JP2015182959A - 臭気抑制水溶性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】デンプンの適切な低分子量化を図ることによって、良好な水溶性を確保するとともに、機能性成分に由来する臭気の拡散を改善した新しい臭気抑制水溶性フィルムを提供する。
【解決手段】臭気抑制水溶性フィルム1は、臭気機能性成分15を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部10と、水溶性基材フィルム部の片面11にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部21を備える。さらに、臭気抑制水溶性フィルム2は、臭気機能性成分15を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部10と、水溶性基材フィルム部の両面11,12にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部21を備え、水溶性保護フィルム部に臭気機能性成分と異なる臭気成分16を含有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、臭気抑制水溶性フィルムに関し、特にデンプンを主体とし不快な臭気の放散を抑制し得る水溶性の積層構造のフィルムに関する。
皮膚疾患もしくは創傷の治療用、または皮膚の保湿、日焼けもしくはしみ予防等の美容用の薬剤、化粧品の形態は、一般に軟膏、乳液等である。これらの薬効成分(薬用、美容等の用途を兼ねるため以下「機能性成分」とする。)は皮膚表面に塗布され、かつ、皮膚表面に残存する必要性から、軟膏中のクリームや乳液中に均一に分散混合される。軟膏以外の乳液であっても、状況は同様であり、乳液を適量ガーゼに滴下し皮膚表面に塗布される。あるいは、不織布等のシートを介して患部、顔面等に被着される。
このような薬効成分や美容成分等の機能性成分の中には、特有の臭気を発する成分もある。特に、顔面に塗布する場合、鼻に近いことから使用者は常時臭気を意識してしまう。そのため、使用者は薬効等のために臭気の我慢を余儀なくされていた。例えば、液状物では使用時のみ滴下とすることによって、未使用時の臭気の影響の軽減を図っていた。ただし、滴下量の正確な把握が難しいという問題点を内包している。むろん、軟膏でも同様である。そこで、各種の水溶性のフィルムに機能性成分を担持させ、必要量に応じてフィルムを裁断し、水に溶かして使用する手法もある。この手法によると、量の把握は容易ではあるものの、臭気の問題に対しての根本的な解決に至ってない。
臭気への対応として、例えば、活性炭、サイクロデキストリン類等の吸着剤を添加する手法もある。この手法の場合、機能性成分と臭気の原因物質が別種であれば問題ない。しかし、機能性成分自体が臭気を呈する場合には、吸着剤による吸着により本来的な機能効果が減じてしまう。そのため、通常、機能性成分とは別種の臭気を矯正、抑制するマスキング成分も添加されることが多い。ただし、双方の臭気が重なりかえって不快感が増したり、機能性成分と反応して機能効果が減じたりすることがある。
この問題への対処として、フィルムに機能性成分を担持させる関連技術がいくつかある。一つ目に、基材の一方の面に、ポリビニルピロリドンの水溶性高分子の粘着層と皮膚貼付層を順に備えた化粧用シートが提案されている(特許文献1参照)。二つ目に、ヒドロキシプロピルセルロースを含むフィルム形成剤から形成されたフィルムを複層とし、それらに薬理成分を分散させた可食性積層フィルムが提案されている(特許文献2参照)。三つ目に、美容成分を含有し乾燥させた可溶性フィルムとこれに積層されるゲルシートとからなり、可溶性シートはゲルシートの液体が移動して溶解し、美容成分が溶出するパック用シートが提案されている(特許文献3参照)。
前掲の特許文献をはじめとする文献等においては、フィルムに機能性成分の担持することによって、利便性を高めることに成功している。しかしながら、臭気の抑制に対する本質的な問題は依然として解決に至っていない。このように、現状において必ずしも満足できる性能ではなく、さらなる改良が望まれていた。そこで、可溶性フィルムの利便性を十分に生かし、同時に機能性成分自体の発する臭気の抑制にも効果的な新たな水溶性フィルムが切望されている。
特許第4916337号公報 特開2011−25581号公報 特開2006−56804号公報
デンプンの加工技術について鋭意検討していた発明者らは、デンプンの処理条件を調整するうちに、良好な水溶性を発揮するとともに、機能性成分の分散、担持にも好適であり、しかも、懸案の臭気の抑制も可能にした水溶性フィルムを得るに至った。
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、デンプンの適切な低分子量化を図ることによって、良好な水溶性を確保するとともに、機能性成分に由来する臭気の放散を改善した新しい臭気抑制水溶性フィルムを提供する。
すなわち、請求項1の発明は、臭気機能性成分を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部と、前記水溶性基材フィルム部の片面にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部とを備えたことを特徴とする臭気抑制水溶性フィルムに係る。
請求項2の発明は、臭気機能性成分を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部と、前記水溶性基材フィルム部の両面にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部とを備えたことを特徴とする臭気抑制水溶性フィルムに係る。
請求項3の発明は、前記水溶性保護フィルム部に前記臭気機能性成分と異なる臭気成分が含有される請求項1または2に記載の臭気抑制水溶性フィルムに係る。
請求項4の発明は、前記デンプンがワキシースターチである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の臭気抑制水溶性フィルムに係る。
請求項5の発明は、前記デンプンが、デンプンの糊化物に超音波を照射して低分子量化した物理加工デンプンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の臭気抑制水溶性フィルムに係る。
請求項1の発明に係る臭気抑制水溶性フィルムによると、臭気機能性成分を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部と、前記水溶性基材フィルム部の片面にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部とを備えたため、良好な水溶性を確保するとともに、機能性成分に由来する臭気の拡散を改善することができる。
請求項2の発明に係る臭気抑制水溶性フィルムによると、臭気機能性成分を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部と、前記水溶性基材フィルム部の両面にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部とを備えたため、良好な水溶性を確保するとともに、機能性成分に由来する臭気の拡散を改善することができる。加えて、水溶性基材フィルム部の両面の被覆により臭気の拡散抑制効果が高まる。
請求項3の発明に係る臭気抑制水溶性フィルムによると、請求項1または2の発明において、前記水溶性保護フィルム部に前記臭気機能性成分と異なる臭気成分が含有されるため、臭気機能性成分の臭気をマスキング効果により低減することができる。また、臭気抑制水溶性フィルムの未使用時に双方の成分が混じり合い、かえって不快な臭気に変化したり、双方の成分が反応したりするおそれもなくなる。さらに、臭気機能性成分をマスキングするため臭気成分を過剰に添加する必要もない。
請求項4の発明に係る臭気抑制水溶性フィルムによると、請求項1ないし3のいずれか1項の発明において、前記デンプンがワキシースターチであるため、低温で糊化しやすく、容易に粘稠状となることから塗工に都合よく、水溶性も良好である。
請求項5の発明に係る臭気抑制水溶性フィルムによると、請求項1ないし4のいずれか1項の発明において、前記デンプンが、デンプンの糊化物に超音波を照射して低分子量化した物理加工デンプンであるため、水分子が糖鎖の分子中に内包されやすく、フィルムの水溶性が向上する。
本発明の第1及び第2実施例に係る臭気抑制水溶性フィルムの断面模式図である。 本発明の第3及び第4実施例に係る臭気抑制水溶性フィルムの断面模式図である。 本発明の第5及び第6実施例に係る臭気抑制水溶性フィルムの断面模式図である。
本発明の臭気抑制水溶性フィルムは、デンプンを構成材料とする少なくとも2層を備えるフィルムである。主に臭気抑制水溶性フィルムはヒトの皮膚表面(表皮)に貼付される。そして、臭気抑制水溶性フィルムは皮膚表面において速やかに溶解され、内部に含有されている臭気機能性成分(後述)は経皮吸収される。あるいは、治療や美容目的の他にも、湿潤な場所に散布、配置され、薬剤拡散を目的として用いてもよい。以降、図面とともに説明する。
図1の断面模式図は、同図(a)に第1実施例の臭気抑制水溶性フィルム1、同図(b)に第2実施例の臭気抑制水溶性フィルム2を示す。請求項1の発明に規定するように、臭気抑制水溶性フィルム1は、水溶性基材フィルム部10とその片面に水溶性保護フィルム部21よりなる2層構造である。そして、水溶性基材フィルム部10に臭気機能性成分15が含有される。臭気抑制水溶性フィルム2においても、水溶性基材フィルム部10とその片面に水溶性保護フィルム部21よりなる2層構造である。そして、請求項3の発明に規定するように、水溶性保護フィルム部21に、臭気機能性成分15とは異なる臭気成分16が含有される。図中、符号11は水溶性基材フィルム部の第1表面、12は同水溶性基材フィルム部の第2表面である。
水溶性基材フィルム部10及び水溶性保護フィルム部21はいずれもデンプンを主成分として形成される。デンプンは古来より常食され、極めて安全性が高く、医療品や化粧品においても多用されている。また、安価かつ容易に原料調達可能である。そこで、皮膚への刺激が少なく、かつ、簡便に水に溶解する性質を有することから選択される。一般にデンプンは温水、熱湯に溶解されて糊化し流動化する。デンプンの糊化に伴い含有対象である臭気機能性成分の混合は円滑になる。同時に流動性の調整も容易であることから、薄くフィルム状の塗工も容易である。なお、デンプンが糊化によりアルファ化すると比較的水溶性が良好となる。
水溶性基材フィルム部10及び水溶性保護フィルム部21に用いられるデンプンは、具体的には、コメ、コムギ、バレイショ、カンショ、タピオカ、トウモロコシ、アワ、ヒエ等から得ることができる。これらにおいて、粳(うるち)デンプン、糯(もち)デンプンのいずれも利用可能である。中でも、請求項4の発明に規定し、後述の実施例に開示するように、ワキシースターチが好例である。ワキシースターチ(糯デンプン)においては、大半が分岐状のアミロペクチンであり、低温で糊化しやすく、容易に粘稠状となることからフィルム状とするための塗工に都合よい。また、水溶性も良好である。後出の図2,3に開示の水溶性保護フィルム部22の組成においても同様である。なお、良好な水溶性を確保するため、予め加熱加工によりアルファ化されたデンプンとすることが望ましい。
さらに、水溶性基材フィルム部10及び水溶性保護フィルム部21(後出の22も含まれる。)に用いられるデンプンは、請求項5の発明に規定するように、物理加工デンプンである。この物理加工デンプンとは、前掲のデンプンの糊化物に超音波の物理的なエネルギーを加えることによって、デンプン結晶をより低分子量化した微分散デンプン(低分子量デンプン)をいう。以下、超音波照射を経たデンプンを物理加工デンプンと称する。
デンプンは、いったん水等の水分に分散後、加熱等により適度にデンプン結晶中に水分子の入り込んだ状態となる。すなわちデンプンは糊化によりゲル化され、まずデンプン糊化液が得られる。次に、デンプン糊化液に対して超音波が照射される。超音波がデンプンに及ぼす影響については、現時点では完全に解明されてはいない。おそらく、超音波の振動の物理的なエネルギーが加わることにより、複数のデンプン分子の糖鎖同士の絡み合いが適度に解消されて、微分散化が促進すると考えられている。デンプンは超音波照射により適度に微分散化されることにより、当初の糖鎖の鎖長が短くなる他、デンプン結晶中の糖鎖同士の塊が小さくなることが予想される。
超音波照射では、物理的な衝撃をデンプンの糖鎖に加えるのみである。つまり、照射の開始と停止の切り換えは機器の通電操作により行われるため、低分子量化の処理の継続、打ち切りは一般に用いられる酵素分解よりも簡単である。そのため、適時試料を採取しながら所望の時点で処理を止めることができる。
デンプン糊化液の粘度は、デンプンの種類、設備面等より好適に勘案される。たいてい、デンプンは0.2〜40Pa・sの粘度範囲内に調製される。特に、工程間の流動性等が考慮されるため、デンプンは0.2〜4Pa・sの粘度範囲内に調製されることが好ましい。照射する超音波は、20kHz〜1MHzの一般的な周波数であり、超音波発振器の出力も100〜2000Wの適宜である。周波数や出力は、照射対象となるデンプンの種類、濃度、糊化の性状、並びに所望する最終的な粘度等により総合的に規定される。
超音波の照射方法は適宜ではあり、例えば、公知の超音波振動子、超音波発振器等が用いられる。超音波照射に用いる処理槽、超音波振動子、超音波発振器等は、生産規模や処理能力等を勘案して適切に選択される。デンプン糊化物に対する超音波照射は、逐次回分式あるいは連続式のいずれであっても良い。
超音波照射を通じて得た物理加工デンプン(微分散デンプン、低分子量デンプン)は、水と混合された状態である。そこで、乾燥されて乾燥粉末とされる。乾燥に際しては、凍結乾燥、真空ドラムドライヤによる乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等が用いられる。乾燥することにより、防腐や保存、取り扱いやすさ等の利便性が向上する。
天然デンプンに超音波照射して得る物理加工デンプンについても、広汎な種類のデンプンの使用が考えられる。ただし、発明者らの試行によると、ワキシースターチ(糯デンプン)の方が比較的良好な水溶性を呈する。おそらく、デンプンの糖鎖の鎖長がもともと短いことと、物理的なエネルギーにより糖鎖の絡まりあいが適度に解されたことが考えられる。そのため、水分子が糖鎖の分子中に内包されやすく、結果的に水溶性が良くなっていると考えられる。
物理加工デンプンは、作業の簡便さから通常1種類のデンプンから調製される。これに加えて、異なる種類の天然デンプンを別々に処理し、生じた物理加工デンプンを事後的に所望の割合で混合して調製することもできる。例えば、原料デンプンの超音波照射に当たり、単一種類のデンプンを異なる照射量毎に調製して事後混合する方法や、複数種類のデンプンを異なる照射量毎に調製して事後混合する方法等、適宜に選択できる。
このように事後的に調製する理由とは、例えば、天然デンプンを調達するに当たり、原料の収穫地、収穫時期、収穫年等の環境要因により、品質に変動が生ずる場合がある。そこで、事後的にそれぞれの処理により得た物理加工デンプン同士を混ぜ合わせることにより、品質を安定させることができる。
第1実施例の臭気抑制水溶性フィルム1をはじめとする各臭気抑制水溶性フィルムの水溶性基材フィルム部10に含有される臭気機能性成分15は、治療や美容等の薬効目的の成分である。そしてそれ自体が特有の臭気を呈する成分である。つまり、臭気機能性成分15とは、ヒトが不快さを感じる医療または美容目的の機能効果を発揮する薬理成分である。具体的には各種の薬剤(合成物、天然抽出物)、抗生物質、漢方等の生薬等である。例えば、抗炎症剤、鎮咳剤、気管支拡張剤、更年期障害治療や避妊用の性ホルモン剤、局所麻酔剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、血管拡張剤、筋弛緩・筋収縮剤、鎮静剤、鎮痛剤、経皮吸収型のワクチン、各種のビタミン(親油性、親水性)とその誘導体である。加えて、アミノ酸やペプチド、機能性糖類(オリゴ糖、糖アルコールや糖脂質等の糖や糖鎖化合物)、プラセンタエキス等に代表される成長因子やインターロイキン等のサイトカインを含有する生体成分抽出物が例示される。むろん列挙の成分は例示であり、これらの単独もしくは混合物が該当する。さらには、これら以外の成分も当然に含められる。
水溶性基材フィルム部10を形成するに際し、前述のデンプンや物理加工デンプンは水や温水に溶解されて流動化する。そして、ここに臭気機能性成分15が混入され、均一に混練される。臭気機能性成分15は親水性、親油性のいずれも含まれる。そのため、親水性の臭気機能性成分では、水溶性基材フィルム部10の全体に溶解する。親油性の臭気機能性成分でも水溶性基材フィルム部10の全体に均一に分散され、好ましくはエマルジョンに加工される。自明ながら、水溶性基材フィルム部10のみが露出する状態では、その表面から臭気機能性成分15の臭気が放散する。
そこで、臭気抑制水溶性フィルム1(図1(a))から理解されるように、水溶性基材フィルム部10の第1表面11に水溶性保護フィルム部21が積層される。水溶性保護フィルム部21が水溶性基材フィルム部10の遮蔽層となる。水溶性基材フィルム部10から放散する臭気機能性成分15は水溶性保護フィルム部21を通過する際にある程度吸収され、その臭気は減少する。この結果、臭気抑制水溶性フィルム1からの臭気の放散は大きく低減される。
さらに、請求項3の発明に規定し、臭気抑制水溶性フィルム2(図1(b))から理解されるように、水溶性保護フィルム部21には、前出の臭気機能性成分15とは異なる臭気成分16が含有される。この臭気成分16とは、臭気機能性成分15の臭気を低減する目的で添加され、臭気機能性成分15とは別異の臭気を発するマスキング成分である。例えば、芳香剤、香水(アロマ、フラグレンス)等に用いられる種々の成分が挙げられる。また、単なるマスキング効果に加え、積極的に香気によるリラクゼーション効果を発揮する成分を採用することもできる。後述の実施例においては、香草(ハーブ)、果実等の良好な香気として使用されている成分を使用している。むろん、臭気成分は臭気機能性成分との臭気の調和から適切に選択され、特段種類は限定されない。
水溶性保護フィルム部21に臭気成分16が含有されることによって、臭気機能性成分15の不快な臭気のマスキング効果が得られる。自明ながら、臭気抑制水溶性フィルム2の未使用時、最表面の水溶性保護フィルム部21から臭気成分16が放散される。このため、臭気抑制水溶性フィルム2の第一印象の芳香は、臭気機能性成分15ではなく臭気成分16となる。
臭気抑制水溶性フィルム2のように、15と臭気成分16が異なるフィルム部にそれぞれ含有されている。それゆえ、当該臭気抑制水溶性フィルムの未使用時に双方の成分が混じり合い、かえって不快な臭気に変化したり、双方の成分が反応したりするおそれも解消される。また、臭気機能性成分をマスキングするため臭気成分を過剰に添加する必要もない。加えて、臭気成分が臭気機能性成分を吸着するおそれも解消される。
図2の断面模式図は、同図(a)に第3実施例の臭気抑制水溶性フィルム3、同図(b)に第4実施例の臭気抑制水溶性フィルム4を示す。また、図3の断面模式図は、同図(a)に第5実施例の臭気抑制水溶性フィルム5、同図(b)に第6実施例の臭気抑制水溶性フィルム6を示す。請求項2の発明に規定するように、臭気抑制水溶性フィルム3、45、及び6においては、水溶性基材フィルム部10の第1表面11に水溶性保護フィルム部21(第1水溶性保護フィルム部)が積層される。同第2表面12にも水溶性保護フィルム部22(第2水溶性保護フィルム部)が積層される。図示においては、わかりやすくするため、臭気機能性成分15、臭気成分16等を模式的に表示している。
水溶性基材フィルム部の両面に水溶性保護フィルム部が備えられる。当該臭気抑制水溶性フィルム3ないし6によると、図1の臭気抑制水溶性フィルム1及び2と比較して、水溶性基材フィルム部10の両面からの臭気機能性成分15の放散がさらに低減される。臭気抑制水溶性フィルム1及び2の場合、水溶性基材フィルム部10が露出する面を皮膚等の対象に被着させることができ、臭気機能性成分を直接作用させることができる。例えば、比較的臭気機能性成分の臭気が弱いときに有効である。逆に、臭気機能性成分の臭気が強い場合、水溶性保護フィルム部を両面に備え水溶性基材フィルム部の被覆効果を高めている。
臭気抑制水溶性フィルム3ないし6の水溶性保護フィルム部21及び22は、第1実施例の臭気抑制水溶性フィルム1と同様にデンプンから形成される。成分等の詳細は前述と同様であるため省略する。臭気抑制水溶性フィルム3の水溶性保護フィルム部21及び22は単純にデンプンの層である。臭気抑制水溶性フィルム4によると、水溶性保護フィルム部21及び22のいずれかに臭気成分16が含有される。図示は水溶性保護フィルム部21の含有である。臭気抑制水溶性フィルム5では、水溶性保護フィルム部21及び22の両方に臭気成分16が含有される。さらに、臭気抑制水溶性フィルム6では、水溶性保護フィルム部21及び22の両方にそれぞれ異なった臭気成分16(第1臭気成分),17(第2臭気成分)が含有される。
臭気抑制水溶性フィルム4ないし6において、どのような形態を採用するかは、臭気機能性成分15の臭気の強さ、使用用途、保存期間等を勘案して選択される。また、臭気抑制水溶性フィルム6のように、マスキング用途の臭気成分が2種類に増えることにより、いずれかを表面に露出させるのかによって使用時の香気を変えることができる。よって、香気の好みに応じた設計も容易となる。
図示し、詳述の臭気抑制水溶性フィルム1ないし6の想定される用途は、例えば、本発明の臭気抑制水溶性フィルム皮膚疾患、創傷、熱傷、虫刺され等の治療目的、または、皮膚の保湿、日焼けもしくは肝斑(しみ)予防や改善、しわ等の美容目的である。使用に際し、所定の大きさの臭気抑制水溶性フィルムが患部や美容目的部位の皮膚表面(表皮)に載置される。皮膚表面の水分により臭気抑制水溶性フィルムの全層は速やかに溶解される。同時に臭気機能性成分は経皮吸収される。経皮投与の他に、舌下投与のため口腔内への貼付、鼻腔内や耳腔内への貼付用の部材とすることもできる。さらには、肥料や農薬、殺虫剤の湿潤環境中への散布目的のシートとすることも可能である。
水溶性基材フィルム部及び水溶性保護フィルム部の調製に際し、デンプン以外にグリセリン等の水溶性の潤滑成分を適量配合することもできる。臭気抑制水溶性フィルムの全体の厚さは、前述のとおり皮膚表面における速やかに溶解を確保するため、概ね80μm以下、好ましくは70μm以下である。なお、経皮吸収以外の用途では、厚さは適宜となる。加えて、臭気抑制水溶性フィルムの保存性を高めるため、臭気機能性成分、臭気成分以外にも保存料、酸化防止剤、防腐剤、機能性糖類等の成分が必要に応じて配合される。
[物理加工デンプンの調製]
実施例及び比較例にて使用した物理加工デンプンの作成に際し、ワキシーコーンスターチ(日本食品化工株式会社製:ワキシースターチ)を原料とした。ワキシーコーンスターチに適量の水を加え、ミニクッカー(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)により10%濃度の糊化液とした。次に、超音波分散機GSD1200CVP(株式会社ギンセン製)を用い、周波数20kHz、出力1200Wの条件の下、約50℃の液温を維持しながらデンプン糊化液に超音波照射し、粘度が約0.3Pa・sになるまで微分散化した。得られた液状物を乾燥機内に入れて100℃の熱風に晒して乾燥し物理加工デンプンの粉末状物を得た。後出の表中、「物理加工デンプン」と表記する。
粘度の測定は、日本薬局方の一般試験法における粘度測定法に準拠し、粘度分析装置(東機産業株式会社製:TVB−10M)を用い、50℃における粘度(Pa・s)として測定した。なお、上記の粘度の選択に際し、出願人が以前に出願した超音波照射により微分散化したデンプンの乳化安定剤(特許第5033553号)等の知見を参考とした。
[酵素処理デンプンの調製]
前出のワキシーコーンスターチに対し、耐熱性α−アミラーゼ(天野エンザイム株式会社製:クライスターゼT−5)を添加し、同ミニクッカーを用いて酵素処理により液化した。これらの液化物をスプレードライヤにより噴霧乾燥し、デンプン部分分解物を得た。当該デンプン部分分解物はいわゆるデキストリンに相当する。当該酵素処理では、反応途中の試料を分取し、デキストロース当量及び分子量分散度を測定しながら実施した。
デキストロース当量(DE)は還元糖の定量法として一般的であるベルトラン法に従った。同法に基づいて実施例並びに比較例のデンプン部分分解物のデキストロース当量を測定した。
[使用した含有成分]
〈臭気機能性成分〉
下記の市販の香料、精油、フラグレンスを使用した。
人参エキス:株式会社アイリード製
ヒノキオイル:株式会社ウッディライフ製
ハッカ油:大洋製薬株式会社製,食品添加物ハッカ油
ヒバオイル:株式会社ウッディライフ製
プラセンタエキス:株式会社アイリード製
〈臭気成分〉
ハッカ油:大洋製薬株式会社製,食品添加物ハッカ油
ゆず油:株式会社ウテナ製
ラベンダー:株式会社クナイプジャパン製,クナイプバスエッセンス
ローズマリー: 同上
ホップ&バレリアン: 同上
ハマメリス&カレンデュラ: 同上
バニラエッセンス:株式会社セリア製
[その他の原料]
バレイショデンプン(株式会社扇カネ安食品本舗製)、粉末寒天(和光純薬工業株式会社製)、グリセリン(大洋製薬株式会社製)を使用した。また、臭気抑制水溶性フィルムを作成する際の塗工用の基台として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学株式会社製,FE2001)(以下、PETシートと称する。)を使用した。
[臭気抑制水溶性フィルムの作成]
〈実施例1〉
物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の基材フィルム原液を調製した。併せて、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の保護フィルム原液も調製した。はじめに基材フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの水溶性基材フィルム部を作成した。続いて、保護フィルム原液を乾燥後の水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、実施例1の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例2〉
実施例2では、基材フィルム原液を実施例1と共通とした。保護フィルム原液を物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、ハッカ油20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%に調製した。その後の水溶性基材フィルム部及び水溶性保護フィルム部の作成方法、厚さは実施例1と同様とした。こうして、実施例2の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例3〉
実施例3では、基材フィルム原液を物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、ヒノキオイル20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%に調製した。保護フィルム原液は実施例1と共通とした。その後の水溶性基材フィルム部及び水溶性保護フィルム部の作成方法、厚さは実施例1と同様とした。こうして、実施例3の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例4〉
実施例4では、基材フィルム原液を実施例3と共通とした。保護フィルム原液を実施例2と共通とした。その後の水溶性基材フィルム部及び水溶性保護フィルム部の作成方法、厚さは実施例1と同様とした。こうして、実施例4の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例5〉
実施例5では、基材フィルム原液を物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、ヒバオイル30重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%に調製した。保護フィルム原液は実施例1と共通とした。はじめに保護フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第1水溶性保護フィルム部を作成した。次に、基材フィルム原液を第1水溶性保護フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの水溶性基材フィルム部を作成した。そして、保護フィルム原液を水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第2水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、実施例5の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例6〉
実施例6では、第1水溶性保護フィルム部及び水溶性基材フィルム部は実施例5と共通とした。第2水溶性保護フィルム部に際し、バレイショデンプン48重量部、グリセリン32重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の保護フィルム原液(バレイショデンプン組成)を調整した。そこで、当該保護フィルム原液(バレイショデンプン組成)を乾燥後の水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第2水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、実施例6の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例7〉
実施例7では、第1水溶性基材フィルム部及び水溶性基材フィルム部は実施例5と共通とした。第2水溶性保護フィルム部に際し、ワキシーコーンスターチ48重量部、グリセリン32重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の保護フィルム原液(ワキシーコーンスターチ組成)を調整した。そこで、当該保護フィルム原液(ワキシーコーンスターチ組成)を乾燥後の水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第2水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、実施例7の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例8〉
実施例8は水溶性基材フィルム部を2層とし、これに水溶性保護フィルム部を備える3層構造とした。まず、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第1基材フィルム原液を調製した。併せて、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、ヒバオイル30重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第2基材フィルム原液を調製した。なお、保護フィルム原液は実施例1と共通とした。
はじめに第1基材フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの第1水溶性基材フィルム部を作成した。次に、第1水溶性基材フィルム部の乾燥後、第2基材フィルム原液を第1水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの第2水溶性基材フィルム部を作成した。続いて、第2水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、実施例8の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例9〉
実施例9も水溶性基材フィルム部を2層とし、これに水溶性保護フィルム部を備える3層構造とした。まず、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第1基材フィルム原液を調製した。併せて、バレイショデンプン48重量部、グリセリン32重量部、ヒバオイル30重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第2基材フィルム原液を調製した。なお、保護フィルム原液は実施例1と共通とした。第1水溶性基材フィルム部、第2水溶性基材フィルム部、水溶性保護フィルム部の形成は、実施例8に準じ同様の器具を用い、同一の厚さとした。こうして、実施例9の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例10〉
実施例10も水溶性基材フィルム部を2層とし、これに水溶性保護フィルム部を備える3層構造とした。まず、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第1基材フィルム原液を調製した。併せて、ワキシーコーンスターチ48重量部、グリセリン32重量部、ヒバオイル30重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第2基材フィルム原液を調製した。なお、保護フィルム原液は実施例1と共通とした。第1水溶性基材フィルム部、第2水溶性基材フィルム部、水溶性保護フィルム部の形成は、実施例8に準じ同様の器具を用い、同一の厚さとした。こうして、実施例10の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈比較例1〉
比較例1では、基材フィルム原液を実施例1と共通とした。実施例1と同様の方法により水溶性基材フィルム部のみの層構成とし、比較例1の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈比較例2〉
比較例2では、基材フィルム原液を実施例3と共通とした。実施例1と同様の方法により水溶性基材フィルム部のみの層構成とし、比較例2の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈比較例3〉
比較例3では、基材フィルム原液を物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、ヒノキオイル20重量部、ハッカ油7重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の基材フィルム原液に調製した。同基材フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの水溶性基材フィルム部を作成した。こうして、比較例3の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈比較例4〉
比較例4では、酵素処理デンプン48重量部、グリセリン32重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%のフィルム原液に調製した。同フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥した。しかしながら、一様に乾燥することも剥離もできず、評価に供することができなかった。
〈比較例5〉
比較例5では、基材フィルム原液及び第1保護フィルム部用の保護フィルム原液は実施例1と共通とした。第2保護フィルム用の保護フィルム原液は比較例4と共通とした。はじめに第1保護フィルム部用の保護フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第1水溶性保護フィルム部を作成した。次に、基材フィルム原液を第1水溶性保護フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの水溶性基材フィルム部を作成した。そして、第2保護フィルム部用の保護フィルム原液を水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥した。しかしながら、一様に乾燥することができず、また、水溶性基材フィルム部が塗工時に溶解する等の不具合が生じ、均質な形態のフィルムに仕上がらなかった。そのため、評価に供することができなかった。
〈比較例6〉
比較例6では、基材フィルム原液及び第1保護フィルム部用の保護フィルム原液は実施例1と共通とした。第2保護フィルム用の保護フィルム原液は粉末寒天48重量部、グリセリン32重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度10%として調製した。はじめに第1保護フィルム部用の保護フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第1水溶性基材フィルム部を作成した。次に、基材フィルム原液を第1水溶性保護フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの水溶性基材フィルム部を作成した。そして、第2保護フィルム部用の保護フィルム原液を水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの第2水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、比較例6の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈比較例7〉
比較例7は水溶性基材フィルム部を2層とした。まず、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第1基材フィルム原液を調製した。併せて、酵素分解デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス30重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第2基材フィルム原液を調製した。
はじめに第1基材フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの第1水溶性基材フィルム部を作成した。次に、第1水溶性基材フィルム部の乾燥後、第2基材フィルム原液を第1水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥した。しかしながら、一様に乾燥することができず、また、水溶性基材フィルム部が塗工時に溶解する等の不具合が生じ、均質な形態のフィルムに仕上がらなかった。そのため、評価に供することができなかった。
〈比較例8〉
比較例8は水溶性基材フィルム部を2層とし、これに水溶性保護フィルム部を備える3層構造とした。まず、粉末寒天48重量部、グリセリン32重量部、ヒバオイル30重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度10%の第2基材フィルム原液を調製した。併せて、物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、人参エキス20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の第1基材フィルム原液を調製した。なお、保護フィルム原液は実施例1と共通とした。
はじめに第1基材フィルム原液をPETシート上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの第1水溶性基材フィルム部を作成した。次に、第1水溶性基材フィルム部の乾燥後、第2基材フィルム原液を第1水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、30μmの第2水溶性基材フィルム部を作成した。続いて、第2水溶性基材フィルム部上にバーコーターを用いて塗工して乾燥し、10μmの水溶性保護フィルム部を作成した。こうして、比較例8の臭気抑制水溶性フィルムを作成した。
〈実施例21ないし32〉
実施例21ないし32は実施例1、2等と同様の2層構造とした。実施例21を例に取ると、水溶性基材フィルム部のために物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、臭気機能性成分(プラセンタエキス)20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の基材フィルム原液を調製した。併せて、水溶性保護フィルム部のために物理加工デンプン48重量部、グリセリン32重量部、臭気成分(ゆず油)20重量部、及び脱イオン水を混合して、最終的に固形分濃度30%の保護フィルム原液を調製した。その後の水溶性基材フィルム部及び水溶性保護フィルム部の作成方法、厚さは実施例1と同様とした。
実施例22ないし32においては、実施例21からの水溶性基材フィルム部の臭気機能性成分の種類変更、及び水溶性保護フィルム部の臭気成分の種類変更のみである。その他の配合量、塗工の条件を全て共通とした。臭気機能性成分及び臭気成分の詳細は表7ないし9のとおりとした。
〈比較例9,10〉
比較例9,10は実施例21ないし32の対比の位置付けとして作成した。比較例9は実施例21の水溶性基材フィルム部のみのフィルムとして作成した。比較例10は実施例27の水溶性基材フィルム部のみのフィルムとして作成した。
[臭気の官能評価方法]
実施例及び比較例に基づいて作成した臭気抑制水溶性フィルムについて、10名の評価者にそれぞれのフィルムの臭気を嗅いでもらった。なお、水溶性保護フィルム部を片面のみに備える例については、当該水溶性保護フィルム部を介して臭気を嗅いでもらった。そして、臭気抑制水溶性フィルムの発する臭気の印象の聞き取りを行った。
同時に、評価者においてフィルムから発する臭気の強弱、良否について点数化を行った(下記参照)。そして、10人の点数の算術平均(10点の単純平均)を求め、これをもって当該臭気抑制水溶性フィルムの評価点数とした。そして、評価点数4点以上は良好に使用可能な優良品「A」とした。評価点数2点以上4点未満は使用可能な良品「B」とした。評価点数0点以上2点未満は使用不可「C」とした。
〈臭気と点数の関係〉
強く不快な臭気を感じる。 … 0点
不快な臭気を感じる。 … 1点
僅かに不快な臭気を感じる。 … 2点
不快ではないものの臭気を感じる。 … 3点
ほぼ不快な臭気を感じない。 … 4点
不快な臭気を感じない。 … 5点
[溶解性の評価方法]
次述の実施例及び比較例に基づいて作成した臭気抑制水溶性フィルムについて、各フィルムを1cm四方の正方形に裁断し試験片とした。これを皿に取り、同試験片の中心に、約20℃(室温に相当)の脱イオン水を1mL滴下した。そして、滴下直後から試験片が溶解するまでに要した時間を計測した。要した時間に応じて4段階の評価を行った。
5秒以内に完全に溶解した試験片は、非常に良好な溶解であるとして「A」の評価とした。
5秒以上30秒未満で溶解した試験片は、良好な溶解であるとして「B」の評価とした。
30秒以上60秒未満で溶解した試験片は、溶解可能であるとして「C」の評価とした(用途に応じては使用可能)。
溶解に60秒以上要した試験片または溶解不能の試験片は、難溶不良「D」の評価とした。
[総合評価]
実施例及び比較例について、臭気の印象、官能評価の点数、溶解性の良否、作成し易さの観点を踏まえて総合的に3段階の良否評価を行った。非常に優良なフィルムの例を「A」とした。これに続く良の評価のフィルムの例を「B」とした。最後に、使用不可の評価のフィルムを「C」とした。
実施例、比較例の結果は表1ないし10のとおりである。各表は、水溶性基材フィルム部、水溶性保護フィルム部のそれぞれについての含有成分、基材成分、厚さ(μm)を示す。併せて、香気の印象、香気評価点、香気評価(3段階)、溶解性評価(4段階)、及び総合評価(3段階)の結果も示した。実施例、比較例ごとに臭気抑制水溶性フィルムの構造が異なるため、表記の順を変更して示した。
Figure 2015182959
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[結果と考察]
表1の実施例1ないし4と、表4の比較例1ないし3との対比から、水溶性基材フィルム部に水溶性保護フィルム部を備えたことによって、臭気の低減が大幅に可能となった。従って、水溶性のフィルムを複層化の利点は大きい。また、実施例2,4のように水溶性保護フィルム部にマスキング目的の臭気成分を含有することによって、臭気のマスキング効果がよりいっそう高まった。
表2の実施例5ないし7は、水溶性基材フィルム部の両表面に水溶性保護フィルム部を備えた例である。いずれも水溶性基材フィルム部から放散する臭気機能性成分の臭気を低減する。しかし、比較例6の溶解性は劣ることとなった。比較例6は保護フィルム部に寒天を使用した例である。実施例5ないし7のデンプンと比較して常温下や体温条件での溶解性は期待できない。従って、水溶性保護フィルム部をデンプンから形成することが望ましい。さらに、比較例5より、デキストリン類の水溶性保護フィルム部のようにデンプンの糖鎖の鎖長を短くし過ぎても不具合が生じる。このことから、良好な溶解性を維持し、かつ、塗工の利便性を勘案すると、水溶性保護フィルム部には、デンプンの使用が好ましく、好ましくはワキシースターチの使用であり(実施例7参照)、さらに物理加工デンプンとすることがより好ましい。
表3の実施例8ないし10は、水溶性基材フィルム部を2層とし、それぞれに臭気機能性成分を含有したフィルムである。これらにフィルムでも水溶性保護フィルム部を備えることによって臭気の低減が可能となることを明らかにした。特に異なる種類の臭気が混じり悪臭化する場合にも有効に対処できる。表6の比較例8は基材フィルム部に寒天を使用した例である。実施例8ないし10のデンプンと比較して常温下や体温条件での溶解性は期待できない。さらに、比較例7より、デキストリン類の水溶性基材フィルム部のようにデンプンの糖鎖の鎖長を短くし過ぎても不具合が生じる。このことからも、良好な溶解性を維持し、かつ、塗工の利便性を勘案すると、水溶性保護フィルム部にも、デンプンの使用が好ましく、好ましくはワキシースターチの使用であり(実施例10参照)、さらに物理加工デンプンとすることがより好ましい。
物理加工デンプンは、デンプンのアルファ化の後、適度に結晶構造を解して低分子量化を図っている。そこで、水分子が糖鎖内に入り込みやすく、水溶性がより高まったといえる。また、物理加工デンプン自体もデンプンであり、化学的な処理を一切行っていない。このため、他の成分の混入も無く安定性に優れている。
表7ないし9の実施例21ないし32は、実施例2,4と同様に水溶性基材フィルム部に臭気機能性成分を含有し、同時に、水溶性保護フィルム部に臭気成分を含有した例である。各実施例における開示と表10の比較例9,10の対比のとおり、含有成分の種類を変更しても、香気及び溶解性の評価はいずれも極めて良好である。従って、多様な臭気機能性成分の臭気であっても相応する成分によりマスキングして不快感を解消可能なことを立証した。香気評価点のばらつきは、含有成分の臭気の性質が相違することに依存すると考える。
なお、実施例2,4及び実施例21ないし32において、水溶性基材フィルム部の第2表面にさらに水溶性保護フィルム部を備えることができる。こうすると、水溶性基材フィルム部の両表面が被覆されるため、臭気機能性成分の臭気の放散がよりいっそう低減できるといえる。また、両方の水溶性保護フィルム部に同一のマスキング用の臭気成分を配合しても、それぞれに異なるマスキング用の臭気成分を配合してもよい。この場合、フィルムの表裏を問わず香気が発するため、臭気の低減とともに香気の増強もより良好となると予想する。
本発明の臭気抑制水溶性フィルムは、少なくとも2層構造とすることによってフィルム内に含有される医薬用や美容用途の臭気機能性成分の臭気の放散を抑制できる。このため、治療、美容等の人体に貼着する目的に適する。さらに、臭気のマスキングに加え香気の放散も可能となり、香気に由来する快適な感覚から心身のリラックス効果やストレスの低減効果を付与する各種製品に利用できる。
1,2,3,4,5,6 臭気抑制水溶性フィルム
10 水溶性基材フィルム部
11 第1表面
12 第2表面
15 臭気機能性成分
16 臭気成分(第1臭気成分)
17 臭気成分(第2臭気成分)
21 水溶性保護フィルム部(第1水溶性保護フィルム部)
22 水溶性保護フィルム部(第2水溶性保護フィルム部)

Claims (5)

  1. 臭気機能性成分を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部と、
    前記水溶性基材フィルム部の片面にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部とを備えた
    ことを特徴とする臭気抑制水溶性フィルム。
  2. 臭気機能性成分を含有しデンプンを主成分として形成される水溶性基材フィルム部と、
    前記水溶性基材フィルム部の両面にデンプンを主成分として形成される水溶性保護フィルム部とを備えた
    ことを特徴とする臭気抑制水溶性フィルム。
  3. 前記水溶性保護フィルム部に前記臭気機能性成分と異なる臭気成分が含有される請求項1または2に記載の臭気抑制水溶性フィルム。
  4. 前記デンプンがワキシースターチである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の臭気抑制水溶性フィルム。
  5. 前記デンプンが、デンプンの糊化物に超音波を照射して低分子量化した物理加工デンプンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の臭気抑制水溶性フィルム。
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