以下、図面を参照して本発明の実施形態によるプロジェクター及びその制御方法について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一部の態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態によるプロジェクターの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態のプロジェクター1は、照明装置10、色分離導光光学系20、液晶光変調装置30R,30G,30B(光変調装置)、クロスダイクロイックプリズム40、投射光学系50、及び制御装置60を備えており、外部から入力される画像信号V1に応じた画像光をスクリーンSCRに向けて投射することによりスクリーンSCR上に画像を表示する。尚、プロジェクター1は、スクリーンSCR上に三次元(3D)の画像を表示可能であるとする。
照明装置10は、固体光源11、集光光学系12、回転蛍光板13、モーター14、コリメーター光学系15、第1レンズアレイ16、第2レンズアレイ17、偏光変換素子18、及び重畳レンズ19を備えており、赤色光、緑色光、及び青色光を含む白色光を射出する。固体光源11は、励起光としてレーザー光からなる青色光(発光強度のピーク:約445nm、図3(a)参照)を射出する。
この固体光源11としては、例えば単一の半導体レーザー素子を備えるもの、或いは面状に配列形成された複数の半導体レーザー素子を備えるものを用いることができる。複数の半導体レーザー素子を備えるものを用いることで、高出力の青色光を得ることができる。また、ここでは、固体光源11として、発光強度のピークが445nmの青色光を射出するものを例に挙げて説明するが、これとは異なる発光強度のピーク(例えば、約460nm)を有するものを用いることもできる。集光光学系12は、第1レンズ12a及び第2レンズ12bを備えており、固体光源11と回転蛍光板13との間の光路上に配設され、固体光源11から射出された青色光を回転蛍光板13の近傍の位置に集光する。
回転蛍光板13は、集光光学系12で集光された励起光としての青色光の一部を、赤色光及び緑色光を含む蛍光に変換するものであり、モーター14によって回転自在に支持されている。図2は、本発明の第1実施形態によるプロジェクターに設けられる回転蛍光板の構成を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)中のA−A線に沿う断面矢視図である。図2に示す通り、回転蛍光板13は、透明な円板13aの一面に、単一の蛍光層としての蛍光体13bが円板13aの周方向に沿って連続して形成されてなるものである。
円板13aは、例えば石英ガラス、水晶、サファイア、光学ガラス、透明樹脂等の青色光を透過する材料を用いて形成されたものである。この円板13aの中心部には、モーター14の回転軸が介挿される穴が形成されている。蛍光体13bは、固体光源11からの青色光の一部を赤色光及び緑色光を含む光(蛍光)に変換し、且つ、青色光の残りの一部を変換せずに通過させる。この蛍光体13bとしては、例えば、YAG系蛍光体である(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceを含有するものを用いることができる。この蛍光体13bは、図2(b)に示す通り、青色光を透過し赤色光及び緑色光を反射するダイクロイック膜13cを介して円板13aの一面に形成されている。
図3は、本発明の第1実施形態によるプロジェクターに設けられる回転蛍光板の蛍光体の特性を示す図であって、(a)は蛍光体に入射する青色光のスペクトルを示す図であり、(b)は蛍光体で変換された蛍光のスペクトルを示す図である。回転蛍光板13に形成された蛍光体13bは、図3(a)に示すスペクトルを有する青色光(B)の一部を、図3(b)に示す赤色光(R)及び緑色光(G)を含む黄色光(蛍光)に変換する。
ここで、図3(a)において符号Bで示すのは、固体光源11が励起光(青色光)として射出する色光成分である。また、図3(b)において符号Rで示すのは、蛍光体13bで変換された蛍光のうち赤色光として利用可能な色成分であり、図3(b)において符号Gで示すのは、蛍光体13bで変換された蛍光のうち緑色光として利用可能な色成分である。つまり、蛍光体13bに青色光が入射すると、蛍光体13bで変換された赤色光及び緑色光と蛍光体13bを通過した青色光とによって、カラー表示に必要な3つの色光が得られることになる。
以上の構成の回転蛍光板13は、固体光源11からの青色光が円板13a側から蛍光体13bに入射するように、蛍光体13bが形成された面を青色光が入射する側とは反対の側に向けて配設される。また、回転蛍光板13は、モーター14によって駆動されて回転している状態で、蛍光体13bが形成された領域に青色光が常時入射するように、集光光学系12の集光位置の近傍に配設される。
回転蛍光板13は、使用時においてモーター14によって、例えば3600〜12000rpm(60〜200Hz)程度の回転数(回転周波数)で回転駆動される。尚、回転蛍光板13の直径は50mmであり、集光光学系12で集光された青色光の回転蛍光板13に対する入射位置は、回転蛍光板13の回転中心から約22.5mm離れた位置に設定されている。つまり、回転蛍光板13は、青色光の集光スポットが約18m/秒で蛍光体13b上を移動するような回転速度でモーター14により回転駆動される。
図1に戻り、コリメーター光学系15は、第1レンズ15a及び第2レンズ15bを備えており、回転蛍光板13からの光を略平行化する。第1レンズアレイ16は、複数の小レンズ16aを有しており、コリメーター光学系15で略平行化された光を複数の部分光束に分割する。具体的に、第1レンズアレイ16が有する複数の小レンズ16aは、照明光軸AXと直交する面内において、複数行及び複数列に亘ってマトリクス状に配列されている。尚、第1レンズアレイ16が有する複数の小レンズ16aの外形形状は、液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域の外形形状に関して略相似形である。
第2レンズアレイ17は、第1レンズアレイ16に設けられた複数の小レンズ16aに対応する複数の小レンズ17aを有する。つまり、第2レンズアレイ17が有する複数の小レンズ17aは、第1レンズアレイ16が有する複数の小レンズ16aと同様に、照明光軸AXと直交する面内において、複数行及び複数列に亘ってマトリクス状に配列されている。この第2レンズアレイ17は、重畳レンズ19とともに、第1レンズアレイ16が有する各小レンズ16aの像を液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域近傍に結像させる。
偏光変換素子18は、偏光分離層、反射層、及び位相差板(何れも図示省略)を有しており、第1レンズアレイ16により分割された各部分光束の偏光方向を、偏光方向の揃った略1種類の直線偏光光として射出する。ここで、偏光分離層は、回転蛍光板13からの光に含まれる偏光成分のうちの一方の直線偏光成分をそのまま透過させ、他方の直線偏光成分を照明光軸AXに垂直な方向に反射する。また、反射層は、偏光分離層で反射された他方の直線偏光成分を照明光軸AXに平行な方向に反射する。更に位相差板は、反射層で反射された他方の直線偏光成分を一方の直線偏光成分に変換する。
重畳レンズ19は、その光軸が照明装置10の光軸と一致するように配置されており、偏光変換素子18からの各部分光束を集光して液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域近傍に重畳させる。上述した第1レンズアレイ16、第2レンズアレイ17、及び重畳レンズ19は、固体光源11からの光を均一化するレンズインテグレーター光学系を構成している。
色分離導光光学系20は、ダイクロイックミラー21,22、反射ミラー23〜25、リレーレンズ26,27、及び集光レンズ28R,28G,28Bを備えており、照明装置10からの光を赤色光、緑色光、及び青色光に分離して液晶光変調装置30R,30G,30Bにそれぞれ導光する。ダイクロイックミラー21,22は、所定の波長領域の光を反射して他の波長領域の光を通過させる波長選択透過膜が透明基板上に形成されたミラーである。具体的に、ダイクロイックミラー21は赤色光成分を通過して緑色光及び青色光成分を反射させ、ダイクロイックミラー22は緑色光成分を反射して青色光成分を通過させる。
反射ミラー23は赤色光成分を反射するミラーであり、反射ミラー24,25は青色光成分を反射するミラーである。リレーレンズ26はダイクロイックミラー22と反射ミラー24との間に配設され、リレーレンズ27は、反射ミラー24と反射ミラー25との間に配設される。これらリレーレンズ26,27は、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の発散等による光の利用効率の低下を防止するために設けられる。集光レンズ28R,28G,28Bは、反射ミラー23で反射された赤色光成分、ダイクロイックミラー22で反射された緑色光成分、及び反射ミラー25で反射された青色光成分を、液晶光変調装置30R,30G,30Bの画像形成領域にそれぞれ集光する。
ダイクロイックミラー21を通過した赤色光は、反射ミラー23で反射され、集光レンズ28Rを介して赤色光用の液晶光変調装置30Rの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー22で反射され、集光レンズ28Gを介して緑色光用の液晶光変調装置30Gの画像形成領域に入射する。ダイクロイックミラー21で反射されダイクロイックミラー22を通過した青色光は、リレーレンズ26、反射ミラー24、リレーレンズ27、反射ミラー25、及び集光レンズ28Bを順に介して青色光用の液晶光変調装置30Bの画像形成領域に入射する。
液晶光変調装置30R,30G,30Bは、入射された色光を外部から入力される画像信号に応じて変調して、赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光をそれぞれ生成する。尚、図1では図示を省略しているが、集光レンズ28R,28G,28Bと液晶光変調装置30R,30G,30Bとの間にはそれぞれ入射側偏光板が介在配置されており、液晶光変調装置30R,30G,30Bとクロスダイクロイックプリズム40との間にはそれぞれ射出側偏光板が介在配置されている。
液晶光変調装置30R,30G,30Bは、一対の透明なガラス基板の間に電気光学物質である液晶を密閉封入した透過型の液晶光変調装置であり、例えば、ポリシリコンTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスター)をスイッチング素子として備える。上述した不図示の入射側偏光板の各々を介した色光(直線偏光)の偏光方向が、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々に設けられたスイッチング素子のスイッチング動作によって変調されることにより、画像信号に応じた赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光がそれぞれ生成される。
クロスダイクロイックプリズム40は、上述した不図示の射出側偏光板の各々から射出された画像光を合成してカラー画像を形成する。具体的に、クロスダイクロイックプリズム40は、4つの直角プリズムを貼り合わせてなる略立方体形状の光学部材であり、直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。略X字状の一方の界面に形成された誘電体多層膜は赤色光を反射するものであり、他方の界面に形成された誘電体多層膜は青色光を反射するものである。これらの誘電体多層膜によって赤色光及び青色光は曲折され、緑色光の進行方向と揃えられることにより、3つの色光が合成される。投射光学系50は、クロスダイクロイックプリズム40で合成されたカラー画像をスクリーンSCRに向けて拡大投射する。
制御装置60は、信号処理部61、PWM信号生成部62、光源駆動部63、回転蛍光板駆動部64、及び液晶駆動部65を備えており、外部から入力される画像信号V1の信号処理を行うとともに、信号処理によって得られる各種情報を用いて固体光源11、回転蛍光板13(モーター14)、及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御する。尚、本実施形態では、制御装置60が固体光源11に対してPWM制御を行うことにより、固体光源11から射出される光の光量制御を行っている。
信号処理部61は、外部から入力される画像信号V1に対して信号処理を行い、固体光源11、回転蛍光板13(モーター14)、及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御するために必要な情報を得る。具体的には、画像信号V1に基づいて表示されるべき画像の明るさの代表値を示す明るさパラメータを抽出し、固体光源11を制御するための制御信号C1として出力する。
また、信号処理部61は、抽出した明るさパラメータに基づいて画像信号V1に伸張処理を行い、伸張処理後の画像信号を画像信号V2として出力する。例えば、画像信号V1に基づいて表示可能な画像の階調が255階調であり、抽出された明るさパラメータが200階調目の明るさを示すものである場合には、画像信号V1に対して係数α=(255/200)を乗算する処理を行う。かかる伸張処理を行うのは、液晶光変調装置30R,30G,30Bのダイナミックレンジを最大活かした高コントラストの画像の表示を可能とするためである。
更に、信号処理部61は、回転蛍光板駆動部64から出力される回転検出信号(回転蛍光板13の回転数(モーター14の回転数)を示す検出信号)をモニターしつつ、回転蛍光板13(モーター14)の回転数を制御する回転制御信号C2を出力する。尚、詳細は後述するが、信号処理部61は、回転蛍光板13を回転駆動することによって生ずるフリッカーを防止するために、固体光源11のPWM制御周波数と回転蛍光板13の回転数とを所定の関係にする制御信号C1及び回転制御信号C2を出力する。
PWM信号生成部62は、信号処理部61から出力される制御信号C1に基づいて固体光源11の制御周期内における発光時間と消灯時間との比であるデューティー比を決定し、決定したデューティー比を有するPWM信号S1を生成する。具体的に、PWM信号生成部62は、固体光源11から射出される光の光量とデューティー比との関係を示すテーブル(図示省略)を有しており、このテーブルを用いて制御信号C1に応じたデューティー比を決定する。
尚、上記の制御周期とは、制御装置60による固体光源11のPWM制御周期であってPWM制御周波数の逆数である。ここで、PWM制御周波数は、スクリーンSCRに表示すべき画像のフレーム周波数(例えば、60[Hz])以上の周波数であり、その上限は例えば数MHz程度である。PWM制御周波数をフレーム周波数以上の周波数に設定するのは、固体光源11をPWM制御することによって生ずるフリッカーを防止するためである。
光源駆動部63は、PWM信号生成部62で生成されるPWM信号S1に基づいて、固体光源11を駆動する駆動信号D1を生成する。光源駆動部63で生成される駆動信号D1は、PWM信号S1に基づいて周波数、デューティー比、及び位相が規定され、PWM信号S1の信号レベルが「H(ハイ)」レベルのときの電流が一定であるパルス状の信号であり、固体光源11に供給される信号である。
回転蛍光板駆動部64は、回転蛍光板13(モーター14)の回転数を検出し、その検出結果を回転検出信号として信号処理部61に出力する。また、信号処理部61から出力される制御信号C2に基づいて回転蛍光板13(モーター14)を駆動する駆動信号D2を生成してモーター14に出力する。液晶駆動部65は、信号処理部61で伸張処理が行われた画像信号V1から、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を駆動する駆動信号D3を生成する。
ここで、固体光源11のPWM制御周波数をA[Hz]とし、回転蛍光板13(モーター14)の回転周波数をB[Hz]とすると、信号処理部61は、以下の(1)〜(3)に示す関係式の何れか1つの関係式を満たす制御信号C1,C2を生成して固体光源11及び回転蛍光板13を制御する。
A=B …(1)
A=2B …(2)
|A−B|≧20且つ|A−2B|≧20 …(3)
つまり、信号処理部61は、上記(1)式に示す通り、固体光源11のPWM制御周波数と回転蛍光板13の回転周波数とが等しくなるように、又は、上記(2)式に示す通り、固体光源11のPWM制御周波数が回転蛍光板13の回転周波数の2倍になるように固体光源11及び回転蛍光板13を制御する。或いは、信号処理部61は、上記(3)に示す通り、固体光源11のPWM制御周波数と回転蛍光板13の回転周波数との差分の絶対値、又は、固体光源11のPWM制御周波数と回転蛍光板13の回転周波数の2倍の周波数との差分の絶対値が20[Hz]未満とならないように固体光源11及び回転蛍光板13を制御する。
信号処理部61が以上の制御を行うのは、固体光源11をPWM制御することによって生ずるフリッカーと、回転蛍光板13を回転駆動することによって生ずるフリッカーとが干渉することによって、ユーザに視認され得る低周波数成分のフリッカーが生ずるのを防止するためである。ここで、回転蛍光板13を回転駆動することによって生ずるフリッカーは、蛍光体13bの塗布量の面内ムラ、モーター14と回転蛍光板13との取り付け誤差、回転蛍光板13と固体光源11との取り付け誤差等の様々な要因により、回転蛍光板13によって変換される蛍光の強度が回転蛍光板13の回転角度に応じて変動することで生ずるものであり、ユーザが視認することができない高周波数成分が主体である。
図4は、本発明の第1実施形態において、固体光源のPWM制御周波数を変化させた場合に生ずるフリッカーの目視判定結果を示す図であって、(a)は回転蛍光板の回転周波数が100[Hz]である場合の目視判定結果を示す図であり、(b)は回転蛍光板の回転周波数が150[Hz]である場合の目視判定結果を示す図である。尚、図4(a),(b)中の文字「OK」はフリッカーが視認されなかったことを示し、文字「NG」はフリッカーが視認されたことを示す。
回転蛍光板13の回転周波数が100[Hz]である場合には、図4(a)に示す通り、固体光源11のPWM制御周波数が回転蛍光板13の回転周波数の1以上の整数倍の周波数(100,200,300[Hz])のときにはフリッカーが視認されていない。これに対し、固体光源11のPWM制御周波数が101〜115[Hz],190[Hz],205〜210[Hz]であるときにはフリッカーが視認されている。
次いで、回転蛍光板13の回転周波数が150[Hz]である場合には、図4(b)に示す通り、固体光源11のPWM制御周波数が回転蛍光板13の回転周波数の1以上の整数倍の周波数(150,300,450[Hz])のときにはフリッカーが視認されていない。これに対し、固体光源11のPWM制御周波数が151〜165[Hz],290[Hz],305〜310[Hz]であるときにはフリッカーが視認されている。
このように、図4(a),(b)に示す目視判定結果からは、固体光源11のPWM制御周波数が、回転蛍光板13の回転周波数と等しい場合(A=Bの場合)、或いは、回転蛍光板13の回転周波数の2倍の周波数である場合(A=2Bの場合)には、フリッカーが視認されていないことが分かる。このため、信号処理部61は、前述した(1),(2)に示す関係式の何れか一方の関係式が満たされるように固体光源11及び回転蛍光板13を制御する。
また、図4(a),(b)に示す目視判定結果からは、固体光源11のPWM制御周波数が、回転蛍光板13の回転周波数よりも高く回転蛍光板13の回転周波数との差分が20[Hz]未満である場合(0<(A−B)<20の場合)、或いは、回転蛍光板13の回転周波数の2倍の周波数との差分の絶対値が20[Hz]未満である場合(|A−2B|<20の場合)にフリッカーが視認されていることが分かる。尚、図4(a),(b)では図示されていないが、固体光源11のPWM制御周波数が、回転蛍光板13の回転周波数よりも低く回転蛍光板13の回転周波数との差分が20[Hz]未満である場合(−20<(A−B)<0の場合)もフリッカーが視認される。このため、信号処理部61は、前述した(3)に示す関係式が満たされるように固体光源11及び回転蛍光板13を制御する。
ここで、図4(a),(b)に示す通り、固体光源11のPWM制御周波数が回転蛍光板13の回転周波数又はその2倍の周波数から僅かでもずれると、フリッカーが視認されてしまう。このため、前述した(1),(2)式を満足させるためには、固体光源11のPWM制御周波数及び回転蛍光板13の回転周波数を厳密に制御する必要がある。これに対し、固体光源11のPWM制御周波数又は回転蛍光板13の回転周波数が多少ずれても、前述した(3)式が満たされることが多い。このため、前述した(1),(2)式を満足させる制御精度が得られない場合には、前述した(3)式が満たされるように固体光源11及び回転蛍光板13を制御するのが望ましい。
信号処理部61は、例えば固体光源11のPWM制御周波数を3D画像のフレーム周波数(120[Hz])にする制御信号C1を生成し、回転蛍光板13の回転周波数を167[Hz](10000rpm)にする制御信号C2を生成する。固体光源11のPWM制御周波数及び回転蛍光板13の回転周波数をこのように設定した場合には、その差分の絶対値が47Hzとなり、前述した(3)式が満たされる。尚、スクリーンSCR上に3D画像を表示するため、液晶駆動部65は、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を240[Hz]で駆動する駆動信号D3を生成する。
次に、上記構成におけるプロジェクター1の動作について説明する。プロジェクター1の電源が投入されると、まず信号処理部61から回転蛍光板駆動部64に対して制御信号C2が出力される。これにより、回転蛍光板駆動部64で駆動信号D2が生成されてモーター14が駆動されることにより、回転蛍光板13の回転駆動が開始される。回転蛍光板13の回転駆動が開始されると、信号処理部61は、回転蛍光板駆動部64から出力される回転検出信号をモニターしつつ回転制御信号C2を出力し、回転蛍光板13の回転周波数が一定値(167[Hz])となるように制御する。
回転蛍光板13の回転周波数が一定値になると、信号処理部61からPWM信号生成部62に対して制御信号C1が出力される。すると、制御信号C1に基づいたPWM信号S1がPWM信号生成部62で生成され、このPWM信号S1に基づいた駆動信号D1が光源駆動部63で生成される。光源駆動部63で生成された駆動信号D1は固体光源11に供給され、固体光源11は120[Hz]のPWM制御周波数でPWM制御される。
尚、ここでは、説明を簡単にするために、回転蛍光板13の回転周波数が一定値になった直後に固体光源11をPWM制御しているが、固体光源11の制御は、回転蛍光板13の回転周波数が一定値になった後に画像信号V1が入力されてから行うようにしても良い。また、回転蛍光板13の回転周波数が一定になった後に、回転蛍光板13の回転周波数が大きく減少することがあれば、固体光源11の制御を停止するのが望ましい。これは、回転蛍光板13に設けられた蛍光体13bの発熱による効率低下、劣化、及び破壊を防止するためである。
固体光源11がPWM制御により駆動されると、固体光源11から図3(a)に示すスペクトルを有する青色光(励起光)が射出される。固体光源11から射出された青色光は、集光光学系12で集光されてモーター14によって回転駆動されている回転蛍光板13に入射する。回転蛍光板13に入射した青色光は、その一部が回転蛍光板13に形成された蛍光体13bによって図3(b)に示す赤色光(R)及び緑色光(G)を含む黄色光(蛍光)に変換され、残りが蛍光体13bを通過する。
蛍光体13bを通過した青色光及び蛍光体13bで変換された黄色光(赤色光及び緑色光)は、コリメーター光学系15で略平行化された後に、第1レンズアレイ16〜重畳レンズ19を順次介することにより、均一化されるとともに偏光状態が制御されて白色光として照明装置10から射出される。照明装置10から射出された白色光は色分離導光光学系20によって赤色光、緑色光、及び青色光に分離され、分離された赤色光、緑色光、及び青色光が液晶光変調装置30R,30G,30Bに入射する。
液晶光変調装置30R,30G,30Bに入射した赤色光、緑色光、及び青色光は、液晶光変調装置30R,30G,30Bが駆動されることによりそれぞれ変調され、これにより赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光がそれぞれ生成される。ここで、液晶光変調装置30R,30G,30Bは、信号処理部61で画像信号V1に対する伸張処理等を行って得られた画像信号V2に基づいて生成される駆動信号D3により240[Hz]の周波数で駆動される。液晶光変調装置30R,30G,30Bで生成された画像光は、クロスダイクロイックプリズム40でカラー画像に合成された後に投射光学系50によりスクリーンSCRに向けて拡大投射される。これにより、外部から入力される画像信号に応じた画像がスクリーンSCR上に表示される。
次に、制御装置60によって行われる固体光源11及び液晶光変調装置30R,30G,30Bの制御についてより詳細に説明する。図5は、本発明の第1実施形態によるプロジェクターで用いられる信号を示すタイミングチャートである。尚、図5においては、画像信号V2に含まれる垂直同期信号(VSYNC)、駆動信号D3に含まれる画像データ及び走査信号、駆動信号D1、並びに、3D画像を鑑賞するためにユーザに着用されるメガネを制御する制御信号(左メガネ制御信号及び右メガネ制御信号)を図示している。尚、以下では、図5に示す各信号について説明した後に、固体光源11及び液晶光変調装置30R,30G,30Bの制御の詳細について説明する。
図5に示す通り、画像信号V2に含まれる垂直同期信号(VSYNC)は、周波数が120[Hz]であって、1周期の長さT1が8.33[msec]の信号である。これは、スクリーンSCR上に3D画像を表示するため、左目用の画像光と右目用の画像光とを毎秒60フレーム分ずつスクリーンSCR上に投射する必要があるからである。また、駆動信号D3に含まれる画像データは、左目用の画像データ「L」と右目用の画像データ「R」とが垂直同期信号の周期毎に交互に現れるデータである。
走査信号は、垂直同期信号の1周期の間に、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を2回順次走査する信号である。尚、図5においては、走査信号そのものを図示している訳ではなく、理解を容易にするために、走査信号による液晶光変調装置30R,30G,30Bの走査位置を示している。具体的に、図5に示す走査信号を示すグラフについては、その縦軸に液晶光変調装置30R,30G,30Bの走査位置をとり、横軸に時間をとっている。液晶光変調装置30R,30G,30Bが順次走査される場合には、走査が開始される位置と時間との関係が符号L1,L2を付した斜線のように表される。
以上の走査信号によって、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々において、左目用の画像が垂直同期信号の1周期の間に2回走査され、続いて右目用の画像が垂直同期信号の1周期の間に2回走査されることになる。このような走査を行うのは、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を順次走査するときに、左目用の画像と右目用の画像とが混在するのを防止するためである。
つまり、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を順次走査する場合には、例えば、液晶光変調装置30R,30G,30Bの上部において右目用の画像の走査が開始されても、液晶光変調装置30R,30G,30Bの下部には左目用の画像データが保持されたままであり、左目用の画像と右目用の画像とが混在する状況が生ずる。このような混在した画像がユーザに知覚されると違和感のある3D画像になってしまう。よって、かかる状況を防止すべく、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々を2回順次走査することとしている。
駆動信号D1は、固体光源11を駆動する信号であって、制御信号C1に基づいて決定されたデューティー比を有するPWM信号S1に基づいて生成された信号である。この駆動信号D1は、図5に示す通り、垂直同期信号の周期毎に、走査信号により2回目の走査が開始された後に立ち上がって、フレーム終了時に立ち下がる信号である。尚、駆動信号D1の立ち上がり時点は、制御信号C1に基づいて決定されたデューティー比に応じて変化する。
左メガネ制御信号及び右メガネ制御信号は、ユーザに着用されるメガネの左目側に位置する部分(左メガネ)及び右目側に位置する部分(右メガネ)の透過率をそれぞれ制御する信号であって信号処理部61から出力される信号である。左メガネ制御信号は、スクリーンSCR上に左目用の画像光が投射されるときに左メガネの透過率を高めて左メガネを開状態にし、右目用の画像光が投射されるときに左メガネの透過率を低下させて左メガネを閉状態にする。右メガネ制御信号は、左メガネ制御信号とは逆に、スクリーンSCR上に左目用の画像光が投射されるときに右メガネの透過率を低下させて右メガネを閉状態にし、右目用の画像光が投射されるときに右メガネの透過率を高めて右メガネを開状態にする。
ここで、図5に示す通り、左メガネ制御信号及び右メガネ制御信号は何れも、走査信号により2回目の走査が開始される前に立ち上がって、フレーム終了時に立ち下がる信号である。2回目の走査が開始される前に立ち上がる左メガネ制御信号及び右メガネ制御信号を用いるのは、左メガネ及び右メガネの応答速度を考慮したためである。また、フレーム終了時に立ち下がる左メガネ制御信号及び右メガネ制御信号を用いるのは、左目用の画像と右目用の画像とが混在してユーザに知覚されるのを防止するためである。
以上説明した図5に示す左目用の画像データ「L」と走査信号とが含まれる駆動信号D3が液晶駆動部65から出力されると、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々において、左目用の画像の1回目の走査が開始される。左目用の画像の1回目の走査が開始されてから終了するまでの所定のタイミングで、信号処理部61から不図示のユーザに着用されるメガネに対し、左メガネ制御信号が出力されて左メガネが開状態になる。尚、上記メガネに対して右メガネ制御信号は出力されないため右メガネは閉状態のままである。
ここで、図5に示す通り、左目用の画像の1回目の走査時には駆動信号D1が出力されないため、固体光源11から青色光は射出されない。よって、液晶光変調装置30R,30G,30Bによって赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光の何れも生成されず、スクリーンSCR上に画像は表示されない。このため、左メガネが開状態であっても左目用の画像がユーザに知覚されることはない。
左目用の画像の1回目の走査が終了すると、続いて左目用の画像の2回目の走査が開始される。尚、1回目の走査が終了すると、液晶光変調装置30R,30G,30Bには、左目用の画像データのみが保持された状態となる。2回目の走査が開始されると、光源駆動部63から固体光源11に対して所定のタイミングで駆動信号D1が出力され、これにより固体光源11からは駆動信号D1のデューティー比に応じた光量を有する青色光が射出される。固体光源11からの青色光は、前述した通り、一部が蛍光体13bで黄色光(赤色光及び緑色光)に変換され、残りが蛍光体13bを通過する。
これらの色光が液晶光変調装置30R,30G,30Bに入射すると、左目用の画像に応じた赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光が生成されてスクリーンSCR上に投射される。これにより、スクリーンSCR上には左目用の画像が表示される。このとき、ユーザに着用されたメガネは、左メガネが開状態であり右メガネが閉状態であるため、スクリーンSCR上に表示された左目用の画像がユーザの左目にのみ知覚される。左目用の画像の2回目の走査が終了すると、駆動信号D1及び左メガネ制御信号の双方が立ち下がり、固体光源11からの青色光の射出が停止されるとともに、左メガネが閉状態にされる。
また、左目用の画像の2回目の走査が終了すると、図5に示す右目用の画像データ「R」と走査信号とが含まれる駆動信号D3が液晶駆動部65から出力され、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々において、右目用の画像の1回目の走査が開始される。右目用の画像の1回目の走査が開始されてから終了するまでの所定のタイミングで、信号処理部61から不図示のユーザに着用されるメガネに対し、右メガネ制御信号が出力されて右メガネが開状態になる。尚、上記メガネに対して左メガネ制御信号は出力されないため左メガネは閉状態のままである。
ここで、左目用の画像の1回目の走査時と同様に、右目用の画像の1回目の走査時には駆動信号D1が出力されないため、固体光源11から青色光は射出されない。よって、液晶光変調装置30R,30G,30Bによって赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光の何れも生成されず、スクリーンSCR上に画像は表示されない。このため、右メガネが開状態であっても右目用の画像がユーザに知覚されることはない。
右目用の画像の1回目の走査が終了すると、続いて右目用の画像の2回目の走査が開始される。尚、1回目の走査が終了すると、液晶光変調装置30R,30G,30Bには、右目用の画像データのみが保持された状態となる。2回目の走査が開始されると、光源駆動部63から固体光源11に対して所定のタイミングで駆動信号D1が出力され、これにより固体光源11からは駆動信号D1のデューティー比に応じた光量を有する青色光が射出される。固体光源11からの青色光は、前述した通り、一部が蛍光体13bで黄色光(赤色光及び緑色光)に変換され、残りが蛍光体13bを通過する。
これらの色光が液晶光変調装置30R,30G,30Bに入射すると、右目用の画像に応じた赤色の画像光、緑色の画像光、及び青色の画像光が生成されてスクリーンSCR上に投射される。これにより、スクリーンSCR上には右目用の画像が表示される。このとき、ユーザに着用されたメガネは、右メガネが開状態であり左メガネが閉状態であるため、スクリーンSCR上に表示された右目用の画像がユーザの右目にのみ知覚される。右目用の画像の2回目の走査が終了すると、駆動信号D1及び右メガネ制御信号の双方が立ち下がり、固体光源11からの青色光の射出が停止されるとともに、右メガネが閉状態にされる。
右目用の画像の2回目の走査が終了すると、図5に示す左目用の画像データ「L」と走査信号とが含まれる駆動信号D3が液晶駆動部65から出力され、同様に走査が開始される。以下、図5に示す通り、左目用の画像データ「L」と走査信号とが含まれる駆動信号D3、及び、右目用の画像データ「L」と走査信号とが含まれる駆動信号D3が垂直同期信号の周期毎に交互に出力され、同様の動作が行われる。
以上の通り、本実施形態では、固体光源11のPWM制御周波数と回転蛍光板13の回転周波数とが前述した(1)〜(3)に示す関係式の何れか1つの関係式を満たすように、信号処理部61が制御信号C1,C2を生成して固体光源11及び回転蛍光板13を制御している。このため、固体光源11をPWM制御するとともに回転蛍光板13を回転駆動することによって生じ得るフリッカーの発生を防止することができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態によるプロジェクターについて説明する。本実施形態のプロジェクターの全体構成は、図1に示すプロジェクター1とほぼ同様である。但し、本実施形態のプロジェクターは、固体光源11に対するPWM制御を行わずに固体光源11を連続駆動する点、液晶光変調装置30R,30G,30Bのディジタル駆動を行う点、及び回転蛍光板13の回転周波数と液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数との関係を所定の関係に維持する制御を行う点において図1に示すプロジェクターとは相違する。
つまり、本実施形態のプロジェクターは、図1に示すPWM信号生成部62及び光源駆動部63を、固体光源11を連続駆動する光源駆動部に代え、液晶駆動部65を、ディジタル駆動が可能な液晶駆動部に代え、信号処理部61を、回転蛍光板13の回転周波数と液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数との関係を所定の関係に維持する制御を行う信号処理部に代えた構成である。尚、本実施形態のプロジェクターも、図1に示すプロジェクター1と同様に3D画像の表示が可能であるが、以下では説明を簡単にするために2次元(2D)画像を表示する場合を例に挙げて説明する。
ここで、ディジタル駆動とは、液晶光変調装置30R,30G,30Bに対し、スクリーンSCRに表示すべき画像の階調に応じて回転蛍光板13からの光(赤色光、緑色光、又は青色光)を透過させる時間と透過させない時間との比率を変える駆動を行う駆動方法をいう。つまり、図1に示すプロジェクター1のように、液晶光変調装置30R,30G,30Bの透過率を変えることによって画像の階調を表現する駆動方法ではなく、液晶光変調装置30R,30G,30Bを透過する光の時間的な積分効果によって画像の階調を表現する駆動方法である。
回転蛍光板13(モーター14)の回転周波数をB[Hz]とし、液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数をC[Hz]とし、nを1以上の整数とすると、制御装置60に設けられる信号処理部は、以下の(4),(5)に示す関係式の何れか一方の関係式を満たす制御信号を生成して回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御する。
n×C=2B …(4)
|(n/2)×C−B|≧20 …(5)
つまり、信号処理部は、上記(4)式に示す通り、回転蛍光板13の回転数が液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数の(n/2)倍に等しくなるように回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御する。或いは、信号処理部は、上記(5)に示す通り、回転蛍光板13の回転周波数と液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数の(n/2)倍の周波数の差分の絶対値が20[Hz]未満とならないように回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御する。
尚、上記(5)式は、|(1/2)×C−B|≧20且つ|(2/2)×C−B|≧20且つ|(3/2)×C−B|≧20且つ…且つ|(n/2)×C−B|≧20なる関係式が満たされるように回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bが制御されるという意味である。言い換えると、上記(5)式は、|(1/2)×C−B|<20又は|(2/2)×C−B|<20又は|(3/2)×C−B|<20又は…|(n/2)×C−B|<20なる関係式が満たされないように回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bが制御されるという意味である。
信号処理部が以上の制御を行うのは、回転蛍光板13を回転駆動することによって生ずるフリッカーと、液晶光変調装置30R,30G,30Bをディジタル駆動することによって生ずるフリッカーとが干渉することによって、ユーザに視認され得る低周波数成分のフリッカーが生ずるのを防止するためである。ここで、液晶光変調装置30R,30G,30Bをディジタル駆動することによって生ずるフリッカーには、液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数の整数倍(1以上の整数倍)の周波数成分が含まれる。このため、上記(5)式に示す通り、回転蛍光板13の回転周波数と(n/2)×Cなる式で示される周波数との差分の絶対値が20[Hz]未満とならないように信号処理部は回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御する。
ここで、上述した液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数Cは、スクリーンSCRに表示すべき画像のフレーム周波数に等しい周波数である。例えば、スクリーンSCRにNTSC(National Television System Committee)規格の2D画像を表示する場合には、駆動周波数Cはフレーム周波数と同じ60[Hz]に設定される。また、スクリーンSCR上に3D画像を表示する場合には、駆動周波数Cは120[Hz]に設定される。
次に、本実施形態のプロジェクターの動作について説明する。尚、本実施形態のプロジェクターは、固体光源11及び液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動方法が変更された点が大まかに異なり、他の動作は基本的には図1に示すプロジェクター1と同様であるため、以下では回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bの制御を主に説明する。図6は、本発明の第2実施形態によるプロジェクターで用いられる信号を示すタイミングチャートである。
図6においては、画像信号V2に含まれる垂直同期信号(VSYNC)、駆動信号D3に含まれる画像データ、走査信号、及びSFコードに加えて、液晶光変調装置30R,30G,30Bの最上部から射出される光の光強度を図示している。尚、以下では、図6に示す各信号について説明した後に、回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bの制御について説明する。
図6に示す通り、画像信号V2に含まれる垂直同期信号(VSYNC)は、周波数が60[Hz]であって、1周期の長さT2が16.67[msec]の信号である。これは、前述したNTSC規格の2D画像を表示する場合のフレーム周波数である。また、駆動信号D3に含まれる画像データは、フレーム毎の画像データが時系列順に並んだデータである。
走査信号は、垂直同期信号の1周期の間に、予め定められた時間間隔における液晶光変調装置30R,30G,30Bの走査(第1〜第6番目の走査)を2回繰り返させる信号である。このように、垂直同期信号の1周期の間に同様の走査を2回繰り返すのは、走査時の極性を反転するためである。尚、図6示す走査信号は、図5に示す走査信号と同様に、走査信号そのものを図示している訳ではなく、走査信号によって走査が開始される液晶光変調装置30R,30G,30Bの走査位置を示している。走査信号によって液晶光変調装置30R,30G,30Bが走査される時間間隔は、例えば2のべき乗(2n)の時間間隔に設定されている。
つまり、第1番目の走査が開始されてから第2番目の走査が開始されるまでの時間を「1」とすると、第2番目の走査が開始されてから第3番目の走査が開始されるまでの時間は「2」に設定され、第3番目の走査が開始されてから第4番目の走査が開始されるまでの時間は「4」に設定されている。同様に、第4番目の走査が開始されてから第5番目の走査が開始されるまでの時間は「8」に設定され、第5番目の走査が開始されてから第6番目の走査が開始されるまでの時間は「16」に設定されている。尚、第6番目の走査が開始されてから次の走査(2回目の走査の第1番目の走査)が開始されるまでの時間は「32」に設定されている。
以上の走査信号によって走査が開始される位置と時間との関係は、1回目の走査が図6中の符号L11〜L16を付した斜線で示され、2回目の走査が図6中の符号L21〜L26を付した斜線で示される。尚、図6に示す例では、垂直同期信号の1周期の間に、予め定められた時間間隔における6回分の走査を2回繰り返す例を図示しているが、他の走査方法を用いることもできる。例えば、1回目における走査数を増やして繰り返しを省略するといった走査方法や、1回目における走査数を減じて繰り返し回数を増やすといった走査方法を用いることができる。
SFコードは、階調を表現するためのコードであって、以上の走査信号による各走査時に、液晶光変調装置30R,30G,30Bの透過率を高めるか(開状態にするか)又は透過率を低下させるか(閉状態にするか)を規定するコードである。尚、図6に示すSFコードは、説明を簡単にするために、垂直同期信号の各周期において、1回目及び2回目の走査における第1〜第5番目の走査時に液晶光変調装置30R,30G,30Bを開状態にし、第6番目の走査時に液晶光変調装置30R,30G,30Bを開状態にするコードである。
尚、図6に示す走査信号及びSFコードが用いられる場合には、液晶光変調装置30R,30G,30Bの最上部から射出される光の強度は、垂直同期信号の各周期において、1回目及び2回目における第1番目の走査が開始された時点から徐々に大きくなり、第6番目の走査が開始された時点から徐々に小さくなる変化を示す。このように、光強度が徐々に変化するのは、液晶光変調装置30R,30G,30Bの応答速度のためである。
以上説明した図6に示す画像データ、走査信号、及びSFコードが含まれる駆動信号D3が制御装置60の液晶駆動部から出力されると、液晶光変調装置30R,30G,30Bの各々において1回目の走査が開始される。ここで、液晶光変調装置30R,30G,30Bは、周波数が60[Hz]であるフレーム周波数を基準として駆動され、回転蛍光板13の回転周波数は、例えば150[Hz]に設定される。かかる設定では、前述した(4)式及び(5)式が満足され、視認され得るフリッカーが防止される。
1回目の走査において、液晶光変調装置30R,30G,30Bは、前述した時間間隔で合計6回走査されることになる。ここで、図6に示すSFコードは、第1〜第5番目の走査時において「H」レベルであり、第6番目の走査時において「L」レベルになるコードである。このため、液晶光変調装置30R,30G,30Bの最上部から射出される光の強度は、図6に示す通り、第1番目の走査が開始された時点から徐々に大きくなり、第6番目の走査が開始された時点から徐々に小さくなる変化を示す。
液晶光変調装置30R,30G,30B対する1回目の走査が終了すると、極性を反転した上で、液晶光変調装置30R,30G,30Bに対する2回目の走査が開始される。この2回目の走査においても、1回目の走査と同様の時間間隔で、液晶光変調装置30R,30G,30Bが合計6回走査される。尚、2回目の走査で用いられるSFコードは、1回目の走査で用いられるSFコードと同じであるため、液晶光変調装置30R,30G,30Bの最上部から射出される光の強度は、図6に示す通り、第1番目の走査が開始された時点から徐々に大きくなり、第6番目の走査が開始された時点から徐々に小さくなる変化を示す。以下、垂直同期信号の各周期において同様の動作が行われ、入力される画像信号に応じた2D画像がスクリーンSCRに表示される。
以上の通り、本実施形態では、回転蛍光板13の回転周波数と液晶光変調装置30R,30G,30Bの駆動周波数とが前述した(4),(5)に示す関係式の何れか一方の関係式を満たすように、制御装置60が回転蛍光板13及び液晶光変調装置30R,30G,30Bを制御している。このため、回転蛍光板13を回転駆動するとともに、液晶光変調装置30R,30G,30Bをディジタル駆動することによって生じ得るフリッカーの発生を防止することができる。
以上、本発明の実施形態によるプロジェクターについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、以下に示す変形例が可能である。
(1)上記実施形態では、光変調装置として液晶光変調装置を用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光変調装置としては、一般に、画像信号に応じて入射光を変調するものであればよく、ライトバルブやマイクロミラー型光変調装置等を用いても良い。マイクロミラー型光変調装置としては、例えばDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(TI社の商標)やLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を用いることができる。
(2)上記実施形態では、励起光としての青色光を射出する固体光源11と、固体光源11からの青色光の一部を赤色光及び緑色光に変換する回転蛍光板13とを備える構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、励起光として紫色光又は紫外光を射出する固体光源と、紫色光又は紫外光から赤色光、緑色光、及び青色光を含む色光を生成する回転蛍光板とを備える構成であってもよい。
(3)上記実施形態では、プロジェクターとして透過型のプロジェクターを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、反射型のプロジェクターにも本発明を適用することができる。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶表示装置等のように光変調装置が光を透過すものであることを意味し、「反射型」とは、反射型の液晶表示装置等のように光変調装置が光を反射するものであることを意味する。反射型のプロジェクターに本発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
(4)上記実施形態では、3つの液晶光変調装置を用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。1つ、2つ、又は4つ以上の液晶光変調装置を用いたプロジェクターにも適用可能である。
(5)本発明は、投射画像を観察する側から投射するフロント投射型プロジェクターに適用することも、投射画像を観察する側とは反対の側から投射するリア投射型プロジェクターに適用することも可能である。