JP2015200448A - 溶湯用撹拌羽根 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸部芯金10と、軸部芯金10の先部に設けられた羽根部芯金11とを有し、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12が不定形耐火物13で覆われた溶湯用撹拌羽根であり、少なくとも羽根部芯金11の表面12には、無機繊維質のロープで形成したリング14が設けられ、リング14が不定形耐火物13に埋設されている。
【選択図】図1
Description
一般にインペラ92は、図4(A)、(B)に示すように、鉄製の軸部芯金93と羽根部芯金94の表面に、Y型(又はV型)の金属製スタッド(支持体)95を取り付け、更に耐火物(キャスタブル)96を流し込み施工することで、製作されている。このインペラ92の製造に使用する耐火物96としては、例えば、耐熱スポーリング性に優れるAl2O3、3Al2O3・2SiO2(ムライト)、SiC、SiO2等の材料がある。
これは、インペラの使用に際し、耐火物に大きな熱衝撃(使用に際し、インペラの溶銑への浸漬と溶銑からの取出しが繰返し行われ、耐火物の昇温と冷却(放熱冷却)が繰返されることで発生)が加えられることや、金属製スタッドと耐火物との間に膨張差(金属は耐火物より熱膨張が大きいため、インペラを熱間で使用することで発生)が生じることから、耐火物に応力がかかって亀裂が発生し、耐火物が剥落することによる。また、耐火物に発生した亀裂から溶銑が差し込み、金属製スタッドや羽根部芯金を溶融することによる。
例えば、特許文献1には、インペラの芯金(軸部芯金と羽根部芯金)と、この芯金の表面を覆う耐火物との間、及び芯金に取り付けられたスタッド(アンカー)と、このまわりを覆う耐火物との間に、シート、テープ、及び塗料等の薄状形成材を配設し、これらを高温時に消失させて、上記した薄状形成材の厚みに対応した微小空隙を設け、熱衝撃による膨張差を吸収できるように応力を緩和させた脱硫用インペラが開示されている。
また、特許文献2には、芯金から、羽根部の下方外縁部に延びる金属製スタッドを有する構造とすることで、羽根部において、芯金を被覆した耐火物の脱落を防止する溶湯撹拌用インペラが開示されている。
しかし、インペラの使用にあっては、耐火物を溶銑中に浸漬させるため、特許文献1に記載のように、スタッドと耐火物との間に微小空隙を設けたとしても、耐火物の焼結が進行して微小空隙がなくなる。
また、特許文献1、2に記載のインペラはいずれも、耐火物の亀裂や剥落の抑制に一定の効果はあるものの、耐火物の支持体として金属製のスタッドを使用しているため、耐火物とスタッドの膨張差から生じる応力緩和が不十分である。このため、耐火物に発生した亀裂が進展し、耐火物の剥離した部分や亀裂から溶銑が浸入し、金属製スタッドが湯道になることで、芯金を溶損させる。
以上のことから、特許文献1、2に記載のインペラでは、耐火物の亀裂や剥落の抑制を根本的に解決できていない。
少なくとも前記羽根部芯金の表面には、無機繊維質のロープで形成したリングが設けられ、該リングが前記不定形耐火物に埋設されている。
また、上記した無機繊維質のロープをリングに形成するので、このロープを直線状とした場合と異なり、不定形耐火物からのロープの引き抜けを抑制、更には防止でき、不定形耐火物を芯金にロープを介してしっかりと保持できる。
更に、リングを不定形耐火物に埋設しているので、リングと溶湯との直接接触を防止でき、リングの劣化を抑制、更には防止できる。なお、溶湯用撹拌羽根の使用に際しては、不定形耐火物の表面からリングが部分的に露出するおそれもあるが、リングは上記した材質であるため、従来の金属製スタッドと比較して溶損を抑制できる(金属製スタッドの場合、溶湯によりスタッドが溶損、更には浸入した溶湯により芯金が溶損)。
従って、従来の金属製スタッドを用いた溶湯用撹拌羽根と比較して、不定形耐火物の剥離や芯金の溶損を抑制できるため、溶湯用撹拌羽根の寿命を延長できる。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る溶湯用撹拌羽根(以下、単に撹拌羽根ともいう)は、軸部芯金10と、軸部芯金10の先部に設けられた羽根部芯金11とを有し、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12が不定形耐火物(以下、単に耐火物ともいう)13で覆われたもの(図3、図4(A)、(B)参照)であり、耐火物13への亀裂の発生を軽減して、耐火物13の耐用性を向上させたものである。以下、詳しく説明する。
この撹拌羽根を構成する軸部芯金10と羽根部芯金11は、例えば鉄製であり、軸部芯金10は円柱状(又は円筒状)、羽根部芯金11は板状、となっている。この羽根部芯金11(羽根部)は、軸部芯金10を中心として、軸部芯金10に等角度に複数枚(例えば、4枚)設けられている。なお、羽根部芯金11の枚数も、撹拌羽根の使用用途に応じて、1枚又は2枚以上の複数枚に、種々変更できる。
例えば、800℃での熱膨張係数は、従来使用されている金属製スタッドが11×10−6/K(SS400)であり、一方、無機質のセラミックスが7.2×10−6/K(Al2O3)である。このように、各材質の熱膨張係数は大きく異なるため、金属製スタッドの代わりに無機繊維質のロープを用いると、耐火物の亀裂発生数を飛躍的に減少できる。
なお、上記したロープは、無機繊維を、例えば組紐状に編んで製造しているため、たとえ熱膨張したとしても、金属製スタッドのように、耐火物に亀裂を発生させるような膨張にはならない。また、ロープは、容易に変形することが可能である。更に、無機繊維周囲の耐火物が高温下で変形しても、この耐火物内部の無機繊維は、耐火物の変形に倣って変形するため、内部応力を緩和する効果もある。
この無機繊維は、金属製スタッドでは強度の低下を生じるような環境下(例えば、600℃以上、更には1000℃以上の高温下)でも、耐熱性と強度を有するものであるが、無機繊維が上記の化学成分で構成されていれば、このような耐熱条件を満たすことから、好ましい。
このAl2O3−SiO2質の中でも、Al2O3が70質量%以上の組成(例えば、Al2O3:72質量%、SiO2:28質量%)の無機繊維は、入手が容易でコストパフォーマンスもよく、また、Al2O3が90質量%以上の組成(例えば、Al2O3:90質量%、SiO2:10質量%)の無機繊維は、より耐熱性に優れている。
なお、他の材質でも、耐熱性を有する繊維でロープ状にすることができる無機繊維を用いてロープを製造すれば、このロープをあまり高温にならないような箇所に使用することも可能である。例えば、炭素繊維や、Al2O3−SiO2−CaO質、CaO−SiO2質等の繊維が適用可能である。
これにより、ロープを製造できる。
なお、上記した組紐加工の種類としては、8打ち、16打ち、金剛打ち等が挙げられるが、特にその種類が限定されることはない。また、ロープは、スリーブ等の中空形状でもよいが、好ましくは、ロープ内の空間ができるだけ少ないものがよい。
なお、長繊維の使用にあたり、スタッド機能として必要な引張強度の調整は、前記したロープの直径を変化させることで可能である。この長繊維とは、繊維長がm(メートル)オーダー以上(通常はkm(キロメートル)オーダー以上が多い)のものであり、繊維長が1〜50mm程度である短繊維とは容易に区別される。
一方、ロープの直径が増大すると共に、ロープをリングに形成する(リング状に曲げる)ことが困難となる。特に、直径が30mmを超えると、リングに形成することが困難になり易い。
従って、ロープの直径は、5mm以上30mm以下(更には、20mm以下)とすることが好ましい。
環15は、内部に貫通孔を有する環状の金属部材であり、この環15の貫通孔の一方側に、リング状にしたロープの両端部を揃えて挿入し、環15でロープの両端部をかしめることで、ロープをリング14に形成できるものである。そして、この環15をプレスすることで圧着部16を形成し、ロープと環15を圧着させて、環15からロープが引抜けない構造としている。
なお、この環15を、その軸心が、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12に対して直交する方向となるように配置し、環15の周縁を表面12に溶接することで、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12にリング14が設けられる。
また、複数のリング14は、その貫通孔17の軸心が、隣り合うリング14の貫通孔17の軸心とは異なるように配置(ここでは、貫通孔17の軸心が、上下方向と水平方向に交互になるように配置)されている。これにより、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12への耐火物13のスタッド機能が高められるが、各リング14の貫通孔17の軸心を同一とすることもできる。
なお、上記した亀裂の発生数が多い部位は、過去の操業実績等により把握できるが、例えば、数値解析によっても把握できる。
図2(A)に示すように、内部に貫通孔を有する金属製の環(接続部材)20を用い、この環20の貫通孔の両側から、ロープの端部をそれぞれ挿入して、ロープをリング状にする。次に、この環20内でロープの両端部を揃え、環20をプレスすることで圧着部21を形成し、ロープと環20を圧着させて、環20からロープが引抜けない構造とする。
なお、この環20を、その軸心が、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12に対して平行となるように配置し、環20の側面を表面12に溶接することで、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12にリング22を設けることができる。
そして、図2(C)に示すように、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12に、L字状の係止ピン25を設け、この係止ピン25に、ロープで形成したリング26を引っ掛ける(又は結び付ける)ことで、軸部芯金10と羽根部芯金11の表面12にリング26を設けることもできる。
上記したように、リング14を不定形耐火物13中に埋設するのは、リング14の一部が不定形耐火物13の表面(稼動面)に露出していると、リング14の切断原因となり、不定形耐火物13のスタッドとしての効果が低下することによる。
ここで、リング14の突出長さXとは、羽根部芯金11の表面12から、リング14の先端位置までの最短距離である。
従って、施工時に、ロープを構成する無機繊維が、予め硬化材にて硬化され、常温でリング14の強度が発現している状態が好ましい。
なお、硬化材としては、フェノール樹脂やコールタールピッチ、高温域でガラス質のネットワークを形成するリン酸、リン酸塩、ケイ酸塩、シリカゾル、アルミナゾル、油性ニス、有機接着剤等が挙げられるが、好ましくは昇温過程で揮発するような市販品の油性ニス等の樹脂が好適である。
更に、型枠等を用いて、リング14を固定し、硬化材を用いてリング14を硬化させることで、リング14の配置位置と形状を固定することもできる。
まず、無機繊維質のロープで形成したリング14を、羽根部芯金11(更には、軸部芯金10、以下同様)の表面12に取り付ける。このとき、必要に応じて、リング14を硬化材により硬化させておいてもよい。
次に、羽根部芯金11の表面12に、間隔をあけて型枠を配置する。なお、型枠の設置位置は、目的とする不定形耐火物13の厚みと、リング14が不定形耐火物13に埋設されることを考慮して設定する。
上記のように、羽根部芯金11の表面12にリング14を設け、このリング14を、流し込み施工した不定形耐火物13に埋設することで、リング14の貫通孔17内にも耐火物13が入り込むため、リング14が耐火物13から滑って引き抜かれるおそれがなくなる。
ここでは、試験に使用する溶湯用撹拌羽根として、軸部芯金と羽根部芯金を有し、その表面が不定形耐火物(Al2O3:60質量%、SiO2:30質量%、SiC:6質量%、残部不純物)で覆われたインペラを使用した。なお、羽根部芯金は、軸部芯金を中心として、軸部芯金に等角度に4枚取り付けられている。
この各インペラの羽根部芯金について、金属製スタッド、直線状のロープ、又はリングの取り付け箇所は、羽根部芯金1枚あたり36箇所(合計:144箇所=36箇所×4枚)とした。なお、直線状のロープの取り付けは、1箇所あたり3本とした。
上記した試験条件とその結果を、表1に示す。なお、インペラの寿命は、作業性や経済性の観点から、200チャージ以上使用できた場合を合格とし、一部のインペラについては、200〜205チャージの使用時点で耐火物表面の亀裂発生状況を目視観察した結果を、表1に記載した。また、比較例1、2については、剥離が発生してインペラの寿命に到達した時点での結果を、表1に記載した。
また、比較例2は、羽根部芯金の表面に直線状のロープを取り付けていたため、耐火物からロープが引き抜け易く、ロープによる耐火物の支持が弱くなった。このため、耐火物の剥離が発生し、インペラを200チャージ使用することができなかった(150チャージ以上200チャージ未満)。
一方、実施例2、3は、ロープの直径が上記した最適範囲内であったため、ロープの引張強度が十分であった。このため、耐火物への亀裂の発生を、実施例1よりも低減できた(亀裂の発生:少(10cm四方で5個未満))。
なお、実施例4は、ロープの直径が上記した最適範囲の上限値超(40mm)であったため、ロープをリングに形成するのに、手間を要した。
実施例7は、リングの占有割合が最適範囲(1/5〜9/10)の下限値未満(1/6)であったため、耐火物に対するスタッド機能が低下する傾向にあった。このため、インペラは200チャージ以上使用できたが、耐火物に亀裂が発生した(亀裂の発生:中)。
一方、実施例2、5、6は、リングの占有割合が上記した最適範囲内であったため、耐火物に対するスタッド機能が十分に発揮された。このため、耐火物への亀裂の発生を、実施例7よりも低減できた(亀裂の発生:少)。
Claims (2)
- 軸部芯金と、該軸部芯金の先部に設けられた羽根部芯金とを有し、前記軸部芯金と前記羽根部芯金の表面が不定形耐火物で覆われた溶湯用撹拌羽根において、
少なくとも前記羽根部芯金の表面には、無機繊維質のロープで形成したリングが設けられ、該リングが前記不定形耐火物に埋設されていることを特徴とする溶湯用撹拌羽根。 - 請求項1記載の溶湯用撹拌羽根において、前記無機繊維質のロープの直径は、5mm以上30mm以下であることを特徴とする溶湯用撹拌羽根。
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JP2018150620A (ja) * | 2017-03-13 | 2018-09-27 | Jfeスチール株式会社 | 不定形耐火物の使用方法、溶銑処理設備の操業方法、溶銑の脱硫方法及び溶銑の予備処理方法 |
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