JP2015093925A - 二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム - Google Patents

二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】柔軟でありながら低伸度で伸びにくく、耐ブロッキングおよび粘着性に優れ、必要時に剥がし易い二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムを提供する。
【解決手段】自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の順に構成される少なくとも3層の積層フィルムにおいて、(イ)〜(ホ)の要件を満たすことを特徴とする二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムなど。
(イ):中間層(X)は、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)60〜100重量%と、プロピレン単独重合体(B)0〜40重量%
(ロ):自己粘着層(Y)は、スチレン系エラストマー(C)55〜85重量%、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)10〜35重量%、および特定の脂環族系炭化水素樹脂(E)5〜30重量%
(ハ):(Y)は、コロナ放電処理が施され、かつ粘着強度が0.02〜0.1N/25mm
(ニ):非粘着層(Z)は、プロピレン単独重合体(F)30〜65重量%とポリエチレン(G)35〜70重量%
(ホ):(Z)は、中心面平均粗さ(sRa)が0.30μm以上で、かつヘーズ(曇価)が30%以上
【選択図】なし

Description

本発明は、二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムに関し、さらに詳しくは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)やホモポリプロピレンの延伸フィルムより柔軟であるため、貼り付けやすく、無延伸ポリエチレンフィルムや無延伸ポリプロピレンフィルムより伸度が小さく、剥がしやすいため、加工時の作業性に優れ、さらに一方の表面層を自己粘着層とすることにより、表面に粘着剤を塗布したりせずとも十分な粘着強度を有し、その粘着強度が非常に高いことから、粗面化された被着体に対しても接着可能であり、糊残りも発生しなく、また、もう一方の表面層を非粘着層とすることにより、フィルムがロール状に巻かれてあっても、使用時にブロッキングが極めて起こり難いので、フィルムの生産性にも優れるうえ、剥がしやすく取扱いが容易な二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムに関する。
液晶パネル等に使用されるプリズムシート等の電子部材(以下、保護対象物と言う場合もある。)が、加工時、運搬時あるいは貯蔵期間中に、ゴミが付着したり、傷がついたりするのを防止することを目的として、その表面にプロテクトフィルム(表面保護フィルム又は保護フィルム)が貼り付けられる。
このプロテクトフィルムには、保護対象物に容易に密着させることができ、保護対象物の加工時、運搬時あるいは貯蔵期間中に、簡単には剥離しないが、剥がす必要があるときには、容易に剥離させることができるという特性が望まれている。
現在、プロテクトフィルムとしては、無延伸ポリエチレンフィルム、PETフィルム等の片面に、アクリル系やゴム系の粘着剤を塗布したものが主流である。
PET系フィルムを用いるものとしては、例えば、リターデーション値1000nm以上の一軸異方性高分子フィルムを用いた表面保護フィルム(例えば、特許文献1参照。)、二軸延伸高分子フィルムを用いた表面保護フィルム(例えば、特許文献2参照。)、特定のコントラスト値、リターデーション値、ヘーズを有する高分子フィルムを用いた表面保護フィルム(例えば、特許文献3参照。)、マイクロ波透過型分子配向計で測定した配向主軸の最大歪みが7度以下の高分子フィルムを用いた表面保護フィルム(例えば、特許文献4参照。)、透明性に優れ、粗大突起の原因となる異物の少ない積層二軸ポリエステルフィルムを用いた偏光板保護フィルム(例えば、特許文献5参照。)、異物、キズが少なく、表面粗さ等の小さい一軸ポリエステルフィルムを用いた表面保護フィルム(例えば、特許文献6参照。)等が挙げられる。
また、ポリエチレン系フィルムを用いるものとしては、表面2層がポリエチレンで、中心層がポリプロピレンの積層フィルムを用いる表面保護粘着フィルム(例えば、特許文献7参照。)、軟質ポリオレフィンを用いた表面保護フィルム(例えば、特許文献8参照。)、高熱伝導率フィルム層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム(例えば、特許文献9参照。)等が挙げられる。
さらに、粗面化された被着体に対し、除去可能に貼着する自己粘着フィルムも、提案されている(特許文献10参照。)。
そのほか、メタロセン触媒より重合され、組成分布及び分子量分布が狭く、フィッシュアイの存在しないエチレン系樹脂製の表面保護用フィルム(例えば、特許文献14参照。)や、特定の低密度ポリエチレン50〜90重量%と、重量平均分子量/数平均分子量との比が9〜15の特定の高密度ポリエチレン10〜50重量%とからなるポリエチレンと、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる粘着層とを共押出しした積層フィルム(例えば、特許文献15参照。)が、提案されている。
しかし、無延伸ポリエチレンフィルムを用いたプロテクトフィルムは、剥がす時にフィルム自体が伸びやすく、剥がし難いため、ハンドリング性が悪いという欠点を有している。特に最近、需要の高い大型画面の液晶表示装置では、面積が大きいため、より顕著な問題となっている。また、該プロテクトフィルムは、広幅フィルムの生産が困難であるため、大型画面の液晶表示装置には、適さないという問題も有している。
また、PETフィルムを用いたプロテクトフィルムは、柔軟性に劣るため、貼り付け難く、PETフィルム自体に十分な粘着力がないため、粘着剤を塗布する必要がある。該プロテクトフィルムは、このような作業がどうしても必要になるため、粘着剤の塗布を必要とするものには、プロテクトフィルムの原反を生産する工程と、得られた原反に粘着剤を塗布する工程の2工程が必要となるため、生産性が悪く、また、得られた原反を粘着剤塗布工程に移す際、原反にほこりなどの付着物が付かないように、作業環境をクリーンに保たなければならないため、生産コストが高くなるという問題を有している。
さらに、粘着剤を塗布する必要のない自己粘着性を有する表面層を両面に持つオレフィン樹脂製多層ラップフィルムとして、プロピレン樹脂組成物からなる多層フィルムが開示されている(例えば、特許文献11参照。)。
該多層フィルムは、粘着剤を塗布する必要がないので生産性やハンドリングに優れるが、両表面層が自己粘着層であるため、生産時に、該フィルムをロール状に巻いたとき、一方の自己粘着層が他方の自己粘着層に貼り付いてブロッキングすることにより、均一に巻くことができず、フィルムに皺が生じるだけでなく、使用時にロールから巻き出すときに良好に巻き出せない等の欠点を有している。
従って、自己粘着層に高い粘着強度を付与させることが困難であるため、ラップフィルムのような用途には、十分使用できるが、高い密着性が要求されるプロテクトフィルムのような用途には、使用し得ないのが現状である。
また、粗面化された被着体に対し、除去可能に貼着する自己粘着フィルムについては、例えば、上記特許文献10が挙げられるが、このようなマスキングフィルムでは、接着力が弱く、プリズムシートのような粗面化された被着体には、用いることができない。
さらに、特許文献12及び13では、中間層の弾性率を制御することによって、粘着力が向上するといった内容が開示されているが、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムと同様に評価した場合、該特許文献に記載の配合では、目標とする粗面被着体への粘着力を得るためには、不十分であった。
こうした状況下において、粗面被着体に接着可能で、安定的に浮きや剥がれが発生しないプロテクトフィルムの早期開発が望まれている。
特開2000−94565号公報 特開2001−301024号公報 特開2001−335648号公報 特開2001−335649号公報 特開2004−151156号公報 特開2005−2220号公報 特開平7−1681号公報 特開2003−103726号公報 特開2004−6552号公報 特開2005−48161号公報 特開2006−36225号公報 特開2008−6815号公報 特開2008−221533号公報 特開平9−111208号公報 特開昭54−133578号公報
本発明の目的は、従来技術の現状に鑑み、柔軟でありながら低伸度で伸びにくく、二次加工時における耐ブロッキング性および粘着性に優れ、必要時に剥がし易く、しかも、保護対象物の粗面被着体に対し十分な粘着強度を持ち、また、広幅製品の生産性に適し、メタロセン触媒を用いていることや、粘着剤塗布を必要としないことから、クリーンで糊残りが発生せず、且つ安価に製造することができる二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、自己粘着層/中間層/非粘着層の順に構成される少なくとも3層の積層フィルムにおいて、中間層に、特定のポリプロピレン樹脂組成物を用い、一方の表面層に、スチレン系エラストマーと特定のプロピレン系重合体及び特定の石油樹脂からなる自己粘着層を用いた上で、さらに、その自己粘着層に対し、特定の処理度となるようにコロナ放電処理を施した自己粘着層を有し、他方の表面層に、特定のプロピレン単独重合体と特定のポリエチレンを主成分とする非粘着層を用いて、二軸延伸積層フィルムを調製したところ、所望の特性を有する自己粘着性プロテクトフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の順に構成される少なくとも3層の積層フィルムにおいて、各層が下記(イ)〜(ホ)の要件を満たすことを特徴とする二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムが提供される。
(イ):中間層(X)は、下記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)60〜100重量%と、メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜10g/10分のプロピレン単独重合体(B)0〜40重量%とからなる。
(A):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量が1.5〜3重量%である、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)50〜60重量%と、第2工程で得られる成分(A2)が(A1)より8〜10重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)40〜50重量%を、逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)。
(ロ):自己粘着層(Y)は、スチレン系エラストマー(C)55〜85重量%、下記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)10〜35重量%、および軟化点が110〜145℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)5〜30重量%とからなる。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D):示差走査熱量計(DSC)で求めた融点(Tp)が135℃以下であるプロピレン−エチレンランダム共重合体又はプロピレン−エチレン−1ブテンランダム共重合体。
(ハ):自己粘着層(Y)は、下記式より算出された処理量が40〜200W・m/minの範囲でコロナ放電処理が施され、かつJIS Z0237(2000)に準拠する粘着強度測定法(23℃・50RH%の雰囲気下、30分又は24時間保持)に基づいて、高さ5〜30μmの山が連続した表面形状を持つ粗面被着体に対し、測定した粘着強度の数値が0.02〜0.1N/25mmの範囲である。
処理量(W・m/min)=処理電力(W)×処理バー幅(m)×処理速度(m/min)
(ニ):非粘着層(Z)は、プロピレン単独重合体(F)30〜65重量%と密度が0.94g/cm以上のポリエチレン(G)35〜70重量%との重合体組成物からなる。
(ホ):非粘着層(Z)は、表面粗さ計において下記(C1)〜(C6)の測定条件で得られる中心面平均粗さ(sRa)が0.30μm以上であり、かつJIS K7105(1981)に準拠したヘーズ(曇価)が30%以上である。
(C1)触針先端曲率半径:5μm
(C2)カットオフ波長:0.25mm
(C3)カットオフ種別:2CR(位相補償)
(C4)測定速度:0.3mm/秒
(C5)測定方向:フィルムのMD方向
(C6)測定長さ:2mm
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ヤング率から求められる、MD方向の0.5%伸度応力が0.8〜5.5N/15mm、TD方向の0.5%伸度応力が1.2〜10N/15mmであることを特徴とする二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、プリズムシートの粗面化面に用いられることを特徴とする二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、自己粘着層(Y)の厚みが3〜10μmであることを特徴とする二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムが提供される。
本発明は、上記した如く、二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)中間層(X)に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分の範囲であることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(2)自己粘着層(Y)は、スチレン系エラストマー(C)70〜80重量%、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)10〜25重量%、および軟化点が115℃〜130℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)5〜10重量%とからなることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(3)スチレン系エラストマー(C)は、スチレン含有量が30重量%以下であり、好ましくはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、または水添スチレン−ブタジエン共重合体(HSBR)であることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(4)非粘着層(Z)に用いられるポリエチレン(G)は、密度が0.94〜0.97g/cmであり、好ましく0.95〜0.97g/cmであることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(5)非粘着層(Z)は、中心面平均粗さ(sRa)が0.30〜2.0μmであり、好ましくは0.5〜2.0μmであることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(6)延伸倍率は、縦方向(MD)が3〜7倍、横方向(TD)が4〜10倍であることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(7)フィルムの総厚みが20〜80μmであることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
(8)JIS K7105(1981)に準拠して測定したフィルムのヘーズが30%以上であることを特徴とする上記の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、自己粘着層面に施すコロナ放電処理量及び脂環族系炭化水素並びにエラストマー添加量を調整することにより、各保護対象物に対して、貼り付けやすく剥がしやすい加工安定性を有している。また、自己粘着層の接着力を大幅に向上させることにより、粘着剤塗布や粘着付与剤添加を必要とせずに、従来のプロテクトフィルムと同等以上の自己粘着性を有する。そのため、二次加工の工数や設備を省略することができるうえ、該フィルムを剥がしたあと保護対象物に糊残り等の不具合を生じさせない。
また、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、非粘着層の表面粗度状態を制御することにより、ブロッキングを防止できるため、製造時や使用時の安定性に優れた該フィルムを生産することができる。さらには、従来の製法・加工法では、困難であった広幅のフィルムを生産することが可能となる。
従来のプロテクトフィルムでは、自己粘着層と非粘着層のブロッキング強度が大きい場合、製品フィルムを巻き取るときにミルロールに皺が生じたり、使用時にフィルム同士が貼り付き、良好に巻き出せなくなったりする傾向がある。
しかしながら、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、表面を粗面化した非粘着層を有しているため、自己粘着層と非粘着層とを重ね合わせた時に発生するブロッキングを抑え、フィルム成形時の安定加工性、および製品のミルロール巻き姿を良好にすることができる。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、従来のプロテクトフィルムに用いられるような粘着付与剤の練りこみや粘着剤の塗布等を、基本的には必要とせずに、十分な粘着強度を有する。そのため、二次加工を必要とせず、設備や工数を省略することができる。また、保護対象物から剥がした後も、保護対象物の表面に糊残りやブリード物の付着などの問題を生じさせないという利点もある。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、前述したように、自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の順に構成される少なくとも3層の積層フィルムにおいて、各層が下記(イ)〜(ホ)の要件を満たすことを特徴とするものである。
(イ):中間層(X)は、下記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)60〜100重量%と、メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜10g/10分のプロピレン単独重合体(B)0〜40重量%とからなる。
(A):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量が1.5〜3重量%である、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)50〜60重量%と、第2工程で得られる成分(A2)が(A1)より8〜10重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)40〜50重量%を、逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)。
(ロ):自己粘着層(Y)は、スチレン系エラストマー(C)55〜85重量%、下記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)10〜35重量%、および軟化点が110〜145℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)5〜30重量%とからなる。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D):示差走査熱量計(DSC)で求めた融点(Tp)が135℃以下であるプロピレン−エチレンランダム共重合体又はプロピレン−エチレン−1ブテンランダム共重合体。
(ハ):自己粘着層(Y)は、下記式より算出された処理量が40〜200W・m/minの範囲でコロナ放電処理が施され、かつJIS Z0237(2000)に準拠する粘着強度測定法(23℃・50RH%の雰囲気下、30分又は24時間保持)に基づいて、高さ5〜30μmの山が連続した表面形状を持つ粗面被着体に対し、測定した粘着強度の数値が0.02〜0.1N/25mmの範囲である。
処理量(W・m/min)=処理電力(W)×処理バー幅(m)×処理速度(m/min)
(ニ):非粘着層(Z)は、プロピレン単独重合体(F)30〜65重量%と密度が0.94g/cm以上のポリエチレン(G)35〜70重量%との重合体組成物からなる。
(ホ):非粘着層(Z)は、表面粗さ計において下記(C1)〜(C6)の測定条件で得られる中心面平均粗さ(sRa)が0.30μm以上であり、かつJIS K7105(1981)に準拠したヘーズ(曇価)が30%以上である。
(C1)触針先端曲率半径:5μm
(C2)カットオフ波長:0.25mm
(C3)カットオフ種別:2CR(位相補償)
(C4)測定速度:0.3mm/秒
(C5)測定方向:フィルムのMD方向
(C6)測定長さ:2mm
以下、各層の構成成分、積層フィルムの特徴、製法等について詳細に説明する。
I.各層の構成成分
1.中間層(X)の構成成分
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムを構成する中間層(X)は、下記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)60〜100重量%と、下記プロピレン単独重合体(B)0〜40重量%とからなり、好ましくはプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)70〜90重量%とプロピレン単独重合体(B)10〜30重量%とからなり、より好ましくはプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)70〜80重量%とプロピレン単独重合体(B)20〜30重量%である。プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が60重量%より極端に少ない場合、フィルムの柔軟性が低下し、貼付け後の浮きや剥がれが発生することで、良好な貼り付き状態を維持することができなくなる。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量が1.5〜3重量%である、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)50〜60重量%と、第2工程で得られる成分(A2)が(A1)より8〜10重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)40〜50重量%を、逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)。
プロピレン単独重合体(B):メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜10g/10分である。
(1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの中間層(X)に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)(以降、(A1)成分と表記することがある)を50〜60重量%とプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体成分(A2)(以降、(A2)成分と表記することがある)を40〜50重量%の範囲で含むものであり、(A1)成分を52〜58重量%と(A2)成分を42〜48重量%の範囲で含むものが好ましい。
(A1)成分の含有量が50重量%より極端に少ない場合には、得られる二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの弾性率が低下するため、フィルムの柔軟性が過剰となり、製品のハンドリングが悪化する恐れがある。
他方、(A1)成分の含有量が60重量%より極端に多い場合には、得られる二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの弾性率が増大するため、柔軟性が劣り粘着強度が低下する恐れがある。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、(A1)成分と(A2)成分を、逐次重合により、連続的に重合して得ることができる。
また、(A1)成分と(A2)成分とを、多段重合により連続的に重合する方法としては、複数の重合器を使用し、例えば、1段目で(A1)成分を製造し、2段目で(A2)成分を製造する方法が例示できる。この連続重合法は、溶融混合法に比べて、(A1)成分に(A2)成分が均一に分散したプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)が得られ、品質の安定化が図れる点で好ましい。多段重合法により連続的に重合する方法については、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
以下に、好ましいプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造する方法を説明する。
(1−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造
本発明に係るプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造する方法は、メタロセン系触媒の使用を必須とするものである。プロピレン−エチレンブロック共重合体において分子量及び結晶性分布が広いとベタツキやブリードアウトが悪化することは当業者に広く知られるところであるが、本発明に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体においても、ベタツキ及びブリードアウトを抑制するため、かつ、フィルム成形においてより少ないフィッシュアイの発生を達成するために、分子量及び結晶性分布を狭くできるメタロセン系触媒を用いて重合されることが必要であり、チーグラー・ナッタ系触媒では、本発明に係る優れたプロピレン−エチレンブロック共重合体が得られないのは、後記の実施例と比較例との対比からも明らかである。
ここで、メタロセン系触媒の種類は、本発明の性能を有する共重合体を生成できる限りは、特に限定されるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示すような成分(x)と(y)及び必要に応じて使用する成分(z)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(x):下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物
成分(y):下記(y−1)〜(y−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分
(y−1)有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体
(y−2)成分(x)と反応して成分(x)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体
(y−3)固体酸微粒子
(y−4)イオン交換性層状珪酸塩
成分(z):有機アルミニウム化合物
成分(x):
成分(x)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C4−a−aR)(C4−b−bR)MeXY …(1)
[ここで、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を示し、Meは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれる金属原子を示し、X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示す。R及びRは、水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を示す。a及びbは、置換基の数である。]
詳しくは、Qは、2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基或いはオリゴシリレン基又は炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
X及びYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素原子、塩素原子、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。X及びYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
及びRは、水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR及びRは、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基又はリン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム又はハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
以上において記載した成分(x)の中で、本発明に係るプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基或いはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も、好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は、本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
成分(y):
成分(y)としては、上述した成分(y−1)〜成分(y−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808号公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
ここで、成分(y−1)及び成分(y−2)に用いられる微粒子状担体としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、シリカマグネシアなどの無機酸化物、塩化マグネシウム、オキシ塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化ランタンなどの無機ハロゲン化物、さらには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンジビニルベンセン共重合体、アクリル酸系共重合体などの多孔質の有機担体を挙げることができる。
また、成分(y)の非限定的な具体例としては、成分(y−1)として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルなどが担持された微粒子状担体を、成分(y−2)として、トリフェニルボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが担持された微粒子状担体を、成分(y−3)として、アルミナ、シリカアルミナ、塩化マグネシウムなどを、成分(y−4)として、モンモリロナイト、ザコウナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライトなどのスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族などが挙げられる。これらは、混合層を形成しているものでもよい。
上記成分(y)の中で特に好ましいものは、成分(y−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
成分(z):
必要に応じて成分(z)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム又はジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
AlR3−a
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、水素原子、ハロゲンまたはアルコキシ基であり、aは0<a≦3の数である。)
触媒の形成は、成分(x)と成分(y)及び必要に応じて成分(z)を接触させて触媒とする。その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
(i)成分(x)と成分(y)を接触させる。
(ii)成分(x)と成分(y)を接触させた後に、成分(z)を添加する。
(iii)成分(x)と成分(z)を接触させた後に、成分(y)を添加する。
(iv)成分(y)と成分(z)を接触させた後に、成分(x)を添加する。
(v)三成分を同時に接触させる。
本発明で使用する成分(x)と(y)及び(z)の使用量は任意である。例えば、成分(y)に対する成分(x)の使用量は、成分(y)1gに対して、好ましくは0.1μmol〜1,000μmol、特に好ましくは0.5〜500μmolの範囲である。成分(y)に対する成分(z)の使用量は、成分(z)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。したがって、成分(x)に対する成分(z)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは10−5〜50、特に好ましくは10−4〜5の範囲内である。
本発明の触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合温度と時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が成分(y)に対し、好ましくは0.01〜100、さらに好ましくは0.1〜50である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
本発明に係るプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の製造は、実施するに際して、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)と低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を逐次重合することが必要である。
プロピレン−エチレンブロック共重合体が単にプロピレンにエチレンを共重合させたランダム共重合体のときには、エチレン含量が少ない場合には柔軟性と耐衝撃性が充分でなく、これらの物性を向上させるためにエチレン含量を増加させると耐熱性が極めて悪化し製造が困難になるばかりでなく、要求される品質の全てを満たすことは困難である。
そこで、本発明において、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、第1工程と第2工程でエチレン含量が異なる成分を逐次重合したブロック共重合体であることが柔軟性と耐熱性をバランスさせるために必要である。
また、本発明は、成分(A2)として、分子量が低く単独ではべたつきやすい共重合体を用いる場合があるので、反応器への付着などの問題を防止するために、成分(A1)を重合した後で成分(A2)を重合する方法を用いることが望ましい。
(i)逐次重合
本発明に係る成分プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造実施するに際しては、結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)と低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)を逐次重合することが前述した理由により必要である。
逐次重合を行う際には、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
バッチ法の場合には、時間と共に重合条件を変化させることにより単一の反応器を用いて成分(A1)と成分(A2)を個別に重合することが可能である。本発明の効果を阻害しない限り、複数の反応器を並列に接続して用いてもよい。
連続法の場合には、成分(A1)と成分(A2)を個別に重合する必要から2個以上の反応器を直列に接続した製造設備を用いる必要があるが、本発明の効果を阻害しない限り成分(A1)、成分(A2)のそれぞれについて複数の反応器を直列及び/又は並列に接続して用いても良い。
(ii)重合プロセス
重合プロセス(重合方法)は、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法を用いることができる。バルク法と気相法の中間的な条件として超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく、気相法に含める。
低結晶性或いは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)は、炭化水素などの有機溶媒や液化プロピレンに溶け易いため、成分(A2)の製造に際しては気相法を用いることが望ましい。
結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)の製造に対しては、どのプロセスを用いても特に問題はないが、比較的結晶性の低い成分(A1)を製造する場合には、付着などの問題を避けるために、気相法を用いることが望ましい。
したがって、連続法を用いて、まず結晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)をバルク法もしくは気相法にて重合し、引き続き低結晶性あるいは非晶性プロピレン−エチレンランダム共重合体エラストマー成分(A2)を気相法にて重合することが最も望ましい。
(iii)その他の重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。また、重合圧力は、選択するプロセスによって差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば特に問題なく用いることができる。具体的には、0より大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際、窒素などの不活性ガスを共存させることもできる。
第一工程で成分(A1)、第二工程で成分(A2)の逐次重合を行う場合、第二工程にて系中に重合抑制剤を添加することが望ましい。プロピレン−エチレンブロック共重合体を製造する場合には、第二工程のエチレン−プロピレンランダム共重合を行う反応器に重合抑制剤を添加すると、得られるパウダーの粒子性状(流動性など)やゲルなどの製品品質を改良することができる。この手法については、各種技術検討がなされており、一例として特公昭63−54296号、特開平7−25960号、特開2003−2939号などの各公報を例示することができる。本発明にも当該手法を適用することが望ましい。
また、(A1)成分は、共重合体(A1)の重量基準でプロピレン単位を97〜98.5重量%、好ましくは97.5〜98重量%の範囲で含むプロピレン−エチレンランダム共重合体である。プロピレン単位が97重量%を大きく下回ると、二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの融点が低下することで、成形自体ができなくなる、また、層間に脱落剥離により、所望のフィルムを得ることができなくなる傾向がある。
一方、プロピレン単位が100重量%であると、(A2)成分との組成差が大きくなり、柔軟性が得られず、ここでも所望の性能を得ることができない。
さらに、(A2)成分は、共重合体(A2)の重量基準でプロピレン単位を87〜90.5重量%、好ましくは88〜90重量%の範囲で含むプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体である。プロピレン単位が87重量%を大きく下回ると、得られる二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの透明性が低下する傾向があり、一方、プロピレン単位が90.5重量%を大きく上回ると、得られる二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの弾性率が増大し、粘着力が低下する恐れがある。
α−オレフィンとしては、エチレン、もしくは炭素数4〜18のα−オレフィンを挙げることができ、炭素数4〜18のα−オレフィンの具体例として、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどを例示でき、これらの一種もしくは二種以上を用いることができる。製造コストの面からは、エチレン、1−ブテンもしくはその併用が最も好適である。
ここで、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)のインデックスの測定方法について、説明する。
(A1)成分中のエチレン含量([E]A1)と(A2)成分中のエチレン含量([E]A2)と、プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を構成する(A1)成分の割合(W(A1))および(A2)成分の割合(W(A2))の測定は、製造時の物質収支(マテリアルバランス)によって特定することも可能であるが、より正確にこれらを特定するためには、以下の分析を用いることが望ましい。
(i)温度昇温溶離分別(TREF)によるW(A1)とW(A2)の特定
プロピレン−エチレンランダム共重合体の結晶性分布をTREFにより評価する手法は、当該業者によく知られるものであり、例えば、次の文献などで詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明におけるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、成分(A1)と(A2)の各々の結晶性に大きな違いがあり、また、メタロセン触媒を用いて製造されることで各々の結晶性分布が狭くなっていることから、双方の中間的な成分は極めて少なく、双方をTREFにより精度良く判別することが可能である。
具体的な方法として、TREF溶出曲線(温度に対する溶出量のプロット)において、成分(A1)と(A2)は、結晶性の違いにより各々T(A1)とT(A2)にその溶出ピークを示し、その差は十分大きいため、中間の温度T(C)(={T(A1)+T(A2)}/2)において、ほぼ分離が可能である。
また、TREF測定温度の下限は、本測定に用いた装置では−15℃であるが、成分(A2)の結晶性が非常に低いあるいは非晶性成分の場合には、本測定方法において、測定温度範囲内にピークを示さない場合がある。(この場合には、測定温度下限(すなわち−15℃)において溶媒に溶解した成分(A2)の濃度は検出される。)
このとき、T(A2)は、測定温度下限以下に存在するものと考えられるが、その値を測定することができないため、このような場合には、T(A2)を測定温度下限である−15℃と定義する。
ここで、T(C)までに溶出する成分の積算量をW(A2)重量%、T(C)以上で溶出する部分の積算量をW(A1)重量%と定義すると、W(A2)は、結晶性が低いあるいは非晶性の成分(A2)の量とほとんど対応しており、T(C)以上で溶出する成分の積算量W(A1)は、結晶性が比較的高い成分(A1)の量とほぼ対応している。TREFによって得られる溶出量曲線から、上記の各種の温度や量が算出できる。
(ii)TREF測定方法
本発明においては、TREFの測定は、具体的には以下のように測定を行う。
試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL、BHT入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後、溶媒であるo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mL、BHT入り)を1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
(iii)各成分中のエチレン含量[E]A1と[E]A2の特定
(イ)成分(A1)と成分(A2)の分離
上述のTREF測定により求めたT(C)を基に、分取型分別装置を用い昇温カラム分別法により、T(C)にける可溶成分(A2)とT(C)における不溶成分(A1)とに分別し、NMRにより各成分のエチレン含量を求める。
昇温カラム分別法とは、例えば、Macromolecules、21 314〜319(1988)に開示されたような測定方法をいう。具体的には、本発明において以下の方法を用いる。
(ロ)分別条件
直径50mm、高さ500mmの円筒状カラムにガラスビーズ担体(80〜100メッシュ)を充填し、140℃に保持する。次に、140℃で溶解したサンプルのo−ジクロロベンゼン溶液(10mg/mL)200mLを前記カラムに導入する。その後、該カラムの温度を0℃まで10℃/時間の降温速度で冷却する。0℃で1時間保持後、10℃/時間の昇温速度でカラム温度をT(C)まで加熱し、1時間保持する。なお、一連の操作を通じてのカラムの温度制御精度は±1℃とする。
次いで、カラム温度をT(C)に保持したまま、T(C)のo−ジクロロベンゼンを20mL/分の流速で800mL流すことにより、カラム内に存在するT(C)で可溶な成分を溶出させ回収する。
次いで、10℃/分の昇温速度で当該カラム温度を140℃まで上げ、140℃で1時間静置後、140℃の溶媒(o−ジクロロベンゼン)を20mL/分の流速で800mL流すことにより、T(C)で不溶な成分を溶出させ回収する。
分別によって得られたポリマーを含む溶液は、エバポレーターを用いて20mLまで濃縮された後、5倍量のメタノール中に析出される。析出ポリマーをろ過して回収後、真空乾燥器により一晩乾燥する。
(ハ)13C−NMRによるエチレン含量の測定
上記分別により得られた成分(A1)と(A2)それぞれについてのエチレン含有量はプロトン完全デカップリング法により、以下の条件に従って測定した13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。
[エチレン含量測定用の13C−NMR測定条件]
機種:日本電子(株)製 GSX−400または同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロロベンゼン/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules,17 1950(1984)等を参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、下記表1の通りである。表1中Sαα等の記号は、Carmanら(Macromolecules,10 536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Figure 2015093925
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中には、PPP、PPE、EPE、PEP、PEE、およびEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の式(1)〜(6)の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は、全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。従って、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 …(7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(Tββ)は、Tββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、メタロセン触媒を用いてプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)を製造した場合には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が生成し、それにより、表2の微小なピークを生じる。
Figure 2015093925
正確なエチレン含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また、異種結合量が少量であることから、エチレン含有量は、実質的に異種結合を含まないチーグラー触媒で製造された共重合体の解析と同じく、式(1)〜(7)の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は、以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xは、モル%表示でのエチレン含有量である。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体全体のエチレン含量[E]は、上記より測定された成分(A1)と(A2)それぞれのエチレン含量[E]A1と[E]A2及びTREFより算出される各成分の重量比率W(A1)とW(A2)重量%から、以下の式により算出される。
[E]={[E]A1×W(A1)+[E]A2×W(A2)/100 (重量%)
(2)プロピレン単独重合体(B)
本発明において、中間層(X)に用いるプロピレン単独重合体(B)は、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分の範囲であり、好ましくは2.5〜8.0g/10分の範囲であり、さらに好ましくはメルトフローレートが3.0〜7.0g/10分の範囲であるプロピレン単独重合体を例示でき、二種以上の混合物であっても良い。
ここで、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999)「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重荷重)に準拠して測定する値である。
MFRを上記の範囲に調整する具体的な方法として、重合時に添加する水素の量を変更する方法を挙げることができる。水素は、プロピレンの重合において、連鎖移動剤として作用するため、水素の添加量を増やせば、MFRが上がり、逆に、添加量を下げれば、MFRを下げることができる。重合槽内部の水素濃度に対するMFRの値は、使用する触媒や他の重合条件によって異なるが、触媒種やその他の重合条件に応じて事前に水素濃度とMFRの関係を把握し、望みのMFRの値となるよう水素濃度を調整することは、当業者にとって極めて容易なことである。
プロピレン単独重合体(B)は、高立体規則性重合触媒を用いることによって得ることができ、高立体規則性重合触媒としては、塩化チタン、アルコキシチタン等を出発材料として調製されたチタン化合物を用いた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン化合物を用いたカミンスキー型触媒を使用することができる。
2.自己粘着層(Y)の構成成分
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムを構成する自己粘着層(Y)は、スチレン系エラストマー(C)55〜85重量%、好ましくは70〜80重量%であり、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)10〜35重量%、好ましくは10〜20重量%、および軟化点が110〜145℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)5〜30重量%とからなり、好ましくは軟化点が115〜130℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)7.5〜20重量%とからなる。
脂環族系炭化水素樹脂(E)の配合量が5重量%より極端に少ないと、粗面被着体に対する接着ができなくなり、また、スチレン系エラストマー(C)の配合量が85重量%より極端に多いと、ここでも粗面被着体に対して接着ができなくなる傾向である。このことから、脂環族系炭化水素樹脂(E)とスチレン系エラストマー(C)の添加バランスが粗面被着体に対しての接着における重要な要素である。
また、軟化点が110〜145℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)を使用しても、希釈するポリプロピレンの融点が145℃より極端に高くなると、粗面被着体に対しての接着ができなくなる。これは、粘着層の結晶化度が高くなることにより、粘着層の柔軟性が低下し、貼り付けた際の粗面被着体の凹凸に対する接着面積が減少することにより生じると、考えている。
(1)スチレン系エラストマー(C)
本発明に用いるスチレン系エラストマー(C)としては、水添スチレン−ブタジエン共重合体(HSBR)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体(SEBC)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等が例示できる。二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムが十分な粘着強度を有するために、スチレン系エラストマー(C)のスチレン含有量は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。スチレン含有量が30重量%を超えると、粘着層の柔軟性が劣り、粘着強度が低下する傾向がある。
このようなスチレン系エラストマー(C)としては、市販の製品を使用することができ、具体的には、JSR(株)社製の「ダイナロン1320P」を挙げることができる。
(2)プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)
本発明に用いるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)は、JIS K7122(1987)「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法に準拠した示差走査熱量測定法(DSC法)で測定した融点が135℃以下のものである。融点が135℃を極端に超えると、粘着面の柔軟性が低下し、粗面被着体に対し接着できなくなる。他方、融点が120℃未満のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体は、製造が困難であるため、融点が120〜135℃であることが好ましい。
また、融解熱は、80kJ/kg以下であることが好ましく、より好ましくは70kJ/kg以下である。融解熱が80kJ/kgより極端に大きなプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)は、粘着層の柔軟性を阻害し、粗面被着体に対する十分な粘着強度が得られなくなる。ここで、融点及び融解熱量は、JIS K7122(1987)に記載の方法に準拠した示差走査熱量測定法(DSC法)で測定する値である。
また、本発明に用いるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)は、プロピレン単位を85〜99.9重量%の範囲で含むことが好ましく、さらに好ましくは90〜99.9重量%の範囲で含むことが望ましい。プロピレン単位が85重量%未満であるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)は、製造が困難であり、実質上使用できない。
本発明に用いるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体またはプロピレン−エチレン−1ブテンランダム共重合体であり、それらを任意の比率で混合した混合物であっても構わない。また、本発明に用いるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)は、高立体規則性重合触媒を用いることによって得ることができ、高立体規則性重合触媒としては、塩化チタン、アルコキシチタン等を出発材料として調製されたチタン化合物を用いた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン化合物を用いたカミンスキー型触媒を使用することができる。
(3)脂環族系炭化水素樹脂(E)
本発明に用いる脂環族系炭化水素樹脂(E)は、JIS K7122(1987)「プラスチックの転移熱測定方法」に記載の方法に準拠した示差走査熱量測定法(DSC法)で測定した軟化点が110〜145℃の範囲にあるもので、好ましくは115〜130℃の範囲にあるものである。軟化点が145℃を超えると、横延伸の温度条件より石油樹脂などの軟化点が高くなるため、石油樹脂自体が溶融しないことから、延伸ボイド化し、粘着面が粗れ、粗面被着体に接着できなくなる。また、軟化点が110℃未満であると、べたつきが発生し、ダイス直下の冷却ロールに取られる等の成形不具合が発生する。
また、本発明に用いる脂環族系炭化水素樹脂(E)の配合量は、自己粘着層(Y)において、5〜30重量%、好ましくは7.5〜20重量%である。脂環族系炭化水素樹脂(E)の配合量が5重量%より極端に少ないと、コロナ放電処理をかけた場合であっても、表面にブリードする成分が少ないことから、粗面被着体に対する接着ができなくなる。一方、30重量%より極端に多いと、固化しきれなかった脂環族系炭化水素(E)が粘着し、冷却ロール(チルロール)に取られることから、成形性に問題が発生する。
このような脂環族系炭化水素樹脂(E)としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン誘導体の1種または2種以上の混合物を主原料として重合して得られる炭化水素樹脂、水素化クマロン・インデン樹脂、水素化C9系石油樹脂、水素化C5系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂、水素化テルペン樹脂、水素化ロジン樹脂などが挙げられ、そして、市販の製品を使用することができ、具体的には、荒川化学(株)製の「アルコン−P125」や、ヤスハラケミカル製YSレジン「TO−125」などを挙げることができる。
(4)自己粘着層(Y)の特性
スチレン系エラストマー(C)としては、前記のように、スチレン含有量が30重量%以下であることが好ましく、好ましくはスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、または水添スチレン−ブタジエン共重合体(HSBR)である。
しかしながら、脂環族系炭化水素樹脂(E)とスチレン系エラストマー(C)のみの構成では、粗面被着体に対する十分な粘着強度は、得られない。
そこで、より粘着強度を向上させるべく、後述する考え方により、粘着面に対しコロナ放電処理を施した。これは、コロナ放電処理を施すことにより、粘着面の表面に作られた官能基と被着体の官能基との間に分子間力が働き、粘着強度も向上するのではないかと、考えたからである。
また、脂環族系炭化水素樹脂(E)は、それ自体粘着付与の性能を持っており、コロナ放電処理を施した場合、粘着面に添加している脂環族系炭化水素樹脂の表面ブリードを促進させ、粘着力が向上する可能性があるのではないかと、考えたからである。
自己粘着層(Y)に対するコロナ放電処理量は、下記式より算出された処理量が40〜200W・m/minの範囲でコロナ放電処理が施される。好ましくは50〜200W・m/minであり、処理量が40W・m/minより極端に少ないと、粗面被着体に対し接着不可となり、一方、200W・m/minより極端に多い処理量となると、粘着層やフィルム自体に劣化が生じ、穴開きやシワの発生など不具合が生じる。
処理量(W・m/min)=処理電力(W)×処理バー幅(m)×処理速度(m/min)
コロナ放電処理により、粘着強度を飛躍的に向上させることが可能となった。
また、処理量を上げるに連れ、粘着強度自体も、向上することを見出した。これは、前述官能基の分子間力の考え方と脂環族系炭化水素のブリードによるものと考えられ、コロナ放電処理の処理量を上げて行くことによって、より顕著に発現したものと考えている。
また、その相乗効果により、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの粘着層自体の粘着強度を飛躍的に向上させることが可能となったため、薄い粘着層を用いた場合でも、粗面被着体に対し、接着可能となった。
また、自己粘着層(Y)は、JIS Z0237(2000)に準拠する粘着強度測定法(23℃・50RH%の雰囲気下、30分又は24時間保持)に基づいて、粗面被着体[アクリル素材の三角柱(頂点角度134°、高さ5μm〜30μm)が連続した表面形状を持つシート]に対し測定した粘着強度の数値が0.02〜0.1N/25mmの範囲である。
3.非粘着層(Z)の構成成分
非粘着層(Z)は、プロピレン単独重合体(F)30〜65重量%と密度が0.94g/cm以上のポリエチレン(G)35〜70重量%との重合体組成物からなり、非粘着層(Z)に用いられるポリエチレン(G)は、好ましくは密度が0.94〜0.97g/cmであり、さらに好ましくは0.95〜0.97g/cmである。
また、非粘着層(Z)は、表面粗さ計において、下記(C1)〜(C6)の測定条件で得られる中心面平均粗さ(sRa)が0.30μm以上であり、好ましくは0.30〜2.0μmであり、より好ましくは0.40〜2.0μmであり、さらに好ましくは0.50〜2.0μmである。sRaが0.30μmより極端に小さくなると、フィルム繰り出しや二次加工時において、加工性の低下や剥離性が悪くなることにより、粘着面が粗らされ、粗面被着体に接着しなくなる等の不具合が生じる可能性がある。
(C1)触針先端曲率半径:5μm
(C2)カットオフ波長:0.25mm
(C3)カットオフ種別:2CR(位相補償)
(C4)測定速度:0.3mm/秒
(C5)測定方向:フィルムのMD方向
(C6)測定長さ:2mm
ここで言う上記sRaは、プロピレン単独重合体(F)およびポリエチレン(G)を前記の範囲内で配合することにより、調整することが可能であり、フィルムの透明性(ヘーズ)及び自己粘着層と非粘着層のブロッキングを、制御することができる。
これは、プロピレン単独重合体(F)とポリエチレン(G)の結晶性の違いを利用し、フィルムの構成成分として用いたとき、得られるフィルム表面の粗度状態を適度に粗らし、ブロッキング性を抑制することができるからである。
また、プロピレン単独重合体(F)とポリエチレン(G)は、そもそも混ざり合うことは無く、融点格差と粘度格差を広げることにより、横延伸炉内で、プロピレン単独重合体(F)は半溶融高粘度、ポリエチレン(G)は溶融低粘度の混在状態で、延伸されることから、溶融低粘度状態のポリエチレンは、引き延ばされ、半溶融高粘度状態のプロピレン単独重合体(F)は、延伸され難く、大きなドメイン状態で存在することとなるので、その高低差で山高さ(sRa)が付与されているものと、本発明者らは考察している。
自己粘着層(Y)と非粘着層(Z)とのブロッキング強度は、3000g/10cm以下に調整されているのが好ましく、2000g/10cm以下がさらに好ましい。
ヘーズが30%以上であれば、上記ブロッキング強度を3000g/10cm以下に調整することができ、好ましくはヘーズが50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、ヘーズが60%を超えると、ブロッキング強度は2000g/10cm以下に調整することができるため、ミルロールの繰出しや二次加工面で好適である。
ここで言うヘーズは、JIS K7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に記載の方法に準拠して測定する値である。
(1)プロピレン単独重合体(F)
本発明に用いるプロピレン単独重合体(F)は、プロピレン単独重合体であれば、特に規定は無く、市販のものを使用することができる。具体的には、日本ポリプロ(株)社製FL100Aが例示される。
(2)ポリエチレン(G)
本発明に用いるポリエチレン(G)は、密度が0.94g/cm以上であり、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましく、好ましくは密度が0.94〜0.97g/cmであり、更に好ましくは0.95〜0.97g/cmである。
密度が0.94g/cmより極端に低いものは、非粘着面の凹凸が小さくなり、フィルムの表面が平滑になることから、ブロッキングが劣る傾向がある。
また、本発明に用いるポリエチレン重合体(G)としては、市販の製品を使用することができ、具体的には京葉ポリエチレン社製のG1900を挙げることができる。
4.その他の成分
本発明に用いる積層フィルムを構成する自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の各層には、それぞれ通常のポリオレフィン系フィルム材料に使用される酸化防止剤、中和剤等、添加剤が配合されていてもよい。
酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、またはトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジフォスフォナイト等のリン系酸化防止剤が例示できる。
また、中和剤としては、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸の金属塩類やハイドロタルサイト類等が例示できる。
これらの添加剤の配合量は、各層中に0.01〜3重量%程度配合されているのが好ましい。また、これらの添加剤を配合する方法は、特に限定されず、たとえばヘンシェルミキサー(商品名)等の高速撹拌機つき混合機を用いるなど、公知の方法により配合することができる。さらに、各層を構成する各種配合物を混合した後、単軸押出機または二軸押出機を用いてペレット化してもなんら差し支えない。
II.二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、上記構成成分を有する層を、自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の順で、構成される少なくとも3層の積層フィルムである。
なお、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、自己粘着層と中間層、中間層と非粘着層の間に、別の層が含まれていても構わない。
積層フィルムの製造方法は、自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の順で構成されるように、通常のTダイ法またはインフレーション法でシート成形し、これらの方法で成形したシートを二軸延伸して得られる。二軸延伸法としては、テンター方式による逐次二軸延伸法によるものが好ましい。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの延伸倍率は、縦方向(MD)、横方向(TD)で、それぞれ3〜7倍、4〜10倍が好ましく、さらに好ましくは、それぞれ4〜6倍、4〜9倍であることが望ましい。延伸倍率が上記範囲を外れると、フィルムの弾性率や伸度が、プロテクトフィルム用途に適さなくなる恐れがある。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムにおける自己粘着層(Y)厚みは、粘着性、成形加工性の観点から3〜10μmの範囲が好ましく、4〜10μmのものがより好ましく、6〜10μmのものがさらに好ましい。
該プロテクトフィルムの自己粘着層(Y)厚みが3μmより極端に薄い場合、粘着力が低下し、貼り付けにくくなる傾向がある。一方、該プロテクトフィルムの自己粘着層(Y)厚みが10μmより極端に厚い場合、フィルム製造時に自己粘着層を押し出すとき、押出機の負荷が上がりすぎたり、均一に押し出すことができなくなったりするため、良好なフィルムを製造することが困難である。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの弾性率は、縦方向(MD)、横方向(TD)でそれぞれ400〜1400MPa、600〜2000MPaが好ましく、さらに好ましくは、それぞれ400〜1000Mpa、600〜1500MPaであることが望ましい。
また、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、ヤング率から求められる、MD方向の0.5%伸度応力が0.8〜5.5N/15mm、TD方向の0.5%伸度応力が1.2〜10N/15mmであることが好ましい。低応力で変形できるフィルムほど被着体への追従性が向上する。フィルムが変形するのに10N/15mmを超える応力が必要な場合、プリズムシート等の粗面体への適切な粘着は、困難である。
ここで、弾性率は、JIS K7127(1999)「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠して測定する値である。
また、MD方向とTD方向の0.5%伸度応力は、後記の実施例に記載の方法で求めた値である。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、粘着面に施すコロナ放電処理量及び脂環族系炭化水素、並びにエラストマー添加量を調整することにより、貼り付けやすく剥がしやすいプロテクトフィルムにすることができる。
該フィルムと粗面被着体との粘着強度は、0.02N/25mm以上が好ましく、0.04〜0.10N/25mmであることがさらに好ましい。粘着強度が0.02N/25mmを大きく下回る場合、保護対象物に対して、良好に張り付かなくなる傾向があり、且つ浮きや剥がれが生じる恐れがある。一方、粘着強度が0.10N/25mmを大きく上回る場合、剥離強度が強すぎるため、保護対象物から剥がす際の作業性を悪化や、フィルムの剥離性を悪化させる場合がある。
ここで使用する粗面被着体は、JIS Z0237(2000)「粘着テープ・粘着シート試験方法」に記載の方法に準拠して、SUS304番の代わりにプリズムシートを用いる。
ここで使用する粗面被着体の粘着強度の測定方法としては、前述プリズムシートの粗面化面に対し、幅25mm、長さ200mmに切り取った二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの自己粘着層をプリズムシートの粗面化面に合わせ、荷重2kgのゴムローラーを用いて一定の圧力で均一に密着させたあと、23℃・50RH%の雰囲気下で30分又は24時間保持した後、プリズムシートを固定し、フィルムの一端を300mm/minの一定速度で180度剥離するときの強度を測定する。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、フィルム剥離性や二次加工性が良いという理由で、ブロッキング強度が3000g/10cm以下のものが好ましく、2500g/10cm以下がさらに好ましい。ブロッキング強度が3000g/10cmを大きく上回ると、フィルム剥離性が悪化し、後工程での二次加工性や保護対象物からの剥離がし難くなることにより、作業性が悪化する。
以下、本発明を実施例および比較例によって、さらに詳しく具体的に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
なお、本発明の実施例、比較例で用いるフィルムの物性値は以下に示す方法で測定し、用いた試料は以下の通りである。
1、試験方法
(1)MFR[単位:g/10分]:
MFRは、JIS K7210(1999)「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して、測定した。
(2)弾性率[単位:MPa]:
JIS K7127(1999)「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に記載の方法に準拠して、測定した。弾性率(ヤング率)の数値が小さくなれば柔軟である。
(3)0.5%伸度応力(N/15mm):
JIS K7127(1999)「プラスチック−引張特性の試験方法−第3部:フィルム及びシートの試験条件」に記載の方法に準拠して、測定した。測定値は、フィルムを0.5%伸ばした時の応力を読み取った。
(4)粘着強度[g/25mm]:
JIS Z0237(2000)「粘着テープ・粘着シート試験方法」の記載の方法に準拠して、SUS304の代わりにプリズムシートを用いて次のように測定した。幅25mm、長さ200mmに切り取った二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムの自己粘着層をプリズムシートに合わせ、荷重2kgのゴムローラーを用いて一定の圧力で均一に密着させた後、23℃・50RH%の雰囲気下で30分間(および24時間)保持した後、プリズムシートを固定し、フィルムの一端を300mm/minの一定速度で180度剥離するときの強度を測定した粘着強度の数値が大きくなれば、粘着強度は大きい。
(5)ヘーズ(Haze)[単位:%]:
JIS K7105(1981)「プラスチックの光学的特性試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。粘着強度の数値が小さくなれば、曇り度が小さくなり、透明性は高い。
(6)フィルムの剥離性[官能試験]:
巻取り機に巻取られたフィルムを400mm×500mm程度にカットし、粘着面と非粘着面とが重なった状態において手で剥離し、剥がし易さを評価した。評価基準は、次のとおりで、○以上を合格とした。
◎:容易に剥離が可能。
○:剥がす際に若干の抵抗を感じる。
△:剥がす際にかなりの抵抗を感じる。
×:剥がれない。
(7)中心面平均粗さ(sRa)[μm]:
中心面平均粗さ(sRa)の測定法は、測定方法や測定条件によって得られる値が異なるので、本発明では、JIS B0651(2001)「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性」で規定されている触針式表面粗さ測定器で測定する。測定器の測定条件は、触針先端曲率半径を5μm、カットオフ波長を0.25mm、カットオフ種別を2CR(位相補償)、測定速度を0.3mm/秒、測定方向をフィルムMD方向、測定長さを2mmとし、得られた値で表面粗度の範囲を規定した。測定方向であるMD方向とは、樹脂組成物を押出し成形するときのフィルムの送り方向、すなわちフィルムの長手方向と平行な方向をいう。
(C1)触針先端曲率半径:5μm
(C2)カットオフ波長:0.25mm
(C3)カットオフ種別:2CR(位相補償)
(C4)測定速度:0.3mm/秒
(C5)測定方向:フィルムのMD方向
(C6)測定長さ:2mm
(8)厚み[μm]:
JIS B7503:2011に準拠し、厚みを評価した。
(9)成形可否:
原反シートを100℃の加熱ロールで縦方向(MD)に5倍延伸し、引き続きテンターオーブンで横方向(TD)に8倍延伸した場合における、フィルムの破断可否にて、評価した。
可:破断せずに、成形可能。
否:破断し、成形不可能。
(10)浮き・剥がれ:
JIS Z0237(2000)に準拠する粘着強度測定法(23℃・50RH%の雰囲気下、30分又は24時間保持)に基づいて、高さ5〜30μmの山が連続した表面形状を持つ粗面被着体(プリズムシート)に対して、二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムを貼付後、浮きや剥がれの有無を、目視で評価した。
〇:浮きや剥がれが見られない。
×:浮きや剥がれが見られる。
2.使用樹脂
実施例、比較例に用いた各種材料を以下に示す。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)については、下記(A−1)〜(A−5)で示す。
(1)A−1(プロピレン−エチレンブロック共重合体):
・(A)エチレン含有量2重量%の(A1)成分56重量%とエチレン含有量12重量%の(A2)成分44重量%との多段重合体:MFRWhole;7.2g/10分(重合例として、製造の詳細を後述する。)。
(2)A−2(プロピレン−エチレンブロック共重合体):
・(A)エチレン含有量3重量%の(A1)成分56重量%とエチレン含有量12重量%の(A2)成分44重量%との多段重合体:MFRWhole;7.0g/10分(重合例として、製造の詳細を後述する。)。
(3)A−3(プロピレン−エチレンブロック共重合体):
・(A)エチレン含有量2.0重量%の(A1)成分69重量%とエチレン含有量12重量%の(A2)成分31重量%との多段重合体:MFRWhole;7.0g/10分(重合例として、製造の詳細を後述する。)。
(4)A−4(プロピレン−エチレンブロック共重合体):
・(A)エチレン含有量2重量%の(A1)成分25重量%とエチレン含有量12重量%の(A2)成分75重量%との多段重合体:MFRWhole;7.2g/10分(重合例として、製造の詳細を後述する。)。
(5)A−5(プロピレン−エチレンブロック共重合体):
・(A)エチレン含有量5重量%の(A1)成分53重量%とエチレン含有量12重量%の(A2)成分47重量%との多段重合体:MFRWhole;7.1g/10分(重合例として、製造の詳細を後述する。)。
(6)A−6(プロピレン系樹脂組成物):
・エチレン含有量0.8重量%の(A1)成分65重量%とエチレン含有量20重量%の(A2)成分35重量%との多段重合体:MFRWhole;5.5g/10分(重合例として、製造の詳細を後述する。)。
(7)B(プロピレン単独重合体(B)):
・融解熱101kJ/kg、融点161℃、MFR;3.0g/10分のプロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製FL100A(商品名)。
(8)D−1(プロピレン系重合体(D)):
・融解熱60kJ/kg、融点127℃のプロピレン−エチレン−1ブテンランダム共重合体である日本ポリプロ(株)製FX4G(商品名)。
(9)D−2(プロピレン系重合体(D)):
・融解熱62kJ/kg、融点125℃のメタロセン系プロピレン−エチレンランダム共重合体である日本ポリプロ(株)製WFX4(商品名)。
(10)DE−1(プロピレン系混合物(DE)):
・D−1(62.5重量%)と軟化点が125℃の脂環族系炭化水素樹脂(荒川化学(株)製/アルコン−P125)(37.5重量%)との混合物。
(11)DE−2(プロピレン系混合物(DE)):
・D−2(62.5重量%)と軟化点が125℃の脂環族系炭化水素樹脂(荒川化学(株)製/アルコン−P125)(37.5重量%)との混合物。
(12)C(スチレン系エラストマー(C)):
・水添スチレン系エラストマー:JSR(株)製ダイナロン1320P(商品名)
(13)F−1(プロピレン単独重合体(F)):
・融解熱105kJ/kg、融点165℃のプロピレン単独重合体である日本ポリプロ(株)製FY6H(商品名)。
(14)G(ポリエチレン(G)):
・高密度ポリエチレン:京葉ポリエチレン(株)社製G1900(商品名)、密度;0.956g/cm
[重合例1](A−1の製造):
(1)オレフィン重合触媒成分の調製
(1−1)珪酸塩の化学処理:
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を越えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の質量は707gであった。化学処理した珪酸塩をキルン乾燥機で乾燥した。
(1−2)触媒の調製:
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調製した。
次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(合成は、特開平10−226712号公報実施例に従って実施した。)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
(2)オレフィン重合触媒成分の予備活性化処理
窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、n−ヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。
続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.1gを含む予備重合触媒が得られた。
(3)第1重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器1(L/D=6、内容積100L)に、あらかじめ35kgのシーズポリマーを導入後、窒素ガスを3時間流通させた。その後、プロピレン、エチレンおよび水素を、表3に示すモル比および圧力となるように導入しながら昇温し、重合条件が整った時点で、予備重合処理した上記触媒を0.47g/hr、有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムを15mmol/hr一定となるように供給した。表3に示すエチレン/プロピレンの混合ガスを反応温度75℃、反応圧力1.8MPaG、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら連続供給し、更に反応器の気相中の水素濃度を表3に示す水素/プロピレンモル比及びエチレン/プロピレンモル比に維持するように水素ガス及びエチレンガスを連続的に供給して、生成ポリマーすなわちプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)の分子量(MFR)を調整した。
反応熱は、供給される原料プロピレンの気化熱によって除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器に還流した。本重合で得られたエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(A1)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となるように配管を通して重合器から連続的に抜き出し、第2重合工程の重合器に供給した。このとき、配管からエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(A1)の一部を間欠的に抜き出して、MFR、エチレン含量、活性(触媒単位質量当りの重合体収量)を求める試料とした。
(4)第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器10(L/D=6、内容積100L)に第1重合工程からのプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)及びプロピレンとエチレンの混合ガスを間欠的にそれぞれ供給し、プロピレンとエチレンの共重合を行った。反応条件は、攪拌速度18rpm、反応温度70℃、反応圧力1.7MPaGであり、反応器の気相中の水素濃度を表3に示す水素/プロピレンモル比及びエチレン/プロピレンモル比に維持するように水素ガス及びエチレンガスを連続的に供給して、生成ポリマーすなわちプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の分子量(MFR)を調整した。プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)の重合量を調整するための重合活性抑制剤として酸素ガスを供給した。
反応熱は、供給される原料プロピレンの気化熱によって除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管を通して反応器系外で冷却、凝縮させて第2重合工程に還流した。
第2重合工程で得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となるように重合器から連続的に抜き出した。このとき、配管からプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)の一部を間欠的に抜き出して、MFR、エチレン含量、活性(触媒単位質量当りの重合体収量)を求める試料とした。第1重合工程及び第2重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の諸物性の測定結果を表3に示す。
[重合例2](A−2の製造)
重合例1において、第1重合工程における触媒供給量、プロピレンとエチレンおよび水素とプロピレンのモル比、第2重合工程におけるプロピレンとエチレンおよび水素とエチレンのモル比、各段階の重合温度を表3に示す条件に変更した以外は、同様の方法で、プロピレン系ブロック共重合体の試料を得た。第1重合工程及び第2重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の諸物性の測定結果を表3に示す。
[重合例3](A−3の製造)
重合例1において、第1重合工程における触媒供給量、プロピレンとエチレンおよび水素とプロピレンのモル比、第2重合工程におけるプロピレンとエチレンおよび水素とエチレンのモル比、各段階の重合温度を表3に示す条件に変更した以外は、同様の方法で、プロピレン系ブロック共重合体の試料を得た。第1重合工程及び第2重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の諸物性の測定結果を表3に示す。
[重合例4](A−4の製造)
実施例1において、第1重合工程における触媒供給量、プロピレンとエチレンおよび水素とプロピレンのモル比、第2重合工程におけるプロピレンとエチレンおよび水素とエチレンのモル比、各段階の重合温度を表3に示す条件に変更した以外は、同様の方法で、プロピレン系ブロック共重合体の試料を得た。第1重合工程及び第2重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の諸物性の測定結果を表3に示す。
[重合例5](A−5の製造)
重合例1において、第1重合工程における触媒供給量、プロピレンとエチレンおよび水素とプロピレンのモル比、第2重合工程におけるプロピレンとエチレンおよび水素とエチレンのモル比、各段階の重合温度を表3に示す条件に変更した以外は、同様の方法で、プロピレン系ブロック共重合体の試料を得た。第1重合工程及び第2重合工程で得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体成分の諸物性の測定結果を表3に示す。
[重合例6](A−6の製造)
(1)オレフィン重合触媒成分の調製
窒素置換したステンレス製反応器中において、四塩化チタン360mlおよびトルエン240mlを装入して混合溶液を形成させた。次いで平均粒径42μmのジエトキシマグネシウム120g、トルエン500mlおよびフタル酸−ジ−n−ブチル43.2mlを用いて形成させた懸濁液を、10℃の液温に保持した前記混合液中に添加した。その後、10℃〜90℃まで80分かけて昇温し、2時間撹拌しながら反応させた。反応終了後、
得られた固体生成物を90℃のトルエン1000mlで4回洗浄して、新たに四塩化チタン360mlおよびトルエン800mlを加え、112℃に昇温し、2時間攪拌させながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン1000mlで10回洗浄して、オレフィン重合触媒成分を得た。
得られたオレフィン重合触媒成分の平均粒径は42μmであり、その分析値(原子吸光法による)は、Mg:18.9重量%、Ti:2.2重量%、Cl:61.6重量%であった。
(2)オレフィン重合触媒成分の予備活性化処理
内容積20リットルの傾斜羽根つきステンレス製反応器を窒素ガスで置換したあと、ヘキサン17.7リットル、トリエチルアルミニウム100.6mmol、ジイソプロピルジメトキシシラン15.1mmol、前記の方法で調製したオレフィン重合触媒成分120.4gを室温で加えたあと、30℃まで加温した。次いで撹拌しながらプロピレン240.8gを3時間かけて供給し、予備活性処理を行った。分析の結果、オレフィン重合触媒成分1gあたりプロピレン1.9gが反応していた。
(3)第1重合工程
撹拌羽根を有する横型重合器(L/D=6,内容積100リットル)に前記の方法で予備活性化処理したオレフィン重合触媒成分を0.4g/hr、有機アルミ化合物としてトリエチルアルミニウムおよび有機ケイ素化合物としてジイソプロピルジメトキシシランをモル比で、Al/Mgモル比6、Al/Siモル比6となるように連続的に供給した。エチレン−プロピレンの混合ガスを反応温度60℃、反応圧力2.1MPa、撹拌速度35rpmの条件を維持しながら連続供給し、さらに反応器の気相中のエチレン/プロピレンモル比を0.005、水素/プロピレンモル比0.007に維持するように水素ガスを循環配管より連続的に供給し、生成ポリマーであるエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(A1)の分子量を制御して、メルトフローレートを調整した。
反応熱は、供給される原料プロピレンの気化熱によって除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管を通して反応器系外で冷却、凝縮させて重合器に還流した。本重合で得られたエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(A1)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となるように配管を通して重合器から連続的に抜き出し、第2重合工程の重合器に供給した。このとき、配管からエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(A1)の一部を間欠的に抜き出して、メルトフローレート、エチレン含有量、触媒単位重量あたりの重合体収量を求める試料とした。エチレン含有量の測定は、赤外線吸収スペクトル分析により、行った。触媒単位重量あたりの重合体収量は、重合体中のMg分の誘導結合プラズマ発光分光分析により測定した。
(4)第2重合工程
撹拌羽根を有する横型重合器(L/D=6,内容積100リットル)に第1重合工程からのエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(A1)およびエチレン−プロピレン−1−ブテン混合ガスを連続的に供給し、プロピレンとエチレンと1ブテンとの共重合を行った。反応条件は、撹拌速度25rpm、温度55℃、圧力1.9MPaであり、気相のガス組成を水素/エチレンモル比0.62、エチレン/プロピレンモル比0.14、および1−ブテン/プロピレンモル比0.06に調整した。エチレン−プロピレン−1−ブテンランダム共重合体成分(A2)の重合量を調整するために、重合活性抑制剤として一酸化炭素、およびエチレン−プロピレン−1−ブテンランダム共重合体成分(A2)の分子量を調節するため、水素ガスをそれぞれ供給した。
反応熱は、供給される原料プロピレンの気化熱によって除去した。重合器から排出される未反応ガスは、配管を通して反応器系外で冷却、凝縮させて第2重合工程に還流した。
第2重合工程で得られたプロピレン系樹脂組成物(A)は、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となるように重合器から連続的に抜き出した。プロピレン系樹脂組成物(A)の生産速度は8〜15kg/hrであった。
抜き出されたプロピレン系樹脂組成物(A−6)は、未反応モノマーを除去し、一部はメルトフローレートの測定、赤外線吸収スペクトル分析によるエチレン重合単位及び1ブテン重合単位含有量の測定、ならびにエチレン−プロピレン−1−ブテンランダム共重合体成分(A2)の含有量の測定に使用した。
プロピレン系樹脂組成物(A−6)の重合条件と物性を表3に示す。
Figure 2015093925
[試料の調整]
自己粘着層(Y)、中間層(X)、非粘着層(Z)として、表4および5に示す成分を用い、表4および5に記載した割合でブレンドしたものを、多層フィルム成形機の中間層用押出機(口径60mm)または2つの表面層用押出機(口径30mm)にそれぞれ供給して、250℃のTダイから押し出し、30℃の冷却ロールで冷却して、原反シートを得た。
なお、A−1については、100重量部に対し、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.15重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.10重量部の比率で配合し、ヘンシェルミキサー(商品名)を用いて均一に混合した後、得られた混合物を押出機で溶融混練してペレット状にして用いた。
次に、得られた原反シートを100℃の加熱ロールで縦方向(MD)に5倍延伸し、引き続きテンターオーブンで横方向(TD)に8倍延伸して、フィルムを作製した。
得られたフィルムを所定の試験片に調整し、所定の試験法に準拠して、HAZE、ヤング率、0.5%伸度応力、表面粗さ、粘着強度、成形可否、プリズム面に対する浮きや剥がれの状態、成形可否、フィルム剥離性を測定・評価した。結果を、下記に示す。
[実施例1〜7]
表4に示す成分割合、フィルム厚みにする以外は、上記手法と同様にして、フィルムを作製した。
得られたフィルムの測定値の結果を表4に示す。
[比較例1〜6]
表5に示す成分割合にする以外は、上記手法と同様にして、フィルムを作製した。
得られたフィルムの測定値の結果を表5に示す。
Figure 2015093925
Figure 2015093925
上記表4、5に記載の実施例1〜7と比較例1〜6との結果を対比すると、以下のことが明らかとなる。
(1)実施例1〜7は、自己粘着層面に、本発明(第1の発明)の範囲内で樹脂を調製し、且つコロナ放電処理を規定量施した二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムであるが、この場合には、成形性、柔軟性、粘着性、浮きや剥がれに、優れていることがわかる。また、非粘着面のRaが0.3以上であるため、フィルムの剥離性にも、優れていることが分かる。
(2)一方、比較例1〜6は、本発明(第1の発明)の範囲を外れて樹脂を調製した場合である。比較例1、2の場合には、柔軟性に乏しいため、粗面被着体に対する追従性が低いことから、粗面被着体に対する接着力が弱いことが分かる。
(3)比較例3は、(A2)成分が多いことから、フィルムが柔軟になり過ぎること、また安定的な成形をするために横延伸温度を下げざるを得ないことで、非粘着層のsRaが低下し、HAZEが低下したことで、フィルムの剥離性が悪化している。
(4)比較例4は、融点が低すぎることにより横延伸温度を下げざるを得ず、背面層材料融点と横延伸炉内の温度格差が大きくなることで、背面層が固相延伸状態となり、背面層が剥離し、成形ができない状態であった。
(5)比較例5は、過去出願の材料系であるが、所望の粘着強度が得られていない。
(6)比較例6は、実施例2の粘着層厚みを請求項範囲下限未満まで薄くしたものであるが、粘着層が薄すぎるため、所望の粘着強度が得られていないことが分かる。
以上から、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、柔軟性、粘着性、浮き・剥がれ、フィルム剥離性等の面で優れていることがわかる。
本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、上記のような優れた特徴を有することから、現在、一般に使用されているプロテクトフィルムの代替としての使用はもとより、さらに高度な物性の要求される用途にも、好適に使用することができる。
また、本発明の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムは、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体を使用したものであり、メタロセン触媒を用いていることから、被着体を汚染する低分子量成分が少なく、フィルム成形時における未溶融のフィッシュアイが非常に少ない、クリーンな材料である。そして、特定のプロピレン−エチレンブロック共重合体は、二軸延伸工程を経ても、未延伸系保護フィルムと概略同等の柔軟性を維持することができ、且つ、厚薄精度の高い保護フィルムが得られることから、均一に貼り付けることが可能であるため、被着体に対する追従性が向上し、保護対象物の粗面被着体に対し、十分な粘着強度を付与することが出来るので、浮きや剥がれが生じ難い保護フィルムとなる。
更には、二軸延伸による大幅な低伸度化も両立したことで、ハンドリング性に優れるため、必要時に貼り易く剥がし易いといった特性を有する。
また、広幅製品の生産性に適し、粘着剤塗布を必要としないことから、安価に製造することができ、且つ延伸工程の無い未延伸保護フィルムでは、除去しきれない微小フィッシュアイも、延伸により消失するため、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて、段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがない、二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルムとすることができる。

Claims (4)

  1. 自己粘着層(Y)/中間層(X)/非粘着層(Z)の順に構成される少なくとも3層の積層フィルムにおいて、各層が下記(イ)〜(ホ)の要件を満たすことを特徴とする二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
    (イ):中間層(X)は、下記プロピレン−エチレンブロック共重合体(A)60〜100重量%と、メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜10g/10分のプロピレン単独重合体(B)0〜40重量%とからなる。
    (A):メタロセン系触媒を用いて、第1工程でエチレン含量が1.5〜3重量%である、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A1)50〜60重量%と、第2工程で得られる成分(A2)が(A1)より8〜10重量%多くのエチレンを含有するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A2)40〜50重量%を、逐次重合して得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体(A)。
    (ロ):自己粘着層(Y)は、スチレン系エラストマー(C)55〜85重量%、下記プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D)10〜35重量%、および軟化点が110〜145℃の範囲にある脂環族系炭化水素樹脂(E)5〜30重量%とからなる。
    プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(D):示差走査熱量計(DSC)で求めた融点(Tp)が135℃以下であるプロピレン−エチレンランダム共重合体又はプロピレン−エチレン−1ブテンランダム共重合体。
    (ハ):自己粘着層(Y)は、下記式より算出された処理量が40〜200W・m/minの範囲でコロナ放電処理が施され、かつJIS Z0237(2000)に準拠する粘着強度測定法(23℃・50RH%の雰囲気下、30分又は24時間保持)に基づいて、高さ5〜30μmの山が連続した表面形状を持つ粗面被着体に対し、測定した粘着強度の数値が0.02〜0.1N/25mmの範囲である。
    処理量(W・m/min)=処理電力(W)×処理バー幅(m)×処理速度(m/min)
    (ニ):非粘着層(Z)は、プロピレン単独重合体(F)30〜65重量%と密度が0.94g/cm以上のポリエチレン(G)35〜70重量%との重合体組成物からなる。
    (ホ):非粘着層(Z)は、表面粗さ計において下記(C1)〜(C6)の測定条件で得られる中心面平均粗さ(sRa)が0.30μm以上であり、かつJIS K7105(1981)に準拠したヘーズ(曇価)が30%以上である。
    (C1)触針先端曲率半径:5μm
    (C2)カットオフ波長:0.25mm
    (C3)カットオフ種別:2CR(位相補償)
    (C4)測定速度:0.3mm/秒
    (C5)測定方向:フィルムのMD方向
    (C6)測定長さ:2mm
  2. ヤング率から求められる、MD方向の0.5%伸度応力が0.8〜5.5N/15mm、TD方向の0.5%伸度応力が1.2〜10N/15mmであることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
  3. プリズムシートの粗面化面に用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
  4. 自己粘着層(Y)の厚みが3〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二軸延伸自己粘着性プロテクトフィルム。
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