JP2015212623A - 水質センサー及びこれを備えた冷却システム - Google Patents
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Abstract
【課題】腐食の発生及びスケールの形成の有無を判定することができる水質センサー及びこれを備えた冷却システムを提供することを目的としている。【解決手段】循環路において熱交換部の上流側に配置される低温側検知電極及び熱交換部の下流側に配置される高温側検知電極を有する検知電極と、検知電極から予め設定された間隔を隔てて配置される対極と、低温側検知電極又は高温側検知電極と対極との間に、周波数可変の交流電圧を印加する交流電源と、検知電極と対極との間のインピーダンス値に基づいて、循環路の腐食発生及び循環路のスケール形成の有無を判定する制御部と、を有するものである。【選択図】図1
Description
本発明は、水質センサー及びこれを備えた冷却システムに関するものである。
CPU、LSI、インバータなどの電子機器・パワー半導体などの被冷却体の冷却に適用する冷却装置として、水などの液体を冷却媒体に用いた水冷式冷却装置が知られている。この冷却装置は、熱伝達率の良い金属であるアルミニウムや銅を構成材料とし、冷却媒体が効率よく被冷却体と熱交換するために設計された流路を配置し、その流路の中に冷却媒体を流通させることで、被冷却体を冷却する。
この冷却装置をたとえば車両用電源システムに適用する場合、流れる冷却媒体には、通常は不純物混入の少ないイオン交換水とエチレングリコールなどの凝固点の低い有機溶媒を加えた不凍液からなる混合液を装置メーカー、自動車メーカー、メンテナンスメーカーなどが適用し、管理する。
その一方で、ユーザーが自身で冷却媒体を交換する場合があり、その際に上記イオン交換水ではなく水道水を使用する可能性がある。水道水には、塩化物イオン、金属イオンや溶存酸素などの腐食因子が含まれている。このため、ユーザーが水道水を用いた場合、この腐食因子によって冷却装置、特に冷却媒体流路を構成する金属が腐食されてしまい、流路に貫通孔が形成されてしまったり、腐食性物質が流路に析出してしまったりする。流路に貫通孔が形成されると冷却媒体が冷却装置から漏れ、また、腐食性物質が流路に析出すると冷却装置における熱伝達率の低下及び流路目詰まりに繋がる。
また、水道水にはカルシウムイオンや溶存二酸化炭素などのスケール形成因子も含まれている。スケール形成因子は、冷却媒体の流路の表面にて炭酸カルシウム(スケール)を形成し、流路の表面に付着する。スケールが流路に付着すると、冷却装置における熱伝達率の低下、流路の目詰まりに繋がる。
このように冷却媒体に水道水が使用される場合、金属で構成される流路及び冷却装置に対して液漏れ及び流路目詰りなどが発生し、冷却装置の性能低下、性能不良に繋がるため、冷却媒体の液性を適正に管理する必要がある。
そこで、金属材料の劣化度合いを抑制するため、金属材料と同材料の電極のインピーダンスを測定し、その電極に接する冷却媒体の液性を把握することにより、冷却媒体の腐食に関する液性変化を検知する技術が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
また、スケールについては、熱交換器にて温度と電気抵抗を測定することにより温度による電気抵抗特性の変化を管理することにより、熱交換器表面へのスケール形成を検知する技術が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
特許文献1に記載の技術では、鋼管材料が腐食することについては検知することができるが、スケールの形成については検知することができない。また、特許文献2に記載の技術では、鋼管材料にスケールが形成することについては検知することができるが、腐食については検知することができない。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、腐食の発生及びスケールの形成の有無を判定することができる水質センサー及びこれを備えた冷却システムを提供することを目的としている。
本発明に係る水質センサーは、液媒体が流れる循環路を備え、循環路に熱交換部が配置される循環システムに搭載される水質センサーであって、循環路において熱交換部の上流側に配置される低温側検知電極及び熱交換部の下流側に配置される高温側検知電極を有する検知電極と、検知電極から予め設定された間隔を隔てて配置される対極と、低温側検知電極又は高温側検知電極と対極との間に、周波数可変の交流電圧を印加する交流電源と、検知電極と対極との間のインピーダンス値に基づいて、循環路の腐食発生及び循環路のスケール形成の有無を判定する制御部と、を有するものである。
本発明に係る水質センサーによれば、上記構成を有しているため、腐食の発生及びスケールの形成の有無を判定することができる。
以下、本発明に係る水質センサー及びこれを備えた冷却システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る水質センサー50及びこれを備えた冷却システム100の概要構成の一例を示す図である。
本実施の形態1に係る水質センサー50は、腐食の発生及びスケールの形成の有無を判定することができる改良が加えられたものである。
図1は、本実施の形態1に係る水質センサー50及びこれを備えた冷却システム100の概要構成の一例を示す図である。
本実施の形態1に係る水質センサー50は、腐食の発生及びスケールの形成の有無を判定することができる改良が加えられたものである。
<冷却システム100について>
冷却システム100は、被冷却体9を冷却する冷却装置3と、冷却装置3に接続された循環用配管6及び循環用配管8と、冷却媒体4(液媒体)を搬送するのに利用される循環ポンプ5と、循環用配管6及び循環用配管8に接続されたラジエーター7(放熱器)と、を有している。また、冷却システム100は、冷却装置3、循環用配管8、循環ポンプ5、ラジエーター7及び循環用配管6が接続されて形成された、冷却媒体4が循環する循環路Fを有している。さらに、冷却システム100は、循環路Fを流れる冷却媒体4に含まれる腐食因子及びスケール形成因子により、循環路Fに腐食が発生すること及び循環路Fにスケールが形成(付着)されることを検知する水質センサー50を有している。
冷却システム100は、被冷却体9を冷却する冷却装置3と、冷却装置3に接続された循環用配管6及び循環用配管8と、冷却媒体4(液媒体)を搬送するのに利用される循環ポンプ5と、循環用配管6及び循環用配管8に接続されたラジエーター7(放熱器)と、を有している。また、冷却システム100は、冷却装置3、循環用配管8、循環ポンプ5、ラジエーター7及び循環用配管6が接続されて形成された、冷却媒体4が循環する循環路Fを有している。さらに、冷却システム100は、循環路Fを流れる冷却媒体4に含まれる腐食因子及びスケール形成因子により、循環路Fに腐食が発生すること及び循環路Fにスケールが形成(付着)されることを検知する水質センサー50を有している。
ここで、被冷却体9は、たとえば、CPU、LSI、インバータなどの電子機器、パワー半導体などに対応するものである。また、腐食因子とは、冷却システム100を構成する冷却装置3などの金属材料を腐食するものであり、たとえば、塩化物イオン、溶存酸素、鉄イオン、銅イオンなどに対応するものである。また、スケール形成因子とは、冷却システム100を構成する冷却装置3などに析出するスケールのもととなるものであり、たとえば、溶存二酸化炭素、カルシウムイオンなどに対応するものである。
冷却システム100は、たとえば車両用電源システムといった冷却媒体が循環する循環系を有するシステムに用いられるものである。なお、本実施の形態1では、冷却システム100について説明するが、それに限定されるものではなく、各種の循環システムに適用することもできる。たとえば、給湯暖房システム、空調システムなどといった熱媒体が循環する循環路を有するシステムに適用することができる。
水質センサー50は、循環路Fに腐食が発生すること及び循環路Fにスケールが形成されることの両方を検知して判定することができるものである。水質センサー50は、後述するように、電極などを有するセンサー部1と、センサー部1の電気的信号が出力されるコントローラー部2とを有している。水質センサー50は、検知電極30と検知電極30に対向配置される対極13を有し、これらの電極がたとえば、循環用配管6及び循環用配管8と冷却装置3との接続部に配置されるものである。水質センサー50の詳細については、後述する。
冷却装置3を含む冷却システム100を流れる冷却媒体4は、循環ポンプ5の駆動力により循環用配管(下流側)6を経由してラジエーター7に流れる。ラジエーター7内にて冷却媒体4は放熱操作により冷却され、温度の低い冷却媒体となり循環用配管8を経由して冷却装置3へと流れる。
冷却装置3の流路内に入った冷却媒体4は、冷却装置3に取り付けられた被冷却体9と熱交換することにより被冷却体9を冷却し、自身は温められて冷却装置3の出口へと流れる。温められた冷却媒体4は、再度、循環ポンプ5の駆動力により循環用配管8を経由してラジエーター7内へと送り込まれる。水質センサー50は、この循環サイクルを運転している間に動作し、循環路Fの腐食発生及びスケール形成(スケール付着)の有無を判定している。なお、循環ポンプ5が停止して循環サイクルの運転が停止しているときに、水質センサー50が循環路Fの腐食発生及びスケール形成の有無を判定していてもよい。
循環路Fに性能劣化因子(腐食因子及びスケール形成因子)が混入すると、水質センサー50で算出されるインピーダンス値が変化する。そこで、水質センサー50は、電気化学インピーダンス測定を利用して、冷却媒体4に混入した性能劣化因子に起因する、循環路Fの腐食発生及びスケール形成の有無を判定している。
なお、冷却システム100の運転時の冷却媒体4の温度については、被冷却体9の種類によっても異なる。たとえば、車載用電源システムの場合には、通常運転では65℃程度である。冷却装置3の入口と出口とにおける冷却媒体4の温度差は、それぞれ15℃程度である。すなわち、冷却装置3の入口では冷却媒体4の温度が50℃程度であり、冷却装置3の出口では冷却媒体4の温度が80℃程度である。そして、冷却装置3内の流路では、この流路の最上流側(入口)から最下流側(出口)に向かって50℃から80℃程度の温度勾配を形成する。
<水質センサー50の構成>
図1に示すように、水質センサー50は、冷却システム100の循環路に設置されるセンサー部1と、センサー部1の検出結果に基づいて循環路を循環する液媒体中の腐食イオン及びスケールを形成する溶存ガスの発生を判定するコントローラー部2とを有している。センサー部1とコントローラー部2とは電気的に接続されている。
図1に示すように、水質センサー50は、冷却システム100の循環路に設置されるセンサー部1と、センサー部1の検出結果に基づいて循環路を循環する液媒体中の腐食イオン及びスケールを形成する溶存ガスの発生を判定するコントローラー部2とを有している。センサー部1とコントローラー部2とは電気的に接続されている。
センサー部1は、交流電源12と、低温側検知電極10及び高温側検知電極11を有する検知電極30と、検知電極30に対向配置される電極である対極13と、交流電源12、検知電極30及び対極13などを接続するリード線14と、低温側検知電極10及び高温側検知電極11の接続を切り替える切替スイッチ15と、センサー部1の回路電流を検知する電流計29とを有している。
そして、センサー部1は、交流電圧に対する電流応答から抵抗成分(インピーダンス)を抽出する電気化学インピーダンス測定を利用し、腐食イオン及びスケールを形成する溶存ガスなどに起因する循環路Fの腐食発生及びスケール発生を検知するためのものである。すなわち、センサー部1は、検知電極30及び対極13に対して交流電源12の交流電圧を印加し、冷却システム100の性能劣化と関連する検知電極30及び対極13の抵抗成分に係る出力をコントローラー部2に与えるものである。そして、コントローラー部2は、センサー部1からの出力に基づいてインピーダンスを演算し、循環路Fへの性能劣化因子の混入に起因する循環路Fの腐食発生及びスケール形成の有無を判定している。
そして、センサー部1は、交流電圧に対する電流応答から抵抗成分(インピーダンス)を抽出する電気化学インピーダンス測定を利用し、腐食イオン及びスケールを形成する溶存ガスなどに起因する循環路Fの腐食発生及びスケール発生を検知するためのものである。すなわち、センサー部1は、検知電極30及び対極13に対して交流電源12の交流電圧を印加し、冷却システム100の性能劣化と関連する検知電極30及び対極13の抵抗成分に係る出力をコントローラー部2に与えるものである。そして、コントローラー部2は、センサー部1からの出力に基づいてインピーダンスを演算し、循環路Fへの性能劣化因子の混入に起因する循環路Fの腐食発生及びスケール形成の有無を判定している。
検知電極30は、自身の抵抗成分を含めた対極13間におけるインピーダンスを測定するのに利用される電極である。検知電極30は、冷却装置3の上流側に配置される低温側検知電極10と、冷却装置3の下流側に配置される高温側検知電極11とを有している。検知電極30は、冷却システム100の冷却装置3、循環用配管6及び循環用配管8に使用される金属材料と同材料から構成されている。
検知電極30は、冷却装置3、循環用配管6及び循環用配管8に使用される金属材料に応じて銅、アルミ、ステンレス鋼などで構成するとよい。対極13は、冷却媒体4を介して検知電極30に電流を流すための電極である。対極13は、検知電極30から予め設定された間隔を隔てて対向配置されているものである。また、対極13は、化学的安定性が高く電流が流れても腐食しにくい金属から構成されている。具体的には、対極13は、金、白金、チタン、銅、ステンレス鋼など電気化学的に貴な(自身で化学反応を起こしにくい)金属で構成するとよい。
検知電極30は、冷却装置3、循環用配管6及び循環用配管8に使用される金属材料に応じて銅、アルミ、ステンレス鋼などで構成するとよい。対極13は、冷却媒体4を介して検知電極30に電流を流すための電極である。対極13は、検知電極30から予め設定された間隔を隔てて対向配置されているものである。また、対極13は、化学的安定性が高く電流が流れても腐食しにくい金属から構成されている。具体的には、対極13は、金、白金、チタン、銅、ステンレス鋼など電気化学的に貴な(自身で化学反応を起こしにくい)金属で構成するとよい。
交流電源12は、検知電極30及び対極13に対して交流電圧を印加するものである。交流電源12は、たとえばインバータなどを有し、周波数が可変になっているものである。この交流電源12は、リード線14を介して検知電極30及び対極13に接続されている。交流電源12で印加する交流電圧の値については、電圧が高いほど電流応答の感度がよくなるが、一方で電極反応が進行しやすくなるため、最適化するとよい。電流応答の感度と電極反応の進行の抑制とを両立させるためには、交流電源12の印加電圧は、たとえば10mV以上100mV以下とするとよい。
コントローラー部2は、印加電圧検出部16、電流検出部17、演算部18、閾値設定部19、制御部20、及び、表示部21を有している。
印加電圧検出部16は、交流電源12が検知電極30に印加した交流電圧を検出し、その電圧値を演算部18に出力するものである。電流検出部17は、交流電圧に対する電流応答を検出し、その電流値を演算部18に出力するものである。演算部18は、印加電圧検出部16及び電流検出部17から出力された電圧値及び電流値に基づいて、検知電極30におけるインピーダンス値を演算するものである。
印加電圧検出部16は、交流電源12が検知電極30に印加した交流電圧を検出し、その電圧値を演算部18に出力するものである。電流検出部17は、交流電圧に対する電流応答を検出し、その電流値を演算部18に出力するものである。演算部18は、印加電圧検出部16及び電流検出部17から出力された電圧値及び電流値に基づいて、検知電極30におけるインピーダンス値を演算するものである。
閾値設定部19は、性能劣化因子が発生したとの判定に関するインピーダンス値の閾値を設定するものである。なお、この閾値については後述の「水質センサー50の動作説明」に記載する。
制御部20は、演算部18により演算されたインピーダンス値と、閾値設定部19から出力された冷却システム100の性能劣化に関するインピーダンス閾値とを比較して、循環路Fの腐食の発生及び循環路Fのスケールの形成の有無を判定するものである。また、制御部20は、この判定結果に係るデータを表示部21に出力する。表示部21は、制御部20から出力されたデータに基づいて、循環路Fの腐食の有無及びスケールの形成の有無の判定結果を表示し、ユーザーに知らせる。
電流計29は、検知電極30、対極13、切替スイッチ15及びリード線14などを有する回路に交流電圧を印加した時に回路を流れる電流を検出するためのものである。
<検知電極30上での表面反応について>
ここでは冷却媒体4に対して性能劣化因子が混入した際の腐食反応とスケール形成反応について説明する。
本実施の形態1に係る冷却システム100の循環用配管6及び循環用配管8を構成する金属材料には、密度、機械特性そして加工性などの観点から、たとえばアルミニウムが使用される。アルミニウムを利用して循環路Fの一部を構成し、その流路中を冷却媒体4が流れる場合、冷却媒体4中に循環路Fの性能劣化因子が混入すると腐食反応などが進行する。腐食反応の進行により、循環用配管6及び循環用配管8に貫通孔が形成され冷却媒体4が漏れる、あるいは腐食生成物が循環路F内に堆積し、結果として目詰りが生じるなどの現象により冷却システム100の冷却性能が低下する。
ここでは冷却媒体4に対して性能劣化因子が混入した際の腐食反応とスケール形成反応について説明する。
本実施の形態1に係る冷却システム100の循環用配管6及び循環用配管8を構成する金属材料には、密度、機械特性そして加工性などの観点から、たとえばアルミニウムが使用される。アルミニウムを利用して循環路Fの一部を構成し、その流路中を冷却媒体4が流れる場合、冷却媒体4中に循環路Fの性能劣化因子が混入すると腐食反応などが進行する。腐食反応の進行により、循環用配管6及び循環用配管8に貫通孔が形成され冷却媒体4が漏れる、あるいは腐食生成物が循環路F内に堆積し、結果として目詰りが生じるなどの現象により冷却システム100の冷却性能が低下する。
冷却システム100の性能劣化因子として腐食イオン、すなわち冷却装置3に接続されるラジエーター7などを構成する金属イオン(鉄イオン、銅イオン)、塩分由来の塩化物イオンが冷却媒体4中に混入し、アルミニウム表面に到達するとアルミニウムの腐食反応が進行する。
さらに、冷却媒体4中に溶存する酸素によってもアルミニウムの酸化反応、腐食反応が促進される。その腐食反応の進行速度は系の温度に依存し、高温ほど上記腐食イオンの活性度が上昇し、腐食反応の進行速度は大きくなる。その進行速度と温度相関については、以下に示すアレーニウスの反応速度式が成り立つ。
さらに、冷却媒体4中に溶存する酸素によってもアルミニウムの酸化反応、腐食反応が促進される。その腐食反応の進行速度は系の温度に依存し、高温ほど上記腐食イオンの活性度が上昇し、腐食反応の進行速度は大きくなる。その進行速度と温度相関については、以下に示すアレーニウスの反応速度式が成り立つ。
すなわち注目する反応の反応速度定数kについて、
k=Aexp(−Ea/RT)
ここで、Aは温度に無関係な定数である頻度因子、Eaは1molあたりの活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは温度である。
k=Aexp(−Ea/RT)
ここで、Aは温度に無関係な定数である頻度因子、Eaは1molあたりの活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは温度である。
上記のように、腐食反応の反応速度定数は温度上昇に伴い増加する。結果として腐食反応の進行速度はアレーニウスの反応速度式にしたがって大きくなる。一方、溶存酸素濃度と温度の関係に注目する。気体である酸素の溶解度は温度上昇とともに小さくなることから、系の温度が上昇すると溶存酸素による腐食反応の進行速度は小さくなる。
冷却システム100の性能劣化因子として、塩化物イオン、金属イオンなどの腐食因子による金属材料の腐食進行とともに金属材料表面へのスケール形成が挙げられる。スケールの付着は冷却媒体4中に含まれる成分のうち、溶存している二酸化炭素が系にて飽和濃度に達して気体となったときにその二酸化炭素ガス(溶存ガス)と同じく系に含まれるカルシウムイオンとが反応して、スケールが形成され成長する。このスケール形成反応についても温度依存性を有する。温度が高いほど溶存する二酸化炭素は減少するため、気体としての二酸化炭素は増加する。気体としての二酸化炭素が増加すると、カルシウムイオンと反応してスケールが形成される反応が促進される。すなわち、検知電極30の曝される雰囲気について温度が高いほどスケール形成反応は促進される。
上述の腐食反応とスケール形成反応は温度によってその進行が変わるため、冷却装置3を搭載した冷却システム100内に検知電極30を配置する際に、温度分布を考慮しておくことは重要である。検知電極30は冷却装置3の入口側と出口側とにそれぞれ設置されている。すなわち、低温側検知電極10は、冷却装置3に冷却媒体4が流入する側の配管である循環用配管8の最下流側に寄るように配置されている。また、高温側検知電極11は、冷却装置3から冷却媒体4が流出する側の配管である循環用配管6の最上流側に寄るように配置されている。冷却装置3内にて被冷却体9と熱交換するためにラジエーター7で冷やされた冷却媒体4は、冷却装置3内にて被冷却体9によって温められ冷却装置3の出口から流出する。したがって、冷却装置3内の温度と比較した際に、検知電極30の温度を上限下限とする温度範囲内に冷却装置3の温度が収まることになる。すなわち、低温側検知電極10の位置が、冷却システム100内にて最も温度の低くなる部分であり、高温側検知電極11の位置が、冷却システム100内にて最も温度の高くなる部分である。すなわち、冷却装置3から流出したばかりの冷却媒体4の温度が一番高い。また、ラジエーター7を通過して放熱し、循環用配管8を通ってさらに放熱し、冷却装置3に流入する手前の冷却媒体4の温度が一番低い。
このように、検知電極30は、腐食反応及びスケール形成反応が促進されやすい位置に配置されているため、水質センサー50は、より高感度に冷却システム100の腐食発生及びスケール形成の有無を検知することができるようになっている。
<検知電極30のインピーダンス応答について>
図2は、本実施の形態1に係る水質センサー50の検知電極30の表面における電極反応を模擬させた一般的な電気的等価回路を示す図である。ここでは性能劣化因子混入に伴うインピーダンス応答への影響について記載する。
電気化学インピーダンス測定では、電極界面を模擬させた電気的等価回路モデルを組み立てて電極の表面状態・電極反応を評価する。図2における電気的等価回路全体のインピーダンスZtotalは、以下に説明する、C、Rs、Rct、Zwが含まれる。Cは電気二重層形成に関する容量であり、表面被膜に蓄えられる電荷の影響を考慮したものである。Rsは溶液抵抗であり、電解液抵抗、電極の電子抵抗を考慮したものである。Rctは電荷移動抵抗であり、電極反応のうち電子授受に関わる抵抗成分である。Zwはワールブルグインピーダンスであり、電極反応のうち物質移動・拡散移動に関わる抵抗成分である。
図2は、本実施の形態1に係る水質センサー50の検知電極30の表面における電極反応を模擬させた一般的な電気的等価回路を示す図である。ここでは性能劣化因子混入に伴うインピーダンス応答への影響について記載する。
電気化学インピーダンス測定では、電極界面を模擬させた電気的等価回路モデルを組み立てて電極の表面状態・電極反応を評価する。図2における電気的等価回路全体のインピーダンスZtotalは、以下に説明する、C、Rs、Rct、Zwが含まれる。Cは電気二重層形成に関する容量であり、表面被膜に蓄えられる電荷の影響を考慮したものである。Rsは溶液抵抗であり、電解液抵抗、電極の電子抵抗を考慮したものである。Rctは電荷移動抵抗であり、電極反応のうち電子授受に関わる抵抗成分である。Zwはワールブルグインピーダンスであり、電極反応のうち物質移動・拡散移動に関わる抵抗成分である。
図2の電気的等価回路に対して交流電圧を印加し、その電流応答からインピーダンスを検出する。この検出したインピーダンスについて、印加する角周波数ωに依存した以下の式(1)及び式(2)が成立する。
式(1)及び式(2)により、以下の式(3)が成立する。
この式(3)において、ω⇒∞とするとZtotalはRsに、ω⇒0とするとZtotalはRs+Rct+Zwに近づく。高周波数領域では、溶液抵抗Rsに関する情報であり、印加する交流電圧の極性反転が速いために電極反応に関係のない電子抵抗がインピーダンスとして現れる。低周波数領域では、溶液抵抗に加えて電荷移動抵抗とワールブルグインピーダンスに関する情報が加わり、印加する交流電圧の極性反転が遅いために電極表面での反応、ここでは腐食反応が進行し、その進行速度が大きいほど抵抗が小さくなる。
そして、中周波数領域では溶液抵抗、電荷移動抵抗、ワールブルグインピーダンスの他に電気二重層形成のための容量成分に関する情報が得られ、電気二重層容量は電極表面に形成された表面被膜、ここではスケール形成反応に対応する。スケール形成による電気二重層容量の変化、それに伴うインピーダンス変化について説明する。
図3は、本実施の形態1に係る水質センサー50のスケール形成により形成された電極表面被膜とインピーダンスの相関に係る簡易モデルを示す図である。図3に示す簡易モデルは、電極面積Aの電極に対して、誘電率ε、厚みlの誘電体で表される電極表面被膜が挟まれている。インピーダンス測定における電極表面被膜の抵抗変化は、上述の式(2)から容量成分(キャパシタンス)で表すことができ、この系のキャパシタンスについては以下の式が成り立つ。
図3に示す電極−スケール形成モデルにおいて、スケール形成様子が変化すると容量成分が変化する。具体的には、電極表面にスケールが形成され成長した場合、スケール厚みは増大し、式(4)において系のキャパシタンスCは減少することがわかる。Cが減少すると、上述した式(2)、(3)においてZc、Ztotalはそれぞれ増加する。すなわち、電極表面にスケールが形成され、成長すると、容量成分を表す中周波数領域のインピーダンスが増加する。
<インピーダンス応答の周波数依存性・温度依存性>
ここでは交流電圧印加時の周波数と検知電極の温度による電極表面反応、それに伴うインピーダンス応答への影響について記載する。塩化物イオンや金属イオンなどの腐食イオン混入により腐食反応が進行すると電極表面での反応抵抗が減少、上記式(1)及び式(3)の電荷移動抵抗Rct及びワールブルグインピーダンスZwが減少する。これは、低周波数領域で現れる抵抗成分であり、かつ高温ほど腐食イオンの活性度が高くなるためにその影響(抵抗の減少度合い)が大きい。冷却媒体4に酸素が溶け込んだ場合においても、腐食反応が進行すると同様に低周波数領域にて表れる反応抵抗成分が減少する。
ここでは交流電圧印加時の周波数と検知電極の温度による電極表面反応、それに伴うインピーダンス応答への影響について記載する。塩化物イオンや金属イオンなどの腐食イオン混入により腐食反応が進行すると電極表面での反応抵抗が減少、上記式(1)及び式(3)の電荷移動抵抗Rct及びワールブルグインピーダンスZwが減少する。これは、低周波数領域で現れる抵抗成分であり、かつ高温ほど腐食イオンの活性度が高くなるためにその影響(抵抗の減少度合い)が大きい。冷却媒体4に酸素が溶け込んだ場合においても、腐食反応が進行すると同様に低周波数領域にて表れる反応抵抗成分が減少する。
酸素は高温ほど溶解度が低下するので、高温ほど冷却媒体中の酸素濃度は低く腐食反応は進みにくい。結果として、インピーダンス変化(減少度合い)は小さい。一方、冷却媒体4に含まれるカルシウムイオン及び二酸化炭素混入によりスケールが付着した場合、電極表面に炭酸カルシウムを主成分とするスケールが表面被膜として形成され、電極のインピーダンスは増加する。スケール形成反応は高温ほど促進されるため、そのインピーダンス応答も追随して増加する。
性能劣化因子を検知するインピーダンス応答の周波数領域について記載する。腐食因子もしくは酸素による腐食反応を検知するインピーダンス応答の「低周波数領域」としては、1Hz以下が好ましい。スケール形成を検知するインピーダンス応答の「中周波数領域」としては、1Hzよりも大きく、1kHzよりも小さいことが好ましい。低周波数領域は、第1の周波数領域に対応し、中周波数領域は、第1の周波数領域よりも高い第2の周波数領域に対応している。
以上より、冷却システム100の性能劣化として挙げられる腐食反応及びスケール形成は、検知電極30の曝される温度と検知電極30に印加する交流電圧の周波数とで区別されることがわかる。図4は、本実施の形態1に係る冷却システム100の性能劣化現象の検出領域を検知電極30の曝される温度と検知電極30に印加する交流電圧の周波数によって整理した図である。
図4に示すように高温かつ低周波数領域では腐食因子(塩化物イオン及び金属イオンなど)による腐食反応が検出される領域、高温かつ中周波数領域ではスケール形成因子(カルシウムイオン及び溶存二酸化炭素など)によるスケール形成反応が検出される領域である。また、低温かつ低周波数領域では腐食因子(溶存酸素)による腐食反応が検出される領域である。なお、図4の低温かつ中周波数領域における外乱因子の影響については、後段の「外乱因子の影響」にて記載する。また、それぞれ検出領域の選別に注目して、水質センサー50を制御すればよく、これらの最適化は後述の「水質センサー50の動作説明」にて記載する。
<外乱因子の影響>
水質センサー50では、検知電極30に対して交流電圧を印加し、その電流応答を測定することによりインピーダンス応答を監視する。印加する交流電圧が10〜100mVと微小であり、それに対する電流応答もμAオーダーと微小であることから、検出されるインピーダンス応答は磁気、電界などの外乱因子の影響を受けやすい。外乱因子の影響を除去するためにノイズフィルターを回路に組み込む、遮蔽板を取り付ける、などの対策が取られるが、外乱因子の影響をより高い基準にて除去しようとするといずれの対策についても設備機器を新しく整える場合が多く、コスト上昇に繋がる。ここでは、インピーダンス応答変化について性能劣化因子の混入検知と外乱因子を選別する方法について記載する。
水質センサー50では、検知電極30に対して交流電圧を印加し、その電流応答を測定することによりインピーダンス応答を監視する。印加する交流電圧が10〜100mVと微小であり、それに対する電流応答もμAオーダーと微小であることから、検出されるインピーダンス応答は磁気、電界などの外乱因子の影響を受けやすい。外乱因子の影響を除去するためにノイズフィルターを回路に組み込む、遮蔽板を取り付ける、などの対策が取られるが、外乱因子の影響をより高い基準にて除去しようとするといずれの対策についても設備機器を新しく整える場合が多く、コスト上昇に繋がる。ここでは、インピーダンス応答変化について性能劣化因子の混入検知と外乱因子を選別する方法について記載する。
外乱因子によるインピーダンス応答の変化は、高温側検知電極11及び低温側検知電極10のいずれの周波数領域にも表れ、その変化は可逆的である。高温側検知電極11の中周波数領域及び低周波数領域と、低温側検知電極10の低周波数領域とは、それぞれ性能劣化因子の検出に使用されている。そこで、これらの領域以外の領域である、低温側検知電極10の中周波数領域におけるインピーダンス応答の変化を利用する。低温側検知電極10の中周波数領域におけるインピーダンス応答は、塩化物イオンなどの腐食イオン及び溶存酸素などによる腐食反応、溶存二酸化炭素などによるスケール形成反応のいずれに対しても変化せず、外乱(ノイズ)のみに応答する。
したがって、制御部20は、低温側検知電極10の中周波数領域にて検知したインピーダンス値の変化が経時と共に検知前の状態に復帰した場合には、外乱因子が混入したという判定をする。たとえば、予め高温側検知電極11における低周波領域のインピーダンス応答が減少(変化)していても、制御部20は、外乱因子に混入によるインピーダンス応答の変化のために、腐食イオンが発生しているとは判定しない。
したがって、制御部20は、低温側検知電極10の中周波数領域にて検知したインピーダンス値の変化が経時と共に検知前の状態に復帰した場合には、外乱因子が混入したという判定をする。たとえば、予め高温側検知電極11における低周波領域のインピーダンス応答が減少(変化)していても、制御部20は、外乱因子に混入によるインピーダンス応答の変化のために、腐食イオンが発生しているとは判定しない。
<水質センサー50の動作説明>
上述のように温度及び印加交流電圧の周波数によって、検知できる冷却装置3の性能劣化因子の混入と劣化現象を選別できることが分かった。さらに外乱因子によるインピーダンス応答への影響についても除去でき、上述の性能劣化因子を正確に検知できることが分かった。ここでは、各性能劣化因子混入に対して効率よく検知するための水質センサー50の検知動作について説明する。
上述のように温度及び印加交流電圧の周波数によって、検知できる冷却装置3の性能劣化因子の混入と劣化現象を選別できることが分かった。さらに外乱因子によるインピーダンス応答への影響についても除去でき、上述の性能劣化因子を正確に検知できることが分かった。ここでは、各性能劣化因子混入に対して効率よく検知するための水質センサー50の検知動作について説明する。
図1にて、冷却装置3入口側にはラジエーター7にて冷却された冷却媒体4が流入し、冷却装置3にて被冷却体9と熱交換し、高温となった冷却媒体4が冷却装置3出口から流出する。冷却装置3出口に取り付けられた高温側検知電極11は低温側検知電極10と比較すると高温となり、冷却装置3入口に取り付けられた低温側検知電極10は高温側検知電極11と比較すると低温となる。高温側検知電極11では腐食イオンによる腐食とスケール形成が促進され、低温側検知電極10では冷却媒体4への溶存酸素の溶け込み量増加により腐食が促進される。
上述のように配置された検知電極30の動作について説明する。図5は、本実施の形態1に係る水質センサー50の診断動作を示すフローチャートである。コントローラー部2は、切替スイッチ15を制御して交流電源12と高温側検知電極11とが接続されるように切替スイッチ15の接続を切り替える(ステップS1)。
コントローラー部2は、低周波数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS2)。次に、コントローラー部2は、中周波数数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS3)。
コントローラー部2は、低周波数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS2)。次に、コントローラー部2は、中周波数数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS3)。
高温側検知電極11にて各周波数領域におけるインピーダンス応答を測定した後に、コントローラー部2は、切替スイッチ15を制御して高温側検知電極11側から低温側検知電極10側へ接続を切り替える(ステップS4)。
コントローラー部2は、低周波数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS5)。次に、コントローラー部2は、中周波数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS6)。
コントローラー部2は、低周波数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS5)。次に、コントローラー部2は、中周波数領域のインピーダンスに関する出力をセンサー部1より受け付ける(ステップS6)。
コントローラー部2は、ステップS2及びステップS3で得られた高温側検知電極11の各周波数領域におけるインピーダンス応答のデータと、ステップS5及びステップS6で得られた低温側検知電極10の各周波数領域におけるインピーダンス応答のデータとに基づいて表1に示すようなインピーダンス応答結果テーブルを作成する(ステップS7)。表1では、たとえば高温側検知電極11についての低周波数領域のインピーダンス値が、閾値設定部19の設定した閾値よりも低くなった場合の例を示しており、それを受けて「減少」と表示される。このインピーダンス応答結果テーブルの作成により、インピーダンス応答のデータを整理することができる。
コントローラー部2は、表1に示すインピーダンス応答結果テーブルと、表2に示す冷却システム100の性能劣化判定テーブルとを比較し、メンテナンス作業の要否を判定する(ステップS8)。表2に示す性能劣化判定テーブルは、コントローラー部2に予め記憶されている。
なお、表2に示す性能劣化判定テーブルの外乱因子の列は、低温側検知電極10の中周波数領域のインピーダンス応答が変化している場合を示している。つまり、高温側検知電極11の低周波数及び中周波数領域と低温側検知電極10の低周波数流域のインピーダンス応答は低温側検知電極10の中周波数領域のインピーダンス応答に追随して変化するため、かっこ書きで記載している。
なお、表2に示す性能劣化判定テーブルの外乱因子の列は、低温側検知電極10の中周波数領域のインピーダンス応答が変化している場合を示している。つまり、高温側検知電極11の低周波数及び中周波数領域と低温側検知電極10の低周波数流域のインピーダンス応答は低温側検知電極10の中周波数領域のインピーダンス応答に追随して変化するため、かっこ書きで記載している。
表1の例では、コントローラー部2は、インピーダンス応答結果テーブル及び性能劣化判定テーブルに基づいて、腐食の発生によりメンテナンス作業が必要であると判定する。
このように、水質センサー50では、低温側検知電極10及び高温側検知電極11の各周波数領域におけるインピーダンス応答の変化から、塩化物イオン、金属イオンなどの腐食イオン、溶存酸素、及び溶存二酸化炭素などが循環路Fの冷却媒体4に混入したことに起因する腐食発生及びスケール形成の有無の判定をする。
コントローラー部2は、メンテナンス作業が必要であると判定すると表示部21に表示する(ステップS9)。ユーザーは、これらの混入物の有無の判定から冷却媒体4の交換、冷却システム100を構成する配管の洗浄や部品交換により冷却媒体4のメンテナンスを行えばよい。
さらに、これらのインピーダンス応答に変化があった際に、同時に低温側検知電極10の中周波数領域におけるインピーダンス応答にて変化があった場合には、外乱因子の混入と判定する。先程の低温側検知電極10及び高温側検知電極11にて検知した性能劣化因子混入の検知と分別して液性の管理判定プロセスへと移行する。液性の管理判定後、再度切替スイッチ15により高温側検知電極11側の検知に移行し、上述のデータ取得、混入診断、そして液性管理判定サイクルを繰り返す。すなわち、上述したステップS2、ステップS3及びステップS5において、腐食発生及びスケール形成に対応するインピーダンス応答があったとしても、ステップS6において外乱因子の混入に対応するインピーダンス応答があった場合には、腐食発生及びスケール形成があるとの判定をせず、再度、ステップS1に戻って液性管理判定サイクルを繰り返す。
以上のように、高温側検知電極11及び低温側検知電極10におけるインピーダンス応答の周波数依存性を測定することにより、腐食反応及びスケール形成反応の要因となる性能劣化因子から検知に対する外乱因子を除去した上で、それぞれの因子の混入有無を診断し、その結果から冷却媒体4の液性を管理することが可能となる。
さらに、冷却装置3内の冷却媒体の温度は、入口側に配置された低温側検知電極10の冷却媒体よりも高く、出口側に配置された高温側検知電極11の冷却媒体よりも低い。温度が高いほど腐食イオンによる腐食反応及びスケール形成反応が促進され、温度が低いほど溶存酸素による腐食反応が促進されることを考慮すると、検知電極30での反応が最も促進されている場所であり、検知電極30よりも冷却装置3内にて性能劣化が進むことがないと考えられる。すなわち検知電極30でのインピーダンス応答を測定すれば、冷却装置3内の性能劣化を早期に検知することができる。
<各性能劣化因子及び外乱因子におけるインピーダンス応答>
図6〜図9は、図1に示す水質センサー50の検知電極30にて冷却装置3に対する各性能劣化因子あるいは外乱因子が冷却媒体4に混入した際のインピーダンス応答について各プロセスを経時変化として示した図である。また、図6〜図9では、インピーダンス応答の値について、監視する4つのインピーダンス応答のうち高温側検知電極11における中周波数領域のインピーダンス応答を1とした時の値で表している。各プロセスについて図6〜図9を用いながら説明する。
図6〜図9は、図1に示す水質センサー50の検知電極30にて冷却装置3に対する各性能劣化因子あるいは外乱因子が冷却媒体4に混入した際のインピーダンス応答について各プロセスを経時変化として示した図である。また、図6〜図9では、インピーダンス応答の値について、監視する4つのインピーダンス応答のうち高温側検知電極11における中周波数領域のインピーダンス応答を1とした時の値で表している。各プロセスについて図6〜図9を用いながら説明する。
(腐食因子:腐食イオン)
検知電極30の各周波数領域におけるインピーダンス応答の監視と共に冷却媒体4の循環を開始する。冷却システム100への性能劣化因子混入がない場合、いずれのインピーダンス応答も変化がなく、一定値を示している。
検知電極30の各周波数領域におけるインピーダンス応答の監視と共に冷却媒体4の循環を開始する。冷却システム100への性能劣化因子混入がない場合、いずれのインピーダンス応答も変化がなく、一定値を示している。
ここで、冷却システム100の運転に伴い、冷却装置3に対する性能劣化因子として、ラジエーター7に起因の鉄イオンあるいは塩分由来の塩化物イオンなどの腐食イオンが混入した場合に注目し、検知電極30のインピーダンス応答の経時変化を図6に示す。これらの腐食イオンが冷却媒体4と共に冷却装置3に到達すると、高温側検知電極11において電極表面の腐食反応が促進される。
高温側検知電極11におけるインピーダンス応答の周波数依存性をコントローラー部2にて取得した際に、低周波数領域にてこの腐食反応の促進によるインピーダンス値の低下を検知する。水質センサー50では、このインピーダンス値の減少をもって、腐食発生を検知する。
さらに、中周波数領域、並びに、切替スイッチ15にて低温側検知電極10側での監視に切り替えた後に低温側検知電極10におけるインピーダンス応答の低周波数領域、中周波数領域いずれにおいても運転初期からの変化は検出されず、鉄イオンあるいは塩化物イオンによる腐食反応が発生していることを表示部21に出力する。この表示に基づいて冷却媒体の液性を管理、たとえば交換を行えばよい。
さらに、中周波数領域、並びに、切替スイッチ15にて低温側検知電極10側での監視に切り替えた後に低温側検知電極10におけるインピーダンス応答の低周波数領域、中周波数領域いずれにおいても運転初期からの変化は検出されず、鉄イオンあるいは塩化物イオンによる腐食反応が発生していることを表示部21に出力する。この表示に基づいて冷却媒体の液性を管理、たとえば交換を行えばよい。
なお、検知するインピーダンスの低下度合の閾値としては、初期値に対して5%以上であることが好ましく、10%以上であればなお好ましい。さらに測定する時間間隔としては、連続的に測定を行う場合と冷却システム100のメンテナンス時期を考慮した定期的な測定を行う場合が挙げられる。それぞれの取得データについて図6に実線及び丸印によるプロットで示す。いずれの場合も腐食因子混入時期を検出できることがわかる。
(スケール形成因子:カルシウムイオンなど)
次に、冷却システム100の運転に伴い、冷却装置3に対する性能劣化因子として、カルシウムイオン及び二酸化炭素が混入した場合に注目し、検知電極30のインピーダンス応答の経時変化を図7に示す。カルシウムイオン及び二酸化炭素が冷却媒体4と共に冷却装置3に到達すると、高温側検知電極11の表面に炭酸カルシウムを主成分とするスケール形成反応が進行し、さらに、高温側検知電極11が高温に曝されることによりその反応が促進される。インピーダンス応答としては中周波数領域にてその容量成分が減少するために結果として増加する。水質センサー50では、このインピーダンス増加をもって、スケール形成を検知する。
次に、冷却システム100の運転に伴い、冷却装置3に対する性能劣化因子として、カルシウムイオン及び二酸化炭素が混入した場合に注目し、検知電極30のインピーダンス応答の経時変化を図7に示す。カルシウムイオン及び二酸化炭素が冷却媒体4と共に冷却装置3に到達すると、高温側検知電極11の表面に炭酸カルシウムを主成分とするスケール形成反応が進行し、さらに、高温側検知電極11が高温に曝されることによりその反応が促進される。インピーダンス応答としては中周波数領域にてその容量成分が減少するために結果として増加する。水質センサー50では、このインピーダンス増加をもって、スケール形成を検知する。
さらに低周波数領域、並びに、切替スイッチ15にて低温側検知電極10側での監視に切り替えた後に低温側検知電極10におけるインピーダンス応答の低周波数領域、中周波数領域いずれにおいても運転初期からの変化は検出されず、カルシウムイオン及び二酸化炭素混入によるスケール形成反応が進行していることを表示部21に出力する。この表示に基づいて冷却媒体4の液性を管理、たとえば交換を行えばよい。
なお、検知するインピーダンスの増加度合の閾値としては、初期値に対して5%以上であることが好ましく、10%以上であればなお好ましい。先ほど同様、測定間隔について、連続測定の場合を実線、定期的に測定の場合を丸印プロットにて図7に示す。いずれの場合もスケール形成因子の混入時期を検出できることがわかる。
(腐食因子:酸素)
次に、冷却システム100の運転に伴い、冷却装置3に対する性能劣化因子として冷却システム100を構成する金属の腐食因子である酸素が混入した場合に注目し、検知電極30のインピーダンス応答の経時変化を図8に示す。冷却媒体4中の溶存酸素が冷却装置3に到達すると低温側検知電極10において電極表面の腐食反応が促進される。
次に、冷却システム100の運転に伴い、冷却装置3に対する性能劣化因子として冷却システム100を構成する金属の腐食因子である酸素が混入した場合に注目し、検知電極30のインピーダンス応答の経時変化を図8に示す。冷却媒体4中の溶存酸素が冷却装置3に到達すると低温側検知電極10において電極表面の腐食反応が促進される。
したがって、高温側検知電極11におけるインピーダンス応答では運転初期と比較して低周波数領域、中周波数領域ともに変化がない。しかし、切替スイッチ15により切り替えられた低温側検知電極10側におけるインピーダンス応答では、低周波数領域にて減少することがわかる。中周波数領域では高温側検知電極11同様、変化が認められない。
以上より、コントローラー部2では、酸素の混入があると判定し、表示部21にその旨を表示する。この判定もしくは表示に基づいて冷却媒体4の液性を管理、たとえば液の交換あるいは脱気を行えばよい。なお、検知するインピーダンスの低下度合の閾値としては、初期値に対して5%以上であることが好ましく、10%以上であればなお好ましい。先ほど同様、測定間隔について、連続測定の場合実線、定期的に測定の場合を丸印プロットにて図8に示す。いずれの場合もスケール形成因子の混入時期を検出できることがわかる。
(外乱因子)
冷却システム100の性能劣化因子としては以上であるが、性能劣化因子とは関係のない外乱因子についても留意する必要がある。たとえば、冷却システム100の傍にて大電流を取り扱う装置が稼働した場合、あるいは熱源があった場合に、それらが発する電磁気、熱によって検知電極30のインピーダンス応答は変化する。この電磁気、熱などによるインピーダンス応答に基づいて腐食発生の検知をしてしまうと、誤検知に繋がる。
冷却システム100の性能劣化因子としては以上であるが、性能劣化因子とは関係のない外乱因子についても留意する必要がある。たとえば、冷却システム100の傍にて大電流を取り扱う装置が稼働した場合、あるいは熱源があった場合に、それらが発する電磁気、熱によって検知電極30のインピーダンス応答は変化する。この電磁気、熱などによるインピーダンス応答に基づいて腐食発生の検知をしてしまうと、誤検知に繋がる。
ここでは、性能劣化因子とは関係のない外乱因子が検知電極30のインピーダンス応答に影響を与える場合について注目し、検知電極30のインピーダンス応答の経時変化を図9に示す。冷却装置3の性能劣化因子と関係のない外乱因子が検知電極30に到達した場合、検知電極30におけるインピーダンス応答の低周波数領域、中周波数領域いずれにも変化を同じ値だけ影響を及ぼし、外乱因子到達前の状態に復帰する。これらをコントローラー部2にて監視し、外乱因子の混入と診断し、性能劣化因子と区別する。
診断プロセスとしては、高温側検知電極11におけるインピーダンス応答の周波数依存性取得時に低周波数領域もしくは中周波数領域のインピーダンス変化を検知した際に、切替スイッチ15により、低温側検知電極10でのインピーダンス応答の監視へと移行する。同様に、コントローラー部2は、インピーダンス応答の変化が中周波数領域にてあると判定すれば、外乱因子の混入と診断し、表示部21に出力する。
この場合は、性能劣化因子の混入ではないので冷却媒体4の液性を管理せず、検知電極30におけるインピーダンス応答の測定を続ければよい。外乱因子の場合の測定間隔としてはその応答が可逆的であるため、連続測定ではその変化をそのまま検知することが可能であるが、メンテナンスなどで定期的に測定する場合、1回の測定では定常状態からの変化を検知することはできない。
メンテナンス時にその場で2回以上好ましくは3回以上、さらに好ましくは一定時間連続的に測定することにより定常状態と変化した状態を比較することによって外乱因子の混入を検知する。図9に連続測定の場合を実線にて、定期的に測定 (メンテナンス時にその場で3回測定)の場合を丸印プロットにて示す。いずれの場合も外乱因子の混入時期を検出できることがわかる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付し、相違点について中心に説明する。実施の形態2では、低周波数領域を1Hz以下とし、中周波数領域を1Hzよりも大きく、1kHzよりも小さいことが好ましいことについて調査した結果を説明する。
実施の形態2では、実施の形態1と共通する構成については同一符号を付し、相違点について中心に説明する。実施の形態2では、低周波数領域を1Hz以下とし、中周波数領域を1Hzよりも大きく、1kHzよりも小さいことが好ましいことについて調査した結果を説明する。
実施の形態1で説明したように、腐食因子もしくは酸素による腐食反応を検知するインピーダンス応答の「低周波数領域」としては、1Hz以下が好ましい。スケール形成を検知するインピーダンス応答の「中周波数領域」としては、1Hzよりも大きく、1kHzよりも小さいことが好ましい。なお、水質センサー50の構成については実施の形態1における図1と同じであるので図1を用いて説明する。
検知電極30のインピーダンス応答が変化する場合としては、まず冷却システム100における性能劣化現象として溶存酸素による腐食反応と、塩化物イオン及び金属イオンなどの腐食イオンによる腐食反応と、溶存二酸化炭素及びカルシウムイオンによるスケール形成反応とが挙げられる。また、検知電極30のインピーダンス応答が変化する場合としては、性能劣化現象とは関係のない外乱因子によるものが挙げられる。このように、検知電極30のインピーダンス応答が変化する場合としては、4つの反応、因子が挙げられる。
このうち性能劣化現象とは関係のない外乱因子は可逆的であり、いずれの周波数にも同じように影響するものであり、周波数によるインピーダンス応答に特有の影響を与えないため、今回の調査の対象からは外すこととした。また、溶存酸素による腐食反応と腐食イオンによる腐食反応は要因は異なっていても電極の腐食反応であることには変わりなく、いずれも低周波数領域のインピーダンス応答にて同様の変化を示す。
すなわち、インピーダンス応答の周波数依存性を考える場合、これらの反応は同じ反応として考慮することができる。以上より、ここではインピーダンス応答の周波数依存性を調査するにあたり、腐食反応とスケール形成反応に対するインピーダンス応答を考慮する。
すなわち、インピーダンス応答の周波数依存性を考える場合、これらの反応は同じ反応として考慮することができる。以上より、ここではインピーダンス応答の周波数依存性を調査するにあたり、腐食反応とスケール形成反応に対するインピーダンス応答を考慮する。
腐食反応によるインピーダンス応答変化は上述のとおり、低周波数領域において顕著となる。高温側検知電極11にて意図的に金属イオンとして鉄イオンを混入させた後のインピーダンス応答の周波数依存性を図10に示す。図のインピーダンス値(縦軸)については、混入前を100としたときの値としている。図10より、2Hz以上のインピーダンス応答では鉄イオンを混入させても変化はほとんどなく、検知時期を検出することができなかったのに対して、1Hz以下になるとインピーダンス応答が減少している様子を確認した。
この減少度は周波数が小さくなるほど顕著となり、低周波数化は検知精度の向上につながるが、一方で周波数が小さくなるとその逆数である周期は長くなる、すなわち計測に費やす時間が長くなる。周波数の最適化にあたっては、検知精度と計測時間を両立することが好ましく、具体的な周波数範囲としては、0.1Hz以上、1Hz以下であることが好ましい。
スケール形成反応によるインピーダンス応答変化は上述のとおり中周波数領域において顕著となる。低温側検知電極10にて意図的にカルシウムイオン及び二酸化炭素を混入させた後のインピーダンス応答の周波数依存性を図11に示す。
図11のインピーダンス応答(縦軸)については、混入前のインピーダンス値を100としたときの値としている。図11より、1kHz以上あるいは1Hz以下のインピーダンス応答では二酸化炭素を混入させても変化はほとんどなく、カルシウムイオン及び二酸化炭素混入時期を明確に検知することができなかった。一方、1Hzより大きく、1kHzより小さい領域でのインピーダンス応答の変化により混入時期を検知できることがわかった。この増加度については、10Hz以上100Hz以下にてより顕著となった。
図11のインピーダンス応答(縦軸)については、混入前のインピーダンス値を100としたときの値としている。図11より、1kHz以上あるいは1Hz以下のインピーダンス応答では二酸化炭素を混入させても変化はほとんどなく、カルシウムイオン及び二酸化炭素混入時期を明確に検知することができなかった。一方、1Hzより大きく、1kHzより小さい領域でのインピーダンス応答の変化により混入時期を検知できることがわかった。この増加度については、10Hz以上100Hz以下にてより顕著となった。
このように、水質センサー50では、低周波数領域が1Hz以下に設定され、中周波数領域が1Hzよりも大きく、1kHzよりも小さく設定されているため、腐食発生及びスケール形成を高精度に検知することができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1、2と共通する構成については同一符号を付し、相違点について中心に説明する。実施の形態1では、低温側検知電極10は、循環用配管8の最下流側に寄るように配置され、高温側検知電極11は、循環用配管6の最上流側に寄るように配置されているため、腐食反応などが促進されていた。本実施の形態3では、冷却システム100Aの循環用配管6A及び循環用配管8Aのうちの検知電極30Aが配置されている部分の径を大きくしている。これにより、さらに腐食反応及びスケール形成反応を促進させ、腐食発生及びスケール形成について早期の発見を実現できるようになっている。また、径を大きくした分、検知電極30Aの大きさも検知電極30より大きくしている。
実施の形態3では、実施の形態1、2と共通する構成については同一符号を付し、相違点について中心に説明する。実施の形態1では、低温側検知電極10は、循環用配管8の最下流側に寄るように配置され、高温側検知電極11は、循環用配管6の最上流側に寄るように配置されているため、腐食反応などが促進されていた。本実施の形態3では、冷却システム100Aの循環用配管6A及び循環用配管8Aのうちの検知電極30Aが配置されている部分の径を大きくしている。これにより、さらに腐食反応及びスケール形成反応を促進させ、腐食発生及びスケール形成について早期の発見を実現できるようになっている。また、径を大きくした分、検知電極30Aの大きさも検知電極30より大きくしている。
冷却装置3内を流れる冷却媒体4の流速が性能劣化に繋がる腐食反応とスケール形成反応の反応速度に影響を及ぼす。冷却媒体の流速とスケール形成速度との相関についてまとめたグラフを図12に示す。図12より、冷却媒体の流速が小さいほどその反応速度は大きいことが分かる。
この特性を生かすため、本実施の形態3に係る水質センサー50Aでは、循環用配管6A及び循環用配管8Aのうちの検知電極30を設置する配管部の断面積(管径)を大きくする。すなわち、本実施の形態3に係る冷却システム100Aの水質センサー50Aでは、検知電極30Aを配置する配管部の断面積を大きくし、検知電極30Aにてより腐食反応及びスケール形成反応を促進させているものである。図13に示すように、循環用配管6A及び循環用配管8Aのうちの検知電極30Aが配置されている部分の断面積は、その他の部分の断面積よりも大きくなっており、その分、冷却媒体の流速は小さくなる。
図12からもわかるように、流速が小さいほど腐食反応及びスケール形成反応の反応速度は大きくなるため、早期に冷却システム100Aの性能劣化を検知電極30Aにて判定することができる。循環用配管6A及び循環用配管8Aのうちの検知電極30Aが配置されている部分の断面積の大きさについては、その他の部分よりも大きければ大きいほど冷却媒体4の流速を小さくすることができるため、装置設計との兼ね合いからその大きさを決定するとよい。
実施の形態4.
図1に示す水質センサー50により冷却システム100において適正に液性を管理することが可能である。本実施の形態4では、車両用電源システムの運転モードにおける温度サイクルと起動停止の組み合わせを模擬した循環試験を実施し、その効果を検証する。
以下に循環試験の詳細について説明する。本実施の形態に係る水質センサー50及びそれを搭載した冷却システム100については、実施の形態1における図1と同様であるので図1を用いて説明する。
図1に示す水質センサー50により冷却システム100において適正に液性を管理することが可能である。本実施の形態4では、車両用電源システムの運転モードにおける温度サイクルと起動停止の組み合わせを模擬した循環試験を実施し、その効果を検証する。
以下に循環試験の詳細について説明する。本実施の形態に係る水質センサー50及びそれを搭載した冷却システム100については、実施の形態1における図1と同様であるので図1を用いて説明する。
図1においてラジエーター7は放熱部すなわち冷却部であり、被冷却体9は熱源であることから、冷却システム100の稼働時には、冷却媒体4は系内の場所によって温度分布を持つ。被冷却体9を搭載する冷却装置3に対して、循環用配管(下流側)6に取り付けられた高温側検知電極11では冷却システム100の中で最も高温となり、循環用配管(上流側)8に取り付けられた低温側検知電極10では冷却システム100の中で最も低温となる。
また、熱源となる冷却装置3の中心部近傍及び冷却部となるラジエーター7の中心部近傍の冷却媒体4温度はどちらも両検知電極温度の中間値を取ることになる。本実施の形態4に係る循環系では冷却装置3の中心部近傍及びラジエーター7の中心部近傍での冷却媒体4温度は65℃、高温側検知電極11における冷却媒体4温度は80℃、低温側検知電極10における冷却媒体4温度は50℃となった。
一方、冷却システム100の停止時は被冷却体9及びラジエーター7においても熱の授受はなく、結果として、冷却システム100における冷却媒体4温度はどの場所においても均一となり外気温に等しくなる。本実施の形態に係る冷却システム100停止時において、冷却媒体4温度はどの場所においても均一で20℃となった。
このように冷却システム100の起動と停止により、各場所における冷却媒体4温度が変化することが分かる。本実施の形態4に係る車両用電源システムの運転モードにおける起動停止組み合わせを模擬した循環試験として、冷却システム100の起動時間を8時間、停止時間を16時間とした起動停止サイクルを2000サイクル実施し、水質センサー50を起動させた場合と起動させない場合をそれぞれ比較してその機能について確認した。
水質センサー50を起動させた場合については、センサーが腐食因子混入を検知した際に冷却媒体4を交換する操作をメンテナンスとして組み込んだ。起動させない場合については、交換操作なしにて対応した。冷却媒体4としては、脱気させた水道水模擬水を使用した。
その結果、水質センサー50を起動させない場合については250サイクル過ぎた時点で循環ポンプ5が機能しなくなり、冷却システム100の運転が停止した。冷却システム100停止後の系内を調査した結果、低温側検知電極10及びその近傍の配管表面にてスケール形成により流路が閉塞している様子を確認した。また、高温側検知電極11にて貫通には至っていないが塩化物イオン及び金属イオンが付着したことによる局部腐食が発生していることを確認した。(図示せず)一方、水質センサー50を起動させた場合、2000サイクル経過後についても循環試験が止まることなく、また腐食による水漏れもなく良好に運転が継続されている様子を確認した。以上より、水質センサー50を起動させることにより冷却媒体4の液性が適正に管理されていることが確認できた。
実施の形態5.
本実施の形態5では、実施の形態1、2で説明した冷却システム100を車両用電源システムに適用し、水質センサー50を実際に起動させて、その性能劣化抑制効果について調べた。具体的な動作を以下に記載する。
本実施の形態5では、実施の形態1、2で説明した冷却システム100を車両用電源システムに適用し、水質センサー50を実際に起動させて、その性能劣化抑制効果について調べた。具体的な動作を以下に記載する。
車両用電源システムにて水質センサー50を起動させるにあたって、自動車整備工場などで車両外部に配置した測定装置により検知電極のインピーダンスを測定する場合と車両に測定装置を組み込んで検査頻度を高める場合を考える。
前者の場合、自動車の定期点検にて中周波数及び低周波数の交流電圧を印加し、その電流応答を検知し、その印加電圧と電流応答からインピーダンスを算出しデータとして集積できる測定装置を検知電極30及び切替スイッチ15に接続することによって冷却システム100の性能劣化診断を行う。
後者の場合、水質センサー50及びコントローラー部2は自動車制御部、たとえばIPUなどの制御コンピューターに交流電源12及びコントローラー部2を組み込んだ形とする。この場合は、制御部20にて、常時インピーダンス応答データの取得が可能であるので、運転パネル部などに警告表示機能を搭載すればより精度の高いメンテナンスが可能となる。
以上、水質センサー50を起動させて冷却媒体4の液性を管理した結果、冷却システム100を開放して溶存酸素を混入させる、塩化物イオン及び金属イオンを混入させる、二酸化炭素を混入させるといった操作を行うと、水質センサー50が正常に機能し、冷却装置3の性能劣化を抑制するために冷却媒体4の液性を管理できることを確認した。
1 センサー部、2 コントローラー部、3 冷却装置、4 冷却媒体、5 循環ポンプ、6 循環用配管、6A 循環用配管、7 ラジエーター、8 循環用配管、8A 循環用配管、9 被冷却体、10 低温側検知電極、11 高温側検知電極、12 交流電源、13 対極、14 リード線、15 切替スイッチ、16 印加電圧検出部、17 電流検出部、18 演算部、19 閾値設定部、20 制御部、21 表示部、30 検知電極、30A 検知電極、50 水質センサー、50A 水質センサー、100 冷却システム、100A 冷却システム、A 電極面積、C キャパシタンス、F 循環路、Rct 電荷移動抵抗、Rs 溶液抵抗、Ztotal インピーダンス、Zw ワールブルグインピーダンス、k 反応速度定数、l 厚み、ε 誘電率、ω 角周波数。
Claims (13)
- 液媒体が流れる循環路を備え、前記循環路に熱交換部が配置される循環システムに搭載される水質センサーであって、
前記循環路において前記熱交換部の上流側に配置される低温側検知電極及び前記熱交換部の下流側に配置される高温側検知電極を有する検知電極と、
前記検知電極から予め設定された間隔を隔てて配置される対極と、
前記低温側検知電極又は前記高温側検知電極と前記対極との間に、周波数可変の交流電圧を印加する交流電源と、
前記検知電極と前記対極との間のインピーダンス値に基づいて、前記循環路の腐食発生及び前記循環路のスケール形成の有無を判定する制御部と、
を有する
ことを特徴とする水質センサー。 - 前記制御部は、
前記交流電源の複数の周波数領域における前記インピーダンス値に基づいて、前記循環路の腐食発生及び前記循環路のスケール形成の有無を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の水質センサー。 - 前記制御部は、
前記交流電源の第1の周波数領域の前記インピーダンス値及び前記第1の周波数領域よりも高い第2の周波数領域の前記インピーダンス値に基づいて、前記循環路の腐食発生及び前記循環路のスケール形成を判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の水質センサー。 - 前記制御部は、
前記低温側検知電極と前記対極との間における前記第1の周波数領域の前記インピーダンス値に基づいて、前記腐食発生に係る溶存酸素が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の水質センサー。 - 前記制御部は、
前記高温側検知電極と前記対極との間における前記第1の周波数領域の前記インピーダンス値に基づいて、前記腐食発生に係る塩化物イオン及び金属イオンのうちの少なくとも一方が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の水質センサー。 - 前記制御部は、
前記高温側検知電極と前記対極との間における前記第2の周波数領域の前記インピーダンス値に基づいて、前記スケール形成に係る溶存二酸化炭素が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の水質センサー。 - 前記制御部は、
前記第1の周波数領域は、
1Hz以下の範囲であり、
前記第2の周波数領域は、
1Hzより大きく、1kHzよりも小さい範囲である
ことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の水質センサー。 - 前記低温側検知電極と前記対極との接続と、前記高温側検知電極と前記対極との接続とを切り替える切替スイッチをさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の水質センサー。 - 前記循環路の腐食発生及び前記循環路のスケール形成を判定する際に利用される前記インピーダンス値の閾値を設定する閾値設定部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の水質センサー。 - 被冷却体を冷却する冷却装置と、
冷却媒体を放熱する放熱器と、
前記冷却装置と前記放熱器との間を冷却媒体が循環するように前記冷却装置及び前記放熱器に接続された配管と、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の水質センサーと、
を備えた
ことを特徴とする冷却システム。 - 前記水質センサーの対極は、
前記冷却装置に配置され、
前記水質センサーの低温側検知電極は、
前記冷却装置に前記冷却媒体が流入する側の前記配管に、前記対極から予め設定された間隔を隔てて配置され、
前記水質センサーの高温側検知電極は、
前記冷却装置から前記冷却媒体が流出する側の前記配管に、前記対極から予め設定された間隔を隔てて配置されている
ことを特徴とする請求項10に記載の冷却システム。 - 前記水質センサーの低温側検知電極は、
前記冷却装置に前記冷却媒体が流入する側の前記配管の下流側に配置され、
前記水質センサーの高温側検知電極は、
前記冷却装置から前記冷却媒体が流出する側の前記配管の上流側に配置されている
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の冷却システム。 - 前記配管は、
前記低温側検知電極及び前記高温側検知電極が配置された部分の径が大きくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の冷却システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014094405A JP2015212623A (ja) | 2014-05-01 | 2014-05-01 | 水質センサー及びこれを備えた冷却システム |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2015212623A true JP2015212623A (ja) | 2015-11-26 |
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ID=54696969
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JP (1) | JP2015212623A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110261290A (zh) * | 2019-07-04 | 2019-09-20 | 中国南方电网有限责任公司超高压输电公司检修试验中心 | 一种整治均压电极结垢的试验装置 |
US11260749B2 (en) * | 2016-09-26 | 2022-03-01 | Transportation Ip Holdings, Llc | Cooling control systems |
CN114324494A (zh) * | 2021-12-07 | 2022-04-12 | 中国科学院物理研究所 | 一种半导体薄膜气体传感器 |
WO2024024359A1 (ja) * | 2022-07-29 | 2024-02-01 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | 不純物検出支援装置、不純物検出支援方法および被検査液処理システム |
-
2014
- 2014-05-01 JP JP2014094405A patent/JP2015212623A/ja active Pending
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