本発明の浴槽用手摺り1について、図1乃至図17に示す第一実施形態に基いて説明する。本発明の浴槽用手摺り1は、浴槽の側壁に着脱自在に取り付けられる。側壁に取り付けられた浴槽用手摺り1は、入浴者や介助者等をはじめとする使用者が、浴槽への出入りの際に側壁を跨ぐ時に、使用者が掴むものである。なお、使用者が側壁を跨ぐ時以外に掴んでも勿論よい。
浴槽用手摺り1が取り付けられる浴槽の側壁としては、設計上、主に、浴室の洗い場に面する側壁が想定されている。なお、浴槽用手摺り1が取り付けられる浴槽の側壁は、特に洗い場に面する側壁に限定されず、浴室壁との間に、浴槽用手摺り1が設置され得る空間を有する側壁であればよい。
浴槽用手摺り1は、図1乃至図9に示すように、側壁の第一の側面に当接する押圧部2と、側壁の第一の側面と反対側の第二の側面に当接する押圧受け部3と、押圧部2と押圧受け部3とを連結する連結部4と、を備える。ここで、設計上、押圧部2が当接する第一の側面としては、洗い場側の側面が想定され、押圧受け部3が当接する第二の側面としては、浴槽内側の側面が想定されている。なお、第一の側面は、浴槽内側の側面でもよく、洗い場側の側面に限定されず、また、第二の側面は、洗い場側の側面でもよく、浴槽内側の側面に限定されない。以下の説明においては、図1乃至図4に示すように、浴槽用手摺り1が浴槽の側壁に取り付けられた状態で、第一の側面に対応する方(洗い場に対応する方)を前方(矢印F)、第二の側面に対応する方(浴槽内に対応する方)を後側(矢印B)とする。また、左方および右方は、前側から後側を見た時の左方(矢印L)および右方(矢印R)をいうものとする。
まず、全体の構成について説明する。押圧部2は、板状やブロック状等、形状は特に限定されないが、側壁の第一の側面との当接面積が大きくとれ、且つ、薄肉で小型化や軽量化を可能とする、板状が好ましい。第一実施形態では、図3、図4に示すように、側壁の第一の側面との当接面21が横長の矩形状をしているが、楕円状等、他の形状でもよく、特に限定されない。
押圧受け部3は、押圧部2と同様に、板状やブロック状等、形状は特に限定されないが、第二の側面との当接面積が大きくとれ、且つ、薄肉で小型化や軽量化を可能とする、板状が好ましい。第一実施形態では、図1、図2に示すように、側壁の第一の側面との当接面31が矩形状をしているが、楕円状等、他の形状でもよく、特に限定されない。
押圧部2と押圧受け部3は、側壁の前後両側、すなわち第一の側面と第二の側面とを挟持する。押圧部2と押圧受け部3とを連結する連結部4が、押圧部2と押圧受け部3とで側壁を挟持する挟持力を伝達する。押圧部2と押圧受け部3については、後で更に説明する。
連結部4は、図3、図4に示すように、浴槽用手摺り1が側壁に取り付けられた時に第一の側面に対向し、押圧部2を支持する第一の側片41を備える。押圧部2は、第一の側片41に対する姿勢、すなわち向きが、可変となるように支持されてもよいし、第一の側片41に対する姿勢が不変となるように固定されてもよい。
また連結部4は、図3、図4に示すように、浴槽用手摺り1が側壁に取り付けられた時に第二の側面に対向し、押圧受け部3を支持する第二の側片42を備える。押圧受け部3は、第二の側片42に対する姿勢、すなわち向きが、可変となるように支持されてもよいし、第二の側片42に対する姿勢が不変となるように固定されてもよい。
また連結部4は、図1、図2に示すように、浴槽用手摺り1が側壁に取り付けられた時に側壁の上端面上に位置し、第一の側片41と第二の側片42とを連結する連結片43を備える。連結片43は、浴槽用手摺り1が側壁に取り付けられた時に、側壁の上端面上に載置されてもよいし、側壁の上端面から上方に離れて位置してもよい。
また連結部4は、浴槽用手摺り1が側壁に取り付けられた時に、第一の側片41と第二の側片42と連結片43とが相対的に移動しないように固定する。ただしこの場合、第一の側片41、第二の側片42、連結片43の弾性変形による若干の移動は構わない。連結部4は、別部材で形成されたものが固定されてもよいし、一体的に形成されてもよい。
また連結部4は、第一の側片41と第二の側片42とが相対的に移動可能となるように構成されてもよい。この場合、連結部4が二個、または、三個、または四個以上の複数個の部材で構成され、これらの部材が相対的に移動してもよいが、特に限定されない。第一実施形態では、図1乃至図3に示すように、連結片43が、第一の側片41に連結される第一の連結片43aと、第二の側片42に連結される第二の連結片43bと、を備える。そして、第一の連結片43aと第二の連結片43bとが異なる位置関係での連結が可能とされているが、特にこのようにされていなくてもよい。連結部4については、後で更に説明する。
浴槽用手摺り1は、図1乃至図4、図14に示すように、手摺部5を備える。手摺部5は、使用者が手で把持する把持部51を備えていればよく、形状等は特に限定されない。
第一実施形態では、把持部51は、図14に示すように、平面視において前後方向に長い長円状をしており、左右の直線部にそれぞれ、下方に突出する筒部53が設けられている。把持部51は、第一実施形態では合成樹脂またはエラストマーにより、筒部53も一体に形成されるが、これ以外の材質で形成されてもよい。筒部53には、図14(a)に示すように、内部に下方に突出する被嵌部53aが設けられている。そして、筒状をした取付脚部52の上端が被嵌部53aに被嵌され、筒部53内に嵌入されて、把持部51と取付脚部52とが固定される。取付脚部52の下端には、キャップ54が被せられ、開口が閉塞される。取付脚部52は、強度および剛性の確保の観点から、ステンレスやアルミニウムをはじめとする金属で形成されることが好ましいが、特に限定されない。取付脚部52には、上下に複数個、前後に貫通する取付孔52aが設けられている。
第一実施形態では、取付脚部52が第一の側片41に固定されることで、手摺部5が連結部4に設けられるが、取付脚部52が第二の側片42または連結片43に固定されてもよい。また、浴槽用手摺り1が取付脚部52を備えなくてもよい。
浴槽用手摺り1は、図1乃至図4、図15に示すように、支持脚6を備えてもよい。支持脚6は、床面に載置される接地部62を備えていればよく、形状等は特に限定されない。
第一実施形態では、支持脚6は、図15に示すように、接地部62を下端に有する支持柱61が第一の側片41に固定されることで、連結部4に設けられるが、支持柱61が第二の側片42または連結片43に固定されてもよい。なお、浴槽用手摺り1が支持脚6を備えなくてもよく、支持脚6は任意の構成である。
支持柱61は、前側の支持柱61aと後側の支持柱61bとが前後に連結されて構成されている。そして、支持柱61の下端部には、接地部62が設けられる。接地部62は、洗い場の床面や浴槽の底面、これら床面や底面等に載置された底上げ部材等に載置可能であり、載置される箇所は限定されない。
支持柱61には、前後に貫通する固着具挿通孔(不図示)が形成されている。そして、前後に貫通する固着具挿通孔(不図示)が形成されたブラケット63の固着具挿通孔と支持柱61の固着具挿通孔に固着具64が挿通されて、固着具64が第一の側片41に固定されることで、支持柱61が連結部4に固定される。
上記押圧部2、押圧受け部3、連結部4、手摺部5、支持脚6の材質は、特に限定されず、樹脂、金属、木質材等をはじめ様々な材質が適宜利用可能であり、また、複数種の材質が複合されたものでもよい。
浴槽用手摺り1は、図1乃至図4、図16に示すように、位置調節部7を備える。位置調節部7は、連結部4に設けられ、連結部4に対する押圧部2の位置を、押圧受け部3に近接または離反する方向に移動させるものである。以下、第一実施形態の位置調節部7について、図16(b)に基いて説明する。
前後方向を長手方向とする押圧部取付軸70の一端部に、ハンドルノブ取付部70bが設けられる。ハンドルノブ取付部70bは、中心側の断面六角形状をした角軸部70cと、先端側の断面円形状をした丸軸部70dと、を備えている。また押圧部取付軸70の他端部に、押圧部取付部70eが形成されている。また押圧部取付軸70には、表面に雄ねじ部70aが形成されている。
筒状に形成されるハンドルノブ71の内部には、頭隠し用孔、最も小径に形成される空転用丸孔、空転用丸孔より大径の座金収容孔、更に大径の八角形状に形成される座金受け収容孔が順に形成される。座金収容孔には座金72が収容される。また、座金受け収容孔に、外周が八角形状で内周が円形状の環状をした可動側ロック座金受け73が嵌入されて固定されている。可動側ロック座金受け73には、その内周の円形状をした孔を囲むように周方向に複数のピン孔が形成されている。
円環状をしたトルクロック座金74の片面の外周部には、ロック突部74aが周方向に複数突設されており、隣接するロック突部74a間に係合凹部が形成される。各ロック突部74aは、周方向に向けて表面から斜めに立ち上がる傾斜部と、傾斜部の上端と連続しトルクロック座金の表面と平行な平行部と、を備えている。またトルクロック座金74には、周方向に複数のピン孔が形成されている。トルクロック座金74は、ロック突部74aが形成された面が外側になるように可動側ロック座金受け73の片面に配置される。トルクロック座金74は、そのピン孔と可動側ロック座金受け73のピン孔とにピン75が圧入されることによって、周方向への回り止めがなされた状態で、可動側ロック座金受け73に取り付けられる。
固定側ロック座金受け76は、内周が六角孔状をした角孔となる筒状に形成される。固定側ロック座金受け76の片面には、内周の角孔を囲むようにロック座金収納凹部が凹設される。前記ロック座金収納凹部には、前記角孔を囲むように複数のピン孔が形成される。トルクロック座金74は、ロック突部74aが形成された面が外側になるようにロック座金収納凹部内に配置される。トルクロック座金74は、そのピン孔と固定側ロック座金受け76のピン孔とにピン75が圧入されることによって、周方向への回り止めがなされた状態で、固定側ロック座金受け76に取り付けられる。
トルクロック座金74を収納した固定側ロック座金受け76は、ハンドルノブ取付部70bに被挿されて、内周の角孔が角軸部70cに嵌め合わされて、ハンドルノブ取付部70bに取り付けられる。固定側ロック座金受け76は、トルクロック座金74を収納した面がハンドルノブ取付部70bの先端側を向くように配置され、角孔と角軸部70cの嵌め合わせによって、回転しない状態に固定される。
可動側ロック座金受け73が嵌め合わされハンドルノブ71は、ハンドルノブ取付部70bにその先端から被挿されて、丸軸部70dに取り付けられる。ハンドルノブ71の空転用丸孔と可動側ロック座金受け73の内周の孔が丸軸部70dの外周を回ることによって回動自在になっている。そして、頭隠し用孔に座金77が配置され、固定ねじ78が押圧部取付軸70の一端面に形成された雌ねじ孔(不図示)にねじ込まれて、ハンドルノブ71の抜け止めが行われる。頭隠し用孔にはキャップ84が嵌め込まれ、固定ねじ78を隠している。
ハンドルノブ71に装着された可動側ロック座金受け73には、トルクロック座金74が設けられ、ハンドルノブ71がハンドルノブ取付部70bに取り付けられる。これにより、可動側ロック座金受け73のトルクロック座金74は、固定側ロック座金受け76に収納されたトルクロック座金74に対向して相互に噛み合っている。すなわち、固定側ロック座金受け76のトルクロック座金74のロック突部74aと、可動側ロック座金受け73のトルクロック座金74の係合凹部とが、相互に嵌まり合って噛み合っている。このトルクロック座金74、74の噛み合いによって、ハンドルノブ71が回し操作される際の回動力が押圧部取付軸70に伝わり、押圧部取付軸70を回すことができるものである。また、ハンドルノブ71を回し操作する際の回動力が過大な力であると、固定側ロック座金受け76のトルクロック座金74と可動側ロック座金受け73のトルクロック座金74の傾斜部が互いに滑って、ロック突部74aと係合凹部との係合による噛み合いが外れる。そして固定側ロック座金受け76のトルクロック座金74の平行部の上に可動側ロック座金受け73のトルクロック座金74の平行部が乗り上げる。これにより、固定側ロック座金受け76のトルクロック座金74に対して可動側ロック座金受け73のトルクロック座金74が空転する。これに伴い、ハンドルノブ71も空転用丸孔の外周を空転し、ハンドルノブ71を回し操作する回動力がボルト軸に伝わらないようにすることができる。上記一対のトルクロック座金74がハンドルノブ71と押圧部取付軸70の間に設けられることで、回動伝達遮断機構が形成される。すなわち、回動伝達遮断機構は、所定の力以下ではハンドルノブ71から押圧部取付軸70に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブ71から押圧部取付軸70に回動力が伝達されないようにする。
次に、第一実施形態の押圧部2、押圧受け部3、連結部4について更に説明する。押圧部2は、図3、図4、図6に示すように、当接面21の下側に、当接面21よりも第一の側面から離れる方(前方F)に位置する、予備面22を備えている。なお、第一実施形態では予備面22が設けられているが、特に予備面22は設けられなくてもよい。
連結片43は、第一の連結片43aと第二の連結片43bと、を備え、これらは別部材からなり、互いに相対位置が可変となるように構成されている。浴槽用手摺り1は、図10に示す第一の連結片43a側の押圧側可動部1aと、図12に示す第二の連結片43b側の受け側可動部1bとで構成されている。
押圧側可動部1aは、図10に示すように、第一の側片41および第一の連結片43aからなる連結部4と、連結部4に設けられる位置調節部7、手摺部5、支持脚6と、位置調節部7を介して連結部4に設けられる押圧部2と、を備える。押圧側可動部1aのうち、手摺部5および支持脚6を除いた残りを押圧部ユニット11とする。図11に示すように、押圧部ユニット11の第一の側片41には、左右両側に、前後に貫通する固着具挿通孔41aが上下に設けられている。手摺部5の取付脚部52には、上述したように上下に複数の取付孔52aが設けられており、任意に選択されたいずれかの取付孔52aと、固着具挿通孔41aが連通する状態で、固着具(不図示)が取付孔52aに挿通されて固着具挿通孔41aに螺着される。複数の取付孔52aより任意に選択されることにより、手摺部5が上下に位置調整可能となる。なお、第一実施形態では、上下に複数の取付孔52aが設けられているが、取付孔52aが単数で固着具挿通孔41aが複数もうけられてもよい。
また図11に示すように、第一の側片41には、位置調節部取付孔41bが設けられている。位置調節部取付孔41bには、雌ねじ部(不図示)が設けられる。この雌ねじ部は、位置調節部取付孔41bの内面にねじが直接形成されてもよいし、別体の雌ねじ部材(不図示)が設けられてもよい。前記雌ねじ部に、押圧部取付軸70の雄ねじ部70aが螺合する。そして、ハンドルノブ71が回転され、所定の力以下で押圧部取付軸70に回動力が伝達され、押圧部取付軸70が第一の側片41に対して前後に移動する。押圧部取付軸70の他端部の端面に形成されている押圧部取付部70eに、押圧部2が取り付けられる。このため、押圧部取付軸70が第一の側片41に対して前後に移動することで、押圧部2が第一の側片41に対して前後に移動することになる。
押圧部2は、押圧部取付部70eに、姿勢すなわち向きが可変となるように支持されている。これにあたっては、例えば、押圧部2が球部を有するとともに、押圧部取付部70eが前記球部を受ける受け部を有し、球部が受け部に受けられて、押圧部2と押圧部取付部70eとが連結される。このとき、押圧部2は、押圧部取付部70e(すなわち第一の側片41)に対して三次元の任意の方向の軸回りに回転可能となる。また、押圧部2が、押圧部取付部70eに対して、自在継手等により二軸回りにそれぞれ回転可能となるように、支持されてもよい。また、押圧部2が、押圧部取付部70eに対して、ヒンジ等により一軸回りにのみ回転可能となるように、支持されてもよい。押圧部2は、押圧部取付部70e(すなわち第一の側片41)に対して、自在継手やヒンジをはじめとする様々な継手等により、適宜、姿勢が可変となるように支持してもよい。
このように、押圧部2が第一の側片41に対する姿勢が可変となるように形成されると、浴槽の第一の側面が傾斜していても、傾斜した第一の側面に沿って押圧部2が当接することが可能となる。
第一実施形態では、図6に示すように、押圧部2の当接面21の下端は、連結片43より下方8cm位置D8よりも上側に位置するもので、更には、下方5cm位置よりも上側に位置することが好ましい。
押圧部2の当接面21は、浴槽の側壁の第一の側面の上端部付近に当接する。図17に示すように、浴槽(図中のBT)は、近年、金属製浴槽やセメント浴槽だけではなく、浴室ユニットと一体的に形成される樹脂製のものが多くなっている。そして、樹脂製の浴槽の側壁(図中のBW)の大部分は、第一の側面を有する側壁部と第二の側面を有する側壁部との間に空洞が存在し、これらの側壁部は、浴槽の上端のフランジ部(図中のBW1)にて連結される構成になっている。このため、押圧部2と押圧受け部3との当接箇所が下方へ行く程、両側壁部の支点(すなわち連結されているフランジ部)からの距離が長くなり、支点にかかる曲げモーメントが大きくなって撓みが増大する。そこで、浴槽の側壁の押圧部2と押圧受け部3との当接箇所が上方へ行く程、支点にかかる曲げモーメントが小さくて済む。このため、浴槽用手摺り1が側壁に取り付けられた時に、側壁の上端面上に位置する連結片43に対して、押圧部2と押圧受け部3のうちのいずれか一方または両方の当接箇所をできるだけ上方に設定するものである。
第一実施形態では、上述したように押圧部2の当接面21の下端が連結片43より下方8cm位置D8(好ましくは5cm位置)より上側としているが、下方7cm、6cm、更には下方4cm、3cm、2cmでもよい。樹脂製の浴槽は、第一の側面を有する側壁部が、浴槽の側壁の上端面より下方3〜4cm位置まで設けられ、その下側に別体のエプロン(図17中のBE)が取り付けられることが多い。このような場合には、押圧部2の第一の側面への当接箇所が、浴槽の側壁の上端面から下方4cm位置よりも下方に位置すると、エプロンにかかってしまい、浴槽用手摺り1が浴槽の側壁に強固に取り付けられ難くなるおそれがある。そこで、押圧部2の当接面21の下端が連結片43より下方4cm、3cm、2cmとなることがより一層好ましい。
第一実施形態では、図6に示すように、押圧受け部3の当接面31の下端は、押圧部2の当接面21の下端よりも下方に位置している。押圧受け部3の当接面31の上下長さは、押圧部2の当接面21の上下長さよりも長い。また図9に示すように、押圧部2の当接面21の左右長さは、押圧受け部3の当接面31の左右長さよりも長い。
なお、浴槽用手摺り1は、図17に示すように、カバー12を備えてもよい。カバー12は、第一の連結片43aの上側を覆うもので、下方に開口する略箱状をしたものである。カバー12は、特に材質は限定されないが、樹脂で形成されることが好ましい。可撓性を有する樹脂で形成されることにより、装着が容易となる。カバー12の下端の開口の端縁部には、内側に突出する抜止部(不図示)が形成され、この抜止部が第一の連結片43aの下側に入り込んでカバー12の第一の連結片43aからの抜け止めがなされる。
そして第一実施形態では、図11乃至図13に示すように、押圧部2と押圧受け部3の少なくとも一方は、浴槽の側壁の第一の側面または第二の側面に当接する滑り止め部材8を備える。滑り止め部材8として、押圧部2の当接面21となる滑り止め部材8aと、押圧受け部3の当接面31となる滑り止め部材8bと、押圧部2の予備面22となる滑り止め部材8cと、が設けられている。滑り止め部材8は、第一の側面、第二の側面に対する摩擦係数が、滑り止め部材8がない場合よりも向上するもので、エラストマー等により形成されるが、材質は特に限定されない。滑り止め部材8が設けられることにより、浴槽用手摺り1が浴槽の側壁により一層強固に取り付けられる。
滑り止め部材8は、背面に押圧部2または押圧受け部3の本体への取付部84が設けられており、この取付部84が押圧部2または押圧受け部3の本体に形成された取付孔(不図示)に嵌入されることで、取り付けられる。
更に、滑り止め部材8は、浴槽の側壁の第一の側面または第二の側面との当接面21、31に、第一の凸部81を有するものである。第一の凸部81は、図13に示すように、滑り止め部材8が左右方向に1〜5程度に仮想的に区分された領域において、左右方向の全長または大部分に亘って凸となるものである。凸となる高さは、1mm〜20mmの間で、2mm、3mm、5mm、10mm、15mm、その他の高さでもよい。図13に示す第一実施形態では、滑り止め部材8bが第一の凸部81を一つのみ有し、その左右長さは、滑り止め部材8bの左右の全長に亘っている。なお、第一の凸部81の個数は限定されない。これにより、浴槽の第二の側面の形状が平坦面でない場合でも、第一の凸部81の頂部を集中的に浴槽の第二の側面に押し付けたり、第一の凸部81の片側の傾斜部を第二の側面に当接させて、第二の側面の形状に応じた対応が可能となる。
また第一実施形態では、第一の凸部81は滑り止め部材8bに設けられているが、滑り止め部材8aのみに設けられたり、滑り止め部材8aと滑り止め部材8bの両方に設けられてもよい。
また図11に示すように、第一の側片41の前面および第一の連結片43aの上面には、第一リブ44が設けられている。第一リブ44は、左右両側において、第一の連結片43aの上面を前後に伸びるとともに、第一の側片41の前面を上下に伸びるものである。この左右の第一リブ44の間には溝45が形成され、この溝45に第二の連結片43bが挿入される。また図11に示すように、第一の連結片43a(溝45の底部)には、上下に貫通する取付孔46aが前後に複数設けられている。
また図8、図9に示すように、第一の連結片43aには、押圧部2および押圧受け部3よりも左右の外側にそれぞれ突出する突出部47(47a、47b)が設けられている。この突出部47a、47bにより、浴槽の側壁に取り付けられた浴槽用手摺り1が、左右方向に傾くのが抑制される。また、突出部47には、左右方向を長手方向とする第二リブ48が、前後方向に複数設けられている。
受け側可動部1bは、図12に示すように、第二の側片42および第二の連結片43bからなる連結部4と、連結部4に設けられる押圧受け部3と、を備え、これらが押圧受け部ユニットを構成している。第二の側片42の前側には、押圧受け部3が、姿勢が可変となるように支持されている。これにあたっては、上述したように、三次元の任意の方向の軸回りに回転可能、自在継手等により二軸回りにそれぞれ回転可能、ヒンジ等により一軸回りにのみ回転可能となるように、支持されてもよい。これにより、押圧受け部3が第二の側片42に対する姿勢が可変となるように形成されると、浴槽の第二の側面が傾斜していても、傾斜した第二の側面に沿って押圧受け部3が当接することが可能となる。
また図12に示すように、第二の側片42の後側には、把手部49が設けられている。また、第二の連結片43bには、上下に貫通する取付孔46bが設けられている。上述したように、第一の連結片43aには、前後に複数の取付孔46aが設けられており、任意に選択されたいずれかの取付孔46aと、取付孔46bが連通する状態で、固着具(不図示)が取付孔46bに挿通されて取付孔46aに螺着される。複数の取付孔46aより任意に選択されることにより、第一の連結片43aと第二の連結片43bとの間の距離が調整可能となる。なお、第一実施形態では、複数の取付孔46aが設けられているが、取付孔46aが単数で取付孔46bが複数設けられてもよい。
次に、第二実施形態について図18乃至図21に基いて説明する。なお、図1乃至図17に示す第一実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略し、主に異なる構成について説明する。
第二実施形態では、図18、図19に示すように、滑り止め部材8aが、第一の凸部81を二つ備えている。また、図20、図21に示すように、滑り止め部材8bが、第一の凸部81を二つ備えている。両側の第一の凸部81の間には、谷部82が形成される。
このように、滑り止め部材8a、8bが、第一の凸部81を二つ備えることで、第一の凸部81を一つ備える第一実施形態の滑り止め部材8で対応しきれなかった浴槽の第一の側面、第二の側面に対応がし易くなる。
さらに、第二実施形態では、滑り止め部材8が第二の凸部83を複数有するものである。第二の凸部83は、第一の凸部81よりも突出高さおよび突出幅が小さいもので、0.1mm〜1mm程度、好ましくは0.2mm、0.3mm、0.4mmである。
この第二の凸部83が設けられることにより、滑り止め部材8の表面が平坦な場合と比べて、第二の凸部83で集中的に圧力を受けて摩擦力が向上し、滑り止めの効果が向上する。なお、第一実施形態では第二の凸部83が設けられていないが、第二の凸部83は、第一実施形態において設けられてもよい。