JP2015202588A - 印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体及びその作製方法 - Google Patents

印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体及びその作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の印刷模様と基材を変形することで形成した凹凸模様を融合した形成体に比べ、より偽造防止効果と意匠性が向上した形成体を提供することを目的とする。
【解決手段】 光透過性を有する基材の少なくとも一部の表裏同じ位置に、模様形成領域を有し、基材の一方の面の模様形成領域に凹凸形状によるすき入れ模様が形成され、他方の面の模様形成領域に、すき入れ模様と同一形状の白抜き部を有した印刷模様が、水性エマルションを主成分としたインキにより、基材を挟んで表裏で一致するように配置され、模様形成領域を透過光下で観察すると、すき入れ模様が視認され、模様形成領域における印刷模様が形成された面を反射光領域下で観察すると、透過光下ですき入れ模様が視認された位置と同じ位置に、すき入れ模様と同一形状の印刷模様の白抜き部が視認されることを特徴とする、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体。
【選択図】 図7

Description

本発明は、同一形状のすき入れ模様と印刷模様を表裏に同期させて形成することで、反射光下で視認可能となる印刷模様と、透過光下により視認可能となるすき入れ模様が、基材上の同じ位置に同一形状で視認可能となる、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体とその作製方法に関するものである。
以前から、カラー複写機の高画質化に伴い、紙幣、旅券、有価証券等の貴重印刷物の偽造品が出回り、深刻な問題となっている。そのことから、貴重印刷物には、複写することで色調が変化するOVD、パール印刷等や、複写では形状が再現できない凹版画線、エンボス等が多く付与されている。しかしながら、近年、パールインキ、金属インキ、盛り上がりを有する画線等を、インクジェットプリンタを用いて出力可能となってきている。よって、複写防止技術を単体で用いるのではなく、複写機では再現が困難な他の技術と融合した偽造防止技術が求められている。
例えば、特許文献1においては、用紙である基材の一部を、すき入れ、エンボス等により、凹凸形状に変形させることで形成した模様と、パール印刷を融合させた印刷物について開示されている。図18は、特許文献1の印刷物の断面図である。基材(1)に、すき入れ、エンボス等により凹凸形状に形成した第一の模様(13)の上に、パールインキを用いてグラビア印刷を行うことで、第一の模様(13)の凸部(2b)のみに、パール印刷模様(3)が形成される。作製した第一の模様(13)は、凹凸の手触り感に加え、観察角度を傾けて観察した際には、凸部(2b)のみがパール効果を有して視認される。
特許第3504809号公報
特許文献1の印刷物においては、複写機では再現が困難なすき入れ、エンボス等基材を変形させることで形成した凹凸模様と、パール印刷を組み合わせることで、パールインキを単体で用いた場合と比べて偽造防止効果が向上した。しかしながら、図18に示す構成では、第一の模様(13)を形成した面と同じ面に、軽い印圧でベタ印刷を行うだけで、簡易に同様の製品が作製可能である。
また、図18に示す第一の模様(13)の凹部と凸部の高さの差は、数十μmである。よって、印圧の調整が非常にシビアであり、印圧が少しでも高くなると凹部にも印刷されることから、実際の製造は、非常に難しい。
さらに、図18に示す構成では、第一の模様(13)上に、パール印刷模様(3)を形成している。よって、第一の模様(13)を形成する凸部にはインキが転移されるが、凹部にはインキが転移しない。よって、基材(1)におけるパール印刷模様(3)を形成した面と同じ面に他の印刷模様、例えば、オフセット印刷により形成した文字や画線等を積層して形成することは、不可能である。よって、より偽造防止効果及び意匠性が向上した、印刷模様と、すき入れ、エンボス等基材を変形させることで形成した凹凸模様が融合した、印刷模様が求められている。
そこで、本発明の目的は、従来の印刷模様と基材を変形することで形成した凹凸模様を融合した形成体に比べ、より偽造防止効果と意匠性が向上した形成体を提供することにある。
前述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、光透過性を有する基材の少なくとも一部の表裏同じ位置に、模様形成領域を有し、基材の一方の面における模様形成領域に、凹凸形状によるすき入れ模様が形成され、基材の他方の面における模様形成領域に、すき入れ模様と同一形状の白抜き部を有した印刷模様が、水性エマルションを主成分としたインキにより形成され、白抜き部とすき入れ模様は、基材を挟んで表裏で一致するように配置され、
模様形成領域を透過光下で観察すると、すき入れ模様が視認され、模様形成領域における印刷模様が形成された面を反射光領域下で観察すると、透過光下においてすき入れ模様が視認された位置と同じ位置に、すき入れ模様と同一形状の印刷模様の白抜き部が視認されることを特徴とする、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体である。
また、請求項2記載の発明は、基材の少なくとも一部の表裏同じ位置に、模様形成領域を有し、基材の一方の面における模様形成領域にすき入れ模様が形成され、基材の他方の面における模様形成領域に、すき入れ模様と同一形状の白抜き部を有した印刷模様が、すき入れ模様と白抜き部が、基材を挟んで表裏一致するように配置された、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法であって、抄紙機上のプレス部の下流に設けたプレスマーク装置により、湿紙である基材の一方の面の模様形成領域に対して、すき入れ模様を形成するすき入れ付与工程と、すき入れ模様を形成した面とは異なる、基材の他方の面の模様形成領域全体に、水性エマルションを主成分としたインキを用いて、フレキソ印刷を行い、すき入れ模様を白抜き部とした印刷模様を形成する印刷工程とを有することを特徴とする、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法である。
また、請求項3記載の発明は、印刷工程は、すき入れ付与工程後に、抄紙機上の湿紙である基材に対して印刷する、又は、すき入れ付与工程後に、乾燥した基材に対して印刷することを特徴とする請求項2記載の印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法である。
さらに、請求項4記載の発明は、湿紙である基材に対して印刷をする場合、印刷工程は、印刷前の湿紙である基材の含水率を、含水率57〜63%にする含水率調整工程を有することを特徴とする請求項3記載の印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法である。
本発明の印刷物は、基材の一方の面に形成されたすき入れ模様と、他方の面に形成された、すき入れ模様と同一形状の白抜き部を有する印刷模様が、基材を挟んで白抜き部とすき入れ模様が表裏で一致するように配置されている。それにより、同様の印刷物を模倣しようとした場合、互いに異なる面に形成された、すき入れ模様と印刷模様を同じ位置に配置することは、極めて高い刷り合わせ精度が要求されることで、従来よりも、偽造防止効果を向上させることが、可能となる。
また、従来は、凹凸模様を形成する凸部にしかインキが転移せず、印刷模様を形成した面には、他の印刷模様を形成することは不可能であったが、本発明の印刷物は、凹凸模様であるすき入れ模様と印刷模様は、基材の表裏異なる面に形成されることで、印刷模様を形成した平らな面に、他の印刷模様を形成することが可能となり、従来よりも、意匠性を向上させることが、可能となる
貴重印刷物(S)の平面図。 図1に示した表裏一体型形成体(P)の詳細を示す図。 表裏一体型形成体(P)の視認状態を示す模式図。 すき入れ模様(2)の平面図及び断面図。 黒すき部(2b)を有するすき入れ模様(2)の平面図及び断面図。 白すき部(2a)の他の断面形状を説明する図。 印刷模様(3)の平面図及び断面図。 他の印刷模様(Q)を有する印刷模様(3)の平面図及び断面図。 印刷模様(3)の他の平面形状を説明する図。 表裏一体型形成体(P)の視認状態を示す模式図。 有色インキから成る印刷模様(3)の視認状態を示す模式図。 表裏一体型形成体(P)の作製方法を示すフローチャート。 プレスマーク装置(M1)の概略図。 すき入れ模様(2)の断面図。 乾紙である基材(1)に対する印刷工程(S2)を示す模式図。 湿紙である基材(1)に対する印刷工程(S2)を示す模式図。 印刷装置(M2)の概略図。 特許文献1の印刷物を示す断面図。
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他色々な形態が実施可能である。
図1は、紙幣、旅券、有価証券等の貴重印刷物(S)の平面図である。貴重印刷物(S)は、紙である基材(1)上の少なくとも一部の模様形成領域(Z)に、表裏一体型形成体(P)を備えている。
図2(a)は、図1に示した表裏一体型形成体(P)の拡大図であり、図2(b)は、表裏一体型形成体(P)の展開図である。図2(b)に示すように、基材(1)の一方の面、例えば表面における模様形成領域(Z)に、すき入れにより形成されたすき入れ模様(2)が形成され、基材(1)の他方の面、例えば裏面における模様形成領域(Z)に、すき入れ模様(2)を白抜きとしたパール印刷により形成された印刷模様(3)が形成されている。
すき入れ模様(2)と、印刷模様(3)におけるすき入れ模様(2)と同形状の白抜きは、基材(1)を挟んで表裏で一致するように同じ位置に配置されている。模様形成領域(Z)における、印刷模様(3)が形成された側を、図3(a)に示すように、拡散光領域下で観察した場合、すき入れ模様(2)及び印刷模様(3)を、いずれも視認することができないが、透過光下で観察した場合、図3(b)に示すように、すき入れ模様(2)が透過模様として視認される。
また、模様形成領域(Z)における、印刷模様(3)が形成された側を、正反射光領域下で観察した場合には、図3(c)に示すように、すき入れ模様(2)が視認された位置と同じ位置に、印刷模様(3)が、パール効果を有した模様として視認される。
以下、表裏一体型形成体(P)を構成する、すき入れ模様(2)及び印刷模様(3)の構成について、詳細に説明する。
まず、すき入れ模様(2)の構成について説明する。図4(a)は、すき入れ模様(2)の平面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A’断面図である。すき入れ模様(2)は、透過光により視認可能となる模様である。なお、本発明におけるすき入れ模様とは、基材(1)を構成する繊維(セルロース)の粗密により形成された凹凸形状のことであり、一般的には白すき模様とも呼ばれ、基材(1)を透かして見たとき、文字、図形等のパターンが明るく視認される模様のことである。
すき入れ模様(2)は、光透過性を有する基材(1)の一方の面(F)における模様形成領域(Z)に、形成される。
すき入れ模様(2)を形成する基材(1)は、すき入れと印刷を施すことが可能であり、かつ、すき入れ模様(2)を透過光下において視認可能とするために、光を透過する特性を有するものを、適宜用いる必要がある。
図4(b)の断面図に示すように、すき入れ模様(2)は、少なくとも複数の白すき部(2a)から成る。なお、本発明においては、基材(1)上のすき入れ模様(2)が形成されていない個所は、無地部(2c)と言う。白すき部(2a)は、透過光下において、無地部(2c)と比べて、明るく(白く)視認される。前述の図4(a)においては、四つの輪からなる個所が白すき部(2a)に相当する。
白すき部(2a)は、抄紙工程において、湿紙である基材(1)の厚み(h)を圧縮し、薄くすることで形成される。基材(1)を圧縮することで、繊維間の空隙がなくなり、無地部(2c)に比べ、繊維密度が高くなる。よって、透過光下で観察した際には、空隙間において透過光が散乱することなく白すき部(2a)を透過することから、無地部(2c)と比べ、明るく(白く)視認される。
図4(b)において、白すき部(2a)の深さ(h1)は一定だが、これに限らず、複数の白すき部(2a)において、それぞれ異なる深さとしても良い。深さを変えた際には、白すき部(2a)同士で互いに透過率が異なる。例えば、白すき部(2a)の深さ(h1)が深い場合、透過率が大きくなり、より無地部(2c)と比べて明るく視認される。また、白すき部(2a)の深さ(h1)が浅い場合、透過率が小さくなり、無地部(2c)よりは明るく視認されるが、他の深さ(h1)が深い白すき部(2a)と比べて暗く視認される。よって、白すき部(2a)の深さ(h1)を変えることで、すき入れ模様(2)に階調を付与することが可能となる。
なお、白すき部(2a)の深さ(h1)は、透過光下で観察した際に、すき入れ模様(2)を透過模様として視認可能となるように、用いる基材(1)の透過特性に合わせて適宜調整する。
図4において、すき入れ模様(2)は、白すき部(2a)のみで構成されているが、図5に示すように、基材(1)の厚みを変えることで、無地部(2c)よりも透過率が小さい、黒すき部(2b)をさらに有していても良い。
図4(b)において、白すき部(2a)の断面形状は、四角形状としているが、これに限らず、各種形状とすることが可能である。図6は、すき入れ模様(2)を形成する白すき部(2a)の他の断面形状を説明する図である。図6(a)から図6(e)は、いずれも前述した図4(b)及び図5の断面図と同様に基材(2)のA−A’断面図である。
図6(a)に示すように、白すき部(2a)は、断面形状を三角形状や、台形形状とすることも可能である。また、一種類とするのではなく、異なる断面形状を有する白すき部(2a)を複数種類組み合わせることも可能である。さらには、図6(b)及び図6(c)に示すように、非対称の断面形状とすることも可能である。
次に、すき入れ模様(2)と同期して配置される、印刷模様(3)について説明する。図7(a)は、印刷模様(3)の平面図である。なお、図7においては、構成を詳細に説明するために、前述したすき入れ模様(2)も、図示されている。
印刷模様(3)は、観察角度の変化により色調が変化して視認可能となる模様である。図7(b)は、図7(a)におけるA−A’断面図である。図7(b)に示すように、印刷模様(3)は、有色インキ又はパールインキを用いて、複数の網点、複数の画線又はベタ印刷により形成された領域であり、すき入れ模様(2)を形成した、基材(1)の一方の面(F)とは異なる他方の面(B)における模様形成領域(Z)内に形成されている。なお、前述のとおり、模様形成領域(Z)は、基材(1)の表裏同じ位置に配置されている。
印刷模様(3)は、一部に白抜き部(3a)を有している。白抜き部(3a)とは、インキ(顔料)が転移していない領域のことであり、すき入れ模様(2)と同形状で基材(1)が露出されている部分のことである。なお、本発明においては、白抜き部(3a)に全くインキが転移していない場合に限らず、印刷模様(3)内において、無地部(2c)と比べ、インキの転移量が少なければ、白抜き部(3a)に含まれることとする。
白抜き部(3a)とすき入れ模様(2)の白すき部(2a)は同一形状であり、基材(1)を挟んで表裏で一致するように配置されている。例えば、すき入れ模様(2)は、四つの輪からなる形状であったが、白抜き部(3a)においても、同様に同一形状の四つの輪から成る模様であり、基材(1)を挟んで、四つの輪から成る印刷模様とすき入れ模様(2)が、表裏で一致するように配置されている。
本発明においては、模様形成領域(Z)内の一方の面(F)に形成されたすき入れ模様(2)の白すき部(2a)と、他方の面(B)に形成された、白すき部(2a)と同一形状の印刷模様(3)の白抜き部(3a)が、基材(1)を挟んで表裏で一致するように配置されていることを、同期して配置されていると言う。
印刷模様(3)における白抜き部(3a)を、すき入れ模様(2)と同一形状の模様とし、さらに、基材(1)を挟んで同期して形成されることで、本発明の表裏一体型形成体(P)は、透過光下においては、すき入れ模様(2)が視認され、正反射光領域下において、すき入れ模様(2)が形成された面と異なる面を観察すると、すき入れ模様(2)が視認された位置と同じ位置に、すき入れ模様と同一形状の印刷模様(3)が視認される。
よって、表裏一体型形成体(P)と同様の印刷物を模倣しようとした場合、互いに異なる面に形成された、すき入れ模様(2)と、すき入れ模様(2)と同一形状の印刷模様(3)の白抜き部(3a)を同期させて同じ位置に形成することは、極めて高い刷り合わせ精度が要求されることから、意匠性だけではなく、偽造防止効果も併せて向上させることが、可能となる。
特許文献1の、すき入れとパール印刷を融合させた印刷模様については、すき入れとパール印刷を同一面に形成することを必須とし、すき入れ又はエンボスにより施された凹凸模様の凸部(2b)のみにグラビア印刷でパールインキが付与されていた。よって、凹凸模様であるすき入れ模様(2)とパールインキを印刷した面には、他の印刷模様、例えば、オフセット印刷により形成した文字や画線等を積層して印刷することは困難であった。
しかしながら、本発明の表裏一体型形成体(P)は、凹凸形状を有するすき入れ模様(2)と印刷模様(3)を、基材(1)の表裏異なる面に形成されている。よって、図8に示すように、印刷模様(3)を形成した面に、他の印刷模様(Q)を形成することが可能となり、従来よりも、意匠性を向上させることが、可能となる。
なお、印刷模様(3)は、基材(1)を挟んですき入れ模様(2)と少なくとも一部が同じ位置に形成されていれば良く、図9(a)に示すように、すき入れ模様(2)の一部を覆う大きさで形成することも可能である。
また、印刷模様(3)は、ベタ印刷に限らず、図9(b)に示す複数の文字や、図9(c)に示す複数の画線、さらには、図示しないが顔画像、記号等の任意の形状とすることが可能である。なお、観察角度の変化により視認した際に、白抜き部(3a)の形状を、白抜き部(3a)の周囲である印刷が施された領域から目立たせて視認させるためには、全体の濃度が一様な印刷模様とすることが、好ましい。全体の濃度が一様でない場合には、図9(b)に示すように、白抜き部(3a)の輪郭が若干不鮮明にみえることから、適宜印刷模様(3)の濃度を調整する必要がある。
印刷模様(3)を形成するインキは、水性エマルションを主成分としたインキを各種用いることが可能である。
水性エマルションとは、一般には水に不溶な成分が水中に微小な液滴として分散していることをいい、例えば、マヨネーズ、木工用ボンド等がある。ここでは、乾燥後に塗膜成分と成りうる特性を持った合成樹脂が、水中に微小粒子として安定して分散した状態のものをいう。
また、水性エマルションを主成分としたインキとは、インキを構成する材料の中で、水性エマルションの配合割合が、最も多いインキのことを言い、例えば、表1に示すようなインキのことである。
Figure 2015202588
表1のインキについては、O/W型の水性エマルションを主成分とし、表1に示す範囲でパール顔料を配合する。インキ粘度は、インキ温度25℃の環境下で、B型粘度計を用い、No.2ローター、30回転の条件で測定する。インキ粘度は、0.05Pa・s〜5Pa・sであり、好ましくは、0.1Pa・s〜2Pa・sである。
インキの配合割合については、パール顔料と水性エマルションを併せて100%となるように構成するが、インキ粘度が高い場合には、適宜、水を加えることで調整する。
パールインキの印刷模様(3)は、水性エマルション中に含まれる分散媒である水が、基材(1)に浸透するとともに、乾燥工程で蒸発することで、粒子状に分散している樹脂成分同士が接近、融着する過程で、パール顔料を包埋することで形成される。
なお、図8において前述したように、印刷模様(3)を形成した面に、他の印刷模様(Q)を凹版印刷のように、大きな印刷圧力を付加する印刷方式で形成する場合、印刷模様(3)は、コア・シェル型のエマルション樹脂のコア部が、アクリル、若しくはスチレン・アクリル又はスチレン・メタアクリル樹脂から構成され、更にシェル部が、αメチルスチレンを15%から50%の範囲で含むスチレン・アクリル又はスチレン・メタアクリル樹脂から構成された、水性エマルションを主成分としたインキを用いることが、好ましい。
コア・シェル型の水性エマルションを用いることで、凹版印刷時においても、先に印刷したパール顔料が脱落することなく、表裏一体型形成体(P)を形成することが、可能となる。なお、コア・シェル型の水性エマルションを主成分とするインキの詳細は、本出願人が先に出願している特開2005−213667号「印刷用紙及びそれに供する水性インキ」に記載されているので省略する。
以下、本発明においては、パールインキで形成された印刷模様(3)として説明する。
次に、すき入れ模様(2)と印刷模様(3)から構成された表裏一体型形成体(P)の視認状態について、図10を用いて説明する。本発明における観察角度とは、図10(a)に示すように、光源(L)に対して拡散光領域から観察する際の視点を第一の観察角度(E1)とし、光源(L)に対して正反射領域から観察する際の視点を第三の観察角度(E3)とする。
なお、本発明において、拡散光領域及び正反射領域から観察する場合、印刷模様(3)を形成した面側から観察する。また、図10(b)に示すように、光源(L)に対して基材(1)を透過領域で観察する際の視点を第二の観察角度(E2)とする。
第一の観察角度(E1)から表裏一体型形成体(P)を観察した場合、すき入れ模様(2)及び印刷模様(3)は視認することができない。よって、図10(c1)に示すように、肉眼において、模様形成領域(Z)内に、何も視認されない。
第二の観察角度(E2)から観察した場合、印刷模様(3)は視認できないが、透過光量の差により、図10(c2)に示すように、すき入れ模様(2)が視認可能となる。
さらに、第三の観察角度(E3)から観察した場合、第二の観察角度(E2)においてすき入れ模様(2)が視認された位置と同じ位置に、すき入れ模様(2)と同一形状の印刷模様(3)が、光輝性を有する模様として視認される。印刷模様(3)は、前述のとおり、すき入れ模様(2)の白すき部(2a)に対応した部分にはインキが転移されておらず、無地部(2c)に対応した部分のみインキが転移されている。よって、図10(c3)に示すように、肉眼においては、すき入れ模様(2)に対応した、同一形状の白抜き部(3a)を有する印刷模様(3)が視認される。
以上のように、表裏一体型形成体(P)を拡散光領域下で観察した場合は、何も視認されず、透過光下で観察した場合には、すき入れ模様(2)が視認され、さらに、反射光における正反射光領域下で観察した場合には、すき入れ模様(2)が視認された位置と同じ位置に、すき入れ模様(2)と同一形状の印刷模様(3)が、色彩を持って視認されることで、本発明の表裏一体型形成体(P)は、従来の透過模様という意匠性に加え、光学的変化という意匠性がプラスされる。
また、本発明は、一方の面(F)に形成されたすき入れ模様(2)と、他方の面(B)に形成された印刷模様(3)が、基材(1)を挟んで同期して配置されている。それにより、同様の印刷物を模倣しようとした場合、異なる面に形成された、すき入れ模様(2)と印刷模様(3)を、同期させて印刷することは、刷り合わせ精度が極めて難しくなる。よって、従来よりも、偽造防止効果を向上させることが、可能となる。
なお、有色インキを用いて印刷模様(3)を形成した場合、図11(a)に示すように、透過光下で観察した場合、すき入れ模様(2)が視認され、反射光下における拡散光領域及び正反射領域では、図11(b)に示すように、透過光下ですき入れ模様(2)が視認された位置と同じ位置に、有色インキで形成された印刷模様(3)の白抜き部(3a)が、すき入れ模様(2)と同一形状で視認される。
印刷模様(3)を有色インキで形成した場合、光学的変化という効果は有しないが、同一形状のすき入れ模様(2)と白抜き部(3a)が、基材(1)を挟んで同期して配置されていることから、より偽造防止効果を向上させることが、可能となる。
次に、本発明の表裏一体型形成体(P)の作製方法について、図12に示す、フローチャートを用いて説明する。
まず、すき入れ付与工程(S1)として、抄紙機上のワイヤー部の上に設けたプレスマーク装置(M1)により、湿紙である基材(1)の一方の面(F)に対して、すき入れ模様(2)を付与する。
一般的なすき入れ模様(2)は、円網抄紙機又はダンディーロールにより施される。
円網抄紙機による用紙の製造は、低濃度の紙料槽に設けた円網部で、円網内部に紙料を吸引する際に、紙料が円網表面のワイヤーメッシュで濾過されることで高濃度な湿紙となり、その後乾燥部で乾燥されることによって用紙となる。
すき入れ模様(2)を形成する際には、まず、ワイヤーメッシュの表面に、針金、ハンダ等ですき入れ模様(2)の白すき部(2a)の形状に対応した、所望の凸形状の模様を形成する。白すき部(2a)を形成する部分のワイヤーメッシュ表面は凸形状の模様で塞がれることになるが、繊維が絡み合うことで白すき部(2a)の上にも紙層が形成される。
しかしながら、白すき部(2a)は、凸形状であるため、無地部(2a)に比べて紙厚は薄くなる。よって、用紙を透過光で観察した際に、無地部(2c)に比べて白すき部(2a)の透過光が高くなることで白すき模様であるすき入れ模様(2)を視認することができる。
ダンディーロールによるすき入れ模様(2)は、長網抄紙機により施される。円網抄紙機を用いた方法と同様の凸形状の模様をダンディーロールの表面に形成する。次に、長網抄紙機における長網部の後部に設置したダンディーロールを、紙層が形成されつつある状態の湿紙に押し当てることで、凸形状が繊維を押しのけることで白すき模様を形成する。いずれの方法も、白すき部と無地部は、繊維の粗密差はなく、紙厚が異なることですき入れ模様(2)が形成されているのが特徴である。
一方、本発明におけるすき入れ模様(2)は、白すき部(2a)が無地部(2c)に比べて、繊維密度が高いことが必須条件となることから、プレスマーク方式によって製造される。
一般の用紙では、紙層を形成する繊維間には空隙が多く存在する。本来、用紙を形成する繊維(セルロース)は無色透明であるが、透過光は繊維間の空隙で散乱・広散する。そのため用紙を透過光にかざしても、透過光はほとんど透過しないため不透明となる。
一方、すき入れ模様(2)を構成する凹部(2a)は、抄紙工程において、湿紙である基材(1)の厚み(h)を圧縮し、薄くすることで形成される。基材(1)を圧縮することで、紙層を形成する繊維間の空隙がほとんどなくなり、繊維密度が高くなる。よって、透過光下で観察した際には、空隙間では透過光が散乱することなく凹部(2a)を透過するため、凹部(2a)以外の無地部(2c)に比べ、明るく(白く)視認される。
前述のとおり、本発明の表裏一体型形成体(S)は、一方の面(F)に形成したすき入れ模様(2)と、他方の面(B)に形成されたすき入れ模様(2)を白抜き部とした印刷模様(3)が、基材(1)を挟んで表裏一致する位置に配置されている。
これは、具体的な作製方法については後述するが、高い刷り合わせ精度で作製したのではなく、白すき部(2a)と無地部の繊維密度の差に起因してインキの転移量が異なるか、又は、湿紙である基材(1)を圧縮する際に、白すき部(2a)と無地部(2c)で生じる水分量の差に起因してインキのトラッピング不良が生じることで形成される。
したがって、繊維の粗密に差が生じない円網方式及びダンディーロール方式により形成したすき入れ模様(2)は、本発明の表裏一体型形成体(S)を形成することができない。よって、白すき部(2a)は、抄紙工程において、基材(1)の厚み(h)を圧縮することで形成する、プレスマーク方式で形成する必要がある。
次に、本発明のすき入れ模様(2)の形成方法である、プレスマーク方式について説明する。図13(a)は、プレスマーク方式によりすき入れ模様(2)を形成する、プレスマーク装置(M1)の概略図である。
長網上で形成された水分90%以上の湿紙は、サクションボックス、クーチロール等で徐々に脱水され、最終的にプレス部で搾水されることで水分60%程度の湿紙となり、乾燥工程で乾燥される。白すき模様を形成するプレスマーク装置は、プレス部の下流に設置される。
プレスマーク装置(M1)は、すき入れ模様(2)の白すき部(2a)の形状に対応した所望の形状に、凸形状の模様が形成されたプレス版を装着した金属又石製のプレス用版胴(4)と、石製のシリンダである圧胴(5)が、基材(1)に対し、対となるように設置されている。
図13(b)は、プレス版(6)を示す平面図であり、図13(c)は図13(b)に示すプレス版(6)のA−A’断面図である。例えば、図4(a)に示す、すき入れ模様(2)を形成する際には、塩化ビニル製のプレス版(6)の表面に、四つの輪から成る凸形状の模様(7)を形成する。
次に、プレスマーク装置(M1)を用いた、すき入れ模様(2)の形成方法について説明する。図13(a)に示すように、抄紙機上で、湿紙である含水率57〜63%の基材(1)を、互いに等速で回転している、プレス用版胴(4)と圧胴(5)の間に通し、高圧でプレスをする。プレスされた湿紙は、プレス版(6)の凸形状の模様(7)にプレスされることで紙層が圧縮され、図14に示すように、基材(1)の一方の面(F)に凹形状の白すき部(2a)を有するすき入れ模様(2)が形成される。
すき入れ模様(2)が形成された直後は、搾水効果により、すき入れ模様(2)を構成する凹形状の白すき部(2a)を形成した一方の面(F)の裏面である他方の面(B)には水分が多く存在することになる。この水分は、時間の経過とともに毛細管現象により湿紙中に吸収される。
なお、プレスマーク装置(M1)により、すき入れ模様(2)を形成した場合、すき入れ模様(2)を形成した一方の面(F)に対し、他方の面(B)は、圧胴(5)によりプレスされることから、凹凸のないフラット形状となる。
プレスマーク装置(M1)により形成したすき入れ模様(2)の白すき部(2a)は、繊維間の空隙がなくなり、凸形状の模様(7)と接しない個所と比べ、密となる。一方、無地部(2c)は繊維間が粗であり、空隙が多く存在する。本来、基材(1)を形成する繊維(セルロース)は無色透明であるが、無地部(2c)を透過光で観察した際は、空隙間で透過光が散乱するため暗く見える。一方、繊維間が密な白すき部(2a)は、透過光が散乱することなく透過するので明るく見える。
次に、印刷工程(S2)として、すき入れ模様(2)が形成された基材(1)に対して、印刷模様(3)を形成する。本発明の表裏一体型形成体(S)は、二通りの方法で製造することが可能である。
一つ目の製造方法は、図12(a)に示す、すき入れ付与工程(S1)後の、すき入れ模様(2)が施された抄紙機上の湿紙である基材(1)に対して、印刷工程(S2)として、湿紙印刷装置を用いて印刷を行う方法である。この製造方法は、湿紙である基材(1)を圧縮することで形成された白すき部(2a)と無地部(2c)に生じる水分量の差によって生じるインキの転移量の差(トラッピング不良)を利用することで製造される。
二つ目の製造方法は、図12(b)に示す、すき入れ付与工程(S1)後の、すき入れ模様(2)を施した乾紙である基材(1)に対して印刷工程(S2)として、低印圧で印刷が可能な印刷装置を用いて印刷を行う方法である。この製造方法は、基材(1)を圧縮することで形成された白すき部(2a)と無地部(2c)の繊維密度の差によって生じる、インキの浸透性の差を利用することで製造される。
まず、一つ目の製造方法について、詳細に説明する。
図15は、すき入れ付与工程(S1)及び湿紙に対する印刷工程(S2a)を示す模式図である。前述のとおり、前工程であるすき入れ付与工程(S1)では、図15(a)に示すように、抄紙機上の湿紙である基材(1)の一方の面(F)に対して、すき入れ模様(2)に対応した形状の、凸形状の模様(7)が形成されたプレス版(6)を押し当てる。その際、図15(b)に斜線で示すように、凸状の模様(7)の個所においては、湿紙内の水分(W)が、基材(1)の他方の面(B)に押し出される。
本発明の表裏一体型形成体(P)を製造するにあたっては、プレスマーク装置(M1)ですき入れ模様(2)を施す場合、含水率調整工程(S0.5)として、長網上で形成された水分90%以上の湿紙を、サクションボックス、クーチロール等で徐々に脱水し、最終的にプレス部で搾水することで水分57〜63%に調整する必要がある。水分が57%未満では、繊維間の水分量が少ないために繊維が動きにくく、すき入れ模様(2)が形成しにくい。
一方、水分が63%以上では、水分が多過ぎるため鮮明なすき入れ模様(2)とはならない。更に、無地部(2c)の裏面となる他方の面(B)においても、湿紙表面の水分量が多いため、白すき部(2a)の裏面となる他方の面(B)と同様にトラッピング不良が発生し、本発明のすき入れ模様(2)と印刷模様が同期した表裏一体型形成体(S)を形成することができない。よって、第一の製造方法では、湿紙水分が重要となることから、予め抄紙機上の湿紙である基材(1)の含水率が、57〜63%となるように調整する必要がある。
次に、一つ目の製造方法における印刷工程(S2a)の詳細について説明する。一例として、図15(b)の湿紙である基材(1)に対して、図16に示す印刷装置(M2)を用いて印刷を行い、印刷模様(3)を形成する方法について説明する。印刷装置(M2)は、低印圧で印刷が可能な印刷装置(例えば、フレキソ印刷装置)であり、前述したプレスマーク装置(M1)の版胴(5)に、湿紙(1)が巻きついている位置に設置されている。
図16は、印刷装置(M2)の概略図である。印刷装置(M2)は、印刷版面(12)を貼り付ける印刷版胴(8)、表面に微細なセルを有するアニロックスロール(9)、アニロックスロール(9)から印刷版面(8)へインキを均一に供給するためのドクター(10)及びインキパン(11)で構成されている。印刷装置(M2)の印刷用版胴(8)には、全面が一様な網点又はベタ版で形成された印刷模様を有する樹脂凸版(12)が貼り込まれている。
まず、印刷装置(M2)のインキ供給手段に、水性エマルションを主成分としたインキを供給する。次に、インキ供給手段から、インキを印刷版面に供給する。最後に、印刷版面から抄紙機上の湿紙である、基材(1)にインキを印刷する。
詳細な原理については後述するが、本発明の表裏一体型形成体(S)は、第一の製造方法において、プレスマーク装置(M1)ですき入れ模様(2)を施した直後の、基材(1)上に水分が多量に存在している状態で印刷を行う際に生じるトラッピング不良を用いることで、製造される。よって、図16に示すように、プレスマーク装置(M1)のプレス用版胴(4)に、湿紙である基材(1)が巻きついている状態で印刷することで、基材(1)上に水分が存在した状態で印刷を行うことが、可能となる。
プレスマーク装置(M1)と印刷装置(M2)を別々に設けた場合には、プレスマーク工程から印刷工程までの距離(時間)の間に、基材(1)上に存在していた水分が、基材(1)の中に含まれて、水分が均一化することで、トラッピング不良が生じなくなる。よって、図16に示す装置で形成する必要がある。
また、印刷装置(M2)を、低印圧な印刷方式の装置とする理由については、本発明の作製方法は、凹凸模様であるすき入れ模様(2)全体にベタ印刷を行う必要がある。よって、凹凸形状を変形させずに、インキを均一に付与させるために、低印圧な印刷方式で印刷する必要がある。
なお、低印圧で印刷を行う印刷方式として、非常に軽い印圧により、インキを基材(1)上に転移させる印刷方式であるフレキソ印刷方式が好ましいが、これに限らず他の印刷方式においても、印圧を調整することで、印刷を行うことは可能である。
図15(c)は、図15(b)の湿紙である基材(1)に対しての印刷方法を示す模式図である。前述した樹脂凸版(12)の印刷模様に、インキ(I)を付与したのち、水分(W)が押し出された、基材(1)の他方の面(B)に対して印刷を行う。
図15(d)に示すように、他方の面(B)において、白すき部(2a)が施された領域V1は、水分(W)が多量に存在する。そのため、領域V1の部分では、インキ(I)が、湿紙である基材(1)表面の水分(W)に弾かれて、インキが転移しないという現象が発生する。この現象をトラッピング不良と言い、類似の例としてはウエットオフセット印刷が挙げられる。
この現象により、領域V1上にはインキ(I)が転移せず、図15(d)に示すように、白抜き部(3a)が形成される。また、他方の面(B)において、無地部(2c)と対応した領域V3には、トラッピング不良は生じないことから、インキが転移することで印刷模様(3)が形成される。
なお、図15(c)は、樹脂凸版(12)のインキ(I)が付着した個所が、白すき部(2a)から成るすき入れ模様(2)と同じ大きさであるため、領域V3にインキが転移していないが、すき入れ模様(2)よりも大きい場合には、インキ(I)が領域V3にも付着する。
このように、すき入れ模様(2)をプレスマーク方式により付与した湿紙である基材(1)に対して印刷を行うことで、トラッピング不良が生じ、すき入れ模様(2)の白すき部(2a)と、基材(1)を挟んで表裏で合致する位置に印刷模様(3)を形成することが可能となる。
また、前述のとおり、すき入れ模様(2)を、プレスマーク方式により作製していることから、すき入れ模様(2)を形成した一方の面(F)に対し、他方の面(B)が、フラットな形状となり、すき入れ模様(2)と、基材(1)に対して表裏対称に合致する印刷模様(3)を、フラット形状である基材(1)の他方の面(B)に形成することが可能となる。
よって、印刷物を模倣しようとした場合、裏面からは、すき入れ模様(2)の形状が確認できなくなり、よりすき入れ模様(2)と印刷模様(3)を、基材(1)を挟んで同じ位置に配置させることが、難しくなる。よって、従来よりも、偽造防止効果が向上したすき入れ模様(2)を形成することが可能となる。
また、凹凸形状を有するすき入れ模様(2)と印刷模様(3)を、基材(1)の表裏異なる面に形成することで、前述した図8に示すように、印刷模様(3)を形成した面に、他の印刷模様(Q)を形成することが可能となり、従来よりも、意匠性を向上させることが可能となる。
なお、図17に示した印刷装置(M2)を用いて、水性エマルションを主成分とするインキを、抄紙機上の湿紙に付与する印刷方法の詳細は、本出願人が先に出願している特許第2740765号「湿紙印刷物及びその製造方法と湿紙印刷装置」に記載されているので省略する。
次に、二つ目の製造方法について説明する。二つ目の製造方法では、基材(1)を、前述したプレスマーク装置(M1)によりすき入れ模様(2)を施す工程である、すき入れ付与工程(S1)後に、乾燥工程(S2b−1)を経た、乾紙である基材(1)を用いる。
乾紙に対して行う印刷工程(S2b−2)は、図17(a)に示すように、すき入れ模様(2)を形成した一方の面(F)とは異なる他方の面(B)に、基材(1)を挟んですき入れ模様(2)と同じ位置に、所望の印刷模様(3)に対応した形状の版面(18)を用いて、インキ(I)を印刷する。
前述のとおり、本発明のすき入れ模様(2)は、プレスマーク方式により形成される。その際、高圧でプレスされるため、白すき部(2a)の紙層は圧縮され、無地部(2c)比べて繊維密度が高くなる。
そのため、水性エマルションを主成分とするインキを低印圧で印刷した場合、基材(1)の他方の面(B)において、空隙が少なく繊維密度が高い白すき部(2a)は、水性エマルションの浸透が抑制され、より浸透し易い、空隙の多い無地部(2c)に流れ込む。一方、無地部(2c)に対応する領域V2は、繊維密度が低いことから、白すき部(2a)と比べて水性エマルションは毛細管現象により、紙層(繊維)間に急速に浸透する。この時、水性エマルション中に分散している顔料は、水性エマルションと同様の挙動を示す。
その結果、図17(b)に示すように、他方の面(B)において、白すき部(2a)に対応した領域V1には、インキ(顔料)が少量しか存在しないことになる。よって、基材(1)を傾けて観察した際には、無地部(2c)に比べてインキ(顔料)が転移しにくい白すき部(2a)が白抜き模様として視認できる。
なお、印刷模様(2)をパール印刷模様とする際には、所望のパール印刷模様(2)に対応した形状の版面(18)を用いて、パールインキ(I)を印刷する。
パールインキは、パール顔料が基材(1)表面に配向することで、光学特性を発揮するものである。パールインキは、水性エマルションが、基材(1)に浸透するとともに、乾燥工程で蒸発するにともない、粒子状に分散している樹脂成分同士が接近、融着する過程で、パール顔料を包埋することで形成される。プレスマーク方式により形成したすき入れ模様(2)の白すき部(2a)は、高圧でプレスされるため、紙層は圧縮され、無地部(2c)比べ、繊維密度が高くなる。
そのため、水性エマルションを主成分とするパールインキを用いて、低印圧で印刷した場合、基材(1)の他方の面(B)において、空隙が少なく、繊維密度が高い白すき部(2a)では、水性エマルションの浸透が抑制され、より浸透し易い、空隙の多い無地部(2c)に流れ込む。
一方、無地部(2c)に対応する領域V2は、繊維密度が低いことから、水性エマルションは毛細管現象により、紙層(繊維)間に急速に浸透する。この時、水性エマルション中に分散しているパール顔料は、水性エマルションと同様の挙動を示す。
その結果、図17(b)に示すように、他方の面(B)において、白すき部(2a)に対応した領域V1には、パールインキ(顔料)が少量しか存在しないことになる。よって、基材(1)を傾けて観察した際には、無地部(2c)に比べてインキ(顔料)の転移量が少ない白すき部(2a)が白抜き模様として視認できる。
最後に、乾燥工程(S3)として、印刷工程(S2)後のインキを乾燥させることで、表裏一体型形成体(P)が完成する。なお、インキの乾燥については、湿紙に対して印刷を行う第一の製造方法では、抄紙工程上のドライヤパートを通過することで、基材(1)と同時に乾燥される。また、乾紙に対して印刷を行う第二の製造方法では、印刷装置(M2)上に設けた乾燥機構、または、別に設けた乾燥機構により乾燥させる。乾燥機構については、用いるインキの顔料、水性エマルション等に合わせて、適宜設定する。
以上のように、本実施の形態によれば、基材(1)の一方の面(F)に形成したすき入れ模様(2)と、他方の面(B)に形成した印刷模様(3)を、基材(1)に対して表裏同じ位置に配置させるために、白すき部(2a)のみを、湿紙である基材(1)を圧縮することで形成している。それにより、すき入れ模様(2)内の白すき部(2a)の他の部分で、水分量の差、又は、繊維密度の差に起因してインキの転移量に差が生じることで、高い刷り合わせ精度を要することなく、表裏一体型形成体(P)を形成することが可能となる。
1 基材
2 すき入れ模様
2a 白すき部
2b 黒すき部
2c 無地部
3 印刷模様
3a 白抜き部
4 プレス用版胴
5 圧胴
6 プレス版
7 凸形状の模様
8 印刷用版胴
9 アニロックスロール
10 ファンテンロール
11 インキパン
12 樹脂凸版
13 第一の模様
S 貴重印刷物
Z 模様形成領域
F 一方の面
B 他方の面
P 表裏一体型形成体
V1、V2、V3 領域
M1 プレスマーク装置
M2 印刷装置

Claims (4)

  1. 光透過性を有する基材の少なくとも一部の表裏同じ位置に、模様形成領域を有し、
    前記基材の一方の面における前記模様形成領域に、凹凸形状によるすき入れ模様が形成され、
    前記基材の他方の面における前記模様形成領域に、前記すき入れ模様と同一形状の白抜き部を有した印刷模様が、水性エマルションを主成分としたインキにより形成され、
    前記白抜き部と前記すき入れ模様は、前記基材を挟んで表裏で一致するように配置され、
    前記模様形成領域を透過光下で観察すると、前記すき入れ模様が視認され、
    前記模様形成領域における前記印刷模様が形成された面を反射光領域下で観察すると、前記透過光下において前記すき入れ模様が視認された位置と同じ位置に、前記すき入れ模様と同一形状の前記印刷模様の前記白抜き部が視認されることを特徴とする、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体。
  2. 基材の少なくとも一部の表裏同じ位置に、模様形成領域を有し、前記基材の一方の面における前記模様形成領域にすき入れ模様が形成され、前記基材の他方の面における前記模様形成領域に、前記すき入れ模様と同一形状の白抜き部を有した印刷模様が、前記すき入れ模様と前記白抜き部が、前記基材を挟んで表裏一致するように配置された、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法であって、
    抄紙機上のプレス部の下流に設けたプレスマーク装置により、湿紙である前記基材の一方の面の前記模様形成領域に対して、すき入れ模様を形成するすき入れ付与工程と、
    前記すき入れ模様を形成した面とは異なる、前記基材の他方の面の前記模様形成領域全体に、水性エマルションを主成分としたインキを用いて、フレキソ印刷を行い、前記すき入れ模様を白抜き部とした印刷模様を形成する印刷工程とを有することを特徴とする、印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法。
  3. 前記印刷工程は、
    前記すき入れ付与工程後に、前記抄紙機上の湿紙である前記基材に対して印刷する、又は、
    前記すき入れ付与工程後に、乾燥した前記基材に対して印刷することを特徴とする請求項2記載の印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法。
  4. 前記湿紙である前記基材に対して印刷をする場合、前記印刷工程は、印刷前の湿紙である前記基材の含水率を、含水率57〜63%にする含水率調整工程を有することを特徴とする請求項3記載の印刷模様とすき入れ模様の表裏一体型形成体の作製方法。
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