以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係るフィルタ装置100について説明する。図1に、フィルタ装置100の上面図を示す。また、図2に、フィルタ装置100の側面図を示す。本実施の形態では、X軸は、水平方向に延びる軸であり、Y軸は、水平方向に延び、X軸と直交する軸であり、Z軸は、鉛直方向に延びる軸であり、X軸とY軸とのそれぞれに直交する軸である。X軸は、電源線の入力端子から電源線の出力端子に向かう方向に延びる軸である。
フィルタ装置100は、電源線路に挿入して用いられる電気フィルタ(フィルタ回路)を備える。なお、フィルタ装置100は、信号線路に挿入されて用いられてもよい。フィルタ装置100は、例えば、高周波の不要成分を除去するローパスフィルタ、もしくは、特定の周波数以外の周波数成分を除去するバンドパスフィルタを備える。
図1及び図2に示すように、フィルタ装置100は、筐体10、貫通コンデンサ21、22、23、24、フィルムコンデンサ31、32、33、34、インダクタ41、42、電源線50、配線51、52、基準線53、配線54、55、56、57、筐体61、62、63、64を備える。なお、電源線50が経由する経路(貫通コンデンサ21→インダクタ41→貫通コンデンサ22)が電源系統(Pライン)であり、基準線53が経由する経路(貫通コンデンサ23→インダクタ42→貫通コンデンサ24)が基準系統(Nライン)である。電源系統と基準系統とは、基本的に同様の構成である。以下、適宜、電源系統を中心に説明する。
筐体10は、フィルタ回路を収容し、フィルタ回路を外部から遮蔽する金属製のケースである。筐体10は、フィルタ回路から放射される電磁波が外部に放射されることを抑制するとともに、外部からフィルタ回路に電磁波が放射されることを抑制する。筐体10が収容するフィルタ回路は、フィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32とから構成される電源系統のフィルタ回路と、フィルムコンデンサ33とインダクタ42とフィルムコンデンサ34とから構成される基準系統のフィルタ回路との2つである。
筐体10は、箱状であってもよいし、升状であってもよいし、枠状であってもよい。本実施の形態では、筐体10は、箱状であるものとする。ただし、図1においては、理解を容易するため、筐体10の上面(Z軸に直交する面のうち、Z軸の座標が大きい面)を取り外したとき(つまり、筐体10が升状のとき)の上面図を示している。また、図2において、理解を容易するため、筐体10の側面(Y軸に直交する面のうち、Y軸の座標が小さい面)を取り外したとき(つまり、筐体10が升状のとき)の側面図を示している。筐体10は、接地される(グランドに接続される)。
貫通コンデンサ21は、筐体10と信号線とを絶縁させつつ、筐体10に信号線を通すためのコンデンサである。貫通コンデンサ21は、第1端子、第2端子、接地端子を有する。第1端子と第2端子の間が信号線で結ばれ、信号線と接地端子の間に決められた静電容量値(容量と略す)を持つ。筐体10に設けられた貫通孔に貫通コンデンサ21を装着することで、貫通コンデンサ21は筐体10を貫通する。第1端子または第2端子のどちらか一方が筐体10の内部に入り、他方が筐体10の外部に存在する。接地端子は筐体10に接続される。第1端子または第2端子のどちらか筐体10の内部に入った方の端子である貫通コンデンサ21の一端が、フィルムコンデンサ31の一端に接続される。筐体10の外部に出る他方の端子(他端)が、フィルタ装置100の入力端子または出力端子に接続される。
貫通コンデンサ21は、高周波におけるインピーダンスが低く、高周波減衰特性に優れ、高周波成分の除去に優れたコンデンサである。貫通コンデンサ21は、誘電体セラミックや多層電極などから構成される。貫通コンデンサ21の容量は、それほど大きくなくてもよい。貫通コンデンサ21は、貫通孔を備え、筐体10の入力側の側面(X軸に直交する面のうち、X軸の座標が小さい面)にネジなどで取り付けられる。
貫通コンデンサ22、23、24は、いずれも、貫通コンデンサ21と同様の構成である。貫通コンデンサ22は、筐体10の出力側の側面(X軸に直交する面のうち、X軸の座標が大きい面)の貫通コンデンサ21と対向する位置に、ネジなどで取り付けられる。貫通コンデンサ23は、筐体10の入力側の側面にネジなどで取り付けられる。貫通コンデンサ24は、筐体10の出力側の側面の貫通コンデンサ23と対向する位置に、ネジなどで取り付けられる。
なお、電源線50は、貫通コンデンサ21の貫通孔を通って筐体10の外部から筐体10の内部に入り込み、インダクタ41を経由して、貫通コンデンサ22の貫通孔を通って筐体10の外部に出る。基準線53は、貫通コンデンサ23の貫通孔を通って筐体10の外部から筐体10の内部に入り込み、インダクタ42を経由して、貫通コンデンサ24の貫通孔を通って筐体10の外部に出る。
フィルムコンデンサ31は、その一端がインダクタ41の一端に接続され、他端が接地された第1のコンデンサである。フィルムコンデンサ32は、その一端がインダクタ41の他端に接続され、他端が接地された第2のコンデンサである。なお、フィルムコンデンサ31を第2のコンデンサとし、フィルムコンデンサ32を第1のコンデンサとしてもよい。フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34についても、一方が第1のコンデンサになり、他方が第2のコンデンサになる。フィルムコンデンサ31は、比較的容量が大きく、高周波特性に優れたフィルム型のコンデンサである。図3を参照して、フィルムコンデンサ31の構造について説明する。
図3に示すように、フィルムコンデンサ31は、金属フィルム301と誘電体フィルム302と金属フィルム303と誘電体フィルム304とを順に重ねて、ある軸を中心にして巻いたものを、樹脂307でパッケージングしたものである。金属フィルム301、303のそれぞれは、電極であり、アルミ箔などにより構成される。誘電体フィルム302、304のそれぞれは、プラスチックなどにより構成される。金属フィルム301には、リード線305が取り付けられる。一方、金属フィルム303には、リード線306が取り付けられる。リード線305、306のそれぞれは、樹脂307から突出している。
本実施の形態では、フィルムコンデンサ31のフィルムが巻かれた軸が、X軸と平行であるものとする。ここで、フィルムコンデンサ31のフィルムの端部が集まる端面(X軸方向における両端の面)は、アンテナのような機能を有することになる。つまり、この端面から電磁波(高周波の電気振動成分)が放射され、また、この端面で電磁波を受信する。この理由は、この端面では、電気力線が広がるためである。つまり、この端面は、電磁波の放射強度が最も高い面であり、電磁波の入射強度(受信強度)も最も高い面である。
なお、電磁波の放射強度および入射強度はフィルムコンデンサ31の巻かれた軸の位置で軸に平行な方向が最大になる。アンテナ部として動作するフィルムコンデンサ31の端面は、端面が平面の場合には、電磁波の放射強度および入射強度が最大になる方向に垂直になる。端面が平面でない場合は、フィルムコンデンサ31のアンテナ部となる端面で電磁波の放射強度が最も高い点で電磁波を放射する方向は、放射強度が最も高い点での端面に接する平面に垂直である。アンテナ部となる端面において電磁波の放射強度が最も高い方向により、アンテナ部の端面の向きを判断する。
図2に示すように、フィルムコンデンサ31は、筐体61に収容される。また、フィルムコンデンサ31の一方のリード線(例えば、リード線305)は、配線51により、電源線50(貫通コンデンサ21とインダクタ41との間)に接続される。そして、フィルムコンデンサ31の他方のリード線(例えば、リード線306)は、配線56により、筐体10の入力側の側面に接続されて接地される。
フィルムコンデンサ32、33、34のそれぞれは、フィルムコンデンサ31と同様の構成である。フィルムコンデンサ32は、筐体62に収容される。フィルムコンデンサ33は、筐体63に収容される。フィルムコンデンサ34は、筐体64に収容される。
フィルムコンデンサ32の一方のリード線は、配線52により、電源線50(貫通コンデンサ22とインダクタ41との間)に接続される。フィルムコンデンサ32の他方のリード線は、配線57により、筐体10の出力側の側面に接続されて接地される。フィルムコンデンサ33の一方のリード線は、配線54により、基準線53(貫通コンデンサ23とインダクタ42との間)に接続される。フィルムコンデンサ33の他方のリード線は、図示しない配線により、筐体10の入力側の側面に接続されて接地される。フィルムコンデンサ34の一方のリード線は、配線55により、基準線53(貫通コンデンサ24とインダクタ42との間)に接続される。フィルムコンデンサ34の他方のリード線は、図示しない配線により、筐体10の出力側の側面に接続されて接地される。
インダクタ41は、流れる電流によって形成されるエネルギーを蓄えることができる受動素子である。インダクタ41は、鉄などの高い透磁率を有する芯部材に、銅線などが巻かれて形成されたコイルである。インダクタ41は、芯部材に、貫通コンデンサ21と貫通コンデンサ22との間の電源線50(又は、この電源線50に接続された銅線)が巻かれて形成されるものとする。インダクタ42は、インダクタ41と同様の受動素子である。インダクタ42は、貫通コンデンサ23と貫通コンデンサ24との間の基準線53(又は、この基準線53に接続された銅線)が巻かれて形成されたコイルであるものとする。
電源線50は、電源を供給するための配線である。電源線50を流れる電力は、フィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32とにより構成されるπ型フィルタ(C−L−C型フィルタ)により、フィルタリングされる。配線51は、フィルムコンデンサ31と電源線50とを接続する配線である。配線52は、フィルムコンデンサ32と電源線50とを接続する配線である。
基準線53は、基準電圧を供給するための配線である。基準線53を流れる電力は、フィルムコンデンサ33とインダクタ42とフィルムコンデンサ34とにより構成されるπ型フィルタにより、フィルタリングされる。配線54は、フィルムコンデンサ33と基準線53とを接続する配線である。配線55は、フィルムコンデンサ34と基準線53とを接続する配線である。配線56は、フィルムコンデンサ31と筐体10とを接続する配線である。配線57は、フィルムコンデンサ32と筐体10とを接続する配線である。
筐体61は、フィルムコンデンサ31を収容する金属製のケースである。筐体61は、箱状であってもよいし、升状であってもよいし、枠状であってもよい。本実施の形態では、筐体61は、上面(Z軸に直交する面のうち、Z軸の座標が大きい面)に開口部を有する升状であるものとする。筐体61は、筐体10と接触して、接地される。
筐体62、63、64のそれぞれは、筐体61と同様の構成である。筐体62、63、64のそれぞれは、筐体10と接触して、接地される。筐体62は、フィルムコンデンサ32を収容する。筐体63は、フィルムコンデンサ33を収容する。筐体64は、フィルムコンデンサ34を収容する。
次に、図4を参照して、フィルタ装置100の回路図について説明する。フィルタ装置100は、電源系統の回路と基準系統の回路とを備える。電源系統の回路と基準系統の回路とは、基本的には、同様の構成である。
電源系統の回路は、入力端子71と出力端子72との間に、フィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32とにより構成されるπ型フィルタが配置された構成である。ここで、入力端子71とπ型フィルタの間には、貫通コンデンサ21が配置される。従って、入力端子71に供給された電力は、π型フィルタに供給される前に、高周波成分が除去される。また、出力端子72とπ型フィルタの間には、貫通コンデンサ22が配置される。従って、π型フィルタから出力された電力は、出力端子72に供給される前に、高周波成分が除去される。
ここで、フィルムコンデンサ31は、接地された筐体61により収容され、遮蔽される。従って、フィルムコンデンサ31から放射された電磁波が筐体61の外部に漏れることが抑制される。また、フィルムコンデンサ32は、接地された筐体62により収容され、遮蔽される。従って、フィルムコンデンサ32から放射された電磁波が筐体62の外部に漏れることが抑制される。
基準系統の回路は、入力端子73と出力端子74との間に、フィルムコンデンサ33とインダクタ42とフィルムコンデンサ34とにより構成されるπ型フィルタが配置された構成である。ここで、入力端子73とπ型フィルタの間には、貫通コンデンサ23が配置される。従って、入力端子73に供給された電力は、π型フィルタに供給される前に、高周波成分が除去される。また、出力端子74とπ型フィルタの間には、貫通コンデンサ24が配置される。従って、π型フィルタから出力された電力は、出力端子74に供給される前に、高周波成分が除去される。
ここで、フィルムコンデンサ33は、接地された筐体63により収容され、遮蔽される。従って、フィルムコンデンサ33から放射された電磁波が筐体63の外部に漏れることが抑制される。また、フィルムコンデンサ34は、接地された筐体64により収容され、遮蔽される。従って、フィルムコンデンサ34から放射された電磁波が筐体64の外部に漏れることが抑制される。
図5は、π型フィルタの高周波領域における減衰特性を示すグラフである。なお、図5の説明において、π型フィルタは、フィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32とにより構成されるπ型フィルタであるものとする。
実線81は、フィルムコンデンサ31を筐体61で遮蔽し、フィルムコンデンサ32を筐体62で遮蔽したときの減衰特性である。実線81は、周波数(MHz)が高くなるのに従って、ゲイン(dB)がなだらかに減少する様子を示している。このように、π型フィルタに含まれるフィルムコンデンサを遮蔽することで、良好な減衰特性が得られる。
一方、破線82は、フィルムコンデンサ31を筐体61で遮蔽せず、フィルムコンデンサ32を筐体62で遮蔽しないときの減衰特性である。破線82は、特定の周波数(fa)において、適切に減衰されていない様子を示している。このように、π型フィルタに含まれるフィルムコンデンサ間の電磁結合(空間結合)が生じると、高周波を通しにくくする作用を有するインダクタを通らない経路が発生して、良好な減衰特性が得られない可能性がある。
ここで、破線82で示される部分は、入力側のコンデンサであるフィルムコンデンサ31により放射された電磁波(高周波の振動成分)が、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32との間の空間を伝搬し、出力側のコンデンサであるフィルムコンデンサ32により受信され、出力(電源出力)に重畳されたものであると考えられる。
このような電磁波は、主に、外部に出る電気力線が多く発生する部分(アンテナ部)から放射され、アンテナ部により受信される。例えば、フィルムコンデンサ31のアンテナ部は、X軸方向における両端面であり、フィルムコンデンサ32のアンテナ部も、X軸方向における両端面である。ここで、フィルムコンデンサ31からフィルムコンデンサ32に電磁波が伝搬することを想定する。この場合、注目すべきアンテナ部は、フィルムコンデンサ31のX軸方向における端面のうち、フィルムコンデンサ32寄りの端面(送信アンテナ部)と、フィルムコンデンサ32のX軸方向における端面のうち、フィルムコンデンサ31寄りの端面(受信アンテナ部)である。本実施の形態では、フィルムコンデンサ31のフィルムコンデンサ32寄りの端面から放射される電磁波を筐体61により遮蔽し、フィルムコンデンサ32のフィルムコンデンサ31寄りの端面により受信される電磁波を筐体62により遮蔽する。
なお、フィルムコンデンサ31のフィルムコンデンサ32寄りの端面が受信アンテナ部となり、フィルムコンデンサ32のフィルムコンデンサ31寄りの端面が送信アンテナ部となることも考えられる。この場合であっても、筐体61による遮蔽と筐体62による遮蔽とにより、良好な減衰特性が得られることになる。
また、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32のように、外部に出る電気力線が多く発生する端面が互いに完全に対向していなくても、電磁波が伝搬する可能性がある。例えば、フィルムコンデンサ31から放射された電磁波が、フィルムコンデンサ34により受信される可能性がある。このような場合であっても、筐体61による遮蔽と筐体64による遮蔽とにより、良好な減衰特性が得られることに変わりはない。
本実施の形態では、π型フィルタが備えるフィルムコンデンサ間の電磁波の伝搬が遮断される。このため、良好な減衰特性が期待できる。このように、筐体61と筐体62の少なくとも一方を備えることにより、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32との間の電磁結合によるフィルタ装置の減衰特性の劣化を低減できる。筐体61と筐体62の少なくとも一方は、実施の形態1における、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32とを電磁的に遮蔽する遮蔽手段であり、かつ、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32との間の電磁結合によるフィルタ装置100の減衰特性の劣化を低減する減衰特性劣化低減手段である。また、筐体61と筐体62の少なくとも一方は、第1のコンデンサまたは第2のコンデンサのうちの一方のコンデンサを収容する、筐体10に収容された第2の筐体である。筐体61と筐体62の他方は、第1のコンデンサまたは第2のコンデンサのうちの他方のコンデンサを収容する、筐体10に収容された第3の筐体である。
(実施の形態1の変形例)
実施の形態1では、入力側のフィルムコンデンサと出力側のフィルムコンデンサとのいずれもが筐体により遮蔽される例について説明した。本発明において、入力側のフィルムコンデンサと出力側のフィルムコンデンサとの一方のみが筐体により遮蔽されてもよい。以下、出力側のフィルムコンデンサのみが筐体により遮蔽される例について説明する。
図6は、実施の形態1の変形例に係るフィルタ装置110の上面図である。フィルタ装置110は、フィルムコンデンサ31を遮蔽する筐体61とフィルムコンデンサ33を遮蔽する筐体63とを備えないこと以外は、フィルタ装置100と同様の構成である。
かかる構成であっても、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32との間の空間を伝搬する電磁波は、フィルムコンデンサ32を収容する筐体62により遮断される。同様に、フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34との間の空間を伝搬する電磁波は、フィルムコンデンサ34を収容する筐体64により遮断される。
本変形例によれば、部品点数の増加を最小限に抑えつつ、良好な減衰特性を得ることが期待できる。なお、入力側のフィルムコンデンサのみが筐体により遮蔽された構成でもよい。かかる場合でも、部品点数の増加を最小限に抑えつつ、良好な減衰特性を得ることが期待できる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、フィルムコンデンサを遮蔽する専用の筐体を設ける例について説明した。本発明において、フィルムコンデンサを遮蔽する専用の筐体を設けずに、フィルムコンデンサ間の空間を伝搬する電磁波を遮断してもよい。以下、フィルムコンデンサを筐体10の外部に配置することにより、フィルムコンデンサ間の空間を伝搬する電磁波を遮断する例について説明する。
図7は、本発明の実施の形態2に係るフィルタ装置120の上面図である。また、図8は、フィルタ装置120の側面図である。フィルタ装置120は、フィルムコンデンサ31、32、33、34をそれぞれ遮蔽する筐体61、62、63、64を備えないことと、フィルムコンデンサ31、33のそれぞれが筐体10の外部に設けられることとを除き、フィルタ装置100と同様の構成である。
図7、図8に示すように、フィルムコンデンサ31は、筐体10の外部に配置される。また、フィルムコンデンサ31の一方のリード線は、配線51により、電源線50(貫通コンデンサ21と入力端子71との間)に接続される。そして、フィルムコンデンサ31の他方のリード線は、配線56により、筐体10の入力側の側面に接続されて接地される。
フィルムコンデンサ33も、筐体10の外部に配置される。また、フィルムコンデンサ33の一方のリード線は、配線54により、基準線53(貫通コンデンサ23と入力端子73との間)に接続される。そして、フィルムコンデンサ33の他方のリード線は、図示しない配線により、筐体10の入力側の側面に接続されて接地される。
かかる構成によれば、フィルムコンデンサ31と、フィルムコンデンサ32又はフィルムコンデンサ34との間の空間を伝搬する電磁波は、筐体10の入力側の側面(側壁)により遮断される。同様に、フィルムコンデンサ33と、フィルムコンデンサ32又はフィルムコンデンサ34との間の空間を伝搬する電磁波も、筐体10の入力側の側面(側壁)により遮断される。このように、実施の形態2における筐体10は、フィルムコンデンサ32とインダクタ41を収容し、フィルムコンデンサ31を外部に配置するものである。つまり、筐体10は、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32とを電磁的に遮蔽する遮蔽手段であり、かつ、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32との間の電磁結合によるフィルタ装置120の減衰特性の劣化を低減する減衰特性劣化低減手段である。フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34に関しても、筐体10は、遮蔽手段かつ減衰特性劣化低減手段として機能する。
本実施の形態によれば、部品点数の増加を抑制しつつ、良好な減衰特性を得ることが期待できる。なお、入力側のフィルムコンデンサに代えて出力側のフィルムコンデンサが筐体10の外側に配置された構成でもよい。さらに、入力側のフィルムコンデンサと出力側のフィルムコンデンサとのいずれもが筐体10の外側に配置された構成でもよい。かかる場合でも、部品点数の増加を抑制しつつ、良好な減衰特性を得ることが期待できる。
(実施の形態3)
実施の形態1、2では、フィルムコンデンサ間の空間を伝搬する電磁波を遮断する例について説明した。本発明において、フィルムコンデンサが他のフィルムコンデンサから放射された電磁波を受信しないようにする手法は、この例に限定されない。以下、2つのフィルムコンデンサの向きの関係を調整することにより、フィルムコンデンサが他のフィルムコンデンサから放射された電磁波を受信しないようにする手法について説明する。
図9は、本発明の実施の形態3に係るフィルタ装置130の上面図である。また、図10は、フィルタ装置130の側面図である。フィルタ装置130は、フィルムコンデンサ31、32、33、34をそれぞれ遮蔽する筐体61、62、63、64を備えないことと、フィルムコンデンサ31、33のそれぞれの向きが異なることとを除き、フィルタ装置100と同様の構成である。
図9、図10に示すように、フィルムコンデンサ31は、フィルムコンデンサ32とは異なる向きで配置される。同様に、フィルムコンデンサ33は、フィルムコンデンサ34とは異なる向きで配置される。なお、フィルムコンデンサ31の一方のリード線は、配線51により、電源線50(貫通コンデンサ21とインダクタ41との間)に接続される。そして、フィルムコンデンサ31の他方のリード線は、配線56により、筐体10の入力側の側面に接続されて接地される。また、フィルムコンデンサ33の一方のリード線は、配線54により、基準線53(貫通コンデンサ23とインダクタ42との間)に接続される。フィルムコンデンサ33の他方のリード線は、配線58により、筐体10の入力側の側面に接続されて接地される。以下、図11を参照して、具体的に説明する。図11は、フィルムコンデンサ31の向きとフィルムコンデンサ32の向きとの関係を示す図である。
図11に示すように、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32とは、筐体10内において、互いに直交する向きで配置される。具体的には、フィルムコンデンサ31は、フィルムが巻かれる軸91がY軸と平行になるように配置される。一方、フィルムコンデンサ32は、フィルムが巻かれる軸92がX軸と平行になるように配置される。そして、軸91と軸92とが直交するように、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32とが配置される。なお、軸91と軸92とは、交わらなくてもよいが、軸91と軸92との間の距離は、短い方が望ましい。
ここで、フィルムコンデンサ31のY軸方向における両端面から電気力線が外部に出てきて、この両端面がアンテナ部を構成することになる。また、フィルムコンデンサ32のX軸方向における両端面から電気力線が外部に出てきて、この両端面がアンテナ部を構成することになる。ここで、一方のフィルムコンデンサのアンテナ部となる端面と、他方のフィルムコンデンサのアンテナ部となる端面とが、平行でありかつ近接する場合、両アンテナ部の間の空間を伝搬する電磁波は非常に強くなると考えられる。アンテナ部となる端面において電磁波の放射強度が最も高い方向と垂直な平面により、フィルムコンデンサのアンテナ部となる端面が平行かどうかを判断する。
図12は、2つのフィルムコンデンサの軸のなす角(交差角)と電磁結合の量との関係を示す概念図である。実線121は、2つのフィルムコンデンサの軸が平行で、アンテナ部となる面が対向する場合の電磁結合の量を1として、一方のコンデンサの方向を回転させた回転角と電磁結合の量との関係を割合で表したものである。例として、図12では、フィルムコンデンサ同士の電磁結合の量をα以下にする場合、2つのフィルムコンデンサの軸のなす角は、例えば60度以上の角度にすればよい。2つのフィルムコンデンサの軸のなす角を何度以上にするかは、フィルムコンデンサの特性や、フィルタに要求される減衰特性に基づき決定する。
一方のフィルムコンデンサのアンテナ部となる端面と、他方のフィルムコンデンサのアンテナ部となる端面とが、直交または例えば60度以上の角度で交差する場合、両アンテナ部の間の空間を伝搬する電磁波は非常に弱くなると考えられる。つまり、図11に示すように、軸91と軸92とが直交するように、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32とが配置されると、遮蔽板などがなくとも良好な減衰特性を得ることが期待できる。
同様に、フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34とも、筐体10内において、互いに直交または例えば60度以上の角度で交差する向きで配置される。具体的には、フィルムコンデンサ33は、フィルムが巻かれる軸がY軸と平行になるように配置される。一方、フィルムコンデンサ34は、フィルムが巻かれる軸がX軸と平行になるように配置される。つまり、フィルムコンデンサ33におけるフィルムの軸とフィルムコンデンサ34におけるフィルムの軸とが直交または例えば60度以上の角度で交差するように、フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34とが配置される。
この実施の形態3では、フィルムコンデンサ31におけるフィルムの軸とフィルムコンデンサ32におけるフィルムの軸とが直交または例えば60度以上の角度で交差するように、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32とを配置することが、フィルムコンデンサ31(第1のコンデンサ)とフィルムコンデンサ32(第2のコンデンサ)の間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減させる減衰特性劣化低減手段として機能する。また、フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34に関しても、それぞれのフィルムの軸同士が直交または例えば60度以上の角度で交差するように配置することが、減衰特性劣化低減手段として機能する。
本実施の形態によれば、部品点数の増加を抑制しつつ、良好な減衰特性を得ることが期待できる。なお、入力側のフィルムコンデンサに代えて出力側のフィルムコンデンサの向きが調整されてもよい。さらに、入力側のフィルムコンデンサと出力側のフィルムコンデンサとのいずれもの向きが調整されてもよい。かかる場合でも、部品点数の増加を抑制しつつ、良好な減衰特性を得ることが期待できる。
(実施の形態4)
上記実施の形態では、π型フィルタが直列に1個だけ用意される例について説明した。本発明において、π型フィルタが直列に複数個接続されてもよい。この場合、フィルタ装置は、例えば、入力端子71に1個目のπ型フィルタの入力側の端子が接続され、1個目のπ型フィルタの出力側の端子に2個目のπ型フィルタの入力側の端子が接続され、2個目のπ型フィルタの出力側の端子に3個目のπ型フィルタの入力側の端子が接続され、以下同様にして、最後のπ側フィルタの出力側の端子に出力端子72が接続される。また、この場合、フィルタ装置は、各π型フィルタがX軸に直交する遮蔽板により仕切られた構成となる。この遮蔽板は、X軸に直交し、箱状の筐体10の内部の空間を区切る遮蔽板である。もしくは、この遮蔽板は、複数の箱状の筐体10をX軸方向に沿って重ねたときに、筐体10を構成する板状部分のうち他の筐体10と接する板状部分と考えることもできる。
このように、複数個のπ型フィルタが直列に接続された構成あるいは1個のπ型フィルタでは、貫通コンデンサの容量や配置を工夫することで、各π型フィルタ内における電磁結合が抑制される。その結果、不要な高周波成分が電源系統や信号系統に重畳されて伝搬されることが抑制される。以下、貫通コンデンサの容量を適切に選択することにより、フィルムコンデンサが他のフィルムコンデンサから放射された電磁波を受信しないようにする手法について説明する。
図13は、本発明の実施の形態4に係るフィルタ装置140の上面図である。図14は、フィルタ装置140の側面図である。図13及び図14に示すように、フィルタ装置140は、フィルタ装置100から筐体61、62、63、64を除外した2つのフィルタ装置をX軸方向に重ねた装置である。フィルタ装置140は、筐体11、貫通コンデンサ21、22、23、24、25、26、フィルムコンデンサ31、32、33、34、35、36、37、38、インダクタ41、42、43、44、電源線50、配線51、52、54、55、56、57、151、152、154、155、156、157、基準線53を備える。
筐体11は、フィルタ回路を収容し、フィルタ回路を外部から遮蔽する金属製のケースである。筐体11は、フィルタ回路から放射される電磁波が外部に放射されることを抑制するとともに、外部からフィルタ回路に電磁波が放射されることを抑制する。さらに、筐体11は、筐体11内の空間を2つの空間(空間141、142)に仕切ることにより、一方の空間から他方の空間に電磁波が放射されることを抑制する遮蔽板143を備える。つまり、筐体11は、複数のπ型フィルタを遮蔽板143で区切ることにより、複数のπ型フィルタを個別に収容する金属製の筐体である。後の説明の都合で、図13および図14で図における筐体11の遮蔽板143よりも左側の部分を左筐体11Aと呼び、筐体11の右側の部分を右筐体11Bと呼ぶ。
筐体11が収容するフィルタ回路は、貫通コンデンサ21とフィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32と貫通コンデンサ22とフィルムコンデンサ35とインダクタ43とフィルムコンデンサ36と貫通コンデンサ25とから構成される電源系統のフィルタ回路と、貫通コンデンサ23とフィルムコンデンサ33とインダクタ42とフィルムコンデンサ34と貫通コンデンサ24とフィルムコンデンサ37とインダクタ44とフィルムコンデンサ38と貫通コンデンサ26とから構成される基準系統のフィルタ回路との2つである。
貫通コンデンサ25、26は、いずれも、貫通コンデンサ21、22、23、24と同様の構成である。貫通コンデンサ25は、筐体11の出力側の板状部分の貫通コンデンサ21と対向する位置に、ネジなどで取り付けられる。貫通コンデンサ26は、筐体11の出力側の板状部分の貫通コンデンサ23と対向する位置に、ネジなどで取り付けられる。
フィルムコンデンサ35、36、37、38のそれぞれは、フィルムコンデンサ31、32、33、34と同様の構成である。フィルムコンデンサ35の一方のリード線は、配線151により、電源線50(貫通コンデンサ22とインダクタ43との間)に接続される。フィルムコンデンサ35の他方のリード線は、配線156により、筐体11が備える遮蔽板143に接続されて接地される。フィルムコンデンサ36の一方のリード線は、配線152により、電源線50(貫通コンデンサ25とインダクタ43との間)に接続される。フィルムコンデンサ36の他方のリード線は、配線157により、筐体11の出力側の板状部分に接続されて接地される。
フィルムコンデンサ37の一方のリード線は、配線154により、基準線53(貫通コンデンサ24とインダクタ44との間)に接続される。フィルムコンデンサ37の他方のリード線は、図示しない配線により、筐体11が備える遮蔽板143に接続されて接地される。フィルムコンデンサ38の一方のリード線は、配線155により、基準線53(貫通コンデンサ26とインダクタ44との間)に接続される。フィルムコンデンサ38の他方のリード線は、図示しない配線により、筐体11の板状部分に接続されて接地される。
インダクタ43、44は、インダクタ41、42と同様の受動素子である。インダクタ43は、例えば、貫通コンデンサ22と貫通コンデンサ25との間の電源線50(又は、この電源線50に接続された銅線)が巻かれて形成されたコイルである。インダクタ44は、例えば、貫通コンデンサ24と貫通コンデンサ26との間の基準線53(又は、この基準線53に接続された銅線)が巻かれて形成されたコイルである。
電源線50は、電源を供給するための配線である。電源線50を流れる電力は、フィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32とにより構成されるπ型フィルタと、フィルムコンデンサ35とインダクタ43とフィルムコンデンサ36とにより構成されるπ型フィルタと、により、フィルタリングされる。本実施の形態では、π型フィルタは、いずれも、C−L−C型フィルタであるものとする。
電源線50は、貫通コンデンサ21の貫通孔を通って筐体11の外部から筐体11の内部に入り込み、インダクタ41を経由して、貫通コンデンサ22の貫通孔を通り、インダクタ43を経由して、貫通コンデンサ25の貫通孔を通って筐体11の外部に出る。電源線50が経由する経路(貫通コンデンサ21→インダクタ41→貫通コンデンサ22→インダクタ43→貫通コンデンサ25)が電源系統(Pライン)である。
基準線53は、基準電圧を供給するための配線である。基準線53を流れる電力は、フィルムコンデンサ33とインダクタ42とフィルムコンデンサ34とにより構成されるπ型フィルタと、フィルムコンデンサ37とインダクタ44とフィルムコンデンサ38とにより構成されるπ型フィルタと、により、フィルタリングされる。
基準線53は、貫通コンデンサ23の貫通孔を通って筐体11の外部から筐体11の内部に入り込み、インダクタ42を経由して、貫通コンデンサ24の貫通孔を通り、インダクタ44を経由して、貫通コンデンサ26の貫通孔を通って筐体11の外部に出る。基準線53が経由する経路(貫通コンデンサ23→インダクタ42→貫通コンデンサ24→インダクタ44→貫通コンデンサ26)が基準系統(Nライン)である。電源系統と基準系統とは、基本的に同様の構成である。以下、適宜、電源系統を中心に説明する。また、既出の構成については、説明を省略又は簡略化する。
配線151は、フィルムコンデンサ35と電源線50とを接続する配線である。配線152は、フィルムコンデンサ36と電源線50とを接続する配線である。配線154は、フィルムコンデンサ37と基準線53とを接続する配線である。配線155は、フィルムコンデンサ38と基準線53とを接続する配線である。配線156は、フィルムコンデンサ35と筐体11が備える遮蔽板143とを接続する配線である。配線157は、フィルムコンデンサ36と筐体11とを接続する配線である。
図15に、本発明の実施の形態4に係るフィルタ装置140の等価回路図を示す。電源系統の回路は、入力端子71と出力端子72との間に、フィルムコンデンサ31とインダクタ41とフィルムコンデンサ32とにより構成されるπ型フィルタと、フィルムコンデンサ35とインダクタ43とフィルムコンデンサ36とにより構成されるπ型フィルタと、が直列に配置された回路である。入力端子71とインダクタ41との間には、貫通コンデンサ21が配置される。インダクタ41とインダクタ43との間には、貫通コンデンサ22が配置される。また、出力端子72とインダクタ43との間には、貫通コンデンサ25が配置される。
各π型フィルタは、貫通コンデンサ22が設けられた遮蔽板143により仕切られているため、フィルムコンデンサ32とフィルムコンデンサ35の間の電磁結合は発生しない。フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32の間、及び、フィルムコンデンサ35とフィルムコンデンサ36の間の電磁結合により、フィルタの高周波領域における減衰特性が劣化する。つまり、電磁結合により、減衰しにくい高周波領域が発生する。
基準系統の回路は、入力端子73と出力端子74との間に、フィルムコンデンサ33とインダクタ42とフィルムコンデンサ34より構成されるπ型フィルタと、フィルムコンデンサ37とインダクタ44とフィルムコンデンサ38より構成されるπ型フィルタと、が直列に配置された構成である。入力端子73とインダクタ42との間には、貫通コンデンサ23が配置される。インダクタ42とインダクタ44との間には、貫通コンデンサ24が配置される。また、出力端子74とインダクタ44との間には、貫通コンデンサ26が配置される。
フィルムコンデンサ31は、その一端がインダクタ41の一端に接続され、他端が接地された第1のコンデンサである。フィルムコンデンサ32は、その一端がインダクタ41の他端に接続され、他端が接地された第2のコンデンサである。インダクタ41、フィルムコンデンサ31およびフィルムコンデンサ32がフィルタ回路を構成する。左筐体11Aと遮蔽板143が、フィルタ回路を外部から遮蔽する接地された筐体である。貫通コンデンサ21が、筐体を貫通し、フィルムコンデンサ31(第1のコンデンサ)の一端に一端が接続された貫通コンデンサである。貫通コンデンサ22が、筐体を貫通し、フィルムコンデンサ32(第2のコンデンサ)の一端に一端が接続された貫通コンデンサである。
さらに、フィルムコンデンサ35は、その一端がインダクタ43(第2のインダクタ)の一端に接続され、他端が接地された第3のコンデンサである。フィルムコンデンサ36は、その一端がインダクタ43(第2のインダクタ)の他端に接続され、他端が接地された第4のコンデンサである。インダクタ43、フィルムコンデンサ35およびフィルムコンデンサ36が第2のフィルタ回路を構成する。右筐体11Bと遮蔽板143が、第2のフィルタ回路を外部から遮蔽する、接地され、第2の貫通コンデンサが貫通する第2の筐体である。貫通コンデンサ25が、第2の筐体を貫通し、フィルムコンデンサ36(第4のコンデンサ)の一端に一端が接続された第3の貫通コンデンサである。
なお、左右を逆にして考えて、フィルムコンデンサ36を第1のコンデンサとし、フィルムコンデンサ35を第2のコンデンサとし、インダクタ43を一端に第1のコンデンサの一端が接続し、他端に第2のコンデンサの他端が接続したインダクタとしてもよい。インダクタ43、フィルムコンデンサ36およびフィルムコンデンサ35をフィルタ回路とし、右筐体11Bと遮蔽板143を、フィルタ回路を外部から遮蔽する接地された筐体としてもよい。そして、フィルムコンデンサ32を第3のコンデンサとし、インダクタ41を第2のインダクタとし、フィルムコンデンサ31を第4のインダクタとしてもよい。インダクタ41、フィルムコンデンサ32およびフィルムコンデンサ31を第2のフィルタ回路とし、左筐体11Aと遮蔽板143を第2の筐体としてもよい。そして、貫通コンデンサ25を第1の貫通コンデンサとし、貫通コンデンサ22を第2の貫通コンデンサとし、貫通コンデンサ21を第3の貫通コンデンサとしてもよい。π型フィルタを3段以上接続する場合にも任意の隣接する2つのπ型フィルタを、本発明を適用するフィルタ装置と考えてもよい。基準系統側のフィルタ回路についても同様に、本発明を適用するフィルタ装置と考えてもよい。
各π型フィルタは貫通コンデンサ24が設けられた遮蔽板143により仕切られているため、フィルムコンデンサ34とフィルムコンデンサ37の間の電磁結合は発生しない。フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34の間、及び、フィルムコンデンサ37とフィルムコンデンサ38の間の電磁結合によりフィルタの高周波領域における減衰特性が劣化する。つまり、電磁結合により、減衰しにくい高周波領域が発生する。
次に、フィルタ装置140の動作について説明する。電源系統の回路と基準系統の回路は同じ動作のため、電源系統の回路を例にして説明する。フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32の間の電磁結合は、フィルムコンデンサ31と貫通コンデンサ21と接地とを含んで構成される共振回路181(第1の共振回路)と、フィルムコンデンサ32とフィルムコンデンサ35と貫通コンデンサ22と接地とを含んで構成される共振回路182(第2の共振回路)の2つの共振回路間の結合となる。また、フィルムコンデンサ35とフィルムコンデンサ36の間の電磁結合は、フィルムコンデンサ36と貫通コンデンサ25と接地とを含んで構成される共振回路183(第3の共振回路)と共振回路182(第2の共振回路)の2つの共振回路間の結合となる。各共振回路の共振周波数では、フィルムコンデンサから放射するあるいは受信する電磁波が大きくなる。電磁波を放射するフィルムコンデンサと同じ筐体内の別のフィルムコンデンサが含まれる受信側の共振回路の共振周波数が、放射側のフィルムコンデンサが含まれる放射側の共振回路の周波数に近い場合には、放射された電磁波が受信側の共振回路でより多く受信され、コンデンサ間の電磁結合が大きくなる。従って、同一筐体内でコンデンサがそれぞれ含まれる隣接する共振回路の共振周波数を異ならせることで、コンデンサ間の電磁結合を低減させることができる。なお、フィルタ装置140の入力端子側の共振回路が放射側の共振回路になり、出力端子側の共振回路が受信側の共振回路になる。
共振回路181の共振周波数であるf1は、式(1)にて求めることができる。なお、貫通コンデンサ21の容量をC21、貫通コンデンサ21のインダクタンス値をL21、フィルムコンデンサ31の容量をC31、フィルムコンデンサ31のインダクタンス値をL31とする。ここで、フィルムコンデンサ31のインダクタンス値であるL31は、そのほとんどが図3に示したフィルムコンデンサのリード線305、306の部分で発生する。貫通コンデンサ21のインダクタンス値であるL21は、貫通コンデンサ21の接地端子から接地された筐体10までの経路のインダクタンス値である。
フィルムコンデンサ31のインダクタンス値であるL31は、貫通コンデンサ21のインダクタンス値であるL21より十分に大きい(L31>>L21)。また、フィルタの低周波側のカットオフ周波数をフィルムコンデンサ31で決めているので、フィルムコンデンサ31の容量であるC31は貫通コンデンサ21の容量であるC21より十分に大きくなる(C31>>C21)。従って、共振回路181(第1の共振回路)の共振周波数f1(第1の共振周波数)は、式(2)により近似され、フィルムコンデンサ31のインダクタンス値であるL31と貫通コンデンサ21の容量であるC21とによって決まる。
共振回路183の共振周波数f3も、同様にして求めることができる。貫通コンデンサ25の容量をC25、貫通コンデンサ25のインダクタンス値をL25、フィルムコンデンサ36の容量をC36、フィルムコンデンサ36のインダクタンス値をL36とする。フィルムコンデンサ36のインダクタンス値であるL36は、貫通コンデンサ25のインダクタンス値L25より十分に大きい(L36>>L25)。また、フィルタの低周波側のカットオフ周波数をフィルムコンデンサ36で決めている場合、フィルムコンデンサ36の容量であるC36は、貫通コンデンサ25の容量C25より十分に大きくなる(C36>>C25)。これらを考慮すると、共振回路183(第3の共振回路)の共振周波数f3(第3の共振周波数)は、式(3)により近似され、フィルムコンデンサ36のインダクタンス値L36と貫通コンデンサ25の容量C25とによって決まる。
図16は、フィルタ装置内に形成される共振回路の第1の等価回路図である。共振回路182(第2の共振回路)の共振周波数f2(第2の共振周波数)は、以下のようにして求めることができる。フィルムコンデンサ32の容量をC32、フィルムコンデンサ32のインダクタンス値をL32とする。貫通コンデンサ22の容量をC22、貫通コンデンサ22のインダクタンス値をL22とする。フィルムコンデンサ35の容量をC35、フィルムコンデンサ35のインダクタンス値をL35とする。フィルムコンデンサ32、35の容量(C32、C35)は、貫通コンデンサ22の容量(C22)より十分に大きく(C32>>C22、C35>>C22)、またフィルムコンデンサ32、35のインダクタンス値(L32、L35)は、貫通コンデンサ22のインダクタンス値(L22)より十分に大きい(L32>>L22、L35>>L22)。このため、共振周波数付近では、C32やC35やL22を無視することができ、図16の等価回路は、図17のように表すことができる。図17に示すように、共振周波数であるf2は、式(4)により近似され、フィルムコンデンサ32のインダクタンス値であるL32とフィルムコンデンサ35のインダクタンス値であるL35と貫通コンデンサ22の容量であるC22とによって決まる。
このように、両側にπ型回路がある貫通コンデンサを含む共振回路では、その共振周波数は貫通コンデンサの両端にあるフィルムコンデンサのインダクタンス値により決まる。
このように、共振回路181、182、183の共振周波数であるf1、f2、f3は、共振回路を構成するフィルムコンデンサのインダクタンス値と貫通コンデンサの容量とによって決まる。フィルムコンデンサのインダクタンス値は、フィルムコンデンサのリード線のインダクタンス値がほとんどを占める。貫通コンデンサとフィルムコンデンサの相対的な位置が同じであれば、図14に示すようにリード線の長さはほぼ同じになり、コンデンサの容量によらず、コンデンサのインダクタンス値はほぼ同じ値となる。この値をLc(L31=L32=L35=L36)として共振周波数を整理すると、式(5)〜式(7)のようになる。共振周波数であるf2のみ分子に√2(平方根)が入り、式の形が異なる。本実施の形態では、リード線305、306の長さは、配線51、52、56、57、151、152、156、157の長さよりも十分に短いものとする。この場合、フィルムコンデンサ31のリード線は配線51、56であり、フィルムコンデンサ32のリード線は配線52、57であり、フィルムコンデンサ35のリード線は配線151、156であり、フィルムコンデンサ36のリード線は配線152、157であると言える。
以下、具体的な数値を用いて共振周波数を求める。図18に、フィルムコンデンサのインダクタンス値をLc=70nHに固定し、貫通コンデンサ21、22、25の容量であるC21、C22、C25を、5nF、10nFの中から選んで共振周波数であるf1、f2、f3を求めた結果を示す。尚、図18の電磁結合の欄では、◎が最も電磁結合が小さく、○、△、×の順に電磁結合が大きくなることを表す。なお、図18の電磁結合の欄に示した電磁結合とは、共振回路181と共振回路182の間の電磁結合および共振回路182と共振回路183の間の電磁結合のトータルの電磁結合のことである。共振周波数の差(f1−f2)および(f2−f3)の差が大きい方が、フィルムコンデンサ間の電磁結合は小さくなる。
C22をC21、C25より大きくした場合(No.1)、3つの共振周波数が等しくなる。このため、共振回路181と共振回路182の間の電磁結合および共振回路182と共振回路183の間の電磁結合はどちらも最大となる。そのため、トータルの電磁結合も最大になり、共振周波数におけるフィルタ減衰量の劣化は最大になる。C21をC22、C25より小さくした場合(No.2)、f1とf2は等しくなるが、f2とf3は異なるため、共振回路181と共振回路182の間の電磁結合は最大であるが、共振回路182と共振回路183の間の電磁結合はやや小さくなる。そのため、トータルの電磁結合もやや小さくなる。C22をC21、C25より小さくした場合(No.3)、f1とf2、f2とf3の共振周波数の差は図18に示した場合の中では最大の6MHzとなり、共振回路181と共振回路182の間の電磁結合および共振回路182と共振回路183の間の電磁結合はどちらも小さくなり、トータルの電磁結合は最小となる。C21とC22とC25とを全て同じにした場合(No.4、No.5)、f1とf2、f2とf3の共振周波数の差は1.5MHzから3.5MHzとなり、共振回路181と共振回路182の間の電磁結合および共振回路182と共振回路183の間の電磁結合はどちらもやや小さくなり、トータルの電磁結合はやや少なくなる。C21とC25とを同じにした場合(No.6)、f2とf3の共振周波数の差は最大の6MHzとなり、電磁結合は小さくなる。
以上のことから、フィルムコンデンサのインダクタンス値がすべて同じ場合に、中央の貫通コンデンサ22(第2の貫通コンデンサ)の容量を両サイドの貫通コンデンサ21(第1の貫通コンデンサ)、貫通コンデンサ25(第3の貫通コンデンサ)の容量より小さくする(No.3)と、効果的にトータルの電磁結合を小さくできることがわかる。その理由は、共振回路182のインダクタンス値は両サイドの共振回路181、183のインダクタンス値よりも小さいので、共振回路182の静電容量値を共振回路181、183の静電容量値を小さくすることで、共振回路182の共振周波数f2を共振回路181、183の共振周波数f1、f3に対する倍率をさらに大きくすることができるからである。逆に、中央の貫通コンデンサ22の容量を両サイドの貫通コンデンサ21、25の容量より大きくすると、共振周波数f2の共振周波数f1、f3に対する倍率が小さくなり、周波数差が小さくなり、電磁結合が増大する。
また、中央の貫通コンデンサ22を含む隣接する2つの貫通コンデンサ21、22(第1、第2の貫通コンデンサ)の容量を同じにし、他の一つの貫通コンデンサ25(第3の貫通コンデンサ)の容量より小さくする(No.6)と、電磁結合をかなり小さくできることがわかる。その理由を説明する。容量を同じにした貫通コンデンサ21、22がそれぞれ含まれる共振回路181、182の共振周波数f1、f2は、インダクタンス値の違いにより異なる。貫通コンデンサ22の容量は貫通コンデンサ25の容量より小さくすると、共振回路182の共振周波数f2を共振回路183の共振周波数f3に対する倍率をさらに大きくすることができるからである。なお、貫通コンデンサの容量は、小さい値で同じにする方が周波数差の絶対値が大きくなり、貫通コンデンサの容量が大きい場合よりも電磁結合を小さくすることができる。
また、中央の貫通コンデンサ22を含む隣接する2つの貫通コンデンサ22、25の容量を同じにし、他の一つの貫通コンデンサ21の容量より大きく(No.2)しても、電磁結合をある程度小さくできる。これは、貫通コンデンサ21(第1の貫通コンデンサ)と貫通コンデンサ22(第2の貫通コンデンサ)の容量が同じ場合には、共振回路181(第1の共振回路)の共振周波数f1(第1の共振周波数)とは共振回路182(第2の共振回路)の共振周波数f2(第1の共振周波数)、インダクタンス値の違いにより、異なるからである。
図19は、図18に示したフィルタの減衰特性を示すグラフである。破線191は、No.1の貫通コンデンサの構成における減衰特性である。周波数(MHz)が増加すると共に、ゲイン(dB)がなだらかに減少するが、共振周波数であるfb(8.5MHz)付近にて減衰量が劣化する。実線192は、No.3の構成における減衰特性である。コンデンサ間の電磁結合が非常に小さいため、フィルタ減衰量の劣化は発生しない。また、貫通コンデンサは、低い周波数の減衰特性には影響を及ぼさないので、共振周波数以外の減衰特性は変化しない。一点鎖線193は、No.6やNo.2の構成における減衰特性である。フィルタの減衰量の劣化をある程度低減することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、中央の貫通コンデンサの容量を両サイドの貫通コンデンサの容量より小さくすることで、コンデンサ間の電磁波の伝搬を遮断し、良好なフィルタ減衰特性を得ることができる。このため、実施の形態1において筐体10に設けられた筺体61などは不要となり、フィルタの構造を簡単にできると共に、フィルムコンデンサをフィルタ内部で自由に配置できるようになり、フィルタの小型化が可能になるというメリットがある。
また、フィルタ装置のどちらかの端に設けられた貫通コンデンサと、その貫通コンデンサが設けられた筐体に設けられた、隣接するフィルタ回路と接続する他の貫通コンデンサの容量を同じにすることで、コンデンサ間の電磁波の伝搬をある程度遮蔽し、良好なフィルタ減衰特性を得ることができる。このため、実施の形態1において筐体10に設けられた筺体61などは不要となり、フィルタの構造を簡単にできると共に、フィルムコンデンサをフィルタ内部で自由に配置できるようになり、フィルタの小型化が可能になるというメリットがある。
以上の説明では、フィルムコンデンサのインダクタンス値であるLcが70nHの場合について説明したが、インダクタンス値が異なる場合についても、同じ議論が成立する。また、フィルタの減衰量が劣化することを低減させる周波数は、図19のグラフを見てもわかるように広い周波数範囲に及ぶ。そのため、2つの共振回路の共振周波数を十分に離していれば、リード線の長さや貫通コンデンサの容量が変化しても同様の効果が得られる。更に、基準系統の回路に適用しても同様の効果が得られる。
複数個のπ型フィルタが直列に接続された構成では、少なくとも1個のπ型フィルタで2つの共振回路の共振周波数を異なる対策を取れば、そのπ型フィルタ回路でのコンデンサ間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減できる。また、直列に接続された複数個のπ型フィルタの2個以上で2つの共振回路の共振周波数を異なる対策を取れば、対策を行なったそれぞれのπ型フィルタ回路でのコンデンサ間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減できる。π型フィルタごとに、別の対策を取ってもよい。
この実施の形態4では、直列に接続された複数個のπ型フィルタの1個または2個以上で2つの共振回路の共振周波数を異なる対策を取ることが、フィルムコンデンサの間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減させる減衰特性劣化低減手段である。
(実施の形態5)
この実施の形態5は、π型フィルタが直列に1個だけ用意される場合で、実施の形態4と同様に貫通コンデンサの容量を調整することで、π型フィルタ内におけるコンデンサの間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減する実施の形態である。図20は、実施の形態5に係るフィルタ装置の上面図である。図21は、実施の形態5に係るフィルタ装置の側面図である。
実施の形態1の場合の図1、図2と異なる点だけを説明する。実施の形態1のフィルタ装置100が備えた、フィルムコンデンサ31、32、33、34をそれぞれ収容する筐体61、62、63、64は、実施の形態5のフィルタ装置150は有さない。図では表現されないが、貫通コンデンサ21と貫通コンデンサ22の容量を、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32の間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減するように異ならせている。貫通コンデンサ23と貫通コンデンサ24の容量も、フィルムコンデンサ33とフィルムコンデンサ34の間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減するように異ならせている。
図22は、実施の形態5に係るフィルタ装置150の等価回路図である。実施の形態4の場合の回路図である図15と比較して、右側のπ型フィルタを構成するフィルムコンデンサ35、36、37、38、インダクタ43、44および貫通コンデンサ25、26を有しない。貫通コンデンサ22の他端に出力端子72が接続し、貫通コンデンサ24の他端に出力端子72が接続している。共振回路181は、フィルムコンデンサ31、貫通コンデンサ21および接地を含んで構成される。共振回路182は、フィルムコンデンサ32、貫通コンデンサ22および接地を含んで構成される。
フィルムコンデンサ31、32、33、34はすべて同種のものであるので、そのインダクタンス値はすべて同じになる。フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32の間の電磁結合について、以下で説明する。フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32の間の電磁結合についても同様である。
フィルムコンデンサ31、32のインダクタンス値が同じなので、貫通コンデンサ21の容量と貫通コンデンサ22の容量を同じにすると、フィルムコンデンサ31、32の間の電磁結合が最大になり、減衰特性の劣化が最大になる。貫通コンデンサ21の容量と貫通コンデンサ22の容量を異ならせているので、共振回路181(第1の共振回路)の共振周波数f1(第1の共振周波数)と、共振回路182(第2の共振回路)の共振周波数f2(第2の共振周波数)とは異なる。そのため、フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32の間の電磁結合が小さくなり、減衰特性の劣化も低減する。共振周波数の違いが大きいほど、電磁結合が小さくなり、減衰特性の劣化もより小さくなる。
フィルムコンデンサ31とフィルムコンデンサ32のインダクタンス値が異なる場合の、コンデンサ間の電磁結合を低減させる貫通コンデンサ21、22の容量C21、C22について検討する。ここでは、フィルムコンデンサ31のインダクタンス値L31が、フィルムコンデンサ32のインダクタンス値L32よりも大きい(L31>L32)の場合で説明する。
共振回路181の共振周波数f1は、前に示した(2)式で計算できる。共振回路182の共振周波数f2は、(2)式と同様な以下の式(8)で計算できる。
f2のf1に対する比の値(f2/f1)は、以下の式(9)ようになる。
したがって、共振回路181の共振周波数f1と共振回路182の共振周波数f2とが同じになる場合には、以下の式(10)が成立する。
ここでは、L31>L32なので、C21>C22×(L32/L31)とすれば、f1<f2とすることができる。貫通コンデンサ21、22を同種のコンデンサとして、C21=C22の場合でもf1<f2とすることができる。C21とC22を異ならせてf1とf2の差をより大きくするには、C21をC22よりも大きく(C21>C22)すればよい。
この様に、L31>L32であれば、式(9)におけるf1とf2の比率がより小さい値となるよう、C21>C22とすればよい。反対に、L31>L32の場合に、C21<22とすると、L21/L2によりf2/f1を小さくする効果とC21/C22によりf2/f1を大きくする効果とが相殺される。
この実施の形態5では、共振回路181(第1の共振回路)の共振周波数f1(第1の共振周波数)と、共振回路182(第2の共振回路)の共振周波数f2(第2の共振周波数)とを異ならせることが、フィルムコンデンサ31(第1のコンデンサ)とフィルムコンデンサ32(第2のコンデンサ)の間の電磁結合による減衰特性の劣化を低減させる減衰特性劣化低減手段である。
共振回路182の共振周波数f2を計算する計算式は、貫通コンデンサの両側にフィルムコンデンサが存在する場合の計算式である式(6)と、片側にだけフィルムコンデンサが存在する場合の計算式である式(8)とでは異なる。2つの計算式には、共通にC22とL32とが含まれている。つまり、共振回路の共振周波数を求める計算式には、電磁結合を考慮する対象のコンデンサ(フィルムコンデンサ32)のインダクタンス値(L32)と、そのコンデンサの一端に一端が接続する貫通コンデンサ(貫通コンデンサ22)の容量(C22)が少なくとも含まれる。その貫通コンデンサの他端に別のコンデンサ(フィルムコンデンサ35)が接続する場合は、別のコンデンサのインダクタンス値(L35)も、計算式に含まれる。
(変形例)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明を実施するにあたっては、種々の形態による変形及び応用が可能である。
本発明において、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、本発明において、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作は、自由に組み合わせることができる。
例えば、実施の形態1で示したようにフィルムコンデンサを遮蔽する筐体を用いた上、実施の形態3で示したように2つのフィルムコンデンサの向きが直交するように配置してもよい。同様に、実施の形態2で示したように一方のフィルムコンデンサを筐体の外部に配置した上、実施の形態3で示したように2つのフィルムコンデンサの向きが直交あるいは例えば60度以上の角度で交差するように配置してもよい。また、実施の形態5のように、筐体内の2つのフィルムコンデンサの電磁結合を小さくするために、それぞれのフィルムコンデンサと貫通コンデンサと接地を含む共振周波数を異ならせた上で、2つのフィルムコンデンサの向きが直交あるいは例えば60度以上の角度で交差するように配置してもよい。
上記実施の形態では、π型フィルタを構成するコンデンサとして、フィルムコンデンサを採用する例について説明した。本発明において、π型フィルタを構成するコンデンサとして、種々のコンデンサを採用することができる。採用するコンデンサとしては、高周波特性と誘電特性とに優れたコンデンサが好適である。例えば、積層コンデンサを採用することができる。
ここで、実施の形態3で示す手法を採用する場合、例えば、一方の積層コンデンサの積層面と、他方の積層コンデンサの積層面に直交する軸とが平行になるように、2つの積層コンデンサが配置されることが好適である。かかる構成によれば、一方の積層コンデンサにおけるアンテナ部を構成する面と、他方の積層コンデンサにおけるアンテナ部を構成する面とが、対向しないことになり、電磁波が伝搬されにくくなるためである。
実施の形態1では、フィルムコンデンサを升状の筐体で遮蔽することにより、フィルムコンデンサ間の空間を伝搬する電磁波を遮断する手法について説明した。本発明において、フィルムコンデンサ間の空間を伝搬する電磁波を遮断する手法は、この例に限定されない。例えば、入力側のフィルムコンデンサと出力側のフィルムコンデンサとの間に、X軸に直交する平面を有する遮蔽板が配置されてもよい。
実施の形態1では、フィルムコンデンサを遮蔽する筐体が、筐体10と接触して接地される例について説明した。本発明において、フィルムコンデンサを遮蔽する筐体は、接地されていなくてもよい。
上記実施の形態では、π型フィルタに含まれる入力側のコンデンサと出力側のコンデンサとがそれぞれ1個である例について説明した。本発明において、π型フィルタに含まれる入力側のコンデンサと出力側のコンデンサとの個数は、この例に限定されない。例えば、フィルムコンデンサ31と並列に、1個以上のフィルムコンデンサを追加し、フィルムコンデンサ32と並列に、1個以上のフィルムコンデンサを追加してもよい。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の変形あるいは省略が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。