JP2015171351A - 植物栽培ユニット及び植物栽培施設 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物栽培において、野菜等の食材の生産性向上につながる環境を提供可能な植物栽培ユニット及び植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培施設Pは、空調装置1と照明装置20とが設置された閉鎖空間からなり、植物を保持する調湿プレート材60と、培地40と、調湿プレート材60と培地40との間に設けられる防水カバー50と、を収容する栽培トレイ30を備えている。そして、空調装置1から排出されるドレン水を灌水チューブ70を介して調湿プレート材60に灌水することによって、調湿プレート材60の吸放湿性を利用して植物周辺を加湿すると共に、調湿プレート材60の水分蒸発の気化熱(吸熱)を利用して植物周辺の温度上昇を抑制している。
【選択図】図3

Description

本発明は、植物栽培ユニット及び植物栽培施設に係り、特に、植物の生育環境を配慮して植物を栽培するために用いられる植物栽培ユニット及び植物栽培施設に関する。
従来、安全な食材の周年供給を目的として、内部環境をコントロールした閉鎖的又は半閉鎖的な空間内で植物を計画的に生産することが可能な植物工場が広く知られている。
この植物工場では、一般に溶液栽培を利用して人工光又は自然光を光源として植物を生育させており、空間内の温度、湿度、及び二酸化炭素濃度等を制御することで野菜や果物の生産性を向上させている。
例えば、特許文献1には閉鎖空間型で多段棚式の育苗装置が開示されており、この育苗装置では、人工光源と、空調装置と、自動灌水装置と、を主に備えており、外部環境の影響を受けない植物育成環境の下で、植物を生産可能な構成となっている。
また、空調装置によって冷却時に発生したドレン水を回収し、このドレン水を培養液用の原水、又は培養液の希釈水として利用することで省資源化を達成している。
特開2002−291349号公報
ところで、植物工場の野菜栽培における最適な空気調和として、主に二酸化炭素濃度、温度、湿度及び気流(風速)の4つの条件を最適化することが野菜の生産性向上につながると言われている。
具体的に説明すると、空間内の二酸化炭素濃度を適度に上昇させることで、植物の光合成速度を促進させることができ、また、一定の温度、湿度管理を行うことで植物の二酸化炭素吸収効率の低下を防ぐことができ、さらに、適度な気流を作ってあげることで二酸化炭素を効率よく植物に送り込むことができるようになる。
一般的に、特許文献1のような植物工場の内部環境では比較的高温になり易く、そうすると植物の気孔からの水分蒸散が盛んになって、植物が乾燥状態となり水ストレスを引き起こしてしまう。その結果、植物内の水分を逃さないように気孔が閉じてしまい、二酸化炭素の吸収効率の低下、光合成量の低下へとつながり、野菜の生産性が阻害されてしまう。そのため、植物工場では、常に空調装置を利用して室内の温度を一定に保っている。
しかしながら、空調装置の稼働と共に除湿されてしまうことから、一方で湿度が低下してしまい、湿度の低下に伴って植物の光合成が阻害される問題が発生し、生産量低下につながっていた。なお、一定の湿度を保つための対策として加湿器が導入されるケースもあったが、空調装置の除湿と、加湿器の加湿とを同時に行うことから非効率となってコスト高となっていた。
そのため、植物工場の栽培を含む植物栽培において、野菜の生産性向上につながる環境を提供することが可能な植物栽培施設が望まれていた。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、植物栽培において、野菜等の食材の生産性向上につながる環境を提供可能な植物栽培ユニット及び植物栽培装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、植物工場のような所定空間の内部環境において空気調和の最適化を図るべく、特に温度上昇及び湿度低下を防ぐことが可能な植物栽培ユニット及び植物栽培装置を提供することにある。
前記課題は、本発明の植物栽培ユニットによれば、植物を栽培するために用いられる栽培トレイと、該栽培トレイを載置可能な栽培棚と、を備えた植物栽培ユニットであって、前記栽培トレイ内には、前記植物を生育させるための培地と、該培地を上方から覆うカバー部材と、該カバー部材よりも上方に設けられ、前記培地に植えられた状態の前記植物の周辺に配置されている調湿材と、が収容されていること、により解決される。
上記のように、植物栽培ユニットでは、培地に植えられた状態の植物の周辺に調湿材が配置されているため、例えば植物近傍の湿度が比較的低下してしまった場合でも、調湿材の吸放湿性を利用して植物近傍を加湿することができる。
また、例えば植物近傍の温度が比較的高くなってしまった場合でも、調湿材からの水分蒸発の気化熱(吸熱)を利用して植物近傍の温度上昇を抑制することができる。
また、植物栽培ユニットでは、培地を上方から覆うカバー部材を備えているため、調湿材からの蒸発水分が植物側ではなく培地側に向かってしまうことを抑制できるほか、例えば培地が培養液からなる場合には、培養液が調湿材側に浸透して液量が少なくなってしまうことも抑制できる。
その結果、植物栽培において、野菜等の食材の生産性向上につながる環境を提供可能な植物栽培ユニットを提供することができる。
このとき、前記栽培トレイ内に収容された前記調湿材に灌水するための灌水チューブと、を備え、該灌水チューブは、前記栽培トレイの上下方向と交差する向きに沿って延びていると良い。
上記のように、灌水チューブが栽培トレイに収容された調湿材に外部から灌水可能な構成となるため、調湿材が水分を含んだ状態で植物の周辺に配置されることとなり、調湿材の吸放湿性を利用して植物近傍を一層加湿できる。
また、灌水チューブは、栽培トレイの上下方向と交差する向きに沿って延びているため、上下方向に沿って延びる場合と比較して、通常用いられる栽培トレイ内の調湿材に効率よく灌水することができる。
このとき、前記植物よりも上方に設けられ、前記植物に光を照射する照明装置を備え、該照明装置は、前記栽培トレイの幅方向において前記植物栽培ユニットの中央部に配置され、前記灌水チューブは、前記幅方向において前記植物栽培ユニットの中央部よりも端部に近い位置に配置されていると良い。
上記のように、照明装置が植物栽培ユニットの中央部に配置される構成となるから、栽培トレイ内に設けられた植物に比較的効率よく光を照射させることができる。
また、灌水チューブが植物栽培ユニットの端部に近い位置に配置されることから、植物と干渉することがなく配置の自由度がある。
また、照明装置を備えているため、植物の光合成速度の向上のほか、照明装置の顕熱によって調湿材からの水分放出が盛んになって、植物が放出された水分を吸収することができる。
このとき、該照明装置は、蛍光灯からなると良い。
一般的に、蛍光灯は、植物栽培のような長時間使用する場合にコストを抑えることができるため利用頻度が高いものの、例えばLED照明装置等と比較して照明点灯の際又は照明状態の際の放熱量が大きくなって、植物周辺の温度が高くなり湿度が低くなってしまう。
そのため、蛍光灯を使用する場合には、調湿材の吸放湿性を利用した加湿や、調湿材からの水分蒸発の気化熱(吸熱)を利用した温度上昇の抑制の効果が一層高まる。
このとき、空調装置が設けられた空間内で用いられる前記植物栽培ユニットにおいて、前記灌水チューブは、前記空調装置から排出されるドレン水の流路を形成する配管と接続され、該配管から流入する前記ドレン水を前記調湿材に灌水していると良い。
上記のように、空調装置から排出されるドレン水を利用して調湿材が水分を含んだ状態で保持されるため、例えばエアコンのような空調装置で除湿された水分を無駄なく利用することができ、水収支がとれた植物栽培ユニットを提供できる。
また、エアコンの稼働に対応した形で湿度調整が簡単に可能となるため、湿度調整のための複雑な湿度センサーや、それに伴う複雑な制御機能を備えている必要がなくなる。
このとき、前記空調装置が前記植物よりも上方に設けられた空間内で用いられる前記植物栽培ユニットにおいて、前記栽培棚は、前記栽培トレイを上下方向に間隔を空けて複数載置可能であって、前記栽培棚上に載置された第1栽培トレイと、該第1栽培トレイよりも下段側に載置された第2栽培トレイとにそれぞれ収容される第1灌水チューブと、第2灌水チューブとが中間配管を介して接続され、前記第1灌水チューブは、外表面に設けられた灌水孔を有し、前記配管から流入する前記ドレン水を前記灌水孔を介して第1調湿材に灌水すると共に、残りの前記ドレン水を前記中間配管に流出させ、前記第2灌水チューブは、前記中間配管から流入する前記残りのドレン水を灌水孔を介して第2調湿材に灌水していると良い。
上記構成により、比較的上方に設けられた空調装置から排出されるドレン水が、栽培棚上に複数載置された第1栽培トレイ、第2栽培トレイへと順に下方側に流れてそれぞれの第1調湿材、第2調湿材へと灌水されていくため、ドレン水を無駄なく利用できる。
特に、空調装置側に近くて、水分蒸発が盛んになる第1調湿材から順に灌水されるため、灌水効率が非常に良くなる。
このとき、前記調湿材は、前記植物が前記培地に植えられた状態のときに、前記植物を保持するための保持孔を有する調湿プレート材からなり、前記灌水チューブは、前記栽培トレイに収容された前記調湿プレート材を貫通するように取り付けられていると良い。
上記のように、植物ユニットにおいて通常利用されている植物保持プレートを調湿材から形成することで、部品点数を抑えた構成とすることができる。
また、灌水チューブは、調湿プレート材を貫通するように取り付けられているため、調湿プレート材に灌水するための作業効率が向上する。
このとき、前記カバー部材は、前記植物が前記培地に植えられた状態のときに、前記植物を挿通させるための挿通孔を有する防水カバーシートからなり、該防水カバーシートは、前記調湿プレート材の前記培地側の外表面に取り付けられていると良い。
上記構成により、この植物栽培ユニットでは、調湿材からの蒸発水分が植物側ではなく培地側に向かってしまうことを防止できるほか、例えば培地が培養液からなる場合には、培養液が調湿材側に浸透して液量が少なくなってしまうことを防止できる。
また、上記植物栽培ユニットを空間内部に備えた植物栽培施設も実現可能である。
本発明の植物栽培ユニット及び植物栽培装置によれば、植物栽培において、野菜等の食材の生産性向上につながる環境を提供することができる。
また、植物工場のような所定空間の内部環境において空気調和の最適化を図るべく、特に温度上昇及び湿度低下を防ぐことが可能となる。
本実施形態に係る植物栽培施設を説明する概略斜視図である。 複数の栽培トレイが載置された栽培棚の概略斜視図であって、植物が植えられた状態を示す説明図である。 栽培トレイが載置された栽培棚のA−A断面図であって、植物が植えられた状態を示す説明図である。 栽培トレイの概略分解斜視図である。 空調装置から排出されるドレン水の流水経路を示す説明図である。 第2実施形態に係る栽培トレイの概略分解斜視図である。
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
本実施形態は、空調装置と照明装置とが設置された閉鎖空間からなる植物栽培施設であって、植物を保持する調湿プレート材と、培地と、調湿プレート材と培地との間に設けられる防水カバーと、を収容する栽培トレイを備えており、空調装置から排出されるドレン水を灌水チューブを介して調湿プレート材に灌水することによって、調湿プレート材の吸放湿性を利用して植物周辺を加湿すると共に、調湿プレート材の水分蒸発の気化熱(吸熱)を利用して植物周辺の温度上昇を抑制していることを特徴とする植物栽培施設の発明に関するものである。
なお、植物栽培施設において利用者が当該施設の側壁面に設けられたドアから入出する方向を前後方向とし、また当該施設において前後方向と直交する幅方向を左右方向とする。
本実施形態の植物栽培施設Pは、図1に示すように、内部環境をコントロールした閉鎖的な空間内で植物を生産するための建物ユニットからなり、施設内部において所定内壁面の上方部分に設置される空調装置1と、施設内部において空調装置1を左右幅方向に挟み込む位置に設置される一対の栽培棚10と、図2に示すように、栽培棚10上において上下方向に間隔を空けて複数設置される照明装置20と、栽培棚10上において上下方向に間隔を空けて複数載置され、照明装置20と対向する位置に配置される栽培トレイ30と、を主に備えている。
なお、本実施形態において、特許請求の範囲の植物栽培ユニットとは、図2に示すように、栽培棚10と、照明装置20と、栽培トレイ30と、栽培トレイ30内に収容される構成要素と、を備えたものに相当する。
植物栽培施設Pは、略直方体状からなる比較的小型な建物ユニットからなるが、施設の形態をショーケース型やパネル型のように一層小型化しても良いし、大規模な施設で構成されていても良い。また、閉鎖的な空間内で完全人工光によって植物を栽培するほか、半閉鎖的な空間内で太陽光と人工光とを併用して植物を栽培する構成としても良い。
なお、植物栽培施設Pの天壁上面には、図1に示すように、太陽光発電装置が設置されている。太陽光発電装置は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する機器であって、不図示のパワーコンディショナーと接続されており、パワーコンディショナーによって太陽光発電装置で発生した直流電力が交流電力に変換されて、例えば空調装置1、照明装置20等の電力として利用されている。
空調装置1は、図1に示すように、植物栽培施設P内の空調設備として、温度や湿度を調整するための壁掛け型のエア・コンディショナーであって、主に冷房機能によって施設内の温度を一定に保持するために利用される。一方で、冷房機能によって空調装置1内部で結露が生じてドレン水が排出される結果、施設内の湿度は相対的に下がることになる。
空調装置1から排出されるドレン水は、当該ドレン水の流路を形成する配管を介して栽培トレイ30に向かって流出し、最終的に廃液タンクに排出される。詳細は後述する。
栽培棚10は、図1に示すように、栽培トレイ30を複数載置するための棚であって、植物栽培施設Pの前後方向に長尺に延びて設置され、左右幅方向に所定の間隔を空けて2台配置されている。
栽培棚10は、空調装置1よりも下方位置に設置され、空調装置1を左右幅方向において挟み込む位置に配置されている。
栽培棚10は、図2に示すように、栽培トレイ30を上下方向に所定の間隔を空けて積み重ね可能なトレイ受け部11を備えており、本実施例では、各栽培棚10上にそれぞれ上下に3台、前後方向に2台の計6台の栽培トレイ30が載置されている。
なお、栽培棚10上には、例えば、植物の育成期間に応じて栽培トレイ30が上下方向に分けられて載置されている。発芽期間にある植物が植えられた栽培トレイ30は、栽培棚10の下段側に載置し、定植期間にある植物が植えられた栽培トレイ30は、上段側に載置する等して管理されている。
照明装置20は、図2に示すように、栽培トレイ30内の植物に光を照射するための蛍光灯であって、栽培棚10のトレイ受け部11及び天壁部12の底面側に設置され、栽培棚10の長尺方向に沿って延びている。そして、上下方向において植物と対向する位置に配置されている。
詳しく言うと、照明装置20は、図3に示すように、栽培トレイ30の幅方向において端部よりも中央部に近い位置に配置されている。
なお、照明装置20は、蛍光灯のほか、LED照明装置等の公知な照明器具を採用することが可能である。
栽培トレイ30は、図2、図3に示すように、植物を栽培するために用いる箱型形状の樹脂製容器であって、栽培トレイ30内部には、培地40と、培地40を上方から略全面にわたって覆う防水カバーシート50と、防水カバーシート50よりも上方に設けられ、培地40に植えられた状態の植物を保持する調湿プレート材60と、調湿プレート材60に灌水するための灌水チューブ70と、が収容されている。
そして、栽培トレイ30の長尺方向の両側壁面には、図4に示すように、灌水チューブ70を貫通させて取り付け可能な略円形状のチューブ取り付け穴31が形成されている。
培地40は、図3、図4に示すように、植物を育成させるための液体培地であって、培養液が一定量確保された状態で設けられている。
詳しく言うと、植物栽培施設Pには、図2に示すように、溶液タンクと、溶液循環用ポンプと、溶液循環パイプとが栽培棚10に備え付けられており、不図示の制御コントローラによって、所定のタイミングで培養液が溶液タンクから栽培トレイ30内に流れるように制御されている。不要となった培養液は、排水パイプを介して廃液タンクに排出される。
なお、培地40は、液体培地のほか、固体培地や、液体と固体とを組み合わせた二相培地等で構成されていても良い。
なお、培地40に利用される培養液の循環方法は、自動制御のほか、手動でコントロールしても良い。
防水カバーシート50は、カバー部材に相当し、図3、図4に示すように、培地40と調湿プレート材60との間で水の浸透を防ぐための略矩形状のシートであって、例えば、塩化ビニル樹脂系の材料から形成されるシート状又はフィルム状のカバーである。
防水カバーシート50は、調湿プレート材60の底面側に略全面にわたって対向するように貼り付けられており、防水カバーシート50の外表面には、上面側から底面側に向かって貫通したチューブ挿通孔51が複数形成されている。
チューブ挿通孔51は、植物を調湿プレート材60側から培地40側に挿通させるための略円形状の孔であって、防水カバーシート50の長尺方向及び短尺方向に所定の間隔を空けて複数設けられている。
なお、防水カバーシート50は、防水性を有する材料から形成されていることが望ましいが、培地40と調湿プレート材60の間に介在するように取り付けられれば、防水性を有さない樹脂材料や、紙材料、革材料、木製材料、金属材料等の種々の材料であっても良い。また、カバー部材の厚みもシート状の比較的薄いものから、板状の比較的厚いものであっても良い。
調湿プレート材60は、調湿材に相当し、図3、図4に示すように、植物を培地40に植えられた状態で保持するための略平板形状のプレートであって、吸放湿性を有する調湿材から形成されている。
調湿プレート材60は、栽培トレイ30の内部空間よりもやや幅狭に形成されており、栽培トレイ30に収容可能な大きさで形成されている。
なお、調湿プレート材60は、調湿材としてセラミック、ゼオライト、ケイカル板、吸放湿性プラスチック、及び珪藻土のうち、いずれか1つの調湿材から形成されている。そのため、比較的安価で加工し易く、大量生産に好適な調湿材となる。
調湿プレート材60の外表面には、上面側から底面側に向かって貫通した植物保持孔61が複数形成されている。
植物保持孔61は、植物を挿通させて保持するための略円形状の孔であって、調湿プレート材60の長尺方向及び短尺方向に所定の間隔を空けて複数設けられており、防水カバーシート50のチューブ挿通孔51と対向する位置に配置されている。
複数の植物保持孔61は、調湿プレート材60の幅方向において中央部よりも一方の端部側に近い位置に形成されている。そして、他方の端部側に近い位置には、調湿プレート材60の長尺方向に沿って貫通し、灌水チューブ70を取り付けるためのチューブ取り付け穴62が形成されている。
チューブ取り付け穴62は、灌水チューブ70を挿通させて取り付け可能な略円形状の穴であって、調湿プレート材60の長尺方向に沿って略直線状に延びている。
チューブ取り付け穴62と、栽培トレイ30のチューブ取り付け穴31とは、互いに対向する位置に形成され、互いに連通するように配置されている。
灌水チューブ70は、外表面に複数設けられた灌水孔を利用して調湿プレート材60に灌水するためのチューブであって、図3、図4に示すように、栽培トレイ30及び調湿プレート材60をそれぞれ貫通するように延びている。
灌水チューブ70は、図5に示すように、空調装置1から排出されるドレン水の流路を形成する配管2と一端端側が接続され、配管2から流入するドレン水を調湿プレート材60に灌水する構成となっている。
また、灌水チューブ70は、一端側から流入するドレン水を調湿プレート材60に灌水すると共に、灌水孔から流出しなかった残りのドレン水を他端側に接続された中間配管3に流出させる構成となっている。詳細は後述する。
上記構成により、植物栽培施設Pでは、空調装置1から排出されるドレン水を利用して調湿プレート材60が水分を含んだ状態で保持されるため、空調装置1の冷房機能によって植物近傍の湿度が比較的低下してしまった場合でも、調湿プレート材60の吸放湿性を利用して植物近傍を加湿することができる。
しかも、空調装置1の冷房機能によって除湿された水分を無駄なく利用できるため、水収支がとれたシステムとなる。
また、上記構成により、照明装置20の顕熱によって植物近傍の温度が比較的高くなってしまった場合でも、調湿プレート材60からの水分蒸発の気化熱(吸熱)を利用して植物近傍の温度上昇を抑制することができる。
また、上記構成により、植物栽培施設Pでは、培地40を上方から覆う防水カバーシート50が備わっているため、調湿プレート材60からの蒸発水分が植物側ではなく培地40側に向かってしまうことを抑制できる。そして、培地40の培養液が調湿プレート材60側に浸透して培養液量が少なくなってしまうことも抑制できる。
<ドレン水を利用した灌水方法>
次に、空調装置1から排出されたドレン水を利用して、栽培棚10の上段に位置する栽培トレイ30aから順に下段側の栽培トレイ30b、30cへ灌水する方法について図5に基づいて説明する。
まず、ドレン水の流路を形成する配管2、及び中間配管3について説明する。
配管2は、図5に示すように、一端側が空調装置1に接続され、他端側が上段にある栽培トレイ30a内の灌水チューブ70aに接続されており、空調装置1から排出されるドレン水を灌水チューブ70a側に流出させるための配管となる。
中間配管3は、一端側が上段の栽培トレイ30a内の灌水チューブ70aに接続され、他端側が下段側にある栽培トレイ30b内の灌水チューブ70bに接続されており、灌水チューブ70aから流入する残りのドレン水を灌水チューブ70b側に流出させるための配管となる。
また、中間配管3には、一端側から他端側に向かう途中で分岐して延びる配管も存在し、その場合、他端側の一方が栽培トレイ30aと隣接して同段に載置される栽培トレイ30aと接続され、他端側の他方が同様に下段側の栽培トレイ30bに接続されている。
上記構成において、空調装置1から排出されたドレン水は、図5に示すように、最初に、配管2の分岐点に設けられたフィルター4を介して各栽培棚10の上段に位置する灌水チューブ70aに向けて流出する。
そして、灌水チューブ70aに流入したドレン水は、灌水チューブ70aの灌水孔を介して調湿プレート材60aに所定の水量が流出すると共に、残りの水量が中間配管3に向けて流出する。
なお、調湿プレート材60aは、ドレン水を吸収することで水分を含んだ状態で保持される。そのため、空調装置1の除湿によって植物周辺の湿度が低下したときに、水分を含んだ状態の調湿プレート材60aから水分を放出することで植物近傍を加湿できる。また、照明装置20の顕熱によって植物周辺の温度が上昇したときに、調湿プレート材60aからの水分蒸発の気化熱(吸熱)を利用して植物近傍の温度上昇を抑制できる。
そして、中間配管3に流入したドレン水は、分岐点を介して同段に載置される栽培トレイ30a側と、下段側にある栽培トレイ30b側とに分かれて、それぞれ所定の水量が流出する。
上記のようにして、図5に示すように、ドレン水が上段の栽培トレイ30aから順に下段側の栽培トレイ30b、30cへと流出し、最終的に残ったドレン水が廃液タンクに排出されることになる。
上記構成により、上方に設けられた空調装置1から排出されるドレン水が、栽培棚10に複数載置された栽培トレイ30a、30b、30cへと順に下方側に流れて、それぞれの調湿プレート材60a、60b、60cへと灌水されていくため、ドレン水を無駄なく利用できる。
特に、空調装置1側に近くて、水分蒸発が盛んになる調湿プレート材60aから順に灌水されるため、灌水効率が非常に良くなる。
<栽培トレイの第2実施形態>
次に、栽培トレイの第2実施例について、図6に基づいて説明する。
なお、以下の説明において、上述した栽培トレイ30と重複する内容は説明を省略する。
第2実施例に係る栽培トレイ130内部には、培地140と、防水カバーシート150と、植物を保持する調湿プレート材160と、一対の灌水チューブ170と、が収容されている。
栽培トレイ130の長尺方向の両側壁面には、図6に示すように、一対の灌水チューブ170を貫通させて取り付け可能な略円形状のチューブ取り付け穴131がそれぞれ形成されている。
一対の灌水チューブ170は、栽培トレイ130の幅方向において中央部よりも端部側に近い位置で、それぞれ互いに異なる端部に配置されている。
また、灌水チューブ170は、調湿プレート材160上面に載置されており、栽培トレイ130のチューブ取り付け穴131に取り付けられて固定されている。
上記のように、調湿プレート材160が一対の灌水チューブ170に挟まれるような配置となっているため、ドレン水が各灌水チューブ170から流出するときに、調湿プレート材160の幅方向の両端部から中央部に向かってドレン水を効率良く浸透させることが可能となる。そして、調湿プレート材160が全体にわたって水分を含んだ状態となるため、効率的に加湿効果、温度抑制効果を発揮できるようになる。
なお、灌水チューブ170は、図6に示すように、調湿プレート材160上面に載置されているが、これに限定されることなく、調湿プレート材160よりも幅方向の外側に対向するように配置されて栽培トレイ130内に収容されていても良いし、調湿プレート材160よりもやや上方に配置されていても良い。
<その他の実施形態>
上記実施形態の植物栽培施設Pでは、図5に示すように、ドレン水を利用して調湿プレート材60が水分を含んだ状態を保持しているが、ドレン水の利用に限定されることなく、外部から供給される水を利用することや、外部の水とドレン水とを併用する構成としても良い。
また、上記実施形態では、図4に示すように、植物を保持するプレートを調湿材から形成することで、調湿性を有する調湿プレート材60が形成されているが、これに限定されることなく、植物工場において通常用いられる植物保持プレートと、別体の調湿材とから構成されていても良い。
また、上記実施形態では、図4に示すように、灌水チューブ70が、栽培トレイ30の長尺方向、すなわち栽培トレイ30の上下方向と直交する向きに沿って延びているが、これに限定されることなく適宜変更可能である。
例えば、灌水チューブ70が、栽培トレイ30の上下方向と交差する向きに沿って延びていれば良いし、栽培トレイ30の上下方向に沿って延びていても良い。
また、上記実施形態では、図4、図6に示すように、灌水チューブ70、170が、栽培トレイ30、130のチューブ取り付け穴31、131に取り付けられているが、これに限定されることなく、栽培トレイ30、130よりも上方を通過するように延びていても良い。
また、上記実施形態では、図5に示すように、空調装置1から自動で排出されるドレン水の水量に対応して各調湿プレート材60に灌水しているが、別途で流量計(流量センサ)と、配管の開閉を行うバルブとを所定位置に備えた構成としても良い。
このようにすれば、所定位置のドレン水の流量を流量計によって計測しながらバルブの開閉操作を実行することができ、またドレン水の供給が不要な箇所には、予めバルブを閉めておくこともできる。
さらに、上記流量計及び上記バルブと接続される制御コントローラを備えた構成としても良い。制御コントローラが、流量計から測定結果に基づくデータ信号を受信して、当該データ信号に基づいてバルブの開閉動作を実行するデータ信号をバルブに送信することで、バルブの開閉動作を制御することが可能となる。このようにすれば、ドレン水の供給が一層効率的に管理されることになる。
本実施形態では、主として本発明に係る植物栽培ユニット及び植物栽培施設に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、栽培トレイ30内に収容される構成要素、及び各構成要素の配置について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
P 植物栽培施設
1 空調装置
2 配管
3 中間配管
4 フィルター
10 栽培棚
11 トレイ受け部
12 天壁
20 照明装置
30、130 栽培トレイ
30a、30b、30c 栽培トレイ
31、131 チューブ取り付け穴
40、140 培地
50、150 防水カバーシート
51 植物挿通孔
60、160 調湿プレート材
60a、60b、60c 調湿プレート材
61 植物保持孔
62 チューブ取り付け穴
70、170 灌水チューブ
70a、70b、70c 灌水チューブ

Claims (9)

  1. 植物を栽培するために用いられる栽培トレイと、該栽培トレイを載置可能な栽培棚と、を備えた植物栽培ユニットであって、
    前記栽培トレイ内には、
    前記植物を生育させるための培地と、
    該培地を上方から覆うカバー部材と、
    該カバー部材よりも上方に設けられ、前記培地に植えられた状態の前記植物の周辺に配置されている調湿材と、が収容されていることを特徴とする植物栽培ユニット。
  2. 前記栽培トレイ内に収容された前記調湿材に灌水するための灌水チューブを備え、
    該灌水チューブは、前記栽培トレイの上下方向と交差する向きに沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培ユニット。
  3. 前記植物よりも上方に設けられ、前記植物に光を照射する照明装置を備え、
    該照明装置は、前記栽培トレイの幅方向において前記植物栽培ユニットの中央部に配置され、
    前記灌水チューブは、前記幅方向において前記植物栽培ユニットの中央部よりも端部に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培ユニット。
  4. 該照明装置は、蛍光灯からなることを特徴とする請求項3に記載の植物栽培ユニット。
  5. 空調装置が設けられた空間内で用いられる前記植物栽培ユニットにおいて、
    前記灌水チューブは、前記空調装置から排出されるドレン水の流路を形成する配管と接続され、該配管から流入する前記ドレン水を前記調湿材に灌水していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の植物栽培ユニット。
  6. 前記空調装置が前記植物よりも上方に設けられた空間内で用いられる前記植物栽培ユニットにおいて、
    前記栽培棚は、前記栽培トレイを上下方向に間隔を空けて複数載置可能であって、
    前記栽培棚上に載置された第1栽培トレイと、該第1栽培トレイよりも下段側に載置された第2栽培トレイとにそれぞれ収容される第1灌水チューブと、第2灌水チューブとが中間配管を介して接続され、
    前記第1灌水チューブは、外表面に設けられた灌水孔を有し、前記配管から流入する前記ドレン水を前記灌水孔を介して第1調湿材に灌水すると共に、残りの前記ドレン水を前記中間配管に流出させ、
    前記第2灌水チューブは、前記中間配管から流入する前記残りのドレン水を灌水孔を介して第2調湿材に灌水していることを特徴とする請求項5に記載の植物栽培ユニット。
  7. 前記調湿材は、前記植物が前記培地に植えられた状態のときに、前記植物を保持するための保持孔を有する調湿プレート材からなり、
    前記灌水チューブは、前記栽培トレイに収容された前記調湿プレート材を貫通するように取り付けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の植物栽培ユニット。
  8. 前記カバー部材は、前記植物が前記培地に植えられた状態のときに、前記植物を挿通させるための挿通孔を有する防水カバーシートからなり、
    該防水カバーシートは、前記調湿プレート材の前記培地側の外表面に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の植物栽培ユニット。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の植物栽培ユニットを空間内部に備えたことを特徴とする植物栽培施設。
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