JP2015188821A - パラジウム吸着材およびその製造方法 - Google Patents

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重浩 加賀谷
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佳聖 岡山
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嘉則 井上
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健寛 梶原
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Abstract

【課題】
溶液中に含まれるパラジウムの吸着・回収に好適な、操作性が良好で、有機溶媒中からも効率良くパラジウムを吸着・回収可能なパラジウム吸着材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記一般式(3)
【化3】


で表される芳香族チオアミド化合物を、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基と反応させ、パラジウム吸着性を示す官能基を導入してパラジウム吸着材とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、メッキ、貴金属加工、触媒、医薬品などの製造に用いられる溶液や製造工程内で発生する廃液等の中に含まれるパラジウムの吸着・回収に好適なパラジウム吸着材およびその製造方法に関する。
貴金属元素は、ハイテク技術の開発において極めて重要な地位にある。パソコンや携帯電話器等のハイテク機器に使用される配線板や接続端子には金をはじめとする貴金属元素が多用されている。ハイテク機器は年々進化しているが、これらの小型・高機能化には配線板上に形成された配線パターンの微細化・細密化が必要である。このためには、樹脂絶縁体表面に強固な銅薄膜を形成させることが重要であり、銅薄膜形成前に樹脂絶縁体表面の下処理が行われる。通常この下処理にはパラジウムとスズのコロイドを含む触媒(キャタリスト)を用いた触媒処理が行われる。この触媒処理は、銅薄膜形成時だけでなく、配線パターン形成後のスルーホール処理や追加パターン形成時においても行われる。また、金メッキやニッケルメッキの前処理(下処理)にも同様の触媒処理が行われる。
パラジウムは、上記触媒処理の他、合金、排ガスの浄化触媒やクロスカップリング法における合成用触媒としても多用されている。パラジウムは、高価であり、その価格は年々上昇する傾向にある。また、パラジウムは日本では産出されないため、パラジウムの回収・リサイクルシステムを早期に確立させる必要にせまられている。
パラジウムの回収法としては、沈殿分離法、電解析出法、溶媒抽出法等の多くの方法が開発されており、これらのうち溶媒抽出法が経済性および操作性の点から広く採用されている。しかし、溶媒抽出法は、低濃度溶液からの回収効率が低いという欠点をもつと共に、多量の有機溶媒を使用するため安全性や環境負荷の面でも課題を有する。
一般に、低濃度(概ね100ppm以下)のパラジウムなどの貴金属元素の回収には吸着法が有用であるとされ、一次処理排水からの貴金属元素の回収にはイオン交換樹脂やキレート樹脂が用いられている。しかし、汎用のイオン交換樹脂やキレート樹脂では元素選択性が乏しく、大量に共存する鉄や銅などの卑金属元素との分離が不十分で多数回の操作を繰り返す必要がある。そのため、操作も極めて複雑となり精製・回収に長時間を要することになる。
貴金属吸着材に関しては多くの開示がある。例えば、ポリアニリン(特許文献1参照。)やフェノール性水酸基含有チラミン重合体(特許文献2参照。)が金の吸着材として提案されている。しかし、これらの吸着材は金に対して高い選択性を示すが、パラジウムに対しての選択性は低い。また、これらは高分子の粉体であり、とくに微粉体である場合には、高分子紛体を被処理溶液に直接投入して貴金属元素を抽出した後、この高分子粉体をろ別回収操作するにしても、さらに凝集処理などの何らかの追加操作が必要である。さらに、高分子粉体という形態のままでは何らかの缶体に充填して流通型で使用するにも不都合である。このような問題に対して、粒子状の高分子担体にジアルキルアミン型アクリレートをグラフト重合したもの(特許文献3参照。)、合成繊維などにアリルアミンとN−ビニルアセトアミド等をグラフト重合したもの(特許文献4参照。)が金の吸着材として提案されている。これらの粒子状形態や繊維状形態のものを用いると、紛体状形態のものに比べて操作性は明らかに改善されると考えられる。しかし、特許文献3の共重合体は、第3級アミン型のイオン交換樹脂に過ぎないため、貴金属元素に対する選択性は低い。特許文献4に開示されている方法は放射線グラフト法を用いているため、特定の設備を必要とするなど製造上での問題がある。また、特許文献4の共重合体は、必ずしも貴金属元素に対して高い選択性は示さず、ニッケル、バナジウム、コバルトなどの卑金属元素も明確に吸着されることが示されている。
一方、硫黄原子を含有する有機化合物が、卑金属元素共存溶液中から白金やパラジウムを効率的に吸着・回収可能であることが報告されている(非特許文献1参照。)。特許文献5には、ポリチオアミドがパラジウムに対して高い選択性を有し、卑金属元素の干渉を受けずにパラジウムを選択的に吸着・回収可能であることが示されている。ポリチオアミドは、有機溶媒中に存在するパラジウムの吸着も可能であり、パラジウムの選択的吸着材として有望ではあるが、他の貴金属元素に対しての選択性は明確にされていない。特許文献6には、メルカプトアセトアミドを非架橋のポリクロルメチルスチレンに結合させた吸着材が示されており、この吸着材はパラジウムに対して高い選択性を示し、白金やロジウムおよび卑金属元素は吸着しないとされている。これらの吸着材は、パラジウムの吸着材として有望ではあるが、高分子粉体であるため上述したような操作性における難がある。また、クロスカップリング法に用いられるパラジウム触媒を回収する場合には有機溶媒中での操作が必要であるため、非架橋吸着材では適用可能な有機溶媒が限定されてしまう。
上記高分子粉体における課題への対応策として、担体に含浸させた吸着材もいくつか提案されている。特許文献7には、アミド基をもつ環状スルフィド化合物をシリカゲルに含浸させたパラジウムの吸着材が開示されている。特許文献8には、アミノホスホン酸型化合物を疎水性の多孔性樹脂に含浸させたパラジウムの吸着材が開示されている。これらの方法では、担体の粒子径を任意に選択できるため回収操作の改善は容易で、さらに何らかの缶体に充填して流通型で使用することも可能となる。しかしながら、含浸型であるため担体に含浸した吸着材が有機溶媒中で溶解・漏出してしまう恐れもあり、有機溶媒中での使用は制限される。さらに、パラジウム含有廃液はアルカリ性の場合もあり、含浸担体シリカゲルがアルカリ溶液中で溶解してしまうという問題も生じる。なお、上記特許文献8のアミノホスホン酸型化合物は貴金属元素をはじめ多くの元素の吸着材であることが知られており、パラジウムなどの貴金属元素の選択的吸着は不可能である。
これに対し、特許文献9には、クロルメチルスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体粒子に、アミド基を有するスルフィド鎖をアミノ基を介してポリクロルメチルスチレンのクロロメチル基と反応させたパラジウムおよび白金の吸着材が開示されている。操作性さらには有機溶媒中での使用を考慮するとこのような架橋型樹脂粒子状の吸着材形態が有効であると思われるが、この特許文献9で使用されている基材樹脂は低架橋度の膨潤型樹脂である。膨潤型樹脂は明確な細孔は有しておらず、基材樹脂の膨潤により微細な細孔が発生する。一般に、粒子状吸着材では被吸着物質の細孔内部への拡散が律速になるため、迅速な吸着を行うためには微細孔ではなく大きな細孔を有する吸着材とする必要がある。
上述のような開示されている吸着材をみると、貴金属元素回収用吸着材の吸着性官能基としてアミド基を有するものが多く、アミド基を有するペプチドやタンパク質でも貴金属元素の選択的吸着が可能であることが報告されている(非特許文献2参照。)。特許文献10にはタンパク質であるリゾチームやアルブミンが貴金属元素、特にパラジウムや金の選択的な吸着材として有用であり、卑金属元素との吸着・回収が可能であることが示されている。また、ジビニルベンゼンの懸濁重合時にタンパク質を共存させて固体粒子化させることで、タンパク質が表面に固定された粒子状の貴金属吸着材となることも示されている。しかしながら、タンパク質を利用した貴金属元素吸着材は、被処理溶液のpHが2以下および10以上では吸着が不安定となると記載されている。実際の貴金属元素含有溶液はpH2以下の場合が多く、また上述したように、パラジウム含有廃液はアルカリ性の場合もあり、タンパク質を利用した貴金属元素吸着材は、適用範囲が極端に限定されてしまう。さらに、有機溶媒中ではタンパク質の変性や凝集が生じるため、貴金属に対する吸着選択性が大きく変化してしまうと考えられる。
特許4693123号 特開2011−178853号公報 特開2013−103161号公報 特許第4239201号 特許第4862148号 特開2011−41916号公報 特開2011−62688号公報 特開平8−27527号公報 特開2011−41918号公報 特開2007−185552号公報
O.B. Mokhodoeva、G.V. Myasoedova and I.V. Kubrakova:Journal of Analytical Chemistry、2007、Vol.62、No.7、p.607. 谷本智史:機能材料、2006、Vol.26、No.7、p.5.
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、溶液中のパラジウムの吸着・回収に用いられ、操作性が良好で、広いpH範囲の溶液中から、さらには有機溶媒中からも効率良くパラジウムを吸着・回収可能なパラジウム吸着材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の発明者が鋭意研究を行った結果、芳香族チオアミド化合物をグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基と反応させて、パラジウムに対して高い吸着特性を示す官能基を導入することにより、操作性が良好で、有機溶媒中からも効率良くパラジウムを吸着・回収可能なパラジウム吸着材を製造できることを見出した。
より詳しくは、本発明は、以下に記載するパラジウム吸着材およびその製造方法に関するものである。
1) 下記一般式(1)


(式中、Rは一つの置換基を有するまたは有しないフェニル基を表す。)で示される芳香族チオアミド化合物を、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基と反応させて製造されたパラジウム吸着材。
2) 一般式(1)において、Rが下記一般式(2)


(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、水酸基、アルコキシ基、またはヒドロキシメチル基を表す。)で示されるフェニル基であることを特徴とする上記1)に記載のパラジウム吸着材。
3) グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子が、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルより選ばれるグリシジル基を有するビニルモノマーと、ラジカル重合が可能な架橋性ビニルモノマーとの懸濁重合により製造された多孔性架橋樹脂粒子であり、該多孔性架橋樹脂粒子中のグリシジル基量が1〜6mmol/gであり、かつ平均細孔径が6〜30nmで、比表面積が30〜800m/gであることを特徴とする上記1)および2)に記載のパラジウム吸着材。
4) 一般式(1)で示される芳香族チオアミド化合物をグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子に導入する反応を有機溶媒中で行うことを特徴とする上記1)ないし3)に記載のパラジウム吸着材。
5) 上記4)における有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンのいずれか単独、あるいはこれらの混合溶媒であることを特徴とする上記4)に記載のパラジウム吸着材。
6) アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルより選ばれるグリシジル基を有するビニルモノマーと、ラジカル重合が可能な架橋性ビニルモノマーとの懸濁共重合により製造された、グリシジル基量が1〜6mmol/gであり、かつ平均細孔径が6〜30nmで、比表面積が30〜800m/gであるグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子に
下記一般式(3)


(式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、水酸基、アルコキシ基またはヒドロキシメチル基を表す。)で示される芳香族チオアミド化合物を有機溶媒中で反応させて、パラジウム吸着性を示す官能基を導入することを特徴とするパラジウム吸着材を製造する方法。
7) 上記6)における有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンのいずれか単独、あるいはこれらの混合溶媒より選ばれるものあることを特徴とする上記6)に記載のパラジウム吸着材を製造する方法。
本発明によれば、一般式(1)で示される芳香族チオアミド化合物をグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基に反応させるという簡便な反応により、パラジウムに対して広いpH範囲において高い吸着特性を示す官能基を導入することができ、操作性が良好で、水溶液中からばかりでなく、有機溶媒中からも効率良くパラジウムを吸着・回収可能なパラジウム吸着材を容易に製造することが可能となる。本発明のパラジウム吸着材は不溶性の多孔性架橋樹脂粒子にパラジウムに対して吸着特性を示す官能基を導入したものであるため、有機溶媒中で溶解したり、吸着性官能基の脱離が生じることはなく、有機溶媒中からのパラジウム回収にも使用することが可能である。また、基材樹脂となるグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子の粒子径は懸濁重合時に容易に調節可能であるため、使用条件に適合する粒子径に調節すれば、被処理溶液への直接投入による吸着・回収だけでなく、何らかの缶体に充填して流通型で操作することも可能であり、吸着・回収処理操作の効率化を図ることが可能となる。
実施例1により得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子A(BTA樹脂A)におけるパラジウム、金、白金の吸着率に与えるpHの影響を示す。図1aはパラジウム、図1bは金、図1cは白金の場合をそれぞれ示す。 比較例3で得られたN−アセチル化エチレンジアミン樹脂(Ac−EDA樹脂)および実施例1により得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子A(BTA樹脂A)におけるパラジウム、金、白金の吸着率に与えるpHの影響を示す。図2aはパラジウム、図2bは金、図2cは白金の場合をそれぞれ示す。ここで、●はBTA樹脂Aにおける各貴金属の吸着率を、△はAc−EDA樹脂における貴金属吸着率を示す。 比較例4で得られたチオアミド化したポリエチレンイミン反応の樹脂粒子A(TA−PEI600樹脂)および実施例1により得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子A(BTA樹脂A)におけるパラジウム、金、白金の吸着率に与えるpHの影響を示す。図3aはパラジウム、図3bは金、図3cは白金の場合をそれぞれ示す。ここで、●はBTA樹脂Aにおける各貴金属の吸着率を、△はTA−PEI600樹脂における各貴金属の吸着率を示す。 比較例5で得られたチオセミカルバジド樹脂(TSC樹脂)および実施例1により得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子A(BTA樹脂A)におけるパラジウム、金、白金の吸着率に与えるpHの影響を示す。図4aはパラジウム、図4bは金、図4cは白金の場合をそれぞれ示す。ここで、●はBTA樹脂Aにおける各貴金属の吸着率を、△はTSC樹脂における各貴金属の吸着率を示す。 実施例1で得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子A(BTA樹脂A)を用いて、水溶液および有機溶液からのパラジウムの抽出における振盪時間と吸着量との関係を示す。ここで、●は水溶液からのパラジウムの吸着量を、△はメタノール溶液からのパラジウムの吸着量を示す。
本発明においては、芳香族チオアミド化合物とグリシジル基との反応によって、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子にパラジウムに対して吸着特性を示す官能基を導入することによりパラジウム吸着材とする。
本発明において用いられる芳香族チオアミド化合物は、下記一般式(1)


(式中、Rは一つの置換基を有するまたは有しないフェニル基を表す。)で示される芳香族チオアミド化合物である。
また、一般式(1)におけるRとしては下記一般式(2)


で表されるフェニル基が好ましく使用される。式中、Rは水素原子、脂肪族炭化水素基、水酸基、アルコキシ基、またはヒドロキシメチル基より選ばれる。このうち、Rとしてはとくに水素原子あるいは脂肪族炭化水素基が好ましく用いられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖のまたは分岐鎖を有する炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基が好ましく用いられる。
グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子は、細孔形成のための重合反応に寄与しない溶媒(一般に、細孔調節剤と呼ばれる)を共存させて,グリシジル基を有するビニルモノマーとこのビニルモノマーと共重合可能な架橋性ビニルモノマーとを懸濁重合により共重合させて得られるものである。
グリシジル基を有するビニルモノマーとしては、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルなどがあげられる。
グリシジル基を有するビニルモノマーと共重合可能な架橋性ビニルモノマーは、分子内にビニル基を2個以上有する化合物が使用される。このようなビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族系ビニルモノマー、エチレンジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールトリアクリレートなどの多官能アクリレート系ビニルモノマー、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールトリメタクリレートなどの多官能メタクリレート系ビニルモノマー、この他、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレートなどのシアヌル酸骨格をもつビニルモノマーなどがあげられる。
グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子において、グリシジル基の量が少ない場合には、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子へのパラジウム吸着性官能基の単位重量当たりの導入数が減少するなどして好ましくない。一方、グリシジル基の量が多すぎる場合には、必然的に架橋性ビニルモノマーの組成比が減少するため架橋度が低く、軟質の吸着材となり、有機溶媒中で過度に膨潤して操作性が悪化するなどして好ましくない。本発明においては、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基量としては1〜6mmol/gのものが好ましく用いられ、この範囲に合わせてグリシジル基を有するビニルモノマーの量が決定される。グリシジル基を有するモノマーの量は、その分子量にも依存するが、概ね全ビニルモノマーに対して10〜90質量%、好ましくは15〜85質量%の範囲で使用される。
グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子の調製は、公知のビニル懸濁重合法によって行う。粒子状吸着材では迅速な吸着速度と高い吸着容量が要求されるため、十分な細孔径および比表面積を有する多孔質の架橋樹脂粒子が必要となる。そのため、懸濁重合時に、ビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーと相溶性がありかつ重合反応に寄与しない細孔調節剤を共存させて懸濁重合を行う。細孔調節剤は使用するモノマーおよび架橋性モノマーの物性により適宜選択される。一般的に、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸ブチル、フタル酸ジメチルなどのエステル類、アミルアルコール、オクチルアルコールなどの難水溶性アルコール類、オクタン、ドデカンなどのパラフィン類が使用される。細孔調節剤の量は、重合性モノマー100重量部に対して30〜200重量部、好ましくは60〜150重量部の範囲で使用して、細孔径および比表面積を調整する。本発明においては、非膨潤時の細孔物性として、平均細孔径6〜30nm、比表面積30〜800m/gのものを用いるのが好ましい。
本発明において使用されるグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子の粒子径は、使用目的に応じて任意に設定することができる。粒子径の調整は、懸濁重合工程におけるモノマーを含む油層の分散時に行い、例えば、攪拌羽根の回転速度の調節により任意に調整可能である。一般に、何らかの缶体やカラム・カートリッジに充填して使用する場合には、平均粒子径で0.02〜3mmのものが好ましく用いられる。
グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子への芳香族チオアミド化合物の導入反応は、適切な溶媒中に芳香族チオアミド化合物を溶解し、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子を加えて攪拌するという簡便な方法で行う。反応に用いる溶媒の特性により、芳香族チオアミド化合物の導入量が大きく変化するため、適切な溶媒を選択する必要がある。本発明においては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が好ましく用いられるが、これらを単独で使用しても、あるいはこれらを任意の比率で混合した混合溶媒を使用してもよい。なお、水−極性有機溶媒混合系での反応は、芳香族チオアミド化合物の溶解度が低下するとともに、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子への反応効率が低下するなどして好ましくない。したがって、これら有機溶媒への水の混合量は10%以下、好ましくは水を混合しない溶媒系で反応を行う。反応に用いる芳香族チオアミド化合物の量は、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基量の2〜10倍モル量、好ましくは4〜8倍モル量を用いる。芳香族チオアミド化合物導入反応は室温でも進行するが、必要に応じて加温してもよい。また、必要に応じて反応触媒を添加してもよい。
芳香族チオアミド化合物は下記一般式(4)


に示すようなケト・エノール型の互変異性(tautomerism)を示し、2つの互変異体(tautomer)を持つことが知られている。ケト型のアミノ基およびエノール型のチオール(メルカプト)基は共にグリシジル基と反応可能であるため、本発明の方法により得られる吸着材の官能基は互変異体に基づく2つの構造が共存したものとなる。さらに、エポキシ基との開環反応において結合位置の異なる2つの結合形態(α−結合、β−結合)が生成することも公知である。したがって、本発明の方法により得られる吸着材の官能基は、構造及び結合位置の異なる4つの官能基の混合型である。互変異性及び反応形態から、これら4つの官能基の存在比を確定することは困難であるが、本発明の吸着材は官能基の混合型であってもパラジウムに対して高い吸着特性を示す。また、一般式(2)において、Rが水酸基またはヒドロキシメチル基の場合、反応条件によっては酸素原子を介した結合も生じる。本発明の吸着材は、このような結合形態が混在してもパラジウムに対して高い吸着特性を示す。
次に、実施例によって本発明を説明するが、この実施例によって本発明を何ら限定するものではない。
(1)グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子の調製
モノマー組成が異なる3種類のグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子を公知の水系懸濁重合法により調製した。この場合、グリシジル基を有するビニルモノマーとしてグリシジルメタクリレート(以下では、GMAと略記する。)を、架橋性ビニルモノマーとしてエチレンジメタクリレート(以下では、EGDMと略記する。)を、細孔調節剤として酢酸ブチルを、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下では、AIBNと略記する。)を使用して、表1に示す配合処方に基づいて多孔性架橋樹脂粒子を合成した。
グリシジル基を有するビニルモノマーと架橋性ビニルモノマーと細孔調節剤の混合溶液に重合開始剤を溶解し、この混合溶液を0.1%メチルセルロース水溶液1L中に加え、攪拌機を250rpmで回転させてビニルモノマーなどの4成分をこの水溶液中に分散させて分散液とした。この分散液を200rpmで回転させながら加温し、80℃で6時間重合反応を行った。重合反応終了後、生成した共重合体粒子を濾取し、水、メタノールの順で洗浄した。一日風乾後、JIS標準ふるいを用いて90〜150μmに分級を行い、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子A〜Cを得た。以下では、多孔性架橋樹脂粒子を単に樹脂粒子とよぶことがある。これらの樹脂粒子の平均粒子径(体積分布の中位径)を粒度分布測定器Beckman Coulter Multisizer 3 Coulter Counterで、平均細孔径と比表面積を比表面積測定器Beckman Coulter SA3100 Surface Area Analyzerで測定した。この測定値を表2に示す。表1および表2において、GMA量[wt%]は樹脂粒子の合成処方におけるGMA量とEGDM量の比率、グリシジル基量[mmol/g]は樹脂粒子の合成処方におけるGMA量とEGDM量の比率から計算で求めたグリシジル基の含有量である。


(2) 芳香族チオアミド化合物の導入
前記(1)で得られた樹脂粒子A〜Cに対して、それぞれベンズチオアミドを導入した。反応条件は以下のとおりとした。樹脂粒子3gを、グリシジル基量の5倍モル量となる4.34gのベンズチオアミドを溶解した2−プロパノール150mLに加え、反応温度50℃、反応時間20時間としてベンズチオアミド導入反応を行った。反応終了後、ベンズチオアミド反応樹脂粒子をろ別し、2−プロパノールで残存するベンズチオアミドを洗浄し、純水、アセトンの順でこのベンズチオアミド反応樹脂粒子を洗浄した。その後、DMFで超音波洗浄し、24時間真空乾燥して、ベンズチオアミド反応樹脂粒子を得た。
以下では、樹脂粒子Aから得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子をBTA樹脂Aと、樹脂粒子Bから得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子をBTA樹脂Bと、樹脂粒子Cから得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子をBTA樹脂Cとそれぞれ略記することがある。
(3) パラジウム吸着量の測定
塩酸で溶液のpHを2.0に調整した10mg/Lパラジウム水溶液100mLに、(2)で得られたBTA樹脂A〜Cを0.01g加え、振盪機で12時間振盪(200rpm)後、上澄み液を回収し、溶液中のパラジウム濃度の減少量をICP発光分光分析装置で測定した。得られた測定値から各BTA樹脂のパラジウム吸着容量を求めた。BTA樹脂A〜Cのパラジウム吸着容量は、それぞれ67.1mg/g(630μmol/g)、84.7mg/g(796μmol/g)および98.3mg/g(924μmol/g)で、いずれのBTA樹脂でも良好な吸着容量を示した。GMA量(グリシジル基量)と吸着容量との間には、直線的な比例関係ではないが良好な相関がみられた。
比較例1
反応試薬をベンズアミドとし、硫黄原子の有無によるパラジウム吸着容量の比較を行った。
反応試薬をベンズチオアミドの代わりにベンズアミドとした以外は実施例1(2)と同様の条件で、実施例1の樹脂粒子Aにベンズアミドの導入を行った。ベンズアミドの量は同様にグリシジル基量の5倍モル量(3.83g)とした。得られたベンズアミド反応樹脂を以下ではBA樹脂と略記する。BA樹脂のパラジウム吸着容量を実施例1(3)と同じ条件で測定したところ5.1mg/g(48μmol/g)であり、実施例1のBTA樹脂Aの1/10のパラジウム吸着容量であった。このことから、パラジウムの吸着には硫黄原子の存在、すなわちチオアミド型であることが必須であると判断した。
次いで、反応溶媒の影響を調べた。実施例1の樹脂粒子Aを用い、いくつかの有機溶媒にベンズチオアミドを溶解させ、樹脂粒子を加えて、実施例1(2)と同じ反応条件で反応させた。得られたBTA樹脂をジメチルホルムアミドで超音波洗浄した後、真空乾燥した。実施例1(3)と同じ条件で測定したこれら樹脂のパラジウム吸着容量を表3に示す。2−プロパノール、アセトン、トルエンを用いた場合にはほぼ同等の高いパラジウム吸着容量が得られた。しかし、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドで反応した場合には、パラジウム吸着容量は1桁以上も低く、特にジメチルホルムアミドでは2−プロパノールと比べて1/30以下の低い値であった。このことから、ベンズチオアミドの導入反応においては、用いる有機溶媒の特性に大きく依存することが判明した。

比較例2
実施例1の樹脂粒子Aに対して、反応溶媒を2−プロパノール/水(1/1)に変更し、実施例1(2)と同じ条件でベンズチオアミドの導入反応を行った。得られたベンズチオアミド反応樹脂粒子Aのパラジウム吸着容量を実施例1(3)と同じ条件で測定したところ55.1mg/g(518μmol/g)であり、実施例1のBTA樹脂Aとほぼ同等であった。しかし、反応後の溶液中にベンズチオアミドの沈殿と思われる白色の固形物が確認されたため、この得られた樹脂をジメチルホルムアミド中に浸漬して超音波洗浄した後、パラジウム吸着容量を測定した。その結果、超音波洗浄前に比べパラジウム吸着容量が半減した。このことから、ベンズチオアミドが化学結合ではなく物理的に樹脂粒子に担持されていたものと判断した。
実施例1(2)で樹脂粒子Aに対してトルエンを反応溶媒としてベンズチオアミドを導入したBTA樹脂Aを用いて、pH2におけるパラジウム、金、白金の吸着容量を求めた。評価条件は実施例1(3)にしたがった。その結果を表4に示す。パラジウムと金の吸着容量(mg/g)はほぼ同等であったが、mol換算吸着容量(μmol/g)ではパラジウムのほうが約2倍吸着容量が高かった。この結果から、トルエンを反応溶媒として調製したBTA樹脂Aは、パラジウム吸着材としてきわめて性能が高く、優れたものであることが判明した。

反応試薬をp−ヒドロキシベンズチオアミドとし、実施例1(2)と同様の条件で、実施例1の樹脂粒子Aにp−ヒドロキシベンズチオアミドを導入した。
樹脂粒子A1gを、グリシジル基量の4倍モル量となる1.29gのp−ヒドロキシベンズチオアミドおよびグリシジル基量の2.5倍モル量となる1.38gのトリフェニルホスフィンを溶解したトルエン50mLに加え、反応温度105℃、反応時間10時間としてp−ヒドロキシベンズチオアミド導入反応を行った。反応終了後、樹脂粒子をろ別し、トルエンで残存するp−ヒドロキシベンズチオアミドを洗浄し、次いでアセトンで洗浄した。その後、DMFで超音波洗浄し、24時間真空乾燥して、p−ヒドロキシベンズチオアミド反応樹脂粒子を得た。
得られたp−ヒドロキシベンズチオアミド反応樹脂粒子のパラジウム吸着量を実施例1(3)に従い測定したところ、パラジウム吸着容量は61.7mg/g(580μmol/g)であり、実施例1で得られたBTA樹脂Aとほぼ同等の値であった。この反応条件では、トリフェニルホスフィンを触媒として用いており、フェノール性水酸基とグリシジル基との反応が促進されている。従って、フェノール性水酸基の酸素を介して導入された官能基が混在していることとなるが、良好なパラジウム吸着特性を示す。
塩酸または水酸化ナトリウムで種々のpHに調整した10mg/L貴金属元素水溶液10mLに、実施例1で得られたBTA樹脂Aを0.01g加え、振盪機で12時間振盪(200rpm)後、上澄み液を回収し、溶液中の貴金属元素濃度の減少量をICP発光分光分析装置で測定した。得られた測定値から、BTA樹脂Aにおける貴金属元素の吸着率に与えるpHの影響を調べた。その結果を図1aないしcに示す。パラジウムは、図1aにみるように広いpH範囲でほぼ100%の吸着率を示した。金は、図1bにみるようにpH6以上で吸着率が徐々に低下したが、pH6以下では100%の吸着率を示した。白金は、図1cにみるようにpH4以下で吸着率100%の吸着率であった。これらの結果から、BTA樹脂Aは広いpH範囲でパラジウムに対して高い吸着率を示し、パラジウムの吸着材として好適である。また、pH2における21元素(As、Be、Ca、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Li、Mn、Mn、Mo、Ni、Pd、Sb、Se、Sr、Ti、Tl、V、Zn、各10mg/L)の吸着挙動を調べたが、いずれの元素も負荷量に対する吸着率は10%未満であった。
比較例3
硫黄原子および芳香族基を含まないアミド型樹脂との比較を行うため、N−アセチル化エチレンジアミン樹脂(以下Ac−EDA樹脂と略記する。)を調製した。実施例1の樹脂粒子Aに5倍モル量のエチレンジアミンを2−プロパノール中で60℃、20時間反応させ、エポキシ基にエチレンジアミンを導入した。元素分析装置により求めたこの樹脂の窒素含有量は2.49%(1.79mmol/g)であった。得られたエチレンジアミン反応の樹脂粒子Aの窒素含有量に対し5倍モル量の無水酢酸を用いて無水アセトン中で常温、4時間反応させ、Ac−EDA樹脂を調製した。この樹脂のパラジウム、金、白金の吸着容量を、実施例1(3)の評価条件にしたがい測定した。その結果を表5に示す。パラジウムの吸着容量は、実施例3のトルエンを反応溶媒として調製したBTA樹脂Aとほぼ同等で、金の吸着容量は実施例3のトルエンを反応溶媒として調製したBTA樹脂Aの倍近い値であった。
実施例3の方法にしたがい、Ac−EDA樹脂における貴金属元素の吸着率に与えるpHの影響を調べ、BTA樹脂Aの実施例5に示した結果と比較した。その吸着率の結果を図2aないしcに示す。図2aはパラジウムにおけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とAc−EDA樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図であり、図2bは金におけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とAc−EDA樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図であり、図2cは白金におけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とAc−EDA樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図である。
図2aにみるように、パラジウムにおけるBTA樹脂Aによる吸着率とAc−EDA樹脂による吸着率とでは、全pH範囲でAc−EDA樹脂による吸着率がBTA樹脂Aによる吸着率の60%以下であった。図2bにみるように、金におけるBTA樹脂Aによる吸着率とAc−EDA樹脂による吸着率とは、全体的に類似した挙動をしているといえるが、Ac−EDA樹脂による吸着率はBTA樹脂Aによる吸着率より低いものであった。図2cにみるように、白金におけるBTA樹脂Aによる吸着率とAc−EDA樹脂による吸着率とはまったく異なる挙動を示し、Ac−EDA樹脂は、白金を全pH範囲でほとんど吸着しないものであった。
表5の結果と合わせてみると、Ac−EDA樹脂は貴金属元素に対して高い吸着容量を示すが、パラジウムに対するpH依存性が強く、アルカリ性条件下ではパラジウム吸着材として使用に耐えないものである。
比較例4
長鎖チオアミド型樹脂との比較を行うためにチオアミド化ポリエチレンイミン樹脂を調製した。実施例1の樹脂粒子Aに5倍モル量のポリエチレンイミン(分子量600:PEI600と略記する。)を2−プロパノール中で60℃、20時間反応させ、エポキシ基にPEI600を導入した。元素分析装置により求めたこのポリエチレンイミン反応の樹脂粒子Aの窒素含有量は3.0mmol/gであった。得られたポリエチレンイミン反応の樹脂粒子Aの窒素含有量に対し5倍モル量のベンズアミドを用いてWillgerodt−Kindler反応により、ポリエチレンイミン部分のイミノ基をチオアミド化した。得られたこのチオアミド化したポリエチレンイミン反応の樹脂粒子A(以下では、TA−PEI600樹脂と略記する。)における貴金属元素の吸着率に与えるpHの影響を比較例3と同様の方法で測定し、BTA樹脂Aの実施例5に示した結果と比較した。
その結果を図3aないしcに示す。図3aはパラジウムにおけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とTA−PEI600樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図であり、図3bは金(図中●で示されているもの)とTA−PEI600樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図であり、図3cは白金におけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とTA−PEI600樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図である。
図3aにみるように、TA−PEI600樹脂は、パラジウムに対してpH6以下ではBTA樹脂Aと同等の高い吸着率を示したが、pH6以上では60%以下であった。一方、図3bにみるように、金に対してはpH3以上でBTA樹脂Aと類似の特性を示したが、pH1では約50%とBTA樹脂Aより低い吸着率であった。白金は、図3cにみるように、全pH範囲でほとんど吸着されなかった。この結果から、BTA樹脂Aは、TA−PEI600樹脂よりも優れたパラジウム吸着材である。
比較例5
硫黄含有化合物を官能基とし貴金属元素吸着に優れるとされるチオセミカルバジド反応樹脂粒子Aを調製し、貴金属元素吸着特性を比較した。
実施例1の樹脂粒子Aに5倍モル量のチオセミカルバジドを2−プロパノール中で50℃、20時間反応させ、グリシジル基にチオセミカルバジドを導入して、チオセミカルバジド反応樹脂粒子A(以下では、TSC樹脂と略記する。)を得た。実施例1(3)と同じ条件で測定したTSC樹脂のパラジウムの吸着容量は、63.5mg/g(597μmol/g)であり、TBA化樹脂Aと同等の高い値を示した。また、同様に金の吸着容量は120.3mg/g(611μmol/g)と、実施例1のBTA樹脂Aの約2倍の値を示した。比較例3と同様の方法で、TSC樹脂における貴金属元素の吸着率に与えるpHの影響を調べ、BTA樹脂Aの実施例5に示した結果と比較した。その結果を図4aないしcに示す。図4aはパラジウムにおけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とTSC樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図であり、図4bは金におけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とTSC樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図であり、図4cは白金におけるBTA樹脂A(図中●で示されているもの)とTSC樹脂(図中△で示されているもの)との吸着率の対比図である。図4aにみるように、TSC樹脂は、pHの上昇に連れパラジウムの吸着率が低下し、BTA樹脂Aのように広範囲のpHで高い吸着率を示すことはなかった。一方、図4bにみるように、金の吸着においては、BTA樹脂Aと同様の傾向を示したが、相対的にBTA樹脂Aより低い吸着率であった。また、図4cにみるように、白金は、全pH範囲でBTA樹脂Aよりも高い吸着率を得ることはできなかった。この結果から、BTA樹脂Aは広範囲なpHで安定してパラジウムを吸着可能であり、TSC樹脂よりも優れている。
実施例1で得られたBTA樹脂Aを用いて、水溶液および有機溶液からのパラジウムの抽出能力を比較した。パラジウムを含む水溶液(pH2に調整)およびメタノール溶液(pH未調整)を用い、実施例1(3)と同様の方法で、振盪機で振盪しながら上澄み液を回収し、溶液中のパラジウム減少量をICP発光分光分析装置で測定した。結果を図5に示す。ここで、●は水溶液からのパラジウムの吸着量を、△はメタノール溶液からのパラジウムの吸着量を示す。
BTA樹脂Aによるパラジウム吸着容量は、水では64.4mg/g(605μmol/g)、メタノールでは69.8mg/g(656μmol/g)と、若干メタノール溶液の方が大きい値を示したがほぼ同等と見なせる値であった。また、同様の方法でアセトニトリル中のパラジウムの吸着試験も行い、48.1mg/g(452μmol/g)のパラジウム吸着容量が得られ、メタノールよりも低い値ではあるが十分な吸着能力を有することが判明した。この他、トルエンおよび酢酸エチル中のパラジウムの吸着試験も行い、アセトニトリルの約1/2のパラジウム吸着容量が得られた。これらの結果から、TBA化樹脂Aは有機溶媒中のパラジウムの抽出にもすぐれている。
本発明によれば、芳香族チオアミド化合物をグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基に反応させるという簡便な反応により、パラジウムに対して広いpH範囲において高い吸着特性を示す官能基を導入することができ、操作性が良好で、効率良くパラジウムを吸着・回収可能なパラジウム吸着材を容易に製造することが可能となる。本発明により得られたパラジウム吸着材は、酸性条件下において卑金属元素をほとんど吸着しないため、水溶液中のパラジウムの吸着・回収には好適な吸着材となる。また、本発明のパラジウム吸着材は架橋した不溶性の樹脂粒子にパラジウムに対して選択的な吸着特性を示す官能基を導入したものであるため、有機溶媒中で溶解したり、吸着性官能基の脱離が生じることはないため、クロスカップリング法に用いられるパラジウム触媒等の有機溶媒に存在するパラジウムの吸着・回収にも適用可能である。さらに、吸着材の粒子径は懸濁重合時に容易に調節可能であるため、被処理溶液への直接投入による吸着・回収だけでなく、何らかの缶体に充填して流通型で操作することも可能であり、吸着・回収処理操作の効率化を図ることが可能となる。


Claims (7)

  1. 下記一般式(1)


    (式中、Rは一つの置換基を有するまたは有しないフェニル基を表す。)で示される芳香族チオアミド化合物を、グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基と反応させて、パラジウム吸着性を示す官能基を導入したことを特徴とするパラジウム吸着材。
  2. 一般式(1)において、Rが下記一般式(2)


    (式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、水酸基、アルコキシ基、またはヒドロキシメチル基を表す。)で示されるフェニル基であることを特徴とする請求項1記載のパラジウム吸着材。
  3. グリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子が、アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルより選ばれるグリシジル基を有するビニルモノマーと、このビニルモノマーとラジカル重合が可能な架橋性ビニルモノマーとの懸濁重合により製造された多孔性架橋樹脂粒子であり、該多孔性架橋樹脂粒子中のグリシジル基量が1〜6mmol/gであり、かつ平均細孔径が6〜30nmで、比表面積が30〜800m/gであるものであることを特徴とする請求項1および請求項2記載のパラジウム吸着材。
  4. 一般式(1)で示される芳香族チオアミド化合物をグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子に導入する反応を有機溶媒中で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のパラジウム吸着材。
  5. 請求項4における有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンのいずれか単独、あるいはこれらの混合溶媒より選ばれるものであることを特徴とする請求項4記載のパラジウム吸着材。
  6. アクリル酸グリシジルまたはメタクリル酸グリシジルより選ばれるグリシジル基を有するビニルモノマーと、このビニルモノマーとラジカル重合が可能な架橋性ビニルモノマーとの懸濁重合により製造された、グリシジル基量が1〜6mmol/gであり、かつ平均細孔径が6〜30nmで、比表面積が30〜800m/gであるグリシジル基を有する多孔性架橋樹脂粒子のグリシジル基に、下記一般式(3)


    (式中、Rは、水素原子、脂肪族炭化水素基、水酸基、アルコキシ基、またはヒドロキシメチル基を表す。)で示される芳香族チオアミド化合物を有機溶媒中で反応させて、パラジウム吸着性を示す官能基を導入することを特徴とするパラジウム吸着材の製造方法。
  7. 請求項6における有機溶媒が、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレンのいずれか単独、あるいはこれらの混合溶媒より選ばれるものあることを特徴とする請求項6記載のパラジウム吸着材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113929796A (zh) * 2021-10-12 2022-01-14 北京科技大学 一种修饰硫代酰胺官能团的氯球改性方法

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