以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板(基板)」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念であり、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図17は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1はタッチパネル装置を画像表示機構とともに概略的に示す図であり、図2はタッチパネル装置を示す平面図であり、図3及び図4はタッチパネル装置の層構成を例示する図面である。図5〜7は、タッチパネルセンサの検出電極により形成されるメッシュパターンを示す平面図であり、図8及び図9は、導電体メッシュのメッシュパターンの設計方法の一例を説明するための図である。図10〜図14は、導電体メッシュのメッシュパターンを評価する方法を説明するためのメッシュパターンに関する写真であり、図15、図16及び図18は、メッシュパターンのパワースペクトルに関連したグラフであり、図17は、メッシュパターンのパワースペクトルから特定された規則パターンを示す平面図である。
図1に示すように、タッチパネル装置20は、画像表示機構(例えば液晶表示装置)12とともに組み合わせられて用いられ、表示装置10を構成している。画像表示機構12は、画像を表示することができる表示領域A1と、表示領域A1を取り囲むようにして表示領域A1の外側に配置された非表示領域(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。タッチパネル装置20は、タッチパネルセンサ25と、タッチパネルセンサ25の観察者側に配置された透明カバー22と、タッチパネルセンサ25に接続された図示しない回路と、を含む。透明カバー22は、タッチパネル装置20によって外部導体の接触(接近)位置の検出を実施されるタッチ面を形成する。透明カバー22は、接合層を介してタッチパネルセンサ25と接合されている。
タッチパネルセンサ25は、位置検出に利用される電極を有する位置検出電極基板30を含んでいる。位置検出電極基板30は、画像表示機構12の表示面12aに対面する位置に配置され、位置を検知するための電極40を有している。以下においては、タッチパネル装置20が、投影型容量結合方式のタッチパネル装置として構成された例について説明する。
図2に示すように、投影型容量結合方式として構成されたタッチパネルセンサ25は、その法線方向に沿って離間して配置された第1電極40及び第2電極50を有している。投影型容量結合方式のタッチパネルセンサ25は、図3に示すように、各々が電極40a,40bを有した二つの位置検出電極基板30a,30bを含むようにしてもよい。図3に示された例において、第1の位置検出電極基板30aは、基材シート35と、基材シート35上に設けられた第1電極40aと、を有している。第2の位置検出電極基板30bも同様に、基材シート35と、基材シート35上に設けられた第2電極40bと、を有している。
その一方で、投影型容量結合方式のタッチパネルセンサ25は、図4に示すように、単一の位置検出電極基板30のみを有するようにしてもよい。この位置検出電極基板30は、単一の基材シート35と、基材シート35の両側にそれぞれ設けられた第1電極40a及び第2電極40bと、を有している。
以下においては、図3に示された層構成について説明していく。ただし、第1位置検出電極基板30aと第2位置検出電極基板30bは、電極40a,40bの平面視における配列パターン等は相違するが、材料、層構成、寸法等のその他において同様に構成することができる。したがって、第1位置検出電極基板30aと第2位置検出電極基板30bに共通する説明については、「第1」及び「第2」を区別することなく、符号「30」を用いて説明する。
位置検出電極基板30に用いられる基材シート35は、電極40a,40bを支持する基材として機能し、且つ、タッチパネルセンサ25における誘電体としても機能する。図2に示すように、基材シート35は、外部導体(例えば、指)の接触(接近)位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1に隣接する非アクティブエリアAa2と、を含んでいる。図1に示すように、位置検出電極基板30のアクティブエリアAa1は、画像表示機構12の表示領域A1に対面する領域を占めている。一方、非アクティブエリアAa2は、矩形状のアクティブエリアAa1を四方から周状に取り囲むように、言い換えると、額縁状に形成されている。この非アクティブエリアAa2は、画像表示機構12の非表示領域A2に対面する領域に形成されている。
アクティブエリアAa1を介して画像表示機構12の画像を観察することができるよう、基材シート35は、透明または半透明となっている。基材シート35は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。なお、基材シート35の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
基材シート35は、例えば、誘電体として機能し得るガラスや樹脂フィルムから構成され得る。樹脂フィルムとしては、光学部材の基材として使用されている種々の樹脂フィルムを好適に用いることができる。一例として、複屈折性を有さない光学等方性のフィルム、典型的には、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムを、基材シート35として用いることができる。その一方で、複屈折性を有する光学等方性のフィルムも、基材シート35として用いることができる。例えば、安価で安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムを、基材シート35として用いることができる。ポリエステルフィルムは、吸湿性が低く、高温多湿の環境化においても変形等が生じ難いといった利点を、有している。
次に、基材シート35上に設けられた第1電極40a及び第2電極40bについて説明する。図2に示すように、第1電極40aは、位置検出に用いられる第1検出電極45aと、第1検出電極45aに接続された第1取出電極(取出配線)42aと、を有している。同様に、第2電極40bは、位置検出に用いられる第2検出電極45bと、第2検出電極45bに接続された第2取出電極(取出配線)42bと、を有している。各検出電極45a,45bは、パターンをなすようにしてアクティブエリアAa1内に配置されている。一方、取出電極42a,52aは、非アクティブエリアAa2内に配置されている。
なお、以下の説明において、第1電極40a及び第2電極40bに共通する説明については、「第1」及び「第2」を区別することなく、符号「40」を用いて説明する。同様に、第1検出電極45a及び第2検出電極45bに共通する説明については、「第1」及び「第2」を区別することなく、符号「45」を用いて説明し、さらに、第1取出電極42a及び第2取出電極42bに共通する説明については、「第1」及び「第2」を区別することなく、符号「42」を用いて説明する。
取出電極42は、検出電極45の各々に対し、接触位置の検出方法に応じて一つまたは二つ設けられている。各取出電極42は、対応する検出電極45に接続されて配線を形成している。取出電極42は、基材シート35の非アクティブエリアAa2内を、対応する検出電極45から基材シート35の端縁まで延びている。そして、取出電極42の検出電極45とは反対側の端部に、端子部43が形成されている。取出電極42は、その端子部43にて、図示しない外部接続配線(例えば、FPC)を介し、制御回路(図示せず)に接続される。
図3に示された例では、第1検出電極45a及び第2検出電極45bは、対応する基材シート35の観察者側の面上に互いに異なる所定のパターンで配置されている。具体的には、図2に示すように、第1検出電極45aは、長方形の輪郭形状を有して線状に延び、且つ、その長手方向と交差する方向に配列されている。同様に、第2検出電極45bも、長方形の輪郭形状を有して線状に延び、且つ、その長手方向と交差する方向に配列されている。ただし、第1検出電極45aの配列方向と第2検出電極45bの配列方向とは非平行となっている。図示された例において、第1検出電極45aは、ストライプ状となるよう、図2における上下に並べられ且つその配列方向に直交する方向(図2における左右)に直線状に延びている。また、第2検出電極45bも、ストライプ状となるよう、図2における左右に並べられ且つその配列方向に直交する方向(図2における上下)に直線状に延びている。さらに、第1検出電極45aの配列方向と第2検出電極45bの配列方向とは直交している。
検出電極45は、外部導体がタッチパネルセンサ25に接触または接近した際に生じる、電磁的な変化または静電容量の変化を検知するために設けられるものである。従って、検出電極45には、電磁的な変化または静電容量の変化に起因する電流を検知可能なレベルで流すことができる程度の導電性が求められる。このような検出電極45を構成するための材料として、優れた導電性を有する金属材料、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、及び、これらの合金の一以上を用いることができる。
一方、これらの金属材料は、可視光に対して遮光性を有している。そこで、検出電極45は、図5及び図6に示すように、導線が多数の開口領域51を画成するメッシュパターン50にて配置されてなる導電体メッシュ46を含んでいる。とりわけ図2に示された例においては、各検出電極45が、細長い領域に形成された導電体メッシュ46から形成されている。導電体メッシュ46をなす導線の線幅は、1μm以上30μm以下とすることができる。また、導電体メッシュ46の開口率は、90%以上99%以下とすることができる。また、開口領域51のピッチは、200μm以上1000μm以下とすることができる。
アクティブエリアAa1の全域にメッシュ状導電体が設けられ、各電極40の検出電極45の輪郭に対応して、メッシュ状導電体をなす導線を断線させることにより、各電極40の複数の検出電極45の各々をなす導電体メッシュ46が形成され得る。すなわち、導電体メッシュ46は、アクティブエリアAa1の全域に広がるメッシュ状導電体を断線部にて断線していくことによって区画される複数のメッシュパターンの各々に対応している。各導電体メッシュ46は、多数の開口領域51を画成するメッシュパターン50を形成する。図5〜図7に示すように、このメッシュパターン50は、二つの分岐点52の間を延びて開口領域51を画成する多数の接続要素53から形成されている。すなわち、分岐点52は、三つ以上の接続要素53の一端が合流している点である。
ところで、図19に示すように、タッチパネルセンサ25と重ねて配置される画像表示機構12の表示領域A1には、画像を形成するための画素Pが規則的に配列されている。一般的には、画像表示機構12の設置状態における水平方向(図19における方向dx)及び水平方向に直交する方向dy(例えば鉛直方向)の両方に、一定のピッチで画素Pが配列されている。なお、図19に示された例のように、一般的に、各画素Pは、複数のサブ画素RP,GP,BPを含んでいる。画素配列を有する画像表示機構12に導電体メッシュ46を有したタッチパネルセンサ25が積層されると、導電体メッシュ46の開口領域51が規則的に配列されている場合、画素Pの規則的(周期的)パターンと導電体メッシュ46の開口領域51の配列パターンとに起因した縞状の模様、すなわちモアレが視認される可能性がある。
このため、導電体メッシュのパターンを不規則化することが、モアレの不可視化に有効であると考えられてきた。しかしながら、本件発明者らの研究によれば、単に導電体メッシュのパターンの形状及び配列ピッチを不規則化したとしても、常に、モアレを十分に目立たなくさせることはできなかった。また、導電体メッシュ46の開口領域51の配列の規則性を大きく崩すことによって、すなわち、開口領域51を不規則的に配列することによってモアレを目立たなくすることができたとしても、開口領域51の密度バラツキに起因した濃淡のむらが視認される可能性もある。そして、背景技術の節で説明したように、モアレ又は濃淡むらの不可視化対策が種々研究されてきたが、モアレ及び濃淡むらの双方を効果的に目立たなくさせるには至っていなかった。
そして、本件発明者は、検出電極45によって形成されるメッシュパターン50が、規則的なパターンの規則性を或る程度崩したパターンになっていれば、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせることができると考えた。本件発明者は、さらにこの点について検討を重ねた結果として、最終的に得られたタッチパネルセンサ25の検出電極45によって形成されるメッシュパターン50についてのフーリエ変換パワースペクトル画像が、所定の条件を満たす場合に、モアレを極めて効果的に目立たなくさせること、及び、濃淡むらを極めて効果的に目立たなくさせることの両方が同時に可能となることを知見した。
以下において、まず、規則的なパターンの規則性を或る程度崩したパターンとしてメッシュパターン50を形成された検出電極45の導電体メッシュについて説明する。そしてその後に、規則性を持ったパターンの規則性を消失させることによって形成されたメッシュパターン50が、モアレ及び濃淡むらの両方を効果的に不可視化するために満たすべき条件について、説明する。
図5には、第1検出電極45aをなす導電体メッシュ46の一例が示されており、図6には、第2検出電極45bをなす導電体メッシュ46の一例が示されている。これらの導電体メッシュ46のパターンは、共に、二つの交点62の間を延びて開口領域(開口部)61を画成する複数の線分63から形成された参照パターン60(図8及び図9参照)を基礎にして、決定されている。より具体的には、これらの導電体メッシュ46のメッシュパターン50は、開口領域61が規則的に配列されてなる、言い換えると、開口領域61が周期性を持って配列されてなる参照パターン60を基礎として、濃淡むらを引き起こさないように開口領域61の配置位置の均一性を維持しつつ、その一方でモアレを十分に不可視化できる程度に、開口領域61の形状を変化させて当該開口領域61の開口面積をばらつかせることにより、決定されている。
そして、図5及び図6に示された例において、第1検出電極45aをなす導電体メッシュ46及び第2検出電極45bをなす導電体メッシュ46は、同一パターンの参照パターン60を基礎として、そのパターンを決定されている。したがって、図5及び図6に示すように、参照パターン60の規則性が大きく崩されていない状態において、第1検出電極45aをなす導電体メッシュ46及び第2検出電極45bをなす導電体メッシュ46は、概ね同様のパターンとなっている。
図2に示された例において、第1検出電極45aをなす導電体メッシュ46及び第2検出電極45bをなす導電体メッシュ46は、大部分において、重なり合って配置される。そして、このように重なり合う部分において、第1検出電極45aをなす導電体メッシュ46及び第2検出電極45bをなす導電体メッシュ46は、それぞれに関する参照パターン60が、開口領域61の配列方向に、当該開口領域61の配列ピッチの半分の長さだけずれて配置されるようにして、互いに対して位置決めされている。結果として、図7に示すように、第1検出電極45aをなす導電体メッシュ46及び第2検出電極45bをなす導電体メッシュ46は、互いに重ね合わされた状態において、或る程度の規則性を残したパターンを形成している。
なお、モアレは、第1検出電極45aによって形成されるメッシュパターン及び第2検出電極45bによって形成されるメッシュパターンを重ねたメッシュパターン50と、他の部材の規則的なパターン(例えば、画像表示機構12の画素Pの配列パターン)との干渉によって生じるとともに、各電極40の検出電極45によって形成されるメッシュパターン50と、他の部材の規則的なパターンとの干渉によっても生じる。同様に、濃淡むらは、第1検出電極45aによって形成されるメッシュパターン及び第2検出電極45bによって形成されるメッシュパターンを重ねたメッシュパターン50の局所的な不均一性によっても生じるし、また、各電極40の検出電極45によって形成されるメッシュパターン50の局所的な不均一性によっても生じ得る。したがって、後述するフーリエ変換パワースペクトル画像に関連した条件は、第1検出電極45aによって形成されるメッシュパターン及び第2検出電極45bによって形成されるメッシュパターンを重ねたメッシュパターン50により満たされる場合に、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせる上で有効であるとともに、各電極40をなす検出電極45によって形成されるメッシュパターン50のいずれかが一以上により単独で満たされる場合にも、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせる上で有効である。
次に、以上に説明した導電体メッシュ46のパターンの決定方法の一具体例について説明する。以下に説明する方法では、二つの交点62の間を延びて開口領域61を画成する複数の線分63から形成された参照パターン60を決定する工程と、参照パターン60の交点62に基づいてメッシュパターン50の分岐点52の位置を決定する工程と、決定された分岐点52及び参照パターン60の線分63に基づき、メッシュパターン50の接続要素53の位置を決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。
まず、参照パターン60を決定する工程において、導電体メッシュ46の基礎となる規則的なパターン、すなわち、参照パターン60を決定する。ここで決定される参照パターン60は、二つの交点62の間を延びて開口領域61を画成する複数の線分63から形成されている。図8及び図9に示されたこの参照パターン60において、一定形状の開口領域61が交差する二以上の方向dr1,dr2に規則的に配列されている。なお、参照パターン60に複数種類の開口領域61が含まれ、各種の開口領域61が交差する二以上の方向に規則的に配列されるようにしてもよい。
図8及び図9に示された参照パターン60では、一定の四角形形状の開口領域61が、隙間なく敷き詰められたパターンとなっている。開口領域61は、互いに交差する第1基準方向dr1及び第2基準方向dr2にそれぞれ一定ピッチで配列されている。とりわけ、図示された参照パターン60は、各々が第1基準方向dr1に直線状に延び且つ第1基準方向dr1に直交する方向に一定ピッチpb1で配列された複数の第1直線66aからなる第1平行線群66と、各々が第2基準方向dr2に直線状に延び且つ第2基準方向dr2に直交する方向に前記一定ピッチpr1と同一の一定ピッチpr2で配列された第2の直線67aからなる第2平行線群67と、によって画成されている。結果として、参照パターン60に含まれる開口領域61は、すべて同一の四角形形状、とりわけ菱形形状に形成されている。
また、図9に示すように、図示された例において、第1検出電極45aが形成するメッシュパターンに関する参照パターンと、第2検出電極45bが形成するメッシュパターンに関する参照パターンとは同一のパターンとなっている。図9に示すように、各検出電極45a,45bのメッシュパターンに関する参照パターンは、それぞれの第1基準方向dr1が互いに平行となるように配置されている。また、各検出電極45a,45bのメッシュパターンに関する参照パターンは、それぞれの第2基準方向dr2が互いに平行となるように配置されている。各検出電極45a,45bのメッシュパターンに関する参照パターンは、それぞれの第1平行線群66の群が、第1基準方向dr1に直交する方向に、一定ピッチpr1の半分(pr1/2)だけ互いからずれて配置されている。加えて、各検出電極45a,45bのメッシュパターンに関する参照パターンは、それぞれの第2平行線群67が、第2基準方向dr2に直交する方向に、一定ピッチpr2の半分(pr2/2)だけ互いからずれて配置されている。この参照パターン60の決定によれば、参照パターン60に基づいて作製される二つの導電体メッシュ46が互いに重なり合って、開口している領域が或る程度の規則性を残しながらその一方で一定ではない形状を持つようになるメッシュパターン50を示すようになる。すなわち、導電体メッシュ46は、単独の状態だけでなく重ね合わせた状態においても、開口領域が或る程度均一に分散したパターンを呈するようになる。
ところで、一般に、画像表示機構12の画素配列とタッチパネルセンサ25の導電体メッシュ46との干渉によるモアレを不可視化する観点からは、画像表示機構12における画素の配列方向dx,dyに対し、タッチパネルセンサ25の開口領域51の配列方向を傾斜させることが好ましいとされている。一方、本件発明者らが実験を繰り返したところ、図19に示された正方格子配列された画素Pとのモアレを不可視化する上では、さらに、画素の対角線方向doに対しても、タッチパネルセンサ25の開口領域51の配列方向を傾斜させることが有効であった。これは、図19に示すように、画素Pの対角線上となる位置に、画素Pを画成する遮光部(例えばブラックマトリクス)13の幅太部13aが並び、一定間隔で並べられた遮光部13の幅太部13aと開口領域51とのモアレが生じ易くなるためと考えられる。
正方格子配列された一般的な画素Pは、平面視において正方形形状を有している。このような画素Pを用いた場合、対角線方向doは、画素配列方向dx,dyに対して45°傾斜する。そして、本件発明者が確認したところ、正方形形状の画素Pとのモアレを不可視化する上で、開口領域51の配列方向が、直交する画素配列方向dx,dyのうちの一方dxに対してなす角度が30°以上40°以下であることが好ましく、33°以上37°以下であることより好ましく、35°であることが最も好ましかった。言い換えると、正方形形状の画素Pとのモアレを不可視化する上で、開口領域51の配列方向が、直交する画素の配列方向dx,dyのうちの他方dyに対してなす角度が50°以上60°以下であることが好ましく、53°以上57°以下であることより好ましく、55°であることが最も好ましかった。
一方、ここで説明する導電体メッシュ46のパターン決定方法において、導電体メッシュ46の開口領域51は、概ね、参照パターン60の開口領域61の配列方向に従うようになる。そして、参照パターン60における開口領域61の配列方向は、第1基準方向dr1及び第2基準方向dr2(或いは、これらと直交する方向)となる。したがって、参照パターン60に含まれる開口領域61の向きを決める第1基準方向dr1及び第2基準方向dr2は、直交する画素Pの配列方向dx,dyのうちの一方dxに対して30°以上40°以下の角度をなすことが好ましく、33°以上37°以下の角度をなすことがより好ましく、図8及び図9に示すように35°の角度θr1x,θr2xをなすことが最も好ましい。したがって、第1基準方向dr1及び第2基準方向dr2が互いに対してなす角度θrxは、60°以上80°以下であることが好ましく、66°以上74°以下であることがより好ましく、図8及び図9に示すように70°であることが最も好ましい。また、参照パターン60に含まれる開口領域61の向きを決める第1基準方向dr1及び第2基準方向dr2は、直交する画素の配列方向のうちの他方dyに対して50°以上60°以下の角度をなすことが好ましく、53°以上57°以下の角度をなすことがより好ましく、図8及び図9に示すように55°の角度θr1y,θr2yをなすことが最も好ましい。
次に、参照パターン60の交点62に基づいて分岐点52の位置を決定する工程について説明する。この工程では、参照パターン60の一つの交点62から、一つの分岐点52の位置を決定する。具体的には、各分岐点52は、参照パターン60の対応する交点62上、或いは、当該対応する交点62上から所定長さ以下の長さだけずれた位置に、配置される。この際、各分岐点52の対応する交点62からのずれ量およびずれる方向を不規則的に決定することにより、最終的に得られる導電体メッシュ46の開口領域51の形状が一定とはならず、モアレを効果的に目立たなくさせることができる。なお、不規則的に選択されるずれ量が0となった場合に、分岐点52が対応する交点62上に位置するようにしてもよい。
なお、各分岐点52の対応する交点62からのずれ量は、接続要素53が他の接続要素に接触することを回避すべく、開口領域61の配列ピッチの半分未満となっていることが好ましい。一つの接続要素53が他の接続要素と重なってしまうと、当該部分が視認されてしまい濃淡むらの原因となってしまう可能性があるからである。具体的には、接続要素53が他の接続要素に接触することを回避すべく、各分岐点52の対応する交点62からのずれ量は、第1基準方向dr1に直交する方向における第1平行線群66の配列ピッチpr1の半分未満、且つ、第2基準方向dr2に直交する方向における第2平行線群67の配列ピッチpr2の半分未満とすることができる。
また、上述したように、図示された例では、各検出電極45a,45bのメッシュパターンに関する参照パターンは、それぞれの第1平行線群66が、第1基準方向dr1に直交する配列方向に、一定ピッチpr1の半分(p1/2)だけずれて配置されている。加えて、各検出電極45a,45bのメッシュパターンに関する参照パターンは、それぞれの第2平行線群67が、第2基準方向dr2に直交する配列方向に、一定ピッチpr2の半分(pr2/2)だけずれて配置されている。このような例においては、第1検出電極45aの導電体メッシュ46に関する接続要素48と、第2検出電極45bの導電体メッシュ46に関する接続要素58とが接触してしまうことを回避すべく、各分岐点52の対応する交点62からのずれ量は、開口領域61の配列ピッチの1/4未満となっていることが好ましい。第1検出電極45aのメッシュパターン50に関する接続要素48と、第2検出電極45bのメッシュパターン50に関する接続要素58とが接触してしまうと、当該部分が視認されてしまい濃淡むらの原因となってしまう可能性があるからである。具体的には、第1検出電極45aのメッシュパターン50に関する接続要素48と、第2検出電極45bのメッシュパターン50に関する接続要素58とが接触してしまうことを回避すべく、各分岐点52の対応する交点62からのずれ量は、第1基準方向dr1に直交する方向における第1平行線群66の配列ピッチpr1の1/4未満、且つ、第2基準方向dr2に直交する方向における第2平行線群67の配列ピッチpr2での1/4未満とすることができる。
さらに、各分岐点52について、対応する交点62からのずれ量およびずれる方向の両方をそれぞれ決定していくことに代えて、各分岐点52について、対応する交点62からの予め設定した二方向へのずれ量をそれぞれ決定していくようにしてもよい。一例として、画像表示機構12の画素Pの配列方向dx,dyへの対応する交点62からのずれ量δrx,δry(図8参照)を、分岐点52毎に決定していくようにしてもよい。この例において、濃淡むらの発生を抑制する観点から画素Pの一方の配列方向dxに沿った開口領域61の配列ピッチprxの一定割合以下(例えば15%以下)となり且つモアレの発生を防止する観点から画素Pの一方の配列方向dxに沿った開口領域61の配列ピッチprxの一定割合以上(例えば2%以上)となるようにずれ量δrxが決定されるようにし、且つ、濃淡むらの発生を抑制する観点から画素Pの他方の配列方向dyに沿った開口領域61の配列ピッチpryの一定割合以下(例えば1530%以下)となり且つモアレの発生を防止する観点から画素Pの一方の配列方向dyに沿った開口領域61の配列ピッチpryの一定割合以上(例えば2%以上)となるようにずれ量δryが決定されるようにすることで、対応する交点62からの分岐点52のずれ量に制約を課してもよい。
次に、接続要素53の位置を決定する工程について説明する。以上のようにして、導電体メッシュ46における分岐点52の位置が決定すると、次に、決定された分岐点52に基づき、接続要素53の位置を決定する。具体的には、参照パターン60の或る一つ線分63の両端に位置する二つの交点62にそれぞれ対応する二つの分岐点52の間を延びるように、導電体メッシュ46の一つの接続要素53の位置を決定する。二つの分岐点52の間における接続要素53の経路は、直線であってもよいし、曲線であってもよいし、折れ線であってもよいし、直線及び曲線の組み合わせであってもよい。また、接続要素53の線幅は、上述したように0.2μm以上2μm以下とすることができるし、或いは、この範囲外の太さとしてもよい。
このようにして、電極40の検出電極45をなす導電体メッシュ46のメッシュパターン50が設計される。メッシュパターン50の分岐点52の位置が、規則性を有した参照パターン60の交点62の位置に基づいて決定されているため、得られた導電体メッシュ46において開口領域51が或る程度均一に分散して、濃淡むらの発生を抑制することが可能となる。ただし、分岐点52の位置は対応する交点62の位置から不規則的に選択された所定範囲内の量だけずれている。したがって、得られた導電体メッシュ46において開口領域51の形状または開口面積の規則性または一定性が失われ、モアレによる不具合も回避することができる。
以上のようにしてメッシュパターン50を決定された導電体メッシュ46は、基材シート35上に形成された金属薄膜を、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングすることにより、基材シート35上に作製され得る。
上述したように、規則性を持ったパターンの規則性を或る程度消失させることによって形成されたメッシュパターン50は、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせることが可能となる。しかしながら、規則性を大きく崩し過ぎてしまうと、濃淡むらが視認されて問題となり、規則性を崩しきれていないとモアレが視認されて問題となる。そして、本件発明者は、検討を重ねた結果として、最終的に得られたタッチパネルセンサ25の検出電極45によって形成されるメッシュパターン50についてのフーリエ変換パワースペクトル画像が、所定の条件を満たす場合に、モアレを極めて効果的に目立たなくさせること及び濃淡むらを極めて効果的に目立たなくさせることの両方が同時に可能となることを知見した。すなわち、規則性をどの程度崩すかを定量的に評価し、これにより、モアレ及び濃淡むらの両者を効果的に目立たなくし得ることを見出した。
具体的に説明すると、メッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2と、メッシュパターン50に関連した規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2とが、次の条件(a)及び(b)を満たす場合、モアレ及び濃淡むらの両者を効果的に目立たなくすることができた。
1.02 ≦ σp1/σap1 ≦ 1.16 ・・・(a)
1.02 ≦ σp2/σap2 ≦ 1.16 ・・・(b)
ここで、メッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2は、メッシュパターン50のフーリエ変換パワースペクトル画像に基づき、メッシュパターン50の規則性の程度を示す指標として、メッシュパターン50の特定のパワースペクトル積算値についての標準偏差である。一方、規則パターン70は、メッシュパターン50のフーリエ変換パワースペクトル画像から、メッシュパターン50に類似する規則的なパターンとして特定される。そして、規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2は、メッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2と同様の条件にて、規則パターン70のフーリエ変換パワースペクトル画像に基づき特定される。
したがって、規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2に対するメッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2の比は、メッシュパターン50が、当該メッシュパターン50に類似する規則パターン70からどの程度規則性を消失したものであるかを示す指標となる。そして、この指標が所定の範囲となっている場合に、メッシュパターン50が、規則的なパターンから適切な程度に規則性を崩したパターンとなり、モアレ及び濃淡むらの双方に適切に対処できると考えられる。
以下、規則性を持ったパターンの規則性を消失させることによって形成されたメッシュパターン50が、モアレ及び濃淡むらの両方を効果的に不可視化するために満たすべき条件についてより詳細に説明する。
まず、メッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2の特定方法について、図10〜図15を参照しながら、説明する。なお、図10〜図15は、図8及び図9を参照して説明した上述の方法により決定された第1検出電極45aのメッシュパターン50にて導電体メッシュ46を実際に作製し、当該作製された第1検出電極45aの導電体メッシュ46についてのデータである。
まず、第1標準偏差σp1は、平面スキャナを用いて作成したメッシュパターン50のスキャンデータに、フーリエ変換および極座標変換を施すことによって得られたメッシュパターン50のパワースペクトルの各角度での積算値分布(図15参照)において、0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が最も大きくなる第1ピーク角度θp1〔°〕を中心とした60°の範囲内(θp1±30〔°〕)でのパワースペクトル積算値の標準偏差である。また、第2標準偏差σp2は、メッシュパターン50のパワースペクトル積算値分布において、0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が二番目に大きくなる第2ピーク角度θp2〔°〕を中心とした60°の範囲内(θp2±30〔°〕)でのパワースペクトル積算値の標準偏差である。
したがって、メッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2を特定するにあたり、最初に、導電体メッシュ46を平面スキャナでスキャンすることにより、メッシュパターン50に関するスキャンデータを二次元画像として作成する。この際、実際に流通しているタッチパネルセンサ25の開口領域51のピッチ等を考慮して、メッシュパターン50のスキャンデータを作成されるべき導電体メッシュ46の領域は、3cm×3cm以上の領域とすることが好ましい。また、メッシュパターン50をなす導線(接続要素53)の線幅が複数ピクセルで構成されるよう、解像度を調整することが好ましい。線幅が複数ピクセルで構成されるような解像度であれば、実物には存在しない断線箇所がスキャンデータに形成されてしまうことを効果的に防止することができる。図10には、メッシュパターン50のスキャンデータの一部が示されている。
メッシュパターン50のスキャンデータを画像処理することにより、メッシュパターン50のフーリエ変換パワースペクトル画像が作成される。この際、フーリエ変換パワースペクトル画像の作成精度を向上させるため、いくつかの画像上の処理が行われることが好ましい。
例えば、導電体メッシュ46をなす金属導線以外を示す低周波成分をスキャンデータから除去するため、スキャンデータに二値化処理を行うことが好ましい。除去されるべき低周波成分としては、必然的に生じてしまう照明むらを例示することができる。図11には、図10に示された画像データを二値化処理した画像データが示されている。
また、フーリエ変換パワースペクトル画像の作成精度を向上させる上で、フーリエ変換前に細線化処理を行っておくことも有効である。とりわけ上述したように、メッシュパターン50をなす導線(接続要素53)の線幅が複数ピクセルで構成されている場合には、細線化処理が有効となる。
図12には、二値化処理および細線化処理を行った後のスキャンデータが示されている。このスキャンデータは、実際に作製された第1検出電極45aの導電体メッシュ46の4155μm×4155μmについての画像データである。そして、図13には、図12に示されたスキャンデータにフーリエ変換を施すことによって得られたフーリエ変換パワースペクトル画像が、示されている。また、図14は、図13のフーリエ変換パワースペクトル画像を極座標変換して示している。なお、図12〜図14における座標系は、互いに同様に設定されており、図5〜図9に示された座標系とも同様に設定されている。また、図14における座標系の設定は、図13に示したとおりである。
図13及び図14の画像データから、各角度θ〔°〕での、メッシュパターン50のパワースペクトルの分布が特定され得る。次に、各角度θ〔°〕毎にパワースペクトルを積分した値としてのパワースペクトルの積算値を特定する。図15には、メッシュパターンのパワースペクトルの各角度での積算値分布が示されている。このパワースペクトル積算値分布において、0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が最も大きくなる角度を第1ピーク角度θp1〔°〕とし、0°以上180°未満の範囲内でパワースペクトル積算値が二番目に大きくなる角度を第2ピーク角度θp2〔°〕とする。ただし、パワースペクトル積算値分布において、積算値が最も大きくなる角度と二番面に大きくなる角度の区別が付かない場合には、いずれか一方を第1ピーク角度θp1とし、他方を第2ピーク角度θp2とすればよい。
なお、第1ピーク角度θp1及び第2ピーク角度θp2、さらには後に後述の標準偏差σp1,σp2を高精度に特定するため、いくつかの処理が積算値分布に対して行われてもよい。例えば、パワースペクトル積算値分布に対して、周囲±10°の範囲でぼかし処理を行うようにし、特定の高周波成分を除去するようにしてもよい。このような処理によれば、パワースペクトルの積算値分布において極大値がより明確に現れるようになる。ぼかし処理には、ガウシアンフィルタを用いることができる。図15に示されたパワースペクトル積算値分布は、ガウシアンフィルタを用いて±10°の角度範囲内にてぼかし処理を行った後の積算値分布である。
図15の積算値分布において、第1ピーク角度θp1は125°となっており、第2ピーク角度θp2は55°となっている。メッシュパターン50のパワースペクトルの積算値分布では、積算値のピークが現れる角度方向に、メッシュパターン50をなす金属導線が配列されていることを意味する。したがって、ピーク角度θp1,θp2が55°および125°に出現するから、対象となるメッシュパターン50が、図5〜図9に示された導電体メッシュ46と同様のパターンとなっていること、並びに、図8及び図9に示された参照パターン60に類似したパターンとなっていることが予測される。
なお、図19に示された画像表示機構12との間でのモアレを目立たなくさせる観点から、参照パターン60の第1基準方向dr1及び第2基準方向dr2が互いに対してなす角度θrxが、60°以上80°以下であることが好ましく、66°以上74°以下であることがより好ましく、70°であることが最も好ましいことを説明した。この点からすれば、メッシュパターン50のパワースペクトルの積算値分布において、パワースペクトル積算値の極大値が0°以上180°未満の範囲内に二つだけ存在するという前提において、第1ピーク角度θp1及び第2ピーク角度θp2が、次の条件を満たすことが好ましく、
60°≦|θp1-θp2|≦80°、又は、100°≦|θp1-θp2|≦120°
次の条件を満たすことがより好ましく、
66°≦|θp1-θp2|≦74°、又は、106°≦|θp1-θp2|≦114°
さらに、次の条件を満たすことが最も好ましい。
|θp1−θp2|=70°、又は、|θp1−θp2|=110°
上述したように、第1標準偏差σp1は、第1ピーク角度θp1を中心とした60°の範囲内(θp1±30〔°〕)での、メッシュパターン50のパワースペクトル積算値の標準偏差の値である。したがって、図15に示された例において、第1標準偏差σp1は、95°以上155°以下の範囲内におけるパワースペクトル積算値の標準偏差の値となる。一方、第2標準偏差σp2は、第2ピーク角度θp2を中心とした60°の範囲内(θp2±30〔°〕)での、メッシュパターン50のパワースペクトル積算値の標準偏差の値である。したがって、図15に示された例において、第2標準偏差σp2は、25°以上85°以下の範囲内におけるパワースペクトル積算値の標準偏差の値となる。第1標準偏差σp1及び第2標準偏差σp2が小さければ、対象となるメッシュパターン50をなす金属導線が、第1ピーク角度θp1又は第2ピーク角度θp2に対応する方向に規則的に配列されていること、すなわち対象となるメッシュパターン50の規則性が強いことを意味する。反対に、第1標準偏差σp1及び第2標準偏差σp2が大きければ、対象となるメッシュパターン50をなす金属導線が、第1ピーク角度θp1又は第2ピーク角度θp2に対応する方向への規則配列性が弱いこと、すなわち対象となるメッシュパターン50の規則性が弱いことを意味する。
次に、規則パターン70の特定方法について説明する。上述したように、規則パターン70は、メッシュパターン50のフーリエ変換パワースペクトル画像から、メッシュパターン50に類似する規則的なパターンとして特定される。例えば、図8及び図9を参照して説明した上述の方法でメッシュパターン50が決定されている場合、規則パターン70の特定は、メッシュパターン50を決定する上での基準となった規則的な参照パターン60を推定することになる。
規則パターン70は、メッシュパターン50のパワースペクトルの積算値分布における第1ピーク角度θp1及び第2ピーク角度θp2と、第1ピーク角度θp1におけるメッシュパターン50のパワースペクトルの空間周波数に対する分布において基本周波数よりも高周波数側に位置する一つ目のパワースペクトルのピーク(極大値)を形成する第1空間周波数と、第2ピーク角度θp2におけるメッシュパターン50のパワースペクトルの空間周波数に対する分布において基本周波数よりも高周波数側に位置する一つ目のピークを形成する第2空間周波数と、に基づいて決定される。より具体的には、規則パターン70は、メッシュパターン50のスキャンデータから当該メッシュパターン50のフーリエ変換パワースペクトル画像を特定する際と同様に座標系を設定し、極座標における第1ピーク角度θp1〔°〕となる方向に、第1空間周波数に対応する長さとなる一定ピッチで配列された第1直線群76と、極座標における第2ピーク角度θp2〔°〕となる方向に、第2空間周波数に対応する長さとなる一定ピッチで配列された第2直線群77と、によって形成される。
図16は、図10〜図15で対象としたメッシュパターン50に関し、極座標において55°となる方向での、空間周波数に対するパワースペクトルの分布を示している。つまり、図16は、第2ピーク角度θp2におけるメッシュパターン50のパワースペクトルの各空間周波数での分布を示している。上述したように、図示された例において、フーリエ変換パワースペクトル画像を取得した元の導電体メッシュ46の領域は、4155μm×4155μmの領域である。そして、基本周波数に対応する長さ、すなわち基本周波数(1〔cycle〕/4.155〔mm〕=0.24〔cycle/mm〕)での波長は4155μmとなる。一方、図16のパワースペクトル分布において、基本周波数よりも高周波数側に位置する一つ目のパワースペクトルピークが現れる第2空間周波数は、1.9976〔cycle/mm〕である。したがって、第2空間周波数での波長は約500.6μm=1000μm/1.9976周期となる。図17に示すように、第2直線群77の配列方向daa2は、極座標における基準方向(0°方向)となっていたx軸方向に対し、第2ピーク角度θp2である55°だけ反時計回り方向に傾斜した方向となる。そして、第2直線群77をなす第2直線77aは、その配列方向daa2に、第2空間周波数での波長(第2空間周波数に対応する長さ)となる500.6μmのピッチPa2で配列される。
なお、図17に示された規則パターン70では、第2直線群77と同様にして特定された第1直線群76も示されている。すなわち、第1直線群76の配列方向daa1は、極座標における基準方向(0°方向)となっていたx軸方向に対し、第1ピーク角度θp1である125°だけ反時計回り方向に傾斜した方向となっている。そして、第1直線群76をなす第1直線76aは、その配列方向daa1に、第1空間周波数に対応する長さと同一のピッチPa1で配列される。
次に、特定された規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2の特定方法について説明する。規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2は、メッシュパターン50のスキャンデータから標準偏差σp1,σp2と概ね同様にして特定することができる。
まず、規則パターン70を画像データとして作製するが、この際、メッシュパターン50のスキャンデータと同様に、3cm×3cm以上の領域のデータとして作製されることが好ましい。また、規則パターン70をなす第1直線群76の第1直線76a及び第2直線群77の第2直線77aは、細線化されていることが好ましい。
規則パターン70の画像データにフーリエ変換および極座標変換を施すことによって、規則パターン70のフーリエ変換パワースペクトル画像を取得する。規則パターン70に関する第1の標準偏差σap1は、規則パターン70のパワースペクトルの各角度での積算値分布において、前記第1ピーク角度θp1〔°〕(図15に示された例においては125°)を中心とした60°の範囲内(θp1±30〔°〕)でのパワースペクトル積算値の標準偏差の値として特定される。また、規則パターン70に関する第2の標準偏差σap2は、規則パターン70のパワースペクトルの各角度での積算値分布において、前記第2ピーク角度θp2〔°〕(図15に示された例においては55°)を中心とした60°の範囲内(θp1±30〔°〕)でのパワースペクトル積算値の標準偏差の値として特定される。
なお、規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2を高精度に特定するため、いくつかの処理が行われてもよい。例えば、パワースペクトル積算値分布に対して、周囲±10°の範囲でぼかし処理を行うようにし、特定の高周波成分を除去するようにしてもよい。このような処理によれば、パワースペクトルの積算値分布において極大値がより明確に現れるようになる。ぼかし処理には、ガウシアンフィルタを用いることができる。
以上のようにして特定されたメッシュパターン50に関する標準偏差σp1,σp2と、メッシュパターン50に関連した規則パターン70に関する標準偏差σap1,σap2とが、次の条件(a)及び(b)を満たす場合、上述したように、モアレ及び濃淡むらの両者を効果的に目立たなくすることができる。
1.02 ≦ σp1/σap1 ≦ 1.16 ・・・(a)
1.02 ≦ σp2/σap2 ≦ 1.16 ・・・(b)
なお、既に説明したように、モアレは、第1検出電極45aによって形成されるメッシュパターン(例えば、図5のメッシュパターン)及び第2検出電極45bによって形成されるメッシュパターン(例えば、図6のメッシュパターン)を重ねたメッシュパターン50(例えば、図7のメッシュパターン)と、他の部材の規則的なパターン(例えば、画像表示機構12の画素Pの配列パターン)との干渉によって生じるとともに、各電極40a,40bの検出電極45a,45bによって形成されるメッシュパターン50(例えば、図5のメッシュパターン又は図6のメッシュパターン)と、他の部材の規則的なパターンとの干渉によっても生じる。同様に、濃淡むらは、第1検出電極45aによって形成されるメッシュパターン及び第2検出電極45bによって形成されるメッシュパターンを重ねたメッシュパターン50の局所的な不均一性によっても生じるし、また、各電極40a,40bの検出電極45a,45bによって形成されるメッシュパターン50の局所的な不均一性によっても生じ得る。そして、メッシュパターンのフーリエ変換パワースペクトル画像に関連した条件(a)及び(b)は、第1検出電極45aによって形成されるメッシュパターン及び第2検出電極45bによって形成されるメッシュパターンを重ねたメッシュパターン50により満たされる場合に、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせる上で有効であるとともに、各電極40a,40bをなす検出電極45a,45bによって形成されるメッシュパターン50のいずれか一以上により単独で満たされる場合にも、モアレ及び濃淡むらの両方を目立たなくさせる上で有効である。
ここで、本件発明者が行った実験の一例について説明する。まず、サンプル1〜7に係る導電体メッシュを作製した。
サンプル1の導電体メッシュは、図7に示された参照パターン60と同一のメッシュパターンとした。すなわち、x軸方向(基準方向)に対して145°傾斜した方向に延びる第1の平行線群と、x軸方向(基準方向)に対して35°傾斜した方向に延びる第2の平行線群と、からなるパターンとした。第1の平行線群に含まれる直線は、その長手方向に直交する方向に500μmのピッチで配列され、第2の平行線群に含まれる直線は、その長手方向に直交する方向に500μmのピッチで配列されるようにした。したがって、サンプル1の導電体メッシュのメッシュパターンは、一定の菱形形状の開口領域が規則的に配列されてなるパターンとなっている。
一方、サンプル2〜7の導電体メッシュのメッシュパターンは、上述した参照パターンの規則性を崩すことにより作製した。参照パターンは、サンプル1の導電体メッシュのメッシュパターンとした。各サンプルのメッシュパターンの分岐点は、参照パターンの対応する交点をx軸方向およびy軸方向のそれぞれ独立したずれ量δrx,δry(図8参照)だけずらすことにより決定していった。x軸方向へのずれ量δrxは、開口領域の一方の対角線の長さに相当する開口領域のx軸方向への配列ピッチprxに基づいた制限を課して乱数表に従ってランダムに決定し、y軸方向へのずれ量δryは、開口領域の他方の対角線の長さに相当する開口領域のy軸方向への配列ピッチpryに基づいた制限を課して乱数表に従ってランダムに決定した。
具体的には、サンプル2のメッシュパターンでは、「0≦δrx≦0.05×prx」及び「0≦δry≦0.05×pry」とした。サンプル3のメッシュパターンでは、「0≦δrx≦0.1×prx」及び「0≦δry≦0.1×pry」とした。サンプル4のメッシュパターンでは、「0≦δrx≦0.2×prx」及び「0≦δry≦0.2×pry」とした。サンプル5のメッシュパターンでは、「0≦δrx≦0.3×prx」及び「0≦δry≦0.3×pry」とした。サンプル6のメッシュパターンでは、「0≦δrx≦0.4×prx」及び「0≦δry≦0.4×pry」とした。サンプル7のメッシュパターンでは、「0≦δrx≦0.5×prx」及び「0≦δry≦0.5×pry」とした。
次に、各サンプルのメッシュパターンの接続要素は、参照パターンの一つの線分の両端に位置する二つの交点に対応する二つの分岐点の間を直線状に延びるようにした。そして、以上のようにして決定したメッシュパターンにて、サンプル2〜7に係る導電体メッシュを作製した。
作製されたサンプル1〜7に係る導電体メッシュから、上述したようにして、メッシュパターンに関する標準偏差σp1,σp2と、各メッシュパターンに関連した規則パターンに関する標準偏差σap1,σap2とを求め、これらの比(σp1/σap1)及び比(σp2/σap2)を算出した。これらの比の値を、次の条件(a)及び(b)を満たすか否かとともに、表1に示す。
1.02 ≦ σp1/σap1 ≦ 1.16 ・・・(a)
1.02 ≦ σp2/σap2 ≦ 1.16 ・・・(b)
各サンプルに係る導電体メッシュを、市販されている液晶表示装置の表示面上に配置して、モアレ及び濃淡むらの有無を確認した。液晶表示装置は、図19に示された画素配列と同様に、画素がx軸方向およびy軸方向の両方に同一の一定のピッチで配列されていた。モアレ及び濃淡むらの有無の確認は、液晶表示装置が全面白色を表示した状態で行った。確認結果を表1に示す。表1の評価の欄は、次の基準で判断した結果を示している。
「×:モアレ又は濃淡むらが通常の使用において、問題となる程度に確認された。」
「○:モアレ又は濃淡むらが通常の使用において、問題となる程度に確認されなかった。
」
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、適宜図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
上述した実施の形態の図2に示されたタッチパネルセンサ25では、各検出電極45がアクティブエリアAa1内に配置された細長い矩形状の導電体メッシュ46として形成されているが、これに限られない。検出電極45の構成は、種々の変更が可能である。図20に示された例では、各第1検出電極45aが、その長手方向に間隔を明けて配列された多数の導電体メッシュ46と、隣り合う二つの導電体メッシュ46の間を接続する接続部48と、を有している。各検出電極45は、導電体メッシュ46および接続部48により、アクティブエリアAa1内を直線状に延びている。各検出電極45が配置されている領域の幅は、導電体メッシュ46が設けられている部分において太くなっている。第1電極40aに含まれる各第1検出電極45aは、第2電極40bに含まれる多数の第2検出電極45bと交差している。そして、図20に示すように、第1電極40aの第1検出電極45aは、その接続部43において、第2電極40bの第2検出電極45bの接続部48と交差している。したがって、第1検出電極45aの導電体メッシュ46は、隣り合う二つの第2検出電極45bの間に配置され、第2検出電極45bの導電体メッシュ46は、隣り合う二つの第1検出電極45aの間に配置されている。
なお、図20に示された変形例においては、第1電極40aの導電体メッシュ46と、第2電極40bの導電体メッシュ46とが、タッチパネルセンサ25の法線方向に重なっていない。したがって、各電極40a,40bをなす導電体メッシュ46のメッシュパターン50が単独で上述の条件(a)及び(b)を満たすことで、モアレ及び濃淡むらの両方を効果的に目立たなくさせることが可能となる。
また、上述した実施の形態において、参照パターン60の一例を示したが、上述した例に限られず、種々のパターンを採用することができる。例えば、参照パターン60がハニカムパターンとして形成されていてもよい。また、上述したように、参照パターン60が、二種類以上の開口領域61を含み、各種の開口領域61が規則的に配列されているようにしてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。