JP2015200275A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】失火を抑制するとともに、気筒毎の燃焼状態のばらつきを低減可能な内燃機関の制御装置を提供する。【解決手段】ECU80は、点火装置30を備えるエンジンシステム10を制御する。点火装置30のエネルギ投入部50は、点火スイッチ451、452により一次電流I1を遮断し当該遮断による電圧により点火プラグ701、702にて放電が発生した後のエネルギ投入期間において、エネルギを投入する。補正値学習部81は、二次電流I2を取得し、二次電流I2に基づき、エネルギ投入部50から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習する。これにより、失火を抑制するとともに、気筒毎の燃焼状態のばらつきを低減可能である。【選択図】 図2

Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
従来、点火プラグに接続される点火コイルの二次コイルに流れる二次電流に基づき、点火の正否を検出し、蓄積エネルギを調整する点火装置が公知である。例えば特許文献1では、燃焼状態を良好にすべく1回の燃焼行程内にて点火プラグに火花放電を複数回発生させる多重放電制御を前提とし、点火処理中に二次電流が点火処理継続電流値よりも小さくなった場合、吹き消えが生じる前に点火処理からエネルギ蓄積処理に移行する。
特開2009−52435号公報
ところで、多気筒エンジンの場合、筒内の気流の流速や燃焼時の温度等のばらつきにより、着火性が気筒毎に異なる。そのため、複数の気筒に対して同様のエネルギを投入する場合、最も着火性が悪い気筒に合わせてエネルギを投入する必要があるため、他の気筒に対して余分なエネルギを投入することになる。また、気筒毎の燃焼状態がばらついていると、エンジンの回転変動や振動等が発生する虞がある。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、失火を抑制するとともに、気筒毎の燃焼状態のばらつきを低減可能な内燃機関の制御装置を提供することにある。
本発明は、点火装置を備える内燃機関システムを制御する内燃機関の制御装置であって、点火装置は、点火コイル、イグナイタ部、および、エネルギ投入部を備える。
点火コイルは、一次コイルおよび二次コイルを有し、内燃機関の気筒毎に設けられる。一次コイルは、直流電源から供給される一次電流が流れる。二次コイルは、内燃機関の燃焼室において混合気に点火する点火プラグの電極に接続され、一次電流の通電および遮断によって発生する二次電圧が印加され二次電流が流れる。
イグナイタ部は、点火スイッチを有し、点火コイル毎に設けられる。点火スイッチは、一次コイルの直流電源と反対側である接地側に接続され、一次電流の通電および遮断を切り替える。
エネルギ投入部は、点火スイッチにより一次電流を遮断し当該遮断による電圧で点火プラグにて放電が発生した後のエネルギ投入期間において、エネルギを投入する。
内燃機関の制御装置は、二次電流取得手段と、学習手段と、を備える。
二次電流取得手段は、二次電流を取得する。学習手段は、二次電流取得手段により取得された二次電流に基づき、エネルギ投入部から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習する。
点火装置は、エネルギ投入部を備え、一次電流の遮断により通電される二次電流により点火プラグにて放電を発生させた後に、エネルギ投入部により点火状態を継続可能なエネルギを投入するので、失火を抑制することができる。
また、二次電流に基づいてエネルギ投入部から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習している。これにより、気筒毎の燃焼状態のばらつきを低減可能である。また、最も着火性の悪い気筒に合わせて一律にエネルギ投入量を補正する場合と比較し、エネルギ投入量を低減することができる。さらにまた、気筒毎の燃焼状態のばらつきが低減されるので、内燃機関の回転変動や振動等を抑制することができる。
本発明の第1実施形態によるエンジンシステムの構成を示す概略構成図である。 本発明の第1実施形態による点火装置の構成図である。 本発明の第1実施形態による点火装置の基本動作を説明するタイムチャートである。 本発明の第1実施形態による学習処理を説明するフローチャートである。 本発明の第1実施形態による学習処理を説明するタイムチャートである。 本発明の第2実施形態による学習処理を説明するフローチャートである。 本発明の第2実施形態による学習処理を説明するタイムチャートである。 本発明の第3実施形態による学習処理を説明するフローチャートである。 本発明の第3実施形態によるエンジン運転領域を説明する説明図である。 本発明の第4実施形態による補正値と筒内流速との関係を説明する説明図である。 本発明の第4実施形態による点火装置の構成図である。 本発明の第4実施形態による点火時期の調整を説明する説明図である。 本発明の第4実施形態によるA/F比およびEGR量の調整を説明する説明図である。 本発明の第4実施形態によるエネルギ投入期間の調整を説明する説明図である。
以下、本発明による内燃機関の制御装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
[エンジンシステムの構成]
まず、エンジンシステムの概略構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、内燃機関システムとしてのエンジンシステム10は、火花点火式の内燃機関としてのエンジン13、および、点火装置30等を備える。
エンジン13は、例えば4気筒等の多気筒エンジンであり、図1では第1の気筒の断面を示す。以下に説明する構成は、図示しない他の気筒にも同様に設けられる。
エンジン13は、スロットル弁14を通じて吸気マニホールド15から供給される空気とインジェクタ16から噴射される燃料との混合気を燃焼室17内で燃焼させ、その燃焼時の爆発力によりピストン18を往復運動させる。ピストン18の往復運動は、クランクシャフト19により回転運動に変換されて出力される。燃焼により生じた燃焼ガスは、排気マニホールド70を経由して大気中に放出される。
すなわち本実施形態のエンジン13は、所謂「ポート噴射エンジン」であるが、燃料を燃焼室17に直接噴射する所謂「直噴エンジン」としてもよい。
排気マニホールド70には、排気中のCO、HC、NOx等を浄化するための三元触媒等の触媒71が設けられる。触媒71の上流側には、排気中の酸素濃度を検出するフロントO2センサ72が設けられる。また、触媒71の下流側には、触媒71により浄化された排気中の酸素濃度を検出するリアO2センサ73が設けられる。
本実施形態では、排気の一部をEGRガスとして吸気側に導入する排気還流装置(以下、「EGR装置」という。)75が設けられる。EGR装置75は、EGR配管76、および、EGR弁77を有する。EGR配管76は、排気マニホールド70の触媒71の上流側と、吸気マニホールド15とを連通する。EGR弁77は、EGR配管76の途中に設けられ、EGR弁77の開度を調整することで、燃焼室17に導入するEGRガス量を調整する。
燃焼室17の入口であるシリンダヘッド21の吸気ポートには、吸気弁22が設けられる。また、燃焼室17の出口であるシリンダヘッド21の排気ポートには、排気弁23が設けられる。吸気弁22および排気弁23は、バルブ駆動機構24により開閉駆動される。なお、吸気弁22および排気弁23の少なくとも一方のバルブ駆動機構24にバルブタイミングを調整する可変バルブ機構を設けてもよい。
燃焼室17の混合気への点火は、点火装置30により行われる。具体的には、点火装置30により点火プラグ7の電極間での放電による火花を発生させ、発生した火花により燃焼室17の混合気に点火される。
「内燃機関の制御装置」としての電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)80は、CPU、ROM、RAMおよび入出力ポート等からなるマイクロコンピュータにより構成される。ECU80は、クランク角センサ35、カム角センサ36、水温センサ37、スロットル開度センサ38、吸気圧センサ39、フロントO2センサ72、および、リアO2センサ73等の各種センサからの信号が入力され、これらの各種センサからの検出信号に基づき、スロットル弁14、インジェクタ16、EGR弁77、および、点火回路ユニット31等を制御することで、エンジン13の運転状態を制御する。
[点火装置の構成]
点火装置30は、点火回路ユニット31、および、点火コイル40を備える。
点火装置30の回路構成を図2に基づいて説明する。図2では、気筒毎に設けられる点火プラグ7、および、点火コイル40等は、2気筒分の構成を記載する。エンジン13の気筒数が3気筒以上である場合の3気筒目以降については記載を省略しているが、気筒毎に設けられる構成は、気筒数に応じ、同様の構成が並列接続される。
図2中において、気筒毎に設けられる構成については、3ケタで付番し、上2ケタが同一である場合は同様の構成であることを意味し、下1ケタが対応する気筒の番号であるものとする。したがって、図1では第1の気筒について説明したため、図1中の点火プラグ7は第1点火プラグ701に対応し、燃焼室17は第1燃焼室171に対応する。
点火プラグ7は、第1の気筒に設けられる第1点火プラグ701、および、第2の気筒に設けられる第2点火プラグ702から構成される。第1点火プラグ701は、エンジン13の第1の気筒の第1燃焼室171で所定のギャップを隔てて対向する一対の電極を有する。第1点火プラグ701の電極間に放電電圧が印加されると、電極間のギャップに放電が発生する。放電電圧とは、電極間の絶縁を破壊し、放電が発生しうる程度の高電圧をいう。
第2点火プラグ702は、第1点火プラグ701と同様であって、エンジン13の第2の気筒の第2燃焼室172で所定のギャップを隔てて対向する一対の電極を有する。以下、第1の気筒に対応する構成と第2の気筒に対応する構成とが同様である場合、第1の気筒に対応する構成について説明し、第2の気筒に対応する構成に関する説明を省略する。点火制御を含むエンジン制御についても同様、第1の気筒を中心に説明する。
点火コイル40は、第1点火コイル401および第2点火コイル402から構成される。第1点火コイル401は、一次コイル411、二次コイル421、および、整流素子431を有し、公知の昇圧トランスを構成している。
一次コイル411は、一端が直流電源としてのバッテリ6の正極に接続され、他端が点火スイッチ451を経由して接地される。以下、一次コイル411のバッテリ6と反対側を「接地側」或いは「低電圧側」という。
二次コイル421は、一次コイル411と磁気的に結合されており、一端が第1点火プラグ701の一対の電極を経由して接地され、他端が整流素子431および二次電流検出抵抗47を経由して接地される。
以下、一次コイル411に流れる電流を一次電流I1といい、二次コイル421に流れる電流を二次電流I2とする。また、図2中に矢印で示すように、一次電流I1は、一次コイル411から点火スイッチ451に向かう方向の電流を正とし、二次電流I2は、二次コイル421から第1点火プラグ701に向かう方向の電流を正とする。また、二次コイル421の第1点火プラグ701側の電圧を二次電圧V2という。
整流素子431は、ダイオードで構成され、二次電流I2を整流する。
第1点火コイル401は、一次コイル411を流れる電流の変化に応じた電磁誘導の相互誘導作用により、二次コイル421に高電圧を発生させ、この高電圧を第1点火プラグ701に印加する。
第2点火コイル402は、一次コイル412、二次コイル422、および、整流素子432を有し、詳細は第1点火コイル401と同様である。
点火回路ユニット31は、イグナイタ部44、二次電流検出抵抗47、エネルギ投入部50、および、二次電流検出部としての二次電流検出回路65を有する。
イグナイタ部44は、気筒毎に設けられる第1イグナイタ部441および第2イグナイタ部442から構成される。第1イグナイタ部441は、点火スイッチ451、および、整流素子461を有する。
点火スイッチ451は、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)で構成され、コレクタが一次コイル411の接地側に接続され、エミッタが接地され、ゲートがECU80に接続される。点火スイッチ451のエミッタは、整流素子461を経由して、コレクタに接続される。
点火スイッチ451は、ゲートに入力される点火信号IGTに応じてオンオフが切り替えられる。詳しくは、点火スイッチ451は、第1の気筒制御に係る点火信号IGTの立ち上がり時にオンとなり、立ち下がり時にオフとなる。一次電流I1は、点火スイッチ451により点火信号IGTに従って導通および遮断が切り替えられる。
第2イグナイタ部442は、点火スイッチ452、および、整流素子462を有し、詳細は第1イグナイタ部441と同様である。
エネルギ投入部50は、DCDCコンバータ51、コンデンサ56、放電スイッチ57、放電用ドライバ回路58、電流フィードバック部59、および、気筒分配部60を有する。コンデンサ56は、複数の気筒に対して共通で1つ設けられる。放電スイッチ57、および、放電用ドライバ回路58は、気筒数に応じ、1つまたは複数設けられる。なお、図中では「フィードバック」を「FB」と記す。
DCDCコンバータ51は、エネルギ蓄積コイル52、充電スイッチ53、充電用ドライバ回路54、および、整流素子55から構成され、バッテリ6の電圧を昇圧してコンデンサ56に供給する。DCDCコンバータ51は、必要に応じ1組または複数組設けられる。
エネルギ蓄積コイル52は、一端がバッテリ6に接続され、他端が充電スイッチ53を経由して接地される。
充電スイッチ53は、例えばMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)で構成されており、ドレインがエネルギ蓄積コイル52に接続され、ソースが接地され、ゲートが充電用ドライバ回路54に接続される。充電用ドライバ回路54は、充電スイッチ53のオンオフを切り替える充電スイッチ信号SWcを充電スイッチ53のゲートに出力する。
整流素子55は、ダイオードで構成され、コンデンサ56からエネルギ蓄積コイル52および充電スイッチ53側への電流の逆流を防止する。
コンデンサ56は、正極が整流素子55を経由してエネルギ蓄積コイル52と充電スイッチ53との接続点に接続され、負極が接地される。コンデンサ56は、DCDCコンバータ51から供給された電荷を蓄える。
充電スイッチ53のオンオフは、後述するエネルギ投入期間信号IGWがオフとなっている間に行われる。充電スイッチ53がオンしたとき、エネルギ蓄積コイル52に誘起電流が流れ、電気エネルギが蓄積される。また、充電スイッチ53がオフしたとき、エネルギ蓄積コイル52に蓄積された電気エネルギがバッテリ6の直流電圧に重畳してコンデンサ56側に放出される。これにより、コンデンサ56の電圧は比較的高い電圧(例えば、100[V]から数百[V])に昇圧される。
放電スイッチ57は、例えばMOSFETで構成され、ドレインがコンデンサ56の正極側に接続され、ソースが気筒分配部60に接続され、ゲートが放電用ドライバ回路58に接続される。放電用ドライバ回路58は、放電スイッチ57のオンオフを切り替える放電スイッチ信号SWdを放電スイッチ57のゲートに出力する。
電流フィードバック部59は、ECU80から出力される目標二次電流信号IGAに基づき、二次電流I2が二次電流指令値I2*により規定される所定範囲内となるようにするフィードバック制御により、放電スイッチ57のオンデューティ比を求め、放電用ドライバ回路58に指令信号を出力する。
気筒分配部60は、気筒毎に設けられる第1気筒分配部601、および、第2気筒分配部602から構成される。第1気筒分配部601は、気筒分配スイッチ611、気筒分配用ドライバ回路621、および、整流素子631を有する。
気筒分配スイッチ611は、例えばMOSFETで構成され、ドレインが放電スイッチ57のソースに接続され、ソースが整流素子631に接続され、ゲートが気筒分配用ドライバ回路621に接続される。気筒分配スイッチ611は、一次コイル411の接地側にエネルギを投入するエネルギ投入期間にオンされるように制御される。
気筒分配用ドライバ回路621は、気筒分配スイッチ611のオンオフを切り替える信号を気筒分配スイッチ611のゲートに出力する。
整流素子631は、ダイオードで構成され、一次コイル411および点火スイッチ451側から気筒分配スイッチ611側への電流の逆流を防止する。
第2気筒分配部602は、気筒分配スイッチ612、気筒分配用ドライバ回路622、および、整流素子632を有し、詳細は第1気筒分配部601と同様である。
二次電流検出回路65は、放電スイッチ57と同数設けられる二次電流検出抵抗47の両端電圧に基づき、気筒毎に二次電流I2を検出する。二次電流検出回路65により検出された二次電流I2の検出値は、ECU80に出力され、各種演算に用いられる。以下適宜、二次電流検出回路65により検出された二次電流I2の検出値を、単に「二次電流I2」という。
ECU80は、複数の気筒に対して共通で1つ設けられ、クランク角センサ35等の各種センサから取得したエンジン13の運転情報に基づき、点火信号IGT、エネルギ投入期間信号IGW、および、目標二次電流信号IGAを生成し、点火回路ユニット31に出力する。
点火信号IGTは、気筒毎に生成される信号であり、点火スイッチ451、452のゲート、および、充電用ドライバ回路54に入力される。点火スイッチ451は、点火信号IGTがハイレベルである期間、オンとなり、点火スイッチ452は、点火スイッチ452に係る点火信号IGTがハイレベルである期間、オンとなる。充電用ドライバ回路54は、点火信号IGTが入力されている期間、充電スイッチ53のゲートに対し、充電スイッチ53をオンオフ制御する充電スイッチ信号SWcを繰り返し出力する。
エネルギ投入期間信号IGWは、気筒毎に対応するタイミングをずらしたパルスにより構成される1または複数の信号であり、放電用ドライバ回路58に入力される。放電用ドライバ回路58は、エネルギ投入期間信号IGWがハイレベルである期間、放電スイッチ57のゲートに対し、放電スイッチ57をオンオフ制御する放電スイッチ信号SWdを繰り返し出力する。本実施形態では、エネルギ投入期間信号IGWがハイレベルである期間が、「エネルギ投入期間」に対応する。
目標二次電流信号IGAは、二次電流指令値I2*を指示するための信号であり、電流フィードバック部59に入力される。
また、ECU80は、補正値学習部81および指令値演算部82を有する。
補正値学習部81では、二次電流検出回路65から二次電流I2を取得し、取得された二次電流I2に基づき、二次電流補正値I2cを演算する。
指令値演算部82では、二次電流補正値I2cに基づいて二次電流指令値I2*を演算し、二次電流指令値I2*に応じた目標二次電流信号IGAを生成、出力する。
補正値学習部81および指令値演算部82における演算は、気筒毎に実行される。補正値学習部81および指令値演算部82における演算の詳細については後述する。
[点火装置の作動]
点火装置30の作動について図3のタイムチャートを参照して説明する。以下の説明では、第1の気筒に係る制御を中心に説明する。図3のタイムチャートは、共通時間軸を横軸とし、縦軸に上から順に、点火信号IGT、エネルギ投入期間信号IGW、コンデンサ電圧Vdc、一次電流I1、二次電流I2、投入エネルギP、充電スイッチ信号SWc、放電スイッチ信号SWdを示している。
ここで、コンデンサ電圧Vdcは、コンデンサ56の電圧を意味する。また、投入エネルギPは、コンデンサ56から放出され、一次コイル41の接地側端子から点火コイル40に供給されるエネルギを意味し、1回のエネルギ投入期間におけるエネルギ供給開始からの積算値を示す。なお、エネルギ投入期間におけるエネルギ供給開始タイミングは、最初の放電スイッチ信号SWdが立ち上がる時間t3である。
一次電流I1および二次電流I2は、図2の矢印方向の電流を正の値とし、矢印と反対方向の電流を負の値とする。以下の説明において、負の電流の大小に言及する場合、電流の絶対値を基準として大小を表す。すなわち、負の電流については、電流値がゼロから離れ絶対値が大きくなるほど「電流が増加する(または上昇する)」といい、ゼロに近づき絶対値が小さくなるほど「電流が減少する(または低下する)」という。
また、エネルギ投入期間信号IGWが出力されている時間t3から時間t4までの期間における二次電流I2の制御目標値を「二次電流指令値I2*」とする。二次電流指令値I2*は、点火状態を良好に維持可能な程度の値に設定される。本実施形態では、二次電流指令値I2*は、波状の絶対値が大きい側の頂点とする。また、波状の下側の頂点と上側の頂点との間隔は、二次電流検出回路65の回路定数に応じたヒステリシスとなり、波状の絶対値が小さい側の頂点を二次電流指令下限値I2*Lとする。
図3中の時間t1にて点火信号IGTがハイレベル(図3中では「H」で示す。)になると、点火スイッチ451がオンされ、一次電流I1が一次コイル411に通電され、時間の経過に伴って一次電流I1が増加する。これにより、点火信号IGTがハイレベルである時間t1から時間t2の間に、一次コイル411には電磁エネルギが蓄積される。
このとき、エネルギ投入期間信号IGWはローレベル(図3中では「L」で示す。)であり、放電スイッチ57はオフされている。
また、点火信号IGTがハイレベルである期間、矩形波パルス状の充電スイッチ信号SWcが充電スイッチ53のゲートに入力される。すると、充電スイッチ53のオン後のオフ期間に、コンデンサ電圧Vdcがステップ状に上昇し、コンデンサ56が充電される。なお、コンデンサ56の充電は、点火信号IGTの発信に同期して開始する必要は必ずしもなく、エネルギ投入期間信号IGWが立ち上がる前に十分な電気エネルギが蓄積されていればよい。また、コンデンサ電圧Vdc(すなわちコンデンサ56のエネルギ蓄積量)は、充電スイッチ信号SWcのオンデューティ比およびオンオフ回数により制御可能である。
時間t2において、点火信号IGTがローレベルとなり、点火スイッチ451がオフされると、一次コイル411に通電されていた一次電流I1が急激に遮断され、一次電流I1により形成されていた磁界が消失する。すると、一次コイル411に形成されていた磁界を打ち消すように、二次コイル421に磁界が誘導され、二次コイル421に大きな二次電圧V2が生じる。二次電圧V2が放電電圧に達すると、第1点火プラグ701の電極間に火花放電が生じ、二次コイル421に二次電流I2(放電電流)が流れる。これにより、第1燃焼室171の混合気に点火される。
時間t2において、火花放電を発生させた後にエネルギ投入を行わない場合、二次電流I2は、破線で示すように、時間経過とともにゼロに近づき、放電を維持できない程度まで減衰すると放電が終了する。
一方、時間t2後のタイミングである時間t3において、エネルギ投入期間信号IGWがハイレベルになると、放電スイッチ信号SWdがハイレベルとなり、放電スイッチ57がオンされる。放電スイッチ57がオンされると、コンデンサ56に蓄えられていたエネルギが放出され、一次コイル411の接地側に投入される。これにより、一次コイル411には、投入エネルギPに起因する一次電流I1が通電される。投入エネルギPにより一次コイル411の接地側から一次電流I1が通電されると、一次電流I1の遮断により通電される二次電流I2に対し、投入エネルギPによる一次電流I1の通電に伴う追加分が同じ極性で重畳される。
時間t3から時間t4までの期間は、放電スイッチ信号SWdに応じ、放電スイッチ57のオンオフが繰り返される。本実施形態では、二次電流I2が減少して二次電流指令下限値I2*Lとなったときに放電スイッチ57をオンしてエネルギ投入部50から一次コイル411の接地側にエネルギを投入することで二次電流I2を増加させる。また、二次電流I2が増加して二次電流指令値I2*となったとき、放電スイッチ57をオフするように制御する。
これにより、二次電流I2には、放電スイッチ57がオンされる毎に、投入エネルギPによる一次電流I1の通電に伴う追加分が重畳される。すなわち、放電スイッチ信号SWdがオンになる毎にコンデンサ56の蓄積エネルギにより一次電流I1が順次追加され、これに対応して二次電流I2が順次追加される。これにより、二次電流I2は、二次電流指令下限値I2*Lと二次電流指令値I2*とで規定される所定範囲内となるように制御される。ここで、エネルギ投入部50から供給される投入エネルギPによる一次電流I1についても、「直流電源から供給される一次電流」の概念に含まれるものとする。
時間t4において、エネルギ投入期間信号IGWがローレベルになると、放電スイッチ信号SWdがオフ信号となり、放電スイッチ57のオンオフ作動が停止し、一次電流I1および二次電流I2がゼロとなる。
本実施形態では、点火スイッチ451のオフによる放電後、一次コイル411の接地側(すなわち低電圧側)から第1点火コイル401にエネルギを投入することにより、一次コイル411のバッテリ6側または二次コイル421の第1点火プラグ701と反対側から第1点火コイル401にエネルギを投入する場合と比較し、最低限のエネルギを効率よく投入し、点火状態を持続させることができる。ここで「点火状態」とは、燃焼室711にて燃焼が継続されていることを意味し、例えば二次電流I2が一時的にゼロになったとしても、燃焼室711にて燃焼が継続していれば、「点火状態が継続されている」とみなす。
ところで、筒内の気流の流速や燃焼時の温度等のばらつきにより、着火性が気筒毎に異なる。そのため、例えばエネルギ投入部50から一律にエネルギを投入すると、他の気筒に対して余分なエネルギを投入することになったり不足したりする。また、気筒毎の燃焼状態がばらついていると、エンジン13の回転変動や振動等が発生する虞がある。
そこで本実施形態では、二次電流I2に基づき、二次電流指令値(以下適宜、単に「指令値」という。)I2*を補正する二次電流補正値(以下適宜、単に「補正値」という。)I2cを気筒毎に学習する。
本実施形態の学習処理を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。学習処理は、ECU80にて実行される。本実施形態では、エネルギ投入期間信号IGWがローレベルになった後の所定のタイミングにて、直前のエネルギ投入期間信号IGWがオンであった期間を学習対象期間として実行されるものとする。ここでは1気筒分の処理について説明するが、気筒毎に同様の処理がなされる。なお、図3で説明したように、二次電流I2は負の電流であるので、以下においても、大小関係や増減等は絶対値として説明する。
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す)では、指令値演算部82は、二次電流基本指令値I2bを設定する。また補正値学習部81は、補正値I2cを設定する。補正値I2cは、初期値をゼロとし、2回目以降の処理においては、前回処理にて記憶された値を読み込む。
S102では、補正値学習部81は、学習対象期間において、エンジン13の運転状態が補正値I2cの学習可能な状態であったか否かを判断する。学習可能な状態とは、例えばエンジン13の回転数およびトルクが安定している定常運転状態とする。補正値I2cの学習ができないと判断された場合(S102:NO)、以下の処理を行わない。補正値I2cの学習が可能であると判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。
S103では、補正値学習部81は、二次電流検出回路65から二次電流I2を取得する。ここでは、学習対象期間の二次電流I2を取得する。
S104では、補正値学習部81は、学習対象期間の二次電流I2が判定閾値Ith11より低下することが所定回数以上あったか否かを判断する。判定閾値Ith11は、放電状態が途切れる所謂「吹き消え」を検出すべく、ゼロに近い値に設定される。また、所定回数は、1以上の任意の値とする。二次電流I2が判定閾値Ith11より低下することが所定回数未満である判断された場合(S104:NO)、S106へ移行する。二次電流I2が判定閾値Ith11より低下することが所定回数以上あったと判断された場合(S104:YES)、S105へ移行する。
S105では、補正値学習部81は、学習対象期間において、吹き消えが生じていたと判定し、補正値I2cを増加させる。本実施形態では、補正値I2cを所定増加量A11分だけ増加させる。
学習対象期間の二次電流I2が判定閾値Ith11より低下することが所定回数未満であると判断された場合(S104:NO)に移行するS106では、補正値学習部81は、二次電流I2が判定閾値Ith11より大きい状態が所定期間以上継続していたか否かを判断する。所定期間は、学習対象期間より短い任意の長さに設定される。二次電流I2が判定閾値Ith11より大きい状態が所定期間以上継続していないと判断された場合(S106:NO)、学習対象期間における二次電流I2は適切に制御されていると判定し、補正値I2cを変更せず、S108へ移行する。二次電流I2が判定閾値Ith11より大きい状態が所定期間以上継続していたと判断された場合(S106:YES)、S107へ移行する。
S107では、補正値学習部81は、学習対象期間においては燃焼が十分に安定しており、余剰な二次電流I2が供給されている可能性があると判定し、補正値I2cを減少させる。本実施形態では、補正値I2cを所定減少量A12分だけ減少させる。所定減少量A12は、S105における所定増加量A11と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
S106で否定判断された場合、S105またはS107に続いて移行するS108では、補正値学習部81は、前段の処理にて変更された、或いは、変更されていない補正値I2cを記憶する。また、補正値I2cを指令値演算部82に出力する。
S109では、指令値演算部82は、二次電流指令値I2*を演算する。二次電流指令値I2*は、二次電流基本指令値I2bおよび補正値I2cに基づき、式(1)により演算される。演算された二次電流指令値I2*は、次回のエネルギ投入期間における目標二次電流信号IGAの生成に用いられる。
I2*=I2b+I2c ・・・(1)
ここで、補正値I2cを増加させて二次電流指令値I2*を増加させることは、エネルギ投入部50から投入するエネルギ量を増加させるということである。また、補正値I2cを減少させて二次電流指令値I2*を減少させることは、エネルギ投入部50から投入するエネルギ量を減少させるということである。すなわち本実施形態では、二次電流指令値I2*が「エネルギ投入量」に対応し、補正値学習部81において、補正値I2cを学習することが、「エネルギ投入部から投入するエネルギ投入量を学習する」ことに対応する。
吹き消えが生じた場合の二次電流I2を図5に基づいて説明する。図5では、共通時間軸を横軸とし、縦軸に上から順に二次電流I2、二次電圧V2、一次電流I1を示している。ここでの説明では、図4中のS104の判断に係る所定回数を「1」とする。
エネルギ投入部50によるエネルギ投入により、図5に示すような一次電流I1が通電されたとき、学習対象期間中の時間txにおいて、二次電流I2が判定閾値Ith11よりも低下したとする(S104:YES)。本実施形態では、補正値I2cを増加させ(S105)、次回のエネルギ投入期間における二次電流指令値I2*を増加させる(S109)。これにより、次回点火のエネルギ投入期間における吹き消えが生じにくくなる。
本実施形態では、学習処理は気筒毎に実行されるので、例えば、第1の気筒では吹き消えが生じており、第2の気筒では吹き消えが生じていない場合、第1の気筒では二次電流指令値I2*を増加方向に補正するが、第2の気筒では二次電流指令値I2*を補正しない、といった具合に、二次電流指令値I2*を気筒毎に適切な値とすることができる。
以上詳述したように、本実施形態のECU80は、点火装置30を備えるエンジンシステム10を制御する。
点火装置30は、点火コイル401、402、イグナイタ部441、442、エネルギ投入部50、および、二次電流検出回路65を有する。
第1点火コイル401は、バッテリ6から供給される一次電流I1が流れる一次コイル411、および、エンジン13の燃焼室17において混合気に点火する第1点火プラグ701の電極に接続され一次電流I1の通電および遮断によって発生する二次電圧V2が印加され二次電流I2が流れる二次コイル421を有する。また、第2点火コイル402も同様、一次コイル412および二次コイル422を有する。第1点火コイル401および第2点火コイル402は、エンジン13の気筒毎に設けられる。
第1イグナイタ部441は、点火スイッチ451を有する。点火スイッチ451は、一次コイル411のバッテリ6と反対側である接地側に接続され、一次電流I1の通電および遮断を切り替える。第2イグナイタ部442も同様、点火スイッチ452を有する。第1イグナイタ部441および第2イグナイタ部442は、点火コイル401、402毎に設けられる。
エネルギ投入部50は、点火スイッチ451、452により一次電流I1を遮断し当該遮断による電圧により点火プラグ701、702に放電が発生した後のエネルギ投入期間において、エネルギを投入する。詳細には、エネルギ投入部50は、エネルギ投入期間において、点火状態を継続可能なエネルギを同じ放電電流の極性のままで気筒毎に投入する。
ECU80の補正値学習部81は以下の処理を実行する。補正値学習部81は、二次電流I2を取得し(図4中のS103)、取得された二次電流I2に基づき、エネルギ投入部50から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習する(S105、S107およびS108)。
本実施形態の点火装置30は、エネルギ投入部50を備え、一次電流I1の遮断により通電される二次電流I2により点火プラグ701、702にて放電を発生させた後に、エネルギ投入部50により点火状態を継続可能なエネルギを投入するので、失火を抑制することができる。
また、二次電流I2に基づいて補正値I2cを気筒毎に学習し、二次電流指令値I2*を補正している。換言すると、二次電流I2に基づいてエネルギ投入部50から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習している。これにより、気筒毎の燃焼状態のばらつきを低減可能である。また、最も着火性の悪い気筒に合わせて一律にエネルギ投入量を補正する場合と比較し、エネルギ投入量を低減することができる。さらにまた、気筒毎の燃焼状態のばらつきが低減されるので、エンジン13の回転変動や振動等を抑制することができる。
補正値学習部81は、学習対象期間における二次電流I2と判定閾値Ith11との比較結果に基づき、放電後の二次電流I2の制御に係る二次電流指令値I2*を補正する補正値I2cを学習する。
詳細には、補正値学習部81は、学習対象期間において、判定閾値Ith11より二次電流I2の絶対値が小さくなることが所定回数以上あった場合(図4中のS104:YES)、二次電流指令値I2*の絶対値を増加させる方向となるように補正値I2cを変更する(S105)。これにより、二次電流検出値が小さい気筒において、二次電流指令値I2*が増加する方向に補正されるので、エネルギ投入部50からのエネルギ投入量を増加させることができ、吹き消えを抑制することができる。
また、補正値学習部81は、学習対象期間において、判定閾値Ith11より二次電流I2の絶対値が大きい状態が所定期間以上継続した場合(S106:YES)、二次電流指令値I2*の絶対値を減少させる方向となるように補正値I2cを変更する(S107)。これにより、二次電流I2が継続的に大きい気筒において、二次電流指令値I2*が減少する方向に補正されるので、エネルギ投入部50からのエネルギ投入量を減少させることができ、余剰なエネルギ投入を抑制することができる。
エネルギ投入部50は、一次コイル411の接地側から第1点火コイル401にエネルギを投入する。これにより、一次コイル411のバッテリ6側または二次コイル421の第1点火プラグ701と反対側からエネルギを投入する場合と比較し、最低限のエネルギを効率よく投入することができる。他の気筒に対応する構成についても同様である。
本実施形態では、補正値学習部81が「二次電流取得手段」および「学習手段」を構成する。また、図4中のS103が「二次電流取得手段」の機能としての処理に対応し、S105、S107およびS108が「学習手段」の機能としての処理に対応する。
また、判定閾値Ith11が「二次電流増加用閾値」および「二次電流減少用閾値」に対応する。すなわち、本実施形態では、二次電流増加用閾値と二次電流減少用閾値とが等しい。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による点火装置を図6および図7に基づいて説明する。第2実施形態および後述の第3実施形態は、学習処理が上記実施形態と異なっているので、この点を中心に説明する。また、システム構成等は上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態の学習処理を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。前提条件等は図4と同様とする。
S201〜S203は、図4中のS103〜S103と同様である。
S204では、補正値学習部81は、学習対象期間の二次電流I2が第1判定閾値Ith21より低下することが第1所定回数以上あったか否かを判断する。第1判定閾値Ith21は、上記実施形態の判定閾値Ith11と同様、吹き消えを検出すべく、ゼロに近い値に設定される。また、第1所定回数は、1以上の任意の値とする。二次電流I2が第1判定閾値Ith21より低下することが第1所定回数未満であると判断された場合(S204:NO)、S206へ移行する。二次電流I2が第1判定閾値Ith21より低下することが第1所定回数以上あったと判断された場合(S204:YES)、S205へ移行する。
S205では、補正値学習部81は、学習対象期間において、放電状態が途切れる吹き消えが生じていたと判定し、補正値I2cを増加させる。本実施形態では、補正値I2cを第1増加量A21分だけ増加させる。第1増加量A21は、上記実施形態の第1増加量A21と同様の値とするが、異なっていてもよい。
学習対象期間の二次電流I2が第1判定閾値Ith21より低下することが所定回数未満であると判断された場合(S204:NO)に移行するS206では、補正値学習部81は、二次電流I2が第2判定閾値Ith22より低下することが第2所定回数以上あったか否かを判断する。第2判定閾値Ith22は、第1判定閾値Ith21より大きい値であって、二次電流I2の制御下限に設定される。また、第2所定回数は、1以上の任意の値とする。二次電流I2が第2判定閾値Ith22より低下することが第2所定回数未満であると判断された場合(S206:NO)、S208へ移行する。二次電流I2が第2判定閾値Ith22より低下することが第2所定回数以上であると判断された場合(S206:YES)、S207へ移行する。
S207では、補正値学習部81では、学習対象期間において、二次電流I2が制御範囲から外れることがあったと判定し、補正値I2cを増加させる。本実施形態では、補正値I2cを第2増加量A22分だけ増加させる。第2増加量A22は、第1増加量A21より小さい値とする。
学習対象期間の二次電流I2が第2判定閾値Ith22より低下することが所定回数未満であると判断された場合(S206:NO)に移行するS208では、補正値学習部81は、二次電流I2が第3判定閾値Ith23より大きい状態が所定期間以上継続していたか否かを判断する。第3判定閾値Ith23は、第2判定閾値Ith22より大きい値であって、二次電流指令値I2*より小さい値である。所定期間は、図4中のS106と同様、学習対象期間より短い任意の長さに設定される。二次電流I2が第3判定閾値Ith23より大きい状態が所定期間以上継続していないと判断された場合(S208:NO)、学習対象期間における二次電流I2は適切に制御されていると判定し、補正値I2cを変更せず、S210へ移行する。二次電流I2が第3判定閾値Ith23より大きい状態が所定期間以上継続していたと判断された場合(S208:YES)、S209へ移行する。
S209では、補正値学習部81は、学習対象期間においては燃焼が十分に安定しており、余剰な二次電流I2が供給されている可能性があると判定し、補正値I2cを減少させる。本実施形態では、補正値I2cを所定減少量A23分だけ減少させる。第3減少量A23は、第1増加量A21または第2増加量A22と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
S208で否定判断された場合、S205、S207またはS209に続いて移行するS210およびS211は、図4中のS108およびS109と同様である。
ここで、各閾値について、図7に基づいて説明する。図7では、時間軸を横軸とし、縦軸を二次電流I2とする。
図7に示すように、第1判定閾値Ith21は、吹き消えの検出に係る閾値であるので、比較的ゼロに近い値に設定される。また、第2判定閾値Ith22および第3判定閾値Ith23は、第1判定閾値Ith21より大きい値であり、第2判定閾値Ith22と第3判定閾値Ith23にて、二次電流I2の下限値の制御範囲である二次電流制御範囲が規定される。なお、二次電流I2の下限値とは、放電スイッチ57のオンにより二次電流I2が減少から増加に転じた値である。
図7に示す例では、例えば所定期間が学習対象期間の半分程度に設定されているとすると、二次電流I2は、二次電流I2が第3判定閾値Ith23より大きい状態が所定期間以上継続しているので(図6中のS208:YES)、補正値I2cを減少させ(S209)、次回のエネルギ投入期間における二次電流指令値I2*を減少させる(S211)。これにより、過不足なくエネルギを投入し、二次電流I2を適切に制御することができる。
本実施形態の補正値学習部81は、学習対象期間において、第1判定閾値Ith21より二次電流I2の絶対値が小さくなることが第1所定回数以上であった場合(図6中のS204:YES)、二次電流指令値I2*を増加させる方向となるように補正値I2cを変更する(S205)。
また、補正値学習部81は、学習対象期間において、第2判定閾値Ith22より二次電流I2の絶対値が小さくなることが第2所定回数以上であった場合(S206:YES)、二次電流指令値I2*を増加させる方向となるように補正値I2cを変更する(S207)。
さらにまた、補正値学習部81は、学習対象期間において、第3判定閾値Ith23より二次電流I2の絶対値が大きい状態が所定期間以上継続した場合(S208:YES)、二次電流指令値I2*を減少させる方向となるように補正値I2cを変更する。
このように構成しても上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、図6中のS203が「二次電流取得手段」の機能としての処理に対応し、S205、S207、S209およびS210が「学習手段」の機能としての処理に対応する。
本実施形態では、第1判定閾値Ith21および第2判定閾値Ith22が「二次電流増加用閾値」に対応し、第3判定閾値Ith23が「二次電流減少用閾値」に対応する。すなわち、本実施形態では、二次電流増加用閾値と二次電流減少用閾値とが異なる。これにより、より適切な二次電流指令値I2*とすることができる。
また、本実施形態では、「第1所定回数」および「第2所定回数」が「所定回数」に対応する。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による点火装置を図8および図9に基づいて説明する。
本発明の学習処理を図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
S301では、指令値演算部82は、二次電流基本指令値I2bを設定する。
S302では、図4中のS102と同様、補正値学習部81は、学習対象期間において、エンジン13の運転状態が補正値I2cの学習可能な状態であったか否かを判断する。補正値I2cの学習ができないと判断された場合(S302:NO)、以下の処理を行わない。補正値I2cの学習が可能であると判断された場合(S302:YES)、S303へ移行する。
S303では、補正値学習部81は、学習対象期間におけるエンジン運転領域を特定する。エンジン運転領域は、図9に示すようにエンジン13の回転数および負荷である動作点に応じてマップ化されている。図9の例では、エンジン13の回転数および負荷を各3段階で分け、領域1−1〜1−3、領域2−1〜2−3、領域3−1〜3−3の9つの領域に分けている。運転領域の分け方は、図9の例に限らず、どのようであってもよい。
S304では、補正値学習部81は、運転領域に応じた補正値I2cを設定する。補正値I2cは、初期値をゼロとし、S303にて特定された運転領域に対応する補正値I2cが以前の学習処理にて既に記憶されている場合には、記憶されている値を読み込む。
S305〜S309の処理は、図4中のS103〜S107の処理と同様である。なお、これに替えて、図6中のS203〜S209の処理としてもよい。
S308にて否定判断された場合、S307またはS309に続いて移行するS310では、補正値学習部81は、前段の処理にて変更された、或いは、変更されていない補正値I2cを運転領域と関連づけて記憶する。また、補正値I2cを指令値演算部82に出力する。
S311の処理は、図4中のS109と同様である。
本実施形態では、補正値学習部81は、エンジン13の回転数および負荷である動作点に応じて補正値I2cを学習する。換言すると、エンジン13の動作点に応じて、エネルギ投入部50から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習している。これにより、エンジン13の動作点に応じ、最適なエネルギ投入量とすることができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、図8中のS305が「二次電流取得手段」の機能としての処理に対応し、S307、S309およびS310が「学習手段」の機能としての処理に対応する。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による点火装置を図10〜図14に基づいて説明する。
例えば第1実施形態にて説明したように、学習対象期間において、二次電流I2が判定閾値Ith11より小さくなることが所定回数以上であると、吹き消えが生じたと判定し、補正値I2cを増加させる。また、燃焼室17内の気流の速度(以下、「筒内流速」という。)が大きい場合、吹き消えが生じやすいため、学習処理を繰り返すことにより補正値I2cが大きな値となる。すなわち図10に実線L1で示すように、補正値I2cが大きいほど、筒内流速が大きいと推定される。
そこで本実施形態では、図11に示すように、ECU80は運転調整部85を有し、運転調整部85は補正値I2cに基づき、エンジン13の運転条件を気筒毎に調整する。図11は、運転調整部85が追加されている点を除き、図2と同様である。
詳細には、運転調整部85は、図12に実線L2で示すように、補正値I2cに応じ、補正値I2cが大きいほど点火時期を遅角するように点火時期を調整する。
運転調整部85は、図13(a)に実線L3で示すように、補正値I2cに応じ、補正値I2cが大きいほど、空燃比(A/F比)を大きくするように、スロットル弁14の開度およびインジェクタ16からの燃料噴射量を調整する。また図13(b)に実線L4で示すように、補正値I2cが大きいほど、還流されるEGRガス量が多くなるように、EGR弁77の開度を調整する。
また、運転調整部85は、図14に実線L5で示すように、補正値I2cに応じ、補正値I2cが大きいほど、エネルギ投入部50からのエネルギ投入期間が長くなるように、エネルギ投入期間信号IGWを調整する。
本実施形態では、補正値I2cと筒内流速とが比例関係があることに着目し、補正値I2cを筒内流速とみなし、補正値I2cに基づいてエンジン13の運転条件を気筒毎に調整する。これにより、気筒毎の燃焼状態のばらつきをより低減可能であるので、エンジン13の回転変動や振動等をより抑制することができる。
本実施形態では、ECU80は、補正値I2cに基づき、エンジン13の運転条件を気筒毎に調整する運転調整部85を備える。本実施形態では、エンジン13の運転条件とは、点火時期、空燃比、還流するEGRガス量、および、エネルギ投入期間である。
これにより、筒内流速に応じてエンジン13の運転条件が気筒毎に調整されるので、気筒毎の燃焼状態のばらつきをより低減することができ、エンジン13の回転変動や振動をより抑制することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
(他の実施形態)
(ア)学習手段
上記実施形態では、補正値学習部は、学習処理毎に補正値を所定幅にて増加または減少させる。他の実施形態では、増加量および減少量の少なくとも一方を、例えば二次電流の最小値と判定閾値との差分値に応じた値とする、といった具合に、二次電流に応じて可変としてもよい。
上記実施形態では、学習対象期間は、直前のエネルギ投入期間信号がオンであった期間を学習対象期間とする。他の実施形態では、複数周期のエネルギ投入期間信号がオンであった期間を1回の学習対象期間としてもよい。また、学習対象期間を十分に短くし、瞬時値に基づいて補正値を学習してもよい。
第2実施形態では、二次電流増加用閾値が2つであり、二次電流減少用閾値が1つであり、異なる3つの判定閾値を用いる。他の実施形態では、二次電流増加用閾値が1つであり、二次電流減少用閾値が二次電流増加用閾値とは異なる値であって1つであるといった具合に、2つの判定閾値を用いてもよい。また、二次電流増加用閾値は3つ以上であってもよい。さらにまた、二次電流減少用閾値を複数としてもよい。判定閾値を増やすことにより、より細かく二次電流指令値を設定することができる。
また、上記実施形態では、学習手段は、二次電流増加用閾値よりも二次電流の絶対値が小さくなることが所定回数以上あった場合、二次電流指令値の絶対値を増加させる方向となるように補正値を変更する。他の実施形態では、二次電流増加用閾値よりも二次電流の絶対値が小さい期間が所定の判定期間より長かった場合、二次電流指令値の絶対値を増加させる方向となるように補正値を変更してもよい。
上記実施形態では、内燃機関の運転条件が学習可能な状態である場合、補正値の学習を行う。他の実施形態では、例えばハイブリッド車両のように、駆動源として内燃機関の他にモータジェネレータを備える場合、モータジェネレータから出力されるパワーを調整することで、内燃機関の運転状態を学習可能な定常運転状態とし、学習処理を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、二次電流指令値を「エネルギ投入量」とみなし、補正値学習部では二次電流指令値を補正する二次電流補正値を学習する。他の実施形態では、エネルギ投入部から投入されるエネルギ投入量を気筒毎に変更可能であれば、学習手段により学習される値は二次電流補正値に限らず、どのような値としてもよい。
(イ)運転調整部
第4実施形態では、運転調整部は、内燃機関の運転条件として、点火時期、A/F比、EGR還流量、および、エネルギ投入部によるエネルギ投入期間を補正値に基づいて調整する。他の実施形態では、点火時期、A/F比、EGR還流量、および、エネルギ投入部の一部の調整を省略してもよい。また、他の運転条件を補正値に基づいて調整してもよい。
また、第4実施形態では、補正値から運転条件を直接的に調整する。他の実施形態では、補正値に基づいてマップ演算等により筒内流速を推定し、推定された筒内流速に基づいて運転条件を調整するように構成してもよい。
(ウ)異常通知
第1実施形態では、二次電流検出値が判定閾値より低下することが所定回数以上であった場合、吹き消えと判定する。他の実施形態では、吹き消えと判定された場合、異常を通知するように構成してもよい。
また、第2実施形態では、二次電流検出値が第1判定閾値より低下することが所定回数以上であった場合、吹き消えと判定する。他の実施形態では、吹き消えと判定された場合、異常を通知するように構成してもよい。また、二次電流検出値の下限値が二次電流制御範囲から外れた場合、異常を通知するように構成してもよい。
(エ)EGR装置
上記実施形態では、EGR配管は、触媒の上流側と吸気マニホールドとを連通する。他の実施形態では、例えば触媒の下流側からEGRガスを吸気側に還流する等、EGR配管の取り回しは、どのように構成してもよい。
また上記実施形態では、EGR装置により、燃焼により生じた排気の一部をEGRガスとして吸気側に還流して燃焼室に供給する、所謂「外部EGR」である。他の実施形態では、EGR装置を省略し、排気弁の開閉駆動を制御することにより排気の一部を燃焼室に戻す、所謂「内部EGR」としてもよい。また、排気還流を行わなくてもよい。
(オ)エネルギ投入部
上記実施形態では、エネルギ投入部は、点火状態を継続可能なエネルギを一次コイルの接地側から投入する。他の実施形態では、エネルギ投入部は、点火状態を継続可能なエネルギを投入可能であればどのようなものであってもよく、従来の多重放電方式や、例えば特開2012−167665号公報に開示された「DCO方式」としてもよい。例えば、DCO方式を採用する場合、2つの点火コイルのうちの主放電を開始する方を「点火コイル」とみなし、主放電後の点火動作を「エネルギ投入部」とみなしてコイル電源を制御して二次電流を制御したり点火継続時間を制御したりすればよい。
(カ)点火回路ユニット
点火回路ユニットは、電子制御ユニットを収容するハウジング内に収容してもよい。また、点火回路ユニットは、点火コイルを収容するハウジング内に収容してもよい。
点火スイッチおよびエネルギ投入部は、別々のハウジング内に収容してもよい。例えば、点火コイルを収容するハウジング内に点火スイッチが収容され、電子制御ユニットを収容するハウジング内にエネルギ投入部が収容されてもよい。
(キ)点火スイッチ、充電スイッチ、放電スイッチ、気筒分配スイッチ
上記実施形態では、点火スイッチはIGBTにより構成される。他の実施形態では、点火スイッチは、IGBTに限らず、比較的耐圧の高い他のスイッチング素子により構成してもよい。
また、上記実施形態では、充電スイッチ、放電スイッチ、および、気筒分配スイッチは、MOSFETで構成される。他の実施形態では、充電スイッチ、放電スイッチ、および、気筒分配スイッチの少なくとも1つは、MOSFETに限らず、IGBT等の他のスイッチング素子により構成してもよい。
(ク)直流電源
上記実施形態では、直流電源はバッテリにより構成される。他の実施形態では、直流電源は、バッテリに限らず、例えば交流電源をスイッチングレギュレータ等により安定化した直流安定化電源等により構成してもよい。
また、直流電源が、例えばハイブリッド車両や電気自動車の主機バッテリ等、出力電圧が高い場合、DCDCコンバータを省略して出力電圧をそのまま用いたり、或いは、出力電圧を降圧して用いたりしてもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
6・・・バッテリ(直流電源)
7・・・点火プラグ
10・・・エンジンシステム(内燃機関システム)
17・・・燃焼室
30・・・点火装置
40・・・点火コイル
44・・・イグナイタ部
50・・・エネルギ投入部
80・・・ECU(内燃機関の制御装置)
81・・・補正値学習部(二次電流取得手段、学習手段)

Claims (7)

  1. 直流電源(6)から供給される一次電流が流れる一次コイル(411、412)、および、内燃機関(13)の燃焼室(171、172)において混合気に点火する点火プラグ(701、702)の電極に接続され前記一次電流の通電および遮断によって発生する二次電圧が印加され二次電流が流れる二次コイル(421、422)を有し、前記内燃機関の気筒毎に設けられる点火コイル(401、402)、
    前記一次コイルの前記直流電源と反対側である接地側に接続され前記一次電流の通電および遮断を切り替える点火スイッチ(451、452)を有し、前記点火コイル毎に設けられるイグナイタ部(441、442)、
    および、前記点火スイッチにより前記一次電流を遮断し当該遮断による電圧により前記点火プラグにて放電が発生した後において、エネルギを投入するエネルギ投入部(50)、
    を有する点火装置(30)を備える内燃機関システム(10)を制御する内燃機関の制御装置(80)であって、
    前記二次電流を取得する二次電流取得手段(81)と、
    前記二次電流取得手段により取得された前記二次電流に基づき、前記エネルギ投入部から投入するエネルギ投入量を気筒毎に学習する学習手段(81)と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記学習手段は、学習対象期間における前記二次電流と判定閾値との比較結果に基づき、放電後の前記二次電流の制御に係る二次電流指令値を補正する補正値を学習することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記学習手段は、前記学習対象期間において、前記判定閾値である二次電流増加用閾値より前記二次電流の絶対値が小さくなることが所定回数以上あった場合、前記二次電流指令値の絶対値を増加させる方向となるように前記補正値を変更することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記学習手段は、前記学習対象期間において、前記判定閾値である二次電流減少用閾値より前記二次電流の絶対値が大きい状態が所定期間以上継続した場合、前記二次電流指令値の絶対値を減少させる方向となるように前記補正値を変更することを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記補正値に基づき、前記内燃機関の運転条件を前記気筒毎に調整する運転調整部(85)を備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記学習手段は、前記内燃機関の回転数および負荷である動作点に応じて前記エネルギ投入量を学習することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 前記エネルギ投入部は、前記一次コイルの接地側から前記点火コイルにエネルギを投入することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
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