以下、本発明の金銭収受装置の一実施形態に係る運賃箱を図1〜図33に従って説明する。
[運賃箱1の全体の説明]
まずは、運賃箱1の全体構成を説明する。図1に示すように、運賃箱1の正面上部には、紙幣受入口3、硬貨受入口4、磁気カード読取部5、ICカード読取部6、及び乗客用表示器7を有する操作パネル2が設けられている。また、運賃箱1の正面壁8aには、硬貨返却口9及び赤外線通信ポート28が設けられている。
図1及び図2に示すように、操作パネル2の下部には、装置幅方向(図1のX軸方向)の一方側(図1の紙面右側)に紙幣受入口3が設けられ、他方側(図1の紙面左側)に硬貨受入口4が設けられている。また、操作パネル2の上部には、装置幅方向Xの一方側に磁気カード読取部5及びICカード読取部6が設けられ、他方側に乗客用表示器7が設けられている。運賃箱1において箱本体(筐体)8の正面壁8aには、硬貨受入口4に入れられた偽硬貨等の異物を排出する硬貨返却口9が設けられている。なお、正面壁8aが本発明の壁部に相当する。
図1〜図3に示すように、箱本体8の上部には、上記の操作パネル2を有する上開き式の上蓋10がヒンジ11を介して選択的に開閉可能に取り付けられている。ヒンジ11は箱本体8の前面側に設けられており、上蓋10は前面側を支点として回動して上方に開く。上蓋10には、上蓋10が閉じた状態で施錠可能とするシリンダ錠12が設けられている。
図3及び図6に示すように、箱本体8の内部には、上蓋10を開いたときに上向きに開口する電装品収納部13が設けられている。電装品収納部13には、紙幣受入口3で受け入れた紙幣を識別可能な紙幣識別モジュール14、硬貨受入口4で受け入れた硬貨を識別可能な硬貨識別モジュール15、運賃箱1の動作を制御する制御モジュール16、及び運賃箱1の電源を制御する電源モジュール17が収納されている。紙幣識別モジュール14、硬貨識別モジュール15、制御モジュール16及び電源モジュール17は、箱本体8の水平面方向(図3のX−Y平面方向)に並ぶように配置されており、個別に着脱可能である。なお、上蓋10が本発明の蓋部に相当し、電装品収納部13が本発明の収納部に相当する。
図3に示すように、電装品収納部13において紙幣識別モジュール14の入口には、紙幣識別モジュール14の不正取り外しを防止する施錠部13aが設けられている。施錠部13aは、正規キーにてシリンダ錠が解錠されると、手前のヒンジ13bを介して上開きするようになっている。
図6に示すように、電装品収納部13の中には、電装品(紙幣識別モジュール14、硬貨識別モジュール15、制御モジュール16及び電源モジュール17)を接続するための本体側コネクタである複数のコネクタ18a〜18dが上向きに設けられている。コネクタ18b及び18cは、中継基板18上に設けられている。また、コネクタ18a,18dは、中継基板18の近傍に設けられるとともに、中継基板18にハーネスで電気的に接続されている。コネクタ18aが紙幣識別モジュール14用で、コネクタ18bが硬貨識別モジュール15用で、コネクタ18cが制御モジュール16用で、コネクタ18dが電源モジュール17用である。なお、中継基板18及び本体側コネクタ18a〜18dが本発明の電装品接続部に相当する。
図6及び図7(a)に示すように、紙幣識別モジュール14、硬貨識別モジュール15、制御モジュール16及び電源モジュール17は、いずれも下向きに設けられた機器側コネクタ18e〜18hを備えている。そして、各機器側コネクタ18e〜18hは、各々の電装品に対応する本体側コネクタ18a〜18dに接続される。
図6及び図7(a)に示すように、電装品収納部13と紙幣識別モジュール14との間には、紙幣識別モジュール14を電装品収納部13に収納した時点で電装品収納部13に対する位置決めを完了させる位置決め機構が設けられている。紙幣識別モジュール14のモジュール本体14aの裏面には、一対の受容部14b,14bが凹むように設けられている。また、モジュール本体14aの上部には、軸14cを支点に回動可能なハンドル14dが、スプリング14eにより下側に付勢された状態で設けられている。モジュール本体14aの背面には、電装品収納部13内に設けられたロック棒13cに係止可能な一対の軸受容部14f,14fが設けられている。また、ハンドル14dには、軸受容部14f,14fと協同してロック棒13cを挟む爪部14g,14gが設けられている。
紙幣識別モジュール14は、電装品収納部13の所定位置に上から挿入されると、電装品収納部13の底面に設けられた一対のボス部(図示略)が一対の受容部14b,14bに挿入される。これにより、紙幣識別モジュール14の水平方向への移動が規制されるとともに、ロック棒13cを軸受容部14f及び爪部14gで引っ掛けることにより、紙幣識別モジュール14の上下方向への移動が規制される。これにより、紙幣識別モジュール14はが電装品収納部13内で位置決めされる。このとき、紙幣識別モジュール14が位置決めされると同時に本体側コネクタ18aと機器側コネクタ18eとが互いに接続される。紙幣識別モジュール14を電装品収納部13から引き抜くときは、ハンドル14dを上に引いてストッパ14hに当たるまで回すことにより、爪部14gがロック棒13cから離間される。さらにハンドル14dを引いて紙幣識別モジュール14を持ち上げることにより、本体側コネクタ18aと機器側コネクタ18eとが互いに引き離される。
また、硬貨識別モジュール15にも、紙幣識別モジュール14と同様の位置決め機構が設けられている。なお、硬貨識別モジュール15の位置決め機構は、紙幣識別モジュール14のものと基本的に同じであるので、説明は省略する。
図7(b)に示すように、電装品収納部13と制御モジュール16との間にも、制御モジュール16を電装品収納部13に収納した時点で電装品収納部13に対する位置決めを完了させる位置決め機構が設けられている。制御モジュール16の下部には、一対の凹部16a,16aが設けられている。また、制御モジュール16の上部には、一対の締結具16b,16bが設けられている。電装品収納部13の中には、一対のボス13d(図7(b)では一方のみを示す)及び支持金具13e,13eが設けられている。締結具16b,16bは、クイック・リリース・ファスナが使用されている。クイック・リリース・ファスナは、一般的なネジとは異なり、軸心まわりに1/4回転程度まわすだけで着脱できる締結具である。
制御モジュール16は、電装品収納部13の所定位置に上から挿入されると、下部に設けられた一対の凹部16a,16aが、電装品収納部13内のボス13d,13dを受容して制御モジュール16の水平方向の移動が規制されることで、電装品収納部13内で位置決めされる。このとき、制御モジュール16が位置決めされると同時に本体側コネクタ18cと機器側コネクタ18gとが互いに接続される。そして、締結具16b,16bが電装品収納部13側の支持金具13e,13eに締結されることにより、制御モジュール16が固定される。制御モジュール16を電装品収納部13から引き抜くときは、締結具16bの解除操作が行われ、制御モジュール16が上方向に引いて持ち上げられるとともに、本体側コネクタ18cと機器側コネクタ18gとが引き離される。
また、電源モジュール17にも、制御モジュール16と同様の位置決め機構が設けられている。なお、電源モジュール17の位置決め機構は、制御モジュール16のものと基本的に同じであるので、説明は省略する。
これら電装品は、電装品収納部13に対し着脱可能であり、上方向に引き出すことで簡単に取り外すことができる。また、取り外した電装品を電装品収納部13の中の所定の位置に戻すことで簡単に電装品装着することができる。また、各電装品は、電装品収納部13の中で対応する位置決め部材(図示は省略)によって位置決めされた時点で、各々の機器側コネクタ18e〜18hが対応する本体側コネクタ18a〜18dに正対し接続可能となり、収納位置に納められるとコネクタ同士が接続される。
電装品を電装品収納部13に収納すると、上記のように各電装品を収納位置に納めるとともにコネクタの接続が完了する。これにより、従来のように機器間のハーネス接続を別途行う必要がないので、取り付け作業を容易化することができる。
また、紙幣識別モジュール14、硬貨識別モジュール15、制御モジュール16、及び電源モジュール17は、いずれも個別に着脱容易であるので、紙幣詰まりや硬貨詰まりなどの問題が生じた場合には、問題に関係する電装品のみを取り出して修理やメンテナンス作業を行うことができる。
図3に示すように、上蓋10には、上蓋10を開いた状態で保持する上蓋ストッパ機構151が設けられている。上蓋10の内面には、長細い板状のステー152が、基端に設けられた軸部153を支点に回動可能に取り付けられている。ステー152の先端寄りの位置には、長手方向に沿った一辺が波形に形成された通し孔154が設けられている。箱本体8内の仕切壁155の壁面には、ステー152を摺動可能に支持するステー連結部156が設けられている。図4に示すように、ステー連結部156には、通し孔154に挿入される係止ピン157と、ステー連結部156を補強する一対の突起158,158とが設けられている。
図3及び図4に示すように、通し孔154の長手方向に沿った一辺は、複数の切欠部159,159…が形成され、隣同士の切欠部159,159の間の部分が突出部160として形成されており、波型を呈している。メンテナンスのために作業者が上蓋10を開く際、いずれかの切欠部159に係止ピン157を選択的に係止することにより、上蓋10の開き具合を段階的に調整・保持可能である。図5(a)に示すように、上蓋10を全閉するときは、作業者がステー152を指で持ち上げて係止ピン157と切欠部159との係止を外して、ステー152を摺動可能として上蓋10を閉じる。
本例の複数の切欠部159,159のうち、基端に最も近い切欠部159b以外の切欠部159a,159aは、窪みの傾き具合、即ち水平面に対する切欠部の上面の傾斜が小さく直線的な形状に形成されている。これは、図5(b)に示すように、上蓋10を閉じる際、自重で下がる場合よりも大きな力が上蓋10にかかることで係止ピン157が突出部160,160…を順に滑って乗り越えていくことを可能とし、上蓋10が途中で止まることなく連続的に下がることを許容する。最上位の切欠部159bは、窪みの傾き具合、即ち水平面に対する切欠部の上面の傾斜が大きく円弧状の形状に形成されている。上蓋10を閉じる際、係止ピン157は、切欠部159a,159aを滑り、160,160を乗り越えるが、上面の傾き具合の異なる切欠部159bについては係止ピン157が引っ掛かるため、係止ピン157と切欠部159bとが係止され、上蓋10が完全に閉じる前に所定位置で止まって保持される。切欠部159bと係止した係止ピン157は、作業者が指で押し上げると係止が外れ、上蓋10が完全に閉止可能となる。
このように、上蓋ストッパ機構151により、上蓋10の開き具合が調節可能となる。また、ステー152の複数の切欠部159,159…のいずれかに係止ピン157を選択的に係止して開き具合を決める構造によって、上蓋10の開き具合を段階的に調節して決めることが可能となる。さらに、最も基端に近い切欠部159bの上面の傾き具合は、係止ピン157が滑って通過することがないように形成されているので、上蓋10を閉じる際、一度に全閉せずにこの切欠部159bで係止ピン157を停止させることが可能となる。
図1に示すように、運賃箱1には、外部から運賃箱1を操作可能な操作盤161が接続可能である。操作盤161は、操作盤161から延びるケーブル161aを箱本体8の側壁のコネクタ162に接続することにより、運賃箱1に接続される。操作盤161は、入力部161b及び表示部161cを備え、入力部161bを操作して運賃箱1を操作したり、運賃箱1から送信される各種データが表示部161cに表示されたりする。
[金庫扉19及び金庫20の説明]
次に、金庫扉19及び金庫20の構成を説明する。図1及び図8に示すように、箱本体8には、金庫扉19がヒンジ21を介して選択的に開閉可能に取り付けられている。図8に示すように、金庫扉19が開かれているとき、箱本体8の前面側には金庫収納部22が開口する。金庫収納部22には、箱状の金庫20が着脱可能に収納されており、運賃箱1に運賃として受入られた貨幣は、金庫20に収納される。金庫20は、同形の他の金庫と交換して使用することができる。
箱本体8には、閉状態の金庫扉19を固定して施錠する金庫扉施錠機構23が設けられている。金庫収納部22の縁には、装置高さ方向Zに上下動可能な係止板24が取り付けられている。係止板24には、装置高さ方向Zに複数並ぶ係止爪24aが間欠的に形成されている。また、金庫扉19の縁には、係止爪24aに係止可能な複数の係止突部25が形成されている。係止板24の上部には、係止板24を上下動させるモータ26が設けられている。
正面壁8aには、赤外線通信ポート28が設けられている。赤外線通信ポート28は、施錠された金庫扉19を解錠する際の鍵として使用されるプローブ27と赤外線通信を行う。赤外線通信ポート28は、プローブ27から受信した赤外線信号を電気信号に変換して制御モジュール16のコントローラ135(後述する)に送る。また、赤外線通信ポート28は、コントローラ135から受信した電気信号を赤外線信号に変換してプローブ27に送信する。赤外線通信ポート28を介してコントローラ135とプローブ27との間で行われる赤外線通信によるID認証に基づき、金庫扉19の解錠が行われる。
プローブ27及び赤外線通信ポート28の間には、プローブ27を赤外線通信ポート28に掛け留めるプローブ留め機構30が設けられている。プローブ27の先端には、爪部31が突出するように設けられている。また、赤外線通信ポート28の縁の上部には、プローブ27を赤外線通信ポート28に接したときに爪部31を係止可能な係止溝32が形成されており、プローブ27が赤外線通信ポート28に接した状態で係止してプローブ27を保持可能である。
金庫扉19が閉じられると、扉検出片19aがセンサ(図示しない)によって検出され、コントローラ135に信号が送られる。この信号受信に基づき、コントローラ135は、モータ26を作動させ、モータ26によって係止板24が下方に駆動されて係止爪24aが係止突部25に引っ掛かると、金庫扉19が施錠される。また、金庫扉19が施錠状態のとき、プローブ27の爪部31を赤外線通信ポート28の係止溝32に引っ掛けてプローブ27を赤外線通信ポート28にセットすると、プローブ27及び赤外線通信ポート28の間で赤外線通信によるID認証が実行される。そして、このID認証が成立すると、モータ26によって係止板24が上方に駆動されて係止爪24aが係止突部25から離間し、金庫扉19が解錠される。
図9及び図10に示すように、金庫20は、硬貨及び紙幣を収納可能な有底箱状の金庫本体部33を備えている。図10(a)に示すように、金庫本体部33の内部には、紙幣収納室34及び硬貨収納室35が区画されている。
図9に示すように、金庫本体部33には、横方向にスライドして選択的に開閉可能であり、硬貨収納室35及び紙幣収納室34の両方を閉じることが可能な金庫蓋部36が設けられている。金庫蓋部36の一端部には、ハンドル37が取り付けられている。ハンドル37は、軸部38に取り付けられており、軸部38まわりに回動可能である。金庫本体部33には軸受部39aを有するブロック39が取り付けられている。軸部38は、軸受部39aにスライド可能に挿入されており、金庫蓋部36、ハンドル37及び軸部38はともに横方向にスライド可能である。ハンドル37を引いて金庫蓋部36を横方向にスライドさせ、金庫本体部33の上から引き出すと、硬貨収納室35及び紙幣収納室34の上側が開放される。ブロック39には金庫蓋部36のスライド方向に直交する水平方向の軸(図示しない)が設けられており、金庫蓋部36を一杯に引き出すと、金庫蓋部36は、ブロック39とともに、ブロック39に設けられた軸39b回りに回動可能となり、水平位置から90度下向きに倒すことができる。
金庫本体部33の背面には、シリンダ錠40が設けられている。金庫収納部22の内壁には、金庫20のシリンダ錠40に対して挿し込み可能なキープレート41が設けられている。キープレート41の周りを囲む支持筒42の内面には、一対のタブ43,43(図9では片側のみ図示)が突出するように設けられている。また、シリンダ錠40のロータ44の外周面には、ロータ44を収納するロータケース45が、ロータ44の軸回りに回動可能に取り付けられている。ロータケース45の外周において周方向一帯には、タブ43,43と係合可能な係止溝46が凹むように設けれている。ロータケース45は、一対の節度部47,47を介して連結部材48に対して回転可能に設けられている。ハンドル37を横向きにした状態で金庫蓋部36が閉じる方向にスライドされると、軸部38も金庫蓋部36とともにスライドし、軸部38の先端の凹部38aに軸係止部49が挿入され、軸部38とロータケース45とが互いに係止し、ロータケース45は軸部38ともに回転可能となる。ただし、キープレート41がロータ44に挿入されていない場合には、ロータケース45は、鍵機構(図示しない)によってロータ44に対して回転不能に規制されている。この鍵機構は、一般的なシリンダ錠の機構である。
キープレート41がロータ44の鍵穴(図示略)に挿入されるとシリンダ錠40は解錠可能となる。このとき、ロータ44及びキープレート41は静止しており、ハンドル37をまわすことで、ロータケース45及び軸部38がハンドル37とともに軸部38の軸心回りに回転し、シリンダ錠40の施錠および解錠が行われる。
図9及び図10(a)に示すように、金庫20は、運賃箱1から取り外されているとき、金庫蓋部36が閉じている。このとき、シリンダ錠40にはキープレート41が入っておらずロータケース45は回転不能となっているので、ハンドル37は縦向きであって、回らない状態である。つまり、金庫20の金庫蓋部36は、運賃箱1から取り外されているときは、シリンダ錠40で施錠されることにより、紙幣収納室34及び硬貨収納室35が不正に開けられないようになっている。
また、図9に示すように、横向きになっていたハンドル37が時計回りに回転させられて縦向きにされると、ハンドル37の背面に形成された係止部50が、金庫本体部33の正面に形成された引掛部51に係止する。つまり、ハンドル37は、軸部38及び係止部50の2箇所によって、金庫本体部33に2点で支持される。これにより、金庫20を金庫収納部22に対して着脱する際に、ハンドル37が金庫本体部33に対してしっかりと支持される。
図10(b)に示すように、金庫20を金庫収納部22にセットするとき、金庫20が金庫収納部22の中に入れられると、金庫20のシリンダ錠40にキープレート41が挿入される。このとき、支持筒42の内面に設けられたタブ43,43は、ロータケース45の外面に設けられた案内溝52を通り、係止溝46の位置に到達する。また、キープレート41がシリンダ錠40に挿入されるので、ロータケース45及び軸部38が回転可能となり、ハンドル37を回すことが可能となる。この状態でハンドル37を回すと、ロータケース45が回り、係止溝46とタブ43の係止及び解除を行うことができる。
図10(b)に示す状態から、図10(c)に示すように、ハンドル37を反時計回りに約90度回して横向きにすると、この回転操作に連動してロータケース45(連結部材48)も回り、金庫蓋部36が解錠される。このとき、タブ43,43がロータケース45の係止溝46に係止し、金庫20を金庫収納部22から引き出すことが出来なくなるので、金庫20が運賃箱1にロックされる。また、ハンドル37の係止部50は、金庫蓋部36の側壁の端に形成された引掛部51に係止する。
図10(d)に示すように、金庫蓋部36が解錠された後、ハンドル37を引いて金庫蓋部36がスライドによって引き出される。そして、図10(e)に示すように、金庫蓋部36が一杯に引き出された後、ブロック39の軸回りで金庫蓋部36が回動によって略90度下向きに倒される。このとき、ハンドル37は、横向きとなっているため、金庫蓋部36を倒すときに金庫本体部33に干渉することはない。
よって、金庫20は、金庫蓋部36が開いた状態で運賃箱1にセットされる。このとき、金庫蓋部36及びハンドル37は金庫本体部33の側面に近接した位置に倒れるので、金庫扉19を閉じるとき、金庫蓋部36及びハンドル37が金庫扉19と干渉することはない。また、金庫20を運賃箱1から取り外すとき、セットするときと逆の手順を行うだけであるので、説明は省略する。
図9に示すように、金庫20の内部において上部寄りの位置には、金庫20の固有IDを記憶するタグ54が取り付けられている。図示は省略するが、タグ54は、電力電波を受信するアンテナ、無線信号送信を行う送信部、及び固有IDを記憶するとともにアンテナから受信した電力電波によって動作し送信部の制御を行うICチップを備えている。タグ54が記憶している固有IDは、タグ54が取り付けられた金庫20に固有のものであり、同形の他の金庫の固有IDとは互いに相違している。また、金庫収納部22の上壁内部には、タグ54との間でID認証のための通信を実行する本体側通信部55が設けられている。
本体側通信部55は、金庫20が金庫収納部22にセットされたとき、電力電波Sccをタグ54に送信する。タグ54は、電力電波Sccを電源として動作し、IDコードSidを本体側通信部55に返信する。本体側通信部55は、IDコードSidに基づいて金庫20の認証を試みる。IDコードSidの認証については、一般的に用いられているIDコード認証技術と同様であるので詳細は省略する。IDコードSidが正当なIDコードであると認証されると、運賃箱1の動作を許可する。なお、タグ54が本発明の金庫側通信部に相当し、本体側通信部55が本発明の本体側通信部に相当する。
運賃箱1は、近距離無線通信を用いて金庫20を認証するので、運賃箱1に正規の金庫が装着されたか否かを確認できる。また、運賃箱1に取り付けられた金庫20が、各金庫固有のIDコードSidで特定されるので、金庫20を運賃箱1から取り外して中の金銭を計数するときに、IDコードSidに基づいて金庫20が取り付けられていた運賃箱1を特定し、運賃箱1で収受した金額を把握することができる。
また、近距離無線通信を使用するため、従来とは異なり、運賃箱1と金庫20との間に電気的接点を設けたり、金庫20に電池を設けたりしなくてもよい。従って、定期的に補修や交換が必要になる部分を従来よりも少なくすることができる。
また、タグ54と本体側通信部55との位置関係は、互いに近接していれば厳密に対応していなくともよい。また、金庫20や金庫収納部22の表面に汚れが付着しても認証に支障が起こりにくい。このため、金庫の認証における不具合の発生を抑制することができる。
タグ54は、本体側通信部55から無線通信によるデータの書き込みが可能となっていてもよい。本体側通信部55は、運賃箱1の制御モジュール16のコントローラ135(後述する)の命令に従ってタグ54に対するデータの書き込みを行う。コントローラ135は、紙幣識別モジュール14及び硬貨識別モジュール15が検出した貨幣データを基に、金庫20に収納された金額データを処理する。コントローラ135は、プローブ27の操作により金庫扉施錠機構23が解錠されたことを検出すると、本体側通信部55に金額データ書き込みの命令を送る。本体側通信部55は、無線通信を介してタグ54に金額データを書き込む。これにより、金庫20にID情報のみならず、金額データも持たせることが可能となる。
なお、タグ54に金額データが書き込まれると、タグ54にフラグが立てられる。金庫20を運賃箱1から取り外すと、このフラグが消去されない限り、金庫20を運賃箱1に再び取付けしても上記のフラグの認識に基づき運賃箱1の運用動作は停止される。これにより、金庫20の中の金銭を不正に取り出して運賃箱1に再度取り付けるといった金庫20の不正運用が防止される。ちなみに、タグ54に立てられたフラグは、例えば営業所に設置された現金回収装置(図示略)で金庫20内の貨幣が回収される際に、現金回収装置に設けられた無線通信部から無線通信でフラグの消去が行われることによりリセットされる。
[紙幣受入口切換機構56の説明]
次に、紙幣受入口切換機構56の構成を説明する。図11(a),(b)に示すように、紙幣受入口3には、通常の紙幣受入口として使用される紙幣通常受入口3aと、紙幣通常受入口3aで紙幣詰まりが生じたときに予備の紙幣受入口として使用される紙幣予備受入口3bとが設けられている。紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bは、操作パネル2において近傍位置に配置され、紙幣通常受入口3aが優先して使用されている。
図11〜図13に示すように、紙幣受入口3には、紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bの一方を開放し他方を閉塞する紙幣受入口切換機構56が設けられている。この場合、上蓋10には、紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bの一方を選択的に開放するシャッタ部材57が軸58回りに回転可能に取り付けられている。シャッタ部材57は、幅方向の両端が折れ曲がり、紙幣受入側から見たときに断面U字状を呈する。ともにスリット状の紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bは、装置幅方向Xに沿って延びる軸58の軸方向と略平行になるように配置されている。
図13に示すように、上蓋10の背面には、シャッタ部材57の回動位置を切り換える際に操作する紙幣受入口切換レバー59が設けられている。紙幣受入口切換レバー59は、扉部60が設けられたレバー収納部61に収納されている。紙幣受入口切換レバー59は、装置高さ方向Zに動かして操作される。なお、紙幣受入口切換レバー59が本発明の切換操作部に相当する。
図11〜図13に示すように、シャッタ部材57は、リンク機構62を介して紙幣受入口切換レバー59に連結されている。リンク機構62は、板状の複数のリンク部材62a,62bが連結されて構成されるとともに、上蓋10の紙幣受入口3の側壁10aの内面に沿わせて配置されている。図12に示すように、紙幣受入口切換レバー59は、固定板63の回動ピン64に回動可能に連結されており、固定板63は、上蓋10の側壁10aの内面に取り付けられている。図14に示すように、紙幣受入口切換レバー59を上げた状態では、シャッタ部材57は、軸58を中心として回動して下に倒れ、紙幣通常受入口3aを開放する通常位置に配置される。一方、図15に示すように、紙幣受入口切換レバー59を下に引くと、シャッタ部材57は、軸58を中心として回動して立ち上がり、紙幣予備受入口3bを開放するバイパス位置に配置される。
図12、図14及び図15に示すように、上蓋10には、シャッタ部材57の位置を検出する紙幣受入口切換検出センサ65が取り付けられている。紙幣受入口切換検出センサ65には、フォトカプラが使用されている。紙幣受入口切換検出センサ65は、紙幣受入口切換レバー59の突片66を検出しないとき、シャッタ部材57が通常位置に配置されていることを示す信号としてオフ信号を出力する。紙幣受入口切換検出センサ65が突片66を検出するときには、シャッタ部材57がバイパス位置に配置されていることを示す信号としてオン信号を出力する。
図12に示すように、紙幣受入口切換機構56には、シャッタ部材57をバイパス位置で保持するロック機構67が設けられている。ロック機構67は、主に紙幣受入口切換レバー59、固定板63、蝶番68及び係止部69からなる。固定板63には、蝶番68を介して係止部69が回動可能に取り付けられている。係止部69は、蝶番68の付勢力で紙幣受入口切換レバー59に向かって突出する位置に配置される。係止部69は、紙幣受入口切換レバー59を上下に動かしたときに紙幣受入口切換レバー59と干渉する位置関係にある。紙幣受入口切換レバー59を下に倒すと、紙幣受入口切換レバー59は、係止部69の内面側に当接し、蝶番68の付勢力に対抗して係止部69を押し戻す。紙幣受入口切換レバー59が係止部69を固定板63に向かって押し戻しながら進み、係止部69を乗り越えると、係止部69は蝶番68の付勢力によって紙幣受入口切換レバー59向かってに突出した位置に戻る。この後、紙幣受入口切換レバー59を上に戻そうとしても、紙幣受入口切換レバー59は、係止部69に引っ掛り、係止部69を乗り越えることができないので、紙幣受入口切換レバー59は元の位置には戻らない。これにより、シャッタ部材57がバイパス位置でロックされる。シャッタ部材57を通常位置に戻すとき、上蓋10の鍵を管理する権限を有する人が上蓋10の鍵を外して開け、箱本体8の内部を露出させ、係止部69を手で押しながら、紙幣受入口切換レバー59を通常位置に戻すことによりロック機構67のロックが解除される。なお、ロック機構67は、本発明のロック機構及び係止解除機構に相当する。
[紙幣識別モジュール14の説明]
次に、紙幣識別モジュール14の構成を説明する。図16〜図18に示すように、紙幣識別モジュール14においてモジュール本体14aの上部には、紙幣通常受入口3aから受け入れた紙幣の識別を行う紙幣識別器70が設けられている。紙幣識別器70には、側方に開口しており、紙幣通常受入口3aに挿入された紙幣を受け入れる紙幣識別器入口71aが形成されている。紙幣識別器70は、紙幣識別器入口71a付近に配置された紙幣識別センサ72によって受け入れた紙幣の正否及び額面を識別し、その識別結果を制御モジュール16のコントローラ135に送る。紙幣識別器70として、種々のものを使用することができるが、本実施形態では、カナダのキャッシュコード・カンパニー・インコーポレーテッド社(CashCode Company Inc.)製のスタッカレス・ビル・バリデイタ(Stackerless Bill Validator)が使用されている。
図18に示すように、モジュール本体14aの内部には、紙幣識別器入口71aから受け入れられた紙幣が金庫20に搬送されるときに通る紙幣通常搬送通路73が形成されている。紙幣通常搬送通路73は、鉛直方向に延びる一対の支持枠74,75によって形成されている。
外側の支持枠74には、紙幣通常搬送通路73において紙幣を内部に引き込む一対の搬送ベルト76,76が設けられている。搬送ベルト76,76は、支持枠74に沿って鉛直方向に整列して設けられた複数組の搬送ローラ78,78に張設されている。内側の支持枠75には、一対の送りローラ79,79が設けられており、対向する位置にある中央の搬送ローラ78aと協同して紙幣を奥に引き込む。送りローラ79,79は、送りローラ79,79を揺動可能に支持する一対の支持片80,80を介して支持枠75に取り付けられている。送りローラ79,79は、紙幣識別器70の紙幣識別センサ72から紙幣の長さよりも離れた位置に配置されている。モジュール本体14aの下部には、搬送ベルト76,76と対向する位置に、2つで1組の搬送ローラ82,82が鉛直方向に2組設けられ、搬送ベルト81,81が搬送ローラ82,82に各々張設されている。
紙幣通常搬送通路73には、紙幣通常搬送通路73における紙幣詰まりを検出する一対の光学センサである複数組の紙幣詰まり検出センサ83が、紙幣通常搬送通路73を挟むように設けられている。
紙幣識別モジュール14の正面上部には、上方に開口しており、紙幣予備受入口3bに挿入された紙幣を受け入れる紙幣バイパス入口71bが形成されている。紙幣識別モジュール14の正面寄りの内部には、紙幣バイパス入口71bから受け入れられた紙幣が金庫20に搬送されるときに通る紙幣バイパス通路84が形成されている。紙幣バイパス入口71bには、紙幣予備受入口3bに挿入された紙幣を金庫20に搬送する紙幣搬送ユニット84aが設けられている。
図19に示すように、可動ユニット85は、縦断面で示すと中間部で屈曲した形状に形成されており、モジュール本体14aに架設された軸部86に可動ユニット85の下端が連結されている。紙幣バイパス通路84は、モジュール本体14aの正面側の支持壁87と、可動ユニット85とで囲まれる領域により形成されている。可動ユニット85は、モジュール本体14aに対し軸部86で支持されて選択的に開閉可能となっており、可動ユニット85が開くことにより紙幣バイパス通路84を外部に露出可能としている。
図18に示すように、紙幣バイパス通路84は、可動ユニット85及び支持壁87の形状に従い、紙幣バイパス入口71b側において鉛直方向に真っ直ぐ延びる通路が、中間部で屈曲し、途中から斜めを向く形状を有する。紙幣バイパス通路84は、下側である通路出口側の端において紙幣通常搬送通路73に連通されており、紙幣バイパス通路84で搬送された紙幣は、紙幣通常搬送通路73に合流する。紙幣バイパス通路84は、箱本体8の正面壁8aに沿わせて配置されるとともに、通路が装置高さ方向Z(上下方向)に延びるように形成されている。
図18及び図19に示すように、支持壁87には、紙幣バイパス通路84において紙幣を内部に引き込む一対の搬送ベルト88,88が設けられている。搬送ベルト88,88は、2個1組の搬送ローラ89,89に各々張設されている。可動ユニット85には、2個1組の送りローラ90,90が搬送ローラ89,89に各々対応して複数設けられており、搬送ローラ89,89とローラ90,90とが協同して紙幣を搬送する。これら送りローラ90,90は、送りローラ90,90を支持する一対の支持片91,91を介して可動ユニット85に取り付けられている。
モジュール本体14aには、搬送ベルト76,81,88の駆動源となるモータ92が設けられている。モータ92は、ギヤ、プーリ、ベルト等の動力伝達部92aを介して各搬送ローラ78,82,89に連結され、各々の搬送ベルトに動力を伝達する。具体的に述べると、モータ92は、ギヤ群163及びベルト164を介して、搬送ローラ78,78の軸端部に連結された駆動ギヤ165に連結されている。また、この駆動ギヤ165には、搬送ローラ82,82の軸端部に連結された従動ギヤ166に噛合されている。
本実施形態では、紙幣受入口3として紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bが設けられ、これらの一方が紙幣受入口切換機構56のシャッタ部材57によって選択的に開放される。これにより、紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが発生したときには、シャッタ部材57をそれまでの通常位置からバイパス位置に回動させ、紙幣通常受入口3aに代えて紙幣予備受入口3bを有効とするので、紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが発生しても、紙幣の受け入れを継続して行うことができる。また、このときは紙幣通常受入口3aがシャッタ部材57にて閉じられるので、紙幣予備受入口3bを使用しなければならないことが直ぐに分かる。よって、紙幣詰まり後の紙幣の受け入れもスムーズに継続して行うこともできる。
図18及び図19に示すように、紙幣バイパス入口71bには、紙幣バイパス入口71bから受け入れた紙幣の幅方向の大きさを判別する紙幣判別センサ93が取り付けられている。紙幣判別センサ93は、光学センサであり、紙幣バイパス入口71bの開口両側に、一般的な大きさの磁気カードよりも幅広に離隔して一対設けられており、挿入された券類の幅寸法が紙幣判別センサ93の間隔よりも大きいか否かを検出する。紙幣判別センサ93の検出結果に基づき、コントローラ135がモータ92の駆動を制御する。これにより、磁気カードが誤挿入されたとき、幅寸法が小さいことから紙幣ではないと判別してモータ92を停止させ、磁気カードが運賃箱1の内部に取り込まれてしまうことを防ぐ。また、紙幣バイパス通路84にも、先述の紙幣詰まり検出センサ83と同様の複数の紙幣詰まり検出センサ94が設けられている。なお、紙幣判別センサ93が本発明の紙幣検出部に相当し、コントローラ135が本発明の紙幣判別部に相当する。
本実施形態では、紙幣受入口切換機構56が手動式であるので、紙幣受入口切換機構56の構造を簡素にすることができる。
紙幣受入口切換機構56によりシャッタ部材57をバイパス位置としたとき、シャッタ部材57がロック機構67によってロックされるので、紙幣バイパス通路84を有効とした後は、紙幣受入口切換レバー59の操作によってシャッタ部材57を通常位置に戻すことができなくなる。よって、紙幣詰まりが発生している紙幣通常搬送通路73に紙幣を入れてしまう虞を抑制することができる。
紙幣受入口切換機構56のロック機構67は、上蓋10の内部に配置されているので、上蓋10のシリンダ錠12を解錠して上蓋10を開けない限り、バイパス位置にあるシャッタ部材57を通常位置に戻すことができない。よって、ロック機構67の不正使用を抑止することができる。
紙幣受入口切換機構56のリンク機構62は、上蓋10の側壁10aの内面に沿わせて配置されている。よって、上蓋10内に紙幣受入口切換機構56の部材を配置可能なスペースが広く残されている。
紙幣バイパス入口71bに紙幣判別センサ93が設けられ、この紙幣判別センサ93により挿入されたものが紙幣であると判別されたときにのみ、紙幣バイパス通路84での紙幣受入れが実行される。よって、紙幣より幅の狭い紙片や磁気カードを紙幣バイパス通路84に取り込んでしまうことがない。
紙幣バイパス通路84は箱本体8の正面壁8aに沿わせて配置されるので、紙幣バイパス通路84が箱本体8内において端に位置する。よって、箱本体8内の電装品収納部13を広くすることができる。また、金庫20を紙幣バイパス通路84の下方に配置されているので、紙幣を紙幣バイパス通路84から金庫20に搬送するとき、紙幣を上から下に送るというシンプルなルートで金庫20に搬送することができる。よって、紙幣バイパス通路84における紙幣詰まりを生じ難くすることができる。
[硬貨搬送通路切換機構95の説明]
次に、硬貨搬送通路切換機構95の構成を説明する。図13に示すように、上蓋10の背面には、硬貨搬送通路を切り換える硬貨搬送通路切換レバー96が設けられている。硬貨搬送通路切換レバー96は、開閉自在の扉部97を有するレバー収納部98に収納されている。硬貨搬送通路切換レバー96は、装置高さ方向Zに沿って動かして操作される。
図20〜図22に示すように、硬貨識別モジュール15のモジュール本体15aには、硬貨の行き先を切り換える弁部材99が硬貨の落下方向に対して交差する方向X(装置幅方向)にスライド可能であるように弁部材99を支持する座部100が設けられている。
弁部材99の端部には、奥行き方向に延びる支持シャフト101が取り付け固定されており、支持シャフト101は、座部100に貫通するように設けられた一対の長孔102,102に挿通されている。各長孔102は、横方向に長い孔である。支持シャフト101は、長孔102に案内されて方向Xにスライド可能である。
座部100には、固定シャフト106が支持シャフト101に平行に設けられている。弁部材99に形成された長孔107に固定シャフト106が挿通されており、固定シャフト106は、長孔107の長手方向に従って方向Xにスライドすることが可能となっている。
よって、支持シャフト101が長孔102,102に案内され、固定シャフト106が長孔107に案内されることにより、弁部材99が方向Xにスライド可能となっている。
弁部材99に対向する位置には、弁部材99と協同して硬貨搬送通路を形成する硬貨通路形成部103が設けられている。弁部材99及び硬貨通路形成部103の間の隙間は、通常時に硬貨が入れられる通常硬貨入口104aを形成する。弁部材99には、通常硬貨入口104aが使用できないときの予備として予備硬貨入口104bが貫通するように設けられている。弁部材99の上面には、上に乗った硬貨が予備硬貨入口104bに滑り落ち易くするために斜面部105が形成されている。支持シャフト101及び固定シャフト106の間には、弁部材99を硬貨通路形成部103に近寄せる方向に常時付勢する一対の付勢部材108,108が架設されている。付勢部材108は、コイルばねである。
固定シャフト106には、弁部材99の位置決めに作用するレバー部109が、固定シャフト106回りに回動可能に連結されている。固定シャフト106には、レバー部109を起こし側(図20の視点において反時計回り側)に常時付勢する戻し付勢部材110が設けられている。戻し付勢部材110は、トーションばねである。レバー部109の先端には、一対の突片111,111が形成されている。
図20及び図22に示すように、硬貨搬送通路切換レバー96は、リンク機構112を介してレバー押し上げ片113に連結されている。リンク機構112は、板状のリンク部材112aと棒状のリンク部材112bとからなるとともに、上蓋10の硬貨受入口4側の側壁10bの内面に近接して沿わせて配置されている。硬貨搬送通路切換レバー96及びリンク部材112aは、側壁10bの内面に形成された回動ピン114に回動可能に連結されている。また、レバー押し上げ片113は、三角形状の板により形成されており、角部分が側壁10bの内面の回動ピン115に回動可能に連結されている。硬貨搬送通路切換レバー96が下に倒されると、レバー押し上げ片113は、レバー部109の基端側に下から当接して押し上げ、レバー部109を固定シャフト106回りに起こす方向に回動させる。
図21(a)に示すように、レバー部109の先端に形成された一対の係止凹部116に支持シャフト101が当接し、付勢部材108,108の付勢力によって係止凹部116に対して押圧されると、支持シャフト101と係止凹部116とが互いに係止する。このとき、弁部材99は、硬貨通路形成部103から離間して通常硬貨入口104aを開放する通常位置に配置される。一方、図22に示すように、レバー部109の基端側がレバー押し上げ片113によって押し上げられ、固定シャフト106を軸としてレバー部109が回動する。これにより、支持シャフト101及び係止凹部116の係合が外れると、弁部材99は、付勢部材108の付勢力によって硬貨通路形成部103に接近する方向にスライドし、レバー部109に設けられた規制端109aに当接して止まる。このとき、図21(b)に示すように、弁部材99は、通常硬貨入口104aを閉じ、予備硬貨入口104bを開放するバイパス位置に配置される。予備硬貨入口104bは、斜面部105の低位側に位置しており、弁部材99の上に乗った硬貨は、斜面部105の勾配に従って滑り落ち、予備硬貨入口104bへと案内される。
図20〜図22に示すように、硬貨搬送通路切換機構95には、弁部材99をバイパス位置で保持するロック機構117が設けられている。図21(b)に示すように、このロック機構117は、弁部材99がバイパス位置に位置したときに、硬貨搬送通路切換レバー96の操作が解除されると、レバー部109が戻し付勢部材110の付勢力にてレバー押し上げ片113を押し戻しながら回動して元の位置に戻る。このとき、規制端109aと支持シャフト101とが接しながら滑り、支持シャフト101がレバー部109の一対の規制溝117a,117aに引掛かり、弁部材99をバイパス位置で保持する。支持シャフト101が規制溝117aに引掛かった後は、硬貨搬送通路切換レバー96の操作によっては弁部材99を通常位置に戻すことはできなくなる。ロックされたロック機構117は、上蓋10の鍵を外して開け、内部からレバー部109を手で回動させ、弁部材99を通常位置に戻し、支持シャフト101を係止凹部116に引掛かった状態に戻すことにより解除可能である。
モジュール本体15aには、弁部材99の位置を検出する硬貨通路切換検出センサ118が設けられている。硬貨通路切換検出センサ118は、フォトカプラである。弁部材99が通常位置にあるときには、硬貨通路切換検出センサ118は、弁部材99の突片99aを検出してオン信号を出力し、弁部材99がバイパス位置に配置されるときには、突片99aを検出しないのでオフ信号を出力する。
図21及び図24に示すように、モジュール本体15aの側部には、予備硬貨入口104bから受け入れた硬貨が通るバイパス用硬貨シュート119が設けられている。バイパス用硬貨シュート119の内部は、硬貨バイパス通路120として形成されている。
[硬貨識別モジュール15の説明]
次に、硬貨識別モジュール15の構成を説明する。図25及び図26に示すように、モジュール本体15aには、通常硬貨入口104aから落下してきた硬貨を1枚ずつ下方に送り出す硬貨整列部15bが設けられている。
硬貨整列部15bは、硬貨を整流する一対のローラ部121,122を備えている。一対のローラ部121,122は、位置が固定されている固定ローラ部121と、固定ローラ部121に対して離間/接近の往復動が可能な可動ローラ部122とからなる。ローラ部121,122は、通常硬貨入口104aから流入した硬貨が通る硬貨通常搬送通路123を構成する。
モジュール本体15aの背面には、ローラ部121,122の回転駆動源となるモータ124と、可動ローラ部122を離間/接近させる際の駆動源となるモータ125とが取り付けられている。固定ローラ部121には、通常硬貨入口104aから落下してきた硬貨を上方に戻す方向に回転する整流ローラ126と、整流ローラ126を通過した硬貨を1枚ずつ下方に送り出す送りローラ127とが設けられている。また、可動ローラ部122にも、同様に整流ローラ126及び送りローラ127が設けられている。
送りローラ127,127の下方には、送りローラ127,127を通過した硬貨を識別する硬貨識別器128が設けられている。硬貨識別器128は、上面中央に硬貨通し孔128aを有し、この硬貨通し孔128aを硬貨が1枚ずつ通過するとき、硬貨の種類を識別する。また、硬貨識別器128は、受け入れた硬貨が正規硬貨であるか否かも識別する。硬貨識別器128は、種々のものを使用することができるが、本実施形態では、ドイツのナショナル・リジェクターズ・インコーポレイテッド社(NATIONAL REJECTORS,INC.GmbH)製のカレンツァf2(Currenza f2)が使用されている。
図23に示すように、硬貨識別モジュール15の下方には、金庫20に繋がる金庫側硬貨シュート129と、硬貨返却口9に繋がる返却口側硬貨シュート130とが設けられている。金庫側硬貨シュート129は、バイパス用硬貨シュート119の出口119aに繋がる129aと、硬貨通常搬送通路123に繋がる129bとの2つが形成されている。バイパス用硬貨シュート119を通過する硬貨は、金庫側硬貨シュート129aを介して金庫20に入る。
また、図23に示すように、硬貨受入口4には、硬貨受入口4への硬貨受入の有無を検出する硬貨受入検出センサ131が設けられている。硬貨受入検出センサ131は、光学センサであり、硬貨受入口4を挟むように複数設けられている。硬貨識別モジュール15は、硬貨受入検出センサ131で硬貨が入れられたことを検出すると、モータ124を駆動して硬貨搬送を開始する。
硬貨識別モジュール15は、通常、図23〜図25に示すように可動ローラ部122が固定ローラ部121に接近した位置状態をとり、落下してきた硬貨を一枚ずつ硬貨識別器128に送り出す。硬貨識別器128は、受け入れた硬貨を識別し、当該硬貨が正規硬貨であれば、硬貨識別器128の下面に形成された排出口132から、正規硬貨を金庫側硬貨シュート129bに排出する。一方、硬貨識別器128は、受け入れた硬貨が不正なものであると識別すると、硬貨識別器128の下面に形成された排出口133から、不正な硬貨を返却口側硬貨シュート130に排出する。
また、硬貨識別モジュール15の硬貨通常搬送通路123には、硬貨通常搬送通路123における硬貨詰まりを検出する硬貨詰まり検出センサ134が複数設けられている。硬貨詰まり検出センサ134は、光学センサであり、固定ローラ部121に取り付けられている。
硬貨識別モジュール15は、硬貨詰まり検出センサ134でローラ部121,122に硬貨詰まりが発生したことを検出すると、モータ125を駆動して、図26に示すように可動ローラ部122を固定ローラ部121から離間させる。可動ローラ部122が離間位置に配置されると、ローラ部121,122の間に大きな間隔が生じ、詰まった硬貨が下方に落下する。この詰まり解消動作により落下した硬貨は、返却口側硬貨シュート130に入り、硬貨返却口9に排出される。
硬貨通常搬送通路123に硬貨詰まりが発生した際には、硬貨搬送通路切換機構95の弁部材99によって、硬貨の搬送通路を硬貨通常搬送通路123から硬貨バイパス通路120に切り換えることが可能である。よって、硬貨通常搬送通路123に硬貨詰まりが発生しても、硬貨の受け入れを継続して行うことができる。また、硬貨の搬送通路を切り換えた場合であっても、切り換え前と同じ硬貨受入口4を使用するので、多数の硬貨がまとめて硬貨受入口4に投入されても、硬貨受入口4は詰まりを生じさせることなく順番に受け入れることでこれに対応することができる。
本実施形態では、硬貨搬送通路切換機構95が手動式であるので、硬貨搬送通路切換機構95の構造を簡素にすることができる。
硬貨搬送通路切換機構95により弁部材99をバイパス位置にして硬貨バイパス通路120が有効となった後、弁部材99はロック機構117によってバイパス位置に維持されるので、硬貨搬送通路切換レバー96の操作によって弁部材99を通常位置に戻すことができない。よって、硬貨詰まりが発生している硬貨通常搬送通路123に硬貨を入れてしまう虞を抑制することができる。
硬貨搬送通路切換機構95のロック機構117が上蓋10の内部に配置されているので、上蓋10のシリンダ錠12を解錠して上蓋10を開けない限り、バイパス位置にある弁部材99を通常位置に戻すことができない。よって、ロック機構117の不正な解除を防ぐことができる。
硬貨搬送通路切換機構95にリンク機構62が設けられ、このリンク機構62が上蓋10の側壁10aの内面に沿わせて配置されている。よって、上蓋10内の空いたスペースを有効利用して、紙幣受入口切換機構56の部材を配置することができる。
このように、紙幣詰まりが生じた場合でも紙幣バイパス通路84によって紙幣を受け取ることができるだけでなく、硬貨詰まりが生じた場合でも硬貨バイパス通路120によって硬貨を受け取ることができるので、乗客が運賃支払いをスムーズに行うことができる。
[貨幣の下流通路及びその周辺の説明]
図27及び図28に示すように、箱本体8の内部において、紙幣識別モジュール14の下方位置には、紙幣識別モジュール14から排出された紙幣を金庫20に送る紙幣送り下部通路機構167が設けられている。紙幣送り下部通路機構167は、枠状に形成された枠壁168を備えている。枠壁168の上面は開放されており、枠壁168の底壁には紙幣通路孔168a(図28に図示)が開口されている。また、枠壁168は、複数の金属板を組み合わせることにより形成されている。
枠壁168の内部には、対向するように配置された2枚の板材169,170によって、紙幣識別モジュール14の下方位置における紙幣の通り道である紙幣送り下部通路171が構成されている。2枚の板材169,170の上端には、紙幣の案内部169a,170aが、互いに間隔を広げる側に折り曲げられるようにして設けられている。また、2枚の板材169,170は、箱本体8の鉛直方向に対して所定角度傾いて配置されている。これにより、紙幣送り下部通路171は屈曲した形状となっており、紙幣識別モジュール14から金庫20への紙幣の通り道は、断面略S字状(略くの字状)を呈する。よって、紙幣送り下部通路171を上から覗いても、出口まで直線的に視線が通らないので、金庫20の内部が見え難くなっている。
紙幣送り下部通路機構167には、紙幣を紙幣送り下部通路171において下方に搬送する2つで1組の紙幣搬送ローラ172,172が回動可能に設けられている。紙幣搬送ローラ172,172の対向位置には、紙幣搬送ローラ172,172とともに紙幣を挟み、紙幣を送る際に紙幣を案内する2つで1組の従動ローラ176,176が回動可能に設けられている。
紙幣搬送ローラ172,172の軸端部には、これらローラと一体回動するローラ用ギヤ173が取り付けられている。ローラ用ギヤ173には、紙幣識別モジュール14の従動ギヤ166(図18参照)の回転をローラ用ギヤ173に伝えて紙幣搬送ローラ172を回転させる連結ギヤ174が噛合している。連結ギヤ174は、小径ギヤ174a及び大径ギヤ174bを有し、小径ギヤ174aが従動ギヤ166に噛合可能であり、大径ギヤ174bがローラ用ギヤ173に噛み合う。連結ギヤ174は、軸支され回動可能に連結部175に設けられている。
連結部175は、板片からなり、紙幣搬送ローラ172の端部に支持されていて、紙幣搬送ローラ172の軸を支点として回動可能である。連結部175と枠壁168との間には、連結部175を上方(図27の矢印R方向)に常時付勢する付勢部材177が取り付けられている。
紙幣識別モジュール14を電装品収納部13にセットした際、紙幣識別モジュール14の従動ギヤ166が連結ギヤ174の小径ギヤ174aに上から押し当てられ、従動ギヤ166と連結ギヤ174とが噛み合う。よって、紙幣識別モジュール14のモータ92が回動して従動ギヤ166が回動すると、連結ギヤ174が連れ回りする。これにより、連結ギヤ174に噛合しているローラ用ギヤ173が回り、紙幣搬送ローラ172,172が回動して紙幣を下方に搬送する。
図29に示すように、箱本体8の内部において、硬貨識別モジュール15の下方位置には、硬貨識別モジュール15から排出された硬貨を金庫20に送る硬貨送り下部通路部178が設けられている。硬貨送り下部通路部178には、枠状に形成された枠壁179を備えている。枠壁179の上面は開放されており、枠壁179の底壁には硬貨通路孔179aが開口されている。硬貨送り下部通路部178には、一対の板材180,180が設けられ、板材180,180の間の空間と硬貨通路孔179aとによって硬貨送り下部通路181が構成されている。金庫側硬貨シュート129a,129bは、硬貨送り下部通路181において通路が合流する。
硬貨送り下部通路部178には、硬貨送り下部通路181において硬貨の異常な滞留が生じたことを検出する複数の硬貨不正詰まり検出センサ182が設けられている。硬貨不正詰まり検出センサ182として、例えばフォトカプラが使用される。硬貨不正詰まり検出センサ182は、平行に並んで配置されている。硬貨送り下部通路181に硬貨が滞留すると、検出センサ182が硬貨の存在を検出し、異常発生をコントローラ135に報知する。ここで、仮に硬貨収納室35の入口が、板などで塞がれた状態で金庫20が箱本体8にセットされると、投入硬貨が硬貨収納室35の入口でせき止められて積み上がる。そして、金庫20を運賃箱1から取りはずす際に、このせき止められて金庫20に入っていない硬貨が盗まれる可能性がある。本実施形態の硬貨不正詰まり検出センサ182は、硬貨送り下部通路181における硬貨の滞留の有無を検出し、コントローラ135に報知することで、金庫20の入口を塞ぐような不正行為を発見可能とする。
図30に示すように、運賃箱1は、箱上部183と箱下部184とで分離可能となっている。箱下部184には、前述の金庫扉19、金庫20、金庫扉施錠機構23、紙幣送り下部通路機構167、硬貨送り下部通路部178などの部品が設けられている。箱上部183と箱下部184とを分離可能とするのは、箱上部183を箱下部184から取り外し可能とすることによって、箱下部184にある金庫扉施錠機構23をメンテナンス可能とするためである。箱上部183と箱下部184とは、箱本体8の内部4隅に取り付けられる締結部185によって一体組み付け可能である。締結部185として、例えばねじが使用されている。
[運賃箱1の電気構成の説明]
次に、運賃箱1の電気的構成を説明する。図31に示すように、制御モジュール16には、運賃箱1の動作を統括制御するコントローラ135が設けられている。制御モジュール16には、中継基板18を介して、紙幣識別モジュール14、硬貨識別モジュール15、磁気カード読取部5、ICカード読取部6、乗客用表示器7、電源モジュール17、赤外線通信ポート28及び本体側通信部55が接続されている。コントローラ135は、CPU、ROM、RAM等の電子部品(図示略)を備えた制御基板である。また、制御モジュール16には、運賃箱1の動作状態を通知する表示インターフェース136が接続されている。表示インターフェース136は、運転席に設けられた操作盤(図示しない)の液晶表示器である。紙幣識別モジュール14及び硬貨識別モジュール15は、制御モジュール16によって制御され、電源モジュール17から電力が供給される。
コントローラ135は、紙幣詰まり検出センサ83,94で紙幣詰まりを検出したとき、表示インターフェース136の表示により運転士(オペレータ)に紙幣詰まりを通知する。また、コントローラ135は、硬貨詰まり検出センサ134で硬貨詰まりを検出したとき、可動ローラ部122を動作させても硬貨詰まりが解消できなければ、硬貨詰まりを表示インターフェース136の表示により運転士に通知する。
制御モジュール16には、紙幣受入口切換検出センサ65及び硬貨通路切換検出センサ118が接続されている。コントローラ135は、紙幣受入口切換検出センサ65からオン信号が入力されると、シャッタ部材57が通常位置からバイパス位置に切り換わったことを示す通知を表示インターフェース136で実行する。また、コントローラ135は、硬貨通路切換検出センサ118からオン信号が入力されると、弁部材99が通常位置からバイパス位置に切り換わったことを示す通知を表示インターフェース136で実行する。
[運賃箱1の動作説明]
次に、本例の運賃箱1の動作を、図14、図15、図21、図22、図32及び図33を用いて説明する。
まず、運賃が紙幣で支払われる場合について説明する。図14に示すように、通常時は、紙幣受入口切換レバー59を上げ、シャッタ部材57が通常位置に配置される。よって、図32(a)に示すように、紙幣予備受入口3bがシャッタ部材57で閉じられ、紙幣通常受入口3aが開放される。このため、乗客は、運賃を支払うとき、紙幣の受入口を間違えることなく、紙幣通常受入口3aに紙幣を挿入することが可能である。紙幣通常受入口3aに挿入された紙幣は、紙幣識別器70で種類が識別され、紙幣通常搬送通路73を通過して金庫20に搬送される。
ここで、紙幣が紙幣通常搬送通路73で詰まった場合について説明する。コントローラ135は、紙幣詰まり検出センサ83で紙幣詰まりを検出すると、表示インターフェース136に紙幣詰まりの発生を示す表示をして運転士に通知する。これにより、運転士は、紙幣通常搬送通路73における紙幣詰まりを認識する。
運転士は、紙幣詰まりが発生したことを認識すると、図15に示すように、紙幣受入口切換レバー59を下方に倒し操作する。このとき、紙幣受入口切換レバー59にリンク機構62を介して繋がるシャッタ部材57が軸58回りに回動し、通常位置からバイパス位置に切り換わる。よって、図32(b)に示すように、紙幣通常受入口3aがシャッタ部材57で閉じられ、紙幣予備受入口3bが開放される。このため、紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが生じても、乗客は紙幣予備受入口3bを使用して運賃箱1に紙幣を入れることが可能となる。紙幣予備受入口3bから受け入れた紙幣は、紙幣バイパス通路84を通り、紙幣識別器70によって紙幣種別が判定されることなく金庫20に搬送される。
続いて、運賃が硬貨で支払われる場合について説明する。図21(a)に示すように、通常時は、付勢部材108の付勢力に抗して弁部材99を硬貨通路形成部103の反対側に移動させることにより、支持シャフト101がレバー部109の係止凹部116に係止される。よって、図32(a)に示すように、弁部材99が通常位置に配置され、通常硬貨入口104aが開放される。このため、硬貨受入口4が受け入れた硬貨は、通常硬貨入口104aに入り、硬貨通常搬送通路123を通って金庫20に搬送される。
ここで、硬貨が硬貨通常搬送通路123で詰まった場合について説明する。硬貨詰まり検出センサ134の詰まり検出に基づき、コントローラ135は可動ローラ部122を固定ローラ部121から離間するように移動させる。これにより、硬貨通常搬送通路123が拡幅されて詰まり硬貨が落下し、詰まりが解消される。しかし、可動ローラ部122が固定ローラ部121から離間するように移動しても、硬貨詰まりが解消されない場合もあり得る。このとき、コントローラ135は、硬貨詰まり検出センサ134の検出に基づき、表示インターフェース136で硬貨詰まりを運転士に通知する。これにより、運転士は、硬貨通常搬送通路123における硬貨詰まりを認識する。
運転士は、硬貨詰まりが発生したことを認識すると、図22に示すように、硬貨搬送通路切換レバー96を下方に倒す。このとき、硬貨搬送通路切換レバー96にリンク機構112を介して繋がるレバー押し上げ片113が上方に動き、レバー部109の基端を下方から持ち上げる。レバー部109は、固定シャフト106回りに同図の時計回りに回動する。すると、レバー部109の係止凹部116に係止されていた支持シャフト101が係止凹部116から外れ、係止が解消される。よって、図21(b)に示すように、弁部材99が付勢部材108の付勢力により、硬貨通路形成部103に向かってスライドする。
このため、図32(b)に示すように、弁部材99がバイパス位置に配置され、通常硬貨入口104aが閉じられ、予備硬貨入口104bが開放される。硬貨受入口4が受け入れた硬貨は、予備硬貨入口104bに入り、硬貨バイパス通路120を通って、硬貨識別器128によって硬貨種別が判定されることなく金庫20に搬送される。
以上のように、本実施形態においては、運賃箱1に紙幣の紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bの2つの入口が設けられ、紙幣通常受入口3a及び紙幣予備受入口3bの一方がシャッタ部材57によって選択的に開放可能となっている。このため、通常時はシャッタ部材57が通常位置に配置され紙幣通常受入口3aを有効とされる。紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが生じたときには、紙幣受入口切換レバー59を操作してシャッタ部材57をバイパス位置に回転させることにより、紙幣通常受入口3aに代えて紙幣予備受入口3bが開放される。
紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが発生した後は、紙幣バイパス通路84を通じて紙幣を金庫20に収納することが可能となるので、紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが発生しても、紙幣の受け入れを継続して行うことが可能となる。また、紙幣予備受入口3bを有効としたとき、紙幣通常受入口3aはシャッタ部材57によって閉じられるので、乗客は紙幣予備受入口3bを使用すべきであるとすぐに認識する。よって、紙幣通常搬送通路73に紙幣詰まりが生じたり、紙幣識別器70に故障が生じたりして紙幣通常搬送通路73が使用できなくなった場合でも、スムーズに紙幣の受け入れを継続することが可能となる。
また、硬貨受入口4に弁部材99が設けられ、通常硬貨入口104a及び予備硬貨入口104bの一方が弁部材99によって選択的に有効とされる。よって、硬貨通常搬送通路123に硬貨詰まりが発生しても、予備硬貨入口104bを使用すれば、以降の硬貨の受け入れを継続して実行することが可能となる。また、通常硬貨入口104a及び予備硬貨入口104bの両方とも、1つの硬貨受入口4が共通に使用されるので、複数の受入口を設けなくてもよい。
[別例の説明]
次に、本発明の別の実施形態に係る運賃箱150について図34及び図35に従って説明する。なお、運賃箱1と共通した運賃箱150の構成については、同じ符号で示す。
図34は、運賃箱150の上面、正面、及び右側面を示す斜視図であり、正面上部に、紙幣受入口3、硬貨受入口4、磁気カード読取部5、ICカード読取部6、及び乗客用表示器7を有する操作パネル2が設けられており、正面壁8aには硬貨返却口9及び赤外線通信ポート28が設けられている。図35は、運賃箱1の六面図であり、図35(a)が左側面図、図35(b)が正面図、図35(c)が右側面図、図35(d)が背面図、図35(e)が平面図、図35(f)が底面図である。
運賃箱150においては、上蓋10の上面が全体的に滑らかな斜面で構成されており、簡素な構造である。紙幣受入口3が紙幣の幅に対応する窪みを有しシャッタ部材57が目立ちにくくなっており、紙幣通常受入口3aと紙幣予備受入口3bとのいずれを使用する場合にも乗客が利用可能な紙幣受入口を容易に認識可能である。
本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更や改良を行うことが可能であり、例えば、以下の態様に変更してもよい。
・図36及び図37に示すように、紙幣識別モジュール14の取り外しを規制する施錠部13aの代わりに、箱本体8の内部4隅の締結部185の1つの取り外しを規制する施錠部190が設けられてもよい。施錠部190には、締結部185を上から覆い隠す隠し蓋191と、この隠し蓋191を閉じ状態で施錠するシリンダ錠192とが設けられる。隠し蓋191は、ヒンジ機構193によって横開き可能に箱上部183に取り付けられている。この隠し蓋191は、締結部185のみならず、前述の金庫扉施錠機構23も上から覆い隠す。よって、このシリンダ錠192の鍵を管理する権限を有する者でなければ、図37に示すように隠し蓋191を開くことができないので、締結部185の不正な取り外しや、金庫扉施錠機構23の不正操作が防止される。
・シャッタ部材57は、軸まわりに回動する方式に限定されず、シャッタ部材がスライドして位置を変えることにより、複数の紙幣受入口から一つを選択的に開放するものとしてもよい。
・運賃箱1は、バイパス通路(紙幣バイパス通路84、硬貨バイパス通路120)を経て金庫20に収納された金額を運転士等のオペレータが入力する入力手段と、その入力手段によって入力された金額を記憶する記憶手段とをさらに備えたものとしてもよい。この場合、バイパス通路を使用中の収受に関するデータを運賃箱1に保持しておくことができる。
・弁部材99は、上蓋10の内部に隠れる構造に限らず、上蓋10の外部に露出する構造としてもよい。
・紙幣受入口切換機構56及び硬貨搬送通路切換機構95の構造は、上記実施形態に限定されず、適宜変更可能である。また、紙幣識別モジュール14や硬貨識別モジュール15の構造も同様に変更可能である。
・紙幣受入口切換機構56及び硬貨搬送通路切換機構95は、手動式に限らず、電動式、機械的な動力によって作動するものでもよい。
・シャッタ部材57は、上蓋10の外部に露出する構造に限らず、上蓋10の内部に隠れる構造としてもよい。
・シャッタ部材57がバイパス位置にあることを紙幣受入口切換検出センサ65が検出するだけでなく、シャッタ部材57が通常位置にあることを検出するセンサを設けて、2位置についてシャッタ部材を検出するようにしてもよい。
・ロック機構67,117は、解除機構を箱本体8の外部に備え、上蓋10を開放せずとも解除可能としてもよい。
・紙幣識別モジュール14、硬貨識別モジュール15、制御モジュール16、電源モジュール17等の電装品を収納するための構造は、適宜変更可能である。例を挙げると、電装品収納部13の中に仕切り板を設けて各モジュールを位置決めして収納するようにしてもよい。また、上開きの蓋ではなく、箱本体8の前面や側面に扉を設けて電装品収納部13を開閉可能とし、側方から電装品を出し入れするようにしてもよい。
・金庫扉施錠機構23の解錠のための認証は、プローブ27を使用した赤外線通信方式に限定されず、手入力用のキーボードを使用した暗号入力方式としてもよい。また、ICタグを用いた無線通信方式や、磁気カードを利用する認証方式でもよいし、これらの複数の方式を組み合わせてもよい。
・金庫20の認証は、近距離無線通信を用いた認証方法に限定されず、他の方法も採用可能である。赤外線通信等の他の無線通信手段を用いてもよいし、電気的接点によって運賃箱と金庫とを接続して通信するようにしてもよい。
・運賃箱1に搭載されたセンサ類やアクチュエータ類は、実施形態に記載のものに限らず、適宜変更可能である。
・上蓋10は、ヒンジ11を正面側に、シリンダ錠12を背面側に備えているものに限定されず、ヒンジが背面側または側面側に設けられ、シリンダ錠12が正面側または側面側に設けられているものであってもよい。ヒンジが背面側または側面側に設けられていると、正面側からメンテナンスを行いやすい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に記載する。
(A)箱本体と、該箱本体に収納され、貨幣を収受する金庫と、前記箱本体の外面に開口し、紙幣を受け入れる紙幣通常受入口と、前記紙幣通常受入口から受け入れた紙幣を前記金庫に搬送する紙幣通常搬送通路と、前記箱本体の外面に開口し、紙幣を受け入れる紙幣予備受入口と、前記紙幣予備受入口から受け入れた紙幣を前記金庫に搬送する紙幣バイパス通路と、前記紙幣通常受入口を開放する通常位置と、前記紙幣予備受入口を開放するバイパス位置との2位置を選択的にとるシャッタ部材を有し、該シャッタ部材によって紙幣を受け入れる受入口を設定する紙幣受入口切換機構と、を備える。
この構成によれば、運賃箱の紙幣受入口として、紙幣通常受入口の他に紙幣予備受入口を設け、これら受入口の一方をシャッタ部材により選択的に開放する。このため、通常紙幣搬送通路に紙幣詰まりが発生したときは、シャッタ部材によって紙幣通常受入口を閉じ、紙幣予備受入口を開放して、紙幣予備受入口を紙幣受入口として使用する。よって、紙幣通常搬送通路に紙幣詰まり等の問題が生じて紙幣通常搬送通路が使用不可能となったとしても、乗客は紙幣での運賃支払いを継続して行うことが可能となる。また、通常紙幣搬送通路が使用できなくなったときには、紙幣通常受入口が閉じられて紙幣予備受入口が開放されるので、紙幣通常搬送通路が使用できないことを乗客は直ぐに気付くことになる。このため、紙幣通常搬送通路が使用不可能になった場合においても、紙幣による運賃支払いの受け取りをスムーズに継続して行うことが可能となる。
(B)前記紙幣受入口切換機構は、前記箱本体の外部に設けられ手動操作で前記シャッタ部材を前記通常位置から前記バイパス位置へ切り換えるための切換操作部、及び該切換操作部の操作に応じて前記シャッタ部材を可動させる切換伝達機構をさらに備える。この構成によれば、シャッタ部材の位置切り換えを手動によって行うので、シャッタ部材の位置切り換えの構造を簡素にすることが可能となる。
(C)前記紙幣受入口切換機構は、前記シャッタ部材が前記紙幣予備受入口を開放するバイパス位置にあるときに、係止して当該シャッタ部材を前記バイパス位置で保持するロック機構をさらに有する。この構成によれば、シャッタ部材がバイパス位置をとったとき、シャッタ部材はロック機構によってバイパス位置で維持されるので、シャッタ部材をバイパス位置にして紙幣バイパス通路を有効とした後は、シャッタ部材を通常位置に切り換えることができなくなる。よって、紙幣詰まりが発生している紙幣通常搬送通路に、乗客が紙幣を挿入してしまう状況を生じ難くすることが可能となる。
(D)前記箱本体は、施錠可能な蓋部を有し、前記紙幣受入口切換機構は、前記蓋部を開けると解除操作が可能となるように前記箱本体の中に設けられ、前記解除操作が行われると前記ロック機構の係止を解除する係止解除機構をさらに有する。この構成によれば、ロック機構の係止を解除するには、蓋部を開けて係止解除機構を操作する必要がある。このため、蓋部が施錠されているときには、係止部の係止を解除する解除機構を操作するには、蓋部の鍵を解錠しなくてはならないため、解錠の権限をもたない者によるロック機構の不正解除を防ぐことが可能となる。
(E)前記切換伝達機構は、前記箱本体の側壁内面に沿わせて配置され、該切換操作部の操作力を前記シャッタ部材に伝達して前記シャッタ部材を可動させるリンク機構である。この構成によれば、紙幣受入口切換機構にリンク機構を設け、このリンク機構を箱本体の側壁内面に沿わせて箱本体内の周縁部に配置するので、箱本体内に収納される他の機構や装置類との干渉を生じにくくし、より密に配置することができるので、運賃箱の大型化を抑制することが可能となる。
(F)前記紙幣バイパス通路に設けられ、前記紙幣予備受入口に挿入された挿入物を前記金庫に搬送可能な紙幣搬送装置と、前記紙幣予備受入口に設けられ、前記予備紙幣受入口に挿入された前記挿入物が異物か否かを検出する挿入物検出部と、該挿入物検出部の検出結果に基づき、前記挿入物が紙幣であるか否かを判別し、前記紙幣搬送装置を制御して、紙幣であると判別された挿入物のみを前記金庫に搬送させる紙幣判別部と、をさらに備える。この構成によれば、紙幣予備受入口に入れられた挿入物が異物か否かが検出され、紙幣であると判別された場合にのみ紙幣の受入れが実行されるので、紙幣とは寸法が異なる磁気カードやその他の券類を誤って箱本体内に取り込んでしまう状況を発生し難くすることが可能となる。
(G)前記紙幣バイパス通路は、前記箱本体の壁部に縦方向に沿って配置されており、前記金庫は、前記紙幣バイパス通路の下方に配置されている。この構成によれば、紙幣バイパス通路の向きを箱本体の壁部に沿った縦方向としたので、紙幣バイパス通路が箱本体内において端に位置することになる。よって、箱本体内の収納部を広くとることが可能となる。また、金庫を紙幣バイパス通路の下方に配置したので、紙幣を紙幣バイパス通路経由で金庫に搬送するとき、紙幣を上から下に送るというシンプルなルートで金庫に搬送することが可能となる。よって、紙幣バイパス通路に紙幣詰まりを生じ難くすることが可能となる。
(H)前記箱本体の外面に開口し、複数の硬貨を受け入れる硬貨受入口と、前記箱本体の内部に設けられ、該硬貨受入口から受け入れた硬貨を前記金庫に搬送する硬貨通常搬送通路と、前記箱本体の内部に設けられ、前記硬貨受入口から受け入れた硬貨を前記金庫に搬送可能な硬貨バイパス通路と、前記硬貨受入口の裏側において硬貨の落下方向に対して交差する方向にスライド可能に設けられ、前記硬貨通常搬送通路及び前記硬貨バイパス通路の一方を選択的に開放する弁部材を有し、該弁部材によって硬貨受入口から受け入れた硬貨が通る通路を決定する硬貨搬送通路切換機構と、をさらに備える。この構成によれば、硬貨通常搬送通路に硬貨詰まりが発生した際には、硬貨搬送通路切換機構によって硬貨の搬送通路を硬貨通常搬送通路から硬貨バイパス通路に切り換えることが可能となる。よって、硬貨通常搬送通路に硬貨詰まりが発生したとしても、乗客は、硬貨での運賃支払いを継続して行うことが可能となる。また、このように硬貨搬送通路を切り換えたとしても、硬貨受入口は同じであるので、硬貨詰まりが発生して硬貨バイパス通路に切換えたときにも、乗客は、通常時と同じ硬貨受入口に硬貨を投入して運賃を支払うことが可能となる。
ところで、硬貨通常搬送通路に硬貨詰まりが発生したとき、通路を硬貨バイパス通路に切り換えて硬貨取り込みを継続する技術は種々考案されている。しかし、硬貨受入口を動かして硬貨バイパス通路に切換えたり、硬貨識別器の内部の装置を動かして硬貨バイパス通路に切換えたりする構造を採用すると、機構が大掛かりになり、運賃箱が大型化してしまう虞がある。また、硬貨受入口が複数の硬貨を受け入れる大型の開口部を有する場合には、複数の硬貨受入口をシャッタ部材で切換えて使用する構造にすると、やはり機構が大掛かりになってしまう。これに対し、本構成によれば、硬貨受入口切換機構は、硬貨通常搬送通路と硬貨バイパス通路の硬貨受入口を共通とし、弁部材を動かして内部の通路を切り換える構造としたので、運賃箱の大型化を抑制することができる。
(I)運賃として支払われる貨幣を収受する運賃箱であって、内部に収納部が設けられており、施錠可能な蓋部を上部に有し、該蓋部を開くと前記収納部が上向きに開口する箱本体と、前記硬貨受入口から受け入れた硬貨が正当な硬貨であるか否かを判別し額面を識別する硬貨識別器及び下向きに設けられた機器側コネクタを有し、前記収納部に着脱可能に収納される硬貨識別モジュールと、前記硬貨識別器で正当であると判別された硬貨を前記金庫に搬送する硬貨通常搬送通路と、前記箱本体の外面に開口し、紙幣を受け入れる紙幣通常受入口と、受け入れた紙幣が正当な紙幣であるか否かを判別し額面を識別する紙幣識別器及び下向きに設けられた機器側コネクタを有し、前記収納部に着脱可能に収納される紙幣識別モジュールと、前記紙幣識別器で正当であると判別された紙幣を前記金庫に搬送する紙幣通常搬送通路と、前記箱本体の外面に開口し、紙幣を受け入れる紙幣予備受入口と、前記箱本体の内部に設けられ、前記紙幣予備受入口から受け入れた紙幣を前記金庫に搬送する紙幣バイパス通路と、前記紙幣通常受入口を開放する通常位置、及び前記紙幣予備受入口を開放するバイパス位置の2位置を選択的にとることにより前記紙幣通常受入口及び前記紙幣予備受入口のいずれか一方を選択的に開放することが可能なシャッタ部材、前記箱本体の外部に設けられ、手動操作によって前記シャッタ部材を前記通常位置から前記バイパス位置へ切り換える操作のための切換操作部、前記箱本体の側壁内面に沿わせて配置され、前記切換操作部の操作力を前記シャッタ部材に伝達して前記シャッタ部材を可動させるリンク機構、前記シャッタ部材が前記バイパス位置に配置されると係止して当該シャッタ部材を前記バイパス位置で保持するロック機構、及び前記収納部に設けられ、解除操作が行われると前記係止部の係止を解除する係止解除機構、を有する紙幣受入口切換機構と、下向きに設けられた機器側コネクタを有し、前記収納部に着脱可能に収納され、前記硬貨識別器及び前記紙幣識別器の識別結果に基づき、受領した紙幣及び硬貨に関する収受情報を処理する制御モジュールと、下向きに設けられた機器側コネクタを有し、前記収納部に着脱可能に収納され、少なくとも前記硬貨識別器、前記紙幣識別器、及び前記制御モジュールに電力を供給する電源モジュールと、前記硬貨識別器、前記紙幣識別器、前記制御モジュール及び前記電源モジュールが上方から挿入されて所定位置に収納されたとき、夫々の前記機器側コネクタが接続される位置に上向きに設けられた本体側コネクタを有する電装品接続部と、を備える。この構成によれば、紙幣バイパス通路及び紙幣通路切換用リンク機構を箱本体内の端に配置し、収納部に収められる硬貨識別モジュール、紙幣識別モジュール、制御モジュール及び電源モジュールの各電装品を上下方向に着脱可能とすることで、紙幣バイパス通路及び紙幣受入口切換機構と各電装品との干渉を生じにくくし、限られた空間の有効利用を可能とするとともに運賃箱の大型化を防ぐ。また、硬貨識別器等の電装品を運賃箱の収納部に収納すると、位置決め部材によって位置決めされて機器側コネクタと本体側コネクタとが接続される。これにより、コネクタ間のハーネス接続を不要とし、電装品の着脱にともなうコネクタ接続を容易化することが可能となる。
(J)前記金庫は、前記箱本体に対して着脱可能に形成されており、前記金庫に設けられ、電力電波を受信し、該電力電波を電源として動作し、前記金庫固有のID信号を発信する金庫側通信部と、前記箱本体に設けられ、前記電力電波を送信するとともに、前記ID信号を受信する本体側通信部と、受信した前記ID信号に基づき前記金庫を認証する金庫認証部とをさらに備える。この構成によれば、運賃箱に金庫が装着されたとき、認証部によって金庫が認証されるので、運賃箱に正規の金庫が装着されたか否かを確認できる。また、運賃箱に取り付けられた金庫がID信号で特定されるので、金庫を運賃箱から取り外して中の金銭を計数するときに、その金庫が装着されていた運賃箱と、金庫の内容物とを対応づけて管理することができる。
(K)前記シャッタ部材は、回転軸と、該回転軸に取着され当該回転軸回りに回動可能なシャッタ部とを有し、前記紙幣通常受入口は、前記シャッタ部材の回転方向の一方側に位置し、前記紙幣予備受入口は、前記シャッタ部材の前記回転軸を挟んだ他方側に位置し、前記シャッタ部材が回転してシャッタ部の位置を変えることによって前記紙幣通常受入口及び前記紙幣予備受入口のいずれかを選択的に開放する。この構成によれば、シャッタ部材が位置を切り換えるときに必要なスペースが小さいので、運賃箱を小型化することができる。これにより、紙幣バイパス通路を設けたときに、紙幣バイパス通路の部材によって運賃箱が大型化してしまう虞を抑制することができる。
(L)前記紙幣通常受入口には、当該受入口に紙幣等の挿入物が挿入されたか否かを検出する挿入物検出手段が設けられ、当該挿入物検出手段が前記挿入物を検出すると、コントローラの制御に基づき紙幣識別モジュールが駆動する。この構成によれば、紙幣識別モジュールを使用しないときは停止して省電力化することができる。これにより、紙幣バイパス通路を使用しているときなど、紙幣識別モジュールを使用しない状況でも紙幣識別モジュールが駆動することで電力を浪費する虞を防ぐ。
(M)受け入れた紙幣の種類を識別して搬送する紙幣識別モジュールと、受け入れた硬貨の種類を識別して搬送する硬貨識別モジュールと、運賃箱の動作を制御する制御モジュールと、運賃箱の電源を制御する電源モジュールとが、前記箱本体の水平面方向に並び配置されている。この構成によれば、電装品が上下に重なり合わないので、どの電装品も独立して個別に収納部に出し入れすることが可能となり、電装品をメンテナンスするときの作業性がよい。これにより、運賃箱のメンテナンス時に、電装品同士が干渉するために、修理や清掃の必要がない電装品をあわせて取り出したり、箱本体に電装品を収納するときに順序に留意したりする必要が解消される。
(N)前記シャッタ部材が前記通常位置または前記バイパス位置のいずれの位置に配置されるかを検出する紙幣受入口切換検出センサと、該紙幣受入口切換検出センサの検出結果に基づき、前記シャッタ部材が前記バイパス位置にある場合には、前記紙幣バイパス通路を使用することを乗客に対して表示する表示装置と、を備える。この構成によれば、シャッタ部材がバイパス位置にあって紙幣予備受入口が開いていることに加えて、表示装置の表示によっても紙幣予備受入口に紙幣を挿入することを乗客に促すことが可能となる。これにより、紙幣バイパス通路を使用するとき、運賃箱の動作が通常時と異なることで乗客が違和感を覚える虞を抑制する。
(O)前記弁部材は、前記通常搬送通路を開放する通常位置と、前記バイパス通路を開放するバイパス位置との2位置をとり、前記箱本体の外部に設けられ、手動操作によって前記弁部材を前記通常位置から前記バイパス位置に切り換えることが可能な硬貨通路切換操作部を備える。この構成によれば、弁部材の位置切り換えを手動によって行うので、弁部材の位置切り換えの構造を簡素にすることが可能となる。
(P)前記弁部材が前記バイパス通路を開放するバイパス位置をとったときに、係止して当該弁部材を前記バイパス位置で保持する弁部材ロック機構を備える。この構成によれば、弁部材をバイパス位置にして硬貨バイパス通路を有効とした後は、弁部材を通常位置に戻すことができなくなる。よって、硬貨詰まりが発生している硬貨通常搬送通路に、乗客が硬貨を投入してしまう状況を生じ難くすることが可能となる。
(Q)前記弁部材ロック機構は、前記箱本体の内部に配置されており、前記蓋部が開放されて解除操作を受けることで前記係止が解除される解除機構を有する。この構成によれば、蓋部の鍵を解錠して内部を操作できる権限をもつ担当者でないと弁部材ロック機構の係止を解除することができないので、弁部材ロック機構の不正な解除を防ぐことが可能となる。これにより、弁部材ロック機構が乗客や運転士などによって任意に解除され、硬貨詰まりが解消されていないにも関わらず弁部材が通常位置に戻るという問題を防ぐ。
(R)前記硬貨通路切換操作部の操作力を前記弁部材に伝達して当該弁部材を可動させる硬貨搬送通路切換用リンク機構を備え、当該リンク機構が前記箱本体の側壁内面に沿わせて配置されている。この構成によれば、硬貨搬送通路切換機構にリンク機構を設け、このリンク機構を箱本体の側壁内面に沿わせて配置するので、硬貨搬送通路切換機構を箱本体内の空いたスペースを有効利用して、部材を配置することが可能となる。これにより、複数の硬貨通路を備えた場合には、硬貨通路が1本の場合よりも箱本体内の空間を多く必要とするため、箱本体を大型化しないと内部の部材の配置が困難になるという問題を抑制する。
(S)前記収納部に収められる電装品である前記硬貨識別モジュール、前記紙幣識別モジュール、前記制御モジュール及び前記電源モジュールには、当該電装品を前記箱本体に着脱自在に固定するための締結具が設けられている。締結具の具体的な例としては、クイック・リリース・ファスナや、ボール・ロック・ピンを挙げることができる。これらの締結具を、電装品に対して脱落しないように取り付ける構造としては、例えば、ピン部分を軸方向(抜き差しする方向)に摺動可能に支持する筒状の支持部を備えており、ピン部分が当該支持部から抜けないように係合する構造を有するクイック・リリース・ファスナを挙げることができる。支持部を電装品に取り付けると、クイック・リリース・ファスナは電装品から脱落しないが、ピン部分が軸方向に摺動可能であって箱本体に対して電装品を締結可能である。これにより、締結具が電装品から脱落することを防止できる。特に、上記の運賃箱1のように、箱本体に対して電装品を上下方向に着脱する場合には、メンテナンス時などに締結具が脱落すると、脱落した締結具が中継基板上に落下したり、金庫内に入ってしまったりする。その結果、当該締結具が運賃箱内の機構に機械的に干渉したり、電気的な短絡を生じさせたりして運賃箱の故障を引き起こす恐れもある。これに対し、締結具の脱落を防止することにより、上記のような故障が生じる恐れを抑制することができる。また、電装品の着脱時に締結具の脱落の恐れがないので、組立、修理及びメンテナンス等の作業を容易にすることができる。
(T)前記蓋部を開いた状態で支持するストッパ機構を備えた。この構成によれば、蓋部を開けたまま保持することが可能となるので、メンテナンス時などの利便性を高める。また、このストッパ機構は、前記蓋部の開き具合を段階的に設定可能としてもよいし、また蓋部が閉じられる途中に、全閉の前段階で一時停止可能としてもよい。
(U)前記箱本体に対して着脱可能に収納される前記金庫に設けられ、電力電波を受信し、該電力電波を電源として動作し、前記金庫固有のID信号を発信する金庫側通信部と、前記箱本体に設けられ、前記電力電波を送信するとともに、前記ID信号を受信する本体側通信部と、受信した前記ID信号に基づき前記金庫を認証する金庫認証部とをさらに備え、前記金庫側通信部のメモリには、前記本体側通信部から運賃に関係するデータが書き込み可能となっている。この構成によれば、金庫側通信部のメモリに、ID情報のみならず、運賃に関係するデータも記憶させることが可能となる。
(V)運賃として投入された紙幣を識別する紙幣識別モジュールと、前記紙幣識別モジュールから排出された紙幣が前記金庫に送られる際の通路となる紙幣送り下部通路とを備え、当該紙幣送り送り通路は、屈曲部を有している。この構成によれば、紙幣送り下部通路を覗き込んでも、通路の先にある前記金庫の内部を見え難くすることが可能となる。
(W)運賃として投入された硬貨を識別する硬貨識別モジュールと、前記硬貨識別モジュールから排出された硬貨が前記金庫に送られる際の通路となる硬貨送り下部通路と、当該硬貨送り通路にて前記硬貨が滞留していることを検出する硬貨不正詰まり検出手段とを備えた。この構成によれば、金庫の入口の外に硬貨が滞留していることを検出するので、不正行為による硬貨の盗難を防止する効果が高い。
(X)前記箱本体は、箱上部と箱下部とで分離可能であり、これらは、複数の締結部によって一体組み付け可能であって、前記箱上部には、少なくとも前記締結部の1つを覆い隠す隠し部と、当該隠し部に覆われた締結部の操作を認証の正当性を確認したときのみ許可する操作者認証部とを備えた。この構成によれば、権限の無い者による不正な箱上部と箱下部との分離を防ぐので、セキュリティ性を高めることが可能となる。なお、操作者認証部は、シリンダ錠の他に、例えば、暗号化無線通信による操作者IDの電子的認証などに適宜変更可能である。