想定している。
本発明のモータケース11は、シール部材20が貼り付けられたインシュレーション12の外側にFRPをこれに巻きつけることによって、製造されるものであることが好ましい。
上述の図2及び図3においては、説明のために、モータケース11とインシュレーション12との間に隙間があるように記載されているが、上記のようにFRPをインシュレーション12に巻きつけることによってモータケース11を製造する場合には、この隙間が発生することはない。
上述の第1実施形態又は第2実施形態の構成によって、気密性のない部分に対してのみ加工を行うことが可能になるため、インシュレーション12の外表面全体に対して加工を行う必要がなくなる。そのため、従来の固体ロケットモータの製造工程より工数を減らすことができ、加工を容易にすることができる。また気密ゴムを施工する面積が減るため、原材料費を削減することもできる。そのため固体ロケットモータ10の製造費を、従来のものより削減することができる。
また本発明の固体ロケットモータ10は上述の構成により、加工後におけるモータケース11全体の重量の増加を抑え、かつインシュレーション12全体の気密性を保つことが可能になる。
次に本発明の固体ロケットモータ10の製造方法を説明する。
(ア)まず初めに、インシュレーション12を製造する。例えばEPDM(エチレン‐プロピレン‐ジエン)ゴム等のゴム配合物にアラミド繊維を強化繊維として混練し、それを成形して硬化処理することによりインシュレーション12を製造する。インシュレーション12が硬化した後に、次の工程(イ)に移ることが好ましい。しかしそれに限らず、インシュレーション12内のゴム配合物に硬化処理を施す前に(イ)の工程を行い、その後(ウ)の工程中に、シール部材20の硬化処理とインシュレーション12の硬化処理を一緒に行ってもよい。
(イ)次に、インシュレーション12の外面の各部分について画像を取得し、この画像を解析することによってリークパス部12aの位置を特定する。インシュレーション12の外表面に気密性があればインシュレーション12全体の気密性を保つことができるため、インシュレーション12の外面に露出したリークパス部12aの位置のみを特定できればよい。言い換えると、たとえリークパス部12aが、インシュレーション12の内部に埋没していても、外面に露出していなければ、この解析で位置を特定しなくてもよい。
なお、リークパス部12aの位置の特定は、目視観察などのこれ以外の方法を用いてもよい。
(ウ)次いで、位置を検出したリークパス部12aの外面(すなわちインシュレーション12の外面のうち、繊維の塊が外面に露出している部分)にシール部材20を密着して貼り付け(接着させ)、その状態でシール部材20を硬化させる。インシュレーション12の外面に露出したリークパス部12aを気密に覆う必要があるため、シール部材20の面積は、リークパス部12aの外面に露出した部分よりも大きいことが好ましい。
本発明の第1実施形態の固体ロケットモータ10では、位置を検出したリークパス部12aの外面に、インシュレーション12より伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤19を塗布し、その後ゴム系接着剤19を硬化させることにより層21を形成し、その層21をシール部材20とする。
また本発明の第2実施形態の固体ロケットモータ10では、インシュレーション12より伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤22で、インシュレーション12より伸びた状態で気密性を有する気密ゴムからなる小片23を位置のリークパス部12aの外面に密着させる。そしてその後、ゴム系接着剤22を硬化させることにより小片23を外面に接着させ、小片23とゴム系接着剤22とをシール部材20とする。
第2実施形態の固体ロケットモータ10の製造は、検出したリークパス部12aの外面にゴム系接着剤22を塗布した後に、ゴム系接着剤22の上から小片23を貼り付けてもよく、小片23の片面にゴム系接着剤22を塗り付けた後に、小片23をインシュレーション12の外面に押しつけることにより密着させてもよい。
その後、ゴム系接着剤22を硬化させることにより、小片23を、インシュレーション12の外面に密着させた状態で固定する。
なお、ゴム系接着剤19,22の硬化は、加熱硬化によるものが好ましいが、その他の硬化方法でもよい。
(エ)その後、シール部材20の上からFRPをこれに巻きつけることによりモータケース11を製造する。
本発明は上述の製造方法で固体ロケットモータ10を製造することにより、インシュレーション12の基本ゴム材質とシール部材20の基本ゴム材質を同じにしなくても、気密性や接着性を確保できる。そのため、インシュレーション12やシール部材20の基材について、従来より広い選択肢の中から選ぶことができる。
また、本発明の固体ロケットモータ10の製造方法では、インシュレーション12を完成させた後にインシュレーション12の外面にシール部材20を接着させるので、インシュレーション12とシール部材20との間で加硫接着させる必要が無い。
そのため従来の固体ロケットモータの製造より容易に、固体ロケットモータ10を加工することができる。
さらにインシュレーション12が完成した後に、シール部材20を密着させる加工を、リークパス部12aのみに施せばモータケース11全体としての気密性を保つことができるので、従来の固体ロケットモータより加工が容易である上に、本発明の固体ロケットモータ10を従来のものより軽量に製造することができる。
つまり、従来の固体ロケットモータでは、インナーインシュレーション層の外面が気密性を有するか否かに関わらず、インナーインシュレーション層の全体をアウターインシュレーション層で覆い、それらを加硫接着させていた。
二層の接着が弱い場合は、インナーインシュレーション層の外面全てをアウターインシュレーション層が取り囲まなければ、モータケース全体としての気密性を従来の固体ロケットモータは維持できない。
しかし、二層の接着が十分であるならば、インナーインシュレーション層の外面のうち気密性のある部分の外側に位置するアウターインシュレーション層は、機能的には必要がないといえる。言い換えると、二層の接着が十分であれば、この部分のアウターインシュレーション層が無くても、モータケース全体としての気密性を維持できる。そのため二層の接着が十分なときには、機能的に必要がない部分のアウターインシュレーション層の重さの分だけ、余分な重量を従来の固体ロケットモータに搭載していたともいえる。
それに対し、本発明の固体ロケットモータ10の製造方法では、リークパス部12aがない部分のインシュレーション12の外面には気密性があることを生かし、気密性が無い部分(すなわちリークパス部12a)のみに、気密性のあるシール部材20を密着させる。そのため、本発明の固体ロケットモータ10は、上述の、機能的に必要がない部分のアウターインシュレーション層の重さの分、従来の固体ロケットモータより軽く製造することができる。
そのため加工後におけるモータケース11全体の重量の増加を抑えることができる。
なお、インシュレーション12の外面側全体にシール部材20を塗布してもよい。これにより、リークパス部12aの位置を特定する工程(すなわち上述の(ウ)の工程)を省略することができ、加工をさらに容易にすることができる。
次に、本発明のゴム系接着剤19,22を選択するにあたり行った実験例について説明する。
本発明の発明者は、第1実施形態のゴム系接着剤19、もしくは第2実施形態のゴム系接着剤22の候補として、(a)ゴム状エポキシ樹脂接着剤、(b)HTPBゴム接着剤、(c)シアノアクリレート接着剤、(d)ビスフェノールA型エポキシ樹脂接着剤、(e)RTVシリコーンゴム接着剤、の5種類を選定した。以下、(a)〜(e)の5種類の接着剤を被検接着剤39とする。
第2実施形態のゴム系接着剤22には、以下の(1)〜(4)の特性が要求される。また第1実施形態のゴム系接着剤19は、以下の(2)〜(4)の特性が要求される。
(1)気密ゴムからなる小片23とインシュレーション12とを強固に接着できる「接着性」があること。
(2)推進薬13の燃焼時に発生するモータケース11の熱膨張に伴い、モータケース11と共に変形し、破壊されないだけの「伸び」があること。
(3)モータケース11の施工工程で負荷される熱に耐え得る「耐熱性」があること。
(4)リークパス部12aからのガスリークを抑止し得る「気密性」があること。
図4は、被検接着剤39の評価試験の結果を示す表である。(A)は「接着性」に関する評価試験の結果であり、(B)は「伸び」、「耐熱性」、及び「気密性」に関する評価試験の結果である。
図4に示すように、(c)のシアノアクリレート接着剤の熱分解温度は、FRP製のモータケース11の施工工程で加温される温度よりも低い。そのためシアノアクリレート接着剤は、FRP製のモータケース11の施工工程でシアノアクリレート接着剤が熱分解する可能性があり、ゴム系接着剤19,22に必要な「耐熱性」を有さない。そのため、シアノアクリレート接着剤をゴム系接着剤19,22の候補から外した。
また本発明の構成で、(e)のRTVシリコーンゴム接着剤は硬化不良を生じた。そのため本発明のゴム系接着剤19,22として必要な「接着性」をRTVシリコーンゴム接着剤が有さないと判断し、それをゴム系接着剤19,22の候補から外した。
(d)のビスフェノールA型エポキシ樹脂接着剤は、評価試験で、伸びが小さく、気密性を保持できなかった。そのため、「伸び」と「気密性」の特性を有しないとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂接着剤をゴム系接着剤19,22の候補から外した。
(a)のゴム状エポキシ樹脂接着剤と(b)のHTPBゴム接着剤は、いずれも「伸び」及び「気密性」が良好であった。
以上の試験結果により、本実験例では、(a)のゴム状エポキシ樹脂接着剤と(b)のHTPBゴム接着剤を選定した。しかし本発明のゴム系接着剤19,22はこれに限らず、上述の特性(1)〜(4)を満たす接着剤であれば、その他のものでもよい。
次に図4に開示した特性(4)の「気密性」を調べるための評価試験(以下、気密性評価試験)について、図5と図6を用いて説明する。
図5は、被検接着剤39の気密性評価試験に用いる試験片33と加圧容器26の断面図である。(A)は試験片33の断面図であり、(B)は加圧容器26の一部断面図である。
図5において、32は金属リング、33は試験片、38は平板、39は被検接着剤、41は貫通孔、34は背面クロス、35はガスリーク穴、36は金属治具、37はOリングである。
試験片33は、図5(A)に示すように、インシュレーション12と同じ素材で形成された平板38と、シール部材20から構成される。試験片33は、平板38の一部に貫通孔41を設け、その貫通孔41を塞ぐように平板38の一方の面にシール部材20を密着させたものである。以下、平板38より他方の面がある方向を他方側とし、平板38より一方の面がある方向を一方側とする。
図4に示した気密性の試験結果は、シール部材20として被検接着剤39(すなわち、上述の接着剤(a)〜(e)のいずれか)を塗布し、小片23を平板38に密着するように接着させ、その後、被検接着剤39を加熱硬化させた試験片33を使用して得たものである。
本実験例では、図5(A)のように金属リング32の一端に試験片33を気密に接着させ、その後、その金属リング32を加圧容器26に嵌めこみ、加圧容器26の内部を図5(B)に示すように試験片33で気密に区切った。そして加圧容器26の内部の試験片33より他方側(図5(B)では右側)に加圧した気体を送り込み、加圧する。
試験片33が気密性を保てているか否かは、加圧容器26の内部の試験片33より一方側(図5(B)では左側)の気体の流量を計測することにより判断する。
図6は、被検接着剤39の気密性評価試験で使用した配管図である。図6において、24は防爆壁、25はガスボンベ、26は加圧容器、27は収録機、28は圧力センサ、29はレギュレータ、30はリファレンス溶液、31は測定部、40は高圧ホースである。
図6に示すように、防爆壁24に対して加圧容器26の反対側(すなわち図6の左側)に設置されたガスボンベ25から供給された気体を、高圧ホース40を介して、加圧容器26の内部の試験片33より他方側(図5(B)の右側)に送り込む。
加圧容器26の内部空間の試験片33より一方側は、金属治具36に設けられたガスリーク穴35を介して、加圧容器26の外部に設けられた測定部31に連結される。本実験例の測定部31は、石鹸膜の移動を映像で観察しているが、試験片33より一方側の気体の流量を観察できるのであれば、その他の方法で観察してもよい。
例えば、被検接着剤39が気密性を失った場合、加圧容器26の内部の試験片33より他方側を加圧するに伴い、一方側も加圧される。それに対し、被検接着剤39が気密性を保つ場合は、その圧力により試験片33が一方側へ撓み、金属治具36に密着するため、一方側の圧力はそれほど変化しない。
なお、本気密性評価試験の実験例では、加圧容器26に送り込む気体として窒素を使用したが、その他の気体でもよい。
また本願の気密性評価試験は、上述の方法で行ったが、その他の方法で気密性を試験してもよい。
上述した本発明によると、インシュレーション12内に存在する気密性のないリークパス部12aの外面に密着して設けられたシール部材20を備えることによって、気密性のない部分に対してのみ加工を行うことが可能になり、インシュレーション12の外表面全体に対して加工を行う必要がなくなる。そのため、加工を容易にし、加工後におけるモータケース11全体の重量の増加を抑え、かつインシュレーション12全体の気密性を保つことが可能になる。
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 ロケット、
10 固体ロケットモータ、11 モータケース、
12 インシュレーション、12a リークパス部、
13 推進薬(固体推進薬)、14 ノズル、
15 点火薬、16 点火装置、
19 ゴム系接着剤、20 シール部材、
21 層、
22 ゴム系接着剤、23 小片、
24 防爆壁、25 ガスボンベ、
26 加圧容器、27 収録機、
28 圧力センサ、29 レギュレータ、
30 リファレンス溶液、31 測定部、
32 金属リング、33 試験片、
34 背面クロス、35 ガスリーク穴、
36 金属治具、37 Oリング、
38 平板、39 被検接着剤、
40 高圧ホース、41 貫通孔

Claims (6)

  1. 固体推進薬が内部に装填される中空のモータケースと、
    耐熱性を有し、前記モータケースの内面に設けられ前記固体推進薬の燃焼ガスから前記モータケースを熱的に保護する繊維質のインシュレーションと、を備えた固体ロケットモータであって、
    前記インシュレーション内に存在する気密性のないリークパス部の外面に密着して設けられたシール部材を備える、ことを特徴とする固体ロケットモータ。
  2. 前記シール部材は、前記リークパス部の外面側から塗布され、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤からなる層である、ことを特徴とする請求項1に記載の固体ロケットモータ。
  3. 前記シール部材は、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有する気密ゴムからなる小片と、
    前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有し前記リークパス部の外面に前記小片を接着させるゴム系接着剤と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の固体ロケットモータ。
  4. 固体推進薬が内部に装填される中空のモータケースと、
    耐熱性を有し、前記モータケースの内面に設けられ前記固体推進薬の燃焼ガスから前記モータケースを熱的に保護する繊維質のインシュレーションと、を備えた固体ロケットモータの製造方法であって、
    (ア)前記インシュレーションを製造し、
    (イ)次に、前記インシュレーション内に存在する気密性のないリークパス部の位置を特定し、
    (ウ)次いで前記位置の前記リークパス部の外面にシール部材を貼り付けて密着させ、該シール部材を硬化させる、ことを特徴とする固体ロケットモータの製造方法。
  5. 前記(ウ)において、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤を前記位置の前記リークパス部の外面に塗布し、その後、該ゴム系接着剤を硬化させることにより層を形成し、該層を前記シール部材とする、ことを特徴とする請求項4に記載の固体ロケットモータの製造方法。
  6. 前記(ウ)において、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有するゴム系接着剤で、前記インシュレーションより伸びた状態で気密性を有する気密ゴムからなる小片を前記位置の前記リークパス部の外面に密着させ、
    その後、前記ゴム系接着剤を硬化させることにより前記小片を前記外面に接着させ、
    前記小片と前記ゴム系接着剤とを前記シール部材とする、ことを特徴とする請求項4に記載の固体ロケットモータの製造方法。
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