JP2015171668A - 気体透過シート - Google Patents

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慎二 宮川
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Abstract

【課題】複数の撥水性多孔質層の接着性を向上させる手段を提供する。【解決手段】複数の撥水性多孔質層がホットメルト接着剤で接着された気体透過シート。【選択図】図2

Description

本発明は、気体透過シートに関する。
固体高分子形燃料電池に使用されるガス拡散電極は、高分子電解質膜と同種または異種のイオン交換樹脂(高分子電解質)で被覆された触媒担持カーボン微粒子を含有する電極触媒層を有する。さらに、この触媒層に反応ガスを供給すると共に、触媒層に発生する電荷を集電するガス拡散層からなる。そして、かようなガス拡散電極の触媒層の側を高分子電解質膜に対向させた状態で接合することによって膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly、以下単にMEAとも称する)が形成される。このようなMEAの複数個を、ガス流路を備えたセパレータを介して積層することにより固体高分子形燃料電池が構成される。
上記のガス拡散層においては、ガス拡散層と触媒層との間の電気抵抗を下げると共に、ガスの流れをよくするための中間層として、ガス拡散層の触媒層側に、炭素材料などの導電性物質を主体とする微細多孔質層を備えたものが知られている。
特許文献1には、スペーサ、セパレータおよび微細多孔質層を有するMEAなどの部材を、アクリレート系接着剤により接着し積層してなる燃料電池が開示されている。
特開2006−12789号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、アクリレート系接着剤を用いて撥水性である複数の多孔質層を接着しようとする場合、多孔質層の表面には水分が吸着していないため、アクリレート系接着剤の硬化は促進されない。したがって、アクリレート系接着剤の接着力が低下するという問題があった。
そこで本発明は、複数の撥水性多孔質層の接着性を向上させる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を積み重ねた。その結果、複数の撥水性多孔質層をホットメルト接着剤により接着することにより、上記課題が解決できることを見出した。
ホットメルト接着剤が撥水性多孔質層の孔に入り込むため、撥水性多孔質層同士の接着力が向上する。
気体透過シートを備えた膜電極接合体の一例を示す断面概略図である。 気体透過シートの一例を示す概略図である。 気体透過シートの製造工程を示す模式図である。
まず、気体透過シートを備える燃料電池用の膜電極接合体について説明する。
図1は、気体透過シートを備えた燃料電池用の膜電極接合体の一例を示す、断面概略図である。
図1に示す膜電極接合体(MEA)1は、電解質膜10を中心とするアノードとカソードとの両極に、触媒層20、第1の撥水性多孔質層31、第2の撥水性多孔質層32がそれぞれ配置されている。第1の撥水性多孔質層31および第2の撥水性多孔質層32は、ホットメルト接着剤(図示せず)によって接着され気体透過シート30を形成している。図1において、気体透過シート30はガス拡散層として用いられ、第1の撥水性多孔質層31はミクロポーラス層(MPL:Micro Porous Layer)であり、第2の撥水性多孔質層32はガス拡散層基材である。
図2は、図1の膜電極接合体に備えられる気体透過シートを示す概略図である。図2に示すように、気体透過シート30は、第1の撥水性多孔質層31(MPL)、および第2の撥水性多孔質層32を有する。そして、第1の撥水性多孔質層31と第2の撥水性多孔質層32との間に、前記第1の撥水性多孔質層31および前記第2の撥水性多孔質層32を接着させるホットメルト接着剤33を有する。
固体高分子形燃料電池のガス拡散層においては、ガス拡散層と触媒層との間の電気抵抗を下げると共に、ガスの流れをよくするための中間層として、ガス拡散層の触媒層側に、炭素材料などの導電性物質を主体とする多孔質層を備えたものが知られている。前記多孔質層は、ガス拡散層基材とは別途に作製される炭素材料およびバインダからなる撥水性のシートが用いられ、これを撥水性でありかつ多孔質であるガス拡散層基材と貼り合わせる必要がある。
従来、燃料電池を構成する部材であるスペーサ、セパレータおよびMEAなどは、アクリレート系接着剤を用いて接着させることにより積層し、燃料電池を作製していた。しかしながら、アクリレート系接着剤を用いて撥水性である複数の多孔質層を接着しようとする場合、多孔質層の表面には水分が吸着していないため、アクリレート系接着剤の硬化は促進されない。したがって、アクリレート系接着剤の接着力が低下するという問題があった。
これに対し、図2に示す気体透過シートでは、MPLとガス拡散層基材とを、ホットメルト接着剤により接着している。MPLおよびガス拡散層基材は撥水性であるため、同様に撥水性であるホットメルト接着剤は、溶融した後撥水性多孔質層の孔に入り込むことができる。したがって、撥水性多孔質層同士の接着力を高めることができる。かような構成を有する気体透過シートは、導電性およびガス透過性に優れる。
また、ホットメルト接着剤が撥水性多孔質層の孔に入り込むことによって、複数の撥水性多孔質層を貼り合わせた後の気体透過シートの厚さは、撥水性多孔質層の厚みを合計した厚みよりも厚くはならない。したがって、このような気体透過シートを備える膜電極接合体においては、電気的な接合が低下する現象はほとんど起こらない。さらに、複数の撥水性多孔質層において非接合部位が生じないため、非接合部位に応力が集中することを防止することができる。
加えて、例えば、液状の接着剤を用いた場合、接着剤が滲むあるいは流れ出す等の現象により、所望の量および所望の形状で接着剤を塗布できない等の問題があり、また、乾燥や硬化に時間がかかり生産性が低下する等の問題もある。これに対し、ホットメルト接着剤を用いた場合、予め型抜きすることにより、所望の量および所望の形状で配置させることができる。また、乾燥や硬化に要する時間が低減されることから生産性にも優れ、液状の接着剤の塗布装置も不要となり、膜電極接合体および/または燃料電池の低コスト化が図れる。
以下、上記気体透過シートの構成について、さらに詳細に説明する。
[撥水性多孔質層]
上記気体透過シートを構成する撥水性多孔質層の材料は、撥水性を有するものであれば特に制限されず、例えば、炭素材料とバインダとの組み合わせ、炭素製のシート状材料、金属多孔体等が挙げられる。
撥水性多孔質層に用いられる炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、鱗片状黒鉛、粒状黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。これらは単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。炭素材料の平均粒径としては、10nm〜5μmであることが好ましい。
また、上記した炭素材料を用いる場合は、炭素材料同士を結着して撥水性多孔質層の強度を確保する機能を有し、撥水剤としての機能を兼ね備えているバインダを併用することが好ましい。このようなバインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素化ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが挙げられる。
炭素材料とバインダとを用いる場合、ガス透過性向上と導電性向上とを両立させる観点から、撥水性多孔質層中の炭素材料の配合比は、5〜70重量%であることが好ましい。
炭素製のシート状材料としては、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布などの材料が挙げられる。さらに、炭素製のシート状材料には、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含有させることが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。
撥水性多孔質層に用いられる金属多孔体の例としては、例えば、金網、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、エッチングプレート、精密プレス加工プレート、金属メッシュ、金属細線焼結体、金属不織布などが挙げられる。
撥水性多孔質層の少なくとも1つは、フッ素化ポリマーおよびポリオレフィンの少なくとも一方を含むことが好ましい。また、撥水性多孔質層の少なくとも1つが、金属多孔体であることもまた好ましい。このような構成とすることにより、上記の効果がより効率的に得られる。
撥水性多孔質層の厚さは、特に制限されないが、MPLとして用いる場合は、10〜100μmの範囲であることが好ましい。また、ガス拡散層基材として用いる場合は、10〜50μmの範囲であることが好ましい。
上記気体透過シートは複数の撥水性多孔質層を有するが、その弾性率は互いに異なることが好ましい。
[ホットメルト接着剤]
ホットメルト接着剤とは、室温では固体状でタック性がないが、加熱により液状となり流動性を示し、冷却すると元の固体に戻る性質をもった接着剤である。熱可塑性樹脂成分が加熱により融解し、流動性が付与され、冷却されることにより硬化・接着する。
上記気体透過シートで用いられるホットメルト接着剤は、特に制限されない。具体的には、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリルエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリルエステル樹脂、およびそれらの共重合体樹脂、エチレン・アクリル樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン、天然ゴム、合成ゴム等のベースポリマーを含む接着剤が挙げられる。これらホットメルト接着剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、該ホットメルト接着剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
該ホットメルト接着剤の溶融温度は、120〜160℃であることが好ましい。この範囲であれば、気体透過シートの製造の際、撥水性多孔質層に用いられるバインダが溶融することがほとんどない。また、燃料電池の実運転時の温度(例えば約80℃)において、ホットメルト接着剤の溶融がほとんど起こらないか全く起こらない。
気体透過シートにおける該ホットメルト接着剤の配置は、特に制限されないが、図2に示すように、撥水性多孔質層の外周部に配置されることが好ましい。このような配置により、撥水性多孔質層をより強固に接着することができる。その際、該ホットメルト接着剤は、外周部に連続的に配置されてもよいし、外周部に非連続的に配置されてもよい。しかしながら、配置の容易性の観点から、好ましくはホットメルト接着剤が撥水性多孔質層の外周部に連続的に配置される形態である。
[気体透過シートの製造方法]
上記気体透過シートの製造方法は、特に制限されないが、例えば、下記のような方法により製造することができる。なお、下記では、第1の撥水性多孔質層としてMPLとなる炭素材料およびバインダを含むシートを、第2の撥水性多孔質層としてガス拡散層基材となるカーボンペーパーを、それぞれ用いる場合の製造方法を示す。しかしながら、気体透過シートの製造方法は、これに限定されるものではない。
まず、第1の撥水性多孔質層として炭素材料、バインダ、および必要に応じて界面活性剤や増粘剤を含むインクを調製する。その後、調製したインクを脱泡処理し、耐熱性保持シート上に塗布し、例えば80℃で乾燥、330℃で焼成を行うことによって、MPLシート(第1の撥水性多孔質層)が得られる。
この耐熱性保持シートとしては、上記のような温度による焼成処理に耐えうる耐熱性と化学的安定性とを備えているものであれば、特に制限されない。具体的には、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン等からなる厚さ10〜100μm程度のフィルムが用いられる。これらの中でも、ポリイミドフィルムが好ましい。
次に、保持シートから剥がし得られたMPLシート(第1の撥水性多孔質層)の表面に、枠状のホットメルト接着剤を配置し、前記ホットメルト接着剤の上に第2の撥水性多孔質層を積層する。
その後、前記ホットメルト接着剤と略同一形状の加熱手段を用いて加熱加圧する。その際の加熱温度は、特に制限されないが、ホットメルト接着剤の溶融温度以上であり、撥水性多孔質層に用いられているバインダの溶融温度以下であることが好ましい。また、加圧圧力も特に制限されないが、0.1〜10MPaであることが好ましい。
図3は、ホットメルト接着剤33と略同一形状の加熱手段で加熱加圧する工程を示す模式図である。図3において、加熱手段は枠状の金型40を用いているが、他にも、枠状のヒーター等を用いることができる。この工程により、ホットメルト接着剤33は、撥水性多孔質層の孔に入り込むことができ、複数の撥水性多孔質層同士の接着力を高めることができる。
上記気体透過シートは、導電性およびガス透過性に優れており、燃料電池のガス拡散層に好適に用いられる。以下、ガス拡散層以外の燃料電池用膜電極接合体の構成部材および燃料電池の構成部材について説明する。
(高分子電解質膜)
高分子電解質膜は、燃料電池の運転時にアノード触媒層で生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層へと選択的に透過させる機能を有する。また、高分子電解質膜は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
高分子電解質膜としては、特に限定されず、燃料電池の技術分野において従来公知の高分子電解質からなる膜が適宜採用できる。例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン株式会社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている固体高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各触媒層と高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
高分子電解質膜の厚みとしては、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μmである。製膜時の強度やMEA作動時の耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、MEA作動時の出力特性の観点から300μm以下であることが好ましい。
また、高分子電解質膜として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
(触媒層)
触媒層は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層では水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層では酸素の還元反応が進行する。触媒層は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体および高分子電解質を含む。
カソード触媒層に用いられる触媒成分は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒成分もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、いずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒成分及びアノード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかしながら、カソード触媒層およびアノード触媒層用の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。したがって、触媒インクに含まれる触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
触媒粒子は導電性担体に担持されて電極触媒となる。ここで、導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであることが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。このような比表面積であれば、導電性担体への触媒成分および高分子電解質の分散性を確保して十分な発電性能が得られ、また、触媒成分および高分子電解質の十分な有効利用率をも確保できる。また、導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
また、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。このような担持量であれば、触媒成分が導電性担体上に良好に分散し、単位質量あたりの触媒活性を確保して発電性能を向上でき、また、経済的に有利である。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
触媒層30は、電極触媒の他に、高分子電解質を含む。ここで、高分子電解質としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する材料であればよい。この際使用できる高分子電解質は、ポリマー骨格の全部または一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。該電極触媒は市販品を用いてもよい。
(セパレータ)
セパレータは、単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガスおよび冷却剤を互いに遮断する隔壁としての機能も有する。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜用いられる。
(ガスケット)
ガスケットは、1対の触媒層およびガス拡散層を包囲するように燃料電池の周囲に配置され、触媒層に供給されたガスが外部にリークするのを防止する機能を有する。ガスケットを構成する材料としては、特に制限はないが、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴムなどのゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステルなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスケットの厚さにも特に制限はなく、好ましくは50μm〜2mmであり、より好ましくは100μm〜1mm程度とすればよい。
上記気体透過シートを有する膜電極接合体および燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、従来公知の知見が適宜参照され得る。また、燃料電池を運転する際に用いられる反応活物質は気体であることが好ましい。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上記気体透過シートを有する膜電極接合体を備えた燃料電池や燃料電池スタックは、例えば、車両に駆動用電源として搭載することができる。燃料電池スタックを燃料電池車のような車両に搭載するには、例えば、燃料電池車の車体中央部の座席下に搭載すればよい。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができる。場合によっては、燃料電池スタックを搭載する場所は座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームであってもよい。上述した燃料電池や燃料電池スタックは、出力特性および耐久性に優れるため、長期間にわたって信頼性の高い燃料電池搭載車両が提供される。
1 膜電極接合体、
10 電解質膜、
20 触媒層、
30 ガス拡散層、
31 第1の撥水性多孔質層(ミクロポーラス層)、
32 第2の撥水性多孔質層(ガス拡散層基材)、
33 ホットメルト接着剤、
40 金型。

Claims (7)

  1. 複数の撥水性多孔質層がホットメルト接着剤で接着された気体透過シート。
  2. 前記撥水性多孔質層の少なくとも1つが撥水性高分子を含む、請求項1に記載の気体透過シート。
  3. 前記撥水性高分子はフッ素化ポリマーまたはポリオレフィンである、請求項2に記載の気体透過シート。
  4. 前記撥水性多孔質層の少なくとも1つは金属多孔体である、請求項1〜3のいずれか1校に記載の気体透過シート。
  5. 前記ホットメルト接着剤の溶融温度は120〜160℃である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の気体透過シート。
  6. 前記ホットメルト接着剤が前記撥水性多孔質層の外周部に配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の気体透過シート。
  7. 枠状のホットメルト接着剤を第1の撥水性多孔質層に配置し、
    前記ホットメルト接着剤の上に第2の撥水性多孔質層を積層し、
    前記ホットメルト接着剤と略同一形状の加熱手段で加熱加圧する、
    ことを含む、気体透過シートの製造方法。
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