JP2015166238A - 鉄道車両用台車及び鉄道車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】直線走行時の安定性、さらには高速走行時の安定性、曲線区間走行時の通過性能、安全性を確保しつつ、車輪及びレールから発生する転動音やブレーキディスクから発生する風切り音を低減する。【解決手段】輪軸を回転自在に支持する鉄道車両用台車である。輪軸を構成する車輪1の板部、或いは車輪1にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪1の板部と車輪1の板部に設置されたブレーキディスクを覆うように防音カバー11〜14を取り付ける。【効果】台車の構成部品の寸法や配置に制約を課すことなく、直線走行時の安定性、さらには高速走行時の安定性、曲線区間走行時の通過性能、安全性を確保し、車輪転動音とブレーキディスクから放射される空力音という環境騒音を低減することができる。【選択図】図14

Description

本発明は、鉄道車両の走行時、車輪及びレールから発生する転動音や、車輪に設置したブレーキディスクから発生する風切り音などの環境騒音を低減可能な鉄道車両用台車、及びこの鉄道車両用台車を備えた鉄道車両に関するものである。
鉄道車両の高速化に伴って増大する環境騒音の低減が求められている。この環境騒音は、以下の3つに分類される。
(1) 集電系音と呼ばれるパンタグラフの空力音、スパーク音、摺動音。
(2) 車体上部の空力音。
(3) 車両下部音と呼ばれる、a)車輪及びレールから発生する転動音、b)車輪に設置したブレーキディスクから発生する風切り音、c)台車から発生する空力音などの車体下部空力音、d)駆動装置から発生する歯車の噛合い騒音。
前記環境騒音のうち、(1)の集電系音は低騒音パンタグラフの開発などによって現状では低減されたと言われている。また、(2)の車体上部の空力音も車体形状の開発により改善されている。
そのため、前記環境騒音は、相対的に(3)の車体下部音の占める割合が大きくなり、その対策が求められているが、そのうちのc)の車体下部空力音やd)の歯車の噛合い騒音も順次対策案が検討されている。
従って、発明者は、特に(3)の車体下部音のうちの、a)の車輪及びレールから発生する転動音と、b)のブレーキディスクから発生する風切り音を対象として、その対策について考慮した。
本発明で対象とする、(3)の車体下部音のうちの、a)やb)の環境騒音を改善する技術としては、車体にパネルやカバーを設置し、そのパネルやカバーの吸音特性を向上させる、或いは吸音面積を拡大する方法が一般的に採用されている(例えば特許文献1〜3)。
特許文献1に記載の技術は、鉄道車両の車体の外板下部に防音カバーを設置し、この防音カバーの上下移動を制御することにより、車輪とレールとの接触点を中心に発生する転動音の外部への漏洩を抑制してその拡散を防止するものである。
また、特許文献2に記載の技術は車体の床下とレール間に、特許文献3に記載の技術は車体の下部に、それぞれ吸音材を設置することにより、吸音特性を向上させるものである。
ところで、鉄道車両は、直線区間走行時の安定性と曲線区間走行時の通過性能を両立させるために、台車と車体にヨーダンパを設置することが一般的である。その際、ヨーダンパが故障した場合にも健全な動作を保証してさらなる安全性を確保するために、台車と車体の片側当りに複数のヨーダンパを設置する場合がある。
また、台車への車軸の設置は、軸受と、軸受を収納した軸箱、及び軸箱を支持する軸箱支持装置を介して行われるので、これらの安全性を確保することが最重要課題である。さらに、高速走行時の走行安定性を確保するために、軸受、軸箱、軸箱支持装置の寸法が従来と比較して大きくなる場合がある。
従って、車輪及びレールから発生する転動音、及びブレーキディスクから発生する風切り音を低減するために、特許文献1〜3で開示された防音カバーや吸音材を設置、特に特許文献1で開示された防音カバーを設置した場合には以下の課題が存在する。
特許文献1で開示された防音カバーは台車の外側を覆うものであることから、防音カバーの内側に位置する台車の主要構成部品であるヨーダンパ、軸受、軸箱、軸箱支持装置の寸法や配置には大きな制約を受ける。そのため、車両の高速安定性、曲線区間走行時の通過性能、さらには安全性が犠牲にならざるを得ない。特に、在来線区間を走行する車両は車両の横断面が小さいため、より顕著な制約になる。
特開平1−132462号公報 特開2001−26267号公報 特開2006−290054号公報
本発明が解決しようとする課題は、特許文献1のように防音カバーで台車の外側を覆って車輪及びレールから発生する転動音やブレーキディスクから発生する風切り音を低減する場合は、ヨーダンパ、軸受、軸箱、軸箱支持装置の寸法や配置に大きな制約を受けるという点である。
本発明は、台車の構成部品の寸法や配置に制約を課すことなく、直線走行時の安定性、さらには高速走行時の安定性、曲線区間走行時の通過性能、安全性を確保できる騒音低減対策を施した鉄道車両用台車及び鉄道車両を提供することを目的としている。
本発明は、
輪軸を回転自在に支持する鉄道車両用台車において、
前記輪軸を構成する車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されたブレーキディスクを覆うように防音カバーを取り付けたことを最も主要な特徴としている。
上記本発明では、車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されたブレーキディスクを覆うことによって、車輪転動音とブレーキディスクから放射される風切り音を遮蔽し、両者の騒音を低減することができる。
本発明の鉄道車両用台車においては、防音カバーは、車両限界の下限値位置から車輪直径の40%以上或いは70%以上を覆うものであれば、十分な騒音の低減効果を得ることができる。
また、本発明の鉄道車両用台車においては、防音カバーは、一体となされた構造、又は上部と下部に分割したものを結合することによって一体となした構造、或いは車両進行方向の前部と後部に分割したものを結合することによって一体となした構造の何れであってもよい。
本発明によれば、台車の構成部品の寸法や配置に制約を課すことなく、直線走行時の安定性、さらには高速走行時の安定性、曲線区間走行時の通過性能、安全性を確保し、車輪転動音とブレーキディスクから放射される風切り音という環境騒音を低減することができる。
その際、走行中に受ける空気を整流するために角部を滑らかな形状とするなど、防音カバーの形状を工夫することにより、台車空力音などの車体下部空力音の低減にも効果を奏する。
転動音試験機の概略構成図で、(a)は平面図、(b)は車輪、軌条輪及び精密騒音計を(a)図の側面方向から見た図である。 試験1(防音カバーを取り付けない場合)を示した図1(b)と同様の図である。 試験2(防音カバーを設置した場合)を説明する図で、(a)は図2と同様の図、(b)は(a)図の側面方向から見た図である。 試験1と試験2の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係を示した図である。 図4の軌条輪周速度が280km/h 、320km/h 、360km/h 、400km/h のものを1/3オクターブバンド処理した分析結果を示した図である。 試験3(上部を解放した防音カバーを設置した場合)を説明する図3(b)と同様の図である。 試験1と試験2の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係(遮蔽率100%)、及び試験1と試験3の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係(遮蔽率21%、40%、及び70%)を示した図である。 図7における軌条輪周速度が360km/h と400km/h 場合の遮蔽率と音圧レベル差(dB)の関係を示した図である。 試験4(車輪の外側側面のみに防音カバーを設置した場合)を説明する図3(b)と同様の図である。 試験5(車輪の外側側面のみに上部を解放した防音カバーを設置した場合)を説明する図3(b)と同様の図である。 試験1と試験4の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係(遮蔽率100%)、及び試験1と試験5の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係(遮蔽率70%)を示した図である。 車体パネルを模擬した遮蔽板を設置した状態での転動音試験機の概略構成を示した図1と同様の図である。 試験6と試験7の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係(遮蔽率100%)、及び試験6と試験8の音圧レベル差(dB)と軌条輪周速度(km/h )との関係(遮蔽率70%)を示した図である。 (a)は台車枠の軸箱に防音カバーを設置した状態を鉄道車両の幅方向から見た図、(b)は図3に示すタイプの防音カバーの一例を示す斜視図である。 台車枠の軸箱に設置する防音カバーの斜視図で、(a)は図6に示すタイプの防音カバー、(b)は図9に示すタイプの防音カバー、(c)(d)は図10に示すタイプの防音カバーである。 台車枠のばね帽に防音カバーを設置した状態を示した図で、(a)は平面から見た図、(b)は車両の側面から見た図である。 キャリパブレーキ装置に設置する防音カバーの斜視図で、(a)は図3に示すタイプの防音カバー、(b)は図6に示すタイプの防音カバーである。 キャリパブレーキ装置に設置する図10に示すタイプの防音カバーの斜視図で、(a)は車輪の外側側面から見た図、(b)は車輪の内側側面から見た図である。 キャリパブレーキ装置に設置する図10に示すタイプの他の防音カバー斜視図である。
本発明は、直線走行時の安定性、さらには高速走行時の安定性、曲線区間走行時の通過性能、安全性を確保しつつ、車輪及びレールから発生する転動音やブレーキディスクから発生する風切り音を低減するという目的を実現するものである。
そして、前記目的を、車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されたブレーキディスクを覆うように防音カバーを取り付けることで実現した。
先ず、本発明の新しい着想、及びこの着想から課題解決に至るまでの経過について説明する。
発明者は、特許文献1で開示されたような防音カバーで台車の外側を覆うのではなく、車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されたブレーキディスクを覆う防音カバーを鉄道車両用台車に設置することで、車輪から発せられる放射音やブレーキディスクから発せられる風切り音を遮蔽することを考えた。
鉄道車両の走行時、車輪の転動音が発生するメカニズムは、公知文献(笹倉他:在来線の車輪形状と振動騒音特性を評価する,RRR,Vol.69,No.7,pp12-15,2012)では、次のように説明されている。
レールと車輪の接触面にはともに微小な凹凸が存在する。従って、走行時の車輪回転により相互に加振力が発生し、この加振力により車輪の板部などに振動が生じ、周囲の空気を振動させて音として放射される。この放射される音を騒音として捉えることができる。
このことから、車輪の板部に生じた振動から放射される騒音を低減するためには、車輪の板部を覆えばよいことがわかる。
また、特許第5158209号公報によれば、ブレーキディスクから放出される風切り音は次のように説明されている。
ブレーキディスクは車輪とともに高速回転している。この回転によりブレーキディスク周辺の空気は内周側から吸い込まれて外周側に放出される。この放出される空気の流れに伴って風切り音が外部に放射される。
このことから、ブレーキディスクから放射される風切り音を低減するためには、ブレーキディスクの外周側を覆えばよいことがわかる。
以上のことから、発明者は、車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されるブレーキディスクを外周側から覆う防音カバーを台車に設置して、車輪転動音、或いは車輪転動音とブレーキディスクから放射される風切り音を遮蔽すれば、両者の騒音を低減可能な構成とすることができると考えた。
発明者は、図1に示す転動音試験機を用いて、車輪の板部の外周側を覆う防音カバーによる放射音低減効果について調査した。
(0) 試験方法の概要説明
転動音試験機は、図1に示すように、試験対象となる車輪1(車輪直径860mm)を油圧ジャッキ3により軌条輪4に押し付けた後、軌条輪4をモータ5で回転させることによって車輪1を回転させるものである。なお、図1中の2は、車輪1及び軌条輪4を回転が自在なように支持する軸受を示す。
前記構成の転動音試験機では、速度は軌条輪4の周速で表現し、モータ5の回転数と軌条輪4の直径(本実施例では910mm)から求める。例えば、モータ5の回転数がおよそ1750rpmのときには、周速は300km/h となる。
測定に際し、図1に示すように、車輪1の表面から600mm離し、かつ、車輪1の軸中心から230mm外周側の位置に精密騒音計6を設置し、車輪1の回転中に車輪1から発生する騒音を測定した。なお、精密騒音計6の補正はFLAT(聴感補正を加えない状態)とし、動特性はFASTとした。
(1) 車輪の板部を覆う防音カバーの設置の有無による騒音評価
・試験1
まず、図2に示すように、車輪1を覆う防音カバー11を設置しない状態での騒音レベルを測定した。
試験速度は、軌条輪4の周速で200km/h 〜360km/h の間を10km/h の間隔に、また360km/h 〜400km/h の間を40km/h の間隔に設定した。
車輪1の回転中に車輪1から発生する騒音を測定精密騒音計6で測定した後、周波数分析器7にて周波数分析を行い、各速度での音圧レベルをオーバーオール値で評価した。
・試験2
次に、図3に示すように、車輪1を覆う防音カバー11を設置した状態での騒音レベルを測定した。ここで、防音カバー11の下限値、すなわち軌条輪4までの距離Dは、車両限界とした。
車両限界とは、一般には水平な直線軌道に設置した車両の断面形状の外郭線が越えてはならない上下、左右の限界を意味するが、ここでは上下方向の下側の限界からレールまでの距離を意味し、その具体的な数値は適用する車両に応じて相違する。すなわち、防音カバー11の下限位置は、対象とする車両の下限値に応じて決定する。また、図3に示した防音カバー11は、前記下限位置より軌条輪4側(実際の鉄道車両ではレール側)のみを開放しており、他の5面は閉じられた空間を構成している。
試験速度は、軌条輪4の周速で200km/h 〜360km/h の間を10km/h の間隔に、また360km/h 〜400km/h の間を40km/h の間隔に設定した。
車輪1の回転中に車輪1から発生する騒音を測定精密騒音計6で測定した後、周波数分析器7にて周波数分析を行い、各速度での音圧レベルをオーバーオール値で評価した。
そして、試験1の結果、すなわち防音カバー11を設置しない場合(図2)から、試験2の結果、すなわち防音カバー11を設置した場合(図3)の結果を差し引くことによって周囲に放射される騒音の低減効果を評価した。
その結果を図4に示す。図4に示すように、速度200km/h 以上の範囲で速度の上昇に伴って音圧レベルの低減効果を発揮し、最大5dB程度の騒音低減効果があった。
次に、軌条輪4の周速で280km/h 、320km/h 、360km/h 、400km/h のものについてそれぞれ1/3オクターブバンド処理を行い、試験1の結果から試験2の結果を差し引くことによって、周波数特性及びオーバーオール値の差を評価した。
その結果、図5に示すように、軌条輪4の周速度の上昇に伴い、特に800Hz以上の範囲で音圧レベルの低減効果が確認できた。最大低減効果は、中心周波数1000Hzで9.5dB程度であった。
(2) 防音カバーの形状変化による騒音評価
(2-1) 車輪1の上部領域を開放した防音カバー12の場合
図3の防音カバー11は、下限位置より軌条輪4側のみを開放し、車輪1の5面を囲うように覆うものであるため、鉄道車両用台車の機能部品と干渉し、設置が困難になる場合が予想される。そのため、車輪1の遮蔽範囲を緩和し、車輪1の上部領域を開放した防音カバー12の効果を確認した。
・試験3
試験3の試験条件を図6に示す。図6は下限位置より軌条輪4側だけでなく車輪1の上部領域をも開放した防音カバー12を設置した状態である。ここで、防音カバー12は、図6の実線で示した部分のみが遮蔽され、破線で示した部分は開放されている。
試験速度は、軌条輪4の周速で200km/h 〜360km/h の間を20km/h の間隔に、また360km/h 〜400km/h の間を40km/h の間隔に設定した。
車輪1の回転中に車輪1から発生する騒音を測定精密騒音計6で測定した後、周波数分析器7にて周波数分析を行い、各速度での音圧レベルをオーバーオール値で評価した。そして、試験1の結果から試験3の結果を差し引くことによって周囲に放射される騒音の低減効果を評価した。
試験1の結果から試験2の結果を差し引くことによって得られた低減効果と、試験1の結果から試験3の結果を差し引くことによって得られた低減効果を比較した結果を図7に、図7における軌条輪周速度が360km/h と400km/h の場合の遮蔽率と音圧レベル差の関係を示した図を図8に示す。ここで、図7及び図8に示した遮蔽率とは、図6に示した防音カバー12の遮蔽部分の長さLと、車輪直径dから車両限界Dを引いたもの(d−D)との比を表し、図3に示した、下限値より軌条輪4側のみを開放し、車輪1の5面を囲うように覆う防音カバー11を遮蔽率100%とする。
図7及び図8より、車輪1の上部領域を開放して遮蔽率を40%或いは70%とした、図6に示した防音カバー12であっても、図3に示した遮蔽率が100%の防音カバー11と音圧レベルの低減効果は同程度であることがわかる。すなわち、図6の防音カバー12の場合、遮蔽率を40%以上確保した場合は、遮蔽率が100%の防音カバー11と同程度の効果を得ることができる。
(2-2) 車輪の外側側面のみに設置する防音カバー
図3の車輪1の5面を囲うように覆う防音カバー11の、車輪1の上部領域のみを解放した図6の防音カバー12の場合、車輪1の上部領域に設置される機能部品との干渉を回避することができる。しかしながら、内側の機能部品との干渉が生じ、設置が困難になる場合が予想される。
そのため、図9に示すような、車輪1の外側側面のみを覆う防音カバー13、及び図10に示すような、前記防音カバー13における車輪1の上部領域を開放した防音カバー14の騒音低減効果を確認した。ここで、防音カバー14は実線で示すLの範囲のみを遮蔽し、破線で示す部分を開放したものである。
・試験4
試験4は、図9に示すように、車両限界より上部の車輪1の外側側面を全て覆う防音カバー13を有する条件である。
・試験5
試験5は、図10に示すように、図9の防音カバー13の上部領域を解放した防音カバー14を有する条件である。
試験4、試験5とも、試験速度は、軌条輪4の周速で200km/h 〜360km/h の間を20km/h の間隔に、また360km/h 〜400km/h の間を40km/h の間隔に設定した。
また、車輪1の回転中に車輪1から発生する騒音を測定精密騒音計6で測定した後、周波数分析器7にて周波数分析を行い、各速度での音圧レベルをオーバーオール値で評価した。
そして、試験1の結果から試験4の結果を差し引くことによって得られた低減効果と、試験1の結果から試験5の結果を差し引くことによって得られた低減効果を比較した。比較結果を図11に示す。ここで、図11に記載した遮蔽率とは、図10に示した防音カバー14の遮蔽部分の長さLと、車輪直径dから車両限界Dを引いたもの(d−D)との比を表し、下限値より軌条輪4側を除く外側側面を全て遮蔽する防音カバー13を遮蔽率100%とする。
図11より、図3に示した防音カバー11のように車輪1の5面を覆うものでなくても、図9に示した車輪1の外側側面のみを覆う防音カバー13でも充分な効果を奏することがわかる。さらに、図11より、車輪1の外側側面のみを覆う防音カバー13の、遮蔽範囲を車両限界から70%程度としても防音効果は同程度であることがわかる。
(3) 車体パネルを考慮した場合の防音効果
車体下部の騒音対策には、車体にパネルやカバーを設置する方法が公知であるが、その車体パネルを模擬した遮蔽板15を設置した上で、本発明の防音カバー13,14を設置した際の防音効果を確認した。
図12に転動音試験機の概略構成を示す。この図12に示す転動音試験機の構成においては、車体パネルを模擬した遮蔽板15を、実車相当の位置となるように、車輪1を支持する軸受2の近傍に設置した。
・試験6
試験6は、車体パネルを模擬した遮蔽板15を設置しただけの、すなわち図12に示す条件である。
・試験7
試験7は、車体パネルを模擬した遮蔽板15を設置し、さらに、車輪1に図9に示した車輪1の外側側面のみを覆う防音カバー13を設置した条件である。
・試験8
試験8は、車体パネルを模擬した遮蔽板15を設置し、さらに、車輪1に図10に示した車輪1の外側側面のみを覆い上部領域を解放した防音カバー14を設置した条件である。
試験6、試験7、試験8はともに、試験速度は、軌条輪4の周速で200km/h 〜360km/h の間を20km/h の間隔に、また360km/h 〜400km/h の間を40km/h の間隔に設定した。
また、それぞれ車輪1の回転中に車輪1から発生する騒音を測定精密騒音計6で測定した後、周波数分析器7にて周波数分析を行い、各速度での音圧レベルをオーバーオール値で評価した。
試験6の結果から試験7の結果を差し引くことによって得られた音圧レベルの低減効果と、試験6の結果から試験8の結果を差し引くことによって得られた音圧レベルの低減効果を比較した。
比較結果を図13に示す。防音カバー13又は防音カバー14で車輪1の外側側面を覆った場合は、遮蔽板15の有無に関係なく優れた効果を奏することがわかる。また、その遮蔽率を70%としても同様の効果を得ることができることがわかる。
すなわち、本発明によれば、車体下部から放射される騒音の対策として一般的に用いられる車体のパネルを設置しなくとも、本発明の防音カバー単体で騒音の低減効果を奏することがわかる。
本発明は、転動音試験機を用いた防音カバーの放射音低減効果試験の結果に基づいてなされたものである。
以下、本発明の鉄道車両用台車及びこの鉄道車両用台車を備えた鉄道車両の車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されるブレーキディスクを覆う防音カバーの実施例を図14〜図19に基づいて説明する。図14〜図19は車輪にブレーキディスクが設置されていない場合について説明する。
前記防音カバーは、例えば図14に示すように、台車枠21の軸箱22にボルト23を用いて取り付ける。図14では、車両限界よりレール側のみを開放し、車輪1の5面を囲うように覆う、図3で説明したタイプの防音カバー11を設置している。この図14に示した防音カバー11は、それぞれの側面を上部1枚、下部2枚の計6枚に分割し、角部を滑らかにして走行中に受ける空気を整流して、車体下部空力音の低減にも効果を奏するようにしたものを示している。
図15は台車枠21の軸箱22に取り付ける防音カバーの他の実施例を示したもので、(a)は図6で説明したタイプの防音カバー12、(b)は図9で説明したタイプの防音カバー13、(c)(d)は図10で説明したタイプの防音カバー14である。
これら図14及び図15に示した防音カバー11〜14は、それぞれの側面が上部1枚、下部2枚に分割している。上部を11a,12a,13a,14a、下部を11ba,12ba,13ba,14ba及び11bb,12bb,13bb,14bbで示す。なお、図14(b)、図15中の11c,12c,13c,14cはボルト23の貫通孔を示す。
前記図15(a)〜(c)は図14と同様、角部を滑らかにして整流作用を奏するようにしたものであるが、図15(d)は整流作用を奏するようにはしていない例である。
上記防音カバー11〜14は、図14に示したように軸箱22に取り付けるものに限らず、図16に示すように台車枠21のばね帽24に設置してもよい。この場合の防音カバーの基本形状は、軸箱22への取り付け用に設けた貫通孔11c〜14cの換わりにばね帽24への取付け部11dを設ける以外は軸箱22に取り付ける場合と同一である。
また、図示省略したが、キャリパブレーキ装置に設置してもよい。この場合の防音カバーの形状の一例を図17〜図19に示す。
図17の(a)は図3で説明したタイプの防音カバー11、(b)は図6で説明したタイプの防音カバー12である。また、図18は図10で説明したタイプの防音カバー14である。これら防音カバー11,12、14は角部を滑らかにして整流作用を奏するようにしている。一方、図10で説明したタイプの他の防音カバー14を示した図19の場合、整流作用を奏するようにしていない。
これら図17〜図19に示した防音カバーは、それぞれの側面を、上部2枚、下部1枚に分割し、それぞれ連結座11e,12e,14eでキャリパブレーキ装置に取り付けるものである。図17〜図19では、上部を11aa,12aa,14aa、及び11ab,12ab,14ab、下部を11b,12b,14bで示している。
本発明は上記した実施例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
例えば防音カバーの形状は上記した実施例に限らず、車輪、車軸、軸箱支持装置の構成を勘案して決めればよい。
その際、軸箱に取り付ける場合は、車輪と車軸の動きに合わせて防音カバーも動くので、内面寸法は車輪の寸法に準じて決める。一方、台車枠に取り付ける場合は、車輪と車軸の最大可動範囲に合わせて決める。
また、上記を勘案して防音カバーの形状を決める際、車両限界の下限位置より上部の領域の40%以上又は70%以上を遮蔽することが必要であるが、車両限界は対象とする車両によって異なるため、それぞれに応じた値とすればよい。また、対象車両に応じて防音カバーの形態を選択すればよい。
また、上記の実施例では、側面を3分割したものを示したが、鉄道車両用台車への装着時の作業性や製作の容易性を考慮して、一体構造や上部と下部の分割構造、或いは前部と後部の分割構造を適宜選択すればよい。
また、防音カバーの吸音特性を向上させるために、防音カバーの内面に吸音材を設ければ、より一層の騒音低減効果を期待できる。
上記の説明では、車輪の板部のみを覆う防音カバーについて説明したが、車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されたブレーキディスクを覆う防音カバーとすれば、車輪転動音のみならずブレーキディスクから放射される風切り音も低減できることは言うまでもない。
1 車輪
11〜14 防音カバー

Claims (5)

  1. 輪軸を回転自在に支持する鉄道車両用台車において、
    前記輪軸を構成する車輪の板部、或いは車輪にブレーキディスクが設置されている場合は、車輪の板部と車輪の板部に設置されたブレーキディスクを覆うように防音カバーを取り付けたことを特徴とする鉄道車両用台車。
  2. 前記防音カバーは、
    車両限界より上部を覆うものであって、
    レール側のみを開放して車輪の5面を囲うように覆うもの、又は、車輪の外側側面のみを全て覆うもの、又は、車輪の上部領域を除く車輪の外側側面のみを覆うものである場合は、車両限界より上部のうち、車輪直径から車両限界を除いた範囲の70%以上を覆うものであることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用台車。
  3. 前記防音カバーは、
    車両限界より上部を覆うものであって、レール側と車輪の上部領域を開放して車輪の4面を囲うように覆うものの場合は、車両限界より上部のうち、車輪直径から車両限界を除いた範囲の40%以上を覆うものであることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用台車。
  4. 前記防音カバーは、一体となした構造、又は上部と下部に分割したものを結合することによって一体となした構造、或いは車両進行方向の前部と後部に分割したものを結合することによって一体となした構造の何れかであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の鉄道車両用台車。
  5. 請求項1〜請求項4の何れかに記載の鉄道車両用台車を備えたことを特徴とする鉄道車両。
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