JP2015181428A - 組換え細胞、並びに、環式モノテルペンの生産方法 - Google Patents

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【課題】一酸化炭素等の特定のC1化合物を炭素源として、環式モノテルペンを高純度かつ大量に取得するための一連の技術を提供する。【解決手段】環式モノテルペンを生産可能な組換え細胞であって、非メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能を有する宿主細胞、又はメチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞に、ゲラニル二リン酸合成酵素をコードする核酸及びネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの核酸と、環式モノテルペン合成酵素をコードする核酸とが導入されてなるものであり、これらの核酸が前記宿主細胞内で発現し、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物から環式モノテルペンを生産可能である組換え細胞が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、一酸化炭素等の特定のC1化合物から環式モノテルペンを生産可能な組換え細胞、及び当該組換え細胞を用いる環式モノテルペンの生産方法に関する。
モノテルペン(Monoterpene)は、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)とイソペンテニル二リン酸(IPP)とが縮合したゲラニル二リン酸(GPP)を生合成前駆体とする、炭素10個を持つイソプレン則に従う化合物の総称である。モノテルペンは、現在900種類以上のものが知られている。
環式モノテルペンはバラや柑橘類のような芳香を持ち、香水などにも多用されている。例えば、リモネン(Limonene)はレモンなど柑橘類に含まれる香気成分であり、溶剤や接着剤原料などとしても利用されている。また、メントールは爽やかな芳香を持ち、菓子や医薬品に清涼剤として用いられている。一方、樹脂産業では、β−ピネン(β-Pinene)、α−ピネン(α-Pinene)、リモネン、α−フェランドレン(α-Phellandrene)等が、接着剤や透明樹脂等のモノマー原料として検討されている(非特許文献1)。
合成ガス(Synthesis gas, Syngas)は、廃棄物、天然ガス、及び石炭から高温・高圧下で金属触媒の作用によって効率よく得られる、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素を主成分とする混合ガスである。合成ガスを起点とする金属触媒によるC1ケミストリーの分野では、メタノール、ギ酸、ホルムアルデヒド等の液状の化学品を安価かつ大量に生産するプロセスが開発されている。
そして、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素は、廃棄物由来の合成ガスや工場排ガス、天然ガス、または石炭由来の合成ガスに含まれており、ほぼ永久的に利用可能である。しかしながら、合成ガスをはじめとするC1炭素源とした、微生物による化学品生産の例は、極めて少ないのが現状である。現在のところ、開発が進んでいるのは、合成ガスからのエタノール、2,3−ブタンジオール等の生産のみである。特に、組換え体による合成ガス資化性物の利用に関する報告は少ない。特許文献1には、大腸菌の組換え体によるイソプロパノールの生産技術が開示されている。この技術では、大腸菌に複数のCO代謝酵素遺伝子を導入して合成ガス資化能を付与し、合成ガスからイソプロパノールを生産している。しかし、この技術は環式モノテルペンを生産するものではない。また、本来合成ガス資化性微生物が保有するCO代謝酵素遺伝子群を大腸菌で効率良く機能的に発現させることは難しく、さらに大腸菌のCO耐性も低いこと等から、CO代謝を有する組換え大腸菌を用いる系は、目的物質の高い生産性が期待できない。
環式モノテルペンの一種であるβ−フェランドレン(β-Phellandrene)は、新たなポリマー材料としての用途が期待されている。β−フェランドレンは、α−フェランドレンに比べてより高分子量のポリマーを得る可能性がある。しかし、合成化学的手法によってβ−フェランドレンを得る場合には、その異性体であるα−フェランドレンの生成が避けられず、またこれらの異性体の分離は極めて困難である(非特許文献2)。そのため、高純度のβ−フェランドレンを得ることは難しく、このことがβ−フェランドレンのポリマー物性等を調べることを困難にしている。
一方、β−フェランドレンの生合成経路としては、ゲラニル二リン酸(GPP)合成酵素又はネリル二リン酸(NPP)合成酵素の作用によって、イソペンテニル二リン酸(IPP)からゲラニル二リン酸(GPP)又はネリル二リン酸(NPP)が生合成される。続いて、β−フェランドレン合成酵素の作用により、GPP又はNPPからβ−フェランドレンが生合成される。そして、トマトとラベンダーにおいて、β−フェランドレン合成酵素が見出されている(非特許文献3,4)。
特許文献2には、環式テルペンシンターゼ(環式テルペン合成酵素)をコードする核酸が導入されたC1代謝宿主細胞の形質転換体を用いて、モノテルペンを製造する方法について記載されている。その実施例として、メチロモナス属細菌の形質転換体を用いてリモネンを製造した実験例が記載されている。β−フェランドレン合成酵素に関する言及もあるが、β−フェランドレン合成酵素とその遺伝子の具体例や取得方法、さらにβ−フェランドレンを生産できる形質転換体の具体的構成や構築方法については示されていない。また、この技術は、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素又は、廃棄物由来の合成ガスや工場排ガス、天然ガス、または石炭由来の合成ガスを炭素源として用いるものではない。
特許文献3にはC1代謝宿主細胞の形質転換体を用いたテルペンの生産方法に関して記載されており、セスキテルペンの一種のファルネセン生産の実施例がある。しかし、C1代謝宿主細胞を用いた環式モノテルペンの実用的な生産方法は示されていない。
特表2011−509691号公報 特表2005−500805号公報 国際公開第2013/180584号
Satou K., et al., Green Chemistry 2006, 8, 878-882 Mori K., Tetrahedron: Asymmetry 2006, 17, 2133-2142 Demissie, Z. A., et al.,, Planta. 2011, 233, 685-96. Schilmiller, A. L., et al., Proc Natl Acad Sci U S A., 2009, 106, 10865-70.
上記現状に鑑み、本発明は、合成ガスなどのC1炭素源から、環式モノテルペンを大量に取得するための一連の技術を提供することを目的とする。
上記した課題を解決するための本発明の1つの様相は、環式モノテルペンを生産可能な組換え細胞であって、非メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能を有する宿主細胞、又はメチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞に、ゲラニル二リン酸合成酵素をコードする核酸及びネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの核酸と、環式モノテルペン合成酵素をコードする核酸とが導入されてなるものであり、これらの核酸が前記宿主細胞内で発現し、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物から環式モノテルペンを生産可能である組換え細胞である。
本発明は環式モノテルペンを生産可能な組換え細胞に係るものである。本発明の組換え細胞は、「非メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸(IPP)合成能」又は「メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能」を有する細胞を宿主細胞とする。そして、当該宿主細胞に「ゲラニル二リン酸(GPP)合成酵素をコードする核酸及びネリル二リン酸(NPP)合成酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの核酸」と、「環式モノテルペン合成酵素をコードする核酸」とが導入されてなるもので、かつこれらの核酸が宿主細胞内で発現する。
すなわち、本発明の組換え細胞では、GPP合成酵素及び/又はNPP合成酵素の発現能と環式モノテルペン合成酵素の発現能とが、宿主細胞に対して新たに付加又は増強されている。
本発明の組換え細胞によれば、前記したC1化合物からイソペンテニル二リン酸(IPP)が合成される。そして、細胞内で発現されたGPP合成酵素の作用によってIPPからGPPが合成され、及び/又は、細胞内で発現されたNPP合成酵素の作用によってIPPからNPPが合成される。さらに、細胞内で発現された環式モノテルペン合成酵素の作用によって、GPP及び/又はNPPから環式モノテルペンが合成される。その結果、本発明の組換え細胞を培養することにより、環式モノテルペンを大量に生産することができる。
環式モノテルペンとは、六員環等の環状構造を含むモノテルペンを指し、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、α−フェランドレン、β−フェランドレン、メントール、チモール、カルバクロール、カレン、サビネン、カンフェン、ツジェン、カンフル、ボルネオール、シネオール等を含む。
イソプレノイドの生合成経路はメバロン酸経路(MVA経路ともいう)と非メバロン酸経路(MEP経路ともいう)に大別される。非メバロン酸経路は、グリセルアルデヒド3−リン酸とピルビン酸から、最終的にイソペンテニル二リン酸(IPP)又はジメチルアリル二リン酸(DMAPP)を生成する経路である。本発明の一態様に係る宿主細胞は、非メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能を有するものである。
また本発明の別の態様に係る宿主細胞である「メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能」を有する細胞としては、図1に示すアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)及びメタノール経路(Methanol pathway)を有する嫌気性微生物が例示される。
好ましくは、一酸化炭素脱水素酵素を有するものである。
一酸化炭素脱水素酵素(例えば、EC 1.2.99.2/1.2.7.4)(一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、CO dehydrogenase、CODH)は、一酸化炭素と水から二酸化炭素とプロトンを生成させる作用、及びその逆反応である、二酸化炭素とプロトンから一酸化炭素と水を生成させる作用、を有する。一酸化炭素脱水素酵素は、アセチルCoA経路(図1)で作用する酵素の1つである。
好ましくは、前記宿主細胞は、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌である請求項1又は2に記載の組換え細胞である。
好ましくは、前記宿主細胞は、Clostridium ljungdahlii又はClostridium autoethanogenumである。
好ましくは、一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスから環式モノテルペンを生産可能である。
好ましくは、ゲラニル二リン酸合成酵素をコードする核酸は、下記(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードするものである。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
好ましくは、ネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸は、下記(d)、(e)又は(f)のタンパク質をコードするものである。
(d)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(e)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
(f)配列番号4で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質
好ましくは、イソペンテニル二リン酸の合成経路で作用する少なくとも1つの酵素をコードする核酸がさらに導入され、当該核酸が宿主細胞内で発現する。
かかる構成により、GPP合成酵素やNPP合成酵素の基質となるIPPが効率的に供給される。
好ましくは、前記環式モノテルペン合成酵素はβ−フェランドレン合成酵素であり、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを生産可能である。
この好ましい様相によれば、細胞内で発現されたβ−フェランドレン合成酵素の作用によって、GPP及び/又はNPPからβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンが合成される。その結果、本発明の組換え細胞を培養することにより、β−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを大量に生産することができる。
好ましくは、少なくともネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸が導入されたものである。
好ましくは、β−フェランドレン合成酵素をコードする核酸は、下記(g)、(h)又は(i)のタンパク質をコードするものである。
(g)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(h)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質、
(i)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質。
好ましくは、メバロン酸経路で作用する酵素群をコードする核酸がさらに導入され、メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能をさらに有する。
かかる構成により、GPP合成酵素やNPP合成酵素の基質となるIPPが、メバロン酸経路と非メバロン酸経路の両方から合成され、IPPの供給が効率的に行われる。その結果、本発明の組換え細胞は、環式モノテルペンの生産能がさらに高いものとなる。
好ましくは、前記メバロン酸経路は、酵母、原核生物、又は放線菌のメバロン酸経路である。
好ましくは、非メバロン酸経路で作用する少なくとも1つの酵素をコードする核酸がさらに導入され、当該核酸が宿主細胞内で発現する。
かかる構成により、非メバロン酸経路によるIPP合成能が増強される。その結果、本発明の組換え細胞は、環式モノテルペンの生産能がさらに高いものとなる。
好ましくは、前記非メバロン酸経路は、宿主細胞以外の非メバロン酸経路である。
好ましくは、宿主細胞に導入された核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれている。
好ましくは、宿主細胞に導入された核酸は、プラスミドに組み込まれている。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上の環式モノテルペンを生産可能である。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上のβ−フェランドレンを生産可能である。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり6mg以上の4−カレンを生産可能である。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり2mg以上のリモネンを生産可能である。
本発明の他の様相は、上記した組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として用いて培養し、当該組換え細胞に環式モノテルペンを生産させる環式モノテルペンの生産方法である。
本発明は、環式モノテルペンの生産方法に係るものである。本発明では、上記した組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として培養することにより、当該組換え細胞に環式モノテルペンを生産させる。本発明によれば、例えば、一酸化炭素や二酸化炭素を含む合成ガスから環式モノテルペンを生産することができる。
本発明の他の様相は、上記した組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該組換え細胞に前記C1化合物から環式モノテルペンを生産させる環式モノテルペンの生産方法である。
本発明では、上記した組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該C1化合物から環式モノテルペンを生産させる。本発明によっても、例えば、一酸化炭素や二酸化炭素を含む合成ガスから環式モノテルペンを生産することができる。
好ましくは、一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスを、前記組換え細胞に提供する。
「組換え細胞にガスを提供する」とは、炭素源等としてガスを組換え細胞に与える、あるいは、組換え細胞にガスを接触させる、という意味である。
好ましくは、さらに、ギ酸又はメタノールを前記組換え細胞に提供する。
「組換え細胞にガスとメタノールを提供する」とは、炭素源等としてガスとメタノールを組換え細胞に与える、あるいは、組換え細胞にガスとメタノールを接触させる、という意味である。ギ酸についても同様である。
好ましくは、組換え細胞は、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌を宿主細胞とするものである。
好ましくは、前記環式モノテルペン合成酵素はβ−フェランドレン合成酵素であり、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを生産させる。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上の環式モノテルペンを生産させる。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上のβ−フェランドレンを生産させる。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり6mg以上の4−カレンを生産させる。
好ましくは、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり2mg以上のリモネンを生産させる。
好ましくは、組換え細胞の細胞外に放出された環式モノテルペンを回収する。
好ましくは、組換え細胞の培養系の気相から環式モノテルペンを回収する。
二酸化炭素に代えて、重炭酸塩を用いてもよい。
本発明によれば、環式モノテルペンを高純度かつ大量に生産することができる。
アセチルCoA経路とメタノール経路を表す説明図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明において「遺伝子」という用語は、全て「核酸」あるいは「DNA」という用語に置き換えることができる。
本発明の組換え細胞は、環式モノテルペンを生産可能なものである。本発明の組換え細胞は、非メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能を有する宿主細胞、又はメチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞に、ゲラニル二リン酸合成酵素をコードする核酸及びネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの核酸と、環式モノテルペン合成酵素をコードする核酸とが導入されてなり、これらの核酸が前記宿主細胞内で発現し、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物から環式モノテルペンを生産可能なものである。
まず、宿主細胞について説明する。本発明の組換え細胞における宿主細胞は、「非メバロン酸経路によるIPP合成能を有する宿主細胞」又は「メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞」である。
上述したように、一般に、IPPの合成経路はメバロン酸経路(MVA経路)と非メバロン酸経路(MEP経路)の2つに大別される。メバロン酸経路は真核生物が備えているものであり、アセチルCoAを出発物質としている。メバロン酸経路で作用する酵素としては、上流から順に、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、5−ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼが挙げられる。
一方、非メバロン酸経路は原核生物や葉緑体・色素体が備えているものであり、グリセルアルデヒド3−リン酸とピルビン酸を出発物質としている。非メバロン酸経路で作用する酵素としては、上流から順に、DOXPシンターゼ、DOXPレダクトイソメラーゼ、4−ジホスホシチジル−2−C−メチル−D−エリトリトールシンターゼ、4−ジホスホヂチジル−2−C−メチル−D−エリトリトールキナーゼ、2−C−メチル−D−エリトリトール−2,4−シクロ二リン酸シンターゼ、HMB−PPシンターゼ、HMB−PPレダクターゼ、が挙げられる。
そして本発明の一態様では、「非メバロン酸経路によるIPP合成能を有する宿主細胞」を用いる。
一方、「メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能」を有する宿主細胞については、メチルテトラヒドロ葉酸([CH3]−THF)、一酸化炭素(CO)、及びCoAからアセチルCoAを合成する経路は、例えば、図1に示すアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)とメタノール経路(Methanol pathway)に含まれている。
図1に示すように、アセチルCoA経路では、二酸化炭素(CO2)が2つの経路で別々に、一酸化炭素(CO)とメチルカチオン源に還元される。そして、これら2つの炭素源を基質としてCoA(図1ではHSCoAと表記)のチオール基がアセチル化され、1分子のアセチルCoAが合成される。アセチルCoA経路では、アセチルCoAシンターゼ(Acetyl-CoA synthase、ACS)、メチルトランスフェラーゼ(Methyltransferase)、一酸化炭素脱水素酵素(CODH)、ギ酸デヒドロゲナーゼ(Formate dehydrogenase、FDH)、等の酵素が作用している。なお、ホルミルテトラヒドロ葉酸([CHO]−THF)から[CH3]−THFに至る経路は、メチルブランチ(Methyl branch)と呼ばれる。
一方、メタノール経路は、メタノールをホルムアルデヒド(HCHO)、さらにギ酸(HCOOH)に変換する経路と、メタノールから[CH3]−THFを誘導する経路を含んでいる。
すなわち、メチルテトラヒドロ葉酸([CH3]−THF)、一酸化炭素(CO)、及びCoAからアセチルCoAを合成する経路は、アセチルCoA経路とメタノール経路とで共通している。
好ましい実施形態では、組換え細胞が一酸化炭素脱水素酵素(CODH)を有する。詳細には、主に一酸化炭素代謝、すなわち一酸化炭素脱水素酵素の働きにより、一酸化炭素と水から二酸化炭素とプロトンを発生する機能によって生育する細胞が好ましい。アセチルCoA経路とメタノール経路を有する嫌気性微生物は、一酸化炭素脱水素酵素(CODH)を有している。
当該嫌気性微生物として、Clostridium ljungdahlii、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium ragsdalei(Kopke M. et al., Appl. Environ. Microbiol. 2011, 77(15), 5467-5475)、Moorella thermoacetica(Clostridium thermoaceticumと同じ) (Pierce EG. Et al., Environ. Microbiol. 2008, 10, 2550-2573)、Acetobacterium woodii(Dilling S. et al., Appl. Environ. Microbiol. 2007, 73(11), 3630-3636)等のClostridium属細菌、Moorella属細菌、又はAcetobacterium属細菌が代表例として挙げられる。特に、Clostridium属細菌は、宿主−ベクター系や培養方法が確立しており、本発明における宿主細胞として好適である。
上記5種のClostridium属細菌、Moorella属細菌、又はAcetobacterium属細菌は、合成ガス資化性微生物の代表例として知られている。
Clostridium属細菌、Moorella属細菌、及びAcetobacterium属細菌以外では、Carboxydocella sporoducens sp. Nov. (Slepova TV. et al., Inter. J. Sys. Evol. Microbiol. 2006, 56, 797-800)、Rhodopseudomonas gelatinosa(Uffen RL, J. Bacteriol. 1983, 155(3), 956-965)、Eubacterium limosum (Roh H. et al., J. Bacteriol. 2011, 193(1), 307-308),Butyribacterium methylotrophicum (Lynd, LH. Et al., J. Bacteriol. 1983, 153(3), 1415-1423)等の細菌を宿主細胞として用いることができる。
なお、上記した細菌の増殖及びCODH活性は全て酸素感受性であるが、酸素非感受性のCODHも知られている。例えば、Oligotropha carboxidovorans (Schubel, U. et al., J. Bacteriol., 1995, 2197-2203)、Bradyrhizobium japonicum (Lorite MJ. Et al., Appl. Environ. Microbiol., 2000, 66(5), 1871-1876)を始め、その他のバクテリア種には酸素非感受性のCODHが存在する(King GM et al., Appl. Environ. Microbiol. 2003, 69 (12), 7257-7265)。好気性水素酸化細菌であるRalsotonia属菌にも酸素非感受性のCODHが存在する (NCBI Gene ID: 4249199, 8019399)。
このように、CODHを有する細菌は広く存在しており、その中から本発明で用いる宿主細胞を適宜選択することができる。例えば、CO、CO/H2(COとH2を主成分とするガス)、もしくはCO/CO2/H2(COとCO2とH2を主成分とするガス)を唯一の炭素源かつエネルギー源とした選択培地を用い、嫌気、微好気、もしくは好気的条件で、宿主細胞として利用できるCODHを有する細菌を分離することができる。
次に、GPP合成酵素、NPP合成酵素、及び環式モノテルペン合成酵素、並びにこれらの酵素をコードする核酸について説明する。
GPP合成酵素としては、組換え細胞内でその酵素活性を発揮できるものであれば特に限定はない。GPP合成酵素をコードする核酸(遺伝子)についても同様であり、組換え細胞内で正常に転写・翻訳されるものであれば特に限定はない。
NPP合成酵素、環式モノテルペン合成酵素、及びこれらをコードする核酸についても同様である。
GPP合成酵素の具体例としては、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のもの(GenBank Accession No.: Y17376/At2g34630; Bouvier, F., et al., Plant J,. 2000, 24, 241-52.)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のもの;(GenBank Accession No.: NP_215504; Mann, F. M., et al., FEBS Lett., 2011, 585, 549-54.)、等が挙げられる。
配列番号1に上記シロイヌナズナ由来GPP合成酵素をコードする核酸(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号2にアミノ酸配列のみを示す。配列番号1で表される塩基配列を有するDNAは、GPP合成酵素をコードする核酸の一例となる。
さらに、GPP合成酵素をコードする核酸には、少なくとも、下記(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(c)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
NPP合成酵素の具体例としては、トマト(Solanum lycopersicum)由来のもの(GenBank Accession No.: FJ797956)、等が挙げられる。
配列番号3に上記トマト由来NPP合成酵素をコードする核酸(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号4にアミノ酸配列のみを示す。配列番号3で表される塩基配列を有するDNAは、NPP合成酵素をコードする核酸の一例となる。
さらに、NPP合成酵素をコードする核酸には、少なくとも、下記(d)、(e)又は(f)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(d)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(e)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
(f)配列番号4で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(f)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
本発明の組換え細胞において、「ゲラニル二リン酸(GPP)合成酵素をコードする核酸」と「ネリル二リン酸(NPP)合成酵素をコードする核酸」については、いずれか一方の核酸のみが導入されたものでもよいし、両方の核酸が導入されたものでもよい。
環式モノテルペン合成酵素の例としては、β−フェランドレン合成酵素が挙げられる。β−フェランドレン合成酵素の作用により、GPP及び/又はNPPからβ−フェランドレンが合成される。また、副産物として4−カレンやリモネンも合成され得る。
β−フェランドレン合成酵素及びそれをコードする核酸の具体例としては、トマト(Solanum lycopersicum)由来のもの(GenBank Accession No.: FJ797957; Schilmiller, A. L., et al., Proc Natl Acad Sci U S A., 2009, 106, 10865-70.)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)由来のもの(GenBank Accession No.: HQ404305; Demissie, Z. A., et al., Planta, 2011,. 233, 685-96)、等が挙げられる。
配列番号5に上記トマト由来β−フェランドレン合成酵素をコードする核酸(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号6にアミノ酸配列のみを示す。
配列番号7に上記ラベンダー由来のβ−フェランドレン合成酵素をコードする核酸(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号8にアミノ酸配列のみを示す。
配列番号5又は配列番号7で表される塩基配列を有するDNAは、β−フェランドレン合成酵素をコードする核酸の一例となる。
さらに、β−フェランドレン合成酵素をコードする核酸には、少なくとも、下記(g)、(h)又は(i)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(g)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(h)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質、
(i)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(i)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
本発明の組換え細胞においては、GPP合成酵素、NPP合成酵素、環式モノテルペン合成酵素をコードする各核酸に加えて、他の核酸がさらに導入されていてもよい。1つの実施形態では、メバロン酸経路で作用する酵素群をコードする核酸がさらに導入され、メバロン酸経路によるIPP合成能をさらに有する。かかる構成によれば、メバロン酸経路と非メバロン酸経路の両方からIPPが合成されるので、IPP合成能が増強され、結果として環式モノテルペンの生産がより効率的に行われる。
上述したように、メバロン酸経路で作用する酵素群としては、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、5−ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼが挙げられる。このうち、例えば、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、5−ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、及びイソペンテニル二リン酸イソメラーゼからなる酵素群が宿主細胞内で発現するように、導入する核酸を選択すればよい。これらの核酸についても、宿主細胞で転写されやすいコドンに改変したものを採用することができる。
なお、メバロン酸経路は全ての真核生物が保有しているが、原核生物でも見出されている。原核生物でメバロン酸経路を有するものとしては、放線菌では、Streptomyces sp. Strain CL190 (Takagi M. et al., J. Bacteriol. 2000, 182 (15), 4153-7)、Streptomyces griseolosporeus MF730-N6 (Hamano Y. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 2001, 65(7), 1627-35)が挙げられる。
細菌では、Lactobacillus helvecticus (Smeds A et al., DNA seq. 2001, 12(3), 187-190)、Corynebacterium amycolatum、Mycobacterium marinum、Bacillus coagulans、Enterococcus faecalis、Streptococuss agalactiae、Myxococcus xanthus等が挙げられる(Lombard J. et al., Mol. Biol. Evol. 2010, 28(1), 87-99)。
アーキアでは、Aeropyrum属、Sulfolobus属、Desulfurococcus属、Thermoproteus属、Halobacterium属、Methanococcus属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Methanopyrus属、Thermoplasma属等が挙げられる(Lombard J. et al., Mol. Biol. Evol. 2010, 28(1), 87-99)。
上記メバロン酸経路で作用する酵素群の由来としては特に限定はないが、酵母のメバロン酸経路で作用する酵素群が好ましい。その他、放線菌のメバロン酸経路で作用する酵素群も好ましく採用される。
別の実施形態では、非メバロン酸経路で作用する少なくとも1つの酵素をコードする核酸がさらに導入され、当該核酸が宿主細胞内で発現する。本実施形態においても、IPP合成能が増強され、結果として環式モノテルペンの生産がより効率的に行われる。導入される当該核酸は1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
上述したように、非メバロン酸経路で作用する酵素としては、DOXPシンターゼ、DOXPレダクトイソメラーゼ、4−ジホスホシチジル−2−C−メチル−D−エリトリトールシンターゼ、4−ジホスホヂチジル−2−C−メチル−D−エリトリトールキナーゼ、2−C−メチル−D−エリトリトール−2,4−シクロ二リン酸シンターゼ、HMB−PPシンターゼ、HMB−PPレダクターゼ、が挙げられる。例えば、これらの酵素群から1又は2以上の酵素を選択し、当該酵素をコードする核酸を宿主細胞に導入すればよい。
また、非メバロン酸経路で作用する酵素は、宿主細胞以外の由来であることが好ましい。かかる構成により、反応生成物による反応抑制を避けることができる。
これらの核酸についても、宿主細胞で転写されやすいコドンに改変したものを採用することができる。
メバロン酸経路あるいは非メバロン酸経路で作用するこれらの酵素については、天然に存在するものの他、各酵素の改変体でもよい。例えば、各酵素のアミノ酸置換変異体や、各酵素の部分断片であって同様の酵素活性を有するポリペプチドでもよい。
宿主細胞に核酸を導入する方法としては特に限定はなく、宿主細胞の種類等によって適宜選択すればよい。例えば、宿主細胞に導入可能でかつ組み込まれた核酸を発現可能なベクターを用いることができる。
例えば、宿主細胞が細菌等の原核生物の場合には、当該ベクターとして、宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組み込みが可能で、挿入された上記核酸(DNA)を転写できる位置にプロモーターを含有しているものを用いることができる。例えば、当該ベクターを用いて、プロモーター、リボソーム結合配列、上記核酸(DNA)、および転写終結配列からなる一連の構成を宿主細胞内で構築することが好ましい。
宿主細胞がClostridium属細菌(Moorella属細菌のような近縁種を含む)の場合には、Clostridium属細菌と大腸菌とのシャトルベクターpIMP1(Mermelstein LD et al., Bio/technology 1992, 10, 190-195)を用いることができる。本シャトルベクターは、pUC9 (ATCC 37252)とBacillus subtilisから分離されたpIM13 (Projan SJ et al., J. Bacteriol. 1987, 169 (11), 5131-5139)との融合ベクターであり、Clostridium属細菌内でも安定的に保持される。Clostridium属細菌と大腸菌とのシャトルベクターの他の例としては、pSOS95(GenBank: AY187686.1)が挙げられる。
なお、Clostridium属細菌への遺伝子導入には、通常、エレクトロポレーション法が使用されるが、遺伝子導入直後の導入された外来プラスミドは制限酵素Cac824I等による分解を受けやすく極めて不安定である。そのため、Bacillus subtilis ファージΦ3T1由来メチルトランスフェラーゼ遺伝子が保持されたpAN1 (Mermelstein LD et al., Apply. Environ. Microbiol. 1993, 59(4), 1077-1081)を保有する大腸菌、例えばER2275株等で、pIMP1に由来するベクターを一旦増幅し、メチル化処理を行ってから、これを大腸菌から回収しエレクトロポレーションによる形質転換に使用することが好ましい。なお最近では、Cac824I遺伝子が欠損したClostridium acetobuthylicumが開発されており、メチル化処理されていないベクターも安定的に可能である(Dong H. et al., PLoS ONE 2010, 5 (2), e9038)。また、大腸菌BL21株の改良株であるNEB expressを用いてベクターを増幅して、メチル化されていないベクターを効率よく導入する手法が知られている(Leang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9)。
Clostridium属細菌における異種遺伝子発現のプロモーターとしては、例えばthl (thiolase)プロモーター(Perret S et al., J. Bacteriol. 2004, 186(1), 253-257)、Dha (glycerol dehydratase)プロモーター(Raynaud C. et al., PNAS 2003, 100(9), 5010-5015)、ptb (phosphotransbutyrylase)プロモーター (Desai RP et al., Appl. Environ. Microbiol. 1999, 65(3), 936-945)、adc (acetoacetate decarboxylase)プロモーター(Lee J et al., Appl. Environ. Microbiol. 2012, 78 (5), 1416-1423)等がある。ただし、本発明ではこれらに限定されることなく、宿主細胞等に見出される様々な代謝系のオペロンに使用されているプロモーター領域の配列が使用可能である。
またベクターを用いて複数種の遺伝子を宿主細胞に導入する場合、各遺伝子を1つのベクターに組み込んでもよいし、別々のベクターに組み込んでもよい。さらに1つのベクターに複数の遺伝子を組み込む場合には、各遺伝子を共通のプロモーターの下で発現させてもよいし、別々のプロモーターの下で発現させてもよい。複数種の遺伝子を導入する例としては、GPP合成酵素、NPP合成酵素、環式モノテルペン合成酵素をコードする各核酸に加えて、上記したアセチルCoA経路やメタノール経路で作用する酵素をコードする遺伝子を導入する態様が挙げられる。
以上のように、本発明で使用できる既知のベクターを示したが、プロモーター、ターミネーター等の転写制御、複製領域等に関わる領域を、目的に応じて改変することができる。改変方法としては各宿主細胞、もしくはその近縁種における天然の他の遺伝子配列に変更してもよく、また人工の遺伝子配列に変更してもよい。
また、以上の遺伝子導入による改変に加え、突然変異、ゲノムシャッフリング等の変異手法をも組み合わせることで、宿主細胞での導入遺伝子の発現量、宿主細胞の環式モノテルペンの排出機能、特定の環式モノテルペン耐性、等を向上させることにより、環式モノテルペンの生産性をさらに向上させることが可能となる。
すなわち、本発明においては、外来遺伝子を宿主細胞のゲノムに組み込んでもよいし、プラスミドに組み込んでもよい。
1つの好ましい実施形態では、組換え細胞が、少なくとも400mMの環式モノテルペンに対する耐性を有する。かかる構成により、環式モノテルペンの高生産が可能となる。このような特性を有する組換え細胞は、例えば、適宜の変異処理を宿主細胞に施して目的の特性を有する宿主細胞を選抜し、その宿主細胞を用いることにより得ることができる。
本発明の環式モノテルペンの生産方法の1つの様相では、上記した組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として用いて培養し、当該組換え細胞に環式モノテルペンを生産させる。炭素原として用いるこれらのC1化合物については、1つのみを用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのC1化合物は、主たる炭素原として用いることが好ましく、唯一の炭素原であることがより好ましい。
また、エネルギー源として水素(H2)を同時に提供することが好ましい。
本発明の組換え細胞を培養する方法としては特に限定はなく、宿主細胞の種類等に応じて適宜行うことができる。組換え細胞がClostridium属細菌(偏性嫌気性、絶対嫌気性)の場合には、例えば、生育に必要な無機塩類及び、合成ガスからなる栄養条件で培養する。好ましくは0.2〜0.3MPa(絶対圧)程度の加圧状態で培養する。さらには、初期増殖及び到達細胞密度を良好にするためには、ビタミン、酵母エキス、コーンスティープリカー、バクトトリプトン等の有機物を少量加えてよい。
なお、組換え細胞が好気性や通性嫌気性の場合には、例えば、液体培地を用いた通気・撹拌培養を行うことができる。
本発明の環式モノテルペンの生産方法の別の様相では、上記した組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該組換え細胞に前記C1化合物から環式モノテルペンを生産させる。すなわち、細胞分裂(細胞増殖)を伴うか否かにかかわらず、組換え細胞に前記したC1化合物を接触させて、環式モノテルペンを生産させることができる。例えば、固定化した組換え細胞に前記したC1化合物を連続的に供給し、環式モノテルペンを連続的に生産させることができる。
本様相においても、これらのC1化合物については、1つのみを用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。また、エネルギー源として水素(H2)を同時に接触させることが好ましい。
好ましい実施形態では、一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスを、前記組換え細胞に提供する。すなわち、これらのガスを炭素源として用いて組換え細胞を培養したり、あるいは、これらのガスを組換え細胞に接触させて、ガス中の一酸化炭素又は二酸化炭素から環式モノテルペンを生産させる。この場合も、水素はエネルギー源として使用される。
これらのC1化合物に加えて、さらにギ酸又はメタノールを前記組換え細胞に提供してもよい。すなわち、ギ酸又はメタノールとこれらのガスとを炭素源として用いて組換え細胞を培養したり、あるいは、ギ酸又はメタノールとこれらのガスとを組換え細胞に接触させる。ギ酸又はメタノールを添加することにより、培養効率及び環式モノテルペン生産の効率化が図られる。提供の態様としては、例えば、組み換え細胞に対して、ギ酸又はメタノールとこれらのガスを同時に提供することが挙げられる。
好ましい実施形態では、前記環式モノテルペン合成酵素はβ−フェランドレン合成酵素であり、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを生産させる。すなわち前述したように、β−フェランドレン合成酵素の作用により、GPP及び/又はNPPからβ−フェランドレンが合成され、また副産物として4−カレンやリモネンも合成され得る。
本発明の組換え細胞を培養することにより、環式モノテルペンを大量に生産することができる。環式モノテルペンの生産能力としては、湿潤菌体1gあたり環式モノテルペン10mg以上の生産量が実現可能である。例えば、組換え細胞の湿潤菌体1gあたり、10mg以上のβ−フェランドレン、6mg以上の4−カレン、2mg以上のリモネンを生産することができる。なお、本発明の組換え細胞を培養してβ−フェランドレンを生産する場合には、合成化学的手法で生産する場合と異なり、α−フェランドレンの混入は実質的に起こらない。
生産された環式モノテルペンは、細胞内に蓄積されるか、細胞外に放出される。例えば、上述したClostridium属細菌又はMoorella属細菌を宿主細胞とした組換え細胞を用い、細胞外に放出された環式モノテルペンを回収し、蒸留等によって単離精製することにより、純化された環式モノテルペンを取得することができる。
組換え細胞の培養物から環式モノテルペンを単離・精製する方法としては、例えば、培養液(培養上清)をペンタン等の適切な溶媒で抽出し、さらに逆相クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーによって高純度に精製することできる。細胞外に放出された環式モノテルペンの多くは、気相にも蒸発するため、コールドトラップ等でこれらを液化し、回収することも可能である。
なお、二酸化炭素に代えて重炭酸塩を用いることができる場合がある。すなわち、Clostridium属細菌及びその近縁種は、炭酸脱水素酵素(Carbonic anhydrase, CA)(EC 4.2.1.1: H2O+CO2 ⇔ HCO3 -+H+)を有することが知られており(Braus-Stromeyer SA et al., J. Bacteriol. 1997, 179(22), 7197-7200)、CO2源として、HCO3 -源となるNaHCO3等の重炭酸塩を用いることができる。
ここで、宿主細胞がアセチルCoA経路とメタノール経路(図1)を有している場合において、組換え細胞に提供され得る一酸化炭素、二酸化炭素、ギ酸、及びメタノールの組み合わせについて説明する。
アセチルCoA経路によるアセチルCoA合成では、メチルトランスフェラーゼ(Methyltransferase)、コリノイド鉄−硫黄タンパク質(Corrinoid iron-sulfur protein、CoFeS−P)、アセチルCoAシンターゼ(Acetyl-CoA synthase、ACS)、及びCODHの作用による、CoA、メチルテトラヒドロ葉酸(methyltetrahydrofolate、[CH3]−THF)、及びCOからのアセチルCoAの合成過程が必須である(Ragsdale SW et al., B.B.R.C. 2008, 1784(12), 1873-1898)。
一方、Butyribacterium methylotrophicumの培養において、炭素源としてCOやCO2以外にギ酸やメタノールを添加することは、CO代謝すなわち、アセチルCoA経路のメチルブランチ(Methyl branch)におけるテトラヒドロ葉酸(tetrahydrofolate、THF)含量、及び、CO代謝で必要とされるCODH、ギ酸デヒドロゲナーゼ(formate dehydrogenase、FDH)及びヒドロゲナーゼ(hydrogenase)の活性を増大させることが知られている(Kerby R. et al., J. Bacteriol. 1987, 169(12), 5605-5609)。Eubacterium limosum等においても、嫌気条件下CO2及びメタノールを炭素源とした場合でも、高い増殖を得ることが示されている(Genthner BRS. et al., Appl. Environ. Microbiol., 1987, 53(3), 471-476)。
これらのメタノールの合成ガス資化性微生物へ影響、及びMoorella thermoacetica(Clostridium thermoaceticum)及びClostridium ljungdahlii等のゲノム解析(Pierce E. et al., Environ. Microbiol. 2008, 10(10), 2550-2573; Durre P. et al., PNAS 2010, 107(29), 13087-13092)の結果から、これらの微生物種では、図1に示されるようなメタノール経路(methanol pathway)がアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)にメチル基のドナーとして関与することが説明できる。
また実際に、いくつかのClostridium属菌ではギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)(EC 1.2.1.2/1.2.1.43:Formate+NAD(P)+ ⇔ CO2+NAD(P)H)の正方向の活性(FormateからのCO2形成)が確認されている(Liu CL et al., J. Bacteriol. 1984, 159(1), 375-380; Keamy JJ et al., J. Bacteriol. 1972, 109(1), 152-161)。このことから、これらの株ではCO2やCOが欠乏状態にある場合、部分的にメタノール(CH3OH)やギ酸(HCOOH)からCO2の生成方向の反応が働くことができる(図1)。このことは、前述したCH3OHを加えることによる、ギ酸ヒドロゲナーゼ(formatede hydrogenase)活性、及びCODHの活性増大の現象 (Kerby R et al., J. Bateriol. 1987, 169(12), 5605-5609)からも説明できる。すなわち、ギ酸(HCOOH)もしくはメタノール(CH3OH)を唯一の炭素源としても増殖可能である。
宿主細胞が、元々、ギ酸デヒドロゲナーゼの正方向の活性を有しない株であっても、変異導入、外来遺伝子導入、もしくはゲノムシャッフリングのような遺伝子改変によって、正方向の活性を付与させればよい。
以上のことから、宿主細胞がアセチルCoA経路とメタノール経路を有している場合には、以下のガスや液体を用いて、環式モノテルペンを生産することができる。
・CO
・CO2
・CO/H2
・CO2/H2
・CO/CO2/H2
・CO/HCOOH
・CO2/HCOOH
・CO/CH3OH
・CO2/CH3OH
・CO/H2/HCOOH
・CO2/H2/HCOOH
・CO/H2/CH3OH
・CO2/H2/CH3OH
・CO/CO2/H2/HCOOH
・CO/CO2/H2/CH3OH
・CH3OH/H2
・HCOOH/H2
・CH3OH
・HCOOH
なお、本発明の組換え細胞について、環式モノテルペンの生産を目的とせず、専ら細胞を増やす目的で培養する場合には、一酸化炭素や二酸化炭素を炭素源として用いる必要はない。例えば糖類やグリセリンといった他の炭素源を用いて、組換え細胞を培養すればよい。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
本実施例では、環式モノテルペンの一種であるβ−フェランドレンを、合成ガス資化細菌の一種であるClostridium ljungdahliiの組換え細胞によって生産した。
(1)各種ベクターの構築
β−フェランドレン合成酵素遺伝子を含む遺伝子クラスターとして、配列番号9(3125bp)と配列番号10(3611bp)で表される人工合成遺伝子をそれぞれ構築した。配列番号9、10はいずれもトマト由来β−フェランドレン合成酵素遺伝子(GenBank Accession No.: FJ797957)の改変配列とT7ターミネーターを含み、さらに、両末端にBamHIとXhoIの認識配列を含む。また、配列番号9はトマト由来NPP合成酵素遺伝子(GenBank Accession No.: FJ797956)の改変配列を含む。一方、配列番号10は、シロイヌナズナ由来GPP合成酵素遺伝子(配列番号5、GenBank Accession No: Y17376)を含む。
Clostridium/E. coliシャトルベクターpSOS95(GenBank: AY187686.1)のBamHI/EheIサイトに配列番号11の人工合成DNA(120bp)をクローニングし、pSOS-MSとした。さらに、pSOS-MSのBamHI/XhoIサイトに、配列番号9の人工合成遺伝子をBamHI/XhoIで制限酵素処理した遺伝子断片をクローニングし、pSOS-PHS-NPPとした。また同様にpSOS-MSのBamHI/XhoIサイトに配列番号10の人工合成遺伝子をクローニングしたものをpSOS-PHS-GPPとした。pSOS-PHS-NPP、pSOS-PHS-GPPはpSOS95と同様にシャトルベクターとして機能する。これらのクローニングの際にはNEB express(New England Biolabs社)を用いた。
(2)β−フェランドレン生産能を有する組換え体の作製
上記(1)で作製したpSOS-PHS-NPPとpSOS-PHS-GPPを、それぞれエレクトロポレーションにてClostridium ljungdahlii(DSM13528/ATCC55383)に導入し、組換え体を取得した。コントロールとして、pSOS-MSを同様にしてClostridium ljungdahlii(DSM13528/ATCC55383)に導入し、組換え体を取得した。エレクトロポレーションは、Appl. Environ. Microbiol. 2013, 79(4):1102-9で推奨されている方法によって行った。
(3)β−フェランドレン生産
上記(2)で取得したpSOS-PHS-NPPとpSOS-PHS-GPPの各組換え体を、それぞれ37℃、嫌気条件下で培養した。培地として、4μg/mLクラリスロマイシンを含有するATCC medium 1754 PETC培地(ただし、フルクトース非含有)を用いた。27mL容の密閉可能なヘッドスペースバイアル容器に10mLの培地を仕込み、CO/CO2/H2=33/33/34%(体積比)の混合ガスを0.25MPa(絶対圧)のガス圧で充填し、アルミキャップで密封した後、振とう培養した。OD600が0.9に到達した時点で培養を終了し、気相をガスクロマトグラフィー(島津GCMS-QP2010 Ultra)にて分析したところ、それぞれβ−フェランドレンが検出された。またpSOS-PHS-NPP組換え体からは、pSOS-PHS-GPP組換え体の培地の2〜6倍程度のβ−フェランドレンが検出された。また、pSOS-PHS-NPPにおいてβ−フェランドレンに加えて、環式モノテルペンである4−カレンが、β−フェランドレンの約60%、リモネンが、約20%検出された。
一方、pSOS-MSベクターのみを導入したコントロールの組換え体では、β−フェランドレンは検出できなかった。
以上のことから、トマト由来NPP合成酵素遺伝子、あるいはシロイヌナズナ由来GPP合成酵素遺伝子とトマト由来β−フェランドレン合成酵素遺伝子を導入したClostridium ljungdahliiの組換え体を、炭素源としてCO、CO2を用いて培養することにより、β−フェランドレンを生産できることが示された。さらにトマト由来NPP合成酵素遺伝子と、トマト由来β−フェランドレン合成酵素遺伝子を組み合わせることで、効率よくβ−フェランドレン生産がなされることが示された。

Claims (33)

  1. 環式モノテルペンを生産可能な組換え細胞であって、
    非メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能を有する宿主細胞、又はメチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞に、ゲラニル二リン酸合成酵素をコードする核酸及びネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸からなる群より選ばれた少なくとも1つの核酸と、環式モノテルペン合成酵素をコードする核酸とが導入されてなるものであり、
    これらの核酸が前記宿主細胞内で発現し、
    一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物から環式モノテルペンを生産可能である組換え細胞。
  2. 一酸化炭素脱水素酵素を有するものである請求項1に記載の組換え細胞。
  3. 前記宿主細胞は、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌である請求項1又は2に記載の組換え細胞。
  4. 前記宿主細胞は、Clostridium ljungdahlii又はClostridium autoethanogenumである請求項3に記載の組換え細胞。
  5. 一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスから環式モノテルペンを生産可能である請求項1〜4のいずれかに記載の組換え細胞。
  6. ゲラニル二リン酸合成酵素をコードする核酸は、下記(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードするものである請求項1〜5のいずれかに記載の組換え細胞。
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
  7. ネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸は、下記(d)、(e)又は(f)のタンパク質をコードするものである請求項1〜6のいずれかに記載の組換え細胞。
    (d)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (e)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
    (f)配列番号4で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
  8. 前記環式モノテルペン合成酵素はβ−フェランドレン合成酵素であり、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを生産可能である請求項1〜7のいずれかに記載の組換え細胞。
  9. 少なくともネリル二リン酸合成酵素をコードする核酸が導入されたものである請求項8に記載の組換え細胞。
  10. β−フェランドレン合成酵素をコードする核酸は、下記(g)、(h)又は(i)のタンパク質をコードするものである請求項8又は9に記載の組換え細胞。
    (g)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
    (h)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質、
    (i)配列番号6又は8で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質。
  11. メバロン酸経路で作用する酵素群をコードする核酸がさらに導入され、メバロン酸経路によるイソペンテニル二リン酸合成能をさらに有する請求項1〜10のいずれかに記載の組換え細胞。
  12. 前記メバロン酸経路は、酵母、原核生物、又は放線菌のメバロン酸経路である請求項11に記載の組換え細胞。
  13. 非メバロン酸経路で作用する少なくとも1つの酵素をコードする核酸がさらに導入され、当該核酸が宿主細胞内で発現する請求項1〜12のいずれかに記載の組換え細胞。
  14. 前記非メバロン酸経路は、宿主細胞以外の非メバロン酸経路である請求項13に記載の組換え細胞。
  15. 宿主細胞に導入された核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれている請求項1〜14のいずれかに記載の組換え細胞。
  16. 宿主細胞に導入された核酸は、プラスミドに組み込まれている請求項1〜14のいずれかに記載の組換え細胞。
  17. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上の環式モノテルペンを生産可能である請求項1〜16のいずれかに記載の組換え細胞。
  18. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上のβ−フェランドレンを生産可能である請求項17に記載の組換え細胞。
  19. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり6mg以上の4−カレンを生産可能である請求項17に記載の組換え細胞。
  20. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり2mg以上のリモネンを生産可能である請求項17に記載の組換え細胞。
  21. 請求項1〜20のいずれかに記載の組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として用いて培養し、当該組換え細胞に環式モノテルペンを生産させる環式モノテルペンの生産方法。
  22. 請求項1〜20のいずれかに記載の組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該組換え細胞に前記C1化合物から環式モノテルペンを生産させる環式モノテルペンの生産方法。
  23. 一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスを、前記組換え細胞に提供する請求項21又は22に記載の環式モノテルペンの生産方法。
  24. さらに、ギ酸又はメタノールを前記組換え細胞に提供する請求項23に記載の環式モノテルペンの生産方法。
  25. 組換え細胞は、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌を宿主細胞とするものである請求項21〜24のいずれかに環式モノテルペンの生産方法。
  26. 前記環式モノテルペン合成酵素はβ−フェランドレン合成酵素であり、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを生産させる請求項21〜25のいずれかに環式モノテルペンの生産方法。
  27. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上の環式モノテルペンを生産させる請求項21〜26のいずれかに記載の環式モノテルペンの生産方法。
  28. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり10mg以上のβ−フェランドレンを生産させる請求項27に記載の環式モノテルペンの生産方法。
  29. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり6mg以上の4−カレンを生産させる請求項27に記載の環式モノテルペンの生産方法。
  30. 組換え細胞の湿潤菌体1gあたり2mg以上のリモネンを生産させる請求項27に記載の環式モノテルペンの生産方法。
  31. 組換え細胞の細胞外に放出された環式モノテルペンを回収する請求項21〜30のいずれかに記載の環式モノテルペンの生産方法。
  32. 組換え細胞の培養系の気相から環式モノテルペンを回収する請求項21〜31のいずれかに記載の環式モノテルペンの生産方法。
  33. 二酸化炭素に代えて、重炭酸塩を用いる請求項21〜32のいずれかに記載の環式モノテルペンの生産方法。
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