JP2015189625A - 多孔質セラミックス製の熱処理用部材 - Google Patents
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Description
上記「熱処理用部材の厚みに対して気孔率、気孔径を適切に制御する」ことは従来全く考慮されていなかった手段であるが、その内容は、「気孔率×平均気孔径/厚み」という関係式で示される値を、ある特性の範囲内に制御することである。
1) 次の要件(a)〜(f)を満たすことを特徴とする多孔質セラミックス製の熱処理用部材。
(a)アルミナ質材料又はジルコニア質材料の焼結体からなる。
(a−1)アルミナ質材料の場合、アルミナ含有量が96.0wt%以上である。
(a−2)ジルコニア質材料の場合、ジルコニアに対し6〜12mol%のイットリ
アを含有し、かつジルコニアとイットリアの合計含有量が99.0wt%
以上である。
(b)気孔率が、50〜70%である。
(c)平均気孔径が、50〜180μmである。
(d)厚みが、1.0〜20.0mmである。
(e)「気孔率×平均気孔径/厚み」が、1.8×102〜80.0×102である。
(f)図1に示す構造の圧力ホールド試験装置で測定したときの、300kPaの空気圧
が損失するまでの時間が300秒以下である。
2) 前記アルミナ質材料中のアルミナ含有量が99.0wt%以上であることを特徴とする1)記載の多孔質セラミックス製の熱処理用部材。
3) 前記ジルコニア質材料中のジルコニアとイットリアの合計含有量が99.5wt%以上であることを特徴とする1)記載の多孔質セラミックス製の熱処理用部材。
本発明の熱処理用部材は、従来に無い高気孔率で優れた通気性を有し、圧電体、誘電体などの電子部品材料、リチウムイオン2次電池正極材料、蛍光体材料、各種セラミックス材料等の熱処理で用いられる匣鉢、セッター、ルツボ等の熱処理用部材として用いた際に、耐熱衝撃抵抗性、耐久性、耐食性に優れると共に、被焼成物からの脱脂ガスや鉛などの蒸発成分がスムーズに抜け、焼成雰囲気の制御が可能であり、極めて有用である。
<要件(a)について>
本発明の多孔質セラミックス製の熱処理用部材はアルミナ質材料又はジルコニア質材料の焼結体からなる。
アルミナ質材料又はジルコニア質材料でないと、耐食性が低下するため本発明の課題を解決することはできない。
アルミナ質材料の場合、アルミナ含有量は、96.0wt%以上とする必要があるが、好ましくは99.0wt%以上、更に好ましくは99.2wt%以上である。アルミナ含有量が多くなるほど耐久性が向上する。
ジルコニア質材料の場合、ジルコニアに対し6〜12mol%のイットリアを含有する必要がある。これにより、耐熱衝撃抵抗性、耐久性、耐食性に優れた熱処理用部材が得られる。イットリアの含有量が6mol%未満では、結晶相の熱安定性が低下し、耐久性、耐食性が低下する。また、イットリアの含有量が12mol%を超えると、耐熱衝撃抵抗性が低下する。
更に、ジルコニアとイットリアの合計含有量を99.0wt%以上する必要があるが、好ましくは99.5wt%以上、より好ましくは99.7wt%以上である。合計含有量が多くなるほど耐食性が向上する。特に鉛などの強い腐食性を有する材料に対する耐食性が向上するため好ましい。合計含有量が99.0wt%未満では、不純物量が増加し鉛などの強い腐食性を有する材料により腐食されやすく、耐食性が低下する。なお、本発明でいう不純物とは、SiO2、TiO2、Fe2O3、Na2O、K2O等である。
本発明の熱処理用部材の気孔率は50〜70%とする必要があるが、好ましくは53〜68%である。本発明でいう気孔率は“100−焼結体の相対密度(%)”の値で示し、焼結体の相対密度は“(焼結体かさ密度/理論密度)×100(%)”で計算する。気孔率が50%未満では、繰り返し加熱冷却したときの耐久性が低下する上に、通気性が低下する。また、気孔率が70%を超えると、強度低下が著しく、耐熱衝撃抵抗性が低下し、気孔内に被焼成物が混入し易く、耐食性が低下する。
本発明の熱処理用部材の平均気孔径は50〜180μmとする必要があるが、好ましくは60〜165μmである。本発明における平均気孔径は、焼結体断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、丸みを帯びた円に近い形状の気孔断面100個の直径を測定して得た平均値である。平均気孔径が50μm未満では、繰り返し加熱冷却したときの耐久性が低下する上に、気孔率が前記要件(b)を満たしていても、気体が透過する際の抵抗が大きくなり通気性が低下する。また、平均気孔径が180μmを超えると、強度が低下し耐熱衝撃抵抗性が低下する上に、気孔内に被焼成物が混入し易く、耐食性が低下する。
本発明の熱処理用部材の厚みは、1.0〜20.0mmとする必要があるが、好ましくは1.2〜18.0mmである。厚みが1.0mm未満では熱処理用部材の強度が著しく低下し、取り扱いで破損するなど実用に耐えない。また厚みが20.0mmを超えると、加熱冷却したときに、部材表面と内部に急激な温度差が生じやすく、耐熱衝撃抵抗性が低下し、通気性も低下する。なお、熱処理用部材の厚みとは、熱処理用部材が匣鉢、セッター、ルツボなどの場合には、それらの肉厚のことである。
本発明の熱処理用部材の「気孔率×平均気孔径/厚み」で示される式の値は、1.8×102〜80.0×102とする必要があるが、好ましくは2.0×102〜75.0×102である。前記式の値が1.8×102未満では、熱処理用部材の厚みに対して気孔率、平均気孔径が小さすぎ、特に繰り返し加熱冷却したときの耐久性が低下する上に、通気性が低下する。また、前記式の値が80.0×102を超えると、熱処理用部材の厚みに対して気孔率、平均気孔径が大きすぎるため部材強度が低下し、耐熱衝撃抵抗性が低下する上に、気孔内に被焼成物が混入しやすく、耐食性が低下する。
本発明の熱処理用部材は、図1に示す構造の圧力ホールド試験装置で測定したときの、300kPaの空気圧が損失するまでの時間を300秒以下とする必要があるが、好ましくは、150秒以下である。前記時間が300秒を超えると、圧電体、誘電体などの電子部品材料の熱処理における通気性に劣り、被焼成物からの脱脂ガスや蒸発成分の抜けが悪く、被焼成物に割れや変形、組成変動を生じる。なお、圧力損失までの時間は短いほど好ましいが、現状では18秒程度までしか測定できない。
本発明が目指す通気性は、単に気孔率を高めても向上するものではなく、気孔率、平均気孔径、気孔形状、気孔分布などからなる気孔構造を制御することにより向上する。気孔形状は、均一な大きさの球状気孔が連結した状態になると向上する。したがって気孔率や平均気孔径が同じであっても、通気性が同じであるとは限らない。
本発明の熱処理用部材は種々の方法で製造できるが、その一例を以下に示す。
所定の組成となるようにアルミナ粉体又はジルコニアとイットリアの混合粉体を使用し、水を溶媒としてボールミル、アトリッションミル等の粉砕・分散機で粉砕・分散・混合して、所定濃度の分散スラリーを得る。
アルミナ粉体としては、アルミナ含有量96.4wt%以上のものを用いることが好ましい。ジルコニア粉体としては、ジルコニア含有量が99.5wt%以上のものを用いることが好ましく、イットリア粉体としては、イットリア含有量が99.0wt%以上のものを用いることが好ましい。前記アルミナ含有量が96.4wt%未満の場合、及び前記ジルコニア含有量が99.5未満の場合、焼結体の不純物量が増加して耐食性が低下することがあり好ましくない。また、イットリア含有量が99.0wt%未満の場合、焼結体の不純物量が増加し、結晶相の熱安定性が低下して、耐食性、耐久性が低下するため好ましくない。
また、各粉体の比表面積は2〜12m2/gの範囲が好ましい。比表面積が2m2/g未満では、焼結性が低下して焼結体の欠陥が増加し、耐熱衝撃抵抗性、耐久性が低下するため好ましくない。また、12m2/gを超えると、粉体の凝集力が強すぎ、十分に分散したスラリーの作製が困難となり、粘性の高いスラリーとなる。その結果、焼結体の欠陥量の増加や、後工程でアクリル樹脂粒子等の気孔形成剤を添加する際に、粉体と気孔形成剤を均一に分散させることが困難となり、焼結体中の気孔分布に偏析が生じるため耐久性が低下し、更には通気性が低下するため好ましくない。
また、ジルコニア質材料の場合、粉体として、ジルコニアに対し所定のモル比となるようにイットリアを液相合成した液相合成粉体を用いても良い。これにより耐久性、耐食性が一層向上する。
プレス成形であれば、分散スラリーに、必要に応じて公知のバインダー(例えば、ワックスエマルジョン、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂等)を添加し、更に気孔形成剤として、狙いの焼結体気孔径となる平均粒子径を有するアクリル系樹脂粒子や多糖類系樹脂粒子を、狙いの焼結体気孔率となる量添加し、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥して成形用粉体を作製し成形する。
鋳込み成形であれば、分散スラリーに、必要に応じて公知のバインダー(例えば、ワックスエマルジョン、アクリル系樹脂等)を添加し、気孔形成剤として、狙いの焼結体気孔径となる平均粒子径を有するアクリル系樹脂粒子や多糖類系樹脂粒子を、狙いの焼結体気孔径となる量添加し、石膏型又は樹脂型を用いて成形する。
前記アクリル系樹脂粒子や多糖類系樹脂粒子には球状のものを用いる。それらの平均粒子径は、アルミナ質材料の場合、60〜230μmのものを選択し、ジルコニア質材料の場合、68〜250μmのものを選択する。
更に、プレス成形や鋳込み成形では、気孔形成剤のアクリル系樹脂粒子や多糖類系樹脂粒子として、熱分解性に優れ脱脂が容易なものを使用し、ゲルキャスティング成形では、気泡を気孔形成剤とすることにより、焼成時の脱脂による割れや変形を抑制でき、高気孔率化を達成できる。
本発明の熱処理用部材の気孔率、平均気孔径、気孔分布、気孔形状は、気孔形成剤として用いるアクリル系樹脂粒子や多糖類系樹脂粒子の形状、添加量、粒径、粒度分布、更には、気泡安定剤の種類と添加量、撹拌機及び撹拌羽の構造、気泡導入時間等を変えて、気泡の径、気泡径分布、気泡量を調節することにより制御できる。
表1−1の実施例及び比較例の各欄に示す材料を用いて熱処理用セッターを作製した。
アルミナ質材料の場合、アルミナ含有量97.0wt%、比表面積4.1m2/gのアルミナ粉体を、水を溶媒としてアルミナ質のポットミルで粉砕・分散・混合し、濃度50wt%の分散スラリーを調製した。
ジルコニア質材料の場合、ジルコニア含有量99.5wt%、比表面積5.7m2/gのジルコニア粉体と、イットリア含有量99.9wt%、比表面積3.8m2/gのイットリア粉体を、ジルコニアとイットリアの合計含有量及びジルコニアに対するイットリアの割合が、表1−1の実施例及び比較例の各欄に示す値となるように、水を溶媒としてジルコニア質のポットミルで粉砕・分散・混合し、濃度50wt%の分散スラリーを調製した。
得られたアルミナ質材料又はジルコニア質材料の分散スラリーに、バインダーとして公知のパラフィンワックスエマルジョンを添加し、篩通しで整粒した表1−1に示す各平均粒子径のアクリル樹脂の球状粒子を、表1−1に示す各量添加し、スプレードライヤーで乾燥して成形用粉体を作製した。
得られた成形用粉体を金型プレスで平板状に成形し、表1−1に示す各焼成温度で焼成して得られた焼結体の上下面を研削加工して、表1−2の実施例及び比較例の各欄に示す厚みの、100mm角のセッターを作製した。
得られた各セッターの焼結体特性を表1−2に示す。
また、実施例8の焼結体のSEM観察写真を図2に示す。
・比較例1は、焼結体気孔率が50%未満となる量のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性の低下がみられた。
・比較例2は、焼結体気孔率が70%を超える量のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性、耐食性の低下がみられた。
・比較例3は、焼結体の平均気孔径が50μm未満となる平均粒子径のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性の低下がみられた。
・比較例4は、焼結体の平均気孔径が180μmを超える平均粒子径のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性、耐食性の低下がみられた。
・比較例5は、アルミナ含有量が95.8wt%のアルミナ粉体を配合に使用したため、焼結体のアルミナ含有量が96.0wt%未満となり、耐食性の低下がみられた。
・比較例6は、焼結体の気孔率、平均気孔径、セッターの厚みを調節し、気孔率×平均気孔径/セッターの厚みで示される式の値が80.0×102を超えるものとしたため、耐熱衝撃抵抗性、耐食性の低下がみられた。
・比較例7は、焼結体の気孔率、平均気孔径、セッターの厚みを調節し、気孔率×平均気孔径/セッターの厚みで示される式の値が1.8×102未満のものとしたため、焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性の低下がみられた。
・比較例8は、セッターの厚みが1.0mmよりも薄くなるまで上下面研削加工を行ったため、焼結体に著しい強度低下がみられ、実用に耐えないものとなった。
・比較例9は、上下面研削加工したセッターの厚みが20.0mmを超えたため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性の低下がみられた。
・比較例10は、比表面積15m2/gのアルミナ粉体を配合原料として使用し、凝集したスラリーにアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の気孔分布に偏析が生じ、通気性が低下し、加熱冷却の繰り返しに対する耐久性及び脱脂性の低下がみられた。
・比較例11は、焼結体の平均気孔径が50μm未満となる平均粒子径のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性の低下がみられた。
・比較例12は、焼結体の平均気孔径が180μmを超える平均粒子径のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性、耐食性の低下がみられた。
・比較例13は、焼結体気孔率が50%未満となる量のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性の低下がみられた。
・比較例14は、焼結体気孔率が70%を超える量のアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性、耐食性の低下がみられた。
・比較例15は、ジルコニア含有量が99.0wt%のジルコニア粉体を配合原料として使用したため、焼結体のジルコニアとイットリアの合計含有量が99.0wt%未満となり、耐食性の低下がみられた。
・比較例16は、ジルコニアに対してのイットリアの添加量が12mol%を超えるように配合したため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性の低下がみられた。
・比較例17は、ジルコニアに対してのイットリアの添加量が6mol%未満となるように配合したため、焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性及び耐食性の低下がみられた。
・比較例18は、比表面積16m2/gのジルコニア粉体を配合原料として使用し、凝集したスラリーにアクリル樹脂の球状粒子を添加したため、焼結体の気孔分布に偏析が生じ、通気性が低下し、加熱冷却の繰り返しに対する耐久性及び脱脂性の低下がみられた。
・比較例19は、焼結体の気孔率、平均気孔径、セッターの厚みを調節し、気孔率×平均気孔径/セッターの厚みで示される式の値が1.8×102未満のものとしたため、焼結体の加熱冷却の繰り返しに対する耐久性の低下がみられた。
・比較例20は、焼結体の気孔率、平均気孔径、セッターの厚みを調節し、気孔率×平均気孔径/部材の厚みで示される式の値が80.0×102よりも大きくなるようにしたため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性及び耐食性の低下がみられた。
・比較例21は、セッターの厚みが1.0mmよりも薄くなるまで上下面研削加工を行ったため、焼結体に著しい強度低下がみられ、実用に耐えないものとなった。
・比較例22は、上下面研削加工したセッターの厚みが20.0mmを超えたため、焼結体の耐熱衝撃抵抗性の低下がみられた。
・比較例23は、コーディエライト粉体を配合に使用したため、焼結体の耐食性の低下がみられた。
・比較例24は、ムライト粉体を配合に使用したため焼結体の耐食性の低下がみられた。
前記100mm角の各セッターを40mm角に加工して試験用サンプルセッターとし、これを図1に示す構造の圧力ホールド試験装置(PMI社製パームポロメーター)にセットし、試験用サンプルセッターの片面に加えた300kPaの空気圧が0kPaとなるまでの時間(秒)を圧力損失時間として測定した。
耐火物の上に各セッターを載せて1000℃に加熱保持した電気炉内に挿入し、30分加熱保持した後、耐火物に載せたまま即座に炉外に取り出し、室温下で冷却してクラックの発生を確認し、耐熱衝撃抵抗性を評価した。
前記加熱冷却操作を1回の試験として、1回目の試験でクラックが発生しなかったセッターについて、クラックが発生するまで試験を繰り返し、その試験回数により、耐久性を評価した。
試験回数1回でクラックが発生したものは耐熱衝撃抵抗性が不合格であり、17回未満でクラックが発生したものは耐久性が不合格である。
圧電体材料のBaTiO3の合成を想定し、酸化チタン粉体と炭酸バリウム粉体を、ポットミルで溶媒に水を用いて分散・混合し乾燥させて混合粉体とし、この混合粉体を直径25mm、厚さ5mmに成形した。この成形体を各セッターの上に載せ、更に、成形体に1kPaの応力をかけた状態で、1300℃、5時間保持を2サイクル行い、テスト後の焼結体断面を鏡面仕上げし、EDX(エネルギー分散型X線)分析装置(堀場製作所製、EMAXEvolution)により侵食深さを測定した。侵食深さが1mm以上のものは耐食性が不合格である。
アルミナ含有量99.9wt%、比表面積6.7m2/gのアルミナ粉体を、水を溶媒としてアルミナ質のポットミルで粉砕・分散・混合し、濃度50wt%の分散スラリーを調製した。このスラリーに公知のアクリル樹脂系バインダーを添加し、スプレードライヤーで乾燥してプレス成形用アルミナ粉体を作製した。このアルミナ粉体をプレス成形し、80mm角で厚みが10mmの板状成形体を得た。
この板状成形体を前記各セッターで挟み込んだものを10セット用意し、800℃で焼成して、焼成後に割れが発生した板状成形体の枚数により脱脂性を評価した。板状成形体が3枚以上割れたものは不合格である。
表2の実施例及び比較例の各欄に示す材料を用いて熱処理用部材を作製した。
アルミナ質材料の場合、アルミナ含有量99.5wt%、比表面積3.5m2/gのアルミナ粉体を、水を溶媒としてアルミナ質のポットミルで粉砕・分散・混合し、濃度50wt%の分散スラリーを調製した。
ジルコニア質材料の場合、ジルコニア含有量99.9wt%、比表面積6.1m2/gのジルコニア粉体と、イットリア含有量99.9wt%、比表面積3.8m2/gのイットリア粉体を、ジルコニアに対するイットリアの割合が8mol%となるように、水を溶媒としてジルコニア材質のポットミルで粉砕・分散・混合し、濃度50wt%の分散スラリーを調製した。
得られたアルミナ質材料又はジルコニア質材料の分散スラリーに、バインダーとして公知のパラフィンワックスエマルジョンを添加し、更にアルミナ質材料の場合には実施例3と同等の、ジルコニア質材料の場合には実施例16と同等の気孔率、平均気孔径となるように、それぞれ実施例3、実施例16と同じ平均粒子径及び量のアクリル樹脂の球状粒子を添加し、スプレードライヤーで乾燥して成形用粉体を作製した。
得られた成形用粉体を金型プレスで平板状に成形し、表2に示す各焼成温度で焼成して得られた焼結体の上下面を研削加工して100mm角のセッターを作製した。セッターの厚みは、アルミナ質材料の場合、1.4mm、ジルコニア質材料の場合、1.0mmとした。
得られた各セッターの焼結体特性を表2に示す。
前記実施例17〜22の100mm角の各セッターを30mm角に加工して試験用サンプルセッターとした。腐食性の強い鉛を含有するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)の焼成を想定し、市販の二酸化鉛粉体(和光純薬社製)を直径25mm、厚さ5mmに成形した成形体を、前記30mm角に加工した各試験用サンプルセッターの上に載せ、更に二酸化鉛成形体に1kPaの応力をかけた状態で、1000℃、5時間保持を2サイクル行い、焼成前後での各セッターの重量変化率を測定した。重量変化率が1.5%以下のセッターは鉛に対する耐食性があるといえる。
Claims (3)
- 次の要件(a)〜(f)を満たすことを特徴とする多孔質セラミックス製の熱処理用部材。
(a)アルミナ質材料又はジルコニア質材料の焼結体からなる。
(a−1)アルミナ質材料の場合、アルミナ含有量が96.0wt%以上である。
(a−2)ジルコニア質材料の場合、ジルコニアに対し6〜12mol%のイットリ
アを含有し、かつジルコニアとイットリアの合計含有量が99.0wt%
以上である。
(b)気孔率が、50〜70%である。
(c)平均気孔径が、50〜180μmである。
(d)厚みが、1.0〜20.0mmである。
(e)「気孔率×平均気孔径/厚み」が、1.8×102〜80.0×102である。
(f)図1に示す構造の圧力ホールド試験装置で測定したときの、300kPaの空気圧
が損失するまでの時間が300秒以下である。 - 前記アルミナ質材料中のアルミナ含有量が99.0wt%以上であることを特徴とする請求項1記載の多孔質セラミックス製の熱処理用部材。
- 前記ジルコニア質材料中のジルコニアとイットリアの合計含有量が99.5wt%以上であることを特徴とする請求項1記載の多孔質セラミックス製の熱処理用部材。
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