JP6470532B2 - 組換え細胞、並びに、有機化合物の生産方法 - Google Patents

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本発明は、一酸化炭素等の特定のC1化合物から炭素数4以上の有機化合物を生産可能な組換え細胞、及び当該組換え細胞を用いる炭素数4以上の有機化合物の生産方法に関する。
合成ガス(Synthesis gas, Syngas)は、廃棄物、天然ガス、及び石炭から高温・高圧下で金属触媒の作用によって効率よく得られる、一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素を主成分とする混合ガスである。合成ガスを起点とする金属触媒によるC1ケミストリーの分野では、メタノール、ギ酸、ホルムアルデヒド等の液状の化学品を安価かつ大量に生産するプロセスが開発されている。
そして、一酸化炭素や二酸化炭素は、廃棄物由来の合成ガスや工場排ガス、または天然ガス由来の合成ガスに含まれており、ほぼ永久的に利用可能である。しかしながら、これらを炭素源とした微生物による化学品生産の例は、極めて少ないのが現状である。現在のところ、開発が進んでいるのは、エタノール、2,3−ブタンジオール等の生産のみである。特に、組換え体による合成ガス資化性物の利用に関する報告は少ない。特許文献1には、大腸菌の組換え体によるイソプロパノールの生産技術が開示されている。この技術では、大腸菌に複数のCO代謝酵素遺伝子を導入して合成ガス資化能を付与し、合成ガスからイソプロパノールを生産している。
Clostridium属細菌やMoorella属細菌には、合成ガスに含まれる一酸化炭素や二酸化炭素を同化できる合成ガス資化細菌が知られている。この合成ガス資化細菌は、一酸化炭素と水から二酸化炭素とプロトンを生成させる作用、及びその逆反応である二酸化炭素とプロトンから一酸化炭素と水を生成させる作用を有する一酸化炭素脱水素酵素(例えば、EC 1.2.99.2/1.2.7.4)(一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、CO dehydrogenase、CODH)を有することが知られている。一酸化炭素脱水素酵素はアセチルCoA経路(図1)で作用する酵素の1つである。
アセチルCoA経路で合成されたアセチルCoAは、酢酸、アセトアルデヒド、エタノールなどに代謝される。特に、増殖定常期の過剰アセチルCoAの大部分はエタノールに変換され、このときに還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が消費される。アセチルCoAからアセトアルデヒド、アセトアルデヒドからエタノールが生成される過程では、いずれもNADHが消費され、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)が生成される。また、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドのアデノシンのヌクレオチドの2’位にリン酸基が付属したニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸にも、同様に還元型(NADPH)と酸化型(NADP)があり、脱水素酵素の補酵素として働くことが知られる。細胞内でのNAD(P)H/NAD(P)バランスは生育に影響を及ぼす。非特許文献1では、Clostridium acetbutylicumはグリセロール代謝ではNADPH過剰となり生育できないこと、またNADPHを消費する1,3-propanediol NADP-dependent dehydrogenase (YqhD)合成酵素の遺伝子を導入することで生育が可能となり、同時に1,3−プロパンジオールを合成することが示されている。
組換え体によって一酸化炭素等の特定のC1化合物からC4以上の有機化合物を生産する試みの報告はいくつかなされている。特許文献2、3ではイソプレン合成遺伝子に加えNAD(P)H消費経路であるメバロン酸経路(MVA経路ともいう)の遺伝子を導入したClostridium属細菌でイソプレン合成を試みた例が示されている。しかし、いずれの場合もイソプレンの生産量は極めて少ない。
特許文献4には、一酸化炭素等の特定のC1化合物からイソプレンを生産可能な組換え細胞が開示されている。そして、Clostridium属細菌の組換え体を用いて、合成ガスからイソプレンを生産した例が開示されている。
メバロン酸経路は、イソペンテル二リン酸(IPP)およびジメチルアリル二リン酸(DMAPP)を合成する経路であり、テルペン、ステロイドといった産業上利用される化合物の合成起点となる。
テルペンは、イソプレンを構成単位とする一群の炭化水素である。テルペンには、イソプレン(炭素数5)、モノテルペン(炭素数10)、セスキテルペン(炭素数15)、ジテルペン(炭素数20)、トリテルペン(炭素数30)が含まれる。イソプレンは合成ポリイソプレンのモノマー原料であり、特にタイヤ業界において重要な素材である。環式モノテルペンでは、β−ピネン(β-Pinene)、α−ピネン(α-Pinene)、リモネン、α−フェランドレン(α-Phellandrene)等が、接着剤や透明樹脂等のモノマー原料として検討されている(非特許文献3)。セスキテルペンの一種であるファルネセンは、タイヤ原材料として注目されている(特許文献5)。トリテルペンでは、カンゾウの抽出物として知られるグリチルリチン酸などが知られている。
特表2011−509691号公報 国際公開第2013/181647号 国際公開第2013/180584号 国際公開第2014/065271号 国際公開第2013/047348号
Tang X, Tan Y, Zhu H, Zhao K, Shen W., Appl Environ Microbiol. 2009 Mar;75(6):1628-34. doi: 10.1128/AEM.02376-08. Epub 2009 Jan 9. Kiriukhin M, Tyurin M., Bioprocess Biosyst Eng. 2014 Feb;37(2):245-60. doi: 10.1007/s00449-013-0991-6. Epub 2013 Jun 18 Schilmiller, A. L., et al., Proc Natl Acad Sci U S A., 2009,
上記のように、組換え体を用いて合成ガスからイソプレン等の有機化合物を生産させる技術開発が進められているが、生産性をさらに向上させる技術が求められる。そこで本発明は、合成ガスなどのC1炭素源から、組換え体を用いてC4以上の有機化合物を高効率で取得するための一連の技術を提供することを目的とする。
上記した課題を解決するための本発明の1つの様相は、炭素数が4以上の有機化合物を生産可能な組換え細胞であって、メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞に、外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子が導入されてなるものであり、かつ当該遺伝子が前記宿主細胞内で発現し、前記宿主細胞が有する内在性NAD(P)H消費経路の少なくとも1つは、その発現が下方制御されており、かつ前記内在性NAD(P)H消費経路は前記外来性NAD(P)H消費経路とは異なるものであり、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つから、前記外来性NAD(P)H消費経路を介して、炭素数が4以上の有機化合物を生産可能である組換え細胞である。
本発明は、炭素数が4以上の有機化合物を生産可能な組換え細胞に係るものである。本発明の組換え細胞は、「メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能」を有する細胞を宿主細胞とする。そして、当該宿主細胞に「外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子」が導入されてなるもので、かつこれらの遺伝子が宿主細胞内で発現する。すなわち、本発明の組換え細胞では、宿主細胞に対してNAD(P)H消費経路が新たに付加又は増強されている。
さらに本発明の組換え細胞では、宿主細胞が有する内在性NAD(P)H消費経路の少なくとも1つの発現が下方制御されており、かつ該内在性NAD(P)H消費経路は前記外来性NAD(P)H消費経路とは異なるものである。
そして本発明の組換え細胞は、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つから、前記外来性NAD(P)H消費経路を介して、炭素数が4以上の有機化合物を生産可能である。
本発明の組換え細胞では、NAD(P)H消費経路のうち、前記有機化合物の生産に関わらない内在性NAD(P)H消費経路の発現が下方制御されているので、NAD(P)Hが前記有機化合物の生産に関わる前記外来性NAD(P)H経路に対して優先的に供給される。そのため、前記有機化合物の生産が効率的に行われる。例えば本発明の組換え細胞を培養することにより、炭素数が4以上の有機化合物を大量に生産することができる。
本発明における宿主細胞である「メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能」を有する細胞としては、図1に示すアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)及びメタノール経路(Methanol pathway)を有する嫌気性微生物が例示される。
NAD(P)Hとは、NADH又はNADPHを指す。同様に、NAD(P)とは、NAD又はNADPを指す。
NAD(P)H消費経路とは、NAD(P)HからNAD(P)への変換を伴い、NAD(P)Hが消費される経路を指す。外来性NAD(P)H消費経路とは、宿主細胞に対して外から導入したNAD(P)H消費経路を指す。内在性NAD(P)H消費経路とは、宿主細胞が本来的に有しているNAD(P)H消費経路を指す。
遺伝子発現の下方制御とは、遺伝子の発現量を減少させる制御、および遺伝子の機能を欠損させる制御を指す。遺伝子発現の下方制御の例としては、遺伝子ノックアウトや遺伝子ノックダウンが挙げられる。さらに遺伝子ノックアウトには、遺伝子そのものの欠失が含まれる。
好ましくは、前記宿主細胞は、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌である。
好ましくは、前記宿主細胞は、Clostridium ljungdahlii、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium ragsdalei、Clostridium kluyveri、又はMoorella thermoaceticaである。
好ましくは、前記外来性NAD(P)H消費経路は、メバロン酸経路である。
かかる構成により、イソペンテニル二リン酸(IPP)及びジメチルアリル二リン酸(DMAPP)の合成能が向上する。
好ましくは、前記メバロン酸経路は、酵母、原核生物、又は放線菌のメバロン酸経路である。
好ましくは、前記メバロン酸経路は、放線菌のメバロン酸経路である。
好ましくは、前記メバロン酸経路のHMG−CoAリダクターゼとして、NADH依存性のHMG−CoAリダクターゼを含む。
好ましくは、前記HMG−CoAリダクターゼは、Pseudomonas mevalonii由来mvaA (P13702)、Methanocella conradii由来hmgA-1Mtc_0274(H8I942)、Lactococcus lactis subsp. lactis (strain KF147)由来mvaA LLKF_1694(D2BKK7)、又はStreptococcus sanguinis (strain SK36)由来mvaA SSA_0337 (A3CKT9)である。
好ましくは、前記内在性NAD(P)H消費経路において、エタノール脱水素酵素、アセトアルデヒド脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、及び2,3ブタンジオール脱水素酵素からなる群より選ばれた少なくとも1つの発現が下方制御されている。
Clostridium属細菌等における内在性NAD(P)H消費経路として、アセトアルデヒドからエタノールへの変換、アセチルCoAからアセトアルデヒドへの変換、ピルビン酸から乳酸への変換、及びピルビン酸から2,3ブタンジオールへの変換、を行う各経路が挙げられる。そして本様相では、これらの内在性NAD(P)H消費経路で働く酵素の発現が下方制御されている。
好ましくは、前記内在性NAD(P)H消費経路において、少なくともエタノール脱水素酵素の発現が下方制御されている。
好ましくは、前記内在性NAD(P)H消費経路において、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素の発現が下方制御されている。
好ましくは、前記内在性NAD(P)H消費経路において、さらに乳酸脱水素酵素又は2,3ブタンジオール脱水素酵素の発現が下方制御されている。
好ましくは、前記下方制御の少なくとも1つは、発現の欠失である。
好ましくは、エタノール脱水素酵素及び/又はアセトアルデヒド脱水素酵素の発現が欠失している。
好ましくは、相同組換えにより、エタノール脱水素酵素及び/又はアセトアルデヒド脱水素酵素をコードする遺伝子に代わって、前記メバロン酸経路を発現させる遺伝子がゲノムに組み込まれている。
好ましくは、さらにホスホトランスアセチラーゼ及び/又は酢酸キナーゼの発現が下方制御されている。
ホスホトランスアセチラーゼと酢酸キナーゼは、アセチルCoAから酢酸へ変換する経路で働く酵素である。本様相によれば、アセチルCoAの無駄な消費が抑制される。
好ましくは、少なくともホスホトランスアセチラーゼの発現が下方制御されている。
好ましくは、前記下方制御の少なくとも1つは、遺伝子の欠失又は遺伝子発現制御領域の改変により行われる。
好ましくは、前記外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子として、メバロン酸経路を発現させる遺伝子とイソペンテニル二リン酸からイソプレンを生成させる酵素をコードする遺伝子とを含む遺伝子クラスターが導入されており、前記有機化合物としてイソプレンを生産可能である。
かかる構成により、イソプレンを大量生産可能な組換え細胞が提供される。
好ましくは、前記イソペンテニル二リン酸からイソプレンを生成させる酵素が、イソプレン合成酵素である。
好ましくは、前記外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子として、メバロン酸経路を発現させる遺伝子とイソペンテニル二リン酸から環式テルペンを生成させる酵素をコードする遺伝子とを含む遺伝子クラスターが導入されており、前記有機化合物として環式テルペンを生産可能である。
かかる構成により、環式テルペンを大量生産可能な組換え細胞が提供される。
好ましくは、前記イソペンテニル二リン酸から環式テルペンを生成させる酵素は、ゲラニル二リン酸合成酵素及び/又はネリル二リン酸合成酵素、並びに、環式モノテルペン合成酵素であり、前記有機化合物として環式モノテルペンを生産可能である。
好ましくは、前記環式モノテルペン合成酵素はβ−フェランドレン合成酵素であり、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを生産可能である。
本様相によれば、細胞内で発現されたβ−フェランドレン合成酵素の作用によって、ゲラニル二リン酸(GPP)及び/又はネリル二リン酸(NPP)からβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンが合成される。その結果、本発明の組換え細胞を培養することにより、β−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンを大量に生産することができる。
好ましくは、前記遺伝子クラスターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれている。
好ましくは、宿主細胞のadhE1遺伝子及びadhE2遺伝子の一部又は全部が欠失しており、相同組換えにより、前記adhE1遺伝子及びadhE2遺伝子に代わって、前記遺伝子クラスターがゲノムに組み込まれている。
adhE1遺伝子とadhE2遺伝子はClostridium属細菌等が有する遺伝子であり、いずれもアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子とエタノール脱水素酵素遺伝子の両方を含んでいると考えられている。
本発明の他の様相は、上記の組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として用いて培養し、当該組換え細胞に炭素数が4以上の有機化合物を生産させる有機化合物の生産方法である。
本様相は、炭素数が4以上の有機化合物の生産方法に係るものである。本様相では、上記した組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として培養することにより、当該組換え細胞に前記有機化合物を生産させる。本様相によれば、例えば、一酸化炭素や二酸化炭素を含む合成ガスから前記有機化合物を生産することができる。
本発明の他の様相は、上記の組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該組換え細胞に前記C1化合物から炭素数が4以上の有機化合物を生産させる有機化合物の生産方法である。
本様相では、上記した組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該C1化合物から炭素数が4以上の有機化合物を生産させる。本様相によっても、例えば、一酸化炭素や二酸化炭素を含む合成ガスから前記有機化合物を生産することができる。
好ましくは、一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスを、前記組換え細胞に提供する。
「組換え細胞にガスを提供する」とは、炭素源等としてガスを組換え細胞に与える、あるいは、組換え細胞にガスを接触させる、という意味である。
好ましくは、さらに、ギ酸又はメタノールを前記組換え細胞に提供する。
「組換え細胞にガスとメタノールを提供する」とは、炭素源等としてガスとメタノールを組換え細胞に与える、あるいは、組換え細胞にガスとメタノールを接触させる、という意味である。ギ酸についても同様である。
好ましくは、組換え細胞は、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌を宿主細胞とするものである。
好ましくは、組換え細胞の細胞外に放出された前記有機化合物を回収する。
好ましくは、組換え細胞の培養系の気相から前記有機化合物を回収する。
二酸化炭素に代えて、重炭酸塩を用いてもよい。
本発明によれば、組換え体による外来性NAD(P)H消費経路を介した炭素数4以上の有機化合物の生産を、高効率で行うことができる。特に、外来性NAD(P)H消費経路としてメバロン酸経路を導入した構成によれば、組換え体によるイソプレンや環式モノテルペンの生産を高効率で行うことができる。
アセチルCoA経路とメタノール経路を表す説明図である。 メバロン酸経路が導入されたClostridium属細菌又はMoorella属細菌における中心代謝経路の一部を示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明において「遺伝子」という用語は、全て「核酸」あるいは「DNA」という用語に置き換えることができる。
本発明の組換え細胞は、NAD(P)H消費経路を介して炭素数4以上(C4以上)の有機化合物を生産可能なものである。本発明の組換え細胞は、メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する宿主細胞に、外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子が導入されてなるものであり、かつ当該遺伝子が前記宿主細胞内で発現し、前記宿主細胞が有する内在性NAD(P)H消費経路の少なくとも1つは、その発現が下方制御されており、かつ前記内在性NAD(P)H消費経路は前記外来性NAD(P)H消費経路とは異なるものであり、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つから、前記外来性NAD(P)H消費経路を介して、炭素数が4以上の有機化合物を生産可能なものである。
まず、宿主細胞について説明する。本発明の組換え細胞における宿主細胞は、メチルテトラヒドロ葉酸、一酸化炭素、及びCoAからアセチルCoAを合成する機能を有する。メチルテトラヒドロ葉酸([CH3]−THF)、一酸化炭素(CO)、及びCoAからアセチルCoAを合成する経路は、例えば、図1に示すアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)とメタノール経路(Methanol pathway)に含まれている。
図1に示すように、アセチルCoA経路では、二酸化炭素(CO2)が2つの経路で別々に、一酸化炭素(CO)とメチルカチオン源に還元される。そして、これら2つの炭素源を基質としてCoA(図1ではHSCoAと表記)のチオール基がアセチル化され、1分子のアセチルCoAが合成される。アセチルCoA経路では、アセチルCoAシンターゼ(Acetyl-CoA synthase、ACS)、メチルトランスフェラーゼ(Methyltransferase)、一酸化炭素脱水素酵素(CODH)、ギ酸デヒドロゲナーゼ(Formate dehydrogenase、FDH)、等の酵素が作用している。なお、ホルミルテトラヒドロ葉酸([CHO]−THF)から[CH3]−THFに至る経路は、メチルブランチ(Methyl branch)と呼ばれる。
一方、メタノール経路は、メタノールをホルムアルデヒド(HCHO)、さらにギ酸(HCOOH)に変換する経路と、メタノールから[CH3]−THFを誘導する経路を含んでいる。
すなわち、メチルテトラヒドロ葉酸([CH3]−THF)、一酸化炭素(CO)、及びCoAからアセチルCoAを合成する経路は、アセチルCoA経路とメタノール経路とで共通している。
前記宿主細胞の例としては、Clostridium属細菌やMoorella属細菌等の嫌気性微生物が挙げられる。例えば、Clostridium ljungdahlii、Clostridium autoethanogenum、Clostridium carboxidivorans、Clostridium ragsdalei(Kopke M. et al., Appl. Environ. Microbiol. 2011, 77(15), 5467-5475)、Clostridium kluyveri、Moorella thermoacetica(Clostridium thermoaceticumと同じ) (Pierce EG. Et al., Environ. Microbiol. 2008, 10, 2550-2573)、等のClostridium属細菌やMoorella属細菌が、具体例として挙げられる。特に、Clostridium属細菌は、宿主−ベクター系や培養方法が確立しており、本発明における宿主細胞として好適である。
その他、Acetobacterium woodii(Dilling S. et al., Appl. Environ. Microbiol. 2007, 73(11), 3630-3636)等のAcetobacterium属細菌が、前記宿主細胞の例として挙げられる。さらに、Carboxydocella sporoducens sp. Nov. (Slepova TV. et al., Inter. J. Sys. Evol. Microbiol. 2006, 56, 797-800)、Rhodopseudomonas gelatinosa(Uffen RL, J. Bacteriol. 1983, 155(3), 956-965)、Eubacterium limosum (Roh H. et al., J. Bacteriol. 2011, 193(1), 307-308),Butyribacterium methylotrophicum (Lynd, LH. Et al., J. Bacteriol. 1983, 153(3), 1415-1423)等の細菌も、前記宿主細胞の例として挙げられる。
なお本発明の組換え細胞は、一酸化炭素脱水素酵素(CODH)を有するものであってもよい。詳細には、主に一酸化炭素代謝、すなわち一酸化炭素脱水素酵素の働きにより、一酸化炭素と水から二酸化炭素とプロトンを発生する機能によって生育する細胞が好ましい。前記したアセチルCoA経路とメタノール経路を有する嫌気性微生物は、一酸化炭素脱水素酵素(CODH)を有している。
なお、上記した細菌の増殖及びCODH活性は全て酸素感受性であるが、酸素非感受性のCODHも知られている。例えば、Oligotropha carboxidovorans (Schubel, U. et al., J. Bacteriol., 1995, 2197-2203)、Bradyrhizobium japonicum (Lorite MJ. Et al., Appl. Environ. Microbiol., 2000, 66(5), 1871-1876)を始め、その他のバクテリア種には酸素非感受性のCODHが存在する(King GM et al., Appl. Environ. Microbiol. 2003, 69 (12), 7257-7265)。好気性水素酸化細菌であるRalsotonia属菌にも酸素非感受性のCODHが存在する (NCBI Gene ID: 4249199, 8019399)。
このように、CODHを有する細菌は広く存在しており、その中から本発明で用いる宿主細胞を適宜選択することができる。例えば、CO、CO/H2(COとH2を主成分とするガス)、もしくはCO/CO2/H2(COとCO2とH2を主成分とするガス)を唯一の炭素源かつエネルギー源とした選択培地を用い、嫌気、微好気、もしくは好気的条件で、宿主細胞として利用できるCODHを有する細菌を分離することができる。
上記したように、NAD(P)H消費経路とは、NAD(P)HからNAD(P)への変換を伴い、NAD(P)Hが消費される経路を指す。NAD(P)H消費経路の例としては、NAD(P)Hが脱水素酵素の補酵素として働く経路が挙げられる。
本発明の組換え細胞は、外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子が導入されており、かつ当該遺伝子が発現する。好ましい態様では、宿主細胞がClostridium属細菌又はMoorella属細菌であり、外来性NAD(P)H消費経路がメバロン酸経路である。
一般に、イソペンテニル二リン酸(IPP)の合成経路は、メバロン酸経路(MVA経路)と非メバロン酸経路(MEP経路)の2つに大別される。このうち、メバロン酸経路は真核生物が備えているものであり、アセチルCoAを出発物質としている。メバロン酸経路で作用する酵素としては、上流から順に、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、5−ホスホメバロン酸キナーゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、イソペンテニル二リン酸イソメラーゼが挙げられる。
メバロン酸経路を介してアセチルCoAからIPPが合成される際に、NAD(P)Hが消費される。
メバロン酸経路を発現させる遺伝子とは、これらの酵素をコードしており、その発現によりアセチルCoAからIPPを合成させる遺伝子である。
なお、メバロン酸経路は全ての真核生物が保有しているが、原核生物でも見出されている。原核生物でメバロン酸経路を有するものとしては、放線菌では、Streptomyces sp. Strain CL190 (Takagi M. et al., J. Bacteriol. 2000, 182 (15), 4153-7)、Streptomyces griseolosporeus MF730-N6 (Hamano Y. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 2001, 65(7), 1627-35)が挙げられる。
細菌では、Lactobacillus helvecticus (Smeds A et al., DNA seq. 2001, 12(3), 187-190)、Corynebacterium amycolatum、Mycobacterium marinum、Bacillus coagulans、Enterococcus faecalis、Streptococuss agalactiae、Myxococcus xanthus等が挙げられる(Lombard J. et al., Mol. Biol. Evol. 2010, 28(1), 87-99)。
アーキアでは、Aeropyrum属、Sulfolobus属、Desulfurococcus属、Thermoproteus属、Halobacterium属、Methanococcus属、Thermococcus属、Pyrococcus属、Methanopyrus属、Thermoplasma属等が挙げられる(Lombard J. et al., Mol. Biol. Evol. 2010, 28(1), 87-99)。
本発明において、宿主細胞に導入されるメバロン酸経路の由来としては特に限定はないが、酵母、原核生物、又は放線菌のメバロン酸経路が好ましく、放線菌のメバロン酸経路が特に好ましい。
なお、HMG−CoAリダクターゼには、NADPH依存性(EC1.1.1.34)とNADH依存性(EC1.1.1.88)の2種が存在する。放線菌のHMG−CoAリダクターゼはNADPH依存性ではあるが、本発明では目的に応じてNADH依存性のものも使用できる。NADH依存性のHMG−CoAリダクターゼとしては、Pseudomonas mevalonii由来mvaA (P13702 )、Methanocella conradii由来hmgA-1Mtc_0274(H8I942)、Lactococcus lactis subsp. lactis (strain KF147)由来mvaA LLKF_1694(D2BKK7)、Streptococcus sanguinis (strain SK36)由来mvaA SSA_0337 (A3CKT9)、等がある。
本発明の組換え細胞においては、前記外来性NAD(P)H消費経路とは異なる内在性NAD(P)H消費経路の少なくとも1つは、その発現が下方制御されている。以下、宿主細胞がClostridium属細菌又はMoorella属細菌であり、かつ外来性NAD(P)H消費経路がメバロン酸経路である態様について、具体的に説明する。
図2は、メバロン酸経路が導入されたClostridium属細菌又はMoorella属細菌における中心代謝経路の一部を示している。図2に示す例では、メバロン酸経路(外来性NAD(P)H消費経路)を介してアセチルCoAからIPPが合成される。なお、アセチルCoAはアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)(図1)から供給される。
一方、図2に示す例では、内在性NAD(P)H消費経路として、アセトアルデヒドからエタノールへの変換、アセチルCoAからアセトアルデヒドへの変換、ピルビン酸から乳酸への変換、及びピルビン酸から2,3ブタンジオールへの変換、を行う各経路が存在する。ここで、アセトアルデヒドからエタノールへの変換はエタノール脱水素酵素により、アセチルCoAからアセトアルデヒドへの変換はアセトアルデヒド脱水素酵素により、ピルビン酸から乳酸への変換は乳酸脱水素酵素により、及びピルビン酸から2,3ブタンジオールへの変換は2,3ブタンジオール脱水素酵素により、それぞれ進行する。
そして本態様では、内在性NAD(P)H消費経路に関与するこれらの酵素の少なくとも1つの発現が下方制御されている。そのため、内在性NAD(P)H消費経路におけるNAD(P)H消費量が低く抑えられ、NAD(P)Hが外来性NAD(P)H消費経路であるメバロン酸経路に対して優先的に供給される。その結果、メバロン酸経路を介したIPP合成が効率的に行われる。
下方制御される上記酵素は、1つでもよいし、複数でもよい。
上記したように、遺伝子発現の下方制御とは、遺伝子の発現量を減少させる制御、および遺伝子の機能を欠損させる制御を指す。遺伝子発現の下方制御の例としては、遺伝子ノックアウトや遺伝子ノックダウンが挙げられる。さらに遺伝子ノックアウトには、遺伝子そのものの欠失が含まれる。また、プロモーター等の遺伝子発現制御領域を改変することによって遺伝子の発現量を減少させる態様も、遺伝子発現の下方制御に含まれる。下方制御される遺伝子が複数ある場合において、各遺伝子の下方制御の態様は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
Clostridium属細菌や、Moorella属細菌の遺伝子ノックアウト方法としては、相同組換えを用いた手法(Leang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9)、グループIIイントロンを用いた手法(John T. Heap et al., Journal of Microbiological Methods 70(2007) 452-464)、Cre-Lox66/lox71を用いた手法(Vel Berzin et al., Appl Bioichem Biotechnol., 2012 168:1384-1393)などが知られている。
なお図2に示す例では、NAD(P)H消費経路以外に、アセチルCoAから酢酸への変換を行う経路が存在する。この経路はホスホトランスアセチラーゼによって進行する。そこで、上記内在性NAD(P)H消費経路に加えて、ホスホトランスアセチラーゼの発現を下方制御することにより、アセチルCoAの無駄な消費が抑えられる。その結果、メバロン酸経路を介したIPP合成がさらに効率的に行われる。
また酢酸キナーゼの発現を下方制御することにより、アセチルCoAから酢酸への変換経路において、余計な炭化水素の生成を抑えることができるので、より好ましい。
本発明の組換え細胞が生産するC4以上の有機化合物としては、特に限定されないが、例えばテルペンが挙げられる。1つの態様としては、外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子として、メバロン酸を発現させる遺伝子とIPPからイソプレンを生成させる酵素をコードする遺伝子とを含む遺伝子クラスターを採用する。これにより、イソプレンを生産可能な組換え細胞を提供することができる。
IPPからイソプレンを生成させる酵素としては、イソプレン合成酵素が挙げられる。イソプレン合成酵素としては、組換え細胞内でその酵素活性を発揮できるものであれば特に限定はない。イソプレン合成酵素をコードする遺伝子についても同様であり、組換え細胞内で正常に転写・翻訳されるものであれば特に限定はない。また、イソプレン合成酵素をコードする遺伝子は、宿主細胞で転写されやすいコドンに改変したものであってもよい。例えば、宿主細胞がClostridium属細菌であれば、Clostridium属細菌のコドン使用頻度の情報を基に、導入する核酸のコドンを改変することができる。
イソプレン合成酵素は、多くの植物で見出されている。イソプレン合成酵素の具体例としては、ポプラ(Populus nigra)由来のもの(GenBank Accession No.: AM410988.1)が挙げられる。その他、Bacillus subtilis由来のもの(Sivy TL. et al., Biochem. Biophys. Res. Commu. 2002, 294(1), 71-5)が挙げられる。
配列番号1に上記ポプラ由来イソプレン合成酵素をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号2にアミノ酸配列のみを示す。配列番号1で表される塩基配列を有するDNAは、イソプレン合成酵素をコードする核酸の一例となる。
さらに、イソプレン合成酵素をコードする遺伝子には、少なくとも、下記(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつイソプレン合成酵素の活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつイソプレン合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(c)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
また別の態様としては、外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子として、メバロン酸経路を発現させる遺伝子とイソペンテニル二リン酸から環式テルペンを生成させる酵素をコードする遺伝子とを含む遺伝子クラスターを採用する。これにより、環式テルペンを生産可能な組換え細胞を提供することができる。
イソペンテニル二リン酸から環式テルペンを生成させる酵素としては、ゲラニル二リン酸合成酵素(GPP合成酵素)及び/又はネリル二リン酸合成酵素(NPP合成酵素)、並びに、環式モノテルペン合成酵素が挙げられる。
GPP合成酵素とNPP合成酵素については、いずれか一方のみを採用してもよいし、両方を採用してもよい。
GPP合成酵素としては、組換え細胞内でその酵素活性を発揮できるものであれば特に限定はない。GPP合成酵素をコードする遺伝子についても同様であり、組換え細胞内で正常に転写・翻訳されるものであれば特に限定はない。
NPP合成酵素、環式モノテルペン合成酵素、及びこれらをコードする遺伝子についても同様である。
GPP合成酵素の具体例としては、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のもの(GenBank Accession No.: Y17376/At2g34630; Bouvier, F., et al., Plant J,. 2000, 24, 241-52.)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のもの(GenBank Accession No.: NP_215504; Mann, F. M., et al., FEBS Lett., 2011, 585, 549-54.)、等が挙げられる。
配列番号3に上記シロイヌナズナ由来GPP合成酵素をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号4にアミノ酸配列のみを示す。配列番号3で表される塩基配列を有するDNAは、GPP合成酵素をコードする遺伝子の一例となる。
さらに、GPP合成酵素をコードする遺伝子には、少なくとも、下記(a)、(b)又は(c)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
(c)配列番号4で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつゲラニル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(c)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
NPP合成酵素の具体例としては、トマト(Solanum lycopersicum)由来のもの(GenBank Accession No.: FJ797956)、等が挙げられる。
配列番号5に上記トマト由来NPP合成酵素をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号6にアミノ酸配列のみを示す。配列番号5で表される塩基配列を有するDNAは、NPP合成酵素をコードする遺伝子の一例となる。
さらに、NPP合成酵素をコードする遺伝子には、少なくとも、下記(d)、(e)又は(f)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(d)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(e)配列番号6で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質、
(f)配列番号6で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつネリル二リン酸合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(f)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
環式モノテルペン合成酵素の例としては、β−フェランドレン合成酵素が挙げられる。β−フェランドレン合成酵素の作用により、GPP及び/又はNPPからβ−フェランドレンが合成される。また、副産物として4−カレンやリモネンも合成され得る。
β−フェランドレン合成酵素及びそれをコードする遺伝子の具体例としては、トマト(Solanum lycopersicum)由来のもの(GenBank Accession No.: FJ797957; Schilmiller, A. L., et al., Proc Natl Acad Sci U S A., 2009, 106, 10865-70.)、ラベンダー(Lavandula angustifolia)由来のもの(GenBank Accession No.: HQ404305; Demissie, Z. A., et al., Planta, 2011,. 233, 685-96)、等が挙げられる。
配列番号7に上記トマト由来β−フェランドレン合成酵素をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号8にアミノ酸配列のみを示す。
配列番号9に上記ラベンダー由来のβ−フェランドレン合成酵素をコードする遺伝子(DNA)の塩基配列と対応のアミノ酸配列、配列番号10にアミノ酸配列のみを示す。
配列番号7又は配列番号9で表される塩基配列を有するDNAは、β−フェランドレン合成酵素をコードする遺伝子の一例となる。
さらに、β−フェランドレン合成酵素をコードする遺伝子には、少なくとも、下記(g)、(h)又は(i)のタンパク質をコードする核酸が含まれる。
(g)配列番号8又は10で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、
(h)配列番号8又は10で表されるアミノ酸配列において、1〜20個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質、
(i)配列番号8又は10で表されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を示すアミノ酸配列を有し、かつβ−フェランドレン合成酵素の活性を有するタンパク質。
なお(i)におけるアミノ酸配列の相同性については、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子を導入するとともに、内在性NAD(P)H消費経路の発現を下方制御する具体的態様として、Clostridium属細菌又はMoorella属細菌のゲノム上にあるadhE1遺伝子とadhE2遺伝子の一部又は全部を、相同組換えにより、上記遺伝子クラスターで置き換えることが挙げられる。adhE1遺伝子とadhE2遺伝子は、いずれもアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子とエタノール脱水素酵素遺伝子の両方を含んでおり、またゲノム上で両者は隣接して位置している。
本発明では外来性NAD(P)H消費経路を発現させる遺伝子が宿主細胞に導入されている。導入された遺伝子は、宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよいし、プラスミドに組み込まれた状態でゲノム外に存在していてもよい。
宿主細胞に遺伝子を導入する方法としては特に限定はなく、宿主細胞の種類等によって適宜選択すればよい。例えば、宿主細胞に導入可能でかつ組み込まれた遺伝子を発現可能なベクターを用いることができる。
例えば、宿主細胞が細菌等の原核生物の場合には、当該ベクターとして、宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組み込みが可能で、挿入された上記遺伝子(DNA)を転写できる位置にプロモーターを含有しているものを用いることができる。例えば、当該ベクターを用いて、プロモーター、リボソーム結合配列、上記遺伝子(DNA)、および転写終結配列からなる一連の構成を宿主細胞内で構築することが好ましい。
宿主細胞がClostridium属細菌(Moorella属細菌のような近縁種を含む)の場合には、Clostridium属細菌と大腸菌とのシャトルベクターpIMP1(Mermelstein LD et al., Bio/technology 1992, 10, 190-195)を用いることができる。本シャトルベクターは、pUC9 (ATCC 37252)とBacillus subtilisから分離されたpIM13 (Projan SJ et al., J. Bacteriol. 1987, 169 (11), 5131-5139)との融合ベクターであり、Clostridium属細菌内でも安定的に保持される。Clostridium属細菌と大腸菌とのシャトルベクターの他の例としては、pSOS95(GenBank: AY187686.1)が挙げられる。
なお、Clostridium属細菌への遺伝子導入には、通常、エレクトロポレーション法が使用されるが、遺伝子導入直後の導入された外来プラスミドは制限酵素Cac824I等による分解を受けやすく極めて不安定である。そのため、Bacillus subtilis ファージΦ3T1由来メチルトランスフェラーゼ遺伝子が保持されたpAN1 (Mermelstein LD et al., Apply. Environ. Microbiol. 1993, 59(4), 1077-1081)を保有する大腸菌、例えばER2275株等で、pIMP1に由来するベクターを一旦増幅し、メチル化処理を行ってから、これを大腸菌から回収しエレクトロポレーションによる形質転換に使用することが好ましい。なお最近では、Cac824I遺伝子が欠損したClostridium acetobuthylicumが開発されており、メチル化処理されていないベクターも安定的に存在可能である(Dong H. et al., PLoS ONE 2010, 5 (2), e9038)。また、大腸菌BL21株の改良株であるNEB expressを用いてベクターを増幅して、ベクターを効率よく導入する手法が知られている(Leang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9)。また、pBluescipt II KS(-)やpUC19ベクターに宿主相同配列を組み込むことで、Clostridium属細菌のゲノムに遺伝子導入する手法も示されている(Leang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9, Berzin V.et al., Appl Biochem Biotechnol (2012) 167:338-347)
Clostridium属細菌における異種遺伝子発現のプロモーターとしては、例えばthl (thiolase)プロモーター(Perret S et al., J. Bacteriol. 2004, 186(1), 253-257)、Dha (glycerol dehydratase)プロモーター(Raynaud C. et al., PNAS 2003, 100(9), 5010-5015)、ptb (phosphotransbutyrylase)プロモーター (Desai RP et al., Appl. Environ. Microbiol. 1999, 65(3), 936-945)、adc (acetoacetate decarboxylase)プロモーター(Lee J et al., Appl. Environ. Microbiol. 2012, 78 (5), 1416-1423)等がある。ただし、本発明ではこれらに限定されることなく、宿主細胞等に見出される様々な代謝系のオペロンに使用されているプロモーター領域の配列が使用可能である。
その他、pta (phosphate acetyltransferase)、adhE (aldehyde/alcohol dehydrogenase)、CODH (carbon monoxide dehydrogenase)、acsA (acetyl-coA synthase α subunit) 、フェレドキシン、Rnf複合体、ヒドロゲナーゼ、GroE、ATP合成酵素等のプロモーターが使用可能である。また合成ガス発酵を行う場合には、一酸化炭素、二酸化炭素、又は水素によって活性化されるプロモーターも適している。
またベクターを用いて複数種の遺伝子を宿主細胞に導入する場合、各遺伝子を1つのベクターに組み込んでもよいし、別々のベクターに組み込んでもよい。さらに1つのベクターに複数の遺伝子を組み込む場合には、各遺伝子を共通のプロモーターの下で発現させてもよいし、別々のプロモーターの下で発現させてもよい。複数種の遺伝子を導入する例としては、上記したような、メバロン酸経路を発現させる遺伝子に加えてイソプレン合成遺伝子、GPP合成酵素、NPP合成酵素遺伝子、環式モノテルペン合成酵素遺伝子等を導入する態様が挙げられる。
以上のように、本発明で使用できる既知のベクターを示したが、プロモーター、ターミネーター等の転写制御、複製領域等に関わる領域を、目的に応じて改変することができる。改変方法としては各宿主細胞、もしくはその近縁種における天然の他の遺伝子配列に変更してもよく、また人工の遺伝子配列に変更してもよい。
本発明の有機化合物の生産方法の1つの様相では、上記した組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として用いて培養し、当該組換え細胞に炭素数が4以上の有機化合物を生産させる。炭素原として用いるこれらのC1化合物については、1つのみを用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのC1化合物は、主たる炭素原として用いることが好ましく、唯一の炭素原であることがより好ましい。
また、エネルギー源として水素(H2)を同時に提供することが好ましい。
本発明の組換え細胞を培養する方法としては特に限定はなく、宿主細胞の種類等に応じて適宜行うことができる。組換え細胞がClostridium属細菌(偏性嫌気性、絶対嫌気性)の場合には、例えば、生育に必要な無機塩類及び、合成ガスからなる栄養条件で培養する。好ましくは0.2〜0.3MPa(絶対圧)程度の加圧状態で培養する。さらには、初期増殖及び到達細胞密度を良好にするためには、ビタミン、酵母エキス、コーンスティープリカー、バクトトリプトン等の有機物を少量加えてよい。
なお、組換え細胞が好気性や通性嫌気性の場合には、例えば、液体培地を用いた通気・撹拌培養を行うことができる。
本発明の有機化合物の生産方法の別の様相では、上記した組換え細胞に、の組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該組換え細胞に前記C1化合物から炭素数が4以上の有機化合物を生産させる。すなわち、細胞分裂(細胞増殖)を伴うか否かにかかわらず、組換え細胞に前記したC1化合物を接触させて、前記有機化合物を生産させることができる。例えば、固定化した組換え細胞に前記したC1化合物を連続的に供給し、前記有機化合物を連続的に生産させることができる。
本様相においても、これらのC1化合物については、1つのみを用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。また、エネルギー源として水素(H2)を同時に接触させることが好ましい。
好ましい実施形態では、一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスを、前記組換え細胞に提供する。すなわち、これらのガスを炭素源として用いて組換え細胞を培養したり、あるいは、これらのガスを組換え細胞に接触させて、ガス中の一酸化炭素又は二酸化炭素から前記有機化合物を生産させる。この場合も、水素はエネルギー源として使用される。
これらのC1化合物に加えて、さらにギ酸又はメタノールを前記組換え細胞に提供してもよい。すなわち、ギ酸又はメタノールとこれらのガスとを炭素源として用いて組換え細胞を培養したり、あるいは、ギ酸又はメタノールとこれらのガスとを組換え細胞に接触させる。ギ酸又はメタノールを添加することにより、培養効率及び前記有機化合物生産の効率化が図られる。提供の態様としては、例えば、組み換え細胞に対して、ギ酸又はメタノールとこれらのガスを同時に提供することが挙げられる。
外来性NADP消費経路を発現させる遺伝子として、メバロン酸経路を発現させる遺伝子とイソペンテニル二リン酸からイソプレンを生成させる酵素をコードする遺伝子とを含む遺伝子クラスターが導入された態様によれば、前記有機化合物としてイソプレンを生産することができる。
また外来性NADP消費経路を発現させる遺伝子として、メバロン酸経路を発現させる遺伝子とイソペンテニル二リン酸から環式テルペンを生成させる酵素をコードする遺伝子とを含む遺伝子クラスターが導入された態様によれば、前記有機化合物として環式テルペンを生産することができる。イソペンテニル二リン酸から環式テルペンを生成させる酵素が、ゲラニル二リン酸合成酵素及び/又はネリル二リン酸合成酵素、並びに、環式モノテルペン合成酵素である態様によれば、環式モノテルペンを生産することができる。さらに、環式モノテルペン合成酵素がβ−フェランドレン合成酵素である態様によれば、環式モノテルペンとしてβ−フェランドレン、4−カレン、又はリモネンをすることができる。
生産された前記有機化合物は、細胞内に蓄積されるか、細胞外に放出される。例えば環式テルペンを生産する態様では、上述したClostridium属細菌又はMoorella属細菌を宿主細胞とした組換え細胞を用い、細胞外に放出された環式モノテルペンを回収し、蒸留等によって単離精製することにより、純化された環式テルペンを取得することができる。
組換え細胞の培養物から前記有機化合物を単離・精製する方法は特に限定されない。環式テルペンを生産する場合であれば、例えば、培養液(培養上清)をペンタン等の適切な溶媒で抽出し、さらに逆相クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等のクロマトグラフィーによって高純度に精製することできる。細胞外に放出された環式テルペンの多くは、気相にも蒸発するため、コールドトラップ等でこれらを液化し、回収することも可能である。
なお、二酸化炭素に代えて重炭酸塩を用いることができる場合がある。すなわち、Clostridium属細菌及びその近縁種は、炭酸脱水素酵素(Carbonic anhydrase, CA)(EC 4.2.1.1: H2O+CO2 ⇔ HCO3 -+H+)を有することが知られており(Braus-Stromeyer SA et al., J. Bacteriol. 1997, 179(22), 7197-7200)、CO2源として、HCO3 -源となるNaHCO3等の重炭酸塩を用いることができる。
ここで、宿主細胞がアセチルCoA経路とメタノール経路(図1)を有している場合において、組換え細胞に提供され得る一酸化炭素、二酸化炭素、ギ酸、及びメタノールの組み合わせについて説明する。
アセチルCoA経路によるアセチルCoA合成では、メチルトランスフェラーゼ(Methyltransferase)、コリノイド鉄−硫黄タンパク質(Corrinoid iron-sulfur protein、CoFeS−P)、アセチルCoAシンターゼ(Acetyl-CoA synthase、ACS)、及びCODHの作用による、CoA、メチルテトラヒドロ葉酸(methyltetrahydrofolate、[CH3]−THF)、及びCOからのアセチルCoAの合成過程が必須である(Ragsdale SW et al., B.B.R.C. 2008, 1784(12), 1873-1898)。
一方、Butyribacterium methylotrophicumの培養において、炭素源としてCOやCO2以外にギ酸やメタノールを添加することは、CO代謝すなわち、アセチルCoA経路のメチルブランチ(Methyl branch)におけるテトラヒドロ葉酸(tetrahydrofolate、THF)含量、及び、CO代謝で必要とされるCODH、ギ酸デヒドロゲナーゼ(formate dehydrogenase、FDH)及びヒドロゲナーゼ(hydrogenase)の活性を増大させることが知られている(Kerby R. et al., J. Bacteriol. 1987, 169(12), 5605-5609)。Eubacterium limosum等においても、嫌気条件下CO2及びメタノールを炭素源とした場合でも、高い増殖を得ることが示されている(Genthner BRS. et al., Appl. Environ. Microbiol., 1987, 53(3), 471-476)。
これらのメタノールの合成ガス資化性微生物へ影響、及びMoorella thermoacetica(Clostridium thermoaceticum)及びClostridium ljungdahlii等のゲノム解析(Pierce E. et al., Environ. Microbiol. 2008, 10(10), 2550-2573; Durre P. et al., PNAS 2010, 107(29), 13087-13092)の結果から、これらの微生物種では、図1に示されるようなメタノール経路(methanol pathway)がアセチルCoA経路(Wood-Ljungdahl pathway)にメチル基のドナーとして関与することが説明できる。
また実際に、いくつかのClostridium属菌ではギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH)(EC 1.2.1.2/1.2.1.43:Formate+NAD(P)+ ⇔ CO2+NAD(P)H)の正方向の活性(FormateからのCO2形成)が確認されている(Liu CL et al., J. Bacteriol. 1984, 159(1), 375-380; Keamy JJ et al., J. Bacteriol. 1972, 109(1), 152-161)。このことから、これらの株ではCO2やCOが欠乏状態にある場合、部分的にメタノール(CH3OH)やギ酸(HCOOH)からCO2の生成方向の反応が働くことができる(図1)。このことは、前述したCH3OHを加えることによる、ギ酸ヒドロゲナーゼ(formatede hydrogenase)活性、及びCODHの活性増大の現象 (Kerby R et al., J. Bateriol. 1987, 169(12), 5605-5609)からも説明できる。すなわち、ギ酸(HCOOH)もしくはメタノール(CH3OH)を唯一の炭素源としても増殖可能である。
宿主細胞が、元々、ギ酸デヒドロゲナーゼの正方向の活性を有しない株であっても、変異導入、外来遺伝子導入、もしくはゲノムシャッフリングのような遺伝子改変によって、正方向の活性を付与させればよい。
以上のことから、宿主細胞がアセチルCoA経路とメタノール経路を有している場合には、以下のガスや液体を用いて、前記有機化合物を生産することができる。
・CO
・CO2
・CO/H2
・CO2/H2
・CO/CO2/H2
・CO/HCOOH
・CO2/HCOOH
・CO/CH3OH
・CO2/CH3OH
・CO/H2/HCOOH
・CO2/H2/HCOOH
・CO/H2/CH3OH
・CO2/H2/CH3OH
・CO/CO2/H2/HCOOH
・CO/CO2/H2/CH3OH
・CH3OH/H2
・HCOOH/H2
・CH3OH
・HCOOH
なお、本発明の組換え細胞について、有機化合物の生産を目的とせず、専ら細胞を増やす目的で培養する場合には、一酸化炭素や二酸化炭素を炭素源として用いる必要はない。例えば糖類やグリセリンといった他の炭素源を用いて、組換え細胞を培養すればよい。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
本実施例では、合成ガス資化細菌の一種のClostridium ljungdahliiの組換え細胞にてβ−フェランドレンの高効率生産を行った。
(1)各種ベクターの構築
Appl Biochem Biotechnol (2012) 168:1384_1393 、Bioprocess Biosyst Eng (2014) 37:245_260を参照し、C. ljungdahliiのadhE1 (CLJU_c16510)上流配列、lox66配列、クロラムフェニコール耐性遺伝子(FM201786)、lox71配列、及びC. ljungdahliiのadhE2(CLJU_c16520)下流配列を含むpUC-ΔadhE-Cat(配列番号11)を作製した。
また、Clostridium/E.coliバイナリーベクターであるpJIR750ai(Sigma-Aldrich)を改変し、β−フェランドレン合成酵素遺伝子(GenBank Accession No.: FJ797957; Schilmiller, A. L., et al., Proc Natl Acad Sci U S A., 2009, 106, 10865-70.)、ネリル二リン酸(NPP)合成酵素遺伝子(GenBank Accession No.: FJ797956)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(FM201786)、をコドン改変した塩基配列含むpSK1-PHS-NPPS(配列番号12)を構築した。
また、配列番号12の配列に加えて放線菌由来メバロン酸経路遺伝子クラスター(Pseudomonas mevalonii由来mvaAを含む)をさらに含むpSK1-PHS-NPPS-MVA(配列番号13)を構築した。各配列については、Clostridium属細菌のコドン使用頻度を考慮しコドン改変を行っている。
(2)adhE遺伝子Knockout Clostridium株の作製
pUC-ΔadhE-Catを、Leang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9で推奨の手法を用いてC. ljungdahlii(DSM13528/ATCC55383)に導入し、10μg/mL クロラムフェニコールを含むATCC1754寒天培地(1.5% Agar)で選抜し、adhE1、adhE2ノックアウト株(ΔadhE株)を作製した。ΔadhE株コンピテントセルを、Leang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9で推奨の手法で作製した。pUCΔadhE株コンピテントセルを、Bioprocess Biosyst Eng (2014) 37:245_260記載の手法でCre-recombinase処理することによって、クロラムフェニコール耐性遺伝子を除去し、クロラムフェニコール感受性株(ΔadhEΔCm株)を取得した。
(3)DSM13528/ATCC55383株およびΔadhEΔCm株への遺伝子導入
DSM13528/ATCC55383株にpSK1-PHS-NPPS、pSK1-PHS-NPPS-MVAを、ΔadhEΔCm株にpSK1-PHS-NPPS-MVAをそれぞれLeang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9記載の手法を用いてエレクトロポレーションにて導入し、10μg/mLクロラムフェニコール入りATCC1754寒天培地(フルクトース入り、1.5%Agar)で選抜した。
(4)β-フェランドレン定量
上記(3)で選抜したpSK1-PHS-NPPS導入DSM13528/ATCC55383株、pSK1-PHS-NPPS-MVA導入DSM13528/ATCC55383株、pSK1-PHS-NPPS-MVA導入ΔadhEΔCm株を、それぞれ37℃、嫌気条件下で培養した。10μg/mL クロラムフェニコール入りATCC1754培地(ただしpH=5.0、フルクトース非含有)5mLに植菌し、CO/CO2/H2=33/33/34%(体積比)の混合ガスを27mL容の密閉可能なヘッドスペースバイアル容器に仕込み、0.25MPa(絶対圧)のガス圧で充填し、アルミキャップで密封した後、振とう培養した。増殖が認められたものにつき、OD600が1.0に到達した時点で培養を終了し、気相をガスクロマトグラフ質量分析計(島津GCMS-QP2010 Ultra)にて分析した。
その結果、pSK1-PHS-NPPS導入DSM13528/ATCC55383株では、平均0.15mgβ−フェランドレン/乾燥菌体(g)の生産量でβ−フェランドレンが検出された。pSK1-PHS-NPPS-MVA導入DSM13528/ATCC55383株では、平均10mgβ−フェランドレン/乾燥菌体(g)の生産量でβ−フェランドレンが検出された。pSK1-PHS-NPPS-MVA導入ΔadhEΔCm株では、平均55mgβ−フェランドレン/乾燥菌体(g)のβ−フェランドレンが検出された。
以上より、宿主細胞にβ−フェランドレン前駆体を産生する外来メバロン酸経路を導入することで、環式モノテルペンの一種であるβ−フェランドレンの産生量が上昇することが示された。またさらに、NAD(P)H消費経路であるadhE1、adhE2遺伝子をノックアウトすることで、より効率よくβ−フェランドレンを生産することができることが示された。
本実施例では、pUC57(GenBank Accession No.Y14837)にC. ljungdahliiのゲノム配列、並びに、外来性メバロン酸経路およびイソプレン合成酵素を含む遺伝子クラスターを導入した配列を構築し、これを相同組換えでC. ljungdahliiに導入することで、宿主adhE1、adhE2がノックアウトされておりかつ、該遺伝子クラスターがゲノム導入された組換え細胞を作製した。さらに、この組換え細胞にてイソプレンの高効率生産を行った。
(1)各種ベクターの構築
pUC57(GenBank Accession No.Y14837)にC. ljungdahlii(DSM13528/ATCC55383)のadhE1 (CLJU_c16510)上流配列、adhE2 (CLJU_c16520)下流配列、放線菌由来メバロン酸経路遺伝子(Pseudomonas mevalonii由来mvaAを含む)、ポプラ由来イソプレン合成酵素遺伝子(GenBank Accession No.: AM410988.1)、及びクロラムフェニコール耐性遺伝子(FM201786) (Appl Biochem Biotechnol. 2012 May;167(2):338-47.)を含む遺伝子クラスターを導入したpUC-ΔadhE-IspS-MVA(配列番号14)を構築した。また、pJIR750ai(Sigma-Aldrich)改変配列にポプラ由来イソプレン合成酵素遺伝子(GenBank Accession No.: AM410988.1)、およびクロラムフェニコール耐性遺伝子(FM201786)、放線菌由来メバロン酸経路遺伝子(Pseudomonas mevalonii由来mvaAを含む)を導入したpSK1-IspS-MVA(配列番号15)を構築した。各配列については、Clostridium属細菌のコドン使用頻度を考慮しコドン改変を行っている。
(2)遺伝子導入
C. ljungdahlii(DSM13528/ATCC55383)にLeang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9記載の手法を用いて、pUC-ΔadhE-IspS-MVAをエレクトロポレーションにて導入し、10μg/mLクロラムフェニコール入りATCC1754寒天培地(フルクトース入り、1.5%Agar)で選抜した。pUC-ΔadhE-IspS-MVAの遺伝子導入によるadhE1、adhE2の欠損とイソプレン遺伝子のゲノム導入が確認できたものをΔadhE-IspS-MVA株とした。また、C. ljungdahlii(DSM13528/ATCC55383)、実施例1で作製したΔadhEΔCm株にそれぞれLeang C. et al.,Appl Environ Microbiol. 2013 79(4), 1102-9記載の手法を用いて、pSK1-IspS-MVAをエレクトロポレーションにてそれぞれ導入し、10μg/mLクロラムフェニコール入りATCC1754寒天培地(フルクトース入り、1.5%Agar)で選抜した。
(3)イソプレン定量
上記(2)で取得したΔadhE-IspS-MVA株, pSK1-IspS-MVA導入DSM13528/ATCC55383, pSK1-IspS-MVA導入ΔadhEΔCm株を、それぞれ37℃、嫌気条件下で培養した。10μg/mLクロラムフェニコールを含有するATCC medium 1754 PETC培地(ただし、pH=5.0 フルクトース非含有)5mLを27mL容の密閉可能なヘッドスペースバイアル容器に仕込み、CO/CO2/H2=33/33/34%(体積比)の混合ガスを0.25MPa(絶対圧)のガス圧で充填し、アルミキャップで密封した後、振とう培養した。OD600が1.0に到達した時点で培養を終了し、気相をガスクロマトグラフ質量分析計(島津GCMS-QP2010 Ultra)にて分析したところ、ΔadhE-IspS-MVA株では平均185mgイソプレン/乾燥菌体(g)、pSK1-IspS-MVA導入ΔadhEΔCm株では平均74mgイソプレン/乾燥菌体(g)、pSK1-IspS-MVA導入DSM13528/ATCC55383では平均15mgイソプレン/乾燥菌体(g)が検出された。
以上より、宿主細胞にイソプレンの前駆体を産生する外来メバロン酸経路を導入するとともに、宿主NAD(P)H消費経路であるadhE1、adhE2遺伝子をノックアウトすることで効率よくイソプレンを生産することができることが示された。また、相同組換えでゲノムに該塩基配列を組み込むことでより、効率よくイソプレンを生産することができることが示された。

Claims (8)

  1. Clostridium属細菌又はMoorella属細菌の組換え細胞であって、
    外来遺伝子として、メバロン酸経路を発現させる第一遺伝子とイソプレン合成酵素をコードする第二遺伝子とを有し、かつ前記第一遺伝子と前記第二遺伝子が前記組換え細胞内で発現し、
    内在性のadhE1遺伝子及びadhE2遺伝子の一部又は全部が欠失して、これらの遺伝子によるエタノール脱水素酵素の発現が欠失しており、
    前記第一遺伝子と前記第二遺伝子がゲノムに組み込まれており、
    一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つから、前記メバロン酸経路を介してイソプレンを生産可能である組換え細胞。
  2. Clostridium ljungdahliiである請求項に記載の組換え細胞。
  3. 前記メバロン酸経路は、放線菌のメバロン酸経路である請求項1又は2に記載の組換え細胞。
  4. 前記メバロン酸経路のHMG−CoAリダクターゼとして、NADH依存性のHMG−CoAリダクターゼを含む請求項1又は2に記載の組換え細胞。
  5. 前記HMG−CoAリダクターゼは、Pseudomonas mevalonii由来mvaA (P13702)である請求項に記載の組換え細胞。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の組換え細胞を、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を炭素源として用いて培養し、当該組換え細胞にイソプレンを生産させるイソプレンの生産方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の組換え細胞に、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる群より選ばれた少なくとも1つのC1化合物を接触させ、当該組換え細胞に前記C1化合物からイソプレンを生産させるイソプレンの生産方法。
  8. 一酸化炭素を主成分とするガス、一酸化炭素と水素とを主成分とするガス、二酸化炭素と水素とを主成分とするガス、又は一酸化炭素と二酸化炭素と水素とを主成分とするガスを、前記組換え細胞に提供する請求項又はに記載のイソプレンの生産方法。
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