JP2015199817A - 放射線硬化型インクジェット組成物、放射線硬化型インクジェット組成物収容体、及びインクジェット方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤と重合性化合物とを含有し、組成物の溶存酸素量が0〜8.0kPaであり、組成物収容体に収容された、放射線硬化型インクジェット組成物。
【選択図】なし
Description
また、本発明は、吐出安定性に優れ、硬化性にも優れた放射線硬化型インクジェット組成物の製造方法を提供することを目的の一つとする。
[1]
常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤と重合性化合物とを含有し、組成物の溶存酸素量が0〜8.0kPaであり、組成物収容体に収容された、放射線硬化型インクジェット組成物。
前記光重合開始剤の組成物に対する含有量が1〜15質量%である、[1]に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
前記重合性化合物としてベンゼン環含有(メタ)アクリレートを含む、[1]又は[2]に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
前記重合性化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、[1]〜[3]の何れかに記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
放射線硬化型インクジェット組成物の調製の際に、前記光重合開始剤と前記重合性化合物の少なくとも一部とを混合した混合物に超音波を放射する超音波処理、あるいは当該混合物に加温する加温処理の少なくとも何れかを施したものである、[1]〜[3]の何れかに記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
前記組成物収容体が、酸素透過率が5.0cc・20μm/(m2・day・atm)以下である部材により構成された容器に放射線硬化型インクジェット組成物を充填したものである、[1]〜[5]の何れかに記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
[7]
前記処理が、前記超音波の照射あるいは加温の少なくとも何れかを混合物に行いつつ、混合物を撹拌するものである、[5]に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
[1]〜[7]の何れかに記載の放射線硬化型インクジェット組成物を収容した組成物収容体。
[1]〜[7]の何れかに記載の放射線硬化型インクジェット組成物をインクジェットヘッドから吐出するインクジェット方法。
常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤と重合性化合物とを含有する放射線硬化型インクジェット組成物の製造方法であって、
組成物の溶存酸素量を0〜8.0kPaとする、放射線硬化型インクジェット組成物の製造方法。
本実施形態の放射線硬化型インクジェット組成物(以下、単にインクジェット組成物とか組成物ともいう。)は、インクジェット法によりインクジェットヘッドから吐出して用いる組成物である。以下、放射線硬化型インクジェット組成物の1実施形態として放射線硬化型インクジェットインク組成物(単にインク組成物とかインクともいう)を記載する場合があるが、組成物はインク組成物以外の組成物でも良い。また、「放射線硬化型」の1実施形態として「紫外線硬化型」と記載する場合があるが、本実施形態において組成物は放射線を照射することにより硬化させて用いる放射線硬化型組成物であればよく、紫外線硬化型や紫外線硬化型組成物を放射線硬化型や放射線硬化型組成物と読み替えてもよい。放射線としては、紫外線、赤外線、可視光線、エックス線等があげられる。放射線として、放射線源が入手しやすく広く用いられている点、及び紫外線の放射による硬化に適した材料が入手しやすく広く用いられている点から、紫外線が好ましい。本実施形態におけるインクジェット組成物は、常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤と、重合性化合物とを含む。以下、本実施形態におけるインクジェット組成物に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
本実施形態の組成物は、光重合開始剤として、常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド(アシルホスフィンオキサイドともいう)系光重合開始剤を含む。常温、単体で固体であるとは、25℃において当該光重合開始剤の単体で固体であるものをいう。固体は紛体、粒体などであってもよい。アシル基として2官能以上であり、2官能が好ましい。以下、上記の光重開始剤を特定の光重合開始剤とも言う。
インク組成物はその他の光重合開始剤をさらに含んでもよい。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。その他の光重合開始剤としては、光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物の重合を開始させるものであれば制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
その他の光重合開始剤の中でも、特に、硬化性、溶解性、安全性、コスト性に優れるチオキサントン系光重合開始剤を含んでもよい。チオキサントン系光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられ、チオキサントン系光重合開始剤を含有することで、インク組成物の硬化性を向上させることができる。放射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。
組成物は重合性化合物を含む。重合性化合物は、単独で、又は光重合開始剤の作用により、放射線照射時に重合されて、印刷されたインク組成物を硬化させることができる。重合性化合物としては、特に限定されないが、具体的には、従来公知の、重合性官能基、特に、炭素間の不飽和二重結合を有する重合性官能基の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。重合性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以下これら重合性化合物について例示する。
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
上記の重合性化合物の中でも、ベンゼン環含有(メタ)アクリレート(ベンゼン環含有(メタ)アクリルモノマー)が、光重合開始剤、特に本実施形態に用いる前述の特定の光重合開始剤の溶解性が優れ組成物の保存安定性(特に低温保存安定性)や吐出安定性が特に優れる点や、硬化性が一層優れる点で好ましい。ベンゼン環含有(メタ)アクリレートは、無置換または置換されたベンゼン環を有し、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物である。光重合開始剤の溶解性が特に優れ、低粘度な点で、(メタ)アクリロイル基数としては、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。また、重合性官能基数として好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。ベンゼン環が置換されている場合、置換基は、炭素数1〜6の炭化水素基あるいはアルコキシ基、水酸基などが挙げられる。置換されている場合、置換数は1〜5であり1〜3が好ましい。置換基は同一または異なるものであってもよい。上記の効果の点で無置換が好ましい。
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤としてヒンダードアミン化合物やその他のものをさらに含んでもよい。その他の重合禁止剤として、以下に限定されないが、例えば、p−メトキシフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ヒドロキノン、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
インク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
インク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アベシア(Avecia)社やノベオン(Noveon)社から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
インク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、スリップ剤(界面活性剤)、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
本実施形態における組成物は、組成物収容体(単に収容体ともいう)に収容された状態において溶存酸素量が0〜8.0kPaであることが、組成物の吐出安定性や保存安定性(特に低温保存安定性)の点で必要である。溶存酸素量は後述の実施例の方法で測定することができる。組成物は、組成物の調製を行った時点(組成物を製造した時点)において、溶存酸素量が0〜8.0kPaである組成物としてもよい。
組成物の製造(調製)は、組成物に含有する各成分を混合し、成分が充分均一に混合するよう撹拌することで行うことができる。本実施形態において、組成物の調製は、調製の過程において、少なくとも、常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤と重合性化合物の少なくとも一部とを混合した混合物に対して、超音波処理と加温処理の少なくとも何れかを施す工程を有することが、調製後の組成物の溶存酸素量を0〜8.0kPaとし易く、吐出安定性や保存安定性に優れた補正物とし易い点で好ましく、超音波処理を施す工程を有することがより好ましい。上記混合物は、少なくとも上記の成分を含むものであればよく、組成物に含む他の成分を更に含むものでも良いし、組成物に含む全ての成分を含むものでもよい。混合物に含む重合性化合物は、組成物に含む重合性化合物の少なくとも一部であればよい。
組成物の調製の際、少なくとも、常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤(以下、特定の光重合開始剤ともいう)と重合性化合物の少なくとも一部とを混合した混合物に対して超音波を照射する超音波処理を施すことが、調製後の組成物の溶存酸素量を0〜8.0kPaとし易く、吐出安定性や保存安定性に優れた補正物とし易い点で好ましい。その理由としては、上記特定の光重合開始剤は、重合性化合物に対する溶解性が低い傾向があり、超音波処理を施すことで、光重合開始剤の微細な粒子の残存がなくなり、インクジェットヘッドからの吐出を妨げることや組成物の保存中に光重合開始剤が析出してしまうことがなくなったと推測する。また、このことにより、光重合開始剤の粒子の内部や表面に付着し残っていた気泡が光重合開始剤から離脱して組成物中に放出され、放出した気泡が超音波の振動により組成物から追い出されることにより、吐出安定性が向上し、組成物の溶存酸素量が上記の範囲に入りやすいと推測する。
超音波処理は、混合物に対して超音波を照射しつつ組成物を撹拌する撹拌処理を行うものとすることが、混合物の全体に均一に超音波の放射ができ超音波の効果である吐出安定性や保存安定性が一層優れる点で好ましい。これにより、光重合開始剤の溶解が一層促進されると推測する。撹拌は少なくとも超音波処理における超音波を照射する時間帯の一部で行えばよく、超音波を照射する全時間帯のうちの30%以上の時間で行うことが上記の効果の点で好ましく50%以上で行うことがより好ましい。撹拌は、スクリュー、スターラーなどを用いて混合物のほぼ全体が回流するように行えばよい。
組成物の調製の際、前述の超音波処理を行う混合物として述べた混合物と同様の混合物に対して、超音波処理の代わりにあるいは加えて加温を施す加温処理を施してもよい。混合物に加温を行うことによっても上記の光重合開始剤の溶解が促進し、重合開始剤の微細な粒子の残存がなくなることで、超音波処理と同様の効果が得られたと推測する。加温処理の条件や方法はここに記載すること以外は上述の超音波処理と同様にすることができる。
加温は、混合物の温度として40℃以上で行うことが上記の効果を得る点で好ましく、40〜50℃とすることがより好ましい。加温処理の処理時間は、上記の効果を充分得る点や組成物調製の効率化の点で20分〜200分が好ましい。加温は発熱体から発した熱を組成物に直接または間接に付与したり、赤外線などを照射したりすることで行えばよい。本実施形態において、加温を行う加温処理を加熱を行う加熱処理ともいう。
加温処理は、混合物に加温を行いつつあるいは加温の後に混合物を減圧脱気するものであることが、上記の効果が一層優れる点で好ましく、加温を行いつつ減圧脱気を行うことがより好ましい。加温により光重合開始剤から離脱し組成物中に放出した気泡を組成物から追い出すために減圧脱気が効果的であったと推測する。減圧脱気は−70〜−90MPaの減圧で行うことが上記の効果の効率の点で好ましい。
本実施形態の組成物収容体は、紫外線硬化型インクジェット組成物を収容したものである。以下組成物収容体の1実施形態としてインク収容体と記載する場合もあるがインク収容体に限らず組成物収容体であればよい。本実施形態の組成物収容体の態様としては、以下に限定されないが、例えば、インクカートリッジ、パック、ボトル、タンク、ビン、缶が挙げられる。これらの中でも、汎用されており、かつ、後述の酸素透過度を所望の値に制御しやすいため、インクカートリッジ、パック、ボトル、タンクが好ましく、パックがより好ましく、フィルムのパックが特に好ましい。収容体が備える部品のうち組成物と接触して組成物が直接的に充填されている部品を特に容器と呼ぶ。例えばインクカートリッジである組成物収容体の場合、インクカートリッジの内部に備えるインクパックが容器である。容器がそれ自身で収容体であるような収容体、例えば容器のみからなる収容体としてもよい。例えばボトルなどである。
なお、上記の(A)及び(C)は、インク容器からインクチューブ等の接続部を介して記録装置にインクを供給している状態で、記録装置の印刷を行うインク収容体と言うことができる。
本実施形態のインクジェット装置は、放射線硬化型インクジェット組成物を組成物収容体から流路を介してインクジェットヘッド(ヘッド)に送給する送給手段と、インクジェットヘッドから紫外線硬化型インクジェット組成物を吐出する吐出手段を備える。組成物収容体とインクジェットヘッドの間の流路において、紫外線硬化型インクジェット組成物を脱気する脱気手段を備えてもよい。
本実施形態において、インクジェット装置の1実施形態としてインクジェット記録装置又はインクジェットプリンターとも記載するが、インクジェット装置は記録装置やプリンター以外のインクジェット装置でも良い。インクジェット装置は、吐出手段に加えて、吐出された組成物を紫外線の照射によって硬化する硬化手段も備えることができる。
インクジェット装置は、前記紫外線硬化型インクジェット記録用インク組成物を、ヘッドから吐出するものである。以下、図面を用いて具体的に説明するが吐出手段は以下に限られない。図2は本実施形態のインクジェット記録装置のヘッドの周囲の一例を表す概略図である。サブタンク200はインクカートリッジ(図示せず)からインクの供給を受け、加圧ポンプ202によってインクを脱気機構の一例である脱気モジュール204、ヒーター220の順に通過させて、複数個設けられたヘッド100に供給する。
送給手段は上記の組成物収容体から吐出手段まで組成物を送給する装置である。組成物収容体から吐出手段までの間の組成物が送給される経路を流路と言う。流路としては、図2のインクカートリッジからサブタンク200までのインクの経路、サブタンク200、サブタンク200からヘッド100までの経路、ヘッド100の内部においてインクがヘッドのノズルから吐出されるまでの経路、ヘッド100からサブタンク200までインクを戻しサブタンク200から再びインクをヘッド100へ送給可能とする循環経路があげられる。
本実施形態のインクジェット装置は脱気手段(脱気機構ともいう)を備えてもよい。備える場合、インクジェット装置において、組成物から気泡や酸素などの気体を取り除く脱気をおこなうことで、吐出安定性を向上することができる。ヘッド100に供給するまでの間に、組成物収容体の長期保管中や、送給手段において、インクパックや送給手段の部材を介して、気泡や酸素が組成物に侵入することがあり、脱気手段を備えることが、上記の点で好ましい。以下脱気手段の1実施形態として脱気モジュールを記載する。図2の脱気モジュール204内には、インクが流入する脱気室(図示せず)と、空気などの気体を通してインクなどの液体を通さない分離膜を介して脱気室と接する減圧室(図示せず)と、が設けられている。分離膜としては中空糸膜などを用いることができる。減圧ポンプ(図示せず)によって減圧室を減圧すると、脱気室内のインクに混入していた気泡やインクに溶解していたガスなどの気体は抜けていくので、気泡の混入がなく、脱気モジュール204へ送られたインクよりも溶存酸素濃度を低くしたインクをヘッド100へ供給し、ヘッド100から吐出させることができる。本記録装置の脱気モジュール204は、サブタンク200からヘッド100へインクを供給し続けた状態で、連続的にインクの脱気を行うことができる。脱気手段はインク収容体とヘッドのインク経路の間に設けられていることが脱気効率の点で好ましい。脱気手段はポンプなどの減圧手段を有する物である減圧脱気手段が脱気効率の点で好ましい。
インクジェット方法を利用して、インク組成物を被吐出対象に吐出されること等により、組成物を用いる。被吐出対象の一実施形態として被記録媒体を記載するが被吐出対象としては被記録媒体には限られない。被記録媒体としては例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。下記インクジェット記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、インク組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
本実施形態の収容体に収容された紫外線硬化型インクジェット組成物を用いたインクジェット方法は、被吐出対象に、組成物をインクジェット法により吐出する吐出工程を含み、上記吐出工程により吐出された組成物に紫外線を照射して、組成物を硬化する硬化工程と、をさらに含むことができる。このようにして、被吐出対象で硬化した組成物により、硬化物が形成される。インクジェット方法は、インクジェット記録方法、インクジェット成型方法等があげられ、インクジェット法により組成物を吐出する物であればよい。以下インクジェット方法の1実施形態としてインクジェット記録方法を記載する。
上記吐出工程においては、後述のインクジェット記録装置を用いることができる。インク組成物の吐出の際は、インク組成物の粘度を、好ましくは25mPa・s以下、より好ましくは5〜20mPa・sとすることが好ましい。インク組成物の粘度が、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱しない状態として、上記のものであれば、インク組成物の温度を室温として、あるいはインク組成物を加熱せずに吐出させることができる。一方、インク組成物を所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、紫外線(光)の照射によって硬化する。換言すれば、被記録媒体上に形成されたインク塗膜が、紫外線の照射によって硬化膜となる。これは、インク組成物に含まれ得る光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、光重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の光重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が活性放射線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
本実施形態のインクジェット方法は、さらに、前述の送給手段により行われる組成物の送給(送給工程)、前述の脱気手段により行われる組成物の脱気(脱気工程)を備えてもよい。
下記の実施例及び比較例において使用した原料は、以下の通りである。
〔重合性化合物〕
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社製商品名、下記表では「VEEA」と略記した。)
・SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート、サートマー社製商品名、下記表では「DPGDA」と略記した。)
・ライトアクリレートPO−A(フェノキシエチルアクリレート、共栄社化学社製商品名、下記表では「PEA」と略記した。)
・ビスコート#150(テトラヒドロフルフリルアクリレート、大阪有機化学工業、下記表では「THFA」と略記した。)
・Solsperse36000(ルブリゾール社製、顔料分散剤)
・メトキシヒドロキノン(重合禁止剤、東京化成工業社製、下記表中ではMEHQと略記した。)
・Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、BASF社製商品名、固形分100%)
・KAYACURE DETX(2,4−ジエチルチオキサントン、固形分100%)
・Irgacure369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、BASF社製商品名、固形分100%)
下記表に記載の成分を、表に記載の各組成比(単位は質量%)となるように用いて放射線硬化型インクジェット組成物である紫外線硬化型インクジェットインク組成物を調製した。実施例1を例に具体的に記載する。まず、顔料と顔料分散剤と重合性化合物のVEEAをそれらの質量比が表の各組成物における実施例1の質量比になるように秤量して顔料分散用のタンクに入れ、タンクに直径1mmのセラミック製ビーズミルを入れ撹拌して顔料を重合性化合物に対して分散させた。こうして顔料分散液を作成した。次に上記の顔料分散液とは別に、ステンレス製容器である混合物用タンクを用意して、これに実施例1で用いる成分のうちの上記顔料分散液で既に用いた成分以外の成分を、表の質量比になる量でかつ混合物の合計の質量が20kgとなる量を秤量し入れた。当該タンクはスクリューを備えてタンク内の混合物の攪拌が可能とした。さらに、タンク内に超音波振動子を備えタンク内の混合物に超音波の放射を可能とした。さらに、タンクの壁面に発熱体からなるヒーターを取り付けてタンク内の混合物に加温が可能とした。さらに、タンクは蓋をして密閉が可能なものとして、真空ポンプによりタンク内を減圧脱気が可能なものとした。
比較例3は、混合物に対し超音波振動子の作動を停止(OFF)にして超音波の放射を行わず、ヒーターを停止して加温も行わずに、表に記載の時間で撹拌を行ったこと以外は実施例1と同様に行った。なお、比較例3の溶存酸素量は、ほぼ組成物の飽和の溶存酸素量であると推測する。
こうして調製した各組成物に対して下記の評価を行った。結果を下記表に記載する。
調製の完了後、すみやかに組成物調製用タンクから組成物を採取し、組成物の溶存酸素量を測定した。溶存酸素量測定は、溶存酸素系(DO計、3660EX、ハック・ウルトラ社製)を用いて、組成物の温度25℃で、DO計のセンサーを組成物に入れてから5分後の値を測定した。溶存酸素量の単位はkPaである。当該DO系はポーラログラフィック方式であり、迅速な測定が可能であり組成物の調製において溶存酸素の確認を短時間で行える点で、クロマトグラフ方式よりも好ましい。上記の溶存酸素計は測定の精度が高い点でも好ましく、特に、液温を検出して液温に基づく温度補償が可能であり測定の精度が高い点で好ましい。
調整した組成物を、ガラス瓶に入れ密封し、−20℃で4日保存し、保存後のインクをろ紙(アドバンテック社No.5A)で濾過し、ろ紙に残った異物を目視で観察した。保存期間を4日以上で1日ずつ長くして同様に確認した。評価基準は下記とした。確認された異物は光重合開始剤に起因する析出物であった。
A: 7日の保存で析出異物無し。
B: 4〜6日の保存で析出異物無し。
C: 4日の保存で析出異物有り。
図2のような送給手段、脱気手段、吐出手段を備えるインクジェット装置を用意した。ただしテーブル64は固定とし、図示しない被記録媒体搬送機構を設けて被記録媒体をテーブル64に対して搬送させながら被記録媒体に対してインクが吐出されるラインプリンターして構成した。吐出手段のヘッド100は、吐出ノズル径20μm、吐出の駆動周波数15kHzとし、かつ、1回当たりのインク吐出量を7ngに調整し、1ヘッドあたり360個のノズルを備える。このようなインクジェット評価機(試作機)を用意した。組成物として上記で調製したインクをインクパックに収容して用いた。各例毎にインクパックをサブタンク200までのインクの経路に接続し、インクパックからからインクをサブタンクに供給した。サブタンク内のインクは常に所定量以上となるようにインクカートリッジからサブタンクへインクを送給した。インクカートリッジのインクが終わりになったら各例毎に同じ条件で用意したインクカートリッジに交換してサブタンクへのインクの供給を続けた。各インク送給手段を作動させてインクをヘッド100に送給した。脱気モジュールは中空子膜を介してインクを減圧脱気するものでありインクを送給しながらインクの脱気が可能なものとした。脱気させながらヘッド100へインクの送給を行うことで、インク供給経路でインクに混入してしまった気泡を取り除いた。ヘッド100のうち1つのヘッドを記録試験に用い他のヘッドへはインクが送給されないようにした。ヘッド100内に供給されたインクを採集して溶存酸素量を前述と同じ方法で測定したところ、何れの例も8kPa以下であった。ヒーターを作動させインクの粘度を吐出に適した粘度(10mPa・s以下)となるようにインクの温度を調節した。そして、当該評価機を用いてインクの吐出を行った。
上記の1つのヘッド(360ノズル)から上記の吐出の周波数で連続吐出を行った。5分ごとに全てのノズルからインクが吐出しているか否かの検査を行い最大で合計50分まで連続吐出を行った。評価基準は下記とした。
A: 50分で不吐出ノズルなし。
B: 20〜50分で、不吐出ノズルなし。
C: 15分以下で不吐出ノズルあり。
膜厚8μm(硬化後膜厚)となる量のインクを基材に塗布し、硬化に要する硬化エネルギーを確認した。綿棒で擦り綿棒等の状態から硬化したか否かを判定した。照射は395nmにピーク波長を有するLED、照射強度1100mW/cm2を用いた。基材はPETフィルム(PET50A PLシン〔商品名〕、リンテック社製)を用いた。照射した塗膜(組成物膜)を、綿棒を用いて100g加重で10回擦り、傷が付かなくなる時点の硬化エネルギー(照射エネルギー)を求めた。
なお、照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。硬化エネルギーから下記基準により評価した。
A: 200mJ/cm2以下
B: 200mJ/cm2超300mJ/cm2以下
C: 300mJ/cm2超
硬化性評価と同様の条件で傷がなくなる時点まで照射して硬化させた硬化膜を作成した。JIS K5701(ISO 11628)(平版印刷に用いられるインク、展色試料、及び印刷物を試験する方法について規定。)に準じて、学振式摩擦堅牢度試験機(テスター産業社(TESTER SANGYO CO., LTD.)製)を用いて、塗膜の耐擦性の評価を行った。評価方法は、塗膜が8μmである硬化膜の表面に金巾を乗せ、荷重500gをかけて擦り、擦った後の、上記硬化膜の剥離を目視にて評価した。評価基準は下記のとおりである。
A:金巾に汚れなし、記録面の剥離・傷なし。
B:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷なし。
C:金巾に汚れあり、記録面の剥離・傷が見られた。
比較例1、3は、組成物の溶存酸素量が10.0kPaであり、吐出安定性に劣っていた。比較例2、4は硬化性に劣っていた。なお、表中には記載しなかったが、比較例4とは別に、比較例4における組成物の調製の際の混合物に対する処理の条件として比較例3と同じ条件で処理を行ったこと以外は比較例4と同様にして別途確認した所、低温保存安定性はAであったが、硬化性は比較例4と同様にCであった。このことから、常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤を含有することで効果性の優れた組成物とする場合に本願発明が必要となることが判った。
Claims (9)
- 常温、単体で固体である2官能以上のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤と重合性化合物とを含有し、組成物の溶存酸素量が0〜8.0kPaであり、組成物収容体に収容された、放射線硬化型インクジェット組成物。
- 前記光重合開始剤の組成物に対する含有量が1〜15質量%である、請求項1に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
- 前記重合性化合物としてベンゼン環含有(メタ)アクリレートを含む、請求項1又は2に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
- 前記重合性化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3の何れか一項に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
- 放射線硬化型インクジェット組成物の調製の際に、前記光重合開始剤と前記重合性化合物の少なくとも一部とを混合した混合物に超音波を放射する超音波処理、あるいは当該混合物に加温する加温処理の少なくとも何れかを施したものである、請求項1〜4の何れか一項に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
- 前記組成物収容体が、酸素透過率が5.0cc・20μm/(m2・day・atm)以下である部材により構成された容器に放射線硬化型インクジェット組成物を充填したものである、請求項1〜5の何れか一項に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
- 前記処理が、前記超音波の照射あるいは加温の少なくとも何れかを混合物に行いつつ、混合物を撹拌するものである、請求項5に記載の放射線硬化型インクジェット組成物。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の放射線硬化型インクジェット組成物を収容した組成物収容体。
- 請求項1〜7の何れか一項に記載の放射線硬化型インクジェット組成物をインクジェットヘッドから吐出するインクジェット方法。
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