以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
本実施形態に係るシート製造装置は、少なくとも繊維を含む被解繊物を解繊する解繊部を有し、前記解繊部で解繊された解繊物を用いてシートを製造するシート製造装置であって、前記被解繊物の履歴によって、前記被解繊物を分別する分別部と、分別された被解繊物を供給する供給部と、を有することを特徴とする。
なお、本明細書では、シート製造装置において、製造されるシートの材料(被解繊物1、解繊物、ウェブW、シートS等)の流れ(概念的な流れを含む)に対して、「上流」、「下流」等の表現を用いる。また、「上流側(下流側)」という表現は、構成の位置を相対的に特定する場合に用い、例えば、「AがBの上流側(下流側)にある」などという場合には、Aの位置がBの位置に対して、シートSの材料の流通方向に照らして上流(下流)にあることを指す。
また、本明細書において、乾式とは、液体中ではなく大気中(空気中)でという意味である。乾式の範疇には、乾燥状態、及び不純物として存在する液体(水等)又は意図的に添加される液体(水等)、水蒸気、ミスト等が存在する状態、が含まれる。また、乾式の態様と、抄紙等で行われる湿式の態様とでは、装置全体あるいは製造される紙の量に対する水の使用量が全く異なることに注意する。すなわち、乾式の態様において、系内に水が存在する場合の水の量は、湿式に比較して桁違いに少ない。
1.シート製造装置
本実施形態に係るシート製造装置120は、少なくとも繊維を含む被解繊物を解繊する解繊部20を有し、解繊部20で解繊された解繊物を用いてシートSを製造するシート製造装置120であって、被解繊物の履歴によって、被解繊物を分別する第1、第2の分別部3,5と、分別された被解繊物を供給する第1、第2の供給部4,6と、を有する。図1は、本実施形態に係るシート製造装置120を示す機能ブロック図である。以下、本実施形態のシート製造装置120について、図1を用いて装置の全体構成について説明する。
本実施形態のシート製造装置120は、被解繊物保管部2、第1の分別部3、第1の供給部4、粗砕部10、第2の分別部5、第2の供給部6、解繊部20、分級部63、選別部35、混合部30、シート形成部40、マーキング部100、制御部110等の各種の構成を含むことができる。
シート製造装置120は、少なくとも繊維を含む被解繊物を被解繊物保管部2から第1の分別部3へ供給すると、以降、各処理部で所定の処理を行い、シートを製造することができる。
第1の分別部3は、検出部8、搬送切替部9、第1の保管部3a,3b,3cを含む。第1の分別部3は、被解繊物の履歴によって被解繊物を分別する。第1の保管部3a,3b,3cは、複数含むことができ、分別された種類の数に相当する数を設けることができる。第1の保管部3a,3b,3cは、それぞれ所定量の分別された被解繊物を保管できる。本実施形態では、第1の保管部3a,3b,3cは、3つ設けられている例を示したが、これに限らず、被解繊物の履歴に応じて必要な数の第1の保管部を設けてもよい。
第1の供給部4は、分別された被解繊物を粗砕部10へ供給する。第1の供給部4は第1の給紙部4a,4b,4cを複数含むことができ、各第1の給紙部4a,4b,4cは第1の保管部3a,3b,3cから粗砕部10へ被解繊物を送り出すことができる。
第2の分別部5は、切替弁13、第2の保管部5a,5b,5cを含む。第2の分別部5は、被解繊物の履歴によって被解繊物を分別する。第2の保管部5a,5b,5cは、複数含むことができ、分別された種類の数に相当する数を設けることができる。第2の保管部5a,5b,5cは、それぞれ粗砕部10で裁断された被解繊物を所定量保管できる。
第2の供給部6は、分別された被解繊物を解繊部20へ供給する。第2の供給部6は開閉弁6a,6b,6cを複数含むことができ、開閉弁6a,6b,6cは第2の保管部5a,5b,5cから解繊部20へ裁断された被解繊物を送り出すことができる。
第1の給紙部4a,4b,4cの数と、第2の保管部5a,5b,5cの数と、開閉弁6a,6b,6cの数とは、第1の保管部3a,3b,3cに対応する数であり、ここでは3つ設けられているが、被解繊物の履歴に応じて、または、保管可能な被解繊物の量に応じて適宜設定することができる。
このようなシート製造装置120によれば、被解繊物の履歴によって被解繊物を分別し、その分別された被解繊物を供給することができるので、被解繊物の履歴に応じて所望のシートを製造することができる。例えば、古紙のような被解繊物を複数回リサイクルするという技術思想はこれまでなかったが、このように被解繊物の履歴を利用して分別することによって、所望の性状を有するシートを製造することが可能となる。
なお、本実施の形態における検出部8、搬送切替部9、粗砕部10、解繊部20、分級部63、選別部35、混合部30、シート形成部40、マーキング部100等の構成は、必要に応じて複数設けられてもよい。
次に、本実施形態のシート製造装置120の各部の詳細について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るシート製造装置120の一部を模式的に示す図であって、被解繊物保管部2から解繊部20までを示す図である。図3は、本実施形態に係るシート製造装置120の一部を模式的に示す図であって、解繊部20後の各処理部を示す図である。図2と図3は、紙面の関係上、管82で分断して示しているが、管82は図2の解繊部20と図3の分級部63とを連結している。
まず、図2を用いて、シート製造装置120の被解繊物保管部2から解繊部20までを説明する。
1.1.被解繊物保管部
シート製造装置120は、被解繊物保管部2を含む。被解繊物保管部2は、被解繊物1を一時的に保管する。被解繊物保管部2に保管される被解繊物1は、複数種類の履歴を有する被解繊物1が混在している。被解繊物保管部2は、シート状の被解繊物1を多数積層して収容可能な箱体である。
被解繊物保管部2は、保管されている被解繊物1を第1の分別部3へ連続的に送り出すための自動搬送装置2aを備える。また、その自動搬送装置2aは、保管されている被解繊物1を1枚ずつ取り出す機能を有している。
被解繊物1は、シート製造装置120の原材料を含む物品のことを指し、例えば、パルプシート、紙、古紙、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット、段ボールなどの、繊維が絡み合い又は結着されたものを指す。また、被解繊物1には、レーヨン、リヨセル、キュプラ、ビニロン、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、炭素、ガラス、金属からなる繊維等(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)が含まれていてもよい。また、本実施形態のシート製造装置120において、被解繊物1として1回以上リサイクルされたものも用いることができ、特に古紙を有効に利用することができる。
被解繊物1の履歴は、被解繊物1の性状に関する情報であり、具体的には、被解繊物1における添加物の含有量、被解繊物1における添加物の種類、被解繊物1における繊維長、被解繊物1における繊維の材質などを挙げることができる。このような被解繊物1の性状に関する情報を簡易的に得るための情報としては、被解繊物1が過去においてシートSにリサイクルされた回数(以下、単に「リサイクルされた回数」という。)に相当する情報、シートの種類(紙、吸収材等)に相当する情報、リサイクルに用いたシート製造装置に関する情報などを挙げることができる。これらの情報は、シートSに付与されたマーキングによって把握される。シート製造装置120は、シート形成部40又はシート形成部40よりも下流側に、シートSにマーキングを付与するマーキング部100を有する。ま
た、シート製造装置120は、被解繊物1に付与されたマーキングを読み取ることで、被解繊物1の履歴を検出する検出部8を有する。マーキング部100や検出部8については、後述する。
リサイクルされた回数は、シート製造装置120において被解繊物1をシートSにリサイクルした回数である。以下、単に「リサイクル回数」で示す場合もある。湿式方式で製造された紙は、シート製造装置120でリサイクルされたものではないため、リサイクル回数は0回となる。そして、湿式方式で製造された紙を被解繊物1として、シートSに製造したときにリサイクル回数は1回となる。また、リサイクル回数が1回のシートSを被解繊物1として、シート製造装置120においてシートSに製造したときにリサイクル回数は2回となる。シート製造装置120で製造されたシートでなくても、シート製造装置120がリサイクル回数を把握できれば、リサイクル回数に含まれる。シート製造装置120がリサイクル回数として把握できるか否かは、検出部8で原料の履歴を取得できるか否かによる。例えば、古紙を原料として湿式方式でリサイクルして製造された紙が被解繊物1であっても、マーキングがなかったり、シート製造装置120で把握できなければ、被解繊物1の性状を把握できないので、リサイクル回数を1回とはみなさない。そのような場合は、リサイクル回数を0回として把握し、リサイクル回数としてリサイクルされた回数に相当する情報に含める。また、未だシート製造装置120でリサイクルされていない被解繊物1は、リサイクルされた回数が0回である。
被解繊物1の履歴によって分別し、シート製造装置120の加工条件を変更することで、安定した品質のシートを製造することができる。すなわち、同じような履歴情報を有する被解繊物1は、同じように加工することで同程度の品質のシートに安定して製造することができる。
例えば、リサイクルされた回数により解繊物に残る添加物の量が変わり、またリサイクルされた回数が増えれば解繊物の繊維の長さが短くなるなどの傾向がある。このような原料段階での被解繊物1の性状は、製造されるシートの品質にも大きく影響を与えることになる。そこで、履歴としてリサイクルされた回数に相当する情報によってシートを製造する条件を異ならせることで、リサイクルされた回数に応じて所望のシートを製造することができる。例えば、リサイクルされた回数が1回の被解繊物1を原料とするときの加工条件と、リサイクルされた回数が2回の被解繊物1を原料とするときの加工条件と、を別々に用意するなどリサイクルされた回数によって加工条件を用意することができる。
シートSに付与するマーキングは、シートSの種類や回数を表す文字そのものだけでなく、シートの種類やリサイクル回数がわかるものであれば他の形態を有する印、記号などのマーキングであってもよい。例えば、マーキングが「○」であれば、リサイクル回数を0回とし、マーキングが「△」であれば、リサイクル回数を1回とする。なお、リサイクルされた回数に相当する情報は、リサイクル回数だけでなく、リサイクルをしたかしていないか、リサイクルされた回数が0回か1回以上かを示す情報でもよい。
1.2.第1の分別部
シート製造装置120は、第1の分別部3を含む。第1の分別部3は、粗砕部10よりも上流側に位置する。第1の分別部3は、被解繊物保管部2と粗砕部10との間に配置される。
第1の分別部3は、検出部8、搬送切替部9、第1の保管部3a,3b,3cを含む。
1.2.1.検出部
検出部8は、被解繊物1の履歴を取得する。検出部8は、被解繊物1から読み取ること
ができる各種の履歴を取得する。履歴については、上記「1.1.被解繊物保管部」において説明している各種の情報があるが、検出部8は、これらの各種の情報を読み取るための手段を有する。
検出部8は、後述するマーキング部100においてシートに付与されたマーキングを検出することで被解繊物1の履歴、例えば、検出部8の検出結果によりリサイクルされた回数に相当する情報を取得してもよい。このようにマーキングを検出することで容易にリサイクル回数等の履歴を検出できる。
検出部8は、マーキングを検出できない場合は、リサイクルされた回数に相当する情報を、マーキングを検出できた場合のリサイクルされた回数に相当する情報とは異ならせてもよい。このようにすることで、マーキングを検出できない場合はリサイクルしていないシートのため、マーキングを検出した場合とは異なる情報にすることで、リサイクルしていないことを認識することができる。
検出部8は、第1、第2の分別部3,5の上流側であって、シート製造装置120に被解繊物1を供給する位置に配置されている。本実施形態においては、検出部8は、被解繊物保管部2に隣接して配置され、被解繊物保管部2から被解繊物1を送り出した直後に検出する。検出部8で取得した被解繊物1の履歴は、制御部110に出力される。
検出部8の具体的機構は、被解繊物1のどの履歴情報を取得するかによって適宜選択することができる。履歴情報がマーキングから得られる場合には、検出部8として、マーキングが微細な透孔であれば光を照射して透過した光を判別する光電センサなどの光学的判別手段を採用することができ、マーキングがバーコードやQRコード(登録商標)等の識別子であれば公知のバーコードリーダーを採用することができる。
1.2.2.搬送切替部
搬送切替部9は、制御部110の指令によって被解繊物1を指定された第1の保管部3a,3b,3cへ搬送する。
搬送切替部9は、検出部8で取得した被解繊物1の履歴に基づいて、制御部110の指令により、例えば同じリサイクルされた回数の被解繊物1ごとに第1の保管部3a,3b,3cへ振り分けるように搬送する。このようにすることで、第1の保管部3a,3b,3cにはそれぞれ同じリサイクルされた回数の被解繊物1が保管される。つまり、被解繊物1の履歴毎に分別しやすくなる。
1.2.3.第1の保管部
第1の保管部3a,3b,3cは、被解繊物1を一時的に保管する。各第1の保管部3a,3b,3cに保管される被解繊物1は、搬送切替部9によって振り分けられて同じ種類の履歴を有する被解繊物1だけが保管される。第1の保管部3a,3b,3cは、シート状の被解繊物1を多数積層して収容可能な箱体である。
履歴としてリサイクルされた回数に相当する情報を用いた場合、例えば、第1の保管部3aにはリサイクルされた回数が0回の被解繊物1を保管し、第1の保管部3bにはリサイクルされた回数が1回の被解繊物1を保管し、第1の保管部3cにはリサイクルされた回数が2回の被解繊物1を保管する。
第1の保管部3a,3b,3cから下流の加工工程は、各第1の保管部3a,3b,3cに対応して行われる。
1.3.第1の供給部
シート製造装置120は、第1の供給部4を含む。第1の供給部4は、第1の給紙部4a,4b,4cを複数含む。
第1の給紙部4a,4b,4cは、制御部110の指令により、第1の保管部3a,3b,3cのいずれか1つから粗砕部10へ被解繊物1を定量的に供給する。第1の給紙部3のいずれから供給するかによって、供給された被解繊物1の履歴を把握できる。
第1の給紙部4a,4b,4cは、被解繊物1を粗砕部10へ連続的に投入するための自動投入装置であってもよい。第1の保管部3のいずれか1つから複数の被解繊物1を連続的に供給することで、リサイクルされた回数が同じ被解繊物1を連続的に供給する。これにより、同じ性状の被解繊物1を連続的に供給することができ、その間、その後の製造条件を同じ条件で行うことができる。また、異なるリサイクル回数の解繊物1が混ざることを抑制できる。
なお、第1の供給部4による供給は、第1の保管部3a,3b,3cのうち、最も多くの解繊物1を保管している第1の保管部3(例えば第1の保管部3aとする)から供給するのが望ましい。第1の保管部3aの保管している解繊物1が供給し終えたら、その時点でより多くの解繊物1を保管している第1の保管部3からの供給を開始する。しかし、これに限らず、所定量ずつ順番に第1の保管部3a,3b,3cの順に供給してもよい。
1.4.粗砕部
シート製造装置120は、粗砕部10を含む。粗砕部10は、解繊部20の上流側に配置されている。粗砕部10は、被解繊物1を、空気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、数cm角まで裁断する。図示の例では、粗砕部10は、粗砕刃11を有し、粗砕刃11によって、投入された被解繊物1を裁断する。
粗砕部10の具体的な例としては、シュレッダーが挙げられる。図示の例では、粗砕部10によって裁断された被解繊物1は、ホッパー12で受けてから第2の分別部5へ搬送される。
1.5.第2の分別部
シート製造装置120は、第2の分別部5を含む。第2の分別部5は、粗砕部10の下流側に配置される。第2の分別部5は、粗砕部10と解繊部20との間に備える。
第2の分別部5は、切替弁13、第2の保管部5a,5b,5cを含む。第2の分別部5は、被解繊物の履歴によって被解繊物を分別する。
1.5.1.切替弁
切替弁13は、粗砕部10の下方に設けられたホッパー12の下方に配置される。
切替弁13は、制御部110の指令により、粗砕部10で裁断された被解繊物1を管14a,14b,14cを介して第2の保管部5a,5b,5cへ送る。
切替弁13は、履歴として例えば同じリサイクルされた回数の被解繊物1ごとに第2の保管部5a,5b,5cへ振り分けるように管14a,14b,14cとホッパー12とを連通する。粗砕部10を通過した被解繊物1を分別することで、リサイクルされた回数の異なる被解繊物1が混ざり合うこともなく、適切に分別することができる。
本実施形態においては、第1の分別部3が設けられ、被解繊物1は既にリサイクルされ
た回数ごとに分別されているので、第1の分別部3から供給された被解繊物1のリサイクルされた回数に合わせて切替弁13を切り替えれば、第2の保管部5a,5b,5cへ同じリサイクルされた回数の被解繊物1が振り分けられることになる。例えば、切替弁13をホッパー12と管14aとを連通し、他の管14b、14cを閉じた場合には、第1の保管部3aからリサイクルされた回数が0回の被解繊物1が粗砕部10で裁断されてホッパー12、切替弁13及び管14aを介して第2の保管部5aに供給される。
1.5.2.第2の保管部
第2の保管部5a,5b,5cは、裁断された被解繊物1を一時的に保管する。各第2の保管部5a,5b,5cに保管される被解繊物1は、同じ種類の履歴を有する被解繊物1だけが保管される。第2の保管部5a,5b,5cは、第1の保管部3a,3b,3cと同様に、裁断された被解繊物1を多数収容可能な箱体であってもよい。
本実施形態では、第1の保管部3aは第2の保管部5aに対応し、第1の保管部3bは第2の保管部5bに対応し、第1の保管部3cは第2の保管部5cに対応して各々同じ履歴を有する被解繊物1を保管する。
1.5.3.第2の供給部
シート製造装置120は、第2の供給部6を含む。第2の供給部6は、第2の保管部5a,5b,5cに対応して、開閉弁6a,6b,6cを含むこと。
開閉弁6a,6b,6cは、制御部110からの指令によりいずれか一つを開閉することで、第2の保管部5a,5b,5cから解繊部20へ裁断された被解繊物1を定量的に送り出すことができる。
開閉弁6a,6b,6cからホッパー15へ投入された被解繊物1は、ホッパー15から管81を介して、解繊部20へ搬送される。管81は、解繊部20の導入口21と連通している。
1.6.解繊部
シート製造装置120は、解繊部20を有する。
解繊部20は、少なくとも繊維を含む被解繊物1を解繊する。解繊部20は、被解繊物1を解繊することにより、繊維状に解きほぐされた解繊物を生成する。また解繊部20は、被解繊物1が印刷された古紙等である場合には、原料に付着した樹脂粒やインク、トナーなどの色剤、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂(複数の繊維同士を結着させるための樹脂)粒や、インク、トナーなどのインク粒、にじみ防止材等の添加物を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも(string)状や平ひも(ribbon)状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態(独立した状態)で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態(いわゆる「ダマ」を形成している状態)で存在してもよい。
解繊部20は、後述する混合部30よりも上流側に設けられる。解繊部20と混合部30との間に他の構成が設けられてもよい。また、解繊部20よりも上流側にも他の構成が設けられてもよい。
解繊部20は、被解繊物1を解繊処理する機能を有する限り任意である。解繊部20は、大気中(空気中)において乾式で解繊を行う。図示の例では、導入口21から導入された被解繊物1が、解繊部20によって解繊され、解繊物(繊維)となり、排出口22から排出される。排出口22から排出された解繊物が、管82、分級部63、選別部35を介して混合部30(図示の例では管86)に供給される態様となっている。
解繊部20の構成は特に限定されないが、例えば、回転部(回転子)とこれを覆う固定部とを含み、回転部と固定部との間に隙間(ギャップ)が形成されたものを挙げることができる。解繊部20がこのように構成される場合には、回転部が回転した状態で被解繊物1がギャップに導入されることにより、解繊処理が行われる。また、この場合には、回転部の回転数、形状、固定部の形状等は、製造されるシートSの性質や全体の装置構成等の要請に合わせて適宜に設計されることができる。また、この場合、回転部の回転速度(1分あたりの回転数(rpm))は、解繊処理のスループット、原料の滞留時間、解繊の程度、ギャップの大きさ、回転部、固定部、その他の各部材の形状や大きさ等の条件を考慮して、適宜に設定することができる。
なお、解繊部20は、被解繊物1を吸引し、及び/又は、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有することがより好ましい。この場合、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口21から、被解繊物1を気流と共に吸引し、解繊処理して、排出口22へと搬送することができる。排出口22から排出された解繊物は、図1に示す例では、管82に移送される。なお、気流発生機構を有していない解繊部20を用いる場合には、被解繊物1を導入口21に導く気流や、排出口22から解繊物を吸出す気流を発生する機構を外付けで設けても差支えない。
1.6.1.解繊物
解繊物は、特に限定されず、シートを形成しうる限り広範な解繊物を用いることができる。解繊物は、上述の原料を解繊処理して得られる繊維を含み、係る繊維として、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などが挙げられる。解繊物に含まれる繊維としては、更に詳しくは、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなるセルロース繊維や絹、羊毛などの動物繊維が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製などを行った再生繊維として用いてもよい。解繊物は、製造されるシートの材料となるが、これらの繊維の少なくとも1種を含んでいればよい。また、解繊物(繊維)は、乾燥されていてもよいし、水、有機溶剤等の液体が含有又は含浸されていてもよい。さらに解繊物(繊維)は、各種の表面処理が施されていてもよい。
解繊物は、被解繊物1の履歴に応じて種々の性状を有している。解繊物の性状としては例えば、(1)被解繊物1が未だリサイクルされていない紙の場合、解繊物には添加物として樹脂が含まれておらず、(2)被解繊物1が1回以上リサイクルを行ったシートSの場合、解繊物には添加物として樹脂が付着し、(3)被解繊物1が2回以上のリサイクルを行ったシートSの場合、未使用紙に比べて解繊物に含まれる繊維の長さが短いものが含まれるなどがある。
本実施形態で使用される解繊物に含まれる繊維は、独立した1本の繊維としたときに、その平均的な直径(断面が円でない場合には長手方向に垂直な方向の長さのうち、最大のもの、又は、断面の面積と等しい面積を有する円を仮定したときの当該円の直径(円相当径))が、平均で、1μm以上1000μm以下、好ましくは、2μm以上500μm以下、より好ましくは3μm以上200μm以下である。
本実施形態で使用される解繊物に含まれる繊維の長さは、特に限定されないが、独立した1本の繊維として、その繊維の長手方向に沿った長さ(解きほぐされた解繊物(繊維)の長手方向の長さ、以下、「繊維長」ともいう)は、例えば、1μm以上10mm以下、好ましくは1μm以上5mm以下、さら好ましくは3μm以上2mm以下である。繊維の長さが短い場合は、シートSの強度が不足する場合があるが、上記範囲であれば十分な強度のシートを得ることができる。繊維の長手方向に沿った長さとは、独立した1本の繊維の両端を必要に応じて破断しないように引張り、その状態でほぼ直線状の状態に置いたときの両端間の距離(繊維の長さ)であってもよい。また、繊維の平均の長さは、長さ−長さ加重平均繊維長として、20μm以上3600μm以下、好ましくは200μm以上2700μm以下、より好ましくは300μm以上2300μm以下である。さらに、繊維の長さは、ばらつき(分布)を有してもよい。
本明細書では、繊維というときには、繊維1本のことを指す場合と、複数の繊維の集合体(例えば綿のような状態)のことを指す場合とがあり、また、解繊物というときには、複数の繊維が含まれる材料のことを指し、繊維の集合という意味及びシートSの原料となる材料(粉体状又は綿状の物体)という意味を含むものとする。
次に、図3を用いて、シート製造装置120の管82以降、すなわち分級部63からスタッカー95までを説明する。
1.7.分級部
シート製造装置120は、混合部30の上流側であって、解繊部20の下流側に分級部63が配置する。分級部63は、解繊物から、被解繊物1に含まれる比較的小さいものや密度の低い添加物、樹脂粒、インク粒などを分離して除去する。これにより解繊物の中で比較的大きいもの又は密度の高いものである繊維の占める割合を高めることができる。
分級部63としては、気流式分級機を用いることが好ましい。気流式分級機は、旋回気流を発生させ、遠心力と分級されるもののサイズと密度により受ける遠心力の差によって分離するものであり、気流の速度および遠心力の調整によって、分級点を調整することができる。
分級部63は、導入口64と、導入口64が接続された円筒部65と、円筒部65の下方に位置し円筒部65と連続している逆円錐部66と、逆円錐部66の下部中央に設けられている下部排出口67と、円筒部65上部中央に設けられている上部排出口68と、を有している。
分級部63において、導入口64から導入された解繊物をのせた気流は、円筒部65で円周運動に変わる。これにより、導入された解繊物には、遠心力がかかって、解繊物のうちで樹脂粒やインク粒よりも大きく密度の高い繊維と、解繊物のうちで繊維よりも小さく密度の低い樹脂粒やインク粒などと、に分離することができる。繊維が多い成分は、下部排出口67から排出され、管83を通って選別部35に導入される。一方樹脂粒やインク粒は、上部排出口68から管84を通って分級部63の外部に排出され、受け部69に回収される。
1.8.選別部
シート製造装置120は、選別部35を有する。選別部35は、解繊部20において解繊処理された解繊物を、繊維の長さによって選別する。選別部35は、解繊部20の下流で、ほぐし部70よりも上流に設けられる。
選別部35としては、篩(ふるい)を用いる。ここで、選別部35は、網(フィルター
、スクリーン)を有し、網を通過可能な大きさのものと、通過できない大きさのものとを選別する。選別部35は、導入口36と、排出口37と、を有している。選別部35は、後述するほぐし部70と同様に構成することができるが、ほぐし部70のように導入された材料の全てを通過させるのではなく、一部の成分を除去する機能を有する。選別部35の例としては、モーターによって回転することができる円筒の篩である。
選別部35を設けることにより、解繊物又は混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマとを分けることができる。選別部35の篩を通過した解繊物は、ホッパー38で受けてから混合部30の管86を介して、ほぐし部70の導入口71に搬送される。また、選別部35によって取除かれた物質は、図示しない排出口から排出できる。
1.9.混合部
シート製造装置120は、混合部30を含む。混合部30は、解繊物と、添加物と、を大気中で混合する(混ぜ合せる)機能を有する。
本明細書において「解繊物と添加物とを混合する」とは、一定容積の空間(系)内で、解繊物に含まれる繊維と繊維との間に添加物を位置させることを意味する。
混合部30は、解繊物(繊維)と添加物とを混ぜ合せることができれば、その構成、構造及び機構等は特に限定されない。また、混合部30における混ぜ合せの処理の態様は、回分処理(バッチ処理)であっても、逐次処理、連続処理のいずれであってもよい。また、混合部30は、手動で動作されても自動で動作されてもよい。さらに、混合部30は、少なくとも解繊物及び添加物を混ぜ合せるが、その他の成分を混ぜ合せることのできる態様であってもよい。
混合部30は、上述の解繊部20よりも下流側に設けられる。また、混合部30は、後述するシート形成部40よりも上流側に設けられる。
混合部30における混ぜ合せの処理としては、機械的な混合、流体力学的な混合を例示することができる。図3に示すように、混合部30として、解繊物の移送のために管86を採用する場合には、大気等の気流により解繊物を流動させた状態で添加物を添加部32によって導入する方法を採ることができる。混合部30に管86を採用する場合における気流の発生手段としては、図示せぬブロワーなどが挙げられ、上記の機能が得られる限り、適宜の気流発生手段を使用することができる。
本実施形態のシート製造装置120では、混合部30は、乾式の態様である。ここで、混合における「乾式」とは、液体中ではなく大気中(空気中)で混合させる状態をいう。混合部30において、混合の作用を阻害しない程度に液体を意図的に添加する場合には、後の工程において、係る液体を加熱等により除去するためのエネルギーや時間が大きくなりすぎない程度に添加することが好ましい。
1.9.1.添加部
混合部30は、解繊部20で解繊された解繊物に、添加物を添加する添加部32を含む。添加部32は、解繊部20へ供給された被解繊物1の履歴によって、被解繊物1に対して添加物の量が異なるように投入する。添加部32は、添加物を解繊物の流通経路に導入するフィーダーを含んで構成される。
混合部30に管86を採用する場合における添加物(複合体である場合も含む。)の導入は、弁の開閉操作や作業者の手で行うこともできるが、添加部32としての図2に示す
ようなスクリューフィーダーや図示せぬディスクフィーダーなどを用いて行うことができる。図示の例では、添加物は、添加部32から管86に設けられた供給口31を通じて管86に供給される。したがって、図示の例では、混合部30は、管86の一部、添加部32及び供給口31によって構成されている。
ここで、添加部32から供給できる添加物以外の成分は、例えば、シートSに要求される性能を解繊物に付与することができる材料としてもよい。添加物以外の成分としては、例えば、繊維、凝集抑制剤、着色材、難燃剤、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤・防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤などを挙げることができる。
複数のスクリューフィーダーを用いることで、被解繊物1の履歴に合わせて、添加物及び他の成分の添加量が異なるように混合部30へ供給する。また、被解繊物1の履歴に加えて、シートSの要求性能を満たすために、添加物及び他の成分の添加量を変えてもよい。
添加部32から供給される添加物は、解繊物に含まれる複数の繊維同士を結着することができる。添加物としては、樹脂、澱粉(特に湿式の場合)、水溶性結着材を用いることができる。また、添加物は、結着する成分以外に、上記添加物以外の成分を含有していてもよい。
添加物は、添加部32から解繊物に対して適量ずつ供給する。被解繊物1に対して添加部32で投入する添加物の量は、被解繊物1の履歴によって異ならせる。例えば、シートSを複数回リサイクルする場合、解繊物に含まれる添加物の量がリサイクルする度に異なることがある。その際、被解繊物1の履歴によって添加物の量を異ならせることによって、製造されたシートSにおける添加物を所望の量にすることができる。
繊維同士を結着する添加物は、樹脂を含む。樹脂の種類としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよい。本実施形態のシート製造装置120においては、樹脂は、常温で固体である方が好ましく、製造されるシートSの安定した性能を得るためには融点などが所定範囲に調整された合成樹脂であることが好ましく、加熱部50における熱によって繊維を結着するために用いる場合には熱可塑性樹脂がより好ましい。
また、シートSを複数回リサイクルする場合、解繊物に含まれる繊維はリサイクルする度に一部劣化して短くなるため、リサイクルしていない繊維またはリサイクルされた回数がより少ない繊維を、被解繊物1の履歴によって供給し、さらにその供給量をリサイクルされた回数に応じて異ならせることによって、繊維を補強することができ、所望の強度を有するシートSを製造することができる。
1.10.シート形成部
シート形成部40は、複数の繊維同士を添加物を介して結着してシートSを形成する。
混合部30において解繊物に添加物を混合した混合物は、シート形成部40において、繊維同士が添加物を介して結着してシートSを形成する。
なお、本明細書では、シートSという場合には、複数の繊維が二次元又は三次元的に互いに樹脂を介して結着、もしくは、水素結合により結着している構造をいう。
本明細書におけるシートSは、シート状のものに限定されず、フィルム状、ボード状、ウェブ状、又は凹凸を有する形状であってもよい。また本明細書におけるシートSは、紙と不織布に分類できる。紙は、例えば、パルプや古紙を原料としシート状に成形した態様
などを含み、筆記や印刷を目的とした記録紙や、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙などを含む。不織布は、紙より厚いものや低強度のものであり、一般的な不織布、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マットなどを含む。
シートSは、被解繊物1に用いたシートSと同じ機能を有するものであってもよい。事務用コピー用紙を被解繊物1とした場合には、シートSは事務用コピー用紙としてもよい。このように、複数回のリサイクルをしても事務用コピー用紙を同じ機能を有する事務用コピー用紙に再生することができる。
シート形成部40は、ほぐし部70、堆積部75、加圧部60、加熱部50、切断部90を有する。
1.10.1.ほぐし部
ほぐし部70は、添加部32の下流に堆積部75と共に配置されている。
ほぐし部70は、混合部30の管86を通過した混合物を導入口71から導入し、空気中で分散させながら降らせる。またこの例では、シート製造装置120は、堆積部75を有しており、堆積部75にて、ほぐし部70から降ってきた混合物を空気中で堆積してウェブWの形状に成形する態様となっている。
ほぐし部70は、絡み合った解繊物(繊維)をほぐす。さらに、ほぐし部70は、添加部32から供給される添加物の樹脂が繊維状である場合、絡み合った樹脂をほぐす。また、ほぐし部70は、後述する堆積部75に、混合物を均一に堆積させる作用を有する。つまり、「ほぐす」という言葉は、絡み合ったものをバラバラにする作用や均一に堆積させる作用を含むものである。なお、ほぐし部70は、絡み合ったものが無ければ均一に堆積させる効果を奏する。
ほぐし部70としては、篩(ふるい)を用いる。ほぐし部70の例としては、モーターによって回転することができる回転式の篩である。ここでほぐし部70の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ほぐし部70として用いられる「篩」とは、網(フィルター、スクリーン)を備えたもの、という意味であり、ほぐし部70は、ほぐし部70に導入された解繊物および添加物の全てを降らしてもよい。
1.10.2.堆積部
ほぐし部70を通過した解繊物および添加物は、堆積部75に堆積される。堆積部75は、メッシュベルト76、張架ローラー77、サクション機構78を有する。
堆積部75は、ほぐし部70から降ってくる混合物を空気中で堆積させたウェブWを形成するものである(ほぐし部70と合わせてウェブ形成工程に相当)。堆積部75は、ほぐし部70によって空気中に均一に分散された混合物を、メッシュベルト76上に堆積する機構を有している。なお、ほぐし部70から降下する混合物の水分量を調整するように堆積部75の下流側に調湿部を有してもよい。
ほぐし部70の下方には、張架ローラー77(本実施形態では、4つの張架ローラー77)によって張架されるメッシュが形成されているエンドレスのメッシュベルト76が配されている。そして、張架ローラー77のうちの少なくとも1つが自転することで、このメッシュベルト76が一方向に移動するようになっている。
また、ほぐし部70の鉛直下方には、メッシュベルト76を介して、鉛直下方に向けた
気流を発生させる吸引部としてのサクション機構78が設けられている。サクション機構78によって、ほぐし部70によって空気中に分散された混合物をメッシュベルト76上に吸引することができる。これにより、空気中に分散させた混合物を吸引することができ、ほぐし部70からの排出速度を大きくすることができる。その結果、シート製造装置120の生産性を高くすることができる。また、サクション機構78によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを防ぐことができる。
そして、メッシュベルト76を移動させながら、ほぐし部70から混合物を降らせることにより、混合物を均一に堆積させた長尺状のウェブWを形成する。ここで「均一に堆積」とは、堆積された堆積物が略同じ厚み、略同じ密度で堆積されている状態を言う。ただし、堆積物全てがシートSとして製造される訳ではないため、シートSになる部分が均一であればよい。「不均一に堆積」は均一に堆積していない状態をいう。
以上のように、ほぐし部70及び堆積部75(ウェブ形成工程)を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。次いで、図3に示すように、メッシュベルト76上に形成されたウェブWは、メッシュベルト76の回転移動により搬送される。そして、メッシュベルト76上に形成されたウェブWは、この例では、加圧部60、加熱部50、切断部90、マーキング部100へと搬送される。
1.10.3.加圧部
加圧部60は、混合部30の下流側であって、加熱部50の上流側に配置されている。加圧部60は、ほぐし部70、堆積部75を経て、シート状に形成され、ウェブWを加熱せずに加圧するものである。従って、加圧部60は、ヒーター等の加熱手段を有していない。すなわち、加圧部60は、いわゆるカレンダー処理を行う構成である。
加圧部60では、ウェブWを加圧(圧縮)することにより、ウェブW中の繊維同士の間隔(距離)が縮められ、ウェブWの密度を高める。加圧部60は、図1に示すように、ローラーによりウェブWを挟み込んで加圧するように構成されており、一対の加圧ローラー61を有している。一対の加圧ローラー61は、それぞれの中心軸は平行である。なお、本実施形態のシート製造装置120の加圧部60は、ウェブWの搬送方向において上流側に配置された第1加圧部60aとその下流側に配置された第2加圧部60bとを備え、第1加圧部60a及び第2加圧部60bがそれぞれ一対の加圧ローラー61を備えている。また、第1加圧部60aと第2加圧部60bとの間には、ウェブWの搬送を補助するガイドGが配置されている。
加圧部60では、加熱されず加圧のみ行われるので、添加物中の樹脂は溶融しない。また、加圧部60では、加熱されず加圧のみ行われるので、上流側に調湿部を有していても、ここでは混合物中の水分はほとんど除去されない。
本実施形態のシート製造装置120では、加圧部60(第1加圧部60a,第2加圧部60b)と加熱部50(第1加熱部50a,第2加熱部50b)とが備えられている。なお、この例では加熱部50は、ウェブWに対して加圧を行うが、加圧部60の加圧力は、加熱部50による加圧力より大きくなるように設定されることが好ましい。このように、加熱部50よりも加圧部60の加圧力の方を大きくすることにより、加圧部60によってウェブWに含まれる繊維間の距離を十分短くでき、その状態で加熱加圧することにより薄くて高密度で高強度のシートを形成することができる。
なお図示した加圧部60は、一対の加圧ローラー61が2組ある例であるが、加圧ローラー61の数や配置は限定されず、上記作用を達成できる範囲で任意に構成することがで
きる。
さらに、加圧部60の加圧ローラー61と加熱部50の加熱ローラー51との間においてウェブWが接触可能な部材は、ウェブWを下方から支えることが可能なウェブ受け部材としてのガイドGのみである。従って、加圧ローラー61と加熱ローラー51との距離を短くすることができる。また、加圧されたウェブWが速やかに加熱加圧されるため、ウェブWのスプリングバックが抑制され高強度のシートを形成することができる。
加圧部60(加圧ローラー61)と加熱部50(加熱ローラー51)を上述のような構成で備える場合は、薄くて高密度で高強度のシートに向いている。例えば、不織布よりも紙に向いている。
1.10.4.加熱部
加熱部50は、上述の混合部30において混ぜ合された混合物を加熱し、複数の繊維を互いに添加物を介して結着させる。また、混合物が調湿されている場合には、繊維間に水素結合が形成された状態を形成してもよい。調湿された混合物は、例えば、ウェブ状に成形されたものであってもよい。また、加熱部50が、混合物を所定の形状に成形する機能を有してもよい。
本明細書において、「複数の繊維同士を添加物を介して結着する」とは、解繊物中の繊維と添加物とが離れにくい状態や、繊維と繊維との間に添加物の樹脂が配置され、繊維と繊維とが添加物を介して離れ難くなっている状態をいう。また、結着とは、接着を含む概念であって2種以上の物体が接触して離れにくくなった状態を含む。また、繊維と繊維とが複合体を介して結着した際に、繊維と繊維とが平行に又は交差してもよいし、1本の繊維に複数の繊維が結着してもよい。また、「繊維が水素結合される」とは、複数の繊維が互いに水素結合によって、部分的又は全面的に結合(結着)されることを指す。
添加物の構成成分の1つである樹脂が、熱可塑性樹脂である場合には、そのガラス転移温度又は融点付近以上の温度に加熱すると、樹脂が軟化したり溶けたりし、その後、温度が低下した際に固化する。樹脂が軟化して繊維に絡み合うように接触し、樹脂が固化することで繊維と添加物とを互いに結着することができる。また、固化する際に他の繊維が結着することで、繊維と繊維を結着する。なお、樹脂のガラス転移温度、融点等は、繊維の融点、分解温度、炭化温度よりも低いことが好ましく、そのような関係となるように両者の種類を組み合わせて選択することが好ましい。
一方、加熱部50は、堆積部75の下流で調湿した場合、混合物に含まれる水分の一部又は全部を蒸発させる。これにより、繊維間に介在した水分子が減少する(除去される)ことによって、繊維同士の水素結合を形成することができる。したがって、加熱部50は、水の沸点以上の温度に設定されることが好ましいが、水素結合させることができれば、水の沸点以下の温度に加熱するものであってもよい。
また、加熱部50においては、混合物に熱を与えることの他に圧力を加えてもよく、その場合には、加熱部50は、目的とするシートSの形態に応じて、混合物を所定の形状に成形する機能を有することになる。加えられる圧力が小さければ、空隙率の大きいシートが得られ、大きければ空隙率の小さい(密度の高い)シートが得られることになる。
加熱部50の具体的な構成としては、加熱ローラー(ヒーターローラー)、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロワー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器などが挙げられる。
加熱部50は、ローラーによりウェブWを挟み込んで加熱及び加圧するように構成されており、一対の加熱ローラー51を有している。一対の加熱ローラー51は、それぞれの中心軸は平行である。また、加熱部50はローラー等によって構成できる他、平板状のプレス部によっても構成することができる。なお、平板状のプレス部の上流側に加圧部60はなくてもよい。この場合は、加圧部60により高密度に圧縮しないので、比較的低密度のシートに向いている。平板状のプレス部を用いるのは、紙よりも不織布の方が向いている。
加熱部50は、ウェブWの搬送方向において上流側に配置された第1加熱部50aとその下流側に配置された第2加熱部50bとを備えており、第1加熱部50a及び第2加熱部50bがそれぞれ一対の加熱ローラー51を備えている。また、第1加熱部50aと第2加熱部50bとの間には、ウェブWの搬送を補助するガイドGが配置されている。
なお、加熱手段として、ハロゲンヒーター等に限定されず、例えば、非接触ヒーターによる加熱手段や温風による加熱手段を用いてもよい。
なお図示した加熱部50は、一対の加熱ローラー51が2組ある例であるが、加熱ローラー51の数や配置は限定されず、上記作用を達成できる範囲で任意に構成することができる。
上記したように、加熱部50(加熱工程)を経ることにより、添加物に含まれる樹脂が溶融し、解繊物中の繊維と絡みやすくなるとともに繊維間が結着される。また、水素結合によって繊維間が結合してもよい。解繊物及び添加物の混合物は、加熱部50を経ることによりシートSとなる。
1.10.5.切断部
切断部90は、加熱部50よりも下流側に、ウェブW(加熱部50を経たウェブWはシートSとなっている。)の搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部90a及び第2切断部90bが配置されている。切断部90は、必要に応じて設けることができる。
第1切断部90aは、カッターを備え、連続状のシートSを所定の長さに設定された切断位置に従って枚葉状に裁断する。また、第1切断部90aよりシートSの搬送方向の下流側には、シートSの搬送方向に沿ってシートSを切断する第2切断部90bが配置されている。第2切断部90bは、カッターを備え、シートSの搬送方向における所定の切断位置に従って裁断(切断)する。これにより、所望するサイズのシートSが形成される。そして、切断されたシートSは、マーキング部100で一枚ずつマーキングが行われた後に、スタッカー95等に積載される。
1.11.マーキング部
本実施形態のシート製造装置120では、シート形成部40よりも下流側にマーキング部100が配置されている。マーキング部100は、シートSに対して、シートSの履歴を判別するためのマーキングを行う。
マーキング部100は、リサイクルした回数によって、シートSを製造する際に異なるマーキングを行う。第1の分別部3においてリサイクルされた回数によって分別することで製造されたシートSのリサイクルした回数が把握できるので、マーキング部100でリサイクルした回数によってマーキングを異ならせることで、そのシートSのリサイクルした回数に相当する情報を記録することができる。マーキングは、リサイクルした回数と同じ数のマークであってもよい。
マーキング部100は、切断部90で切断されたシートSを一枚ずつマーキングする。シートSにおけるマーキングが行われる位置は、検出部8で認識できる範囲で適宜選択することができる。シートSにおけるマーキングの位置及び形態については、後述する。
マーキング部100は、検出部8の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、検出部8が光学的な読み取り装置である場合には、(1)シートSに微細な穴を開ける、(2)シートSに僅かな凹凸をつけるエンボス加工、(3)多数の情報を組み込むことができるバーコード印刷などの方法を採用することができる。
1.12.制御部
図2に示す制御部110は、上流端である被解繊物保管部2から下流端であるマーキング部100までのシート製造装置120における各部の制御を行うことができる。
制御部110は、検出部8から出力された被解繊物1の履歴情報に基づいて、第1の分別部3に指令を出して、被解繊物1毎に、搬送切替部9を切り替え、第1の保管部3a,3b,3cのいずれか1つへ被解繊物1を搬送し、保管する。
また、制御部110は、第1の分別部3に指令を出して、第1の保管部3a,3b,3cのいずれか1つを選択し、選択した第1の保管部から被解繊物1を粗砕部10へ給紙する。制御部は、この裁断された被解繊物1を、検出部8から得られた履歴情報に基づいて、切替弁13を切り替え、第2の保管部5a,5b,5cのいずれか1つへ被解繊物1を振り分けて保管する。ここで重要なのは、第1の保管部3a,3b,3cと第2の保管部5a,5b,5cとは、一対一で対応しており、常に、同じ履歴を有する被解繊物1又は同じ処理をする被解繊物1を同じ保管部に保管することである。
さらに、制御部110は、第2の分別部5に指令を出して、第2の保管部5a,5b,5cのいずれか1つを選択し、選択した第1の保管部から裁断された被解繊物1を解繊部20へ給紙する。ここで、第1の保管部3a,3b,3cのいずれか1つを選択する処理及び第2の保管部5a,5b,5cのいずれか1つを選択する処理は、保管された被解繊物1の量に応じて、例えば最も多い第1の保管部を制御部110が選択してもよいし、オペレーターが適宜選択してもよい。
解繊部20以降の下流の処理は、選択された第2の保管部5a,5b,5c毎に適切な条件が設定され、マーキング部100までの処理を行うことができる。例えば、第2の保管部5aが選択された場合には、第2の保管部5aに保管された被解繊物1が無くなるまで解繊部20からマーキング部100までの処理を同じ条件で実施し、第2の保管部5aの被解繊物1の処理が終了したら、他の第2の保管部5b又は5cのいずれかの処理を順次同様に実施することができる。
また、制御部110は、検出部8から取得された被解繊物1の履歴情報に基づいて、マーキング部100の条件を変更してもよい。具体的には、検出部8から取得された被解繊物1の履歴情報がリサイクルの回数であれば、その回数に1を足した回数に相当するマーキングを行うようにマーキング部100に指令を出すことができる。
制御部110は、例えば、メイン制御ユニットやモーター駆動ユニット、操作パネル(操作部)、処理部などによって構成される。表示部は、ユーザーが選択した各条件(例えば加圧部60の圧力等)が表示される。操作部は、ユーザーの操作等をデータとして入力するためのものである。操作部は、例えば、キーボードやタッチパネル等のハードウェアによって実現される。処理部は、操作部からの操作データやプログラムなどに基づいて、
各処理を行う。処理部は、例えば、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、アプリケーションプログラム、OS(例えば汎用OS等)により実現される。
1.13.その他
また、図示しないが、加熱部50の下流には、加熱部50によって加熱されたシートSを冷却する冷却部を設けてもよい。冷却部は、例えば冷却ローラー等によって構成することができる。冷却部を設けることにより、樹脂の冷却を迅速に行うことができ、シートSの構造を早期に固定することができる。これにより、例えば装置のスループットの向上や小型化に寄与することができる。
本実施形態のシート製造装置120は、上記例示した構成以外の構成を有することもでき、上記例示した構成を含めて目的に応じて複数の構成を適宜有することができる。各構成の数や順序は特に限定されず、目的に応じて適宜に設計することができる。
例えば、本実施形態では、粗砕部10の前後に分別部を設けたが、これに限らず、いずれか一方の分別部だけとしてもよい。
第2の分別部5を無くした場合、切替弁13、第2の保管部5a,5b,5c、管14a,14b,14cとともに第2の供給部6も不要となる。そして、第1の分別部3のいずれかから供給された解繊物1は、粗砕部10で裁断され、ホッパー15へ送り出される。
第1の分別部3を無くした場合、搬送切替部9、第1の保管部3a,3b,3cとともに第1の供給部4も不要となるが、検出部8は必要である。第1の分別部3を無くした場合に、検出部8を第2の分別部に備えることも考えられる。その場合は、解繊物1が裁断された場合、各細片にマーキング等の履歴を示すものが必要となる。各細片になった場合を想定して多くのマーキングを付与することは難しい。そのため、第1の分別部3を無くした場合は、被解繊物保管部2と粗砕部10の間に検出部8を設けるのがよい。そして、履歴を検出された被解繊物1が裁断され、切替弁13により分別され第2の保管部5に保管される。この場合、同じ履歴の被解繊物1が連続的に来るとは限らない。そのため、第2の保管部5a,5b,5cのうち、保管量の多い保管部5に対応する第2の供給部6を制御して、被解繊物1を送り出すのが望ましい。
また、本実施形態のシート製造装置120は、乾式法によってシートSを製造する装置であるが、これに限らず、湿式法の製造装置に用いてもよい。
湿式法の製造装置にあっては、図2における本実施形態の解繊部20の上流側の構成を、パルパーと呼ばれる古紙等をパルプの状態にまで離解する槽の上流側に配置することで適用することができる。例えば、公知の粗砕部を設けない湿式法の製造装置、例えば特開2009-299231号公報に開示されるような湿式法の製造装置であれば、古紙を裁断処理するシュレッダータンクの上流側に本実施形態の第1の分別部3、第1の供給部4を設け、シュレッダータンクの下流側に本実施形態の第2の分別部5、第2の供給部6を設け、パルパーに分別された被解繊物1を投入することができる。
1.14.作用効果
本実施形態のシート製造装置120によれば、被解繊物1の履歴によって被解繊物1を分別し、その分別された被解繊物1を供給することができるので、被解繊物1の履歴に応じて所望のシートSを製造することができる。
2.シート製造方法
本実施形態のシート製造方法は、少なくとも繊維を含む被解繊物の履歴によって前記被解繊物を分別し、分別された被解繊物を、被解繊物を解繊する解繊部に供給し、解繊された解繊物を用いてシートを製造することを特徴とする。図4〜図6は、本実施形態に係るシート製造方法のフローチャートである。図4〜図6を用いて、本実施形態のシート製造方法について以下説明する。なお、本実施形態では図1〜図3に示したシート製造装置120を用いたシート製造方法について説明し、各フローチャートに示す各処理部の符号は、シート製造装置120の各処理部に対応している。
2.1.第1の分別処理
図4は、被解繊物の投入から第1の保管部3a,3b,3cに保管されるまでの制御部における処理を説明するためのフローチャートである。
まず、シート製造装置に被解繊物を投入する(S10)。
次に、投入された被解繊物は、検出部で被解繊物の履歴を検出して、その検出結果を制御部に出力し、制御部は履歴判定を行う(S20)。ここでは、履歴としてリサイクルされた回数に相当する情報を用いた場合について説明する。
履歴判定(S20)において、リサイクルされた回数が0回と判定されれば、搬送切替部9を第1の保管部3aに切り替え(S30)、リサイクルされた回数が1回と判定されれば、搬送切替部9を第1の保管部3bに切り替え(S31)、リサイクルされた回数が2回と判定されれば、搬送切替部9を第1の保管部3cに切り替える(S32)。このようにして、被解繊物保管部から連続的に供給される被解繊物を第1の分別部の第1の保管部3a,3b,3cのいずれかへ振り分けることができる。
搬送切替部9を切り替えることで、供給された被解繊物は第1の保管部3a,3b,3cに保管される。
これで、第1の分別部において被解繊物が分別される。
2.2.第2の分別処理
図5は、第1の保管部3a,3b,3cから第2の保管部5a,5b,5cに解繊物が保管されるまでの制御部における処理を説明するためのフローチャートである。
粗砕部における裁断処理をスタートする(S60)。
まず、制御部は、第1の保管部3a,3b,3cの中から1つを選択する(S70)。この選択によって、いずれの第1の保管部に保管されている被解繊物について裁断処理を行うかを決定することになる。
第1の保管部3aを選択した場合には、第1の給紙部4aが被解繊物を第1の保管部3aから粗砕部へ給紙する(S80)。第1の保管部3bを選択した場合には、第1の給紙部4bが被解繊物を第1の保管部3bから粗砕部へ給紙する(S81)。第1の保管部3cを選択した場合には、第1の給紙部4cが被解繊物を第1の保管部3cから粗砕部へ給紙する(S82)。
粗砕部に供給された被解繊物を裁断する。
粗砕部で裁断された被解繊物は、切替弁13によって、第2の分別部の第2の保管部5
a,5b,5cへと振り分けられる。第1の保管部3aから送り出された被解繊物は、切替弁13を第2の保管部5aに切り替えて(S100)、第2の保管部5aに保管する。第1の保管部3bから送り出された被解繊物は、切替弁13を第2の保管部5bに切り替えて(S101)、第2の保管部5bに保管する。第1の保管部3cから送り出された被解繊物は、切替弁13を第2の保管部5cに切り替えて(S102)、第2の保管部5cに保管する。
これで、第2の分別部において被解繊物が分別される。
2.3.シートの成形
図6は、第2の保管部5a,5b,5cからシートが成形され、マーキングされるまでの制御部における処理を説明するためのフローチャートである。
制御部における解繊部へ給紙してからマーキングするまでの処理をスタートさせる(S120)。
まず、制御部110は、第2の保管部5a,5b,5cの中から1つを選択する(S130)。この選択によって、いずれの第2の保管部に保管されている被解繊物について解繊以降の処理を行うかを決定することになる。ここでの選択は、例えば、第2の保管部5a,5b,5cの中で最も被解繊物の保管量が多いものを選択することができる。そして、選択した第2の保管部の被解繊物の処理が終了したら、次に被解繊物の保管量が多い第2の保管部を選択することができる。このように、順次、1つの第2の保管部ごとに解繊以降の処理をマーキングするまで行うことができる。
第2の保管部5aを選択した場合には、開閉弁6aを開いて被解繊物を第2の保管部5aから解繊部へ給紙する(S140)。第2の保管部5bを選択した場合には、開閉弁6bを開いて被解繊物を第2の保管部5bから解繊部へ給紙する(S141)。第2の保管部5cを選択した場合には、開閉弁6cを開いて被解繊物を第2の保管部5cから解繊部へ給紙する(S142)。
解繊部は、供給された被解繊物を解繊する。
解繊からマーキングの手前までの処理については説明を省略するが、図3のシート製造装置120の各処理部の順に処理が行われ、分級、選別、混合、添加、ほぐし、堆積、加圧、加熱、切断の各処理が順次行われ、シートSが成形される。
マーキング部に送られてきたシートは、所定の履歴情報を含むマーキングを付される(S160,S161,S162)。このマーキングが次回のシートの製造(リサイクル)において、図4における履歴判定(S20)で利用されることになる。なお、このようなマーキングが付されていないシートは、リサイクルされていないシート(リサイクル回数が0回)であると判定することができる。また、マーキング部では、検出部で検出されたリサイクルされた回数に今回の処理でさらにリサイクルした回数が1回増えるので、履歴情報としてリサイクルした回数を1回分増やしたマーキングを行うことができる。
これで、マーキングが付されたシートが製造される。
2.4.作用効果
このようなシート製造方法によれば、被解繊物の履歴によって被解繊物を分別し、その分別された被解繊物を供給することができるので、被解繊物の履歴に応じて所望のシートを製造することができる。
3.他の実施形態に係るシート製造方法
図7を用いて、他の実施形態に係るシート製造方法について説明する。図7は、他の実施形態に係るシート製造方法のフローチャートである。
この実施形態は、図2における第1の分別部3及び第1の供給部4を省いて、被解繊物保管部2から検出部8を介して粗砕部10へ被解繊物が投入される装置を用いてシートを製造する方法である。
まず、被解繊物をシート製造装置に投入する(S11)。
次に、投入された被解繊物は、検出部8で被解繊物の履歴を検出して、その検出結果を制御部に出力し、制御部は履歴判定を行う(S21)。
履歴判定の結果に関わらず、全ての被解繊物は、粗砕部で裁断される(S93)。
粗砕部で裁断された被解繊物は、履歴判定(S21)の結果に応じて、切替弁13によって、第2の分別部の第2の保管部5a,5b,5cへと振り分けられる。例えば、リサイクルされた回数が0回と判定されれば、裁断された被解繊物は、切替弁13を第2の保管部5aに切り替えて(S121)、第2の保管部5aに保管する。リサイクルされた回数が1回と判定されれば、第1の保管部3bから送り出された被解繊物は、切替弁13を第2の保管部5bに切り替えて(S123)、第2の保管部5bに保管する。リサイクルされた回数が2回と判定されれば、第1の保管部3cから送り出された被解繊物は、切替弁13を第2の保管部5cに切り替えて(S125)、第2の保管部5cに保管する。
これで、第2の分別部において被解繊物が分別される。
こうして第2の分別部で分別された解繊物は、図6に示したフローチャートに従ってその後の処理を同様に行うことができる。
4.マーキング
図8を用いて、シートSにおけるマーキングについて説明する。図8は、本実施形態に係るシートSの平面図である。シートSとして、事務用コピー用紙を用いた例について説明する。
シートSの左上方にマーキングMが付されている。マーキングMが付されるマーキング領域101は、シートSにおける四隅にある非マーキング領域104以外の領域であることが好ましい。非マーキング領域104は、ステープラーで利用されることがあり、また、シートSの使用中に折り曲げられることもあり、マーキングMを認識する上で障害となる可能性があるからである。非マーキング領域104は、例えば、シートSの各辺からの距離L1が5mm以上15mm以下に設定することができる。
また、マーキング領域101は、シートSにおける四辺に沿った非マーキング領域102以外の領域であることが好ましい。非マーキング領域102は、シートSの各辺からの距離L2が2mm以上10mm以下に設定することができる。各辺に近い領域は、折り曲げ等によりマーキングMを認識する上で障害となる可能性があるからである。
マーキングMは、微細な貫通孔であることができる。マーキングMのサイズは、可視光判定が容易にできる0.1mm以上、10.0mm以下の開口径を有する貫通孔であることができる。このような貫通孔は、人の裸眼で認識できない程度の開口径とすることが好
ましい。
マーキングMは、リサイクルした回数に相当する情報としてもよい。例えば、マーキングMは、その数によって、リサイクルした回数を表すことができる。例えば、マーキングMが1つの場合はリサイクルした回数が1回、マーキングMが2つの場合はリサイクルした回数が2回などとしてもよい。なお、マーキングMがない場合は、リサイクルした回数が0回と判断することができる。
シートSにおけるマーキングMの形態は、検出部8において検出可能なものであれば、上記態様に限らず、適宜公知のマーキングMの形態を採用することができる。検出部8が光学的な読み取り装置である場合には、マーキング部100は、シートSに僅かな凹凸をつけるエンボス加工や多数の情報を組み込むことができるバーコード印刷などの方法を採用してもよい。
また、マーキングMに含まれる被解繊物1の履歴情報としては、上述のように、リサイクルの回数、添加物の配合量、追加の繊維の配合量などを含むことができる。
5.その他の事項
本明細書において、「均一」との文言は、均一な分散や混合という場合には、2種以上又は2相以上の成分を定義できる物体において、1つの成分の他の成分に対する相対的な存在位置が、系全体において一様、又は系の各部分において互いに同一若しくは実質的に等しいことを指す。また、着色の均一性や色調の均一性は、シートを平面視したときに色の濃淡がなく、一様な濃度であることを指す。しかし、一様と言っても、全ての樹脂の距離が同じではないし、濃度も完全に同じ濃度ではない場合を含むものとする。
本明細書において、「均一」「同じ」「等間隔」など、密度、距離、寸法などが等しいことを意味する言葉を用いている。これらは、等しいことが望ましいが、完全に等しくすることは難しいため、誤差やばらつきなどの累積で値が等しくならずにずれるのも含むものとする。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。例えば、上記実施形態ではウェブWを単層としたが、複層としてもよいし、別に作成された不織布や紙を積層してもよい。