JP2015177772A - 生簀用海洋フェンス - Google Patents
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Abstract
【課題】海洋生簀に用いるメッシュ状フェンスに於いて、魚体への激突接触影響が少なく、貝類や海草類などの海洋生物の付着性及び付着量が少なく、自重や時化の荒波などにより自然に脱落し易いものであって、海流に対する水圧抵抗が低く、海中での設営負荷の少ないメッシュシートの提供。
【解決手段】粗目織物を基布として、その表裏全面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層とで構成された多数の空隙部を有するメッシュシートにおいて、膨潤性弾性体樹脂層が、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比100:1〜5:1とする主成分を含み、吸水性樹脂粒子がゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、25μm〜500μm径の露出部を形成するようにする。
【選択図】図1
【解決手段】粗目織物を基布として、その表裏全面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層とで構成された多数の空隙部を有するメッシュシートにおいて、膨潤性弾性体樹脂層が、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比100:1〜5:1とする主成分を含み、吸水性樹脂粒子がゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、25μm〜500μm径の露出部を形成するようにする。
【選択図】図1
Description
本発明は海洋生簀に用いるメッシュ状フェンスに関し、特に養殖魚がフェンスに激突接触しても魚体への影響が少なく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着と繁殖が少ないもの、あるいは海洋生物が付着繁殖しても自重や時化の荒波などにより自然脱落し易いもので、特に海洋生簀に適した海洋フェンスで海流に対する水圧抵抗が低く、海中での設営負荷が少なく、海中で海ぶどう(クビレズタ)の外観形状を部分的に模するメッシュシートに関する。
マグロなどの養殖魚の海洋生簀に於いて、養殖魚が養殖網に衝突死する事故の対策として、養殖網に防汚剤処理を施し、さらに酸化チタン顔料を配合した白色系の水性エマルジョン塗料で上塗りした養殖網を用いる提案(特許文献1)がなされている。この提案によると、網を目立つように着色して養殖魚に視覚認識させ、それによって養殖魚が養殖網に衝突死する事故の解決を図ると同時に、防汚剤効果(貝類や海草類などの海洋生物の付着防止)の長期化を図り、それによって長期に渡って養殖網の外観が目立つ状態で保つことにより養殖網衝突事故を防止しようとするものである。しかし、特許文献1の実施例には、一般的な黒着色の網に、先ず市販の養殖用漁網防汚剤を塗布して防汚処理を行い、その上に白色系水性塗料を塗布し養殖網全体を白色系とすること。その際に、油性の白色系塗料を使用すると始めに塗布した防汚剤が溶かされて防汚剤の効果が減少するので必ず水性塗料を使用することの警告が記載されている。特許文献1の養殖網は、白色系塗料/防汚剤/養殖網の処理構成であり、防汚剤は水性塗料に溶けない存在であるから、防汚剤処理した養殖網上に設けた水性塗料による上塗りは防汚剤と馴染みが悪く、従って本質的に上塗りとの密着性に劣るものと推測される。このような養殖網では防汚剤処理層を界面として上塗り塗装が海中で剥がれ落ちやすく、繰り返し漁網に白色系塗料を上塗りする必要があった。
また、海洋生物付着防止機能を有するホースとして、ホースの外周面に弾性高分子材料(各種の合成ゴム)に水膨潤剤(高吸水性樹脂)を配合した水膨潤性ゴムによる被覆層を設けたホース(特許文献2)が提案され、海洋生物付着防止に優れていることが記載されている。これは水膨潤によるホースの外周面の体積膨張効果と考えられるが、ただ体積が膨張しただけでは海洋生物の付着防止になるとは考え難く、実施例にある加硫剤としての硫黄や酸化マグネシウム、加硫促進剤としてのジトリルグアニジン、及びテトラメチルチウラムジスルフィドなどの化学物質の溶出が有効に作用したことも考えられる。また、トンネル工事の止水に使用するパッキン部材、シール部材として、シリコーンゴムコンパウンドと吸水性樹脂及びシリコーンオイルを含む組成物(特許文献3)が提案されている。この組成物はロール、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックス等で強制混練した後、金型に注型し金型中で加硫を完結させてパッキン部材やシール部材に賦型するものである。しかし、このような混練組成物を用い、養殖網のような大型で目の粗い物体に対して、その全表面に被覆加工する場合、大型で特殊な金型を必要とするので非実現的である。従って、水膨張性物質で表面加工された網状物で、特にシリコーンゴムを主体とする養殖網などは存在していなかった。
海洋生簀に用いるメッシュ状フェンスに於いて、特にマグロ、ハマチ、タイ、ヒラメ、伊勢エビなどがフェンスに激突接触しても魚体への影響が少なく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性及び付着量が少ないもの、あるいは海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然に脱落し易いものであって、特に海洋生簀に適した海洋フェンスで、海流に対する水圧抵抗が低く、しかも海中での設営負荷の少ないメッシュシートを提供すること。
上記課題を解決するために、マルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸要素とする粗目織物を基布として、その表裏全面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層とで構成された多数の空隙部を有するメッシュシートにおいて、膨潤性弾性体樹脂層を、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子とを主成分に構成し、吸水性樹脂粒子がゲル状樹脂弾性体中に粗分散した状態で、吸水性樹脂粒子による露出部を形成することによって、このメッシュシートを海洋生簀用の海洋フェンスとして用いた時に、膨潤性弾性体樹脂層が海ぶどうの外観を部分的に模した様な構造を形成することで、養殖魚がフェンスに激突接触しても魚体への影響が少なく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性や付着量が自然と少ないこと、あるいは海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然脱落し易いこと、海流に対する水圧抵抗が低く、海中での設営負荷が少ないことを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の生簀用海洋フェンスは、マルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸要素とする粗目織物を基布として、その表裏全面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層とで構成された多数の空隙部を有するメッシュシートであって、前記膨潤性弾性体樹脂層が、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比100:1〜5:1とする主成分を含み、前記吸水性樹脂粒子が前記ゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、乾燥状態で25μm〜500μm径の露出部を形成していることが好ましい。これによってこのメッシュシートを海洋生簀用の海洋フェンスに用いた時に、膨潤性弾性体樹脂層が海ぶどうの外観を部分的に模した様な構造を形成し、これによって養殖魚がフェンスに激突接触しても魚体への影響が小さく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性や付着量を自然に低減させる効果、あるいは海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然脱落し易くする効果、海流に対する水圧抵抗を低くし、海中での設営負荷を軽減することができる。
本発明の生簀用海洋フェンスは、前記ゲル状樹脂弾性体が、シリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れかであることが好ましい。これによって厚生省告示第20号に規定の食品衛生基準を満たすと共に、養殖魚がフェンスに強く接触しても魚体への影響が小さく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性及び付着量を自然に低減させたり、海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などによって自然脱落し易いものとすることができる。
本発明の生簀用海洋フェンスは、前記基布と、前記膨潤性弾性体樹脂層との間にシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れかを主成分とする非膨潤性弾性体樹脂層が形成されていることが好ましい。これによって、過度の生簀用海洋フェンス全体における膨潤性弾性体樹脂層と非膨潤性弾性体樹脂層とのバランスを保ち、必要最小限の膨潤層をコントロールすることができるので、特に基布と非膨潤性弾性体樹脂層との密着が長期に亘って安定的に保たれる。このようにシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れかを主成分とする非膨潤性弾性体樹脂層が形成されることで厚生省告示第20号に規定の食品衛生基準を満たすと共に、生簀用海洋フェンスとしての実用耐久性及び実用期間をより向上させることができる。
本発明の生簀用海洋フェンスは、前記ゲル状樹脂弾性体が、金属フレーク、雲母、金属酸化物薄膜被覆雲母、及び蒸着フィルム破砕物から選ばれた1種以上の光輝性薄片を含むことが好ましい。光輝性薄片による太陽光線反射のキラキラ効果によって養殖魚がフェンスを識別し易くすることで、養殖魚のフェンス激突や接触を低減させ、健全な養殖魚をより多く出荷することができるようになる。
本発明の生簀用海洋フェンスは、前記メッシュシートを10〜20℃の海水中に24時間浸漬した状態での前記膨潤性弾性体樹脂層の形態が凹凸状膨潤を成し、この凹凸状膨潤において前記吸水性樹脂粒子が膨潤してなる凸部の硬度が、JIS K2207による針入度(1/10mm)で40〜200の範囲であることが好ましい。このように膨潤凸部の硬度をムラサキ貝などの貝類、牡蠣類、フジツボ類、ホヤ類などの海洋軟体動物の本体の腹部分の硬度と同等またはそれ以下とすることで、特に岩などに固着性貝類は自らの体の固定培地としての選択を本能的に放棄するようになること、しかも海ぶどうの外観にも似た特異な凹凸状膨潤形態、詳しくは隣接する吸水性樹脂粒子膨潤体(凸部)同士が半融合したようなブロードな凹凸状膨潤形態となることによって、貝類や海草類などの海洋生物の付着性及び付着量を自然に低減させ、例え海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然脱落し易い生簀用フェンスを得ることができるようになる。またこの硬度の範囲だと養殖魚がフェンスに激突接触しても魚体への擦傷などがクッション効果で軽減される。
本発明によると、海洋生簀用のフェンスで、海流に対する水圧抵抗が低く、海中での設営負荷の少ないものであって、養殖魚がフェンスに強く接触しても、海洋生簀用フェンスの表面が部分的に海ぶどうの外観を模することで魚体への影響が軽減され、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性及び付着量を自然に低減させる効果のあるメッシュシート、あるいは海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然に脱落し易いメッシュシートが得られるので、マグロ、ハマチ、タイ、ヒラメ、伊勢エビなどの海洋生簀に用いるフェンスの素材として安全かつ有用である。
本発明の生簀用海洋フェンスは、マルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸要素とする粗目織物を基布として、その表裏全面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層とで構成された多数の空隙部を有するメッシュシートであって、膨潤性弾性体樹脂層が、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比100:1〜5:1とする主成分を含み、吸水性樹脂粒子がゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、乾燥状態で25μm〜500μm径の露出部を形成するものである。
本発明の生簀用海洋フェンスにおいて、粗目織物を基布として、その表裏面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層には、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子を主成分とし、その併用は乾燥質量比で100:1〜5:1の範囲で、特に50:1〜10:1の範囲が好ましい。吸水性樹脂粒子の併用比率が上記よりも小さいと、得られるメッシュシートを海中で使用した際に、膨潤性弾性体樹脂層の膨潤性が不足して海藻の「海ぶどう」の外観を模した凹凸状膨潤を成さないことで養殖魚がフェンスに強く接触した時の魚体の保護効果が不十分となり、さらには凹凸状膨潤の生成が不十分であることで貝類や海草類などの海洋生物が付着し易くなる。また吸水性樹脂粒子の併用比率が上記よりも大きいと、膨潤性弾性体樹脂層の膨潤性が過大となり、養殖魚がフェンスに激突接触した時の衝撃や擦過で脱落し、生簀用海洋フェンスのライフサイクルを短くすることがある。そして膨潤性弾性体樹脂層の形成量は基布の質量に対して50〜250質量%、特に100〜200質量%で、膨潤性弾性体樹脂層は基布の内部に一部または全部含浸し、かつ基布の全表面を被覆するように形成されている。また本発明において基布と膨潤性弾性体樹脂層との間に非膨潤性弾性体樹脂層が形成される場合には、非膨潤性弾性体樹脂層が基布の内部に一部または全部に含浸し、かつ基布の全表面を被覆するように形成され、さらにこの非膨潤性弾性体樹脂層の全表面上に膨潤性弾性体樹脂層が形成されるものである。
膨潤性弾性体樹脂層に用いるゲル状樹脂弾性体としては、シリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れか1種を使用すればよい。これらのゲル状樹脂弾性体で特定の低い硬度を有し、特にムラサキ貝などの貝類、牡蠣類、フジツボ類、ホヤ類などの海洋軟体動物の腹部硬度と同等またはそれ以下とすることで、特に岩などに固着性貝類は自らの体の固定培地としての選択を本能的に放棄するようになる。シリコーンエラストマーとしては、付加反応硬化型シリコーンエラストマー、縮合反応硬化型シリコーンエラストマー、ラジカル(パーオキサイド架橋)反応硬化型シリコーンエラストマーなど、撥水性かつ日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)によるアスカーC硬度4〜35の弾性体が使用できる。これらのシリコーンエラストマーはシリコーンエラストマーを形成する前躯体化合物をトルエン等の溶剤で適度な粘度に希釈して粗目織物(基布)の両面にコーティングするか、あるいは粗目織物(基布)を、シリコーンエラストマー形成前躯体化合物をトルエン等に溶解して含む溶液の液浴中にディッピング(浸漬)し、粗目織物(基布)の全面をシリコーンエラストマー形成前躯体化合物で被覆した後、各々溶剤を揮発除去すると同時に加熱処理することで硬化を完結させてシリコーンエラストマー塗膜層(膨潤性弾性体樹脂層)を形成する。これらの中でも特に低温硬化が可能な付加反応硬化型シリコーンエラストマーが製造に効率的である。また本発明に用いるシリコーンエラストマーは水性オルガノポリシロキサンエマルジョンにコロイダルシリカを含む組成物を用い、水分を除去したものであってもよい。これらのシリコーンエラストマーは強い撥水性を有することで、特にムラサキ貝などの貝類、牡蠣類、フジツボ類、ホヤ類などの海洋軟体動物が体固定用のために粘膜から分泌する体液の固着を抑止する効果が高く、また付着しても自然脱落性に優れている。
付加反応硬化型シリコーンエラストマーは、2種類のオルガノポリシロキサン中の官能基が付加反応により結合して架橋しエラストマー化したもので、これらは例えば、ビニル基やヘキセニル基のような脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金族化合物系触媒からなるシリコーンエラストマーが挙げられる。脂肪族不飽和基含有オルガノポリシロキサンとしては、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ビニルメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体が挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサンが挙げられ、これらは加熱によって硬化するものであり、硬化物中にはシリカ、炭酸カルシウムなどの天然物由来の無機粉体を含有していてもよい。
縮合反応硬化型シリコーンエラストマーは、2種類のオルガノポリシロキサン中の官能基、またはオルガノポリシロキサンとシリカやシラン等のケイ素化合物中の官能基が縮合反応により結合して架橋しエラストマー化したものである。これらは、両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび有機酸の重金属塩等の縮合反応触媒からなる組成物が挙げられる。両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンは、両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端シラノール基封鎖メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。このジオルガノポリシロキサンは末端シラノール基の一部をアルコキシ化したものでもよい。架橋剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンには、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサンが挙げられる。縮合反応触媒には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫、オクテン酸鉛、オクテン酸亜鉛などが使用できる。
ゲル状樹脂弾性体としてのシリコーンゲルは、式R2Si(OR´)2で示される化合物と式RSi(OR´)3で示される化合物とにより、式R2Si(OR´)2で示される化合物に対する式RSi(OR´)3で示される化合物のモル比が0.01〜0.5の反応によって得られる日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)によるアスカーC硬度4〜35を有するポリシロキサンゲル立体網目構造体で、この立体網目構造の間にシリコーンオイルが担持されたものである。これらはポリジメチルシロキサンゲル、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサンゲル、ポリフェニルメチルシロキサンゲルなどから選ばれた1種以上のシロキサンゲルとシリコーンオイルとで構成されたシリコーンゲルが特に好ましい。Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜5個のアルキル基で、特にRはメチル基、エチル基、プロピル基、又はフェニル基(アルキル基で置換されていてもよい)であり、これらのアルキル基及びフェニル基はその水素原子がフッ素原子により置換されたものでもよい。またR´はそれぞれ独立して、炭素数1〜20個のアルキル基で、特にメチル基、エチル基、プロピル基、又は水素原子であることが好ましい。式R2 Si(OR´)2で示される化合物としては、好ましくはジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等であり、式RSi(OR´)3で示される化合物としては、好ましくはモノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシランなどである。シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル及びエポキシ変性シリコーンオイルより成る群から選ばれた1種以上であり、シロキサンゲルに対して5〜30質量%のシリコーンオイルを含有して保持するものである。シリコーンゲルはシロキサンゲルとシリコーンオイルとを混ぜた状態で125〜200℃の加熱を行うことでシリコーンオイルを担持する立体網目構造を調製することができる。これらのシリコーンゲルは強い撥水性を有することで、特にムラサキ貝などの貝類、牡蠣類、フジツボ類、ホヤ類などの海洋軟体動物が体固定用のために粘膜から分泌する体液の固着を抑止する効果が高く、また付着しても自然脱落性に優れている。
ポリシロキサンゲルに担持させるシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、ポリジメチルシロキサンジオール、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フルオロアルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アルキル・ポリエーテル変性シリコーンオイル、メタクリル酸変性シリコーンオイルなどの反応性を付与した反応性シリコーンオイルが挙げられ、これらの変性タイプは側鎖変性型、両末端変性型、片末端変性型の何れであってもよい。これらのシリコーンオイルの担持量はポリシロキサンゲル100質量部に対して10〜75質量部、好ましくは20〜50質量部である。シリコーンオイルの担持量が上記よりも少ないと生簀用海洋フェンスに付着した海洋生物の自然脱落性に劣ることがあり、またシリコーンオイルの担持量が上記よりも多いと基布から膨潤性弾性体樹脂層が脱落し易くなって海中での実用耐久性を欠くことがある。
ゲル状樹脂弾性体としてのポリエチレンゲルは、エチレン系共重合体樹脂として、エチレンモノマーと炭素数3〜18のα−オレフィンモノマーとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体樹脂(α−オレフィンとして、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1,ヘキセン−1、ヘプテン−1,オクテン−1など)、これらを複数種用いた共重合、あるいはアクリル酸、メタアクリル酸などの不飽和カルボン酸、及びそれらのエステル化物や酸無水物などの反応性モノマーとの共重合体を主体とし、これらのエチレン系共重合体樹脂に対して5〜50質量%の可塑剤を内部担持する、日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)によるアスカーC硬度4〜35の弾性体である。このときエチレン系共重合体樹脂は分子の絡み合いによる立体網目構造を形成し、この立体網目の間に可塑剤が担持されている。またエチレン系共重合体樹脂として、エチレンモノマーとスチレンモノマーとのランダム共重合体を主体とし、このようなエチレン−スチレン共重合体樹脂に対して、5〜50質量%の可塑剤を含有して保持してなる日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)によるアスカーC硬度が4〜35を有するものであってもよい。このときエチレン−スチレン共重合体樹脂は分子の絡み合いによる立体網目構造を形成し、この立体網目の間に可塑剤が担持されている。エチレン系共重合体樹脂に併用する可塑剤としては、流動パラフィン、鉱物油、プロセスオイル、エキステンダオイル、ブチルベンジルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑剤、大豆油などの公知のゴム用可塑剤が挙げられるが、プロセスオイルが特に好ましい。プロセスオイルはパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油のいずれか1種またはこれらのブレンド組成物である。ポリエチレンゲルは上記のエチレン系共重合体樹脂と可塑剤とを125〜200℃の加熱状態で混合することで可塑剤を担持する立体網目構造を調製することができる。これらのポリエチレンゲルは強い撥水性を有することで、特にムラサキ貝などの貝類、牡蠣類、フジツボ類、ホヤ類などの海洋軟体動物が体固定用のために粘膜から分泌する体液の固着を抑止する効果が高く、また付着しても自然脱落性に優れている。
上記ゲル状樹脂弾性体には下記の滑剤を、ゲル状樹脂弾性体に対して0.1〜5質量%の範囲で併用してもよい。併用する滑剤はゲル状樹脂弾性体と非相溶または非親和性であるため、経時的に滑剤成分が生簀用海洋フェンスの表面移行して析出(ブルーム)することで海洋生物の付着を抑止すると同時に自然脱落を促す作用を発現する。滑剤としては、炭化水素系(低分子ポリエチレン、パラフィン)、脂肪酸系(ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸)、脂肪族アルコール系、脂肪族アマイド系(ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、ステアロアミド、複合型アミド)、脂肪族エステル系(n−ブチルステアレート、メチルヒドロキシステアレート、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス)、脂肪酸金属石鹸系族などを用いることができる。
また膨潤性弾性体樹脂層に用いる吸水性樹脂粒子としては、水を吸収することによって粒子体積が数倍〜数百倍に膨潤し、分子内に水分を担持する高分子である。このような吸水性樹脂粒子として、例えば、天然高分子系として、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体(架橋物)の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体(架橋物)、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト重合体(架橋物)、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト重合体(架橋物)、デンプン−アクリルアミドグラフト重合体(架橋物)、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体(架橋物)、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト重合体(架橋物)、カルボキシメチルセルロースの架橋体(塩)、合成高分子系として、ポリビニルアルコール架橋重合体、ポリエチレンオキサイド架橋重合体、ポリビニルホルマール架橋重合体、ポリビニルブチラール架橋重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合体架橋物、アクリル酸−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸塩の架橋物、アクリル酸ナトリウムとビニルアルコールとの共重合体(アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体鹸化物)、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体鹸化物、ポリアクリロニトリル系重合体鹸化物、ヒドロキシエチルメタクリレート、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体架橋物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体架橋物などが挙げられる。本発明に用いる吸水性樹脂粒子は海水中で使用するため、個々の吸水性樹脂粒子が有する本来の膨潤率(純水を使用した場合)の半分以下となるが海水による体積膨潤率が4倍以上あれば、本発明による作用効果を最低限は得られる。
膨潤性弾性体樹脂層にはゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比100:1〜5:1で含み、吸水性樹脂粒子がゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、かつ25μm〜500μm径の露出部を形成するようにする。吸水性樹脂粒子の併用比率を上記範囲とすることで、得られるメッシュシートを海中で使用した際に、膨潤性弾性体樹脂層の表面に粗く分散して露出する吸水性樹脂粒子のみが海水で4〜100倍程度に体積膨潤し、その結果、膨潤性弾性体樹脂層全体に凹凸状膨潤を成し、海藻の「海ぶどう=クビレズタ(括れ蔦:学名学:Caulerpa lentillifera)」の外観に似た形態で、詳しくは隣接する吸水性樹脂粒子膨潤体(凸部)同士が半融合したようなブロードな凹凸状膨潤形態となる。10〜20℃の海水中に24時間浸漬して4〜100倍程度に体積膨潤することで形成される凹凸状膨潤の凸部の硬度は、JIS K2207による針入度(1/10mm)で40〜200の範囲の弾力であることが好ましい。針入度硬度が40未満だと吸水性樹脂粒子の体積膨潤が不十分な硬い状態の低反発性のままなので、養殖魚がフェンスに強く接触した時に魚体に擦過傷を付け易くなるのみならず、凹凸状膨潤形態の生成が不十分であることで貝類や海草類などの海洋生物が付着し易くなる。また針入度硬度が200を越えると、吸水性樹脂粒子の体積膨潤を過剰とする低反発性の脆いゲル状態となり、貝類や海草類などの海洋生物の生育には不安定かつ自然脱落し易い環境となる一方、これらの凸部(体積膨潤)自体が短期間でゲル状樹脂弾性体から脱落するか、ゲル状樹脂弾性体ごと基布から脱落して、基布を露出する状態となる。
本発明の生簀用海洋フェンスにおいて、基布と膨潤性弾性体樹脂層との間にはシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れかを主成分とする非膨潤性弾性体樹脂層が形成され、特に膨潤性弾性体樹脂層の構成成分と同種の組み合わせで非膨潤性弾性体樹脂層が形成されることが膨潤性弾性体樹脂層と非膨潤性弾性体樹脂層との層間密着性の観点、すなわち実用耐久性を確保する目的において必須とする。このような組み合わせ例として、膨潤性弾性体樹脂層にシリコーンエラストマーを用いた場合には、非膨潤性弾性体樹脂層にもシリコーンエラストマーを用いることが特に相性に優れ、シリコーンエラストマーとシリコーンゲルとの組み合わせの相性も良好である。非膨潤性弾性体樹脂層に用いるシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルは段落〔0016〕〜〔0021〕に記載したものを使用できる。非膨潤性弾性体樹脂層は基布の内部に一部または全部に含浸し、かつ基布の全表面を被覆するように形成され、さらにこの非膨潤性弾性体樹脂層の全表面上に膨潤性弾性体樹脂層が形成される中間層で、基布の質量に対して50〜250質量%、特に100〜200質量%である。膨潤性弾性体樹脂層と非膨潤性弾性体樹脂層との質量比は、1:4〜2:1、特に1:3〜1:1の範囲である。膨潤性弾性体樹脂層の形成比が1:4よりも小さいと膨潤性弾性体樹脂層の凹凸状膨潤形態の生成が不十分となることで貝類や海草類などの海洋生物が付着し易くなることがあり、また非膨潤性弾性体樹脂層の形成比が2:1よりも小さいと膨潤性弾性体樹脂層を促し、本発明の生簀用海洋フェンスの耐久性を損い易くする傾向にある。
本発明の生簀用海洋フェンスにおいて膨潤性弾性体樹脂層が光輝性であることにより、太陽光線反射のキラキラ効果によって養殖魚がフェンスを識別し易くなり、養殖魚のフェンス激突や接触を低減させ、養殖魚を傷付けたり、激突死することを抑止する効果を得ることができるようになる。膨潤性弾性体樹脂層を光輝性とするためには、膨潤性弾性体樹脂層を形成する構成要素の一部としてのゲル状樹脂弾性体に、金属フレーク、雲母、金属酸化物薄膜被覆雲母、及び蒸着フィルム破砕物から選ばれた1種以上の光輝性薄片を1〜10質量%の範囲で含むことによって達成される。この場合、膨潤性弾性体樹脂層を形成するもう一方の構成要素である吸水性樹脂粒子にこれらの光輝性薄片を必ずしも含んでいる必要はない。金属フレークとしての金属種はアルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅、真鍮などが挙げられるが特にアルミニウムフレークが光輝性に優れ好ましい。アルミニウムフレークはアルムニウム粉を粉砕して得られる平滑磨砕面を有する粒度5〜60μmの鱗片にステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸によって潤滑処理されたもの、あるいはシランカップリング剤処理、有機チタネートカップリング剤処理によって接着処理されたもの、またあるいはアクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂被覆されたものなどが使用できる。雲母としては粒度5〜100μmの雲母鱗片の表面に二酸化チタンを被覆率12〜42%でコーティングした銀白色雲母チタンが挙げられる。金属酸化物薄膜被覆雲母は、粒度5〜100μmの雲母鱗片の表面に二酸化チタンを被覆率43〜80%でコーティングした二色性干渉雲母チタンが挙げられる。蒸着フィルム破砕物としては公知の金属蒸着フィルムを破砕したものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムを真空蒸着したフィルムをタテ・ヨコ0.3〜1mmサイズの鱗片状に粉砕したものが挙げられる。またこれらの光輝性薄片は段落〔0025〕の非膨潤性弾性体樹脂層に(も)含んでいてもよい。
本発明の生簀用海洋フェンスにおいて、粗目織物は平織、模紗織の何れか、あるいは編物であり、これらは2軸織物、3軸織物、4軸織物、あるいはラッセル編物、レース編物の何れかであり、各々軸糸の糸条を構成する繊維種には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維などの合成繊維が無撚または撚糸の状態で使用でき、特にポリエステル繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン繊維として超高分子量ポリエチレン繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー繊維としてアラミド繊維が強度及び耐久性面で好ましい。これら繊維糸条の形態は、マルチフィラメント、モノフィラメント、スプリットヤーン、テープヤーンなどいずれであってもよいが、特にマルチフィラメントの撚糸だと得られる生簀用海洋フェンスの柔軟性に優れ、取り扱い性及び折りたたみ収納保管性に優れ好ましい。マルチフィラメント糸条は250(278dtex)〜2000(2222dtex)デニールの範囲のものを単糸または双糸、合撚糸で使用することができる。粗目織物は空隙率が35〜80%、特に40〜65%が好ましい。空隙率が35%未満だと養殖魚がフェンスに激突した時に、フェンス自体が自由変形してある程度の衝突の衝撃を緩和吸収する効果を損い、養殖魚が激突死する可能性を高くするのみならず、海洋フェンスの表面積を大きくすることで過大な海流の水圧を受けて海洋生簀が海中倒壊する心配があり、また空隙率が80%を越えると海流の水圧の影響は少なくなるが、海洋フェンスの実体部分が極めて少ないため設営強度の不安を増すことになる。空隙部を構成する個々の空隙サイズは4mm2(2mm×2mm)〜1600mm2(40mm×40mm)、好ましくは100mm2(10mm×10mm)〜900mm2(30mm×30mm)であり、粗目織物を構成する糸条の打ち込み密度は2〜20本/10センチ間隔、好ましくは3〜10本/10センチ間隔である。このような空隙部を有する
本発明の生簀用海洋フェンスは、幅100cm〜300cm、長さが10m〜50mのメッシュシートを1単位として、これを海中で縦に並べて連結して使用する方法、あるいは横に並べて連結して使用する方法、及びこれらの混用の何れも可能である。メッシュシートの連結はメッシュシート補強端部に等間隔(25〜60cm)で設けられたハトメ部による合成繊維ロープ締結や樹脂製バンド締結が挙げられる。そして海洋生簀を設営する海域に予め海底に基礎工事された支柱(必要に応じて支柱間を横方向に連結する複数の柵棒が附帯する)にこの連結メッシュシートを任意の間隔で固定することにより本発明の生簀用海洋フェンスの海中設営を完了する。また海洋生簀用フェンスには、本発明の生簀用海洋フェンスに昼夜光輝性(膨潤性弾性体樹脂層に含む光輝性薄片の存在による)を発現させる目的で水中ライトをタイマー制御により点灯させる照明システムをフェンスの複数箇所に附帯することが好ましい。
本発明の生簀用海洋フェンス(1)について図1及び2により説明する。図1は、粗目織物(2)を基布として、粗目織物(2)の表裏を被覆する膨潤性弾性体樹脂層(3)で構成され、膨潤性弾性体樹脂層(3)は、ゲル状樹脂弾性体(3−1)及び吸水性樹脂粒子(3−2)とを主成分を含み、吸水性樹脂粒子(3−2)がゲル状樹脂弾性体(3−1)中に粗分散し、その露出部を部分形成し、ゲル状樹脂弾性体(3−1)には光輝性薄片(5)を含有する生簀用海洋フェンス(1)の正面と断面の一部を示す図である。図2は図1の生簀用海洋フェンス(1)において、粗目織物(2)と膨潤性弾性体樹脂層(3)との間に非膨潤性弾性体樹脂層(4)を有する生簀用海洋フェンス(1´)の正面と断面の一部を示す図である。また本発明の生簀用海洋フェンス(1)の膨潤性弾性体樹脂層(3)の膨潤状態の断面を図3及び4により説明する。図3及び4は吸水性樹脂粒子(3−2)がゲル状樹脂弾性体(3−1)中に粗分散し、その露出部を部分形成することによって、膨潤後の膨潤性弾性体樹脂層(3)の形態が凹凸状膨潤(3−3)を成し、膨潤凸部(3−3−a)が吸水性樹脂粒子(3−2)の膨潤によって形成されていることを示す図である。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験メッシュの養殖魚激突接触の衝撃緩和効果、海洋生物付着防止性、生簀用海洋フェンスの設営安定性(耐海流圧)は下記の試験方法により評価した。
1)養殖魚激突接触の衝撃緩和効果
試験メッシュシート20cm×20cmを18℃の海水中に24時間浸漬し十分に膨潤させたものを取り出し、これを高密度ポリエチレン製まな板(厚さ12mmの市販品)上に水平に上乗せし、試験メッシュシートの充実部に対し、高さ30cmの位置からパチンコ球(直径11mm:質量5.5g)を自由落下で衝突させた際にパチンコ球が跳ね上がる高さを撮影動画の解析により求めた。跳ね上がり高さは試験体に附帯させたメジャー柱の目盛により決定し、メッシュ表面からパチンコ球の底部までの浮き上がった距離とし、この跳ね上がり高さの数値の低い低反発性のものほど養殖魚衝突時の衝撃緩和性にも優れているものと見做した。
1:衝撃緩和性を有する:跳ね上がり高さ0〜11mm
2:やや衝撃緩和性: 跳ね上がり高さ11mm越〜33mm
3:衝撃緩和性に劣る: 跳ね上がり高さ33mm越〜
2)海洋生物付着防止性
試験メッシュシート100cm×100cmを海中で垂直方向に展張し、支柱固定した状態で3ヶ月間(平成25年8月〜10月)浸漬し、1ヶ月毎にメッシュシート試験片を引き上げ、個々のメッシュシート表面状態(海洋生物の付着)を目視観察した。
1:貝類や藻類など海洋生物の付着が少なく、あっても手作業除去が容易
2:貝類や藻類など海洋生物の付着がやや多いが手作業除去は可能
3:貝類や藻類など海洋生物の付着が多く、手作業除去が困難
3)設営性及び安定性(耐海流圧)
試験メッシュシート100cm×100cmを海中で垂直方向に支柱固定し、海流の水圧を受ける状態に晒し、メッシュシート中央部を横から観察した時の、水圧を面で受けて変位するメッシュシート中央部の位置変位を数値化した。数値が小さい程水圧抵抗が低く、フェンスの設営性が良好かつ、その安定設置が可能であり、また数値が大きい程水圧抵抗が高く、フェンスの設営性が困難かつ、その安定設置に劣るものと判定した。
1:設営性及び安定設置性を有する: 位置変位0〜20mm
2:やや設営性及び安定設置性に劣る: 位置変位20越〜50mm
3:設営性及び安定設置性に劣り不適切:位置変位50越〜
1)養殖魚激突接触の衝撃緩和効果
試験メッシュシート20cm×20cmを18℃の海水中に24時間浸漬し十分に膨潤させたものを取り出し、これを高密度ポリエチレン製まな板(厚さ12mmの市販品)上に水平に上乗せし、試験メッシュシートの充実部に対し、高さ30cmの位置からパチンコ球(直径11mm:質量5.5g)を自由落下で衝突させた際にパチンコ球が跳ね上がる高さを撮影動画の解析により求めた。跳ね上がり高さは試験体に附帯させたメジャー柱の目盛により決定し、メッシュ表面からパチンコ球の底部までの浮き上がった距離とし、この跳ね上がり高さの数値の低い低反発性のものほど養殖魚衝突時の衝撃緩和性にも優れているものと見做した。
1:衝撃緩和性を有する:跳ね上がり高さ0〜11mm
2:やや衝撃緩和性: 跳ね上がり高さ11mm越〜33mm
3:衝撃緩和性に劣る: 跳ね上がり高さ33mm越〜
2)海洋生物付着防止性
試験メッシュシート100cm×100cmを海中で垂直方向に展張し、支柱固定した状態で3ヶ月間(平成25年8月〜10月)浸漬し、1ヶ月毎にメッシュシート試験片を引き上げ、個々のメッシュシート表面状態(海洋生物の付着)を目視観察した。
1:貝類や藻類など海洋生物の付着が少なく、あっても手作業除去が容易
2:貝類や藻類など海洋生物の付着がやや多いが手作業除去は可能
3:貝類や藻類など海洋生物の付着が多く、手作業除去が困難
3)設営性及び安定性(耐海流圧)
試験メッシュシート100cm×100cmを海中で垂直方向に支柱固定し、海流の水圧を受ける状態に晒し、メッシュシート中央部を横から観察した時の、水圧を面で受けて変位するメッシュシート中央部の位置変位を数値化した。数値が小さい程水圧抵抗が低く、フェンスの設営性が良好かつ、その安定設置が可能であり、また数値が大きい程水圧抵抗が高く、フェンスの設営性が困難かつ、その安定設置に劣るものと判定した。
1:設営性及び安定設置性を有する: 位置変位0〜20mm
2:やや設営性及び安定設置性に劣る: 位置変位20越〜50mm
3:設営性及び安定設置性に劣り不適切:位置変位50越〜
[実施例1]
1)ポリエステルのマルチフィラメント糸条1000d/3本模紗(1111dtex/3本模紗)を経緯糸条として、経糸条6本/10センチ、緯糸条6本/10センチの打ち込みで製織した粗目模紗織物(質量63g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2)を基布に用いた。〈基布1〉
2)次に基布1を被覆する膨潤性弾性体樹脂層形成用に下記配合1のシリコーンゲルを
主体とする膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物を配合調整した。
<配合1;膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
A)ゲル状樹脂弾性成分として
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
商品名:X−22−173DX:信越シリコーン社製)
片末端エポキシ変性シリコーンオイル:有効成分100%: 20質量部
商品名:アストロフレークNO.8 SILVER#20 5質量部
アルミ箔を変性アクリル樹脂で被覆した0.2mm×0.28mmサイズの
光輝性薄片
トルエン(希釈剤) 100質量部
B)吸水性樹脂粒子として
商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製) 10質量部
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm
3)配合1の膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(ゲル状樹脂弾性成分中に吸水性樹脂粒子が粗分散)の入った液浴に、基布1を浸漬し、基布1に配合1の加工液を含浸させた後、基布1を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量104g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
1)ポリエステルのマルチフィラメント糸条1000d/3本模紗(1111dtex/3本模紗)を経緯糸条として、経糸条6本/10センチ、緯糸条6本/10センチの打ち込みで製織した粗目模紗織物(質量63g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2)を基布に用いた。〈基布1〉
2)次に基布1を被覆する膨潤性弾性体樹脂層形成用に下記配合1のシリコーンゲルを
主体とする膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物を配合調整した。
<配合1;膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
A)ゲル状樹脂弾性成分として
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
商品名:X−22−173DX:信越シリコーン社製)
片末端エポキシ変性シリコーンオイル:有効成分100%: 20質量部
商品名:アストロフレークNO.8 SILVER#20 5質量部
アルミ箔を変性アクリル樹脂で被覆した0.2mm×0.28mmサイズの
光輝性薄片
トルエン(希釈剤) 100質量部
B)吸水性樹脂粒子として
商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製) 10質量部
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm
3)配合1の膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(ゲル状樹脂弾性成分中に吸水性樹脂粒子が粗分散)の入った液浴に、基布1を浸漬し、基布1に配合1の加工液を含浸させた後、基布1を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量104g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
[実施例2]
実施例1の生簀用海洋フェンスにおいて、基布1と膨潤性弾性体樹脂層との間に非膨潤性弾性体樹脂層を設けた以外は実施例1と同様とした。
1)先ず実施例1で用いた基布1を被覆する非膨潤性弾性体樹脂層形成用に下記配合2のシリコーンエラストマーによる非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物を配合調整した。
<配合2;非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
トルエン(希釈剤) 100質量部
2)配合2の非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(シリコーンエラストマー)の入った液浴に、基布1を浸漬し、基布1に配合2の加工液を含浸させた後、基布1を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して非膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量95g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンス中間体を得た。
3)配合1の膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(シリコーンゲル成分中に吸水性樹脂粒子が粗分散)の入った液浴に、生簀用海洋フェンス中間体を浸漬し、生簀用海洋フェンス中間体に配合1の加工液を全面被覆した後、生簀用海洋フェンス中間体を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量121g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
実施例1の生簀用海洋フェンスにおいて、基布1と膨潤性弾性体樹脂層との間に非膨潤性弾性体樹脂層を設けた以外は実施例1と同様とした。
1)先ず実施例1で用いた基布1を被覆する非膨潤性弾性体樹脂層形成用に下記配合2のシリコーンエラストマーによる非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物を配合調整した。
<配合2;非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
トルエン(希釈剤) 100質量部
2)配合2の非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(シリコーンエラストマー)の入った液浴に、基布1を浸漬し、基布1に配合2の加工液を含浸させた後、基布1を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して非膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量95g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンス中間体を得た。
3)配合1の膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(シリコーンゲル成分中に吸水性樹脂粒子が粗分散)の入った液浴に、生簀用海洋フェンス中間体を浸漬し、生簀用海洋フェンス中間体に配合1の加工液を全面被覆した後、生簀用海洋フェンス中間体を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量121g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
[実施例3]
実施例1の膨潤性弾性体樹脂層の組成をポリエチレンゲル(配合3)に変更した以外は実施例1と同様とし、質量102g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
<配合3;膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
A)ゲル状樹脂弾性成分として
商品名:コスモスーパーゲル(品番:HC04N:ポリエチレンゲル)100質量部
※エチレン−スチレン共重合体樹脂と流動パラフィン10〜20質量%の混合物
日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)アスカーC硬度4〜5:反発弾性率
21%:伸び率1300%〜:コスモ計器株式会社製)
商品名:アストロフレークNO.8 SILVER#20 5質量部
アルミ箔を変性アクリル樹脂で被覆した0.2mm×0.28mmサイズの
光輝性薄片
トルエン(希釈剤) 100質量部
B)吸水性樹脂粒子として
商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製) 10質量部
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm
実施例1の膨潤性弾性体樹脂層の組成をポリエチレンゲル(配合3)に変更した以外は実施例1と同様とし、質量102g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
<配合3;膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
A)ゲル状樹脂弾性成分として
商品名:コスモスーパーゲル(品番:HC04N:ポリエチレンゲル)100質量部
※エチレン−スチレン共重合体樹脂と流動パラフィン10〜20質量%の混合物
日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)アスカーC硬度4〜5:反発弾性率
21%:伸び率1300%〜:コスモ計器株式会社製)
商品名:アストロフレークNO.8 SILVER#20 5質量部
アルミ箔を変性アクリル樹脂で被覆した0.2mm×0.28mmサイズの
光輝性薄片
トルエン(希釈剤) 100質量部
B)吸水性樹脂粒子として
商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製) 10質量部
ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm
[実施例4]
実施例3の生簀用海洋フェンスにおいて、基布1と膨潤性弾性体樹脂層との間に非膨潤性弾性体樹脂層を設けた以外は実施例3と同様とした。
1)先ず実施例3で用いた基布1を被覆する非膨潤性弾性体樹脂層形成用に下記配合4のシリコーンエラストマーによる非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物を配合調整した。
<配合4;非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
商品名:コスモスーパーゲル(品番:HC04N:ポリエチレンゲル)100質量部
※エチレン−スチレン共重合体樹脂と流動パラフィン10〜20質量%の混合物
日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)アスカーC硬度4〜5:反発弾性率
21%:伸び率1300%〜:コスモ計器株式会社製)
商品名:アストロフレークNO.8 SILVER#20 5質量部
アルミ箔を変性アクリル樹脂で被覆した0.2mm×0.28mmサイズの
光輝性薄片
トルエン(希釈剤) 100質量部
2)配合4の非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(ポリエチレンゲル)の入った液浴に、基布1を浸漬し、基布1に配合4の加工液を含浸させた後、基布1を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して非膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量94g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンス中間体を得た。
3)配合3の膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(ポリエチレンゲル成分中に吸水性樹脂粒子が粗分散)の入った液浴に、生簀用海洋フェンス中間体を浸漬し、生簀用海洋フェンス中間体に配合3の加工液を全面被覆した後、生簀用海洋フェンス中間体を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量119g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
実施例3の生簀用海洋フェンスにおいて、基布1と膨潤性弾性体樹脂層との間に非膨潤性弾性体樹脂層を設けた以外は実施例3と同様とした。
1)先ず実施例3で用いた基布1を被覆する非膨潤性弾性体樹脂層形成用に下記配合4のシリコーンエラストマーによる非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物を配合調整した。
<配合4;非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物>
商品名:コスモスーパーゲル(品番:HC04N:ポリエチレンゲル)100質量部
※エチレン−スチレン共重合体樹脂と流動パラフィン10〜20質量%の混合物
日本ゴム協会標準規格(SRIS/0101)アスカーC硬度4〜5:反発弾性率
21%:伸び率1300%〜:コスモ計器株式会社製)
商品名:アストロフレークNO.8 SILVER#20 5質量部
アルミ箔を変性アクリル樹脂で被覆した0.2mm×0.28mmサイズの
光輝性薄片
トルエン(希釈剤) 100質量部
2)配合4の非膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(ポリエチレンゲル)の入った液浴に、基布1を浸漬し、基布1に配合4の加工液を含浸させた後、基布1を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して非膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量94g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンス中間体を得た。
3)配合3の膨潤性弾性体樹脂層形成用組成物(ポリエチレンゲル成分中に吸水性樹脂粒子が粗分散)の入った液浴に、生簀用海洋フェンス中間体を浸漬し、生簀用海洋フェンス中間体に配合3の加工液を全面被覆した後、生簀用海洋フェンス中間体を引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで挟んで絞り、余分な加工液を除去した後、180℃の熱風炉で3分間熱硬化処理して膨潤性弾性体樹脂層を形成し、質量119g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2の生簀用海洋フェンスを得た。ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:1、露出する吸水性樹脂粒子の径は40μm〜70μmであった。
実施例1〜4の生簀用海洋フェンスは、膨潤性弾性体樹脂層に、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比10:1で含み、吸水性樹脂粒子がゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、乾燥状態で40μm〜70μm径の露出部を形成していることによって、海洋生簀用フェンスに用いた時に、膨潤性弾性体樹脂層が海ぶどうの外観を部分的に模した様な構造を形成し、これによって養殖魚がフェンスに激突接触しても魚体への影響が小さく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性や付着量を自然に低減させる効果、あるいは海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然脱落し易くする効果、海流に対する水圧抵抗を低くし、海中での設営負荷を軽減する効果などが認められた。特に基布と膨潤性弾性体樹脂層との間に非膨潤性弾性体樹脂層を設けた実施例2及び4の生簀用海洋フェンスは実施例1及び3の生簀用海洋フェンスよりも1.5〜3倍程度実用耐久性に優れたものであった。
[比較例1]
実施例1の配合1から吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)10質量部の配合を省略した以外は実施例1と同様として、質量120g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層が膨潤性(海ぶどうの外観を部分的に模した膨潤性)を発現せず、そのため養殖魚がフェンスに激突接触した際に魚体への影響が大きく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着が目立ち、自然脱落のし難いものであった。
実施例1の配合1から吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)10質量部の配合を省略した以外は実施例1と同様として、質量120g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層が膨潤性(海ぶどうの外観を部分的に模した膨潤性)を発現せず、そのため養殖魚がフェンスに激突接触した際に魚体への影響が大きく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着が目立ち、自然脱落のし難いものであった。
[比較例2]
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)の配合を10質量部から0.5質量部に減量した以外は実施例1と同様として、質量119g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比が200:1のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の膨潤性(海ぶどうの外観を部分的に模した凹凸膨潤)が不十分で、そのため養殖魚がフェンスに激突接触した際に魚体への影響が大きく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着が目立ち、自然脱落のし難いものであった。
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)の配合を10質量部から0.5質量部に減量した以外は実施例1と同様として、質量119g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比が200:1のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の膨潤性(海ぶどうの外観を部分的に模した凹凸膨潤)が不十分で、そのため養殖魚がフェンスに激突接触した際に魚体への影響が大きく、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着が目立ち、自然脱落のし難いものであった。
[比較例3]
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)の配合を10質量部から30質量部に減量した以外は実施例1と同様として、質量118g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:3のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の膨潤が超過となり、それによって貝類や海草類などの海洋生物の付着抑止効果や、自然脱落のし易さには効果的であったが、その効果は超過膨潤した弾性体樹脂層の基布からの剥離・脱落によるものであり、また養殖魚による軽い接触や衝突によっても基布からの剥離・脱落を促す結果となった。従って比較例2のメッシュシートの海中での実用耐久性には著しく乏しいものであることが判明した。
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)の配合を10質量部から30質量部に減量した以外は実施例1と同様として、質量118g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比は10:3のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の膨潤が超過となり、それによって貝類や海草類などの海洋生物の付着抑止効果や、自然脱落のし易さには効果的であったが、その効果は超過膨潤した弾性体樹脂層の基布からの剥離・脱落によるものであり、また養殖魚による軽い接触や衝突によっても基布からの剥離・脱落を促す結果となった。従って比較例2のメッシュシートの海中での実用耐久性には著しく乏しいものであることが判明した。
[比較例4]
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)10質量部を、10〜20μmの粒子径に粉砕したもの10質量部に変更した以外は実施例1と同様として、質量121g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比が10:1のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の膨潤性(海ぶどうの外観を部分的に模した凹凸膨潤)が不十分で、そのため貝類や海草類などの海洋生物の付着が目立ち、自然脱落のし難いものであった。
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)10質量部を、10〜20μmの粒子径に粉砕したもの10質量部に変更した以外は実施例1と同様として、質量121g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比が10:1のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の膨潤性(海ぶどうの外観を部分的に模した凹凸膨潤)が不十分で、そのため貝類や海草類などの海洋生物の付着が目立ち、自然脱落のし難いものであった。
[比較例5]
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)10質量部を、700〜800μmの粒子径に凝集させた粗粒体10質量部に変更した以外は実施例1と同様として、質量118g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比が10:1のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の凹凸膨潤が極端となり、それによって貝類や海草類などの海洋生物の付着抑止効果や、自然脱落のし易さには効果的であったが、その効果は極端に膨潤した吸水性樹脂粒子部分の脱落によるものであり、また養殖魚による軽い接触や衝突によっても容易に脱落を促す結果となった。従って比較例5のメッシュシートの海中での実用耐久性には著しく乏しいものであることが判明した。
実施例1の配合1において吸水性樹脂粒子としての、商品名:アクアキープCA180N(住友精化社製ポリアクリル酸ナトリウム架橋体:粒子径70μm)10質量部を、700〜800μmの粒子径に凝集させた粗粒体10質量部に変更した以外は実施例1と同様として、質量118g/m2:空隙率80%:空隙部面積2cm2、ゲル状樹脂弾性体と吸水性樹脂粒子との乾燥質量比が10:1のメッシュシートを得た。得られたメッシュシートは、海洋生簀用フェンスに用いた時に、弾性体樹脂層の凹凸膨潤が極端となり、それによって貝類や海草類などの海洋生物の付着抑止効果や、自然脱落のし易さには効果的であったが、その効果は極端に膨潤した吸水性樹脂粒子部分の脱落によるものであり、また養殖魚による軽い接触や衝突によっても容易に脱落を促す結果となった。従って比較例5のメッシュシートの海中での実用耐久性には著しく乏しいものであることが判明した。
本発明により得られる生簀用海洋フェンスは、海洋生簀用のフェンスで、海流に対する水圧抵抗が低く、海中での設営負荷の少ないものであって、養殖魚がフェンスに強く接触しても、海洋生簀用フェンスの表面が部分的に海ぶどうの外観を模することで魚体への影響が軽減され、しかも貝類や海草類などの海洋生物の付着性及び付着量を自然に低減させる効果のあるメッシュシート、あるいは海洋生物が付着しても自重や時化の荒波などにより自然に脱落し易いメッシュシートが得られるので、マグロ、ハマチ、タイ、ヒラメ、伊勢エビなどの海洋生簀に用いるフェンスの素材として安全かつ有用である。
1:生簀用海洋フェンス
1−1:空隙部
1´:生簀用海洋フェンス(非膨潤性弾性体樹脂層を含む)
1´−1:空隙部
2:粗目織物(基布)
3:膨潤性弾性体樹脂層
3−1:ゲル状樹脂弾性体
3−2:吸水性樹脂粒子
3−3:凹凸状膨潤
3−3−a:膨潤凸部
4:非膨潤性弾性体樹脂層
5:光輝性薄片
1−1:空隙部
1´:生簀用海洋フェンス(非膨潤性弾性体樹脂層を含む)
1´−1:空隙部
2:粗目織物(基布)
3:膨潤性弾性体樹脂層
3−1:ゲル状樹脂弾性体
3−2:吸水性樹脂粒子
3−3:凹凸状膨潤
3−3−a:膨潤凸部
4:非膨潤性弾性体樹脂層
5:光輝性薄片
Claims (5)
- マルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸要素とする粗目織物を基布として、その表裏全面を被覆する膨潤性弾性体樹脂層とで構成された多数の空隙部を有するメッシュシートであって、前記膨潤性弾性体樹脂層が、ゲル状樹脂弾性体及び吸水性樹脂粒子とを乾燥質量比100:1〜5:1とする主成分を含み、前記吸水性樹脂粒子が前記ゲル状樹脂弾性体中に粗分散し、25μm〜500μm径の露出部を形成していることを特徴とする生簀用海洋フェンス。
- 前記ゲル状樹脂弾性体が、シリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れかである請求項1に記載の生簀用海洋フェンス。
- 前記基布と、前記膨潤性弾性体樹脂層との間にシリコーンエラストマー、シリコーンゲル、及びポリエチレンゲルの何れかを主成分とする非膨潤性弾性体樹脂層が形成されている請求項1または2に記載の生簀用海洋フェンス。
- 前記ゲル状樹脂弾性体が、金属フレーク、雲母、金属酸化物薄膜被覆雲母、及び蒸着フィルム破砕物から選ばれた1種以上の光輝性薄片を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の生簀用海洋フェンス。
- 前記メッシュシートを10〜20℃の海水中に24時間浸漬した状態での前記膨潤性弾性体樹脂層の形態が凹凸状膨潤を成し、この凹凸状膨潤において前記吸水性樹脂粒子が膨潤してなる凸部の硬度が、JIS K2207による針入度(1/10mm)で40〜200の範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の生簀用海洋フェンス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014057368A JP2015177772A (ja) | 2014-03-20 | 2014-03-20 | 生簀用海洋フェンス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014057368A JP2015177772A (ja) | 2014-03-20 | 2014-03-20 | 生簀用海洋フェンス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2015177772A true JP2015177772A (ja) | 2015-10-08 |
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ID=54262320
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2014057368A Pending JP2015177772A (ja) | 2014-03-20 | 2014-03-20 | 生簀用海洋フェンス |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2015177772A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106234291A (zh) * | 2016-08-01 | 2016-12-21 | 洛阳昌盛水产有限公司 | 一种单管按摩式鲟鱼养殖模拟活水催产池 |
-
2014
- 2014-03-20 JP JP2014057368A patent/JP2015177772A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106234291A (zh) * | 2016-08-01 | 2016-12-21 | 洛阳昌盛水产有限公司 | 一种单管按摩式鲟鱼养殖模拟活水催产池 |
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