JP2015187256A - 直線カット性に優れた延伸フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】透明性、表面光沢、剛性を損なうことなく、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)への直線カット性が良好な包装用フィルムを提供する。
【解決手段】(A)及び(B)の合計100重量部基準で、特性(A−i)〜(A−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体(A)40〜90重量部と、特性(B−i)〜(B−ii)を有する熱可塑性樹脂(B)10〜60重量部を含有する樹脂組成物からなるフィルムを、フィルムのMD方向と、フィルムのTD方向に延伸され、TD方向の延伸倍率がMD方向の延伸倍率よりも大きい延伸フィルムであって、延伸フィルムのポリプロピレン(040)面由来の回折強度において、透過光学系にて測定した場合の強度Itransと、反射光学系にて測定した場合の強度Irefの比であるItrans/Irefが0.70以上であることを特徴とする延伸フィルムなど。
【選択図】なし

Description

本発明は、フィルム面内配向を高度に制御された延伸フィルムに関し、詳しくは、延伸フィルムの特徴である透明性、表面光沢、剛性を損なうことなく、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)への直線カット性が良好な包装用フィルムに関する。
現在、食品等の物品をフィルムで包装することが盛んに行われており、使用されるフィルムの種類も、内容物によって多岐に使い分けられている。昨今の少子高齢化に伴い、包装フィルムの易開封性にニーズが高まっており、直線カット性包装袋として、ヒートシール線と平行に開封用の切れ目(例えば、特許文献1参照。)やノッチ(例えば、特許文献2参照。)を設けたものが採用されているが、やはり直線カット性に劣るため、カット方向に対して平行に力を加えたとしても、カットの方向がずれたり、引っかかったりして、良好な直線カット性を得ることができないのが現状である。
フィルムのカット性を改良する手段として、例えば、HDPEやPPの高配向性樹脂に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン−アクリル酸メチル(EMA)といった低配向性樹脂を、所定量ブレンドし、圧延法にてフィルム成形することにより、耐ピンホール性に優れ、直線カット性を発現するフィルムが開示されている(特許文献3参照。)。
上記特許文献3に記載の発明は、直線カット性は発現するが、透明性に著しく劣るため、内容物の視認性が求められる食品用途には、用いることができないという問題点があった。
また、エチレン・1−ブテンランダム共重合体からなるフィルムの片面に、エチレンと炭素数5以上のα−オレフィンとのエチレン・α−オレフィンランダム共重合体95〜70重量%と高圧法低密度ポリエチレン5〜30重量%とからなるエチレン系重合体組成物を、熱融着層として積層したフィルムが開示されている(特許文献4参照。)が、無延伸フィルムであるために、剛性に劣り、カット時に切り口が伸びてしまい、直線カット性が不十分であるという問題点があった。
実開昭57−80462号公報 実開昭58−169044号公報 特開平7−256826号公報 特開2006−56129号公報
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、フィルム面内配向を高度に制御することにより、延伸フィルムの特徴である透明性、表面光沢、剛性を損なうことなく、フィルムの流れ方向(MD方向)と直角の方向(TD方向)への直線カット性が良好な包装用フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特に、先の特許文献などの先行技術に代表される従来の技術状況のなかで、各種の検討を実施した結果、プロピレン−エチレン共重合体として、特定のものを用い、また、特定の熱可塑性樹脂を、それぞれ特定量配合した組成物からなるフィルムを、X線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面由来の回折強度において、透過光学系にて測定した場合の強度と、反射光学系にて測定した場合の強度の比が一定の値以上になるように、延伸することで得られる延伸フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(A)及び(B)の合計100重量部基準で、下記特性(A−i)〜(A−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体(A)40〜90重量部と、下記特性(B−i)〜(B−ii)を有する熱可塑性樹脂(B)10〜60重量部を含有する樹脂組成物からなるフィルムを、フィルムの流れ方向(MD方向)と、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)に延伸され、TD方向の延伸倍率がMD方向の延伸倍率よりも大きい延伸フィルムであって、
延伸フィルムのX線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面由来の回折強度において、透過光学系にて測定した場合の強度(Itrans)と、反射光学系にて測定した場合の強度(Iref)の比であるItrans/Irefが0.70以上であることを特徴とする延伸フィルムが提供される。
特性(A−i):エチレン含有量[E(A)]が2.0〜6.0wt%である。
特性(A−ii):メルトフローレート[MFR(A)]が0.1〜100g/10minである。
特性(B−i):JIS K7112に準拠の方法で得られる密度(B)が0.850〜0.950g/cmである。
特性(B−ii):メルトフローレート[MFR(B)]が0.1〜100g/10minである。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、熱可塑性樹脂(B)は、ブテン単独重合体またはプロピレンとブテンとのランダム共重合体であり、ブテン含有量[B(B)]が20〜100wt%であることを特徴とする延伸フィルムが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、熱可塑性樹脂(B)は、スチレン系エラストマーであり、水添されていることを特徴とする延伸フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、プロピレン−エチレン共重合体(A)は、メタロセン触媒により製造され、さらに、下記特性(A−iii)を有することを特徴とする延伸フィルムが提供される。
特性(A−iii):GPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるMw/Mnが2〜4の範囲にある。
また、本発明の第5の発明によれば、基材層に表層が積層された積層延伸フィルムにおいて、該基材層は、第1〜4のいずれかの発明に係る延伸フィルムであることを特徴とする積層延伸フィルムが提供される。
本発明の延伸フィルムは、フィルム面内配向が高度に制御されているため、延伸フィルムの特徴である透明性、表面光沢、剛性を損なうことなく、フィルムの流れ方向(MD方向)と直角の方向(TD方向)への直線カット性が良好である。
そして、このような本発明の延伸フィルムは、食品包装、衣料品包装、錠剤等に代表される医薬剤包装等の易カット包装体に、好適に用いることができる。
本発明の延伸フィルムは、以下のプロピレン−エチレン共重合体(A)に対し、後記する特定の熱可塑性樹脂(B)を特定量配合した樹脂組成物を、後述するX線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面由来の回折強度において、透過光学系にて測定した場合の強度と、反射光学系にて測定した場合の強度の比が、特定の値以上となるように、延伸されることで得られる。
以下、項目毎に、詳細に説明する。
I.プロピレン−エチレン共重合体(A)
本発明に係る樹脂組成物に用いられるプロピレン−エチレン共重合体(A)(以下、プロピレン系重合体(A)とも記載する。)は、下記特性(A−i)〜(A−ii)を有し、好ましくは特性(A−iii)を有するものである。
特性(A−i):エチレン含有量[E(A)]が2.0〜6.0wt%である。
特性(A−ii):メルトフローレート[MFR(A)]が0.1〜100g/10minである。
特性(A−iii):GPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるMw/Mnが2〜4の範囲にある。
1.特性(A−i)
プロピレン系重合体(A)中のエチレン含有量[E(A)]は、2.0〜6.0wt%であり、より好ましくは2.5〜5.0wt%である。エチレン含有量が6.0wt%を超えると、結晶性が減少するために、耐ブロッキング性能が悪化するばかりでなく、延伸フィルムを長期保存した際に、経時収縮が大きくなり、巻きロールに巻き締まりが発生する問題が生じる。
2.特性(A−ii)
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート[MFR(A)]は、0.1〜100g/10minであり、上限値について、好ましくは60g/10min以下、より好ましくは30g/10min以下、さらに好ましくは25g/10min以下であり、一方、下限値について、好ましくは0.5g/10min以上、より好ましくは2g/10min以上、さらに好ましくは3g/10min以上である。MFRが0.1g/10minよりも、小さい場合には、膜厚の偏肉調整がしづらく、一方、MFRが100g/10minよりも、大きい場合には、ダイからロールに巻き取られる際のネックインが大きくなり、フィルム幅が狭くなるため、実用上好ましくない。
なお、メルトフローレート[MFR(A)]は、JIS K7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて測定される。
3.特性(A−iii)
プロピレン系重合体(A)のMw/Mnは、好ましくは2〜4である。Mw/Mnが4より大きい場合は、低分子量成分が増大し、フィルム表面の光沢を阻害したり、耐ブロッキング性能が悪化するといった悪影響を及ぼすため、好ましくない。
なお、GPC測定の具体的な方法は、実施例にて、詳細に説明する。
II.プロピレン系重合体(A)の製造方法
本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、公知の方法により得られたものを使用することができるが、特に、メタロセン触媒を用いた重合により得られたものが好ましい。メタロセン触媒を用いたものは、チーグラー・ナッタ触媒を用いたものよりも、分子量分布が狭く、結晶性分布が狭く、低結晶性成分の生成量が少ないために、融点見合いでの剛性が高く、耐ブロッキング性能に優れるという特徴がある。
プロピレン系重合体(A)を製造するための適正な形態を、以下順次詳細に説明する。
1.メタロセン触媒
本発明の好ましい態様として、メタロセン触媒を用いた重合により得られたプロピレン系重合体(A)と特定の熱可塑性樹脂(B)を用いることにあり、前者の製造に用いるメタロセン触媒の種類は、特に限定されるものではない。
本発明に用いることができるメタロセン触媒の代表的な例として、下記の成分(a)、(b)及び任意成分である成分(c)からなるメタロセン触媒を挙げることができる。
成分(a):下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(b−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(b−2)成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(b−3)固体酸微粒子
(b−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(c):有機アルミニウム化合物
(1)成分(a)
成分(a)は、下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物である。
Figure 2015187256
[式中、AおよびA’は、置換基を有していてもよい共役五員環配位子であり、Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基であり、X及びYは、成分(b)と反応してオレフィン重合能を発現させるσ共有結合性補助配位子であり、Mは、周期表第4族の遷移金属である。]
上記一般式(1)中、共役五員環配位子は、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基誘導体である。置換基を有する場合、その置換基の例としては、炭素数1〜30の炭化水素基(ハロゲン、珪素、酸素、硫黄などのヘテロ原子を含有していてもよい)が挙げられ、この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していてもよく、また、これが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。この様な共役五員環配位子の例としては、インデニル基、フルオレニル基、またはヒドロアズレニル基等が挙げられ、中でもインデニル基またはヒドロアズレニル基が好ましい。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
Qとして、好ましくはメチレン基、エチレン基、シリレン基、ゲルミレン基、およびこれらに炭化水素基が置換したもの、並びにシラフルオレン基等が挙げられる。
XおよびYの補助配位子は、成分(b)などの助触媒と反応してオレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させるものであり、各々水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、あるいは、酸素、窒素、ケイ素等のヘテロ原子を有していてもよい、炭化水素基が例示できる。これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の炭化水素基、あるいはハロゲン原子である。
Mは、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムである。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに、上記遷移金属化合物の中でも、プロピレンの立体規則性重合を進行させ、かつ得られるプロピレン重合体の分子量が高いものが好ましい。具体的には、特開平1−301704号公報、特開平4−2211694号公報、特開平6−100579号公報、特表2002−535339号公報、特開平6−239914号公報、特開平10−226712号公報、特開平3−193796号公報、特表2001−504824号公報などに記載の遷移金属化合物が好ましく挙げられる。
上記遷移金属化合物の非限定的な例として、下記のものを挙げることができる。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)]ジルコニウム
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウム
(7)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)(2−イソプロピル−4−t−ブチルフェニル−インデニル)]ジルコニウム
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−インデニル}]ジルコニウム
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル}]ジルコニウム
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ジルコニウム
(12)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−5,6,7,8−テトラヒドロアズレニル}]ジルコニウム
(17)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(18)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(19)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレン(2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウム
(20)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)フルオレニル)ジルコニウム
(21)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジt−ブチルフルオレニル)ジルコニウム
(22)ジクロロジメチルメチレン(3−t−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(1,1,4,4,7,7,10,10−オクタメチル−1,2,3,4,7,8,9,10−オクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウム
上記で表される好ましい化合物は、煩雑な多数の例示を避けて代表的例示化合物のみ記載した。中心金属がジルコニウムの化合物を記載したが、同様のハフニウム化合物も使用可能であることは言うまでもなく、また、種々の共役五員環配位子や結合性基あるいは補助配位子を任意に使用しうることは、自明である。
(2)成分(b)
成分(b)として、上述した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報などに詳細な例示がある。
成分(b−1)、成分(b−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(b)の非限定的な具体例としては、成分(b−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(b−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウム、フッ素化合物処理した後に、か焼したシリカアルミナ、ペンタフルオロフェノールとジエチル亜鉛等の有機金属化合物を反応させ、さらに水と反応後、同生成物を担持したシリカなどを、成分(b−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(b)の中で特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
(3)成分(c)
必要に応じて、成分(c)として、用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。
一般式:AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子またはアルコキシ基であり、aは、0<a≦3の数である。)
また、この他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。
これらのうち、成分(c)として、特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
(4)触媒の形成
成分(a)、成分(b)および必要に応じて、成分(c)を接触させて触媒とする。その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時に行ってもよい。
(i)成分(a)と成分(b)を接触させる。
(ii)成分(a)と成分(b)を接触させた後に、成分(c)を添加する。
(iii)成分(a)と成分(c)を接触させた後に、成分(b)を添加する。
(iv)成分(b)と成分(c)を接触させた後に、成分(a)を添加する。
(v)三成分を同時に接触させる。
本発明で使用する成分(a)、(b)及び(c)の使用量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜500μmol、特に好ましくは0.5μmol〜100μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは成分(c)のアルミニウム原子の量が0.001mmol〜100mmol、特に好ましくは0.005mmol〜50mmolの範囲である。したがって、成分(a)に対する成分(c)の量は、モル比で0.002〜10、好ましくは0.02〜10、特に好ましくは0.2〜10の範囲内である。
メタロセン触媒は、予めオレフィンを接触させて、少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。
予備重合処理において、オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合の温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(b)に対し、好ましくは0.01〜100g/g、さらに好ましくは0.1〜50g/gである。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行うことも可能である。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
2.プロピレン系重合体(A)の製造方法
(1)重合プロセス
重合プロセスは、任意のものを用いることができる。
まず、経時的な運転手法について述べる。この観点では、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には、生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。いずれの場合においても、重合槽の数を任意に設定することができる。複数の重合槽を用いる場合、各槽の接続方法は、直列であってもよいし、並列であってもよい。もちろん、直列と並列を併用してもよい。
次に、反応相についてであるが、液体の媒体を用いる手法であってもよいし、気体の媒体を用いる手法であってもよい。具体的な例として、スラリー法、バルク法、気相法を挙げることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。なお、多槽連続重合プロセスの場合、バルク法の重合反応器の後に気相法の重合反応器を付ける場合があるが、この場合は、当業界の慣例に従ってバルク法と呼ぶことにする。また、バッチ法の場合に、第1工程をバルク法で行い、第2工程を気相法で行うこともあるが、この場合も同様にバルク法と呼ぶことにする。この様に反応相は、特に限定されるものではないが、スラリー法は、ヘキサンやヘプタンといった有機溶媒を用いるために付属設備が多く、一般的に生産コストが高くなるという問題がある。従って、バルク法か気相法を用いる方が一層望ましい。
また、バルク法と気相法については、それぞれ種々のプロセスが提案されている。攪拌(混合)方法や除熱方法に違いがあるが、この観点において、本発明においては特段プロセス種を限定することはない。
(2)一般的な重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、好ましくは0.1〜50MPaの範囲を用いることができる。この際に、窒素などの不活性ガスを共存させても問題はない。
3.有機アルミニウム化合物
メタロセン触媒は、チーグラー触媒とは異なり、有機アルミニウム化合物を助触媒として用いることが必須ではない。従って、活性化された触媒の形成という観点では、重合反応器に有機アルミニウム化合物を添加することは必ずしも必要ではない。しかし、オレフィンの重合反応は、他の触媒反応と較べて、極めて短時間に極めて多くの触媒サイクルが回るという点で特異的であり、そのため、不純物の影響を受けやすいという技術上の課題が存在する。この課題を解決するために、通常の化成品と較べて遥かに純度の高い原料を用いたり、原料を更に精製して使用したり、種々の工夫がなされているのは、周知の事実である。この観点で、重合反応器に反応性の高い有機アルミニウム化合物を添加し、不純物がメタロセン触媒と反応する前に、有機アルミニウム化合物と反応させ無害化する手法がよく用いられる。
本発明においても、この観点で有機アルミニウム化合物(C)を用いることが望ましい。有機アルミニウム化合物(C)として、任意の化合物を用いることができるが、好適な化合物の例は、メタロセン触媒の任意成分である成分(c)と同様であり、とりわけ、トリイソブチルアルミニウムとトリオクチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(C)の使用量は、不純物のレベルに応じて、任意に設定することができる。一般的には、製造するプロピレン系重合体(A)の重量に対するアルミニウム原子のモル数として、0.001〜1000mmol−Al/kgの範囲内となる様に添加する。好ましくは、0.01〜100mmol−Al/kg、更に好ましくは、0.1〜20mmol/kgの範囲内となる様に添加するのがよい。
4.インデックスの制御方法
プロピレン系重合体(A)のインデックスの制御方法について、詳述する。
先ず、エチレン含有量であるが、既述の通りプロピレン系重合体(A)のエチレン含有量は、2.0〜6.0wt%であり、より好ましくは2.5〜5.0wt%である。
エチレン含有量を制御する手段として、重合槽に供給するエチレンの量を制御する方法を用いるのが簡便である。具体的には、重合槽に供給するエチレンのプロピレンに対する量比(エチレン供給量÷プロピレン供給量)を高くすれば、得られるプロピレン系重合体(A)のエチレン含有量は、高くなる。逆も同様である。重合槽に供給するプロピレンとエチレンの量比と得られるプロピレン系重合体(A)のエチレン含有量との関係は、使用するメタロセン触媒の種類によって異なるが、適宜、供給量比を調整することによって目的のエチレン含有量を有するプロピレン系重合体(A)を得ることは、当業者にとって極めて容易なことである。
次に、MFRについて述べる。既述の通り、プロピレン系重合体(A)のMFRは、0.1〜100g/10minである。
プロピレン系重合体(A)のMFRは、水素を連鎖移動剤として用いることにより、調整することができる。具体的には、連鎖移動剤である水素の濃度を高くすると、プロピレン系重合体(A)のMFRが高くなる。逆も又同様である。重合槽における水素の濃度を高くするには、重合槽への水素の供給量を高くすればよく、当業者にとって調整は、極めて容易である。
最後に、GPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるMw/Mnについて説明する。既述の通りMw/Mnは、2〜4である。
メタロセン触媒を用いることにより、チーグラー・ナッタ触媒を用いる場合よりも、Mw/Mnを小さくすることができるが、Mw/Mnを制御する際には、狙いの値に対して適切なメタロセン触媒を選択すると同時に、重合条件を工夫することも有効である。例えば、2槽連続の重合プロセスを採用し、1段目の重合槽と2段目の重合槽で分子量の異なるプロピレン−エチレン共重合体を製造すれば、用いるメタロセン触媒が本来与える値よりもMw/Mnを高くすることができる。この際、用いる重合条件、特に水素濃度と得られるプロピレン−エチレン共重合体の分子量の関係を、事前に把握しておき、各槽の水素濃度を適当に調整することにより、Mw/Mnを望みの値に調整することは、当業者にとって容易なことである。
III.熱可塑性樹脂(B)
本発明に係る樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂(B)は、下記特性(B−i)〜(B−ii)を有することが必要である。
特性(B−i):JIS K7112に準拠の方法で得られる密度(B)が0.850〜0.950g/cmである。
特性(B−ii):メルトフローレート[MFR(B)]が0.1〜100g/10minである。
1.特性(B−i)
本発明に係る熱可塑性樹脂(B)の密度は、0.850〜0.950g/cmであり、好ましくは0.860〜0.940g/cm、更に好ましくは0.870〜0.930g/cmである。密度が0.850g/cmを下回ると、延伸フィルムの剛性が低下しすぎて、直線カット性が悪化するため、好ましくない。
2.特性(B−ii)
熱可塑性樹脂(B)のメルトフローレート[MFR(B)]は、0.1〜100g/10minであり、上限値について、好ましくは60g/10min以下、より好ましくは30g/10min以下であり、さらに好ましくは25g/10min以下であり、一方、下限値について、好ましくは0.5g/10min以上、より好ましくは2g/10min以上、さらに好ましくは3g/10min以上である。MFRが0.1g/10minよりも小さい場合には、プロピレン系重合体(A)への分散性が低下するため、直線カット性が悪化する。MFRが100g/10minよりも大きい場合には、プロピレン系重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)とからなる樹脂組成物のMFRが上昇するため、ダイからロールに巻き取られる際のネックインが大きくなり、フィルム幅が狭くなるため、実用上好ましくない。
なお、メルトフローレートMFR(B)は、JIS K7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgにて測定される。
なお、熱可塑性樹脂(B)としては、上述特性(B−i)〜(B−ii)を満たせば、適宜、選択して使用することができるが、ブテン含有量[B(B)]が20〜100wt%であるブテン単独重合体、又はプロピレンとブテンとのランダム共重合体と、水添されているスチレン系エラストマーが、特に好適に用いることができる。
市販品として、プロピレンとブテンとのランダム共重合体としては、三井化学社製、商品名「ビューロン」、「タフマーXM」、「タフマーBL」などが挙げられ、また、水添されたスチレン系エラストマーとしては、JSR(株)社製、「ダイナロン1320P」などが挙げられる。
IV.樹脂組成物
本発明の延伸フィルムは、前述したプロピレン系重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)を必須成分とする樹脂組成物を延伸してなるものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、樹脂組成物には、必要に応じて、下記の各種成分を添加して用いることができる。
1.添加剤
本発明で用いる樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜加えることができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製、商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤などを添加してもよい。
2.その他のポリマー
本発明に係る樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できるエラストマー、脂環式炭化水素樹脂などの改質剤を、適宜加えることができる。
具体的には、エチレン−α−オレフィン共重合体、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどで代表されるポリエチレン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、並びにそれらの水素添加誘導体等に代表される脂環式炭化水素樹脂を添加してもよい。
3.樹脂組成物の製造方法
本発明に係る樹脂組成物は、上記のプロピレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)および必要に応じて、他の添加剤および/またはその他ポリマーを、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
V.延伸フィルム
本発明の延伸フィルムは、上記樹脂組成物からなるフィルムを、フィルムの流れ方向(MD方向)と、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)の少なくとも1方向に延伸されることで得られ、TD方向の延伸倍率とMD方向の延伸倍率との比(TD/MD)が、好ましくは3.0〜10であることが必要である。
TD/MDが3.0を下回ると、後述する、X線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面由来の回折強度における、透過光学系にて測定した場合の強度(Itrans)と、反射光学系にて測定した場合の強度(Iref)の比であるItrans/Irefが0.70を下回るため、直線カット性が発現しない。一方、TD/MDが10を超えると、TD方向延伸中にフィルムが破膜し、製品を得ることができない。
本発明の延伸フィルムの厚みは、その用途に応じて、決められるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
本発明の延伸フィルムは、好ましくは押出して得ることができる。押出の方法は、公知の方法が制限なく使用でき、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。
また、本発明の延伸フィルムは、少なくとも1方向に延伸される必要がある。延伸の方法としては、押出して得られたフィルムを、その後延伸する方法が採用され、縦一軸延伸、横一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれかの方法を、適宜選択することができる。延伸倍率は、前述したTD/MD比率の範囲内であれば、適宜選択できるが、好ましい範囲としては、MD方向(フィルムの流れ方向)に1.0〜2.0倍、TD方向(フィルムの流れ方向に対して垂直方向)に3〜10倍である。
また、MD方向およびTD方向への延伸は、樹脂組成物の配向を制御する温度条件を採用することが重要であり、一般には、延伸温度を高温に設定して行われる。かかる延伸温度は、製膜機械の特性によって異なるが、例えば、MD方向では、90℃〜140℃が好ましく、95℃〜135℃がさらに好ましい。上記延伸温度が90℃より低いと、熱収縮率が大きくなり、延伸フィルムとすることが困難となり、また、140℃より高いと、MDシートがロールに粘着するという問題が生じる恐れがある。
一方、TD方向の延伸温度は、110℃〜170℃が好ましく、120℃〜160℃がさらに好ましい。延伸温度が110℃より低い場合も、熱収縮率が大きくなり、また、170℃より高い場合、フィルムの白化が起こり、透明性が低下する恐れがある。
また、TD方向延伸処理後に、テンターの幅を狭めるリラックス処理を施してもよい。TDリラックス率(狭めた幅/テンターの幅×100)は0〜8%が好ましく、0〜3%がさらに好ましい。8%より大きいと、TD方向の配向が小さくなりすぎるため、結果として、MD方向の熱収縮率が大きくなる恐れがある。
また、二軸延伸した延伸フィルムは、製膜後の二次加工時に弛緩熱処理を行って、さらに熱収縮率を低減させることもできるが、透明性が低下し易く、また、引張弾性率で示される剛性も、低下しやすいため、これらの性能を低下させない範囲の条件で行うことが好ましい。従って、本発明の方法にあっては、製膜後に、熱弛緩処理を行わないことが最も好ましい。
VI.X線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面の回折強度比[Itrans/Iref
本発明の延伸フィルムは、そのX線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面由来の回折強度において、透過光学系にて測定した場合の強度(Itrans)と、反射光学系にて測定した場合の強度(Iref)の比であるItrans/Irefがある特定数値以上である必要がある。
本発明においてX線回折測定における透過光学系とは、回折角2θ=0°の時、X線の進行方向がフィルム面と垂直の方向(ND方向)と一致するよう、さらに散乱ベクトル方向がフィルムの流れ方向(MD方向)に一致するように配置された場合と定義する。
一方、反射光学系とは、回折角2θ=0°の時、X線の進行方向がMD方向と一致するよう、さらに散乱ベクトル方向がND方向に一致するように配置された場合と定義する。この場合、観察される(040)面の強度は、透過光学系の場合は、ポリプロピレンのb軸がMD方向に平行に並んだものを反映し、反射光学系の場合は、b軸がND方向に平行に並んだものを反映することとなる。一般に、ポリプロピレンのα型結晶は、分子鎖の折り畳み方向は、a軸方向であることが知られており(例えば、「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・J・ムーア・Jr.編著、工業調査会、1998、p.144−146)、c軸が分子鎖軸であることを考慮すると、b軸に沿った方向は、相互作用が最も弱い方向であることがわかる。すなわち、本発明の特徴であるTD方向に沿って引き裂きをしやすいという特性のためには、引き裂きが(040)面に沿って行われることが好ましい様式であると考えられ、すなわち、ポリプロピレンの結晶b軸が極力MD方向に向いている必要がある。この、(040)面の異方性を表す指標がItrans/Irefであり、この数値が大きいものほど、よりb軸がMD方向に向いていることとなる。
そこで、本発明における延伸フィルムは、Itrans/Irefが0.70以上である必要があり、好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.80以上である。Itrans/Irefが0.70を下回ると、結晶b軸のMD方向への向き方が不足するため、直線カット性に劣る結果となる。
VII.積層フィルム
本発明の延伸フィルムは、上述のように、単層構造を有しているが、さらに使用目的に応じ他の層を有していてもよく、延伸フィルムの表面に、少なくとも1層の他の樹脂層、例えば、ポリエチレン系重合体、プロピレン系重合体、プロピレン系重合体とプロピレン−ブテンランダム共重合体を混合することで得られる樹脂混合物からなるヒートシール層、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリビニルアルコール等のガスバリヤ性樹脂層を、さらに積層してもよい。
他の層を設ける場合には、積層数に見合う押出機を用いてTダイ法又はインフレーション法等で共押出しする方法、本発明の延伸フィルムと他の層を、ドライラミネート法、ウェットラミネート法などで積層する方法、本発明の延伸フィルムに他の層を押出しコーティングする方法、他の層に本発明の延伸フィルムを共押出しコーティングする方法などが挙げられる。
VIII.用途
また、本発明の延伸フィルムは、印刷性、ラミネート性等を向上させるために、表面処理を行うことができる。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が例示でき、特に制限はない。連続処理が可能であり、該延伸フィルムの製造過程の巻取り工程前に容易に実施できるコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理を行うのが好ましい。
本発明の延伸フィルムを使用する用途は、特に限定されるものではないが、例えば、パン、野菜等の食品包装用途やシャツなどの衣類包装用途、工業用部品包装用途等に使用することができる。また、該フィルムは、ドライラミネート法、サンドラミ法等のラミネーション法等公知の技術によりセロハン、紙、織物、板紙、アルミニウム箔、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム等の基材に、ラミネートしたフィルムとして、利用することもできる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
1.プロピレン系重合体(A)
(1)プロピレン系重合体(A)の諸物性の測定方法
(1−1)エチレン含有量[E(A)]
エチレン含有量[E(A)]は、プロトン完全デカップリング法により、以下の条件に従って13C−NMRスペクトルを解析することにより求める値である。
・機種:日本電子(株)製、GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
・溶媒:o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
・濃度:100mg/mL
・温度:130℃
・パルス角:90°
・パルス間隔:15秒
・積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、下記表1の通りである。表1中Sαα等の記号は、Carmanら(Macromolecules 10,536(1977))の表記法に従い、Pは、メチル炭素、Sは、メチレン炭素、Tは、メチン炭素を、それぞれ表わす。
Figure 2015187256
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中には、PPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules 15,1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば、[PPP]は、全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 … (7)
である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、表2の微小なピークを生じる。
Figure 2015187256
正確なエチレン含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また、異種結合量が少量であることから、プロピレン−エチレン共重合体(A)のエチレン含有量[E(A)]は、実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ系触媒で製造された共重合体の解析と同じく式(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は、以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xは、モル%表示でのエチレン含有量である。
(1−2)MFR(A)
JIS K7210 A法 条件Mに従い、以下の条件で測定した。
・試験温度:230℃
・公称荷重:2.16kg
・ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.00mm
(1−3)GPC測定と数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びMw/Mn
ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定して得られる値であり、具体的には次のようにして求める。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000を用い、各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
・装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
・検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器
・測定波長:3.42μm
・カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
・移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
・測定温度:140℃
・流速:1.0ml/分
・注入量:0.2ml
・試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(2)プロピレン−エチレン共重合体(A)の製造
[製造例A]
(i)予備重合触媒の調製
(珪酸塩の化学処理)
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=25μm、粒度分布=10〜60μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。
(珪酸塩の乾燥)
先に化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。仕様、乾燥条件は、以下の通りである。
・回転筒:円筒状 内径50mm 加温帯550mm(電気炉)
・かき上げ翼付き回転数:2rpm
・傾斜角:20/520
・珪酸塩の供給速度:2.5g/分
・ガス流速:窒素96リットル/時間
・向流乾燥温度:200℃(粉体温度)
(触媒の調製)
内容積1リットルの攪拌翼のついたガラス製反応器に乾燥珪酸塩20gを導入し、混合ヘプタン116ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)84mlを加え、室温で攪拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを200mlに調製した。次に、先に調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)0.96mlを添加し、25℃で1時間反応させた。平行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕218mg(0.3mM)と混合ヘプタン87mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)3.31mlを加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間攪拌後、混合ヘプタンを追加して500mlに調製した。
(予備重合/洗浄)
続いて、窒素で十分置換を行った内容積1.0リットルの攪拌式オートクレーブに、先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後、プロピレンの供給を停止し、さらに、2時間維持した。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄みを240mlデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液0.95ml、さらに混合ヘプタンを560ml添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを560ml除いた。
さらに、この操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23mモル/リットル、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。
続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0ml添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。触媒1.0g当たりポリプロピレンを2.0g含む予備重合触媒Aが得られた。
(ii)プロピレン系重合体(A)の製造
(ii−1)樹脂(A−1):
上記の予備重合触媒Aを用いて、以下の手順に従って、プロピレン系重合体(A)の製造を行った。
内容積200リットルの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで充分置換した後、トリイソブチルアルミニウム(50g/L)のヘプタン溶液を470ml(トリイソブチルアルミニウムとして23.5g)、液化プロピレン45kg、水素1.5NL、エチレン1900gを導入し、内温を30℃に調整した。
次いで、先に合成した予備重合触媒Aを0.6g(予備重合ポリマーを除いた触媒重量として0.2g)を加えた。その後、60℃に昇温して重合を開始した。2時間後にエタノール100mlを添加して重合反応を停止した。その後、未反応のガスをパージし、ポリマーを乾燥した。
こうして得られたプロピレン系重合体(A−1)のポリマー収量は16kg、触媒活性(ポリマー収量を触媒量で割った値)は80kg−PP/g−触媒であった。
得られた樹脂(A−1)を分析した結果、E(A)は3.2wt%、MFR(A)は2.0g/10min、Mw/Mnは2.6であった。
(ii−2)樹脂(A−2):
水素4NLとした以外は、樹脂(A−1)と同様にして、プロピレン系重合体(A−2)の製造を行った。
樹脂(A−1)と樹脂(A−2)の分析結果を表3に示す。
Figure 2015187256
2.熱可塑性樹脂(B)
(1)熱可塑性樹脂(B)の諸物性の測定方法
(1−1)密度
熱可塑性樹脂(B)の密度は、JIS K7112の密度勾配管法に従って、測定した。
(1−2)MFR(B)
熱可塑性樹脂(B)のMFR(B)は、プロピレン系重合体(A)のMFRと同じ方法で測定した。
(2)使用した熱可塑性樹脂(B)
(i)樹脂(B−1):
市販品、三井化学社製、商品名「タフマーXM7070」(メタロセン触媒により製造されたプロピレン−ブテンランダム共重合体、ブテン含有量25wt%)
(ii)樹脂(B−2):
市販品、JSR社製、商品名「ダイナロン1320P」(水添スチレン系エラストマー)
(iii)樹脂(B−3):
市販品、三井化学社製、商品名「タフマーBL4000」(メタロセン触媒により製造されたブテン単独重合体、ブテン含有量100wt%)
樹脂(B−1)〜樹脂(B−3)を分析した結果を、表4に示す。
Figure 2015187256
[実施例1]
1.配合
プロピレン系重合体(A)として、製造例Aで得られた樹脂(A−1)、熱可塑性樹脂(B)として、樹脂(B−1)を、各々70重量%、30重量%となるように計量し、ヘンシェルミキサーに投入後、このプロピレン系重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)の混合物100重量部に対して、下記の酸化防止剤、中和剤を下記の量で添加し、充分に混合した。
・酸化防止剤:
(i)テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(BASFジャパン社製、商品名「イルガノックス1010」)、500wtppm
(ii)トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン社製、商品名「イルガフォス168」)、500wtppm
・中和剤:
(i)ステアリン酸カルシウム、500wtppm
2.造粒
スクリュー口径25mmのテクノベル社製「KZW」二軸押出機にて、押出機温度=230℃、スクリュー回転数=300rpm、吐出量=20kg/hの条件で溶融混合し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径3mm、長さ5mmに切断することでプロピレン系重合体樹脂組成物の原料ペレットを得た。
3.延伸フィルムの製造
(i)未延伸シートの成形
成形には、口径30mmの表面層用押出機−1及び口径30mmの表面層用押出機−2、口径75mmの中間層用押出機−3が接続された、ダイス幅265mm、リップ開度1.5mmに調整した3種3層Tダイを用いた。
得られたプロピレン系重合体樹脂組成物の原料ペレットを押出機−1、押出機−2、押出機−3に各々投入し、240℃にて溶融押出を行った。
押出機−2の吐出量は2kg/h、押出機−3の吐出量は12kg/hとなるように調整した。
溶融押出されたフィルムは、30℃に温調され、6m/minで回転する冷却ロールにて冷却固化させ、厚さ約500μmの未延伸シートを得た。
(ii)延伸フィルムの成形
次に、得られた未延伸シートをテンター式逐次二軸延伸装置にて、90℃でMD方向に1.0倍、引き続きテンター炉内で130℃に予熱をかけた後、130℃でTD方向に7倍の延伸倍率で延伸し、5%緩和させつつ130℃で熱セットをかけて、1種3層の二軸延伸プロピレン系積層延伸フィルムを得た。フィルムの全厚さは40μmであった。
4.X線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面の回折強度比(Itrans/Iref
(i)X線回折測定
以下の仕様、手順でX線回折測定を行った。
・X線回折装置:リガク社製水平型X線回折装置SmartLab
・X線出力:40kV、30mA
・X線波長:1.54Å(CuKα線)
・入射光学系:平行ビーム光学系、入射スリット幅1mm、高さ制限スリット10mm、Soller Slit5°
・受光光学系:受光スリット1 幅1mm、受光スリット2 幅8mm、Parallel Slit Analyzer(分解能0.5°)使用。Soller Slit 5°
・スキャン条件:2θ=10.00〜35.00°、角度ステップ0.05°、スキャンスピード3°/分
・X線検出器:シンチレーションカウンタ
サンプル形状:フィルムを50×50mmサイズにカットし、以下のように配置した。
・透過光学系:試料は、回折角2θ=0°の時、X線の進行方向がND方向と一致するよう、さらに散乱ベクトル方向がMD方向に一致するようにセットする。
・反射光学系:試料は、回折角2θ=0°の時、X線の進行方向がMD方向と一致するよう、さらに散乱ベクトル方向がND方向に一致するようにセットする。
(ii)データ処理
測定で得られた強度を2θに対して、プロットする。
2θ=10.80°と26.00°周りのそれぞれの5点の強度の平均(すなわち、2θ=10.70、10.75、10.80、10.85、10.90°の5点での強度の平均と、2θ=25.90、25.95、26.00、26.05、26.10°の5点での強度の平均)をとり、これを2θ=10.80°と26.00°での強度とする。この2点を通る直線をベースラインとし、測定された強度からベースライン強度を差し引く。強度の規格化定数として、上記ベースライン減算後の強度を10.80〜26.00°まですべての和を取る。2θ=16.60〜17.00°の範囲での上記ベースライン減算後の強度の最大値を、上記規格化定数で除した値を(040)面強度とする。
この手法で、透過光学系で算出された(040)面強度をItransとし、反射光学系で算出された(040)面強度をIrefとした。得られたItransと、Irefとを用いてItrans/Irefを算出した。
5.フィルム物性評価
(1)HAZE(透明性):
JIS K7136−2000に準拠し、フィルム1枚にてヘイズメータで測定した。得られた値が小さいほど、透明性に優れる。
(2)引張弾性率(ヤング率):
JIS K7127−1989に準拠し、下記条件にてフィルムの流れ方向(MD方向)と、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)についての引張弾性率(ヤング率)を測定した。
・サンプル形状:短冊
・サンプル長さ:150mm
・サンプル幅:15mm
・チャック間距離:100mm
・クロスヘッド速度:1mm/min
(3)直線カット性評価
フィルムをTD方向に250mm、MD方向に20mmの長方形に切出し、短辺の中心部に、TD方向に平行となるように、長さ50mmのスリットを入れた試験片を5枚準備した。
引張試験機の2つのつかみ具の中心線と、試験片のスリットが同一線上で一致するように、スリット方端を固定部つかみ具に、スリット他端を可動部つかみ具に取り付けた。
クロスヘッド速度200mm/minでフィルムを完全に引裂くまで、引張試験を実施し、カット状態を観察することで、直線カット性の優劣を定めた。
5回試験を実施し、以下の基準で評価した。得られた延伸フィルムの評価結果を表4に示す。
得られた延伸フィルムは、本発明の特定要件を全て満足しているため、直線カット性に良好な結果であった。
○:一度も抵抗なく、TD方向に平行に引き裂かれたもの。
△:3回は抵抗なく、TD方向に平行に引き裂かれたもの。
×:5回とも途中で引っかかり、MD方向へ引き裂きが伝搬したもの。
[実施例2]
プロピレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の比率を各々80重量%、20重量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形、評価を実施した。結果を表5に示す。
得られた延伸フィルムは、回折強度比Itrans/Irefが0.73と若干低く、直線カット性の低下は見られたが、実用上問題ないレベルであった。
[実施例3、4]
プロピレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の比率を、表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形、評価を実施した。結果を表5に示す。
得られた延伸フィルムは、本発明の特定要件を全て満足しているため、直線カット性に良好な結果であった。
[実施例5]
プロピレン系重合体(A)を、樹脂(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形、評価を実施した。結果を表5に示す。
得られた延伸フィルムは、本発明の特定要件を全て満足しているため、直線カット性に良好な結果であった。
[比較例1]
プロピレン系重合体(A)の樹脂(A−1)のみとし、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形、評価を実施した。結果を表5に示す。
得られた延伸フィルムは、熱可塑性樹脂(B)が配合されていないため、回折強度比Itrans/Irefが0.67と低く、直線カット性が発現しなかった。
[比較例2]
プロピレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の比率を、表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形を実施した。
比較例2においては、熱可塑性樹脂(B−1)の配合量が70wt%と多く、樹脂組成物の融点が低下しすぎたため、TD延伸において溶融破膜し、フィルムを得ることができなかった。
Figure 2015187256
[実施例6、7]
熱可塑性樹脂(B)を樹脂(B−2)に変更し、プロピレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の比率を、各々表6に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形、評価を実施した。結果を表6に示す。
得られた延伸フィルムは、本発明の特定要件を全て満足しているため、直線カット性に良好な結果であった。
[実施例8]
熱可塑性樹脂(B)を樹脂(B−3)に変更し、プロピレン系重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)の比率を、各々表6に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、配合、造粒、成形、評価を実施した。結果を表6に示す。
得られた延伸フィルムは、本発明の特定要件を全て満足しているため、直線カット性に良好な結果であった。
Figure 2015187256
以上の各実施例と各比較例を対照して比較すれば、本発明における各規定を満たす延伸フィルムは、フィルム面内配向を高度に制御されているため、延伸フィルムの特徴である透明性、表面光沢、剛性を損なうことなく、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)への直線カット性を有していることが分かる。
本発明の延伸フィルムは、フィルム面内配向を高度に制御されているため、延伸フィルムの特徴である透明性、表面光沢、剛性を損なうことなく、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)への直線カット性が良好であるため、食品包装、衣料品包装、錠剤等に代表される医薬剤包装等の易カット包装体に、好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. (A)及び(B)の合計100重量部基準で、下記特性(A−i)〜(A−ii)を有するプロピレン−エチレン共重合体(A)40〜90重量部と、下記特性(B−i)〜(B−ii)を有する熱可塑性樹脂(B)10〜60重量部を含有する樹脂組成物からなるフィルムを、フィルムの流れ方向(MD方向)と、フィルムの流れ方向と直角の方向(TD方向)に延伸され、TD方向の延伸倍率がMD方向の延伸倍率よりも大きい延伸フィルムであって、
    延伸フィルムのX線回折測定で得られるポリプロピレン(040)面由来の回折強度において、透過光学系にて測定した場合の強度(Itrans)と、反射光学系にて測定した場合の強度(Iref)の比であるItrans/Irefが0.70以上であることを特徴とする延伸フィルム。
    特性(A−i):エチレン含有量[E(A)]が2.0〜6.0wt%である。
    特性(A−ii):メルトフローレート[MFR(A)]が0.1〜100g/10minである。
    特性(B−i):JIS K7112に準拠の方法で得られる密度(B)が0.850〜0.950g/cmである。
    特性(B−ii):メルトフローレート[MFR(B)]が0.1〜100g/10minである。
  2. 熱可塑性樹脂(B)は、ブテン単独重合体またはプロピレンとブテンとのランダム共重合体であり、ブテン含有量[B(B)]が20〜100wt%であることを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルム。
  3. 熱可塑性樹脂(B)は、スチレン系エラストマーであり、水添されていることを特徴とする請求項1に記載の延伸フィルム。
  4. プロピレン−エチレン共重合体(A)は、メタロセン触媒により製造され、さらに、下記特性(A−iii)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の延伸フィルム。
    特性(A−iii):GPC測定における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるMw/Mnが2〜4の範囲にある。
  5. 基材層に表層が積層された積層延伸フィルムにおいて、該基材層は、請求項1〜4のいずれかに1項に記載の延伸フィルムであることを特徴とする積層延伸フィルム。
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WO2021200593A1 (ja) * 2020-03-30 2021-10-07 東洋紡株式会社 ポリオレフィン系樹脂フィルム、及びそれを用いた積層体

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