JP2015163657A - オレフィン系樹脂組成物及び積層体 - Google Patents

オレフィン系樹脂組成物及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】 各種の基材材料に対し格段に優れた接着性能を有するオレフィン系樹脂組成物並びに積層体を提供する。
【解決手段】 エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる、分子構造が直鎖状でかつランダム共重合である極性基含有オレフィン共重合体(A)と、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、30〜124℃以下であることを特徴とするオレフィン系樹脂(B)とを含むオレフィン系樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、1〜99,900重量部であることを特徴とするオレフィン系樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂とを含むオレフィン系樹脂組成物、並びにそれを用いた積層体に関し、より詳しくは、特定の極性基を含有した極性基含有オレフィン共重合体と特定範囲の融点を有したオレフィン系樹脂とを規定の割合で含有させたオレフィン系樹脂組成物であって、各種の基材材料に対し格段に優れた接着性能を有するオレフィン系樹脂組成物並びに積層体に係るものである。
オレフィン系樹脂は機械強度が高く、耐衝撃性や長期耐久性、耐薬品性、耐腐食性などに優れ、安価で、かつ成形性に優れ、更に環境問題や資源再利用性にも適合している為、産業用資材として重用され、例えば、射出成形、押出成形、吹込成形などによって、フィルム、積層体、容器、ブロー瓶などに成形されて、広範囲な用途に使用されている。更には、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)やアルミニウム箔などのガス遮断性材料などの基材と積層することにより、上記特性に加えてガス遮断性などの性質を付加させることができ、高機能の包装用材料や容器とすることが可能となる。
しかし、オレフィン系樹脂は非極性であり、積層材料に使用するに際しては、他の合成樹脂、金属、木材などの異種材料への接着強度が極めて低いか、接着しないという欠点がある。
そこで、異種材料との接着性を向上させるために、有機過酸化物を用いて極性基含有モノマーをオレフィン系樹脂にグラフトする方法が広く行われている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、この方法では、グラフト化反応と並行してオレフィン系樹脂分子鎖同士の分子間架橋、及びオレフィン系樹脂分子鎖の分子鎖切断などが発生するため、グラフト変性物にオレフィン系樹脂の優れた物性が維持されないという問題が発生する。例えば、分子間架橋によって不要な長鎖分岐が導入されることで溶融粘度の上昇や分子量分布の広域化が発生し、接着性や成形性に悪影響を及ぼす。また、分子鎖切断によってオレフィン系樹脂の低分子量成分が増加することにより、成形加工時に目ヤニや発煙が発生するといった問題点を呈している。
極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有量を高めることにより、極性の高い異種材料との接着性を上昇させられるが、グラフト変性によって多量の極性基含有モノマーをオレフィン系樹脂にグラフトすることは容易ではない。極性基含有モノマーの含有量を増やす方法として、例えば、グラフト変性に供する極性基含有モノマー量、及び有機過酸化物量を増やす方法が考えられる。その方法を用いた場合、オレフィン系樹脂の更なる分子間架橋や分子鎖切断につながり、機械物性、耐衝撃性、長期耐久性、成形性等の物性が損なわれる。また、オレフィン系樹脂中に残留する未反応の極性基含有モノマーや有機過酸化物の分解物の量が増加し、オレフィン系樹脂の劣化を早めたり、不快な臭気を発生させたりするという不具合も発生する。そのため、オレフィン系樹脂中の極性基含有モノマーの含量を高めようとしても、自ずと限界があった。
ところで、オレフィン系樹脂同士の分子間架橋やゲル化及び分子鎖の切断を生じさせずに、オレフィン系樹脂中に極性基含有モノマーを含量せしめる手段として、高圧ラジカル法重合プロセスを用いてエチレンと極性基含有モノマーとを共重合させ、極性基含有オレフィン共重合体を得る方法も開示されている(特許文献2〜4を参照)。なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いて極性基を導入した極性基含有オレフィン共重合体の分子構造例を図1(a)に示すが、この方法によれば、グラフト変性によって発生する問題点は解決され、極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有モノマーの含有量をグラフト変性と比較して高めることが可能である。しかし、重合プロセスが高圧ラジカル法であるため、得られた極性基含有オレフィン共重合体は多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に持つ分子構造となる。このために、遷移金属触媒を用いて重合される極性基含有オレフィン共重合体と比較して、低弾性率かつ機械物性の低い極性基含有オレフィン共重合体しか得られず、高強度が要求される用途への応用範囲は限定的であった。
一方、従来一般に用いられているメタロセン触媒を用いて、エチレンと極性基含有モノマーとを共重合させようとすると、触媒重合活性が低下し重合し難いとされていたが、近年、特定のリガンドが遷移金属に配位した触媒の存在下で極性基含有オレフィン共重合体を重合する方法が提案されている(特許文献5〜8を参照)。これらの方法によれば、高圧ラジカル法プロセスで得られる極性基含有オレフィン共重合体と比較して高い弾性率と機械強度を有し、極性基含有量を高めることが可能だが(なお、遷移金属触媒を用いて重合された極性基含有オレフィン共重合体の分子構造のイメージ図を図1(b)(c)に示す。)、これらの文献に記載の方法は主にメチルアクリレートやエチルアクリレートといったアクリレート基を含むモノマーや、酢酸ビニルといった特定の極性基含有モノマーとエチレンもしくはα−オレフィンとの共重合体に主眼を置いており、これらの官能基を有する極性基含有オレフィン共重合体は極性の高い異種材料との接着性が十分ではない。また、極性の高い異種材料との具体的な接着性能についても触れられておらず、接着性能を目的とした、特定の極性基含有オレフィン共重合体としての使用は開示されていない。
一方、一般に、極性の高い異種材料と優れた接着性を発現させることが可能な極性基として、エポキシ基が知られているが、通常の触媒重合法では、エポキシ基含有コモノマーを共重合するのは困難であり、現状、主に市販化されているエポキシ基を含んだ極性オレフィン共重合体は高圧ラジカル重合プロセスによるものである。
なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いずに重合された極性基含有オレフィン共重合体の例としては、いわゆるマスキング法と呼ばれる、特定のメタロセン系触媒及び十分な量の有機アルミニウム(極性基含有モノマーと等モル以上)の存在下で重合する製法発明の中に、1,2−epoxy−9−deceneとエチレン、及び1−ブテンを共重合させた極性基含有オレフィン共重合体が示されている(特許文献9を参照)。しかし、この発明によると、極性基含有オレフィンの共重合に際し、多量の有機アルミニウムを必要とし、製造コストが高くならざるを得ない。また、多量の有機アルミニウムは不純物として極性基含有オレフィン共重合体中に存在する事となり、機械物性の低下や変色、劣化の促進を引き起こし、これを除去するにはコストアップにつながる。更に発明の効果は、主として高い重合活性で極性基含有オレフィン共重合体を製造することであり、極性の高い異種材料との具体的な接着性能について触れられていない。しかもこの特許文献には、極性基含有オレフィン共重合体が極性の高い異種材料と十分な接着性を得るために必要な樹脂物性についても全く触れられておらず、高い接着性能を目的とした極性基含有オレフィン共重合体としての使用は開示されていない。
遷移金属触媒の存在下に重合される極性基含有オレフィン共重合体の接着性を向上させる手法として、極性基含有オレフィン共重合体に含有されるエポキシ基含有量を高める方法が考えられる。しかし、重合に供するエポキシ基含有モノマーの量を増加させる等の方法により共重合体中のエポキシ基含有量を高めた場合、接着性の向上は見込まれるものの、エポキシ基同士の自己反応も発生しやすくなる。極性基含有オレフィン共重合体中のエポキシ基同士が自己反応する事により、分子鎖架橋や過度の架橋によるゲル化が進行し、極性基含有オレフィン共重合体が有している、優れた機械物性や耐衝撃性、長期耐久性等が低下する上、溶融粘度の上昇による成形性の低下も起こる。その為、極性基含有オレフィン共重合体中のエポキシ基含有量を高める事による接着性能の向上策は、機械物性等との両立が困難となる問題点を抱えている。
ところで、特許文献2〜特許文献9では、極性基含有オレフィン共重合体や、極性基含有オレフィン共重合体の製造方法、さらには特定の基材との接着性については触れられているものの、極性基含有オレフィン共重合体にオレフィン系樹脂をブレンドした場合の具体的な性能、例えば接着性等の物性についてはなんら言及されていない。
以上の従来法を鑑みると、オレフィン共重合体への極性基の導入方法である、グラフト変性、高圧ラジカル法重合プロセス、多量の有機アルミニウムを用いる方法などのそれぞれの問題点を内包する、いずれの方法にもよらずに製造されるエポキシ基を含んだ極性基含有オレフィン共重合体を構成成分として含み、極性基含有オレフィン共重合体中のエポキシ基含有量を高める手法を用いることなく、接着性能をより向上させる方法の開発が望まれていると言える。
特開昭50−004144号公報 特許第2516003号公報 特開昭47−23490号公報 特開昭48−11388号公報 特開2010−202647号公報 特開2010−150532号公報 特開2010−150246号公報 特開2010−260913号公報 特許第4672214号公報
本発明は、背景技術として前述した従来の各問題点に鑑み、それぞれの問題点を内包する、従来のいずれの方法にもよらずに、簡易で効率の良い重合法により製造された、直鎖状の分子構造を有し、かつランダム共重合体である極性基含有オレフィン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物を提案するものであって、極性基含有オレフィン共重合体の有する優れた機械物性、耐衝撃性、長期耐久性、成形性等の維持と異種材料との接着性の向上を両立させる事を目的とし、極性基含有オレフィン共重合体を含む樹脂組成物の提供を発明の課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、特定の分子鎖構造を持った極性基含有オレフィン共重合体に対し、特定範囲の融点を有したオレフィン系樹脂を規定の配合割合でブレンドする事により極性基含有オレフィン共重合体の優れた機械物性、耐衝撃性等を維持しつつ、接着性能を向上させることを見い出した。本発明によれば、特定範囲の融点を有したオレフィン系樹脂を極性基含有オレフィン共重合体にブレンドする事によって、極性基含有オレフィン共重合体を単独で用いる場合に比べて、異種材料との接着性能を飛躍的に向上させられ、かつ、オレフィン系樹脂組成物中のエポキシ基含量を低く抑えられる為、エポキシ基同士の自己反応による分子鎖の架橋やゲル化、それに伴う機械物性や耐衝撃性、成形性等を損なう恐れも回避する事もできる。
本発明の目的は、極性基含有オレフィン共重合体に特定範囲の融点を有するオレフィン系樹脂を規定の配合割合でブレンドする事により、極性基含有オレフィン共重合体単独で用いるよりも異種材料に対する接着性能を向上させた、オレフィン系樹脂組成物を提供する事である。
オレフィン系樹脂組成物の構成成分としては、エポキシ基含有モノマーを重合することで得られる特定の極性基含有オレフィン共重合体を主要成分として必須で含み、かつ、特定範囲の融点を有したオレフィン系樹脂がさらに、規定の組成比率範囲で混合されている事が必要である。それによって、異種材料との接着性が飛躍的に向上され、優れた接着性能を有するオレフィン系樹脂組成物の製造が可能となり、積層体へ応用して顕著な効能を示すことができる。
本発明は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体(A)と、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、30〜124℃であることを特徴とするオレフィン系樹脂(B)とを含むオレフィン系樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、1〜99,900重量部であることを特徴とするオレフィン系樹脂組成物を基本発明(第1の発明)とする。
本発明の基本発明に追従する実施態様発明である、下位の各発明を順次記載すると、第2の発明は、該エポキシ基を含む極性基含有モノマーが、下記構造式(I)または下記構造式(II)で表されるエポキシ基を含む極性基含有モノマーであることを特徴とする第1の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
構造式(I)
Figure 2015163657
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基を示し、R〜Rのいずれか1つはエポキシ基を含む特定の官能基である。
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)

構造式(II)
Figure 2015163657
(式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基を示し、R〜Rのいずれか1つはエポキシ基を含む特定の官能基である。また、mは0〜2である。
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
本発明の第3の発明は、該極性基含有オレフィン共重合体(A)における、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位量が99.999〜80mol%、エポキシ基を含む極性基含有モノマーに由来する構造単位量が20〜0.001mol%であることを特徴とする第1又は第2の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第4の発明は、オレフィン系樹脂(B)が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれるモノマーを重合する事で得られる単独重合体及び/又は共重合体であることを特徴とする、第1〜第3の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第5の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)の、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、50℃〜140℃の範囲であることを特徴とする、第1〜第4の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第6の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)が、キレート性配位子を有する第5〜11族金属の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、第1〜第5の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第7の発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)が、パラジウム又はニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、第1〜第6の発明におけるオレフィン系樹脂組成物である。
本発明の第8の発明は、第1〜第7の発明におけるオレフィン系樹脂組成物からなる層と、基材層とを少なくとも含む積層体である。
本発明の第9の発明は、基材層が、オレフィン系樹脂、極性の高い熱可塑性樹脂、金属、無機酸化物の蒸着フィルム、紙類、セロファン、織布、不織布から選ばれることを特徴とする、第8の発明における積層体である。
本発明の第10の発明は、基材層が、基材層が、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂であることを特徴とする、第9の発明における積層体である。
なお、本発明は、極性基含有オレフィン共重合体(A)に対し、特定範囲の融点を有したオレフィン系樹脂(B)を規定の組成比率でブレンドする事により、極性基含有オレフィン共重合体(A)単独で用いた場合よりも接着性能が向上し、格段に優れた接着性能を有するオレフィン系樹脂組成物(C)を提供するものであり、かかる組成物は従来の特許文献からは窺えない。
本発明のオレフィン系樹脂組成物は、簡易で効率の良い重合法により製造された、特定の分子構造を有する極性基含有オレフィン共重合体と、特定のオレフィン系樹脂とを規定の配合比率で混合することにより、極性基含有オレフィン共重合体単独で用いた場合よりも接着性が向上され、他の基材との高い接着性を有しながら、経済的にも有利なオレフィン系樹脂組成物であり、工業的に有用な積層体および複合化製品の製造を可能にした。なお、かかる顕著な効果は、後述する本発明の各実施例のデータ及び各実施例と各比較例との対照により実証されている。本発明による極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂とを規定の配合比率で混合したオレフィン系樹脂組成物は各種の極性の高い基材との優れた接着性を有し、さまざまな用途、例えば、押出成形、吹込成形などによって、多層フィルム、多層ブロー瓶などに成形され、広範囲な用途に使用可能である。
高圧ラジカル法重合プロセスにより重合されたオレフィン共重合体(a)、及び金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体(b)(c)の分子構造のイメージ図である。
以下においては、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)、及び極性基含有オレフィン共重合体(A)、オレフィン系重合体(B)について、更には、それらの製造方法並びにその組成物を用いた積層体について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
〔I〕極性基含有オレフィン共重合体(A)
(1)極性基含有オレフィン共重合体(A)の基本的な特徴
本発明における主要成分である、極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとの共重合体との共重合体であって、該モノマー単位がランダムに共重合したランダム共重合体であり、かつ分子構造が実質的に直鎖状の共重合体である。なお、極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造や製造方法は、本発明の関連発明である、特願2013−67402に記載の極性基含有オレフィン共重合体と、基本的には同一である。
エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを、共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体は、グラフト変性や高圧ラジカル法重合その他前述した重合法において既に公知のものであるが、本発明においては、かかる公知の極性基含有オレフィン共重合体に対して、遷移金属の存在下に重合されたランダム共重合体であって、その分子構造が実質的に直鎖状であるという要件その他を備えており、これは、公知の極性基含有オレフィン共重合体とは顕著に異なるものである。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを、遷移金属触媒(第2〜3の発明に示される)の存在下に重合することで得られることを特徴とする。重合に供されるエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンは特に限定されないが、好ましくは、エチレンを必須で含み、必要に応じて炭素数3〜20のα−オレフィンをさらに含んでも良い。重合に供されるエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンは単独で用いても良いが、2種類以上を用いても良い。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてならば、その他の極性基を含有しないモノマーをさらに重合に供しても良い。エチレン及び/又はα−オレフィンに由来する構造単位の割合は、通常であれば80〜99.999mol%、好ましくは85〜99.99mol%、更に好ましくは90〜99.98mol%、より好適には95〜99.97mol%の範囲から選択されることが望ましい。
(2)α−オレフィン
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。より好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンから選択されるα−オレフィンであり、より好適には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択されるα−オレフィンである。重合に供するα−オレフィンは単独でも良いし、2種以上であっても構わない。
(3)極性基を含有しないモノマー
本発明における極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有するモノマーであり、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素のみであれば限定されず、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー、環状オレフィン等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ノルボルネンである。
(4)極性基含有モノマー
本発明に関わる極性基含有モノマーは、エポキシ基を含有する必要がある。エポキシ基を持った極性基含有オレフィン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物であれば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着性を付与したフッ素樹脂などの極性基を持った熱可塑性樹脂、及びアルミニウム、スチ−ルなどの金属材料等と積層接着することが可能となる。
本発明に関わる極性基含有モノマーは、好ましくは下記構造式(I)または構造式(II)で示されるエポキシ基を含むモノマーである。
構造式(I)
Figure 2015163657
(構造式(I)中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基を示し、R〜Rのいずれか1つ以上がエポキシ基を含む特定の官能基である。
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
構造式(II)
Figure 2015163657
(構造式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基を示し、R〜Rのいずれか1つはエポキシ基を含む特定の官能基である。また、mは0〜2である。特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
エポキシ基含有モノマーの分子構造は特に限定されないが、遷移金属触媒存在下における共重合のしやすさや、エポキシ基含有モノマーの取扱い等を考慮すると、構造式(I)で示されるエポキシ基含有モノマーがより好ましい。更には、構造式(I)で示されるエポキシ基含有モノマーのうち、R1が水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R2、R3、R4はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基のうちいずれかであり、かつ、R2〜R4のいずれか1つ以上がエポキシ基を含む特定の官能基であるモノマーが、より好ましい。
(特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、さらに、炭化水素基、カルボニル基、エーテル基のいずれかを更に必須で含む、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
上記構造式(I)又は構造式(II)で示されるエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、5−ヘキセンエポキシド、6−ヘプテンエポキシド、7−オクテンエポキシド、8−ノネンエポキシド、9−デセンエポキシド、10−ウンデセンエポキシド、12−ドデセンエポキシドなどのω−アルケニルエポキシド類、2−メチル−6−ヘプテンエポキシド、2−メチル−7−オクテンエポキシド、2−メチル−8−ノネンエポキシド、2−メチル−9−デセンエポキシド、2−メチル−10−ウンデセンエポキシドなどの分子構造内に分岐を持つω−アルケニルエポキシド類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、o−アリルフェノールのグリシジルエーテル、m−アリルフェノールのグリシジルエーテル、p−アリルフェノールのグリシジルエーテル等の不飽和グリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、p−スチリルカルボン酸グリシジル、エンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−メチル−2,3−ジカルボン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ブテントリカルボン酸、等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、エポキシヘキシルノルボルネン、エポキシシクロヘキサンノルボルネン、メチルグリシジルエーテルノルボルネン等のエポキシ基を含む環状オレフィン、その他、2−(o−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)エチレンオキシド、2−(o−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−ビニルフェニル)プロピレンオキシド、2−(o−アリルフェニル)プロピレンオキシド、2−(p−アリルフェニル)プロピレンオキシド、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、アリル−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、2,3‐エポキシ‐5‐ビニルノルボルナン、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等のエポキシ基を含むモノマーを挙げる事が出来る。これらの中では特に、下記構造式で示される、1,2−エポキシ−9−デセン、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等が好ましい。
重合に供されるエポキシ基含有モノマーは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いても良い。
Figure 2015163657
1,2−epoxy−9−decene
Figure 2015163657
4−hydroxybutyl acrylate glycidylether
Figure 2015163657
glycidyl methacrylate
Figure 2015163657
1,2−epoxy−4−vinylcyclohexane
エポキシ基を含む極性基含有オレフィン共重合体は、含有するエポキシ基同士の反応によって、分子鎖間架橋が起こる場合がある。本発明の主旨を逸脱しない範囲においてならば、分子鎖間架橋が起こっていても差し支えない
(4)極性基含有オレフィン共重合体(A)の構造単位
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィン及びエポキシ基含有モノマー、それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。そして、極性基含有オレフィン共重合体中の各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
(5)エポキシ基含有モノマーの構造単位量
これらのエポキシ基含有モノマーに由来する構造単位量は、通常20〜0.001mol%の範囲、好ましくは15〜0.01mol%の範囲、より好ましくは10〜0.02mol%の範囲、より好適には5〜0.03mol%の範囲から選択され、必ず本発明の極性基含有オレフィン共重合体に存在していることが好ましい。もし、この範囲よりエポキシ基含有モノマーに由来する構造単位量が少なければ、極性の高い異種材料との接着性が十分ではなく、この範囲より多ければ十分な機械物性が得られない。
(6)エポキシ基含有モノマーの構造単位量の測定方法
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体中のエポキシ基の構造単位量は1H−NMRスペクトルを用いて求められる。1H−NMRスペクトルは、例えば、以下の方法によって測定することができる。
試料200〜250mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行った。1H−NMRはパルス角1°、パルス間隔1.8秒、積算回数を1,024回以上として測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチルプロトンのピークを0.088ppmとして設定し、他のプロトンによるピークの化学シフトはこれを基準とした。13C−NMRはパルス角90°、パルス間隔20秒、積算回数512回以上とし、プロトン完全デカップリング法で測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
〔4―ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4−HBAGE)の構造単位量〕
0.3〜3.1ppmの範囲の極性基含有オレフィン共重合体によるピークの積分強度和をIA1とし、2.4、2.6、3.0、3.3、3.4、3.5、及び4.1ppmに生じる共重合体中に含まれる4―HBAGEのプロトンによるピークの積分強度の和をIX1とした時に、以下の式に従って求めた。
4―HBAGE含有量 (mol%)=40×IX1/(IA1−0.6×IX1)
〔1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(EP−VCH)の構造単位量〕
0.3〜3.2ppmの範囲の極性基含有オレフィン共重合体によるピークの積分強度和をIA2とし、3.0ppm付近に生じる共重合体中に含まれるEP−VCHのプロトンによるピークの積分強度の和をIX2とした時に、以下の式に従って求めた。
EP−VCH含量 (mol%) = 100×IX2/(0.5×IA2−2×IX2)
〔グリシジルメタクリレート(GMA)の構造単位量〕
0.3〜3.2ppmの範囲の極性基含有オレフィン共重合体によるピークの積分強度和をIA3とし、2.5、2.6、3.1、3.9、及び4.3 ppmに生じる共重合体中に含まれるGMAのプロトンによるピークの積分強度の和をIX3とした時に、以下の式に従って求めた。
GMA含有量 (mol%)=80×IX3/(IA3−0.8×IX3)
(7)極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとエポキシ基含有モノマーの共重合体のランダム共重合体であることが望ましい。
本発明における極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造例を下記段落に示す。ランダム共重合体とは、下記段落に示した分子構造例のA構造単位とB構造単位の、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。また、極性基含有オレフィン共重合体の分子鎖末端は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンであっても良く、エポキシ基含有モノマーであっても良い。下記のように、本発明における極性基含有オレフィン共重合体の分子構造(例)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンとエポキシ基含有モノマーとが、ランダム共重合体を形成している。
Figure 2015163657

Figure 2015163657
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、遷移金属触媒の存在下で製造されることを特徴としており、その分子構造は直鎖状である。高圧ラジカル重合法プロセスにより重合されたオレフィン共重合体のイメージ図を図1(a)に、金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体のイメージ図を図1(b)(c)に、それぞれ例示した様に、製造方法によってその分子構造は異なる。この分子構造の違いは製造方法を選択する事によって制御が可能であるが、例えば、特許公報「特開2010−150532号公報」に記載されている様に、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定する事ができる。具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が40度以上である場合、その分子構造は図1(b)(c)に示されるような、長鎖分岐を全く含まないか、機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む構造を示す。また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が40度より低い場合、その分子構造は図1(a)に示されるような、長鎖分岐を過多に含む構造を示し、機械的強度が劣るものとなる。回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δは分子量分布と長鎖分岐の両方の影響を受けるが、Mw/Mn≦4、より好ましくはMw/Mn≦3のものに限れば長鎖分岐の量の指標になり、長鎖分岐が多いほどδ(G*=0.1MPa)値は小さくなる。なお、Mw/Mnが1.5以上であれば、長鎖分岐をもたない場合でもδ(G*=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
(8)極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn)
極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,000,000、更に好ましくは8,000〜800,000の範囲であることが望ましい。Mwが1,000未満では機械強度や耐衝撃性といった物性が充分ではなく、2,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる。
本発明に関わる重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
本発明に関わるGPCの測定方法は以下の通りである。
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の、(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
(9)極性基含有オレフィン共重合体(A)の融点
本発明に関わるオレフィン系樹脂(A)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。最大ピーク温度とは、DSC測定において、縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線に複数ピークが示された場合、そのうちベースラインからの高さが最大であるピークの温度の事を示し、ピークが1つだった場合には、そのピークの温度の事を示している。
ポリエチレンを想定した場合、融点は50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
(10)極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造方法
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、遷移金属触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを共重合させることによって得られる。
(11)極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合触媒
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造に用いる重合触媒の種類は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを共重合することが可能なものであれば限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物が挙げられる。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
さらに、本発明の遷移金属錯体の遷移金属は、Mがニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)及びロジウム(III)からなる群から選択される元素であることが、さらには第10族の元素であることが重合活性の観点から好ましく、特に価格等の観点から、ニッケル(II)が好ましい。キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位( bidentate )又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P,O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N,O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ−トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
キレート性配位子から得られる金属錯体の構造は、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、アリールアルシン化合物又はアリールアンチモン化合物が配位した下記構造式(A)及び/又は(B)で表される。
Figure 2015163657
Figure 2015163657
(構造式(A)、(B)において、Mは、元素の周期表の第5〜11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述の遷移金属を表す。Xは、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。Yは、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。Eは、リン、砒素又はアンチモンを表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR、CO、COM’、C(O)N(R、C(O)R、SR、SO、SOR、OSO、P(O)(OR−y(R)y、CN、NHR、N(R、Si(OR−x(R)x、OSi(OR−x(R)x、NO、SOM’、POM’、P(O)(ORM’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。なお、RとRが互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。Rは、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Lは、Mに配位したリガンドを表す。また、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。)より好ましくは、下記構造式(C)で表される遷移金属錯体である。
Figure 2015163657
(構造式(C)において、Mは、元素の周期表の第5〜11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述の遷移金属を表す。Xは、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。Yは、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。Eは、リン、砒素又はアンチモンを表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR、CO、COM’、C(O)N(R、C(O)R、SR、SO、SOR、OSO、P(O)(OR−y(R)y、CN、NHR、N(R、Si(OR−x(R)x、OSi(OR−x(R)x、NO、SOM’、POM’、P(O)(ORM’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。なお、R8〜R11から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。Rは、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。Lは、Mに配位したリガンドを表す。また、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。)
ここで、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物からなる触媒としては、代表的に、いわゆる、SHOP系及びDrent系と称される触媒が知られている。SHOP系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、WO2010‐050256号公報を参照)。また、Drent系は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−202647号公報を参照)。
(12)有機金属化合物
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造において、エポキシ基含有モノマーと有機金属化合物とを接触させた後、前記の遷移金属触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを共重合させることにより重合活性をより高められる。
有機金属化合物は、置換基を有してもよい炭化水素基を含んだ有機金属化合物であり、下記構造式(H)で示すことができる。
30 3030 m−n 構造式(H)
(式中、R30は、炭素原子数1〜12の置換基を有してもよい炭化水素基を示し、M30は、周期表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群から選択される金属、X30は、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは、M30の価数、nは、1〜mである。)
上記構造式(H)で示される有機金属化合物としては、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム等のアルキルアルミニウム類、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のアルキルアルミニウムハライド類が挙げられ、好ましくはトリアルキルアルミニウムが選択される。より好ましくは炭素数が4以上の炭化水素基を有するトリアルキルアルミニウムが、さらに好ましくは炭素数が6以上の炭化水素基を有するトリアルキルアルミニウムが、より好適にはトリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムが選択され、トリ−n−オクチルアルミニウムが最も好適に使用する事ができる。
アルミニウム(Al)の残留量
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の1g中に残留するアルミニウム(Al)量は、100,000μgAl/g以下が好ましく、70,000μgAl/g以下がより好ましく、20,000μgAl/g以下が更に好ましく、10,000μgAl/g以下が特に好ましく、5,000μgAl/g以下が好適であり、1,000μgAl/g以下がより好適であり、500μgAl/g以下が最も好適である。これよりも多い場合、極性基含有オレフィン共重合体(A)の機械物性の低下、重合生成物の変色や劣化の促進等が起こる。アルミニウム(Al)の残留量は可能な範囲で少ない方が良く、例えば、1μgAl/g程の極少量であっても良いし、0μgAl/gであっても構わない。なお、μgAl/gは極性基含有オレフィン共重合体1g中に含まれるアルミニウム(Al)の量をμg単位で表していることを意味する。
アルミニウム(Al)量
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム(Al)量を、得られた極性基含有オレフィン共重合体の収量で除した値として算出することができる。
また、極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量はアルキルアルミニウムの重合仕込み量から算出しているが、蛍光X線分析や誘導結合プラズマ発光(ICP)分析により測定しても良い。蛍光X線分析やICP分析を用いる場合は、例えば、以下の方法によって測定することができる。
蛍光X線分析
測定試料を3〜10g秤量し、加熱プレス機で加熱加圧成型して直径45mmの平板状サンプルを作製する。測定は平板状サンプルの中心部直径30mmの部分について行い、理学電気工業社製の走査型蛍光X線分析装置「ZSX100e」(Rh管球4.0kW)を用いて、以下の条件で測定する。
・X線出力:50kV−50mA
・分光結晶:PET
・検出器:PC(プロポーショナルカウンター)
・検出線:Al−Kα線
アルミニウム(Al)量は、予め作成した検量線と上記条件で測定した結果から求める事が出来る。検量線は複数のポリエチレン樹脂のアルミニウム(Al)量をICP分析にて測定し、それらポリエチレン樹脂を上記の条件でさらに蛍光X線分析する事で作成する事ができる。
誘導結合プラズマ発光(ICP)分析
測定試料及び特級硝酸3ml、過酸化水素水(過酸化水素含量30重量%)1mlをテフロン(登録商標)製容器に入れ、マイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製 MLS−1200MEGA)を用い、最大500Wで加熱分解操作を実施し、測定試料を溶液化する。溶液化した測定試料をICP発光分光分析装置(サーモジャーレルアッシュ社製 IRIS−AP)に供することによりアルミニウム(Al)量が測定できる。アルミニウム(Al)量の定量はアルミニウム元素濃度が既知の標準液を用いて作成した検量線を用いて行う。
(13)極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合方法
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合方法は限定されない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報に開示されている。
〔II〕オレフィン系樹脂(B)
(1)オレフィン系樹脂(B)の基本的な特徴
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)は、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法により得られる、エチレン単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られる単独重合体、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを少なくとも1種含むオレフィン系共重合体から選択する事が出来る。
(2)α−オレフィン
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。より好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンから選択されるα−オレフィンであり、より好適には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択されるα−オレフィンである。重合に供するα−オレフィンは単独でも良いし、2種以上であっても構わない。
(3)単独重合体
本発明に関わる単独重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種類のモノマーのみを重合して得られる。より好ましい単独重合体は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、1−オクテン単独重合体、1−ドデセン単独重合体等であり、さらに好ましくはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体である。
(4)オレフィン系共重合体
本発明に関わるオレフィン系共重合体は、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、環状オレフィン、その他の極性基を含有しないモノマー、極性基を含有するモノマー、から選択されるモノマーのうち2種以上を重合する事で得られる共重合体であって、エチレンもしくは炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを少なくとも1種類以上を含有してなるオレフィン系共重合体である。重合に供されるモノマーは2種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。オレフィン系共重合体として好ましいのは、エチレンを必須で含み、さらに炭素数3〜20のα−オレフィンを1種以上含む共重合体、エチレンを必須で含み環状オレフィンを1種以上含む共重合体である。更に好ましいのはエチレンを必須で含み、さらに、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択される1種、もしくは2種以上を含む共重合体、エチレンとノルボルネンの共重合体である。
(5)環状オレフィン
本発明に関わる環状オレフィンは、例えば、シクロヘキセン及びシクロオクテン等の単環状オレフィン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環状オレフィン、これらのオレフィンに官能基が結合した置換体などが挙げられる。なかでも、好ましい環状オレフィンとしてはノルボルネンが挙げられる。ノルボルネンが共重合されたオレフィン系共重合体は一般に、主鎖骨格が脂環構造であるため低吸湿性を有し、また、その付加重合体は耐熱性にも優れる。
(6)極性基を含有しないモノマー
本発明に関わる極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有し、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素からなるモノマーである。上記のエチレンとα-オレフィンを除くと、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンである。
(7)極性基を含有したオレフィン系共重合体
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)として、極性基含有オレフィン共重合体(A)と分子構造、製造方法、物性範囲が異なる極性基を含有したオレフィン系共重合体を、適宜使用する事ができる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の極性基を含有したオレフィン系共重合体は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと、極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体であれば特に限定されない。エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーは1種であっても2種以上でも良く、また、極性基を含有したビニルモノマーは1種であっても2種以上でも良い。また、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体の重合に供せられるモノマーは2種であっても、3種以上であっても良い。エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体として好ましいのは、エチレンと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体である。
エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合に供される、極性基を含有したビニルモノマーは限定されないが、例えば、カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)、エステル基含有モノマー(b)、ヒドロキシル基含有モノマー(c)、アミノ基含有モノマー(d)、シラン基含有モノマー(e)から選択する事が出来る。
カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸又はこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、酢酸ビニル、ペンテン酸などの不飽和モノカルボン酸が挙げられる。エステル基含有モノマー(b)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(n−、iso−)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、tert−)ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、特に好ましいものとしてはアクリル酸メチルを挙げることができる。ヒドロキシル基含有モノマー(c)としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アミノ基含有モノマー(d)としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。シラン基含有モノマー(e)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセチルシラン、ビニルトリクロロシランなどの不飽和シラン化合物が挙げられる。
(8)オレフィン系樹脂の製造方法
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の製造方法は限定されないが、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法を例示する事ができる。オレフィン系樹脂(B)は、例えば、特公昭55−14084号公報、特公昭58−1708号公報、特開平08−301933号公報、特開平09−286820号公報、特開平11−228635号公報、特開2003−064187号公報、特開2000−109521号公報、特表2003−519496号公報、特表2003−504442号公報、特表2003−531233号、特開平8−325333号公報、特開平9−031263号公報、特開平9−087440号公報、特開2006−265387号公報、特開2006−265388号公報、特開2006−282927号公報、特表2001−525457号公報、特表2004−531629号公報、特開2005−120385号公報、特開昭58−19309号公報、特開昭59−95292号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭60−35009号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報W091/04257号明細書等、に記載された各種の製造方法によって製造する事が可能である。
(9)オレフィン系樹脂(B)の密度
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の密度は、JIS K7112に準拠して測定される。ポリエチレンを想定した場合、0.840〜0.932g/cmが好ましく、0.840〜0.928g/cmがより好ましく、0.840〜0.922g/cmが更に好ましく、0.840〜0.915g/cmが好適であり、0.840〜0.900g/cmがより好適である。この範囲より高ければ接着性が劣るものとなる。本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)は柔軟であるほど、すなわち密度が低いほど接着性が向上する。上記理由により、下限は特に制限されないがポリエチレンを想定した場合、密度が0.840g/cmを下回るオレフィン系樹脂を製造することは困難である。
一方で、密度が0.890g/cm〜0.932g/cmのオレフィン系樹脂(B)を用いると、接着性だけではなく耐熱性も兼ね備えた樹脂組成物を得ることができる。
(10)オレフィン系樹脂(B)の融点
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。
本発明で用いるオレフィン系樹脂の融点は30〜124℃であることが必要であり、30〜120℃がより好ましく、40〜115℃が更に好ましく、40〜110℃が好適であり、40〜100℃がより好適である。この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。本発明に用いるオレフィン系樹脂(B)は柔軟であるほど、すなわち融点が低いほど接着性が向上する。上記理由により、下限は特に制限されないがポリエチレンを想定した場合、融点30℃を下回るオレフィン系樹脂を製造することは困難である。
なお、融点が90℃〜124℃であるオレフィン系樹脂(B)を用いると、接着性だけではなく耐熱性も兼ね備えた樹脂組成物を得ることができる。
また、DSC測定の吸熱曲線のピーク面積から算出される融解熱量△H(J/g)はオレフィン系樹脂の結晶化度に依存するため、オレフィン系樹脂の結晶化度が低くなるにつれ、△Hは減少し、吸熱曲線のピークが観測されにくくなる。すなわち、結晶化度の低いオレフィン系樹脂では吸熱曲線の最大ピーク温度で定義される融点が測定できない場合がある。本発明の趣旨は柔軟なオレフィン系樹脂をブレンドすることであり、融点が定義できない場合であっても、結晶化度の低い柔軟な樹脂であれば、そのような樹脂を用いても差し支えない。(融解熱量△H(J/g)とはDSC測定において縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線のピーク面積から算出される値であり、試料1g中に含まれる結晶が融解する際に吸収される総熱エネルギー量をJ単位で表したものである。)
〔III〕オレフィン系樹脂組成物(C)
(1)オレフィン系樹脂組成物(C)の基本的な特徴
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)は、極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対してオレフィン系樹脂(B)を1〜99,900重量部、より好ましくは1〜99,000重量部、更に好ましくは1〜90,000重量部、いっそう好ましくは1〜50,000重量部、特に好適には1〜19,900重量部を配合したオレフィン系樹脂組成物である。オレフィン系樹脂(B)の配合量が1重量部より少なくても、また、99,900重量部より多くても、オレフィン系樹脂組成物(C)の接着性が劣るものとなる。
オレフィン系樹脂組成物(C)に含まれる極性基含有オレフィン共重合体(A)は単独であっても良く、複数を用いても良い。また、オレフィン系樹脂組成物(C)に含まれるオレフィン系樹脂(B)は単独であっても良く、複数を用いても良い。
(2)オレフィン系樹脂組成物(C)の製造方法
オレフィン系樹脂組成物(C)は公知の方法で製造することができ、例えば、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により添加される他成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機等、などを用いて溶融混練する方法、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により添加される他成分を適当な良溶媒(例えば、へキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、キシレンなどの炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去する方法で製造することができる。
(3)添加剤
オレフィン系樹脂組成物(C)には、本発明の組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材、導電材などの添加剤を配合しても良い。
(4)その他の成分
オレフィン系樹脂組成物(C)には、本発明の組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、各種の樹脂改質材などを配合してもよい。その成分としては、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは単独でも混合物でもよい。
〔IV〕積層体
(1)積層体の材料
本発明に関わる積層体は、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物からなる層と基材層とを含む積層体であって、該基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、接着性を有するフッ素樹脂、アルミニウム、スチールなどの金属材料、などの基材を例示することができる。
本発明に関わる基材の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などのポリエチレン系樹脂、アイオノマー、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、芳香族ポリエステル類などのポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、接着性フッ素樹脂、セロハンなどセルロース系ポリマーのようなフィルム形成能を有する熱可塑性樹脂フィルム又はシート(及びこれらの延伸物、印刷物)、アルミニウム、鉄、銅、又はこれらを主成分とする合金などの金属箔又は金属板、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルムなどの無機酸化物の蒸着フィルム、金、銀、アルミニウムなど金属、又はこれら金属の酸化物以外の化合物などの蒸着フィルム、上質紙、クラフト紙、板紙、グラシン紙、合成紙などの紙類、セロファン、織布、不織布などを挙げることができる。
本発明に関わる基材層は、用途や被包装物の種類により適宜選択することができる。例えば、被包装物が腐敗し易い食品である場合には、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリエステルの如く、透明性、剛性、ガス透過抵抗性の優れた樹脂を用いることができる。また、被包装物が菓子或いは繊維などである場合には、透明性、剛性、水透過抵抗性の良好なポリプロピレンなどを用いることが好ましい。自動車等の燃料タンクや、燃料が通過するチューブ・ホース・パイプ等に適応させる場合には、EVOH、ポリアミド類、フッ素樹脂のような燃料透過防止性能の優れた樹脂を用いる事が出来る。
バリア性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、EVOH、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどの金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着などの金属蒸着フィルム、金属箔などが挙げられる。
(2)積層体の用途
本発明に関わる積層体は、例えば、食品の包装材として好適である。食品の具体例としては、ポテトチップなどのスナック菓子、ビスケット、煎餅、チョコレートなどの菓子類、粉スープなどの粉末調味料、削り節や薫製などの食品などが挙げられる。また、パウチ類の容器としては、上記積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部をヒートシールすることにより形成することができる。具体的には、例えば、水物包装、一般袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、セミ重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用などの各種包装容器、輸液バックなどに好適に使用される。
(3)積層体の製造
本発明に関わる積層体の加工方法としては、通常のプレス成形、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、フラットダイ成形(T−ダイ成形)、水冷インフレーション成形などの押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、ブロー成形、圧空成形、射出成形、回転成形など、従来公知の方法が挙げられる。
(4)ラミネート積層体
本発明に関わるラミネート積層体とは、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等、公知のラミネート加工法で製造する事が出来る積層体であり、該ラミネート積層体は本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなるラミネート材料と、少なくとも1層以上の基材層とラミネート加工することで製造する事ができる積層体である。本発明におけるラミネート材料とは、各種公知のラミネート加工法に供する事が可能な本発明のオレフィン系樹脂組成物を含む樹脂材料の事である。押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法であり、ドライラミネート加工は、基材と積層するフィルムを貼合する接着剤及び/又は接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤及び/又は接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いる基材のオレフィン系樹脂組成物を含むが形成される側で、基材とオレフィン系樹脂組成物を含む層との間に、バリア性を向上させるため、上記アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルムなどを積層させることが容易である。本発明に関わるラミネート用材料と積層する基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
(5)押出成形品
本発明に関わる押出成形品とは、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を押出成形によって成形した押出成形品である。本発明に関わる押出成形品は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形といった各種インフレーション成形、フラットダイ成形、異形押出成形、管状品成形、カレンダー成形等、公知の押出成形によって製造する事ができる。また、押出成形によって得られた押出成形品が固化しきらない状態で、金型等に挟み込んだり、変形を加えたりといった、各種公知の方法によってさらに賦形してもかまわない。さらには、得られた押出成形品に曲げ、切削、再加熱後に賦形する等、各種公知の方法によって後加工を加えても構わない。
(6)多層共押出成形品
本発明に関わる多層共押出成形品とは、公知の多層共押出成形によって成形する事が可能な多層共押出成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層を少なくとも含む多層共押出成形品である。また、多層共押出成形品とは、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、種々の賦形方法によって成形することにより製造する事が可能な、多層構造を持った成形品の事である。本発明に関わる多層共押出成形品の製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)、多層管状品成形、多層コルゲートパイプ成形等、公知の多層共押出成形を挙げる事ができる。本発明に関わる多層共押出成形品における基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。本発明に関わる多層共押出成形品は、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を含む層と適当な基材とを、適当な成形方法によって加工することにより、多層フィルム、多層シート、多層パイプ、多層ホース、多層チューブ、多層コルゲートパイプ等の公知の多層共押出成形品として製造する事ができる。また、多層共押出成形によって得られた多層共押出成形品が固化しきらない状態で、金型等に挟み込んだり、変形を加えたりといった、各種公知の方法によってさらに賦形してもかまわない。さらには、得られた多層共押出成形品に曲げ、切削、再加熱後に賦形する等、各種公知の方法によって後加工を加えても構わない。
(7)多層フィルム
本発明に関わる多層フィルムとは、公知の多層フィルム成形法によって製造する事が可能な多層フィルムであり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層フィルムである。本発明に関わる多層フィルムの製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)等、公知の多層フィルム成形法を用いる事ができる。本発明に関わる多層フィルムの基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
(8)多層ブロー成形品
本発明に関わる多層ブロー成形品とは、公知の多層ブロー成形によって製造する事が可能な多層ブロー成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層ブロー成形品である。本発明に関わる多層ブロー成形品の製造方法としては、多層ダイレクトブロー成形、多次元多層ブロー成形、多層ロータリーブロー成形等、公知のブロー成形法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層ブロー成形品の基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
(9)多層管状成形品
本発明に関わる多層管状成形品とは、公知の多層管状成形法によって成形する事が可能な多層管状成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層管状成形品である。本発明に関わる多層管状成形法は、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、円形もしくは異形の吐出口から吐出することによって連続的に吐出口形状に準じた形状の管状成形品が成形され、適当な賦形方法、および冷却方法によって成形、冷却固化することで管状の成形品を得る方法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層管状成形法の吐出口形状は特に限定されず、円形、楕円、多角形、その他公知の吐出口形状を選択する事ができる。また、本発明に関わる多層管状成形法の成形方法は特に限定されず、サイジングプレート法、内圧サイジング法、内径サイジング法、真空サイジング法、押出した溶融材料を金型で挟み込み、マンドレル側からの圧空や金型側からの真空引き等で賦形しつつ冷却する方法等、公知の成形法を用いる事ができ、冷却方法も水冷、空冷、金型での挟み込み等、適宜使用することができる。さらに、一度冷却固化させた多層管状成形品を再加熱し、さらに別の形状へと後加工することもできる。本発明に関わる多層管状成形品の基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
(10)多層シート
本発明に関わる多層シートとは、公知の多層シート成形によって製造する事が可能な多層シートであり、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層シートである。本発明に関わる多層シートの製造方法としては各種公知の方法を用いる事ができ、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、フラットダイやサーキュラーダイ等公知のダイから吐出させることでシート状に成形する方法を挙げる事ができる。また、これら方法において、必要に応じてシートの端部をスリットしたり、円形のシートを切り開く加工を加えたりしても良い。さらに、押出成形後に冷却固化していない状態、もしくは、冷却固化した多層シートを再加熱する事により再溶融させた状態で、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、スタンピング成形、プレス成形等、各種公知の成形方法によってさらに賦形しても構わない。本発明に関わる多層シートの基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
(11)射出成形品
本発明に関わる射出成形品とは、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を射出成形によって成形した射出成形品である。本発明に関わる射出成形品の製造には公知の方法を用いる事ができる。
(12)多層射出成形品
本発明に関わる多層射出成形品とは、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層を少なくとも含み、射出成形を用いて複数の層を多層化することで製造できる多層射出成形品である。多層射出成形品は2種類以上の材料が多層化されていればよく、例えば、2種の異なる本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層が多層化されていても良く、本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層と基材からなる層が多層化されていても良い。さらに、3種以上の層が多層化されていても良い。本発明に関わる多層射出成形品は、公知の多層射出成形が可能な射出成形法によって成形する事ができる。本発明のオレフィン系樹脂組成物を含有してなる層の2種類以上を多層化してなる多層射出成形品であってもよいが、本発明の特徴である異種材料との高い接着性を有する点を考慮すると、異種材料からなる層と多層化させた多層射出成形品であるほうが好ましい。多層射出成形品の製造が可能な射出成形法としては、公知の方法を挙げる事ができる。例えば、あらかじめ射出成形や押出成形、プレス成形、切削加工等公知の方法により本発明のオレフィン系樹脂組成物を層へと加工し、該部材を射出金型内部にインサートした状態でさらに基材材料を射出することで多層化させる方法、あらかじめ基材を層へと加工し、基材の層を射出金型内にインサートした状態で本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を射出することで多層化させる方法、複数の射出ユニットを有する多色射出成形機を用い、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物と基材材料を適当な順序で順次、金型内に射出することによって多層化する方法などを挙げる事ができる。本発明に関わる多層射出成形品において、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物と多層化させる部材の種類としては、前述したような種々の各種基材を適宜使用する事ができる。
(13)被覆金属部材
本発明に関わる被覆金属部材とは、金属に本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物を金属被覆材料として用い、金属被覆材料を金属に被覆することにより製造できる、被覆金属部材である。本発明に関わる被覆金属部材は公知の金属被覆方法によって製造する事ができる。被覆金属部材の例としては、例えば、鋼管の外面もしくは内面に、必要に応じてアンダーコート等を介して被覆材料を被覆させた被覆鋼管、金属被覆材料で被覆された被覆金属ワイヤー、金属被覆材料で被覆された電線、紛体性状の被覆金属材料を用いて流動浸漬法によって被覆された被覆金属、紛体性状の被覆金属材料を用いて静電塗装法によって被覆された被覆金属、あらかじめシートやフィルム等に加工した金属被覆材料を金属材用に熱溶着させる事で被覆された被覆金属、等を挙げる事ができる。
〔V〕その他の用途
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)は、上記の接着性樹脂材料として好適に用いられるばかりでなく、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの各種樹脂の改質材、或いは、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂とポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチックとの相溶化剤としても好適に適用される。
以下において、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明し、好適な各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
(1)極性基含有オレフィン共重合体(A)中の極性基含有構造単位量
極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量は、1H−NMRスペクトルを用いて求めた。詳しくは前述している。
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。詳しくは前述している。
(3)融点
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで上昇し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線のうち、最大ピーク温度を融点とした。
(4)接着強度
接着強度は、プレス板に加工した測定サンプルと各種基材フィルムをそれぞれ調製し、その2種を重ね合わせて熱プレスすることによって積層体を作製し、さらに、剥離試験を行うことによって測定した。各工程の調整方法/測定方法を順に説明する。
(1)オレフィン系樹脂組成物樹脂板の測定サンプルプレス板調製方法
測定サンプルを、寸法:50mm×60mm、厚さ0.5mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約0.5mmのオレフィン系樹脂組成物樹脂板を作製した。
(2)ポリアミドフィルムの調製方法
多層Tダイ成形機を用い、中央層がポリアミド、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ100μmのポリアミド単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:250℃ 層構成:LLDPE/EVOH/LLDPE 膜厚:300μm(100μm/100μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm 中間層:ポリアミド(東レ(株)製 銘柄:アミラン CM1021FS)
(3)フッ素樹脂フィルムの調整方法
多層Tダイ成形機を用い、中央層がフッ素樹脂、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ100μmのフッ素樹脂単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:230℃ 層構成:LLDPE/EVOH/LLDPE 膜厚:300μm(100μm/100μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm 中間層:フッ素樹脂(ダイキン工業(株)製 銘柄:ネオフロンEFEP RP−5000)
(4)ポリアミドフィルムとオレフィン系樹脂組成物との積層体の調製方法
上記のプレス板調製方法によって得られた測定サンプルのプレス板と、上記ポリアミドフィルムの調製方法によって得られたポリアミドフィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ0.5mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度250℃の熱プレス機を用いて4.9MPaで5分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、測定サンプルのプレス板とポリアミドの積層体を調製した。
(5)フッ素樹脂フィルムとオレフィン系樹脂組成物との積層体の調製方法
上記のプレス板調製方法によって得られた測定サンプルのプレス板と、板と、上記フッ素樹脂フィルムの調製方法によって得られたフッ素樹脂フィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ0.5mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度200℃の熱プレス機を用いて4.9MPaで3分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、測定サンプルのプレス板とフッ素樹脂の積層体を調製した。
(6)積層体の接着強度測定方法
積層体の調製方法によって得られた積層体を10mm幅に切断し、テンシロン(東洋精機(株)製)引張試験機を用いて、50mm/分の速さでT剥離することで接着強度を測定した。接着強度の単位はgf/10mmで示した。また、接着強度が非常に強い場合、剥離試験に際してオレフィン系樹脂組成物層、もしくは基材層が降伏し、さらには破断する。これは、積層体の接着強度が、オレフィン系樹脂組成物層又は基材層の引張破断強度のうち低い方と比較して高い強度を示す為に発生する現象であり、その接着性は非常に高いものと判断できる。該現象により接着強度が測定できない場合、各実施例の接着強度測定結果には「剥離不可」と記載し、接着強度の数値が測定されたものよりも、より高度に接着されたと判断する。
(5)接着強度比
接着強度測定方法によって、各実施例および比較例の樹脂組成物と、それら樹脂組成物に含まれる極性基含有オレフィン共重合体、それぞれの接着強度を測定し、樹脂組成物の接着強度をそれら樹脂組成物に含まれる極性基含有オレフィン共重合体の接着強度で除した値を接着強度比として算出した。
この値は、極性基含有オレフィン共重合体にオレフィン系樹脂をブレンドする事による接着性の向上効果の指標となっており、この値が「1」より大きければ、極性基含有オレフィン共重合体にオレフィン系樹脂をブレンドする事によって接着性が向上したことを示している。
(6)複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)の測定
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmの試料からなるプレス板を作成した。試料からなるプレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定した。
・プレート:φ25mm パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10−2〜1.0×10 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G*(Pa)の常用対数logG*に対して位相角δをプロットし、logG*=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G*=0.1MPa)とした。測定点の中にlogG*=5.0に相当する点がないときは、logG*=5.0前後の2点を用いて、logG*=5.0におけるδ値を線形補間で求めた。また、測定点がいずれもlogG*<5であるときは、logG*値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG*=5.0におけるδ値を補外して求めた。
(7)アルミニウム(Al)量
極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム(Al)量を、得られた極性基含有オレフィン共重合体の収量で除した値として算出する方法と蛍光X線分析により測定する方法により求めることができる。
アルキルアルミニウム重合添加量より算出する方法
具体的には以下の計算式により算出した。
アルミニウム(Al)含有量の単位:μgAl/g
(μgAl/gとは極性基含有オレフィン共重合体の1g中に含まれるアルミニウム(Al)量をμg単位で表していることを意味する。)
μgAl=n×Mw(Al)×10(μg)
n:重合に供したアルキルアルミニウム添加量(mmol)
Mw(Al):アルミニウム(Al)元素の分子量(26.9g/mol)
蛍光X線分析により測定する方法
極性基含有オレフィン共重合体中に含まれるアルミニウム(Al)量は蛍光X線分析を用いて求めた。詳しくは前述している。
[製造例1]極性基含有オレフィン共重合体(A−1)の製造
Drent系配位子:(2−イソプロピル−フェニル)(2’−メトキシ−フェニル)(2’’−スルホニル−フェニル)ホスフィン(I)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液A)。
マグネシウムをテトラヒドロフラン(20mL)に分散させ、1−ブロモ−2−メトキシベンゼン(2.3g,12.6mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに−78℃で滴下し、1時間撹拌した(反応液B)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(2.5g,12.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5.0mL,12.6mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Bに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度60%。
水(50mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)後、塩化メチレン抽出し(100mL)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化することにより、白色の目的物(I)を1.1g得た。収率22%。
1H NMR (CDCl, ppm): 8.34 (t, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.7−7.6 (m, 3 H), 7.50 (t, J = 6.4 Hz, 1 H), 7.39 (m, 1 H), 7.23 (m, 1 H), 7.1−6.9 (m, 5 H), 3.75 (s, 3 H), 3.05,(m, 1 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 1.04 (d, J = 6.4 Hz, 3 H). 31P NMR (CDCl,ppm): −10.5.
Figure 2015163657
錯体の形成
充分に窒素置換した30mLフラスコに、100μmolのパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
エチレンと4−ビニル―1,2−エポキシシクロへキセンとの共重合
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブを精製窒素で置換したのち、乾燥トルエン(1.0リットル)と、4−ビニル―1,2−エポキシシクロへキセンを20.9ml(0.2mol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを100℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2MPaになるよう圧力が2.3MPaまでエチレンを供給した。圧力調整終了後、遷移金属錯体(I−Pd錯体)50μmolを窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給し、240分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下60℃で恒量になるまで乾燥を行なった。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。表1において重合活性は、重合に用いた錯体1molあたりの共重合体収量(g)を表す。なお、重合活性は、配位子とパラジウムビスジベンジリデンアセトンが1対1で反応してパラジウム錯体を形成しているとして計算した。
[製造例2]極性基含有オレフィン共重合体(A−2)の製造
SHOP系配位子:2−(2,6−ジフェノキシフェニル)(2−フェノキシフェニル)ホスファニル−6−(ペンタフルオロフェニル)フェノール(B−114)の合成
(1)1,3−ジフェノキシベンゼン(B−114_1、2.62g,10mmol)の脱水テトラヒドロフラン(100mL)溶液に、n−ブチルリチウム(2.5M,4.0mL,10mmol)を0℃で添加した後、室温まで徐々に昇温した。その混合物を室温で1時間撹拌することで、2,6−ジフェノキシフェニルリチウム(B−114_2)のテトラヒドロフラン溶液を合成した。
(2)マグネシウム(1.0g,40mmol)と1,2−ジブロモエタン(0.2mL)の脱水(50mL)混合物に、2−フェノキシブロモベンゼン(B−114_3、7.5g,40mmol)の脱水テトラヒドロフラン(50mL)溶液を室温で滴下した。その混合物を室温で3時間撹拌し、それを三塩化リン(2.6mL,30mmol)の脱水テトラヒドロフラン(20mL)溶液に−78℃で添加した。添加後溶液温度を徐々に室温に昇温し、さらに室温で1時間撹拌した。溶媒と過剰な三塩化リンを減圧下で除去し、その残渣を脱水テトラヒドロフラン(50mL)に溶解させた。その溶液を−78℃まで冷却し、そこに(1)で合成したB−114_2のテトラヒドロフラン溶液を添加した。添加終了後、溶液温度を室温まで徐々に昇温し、室温で更に2時間撹拌することで、(2,6−ジフェノキシフェニル)(2−フェノキシフェニル)ホスファニルクロリド(B−114_5)のテトラヒドロフラン溶液を得た。
(3)メトキシメチルフェニルエーテル(B−114_6、4.2g、30mmol)の脱水テトラヒドロフラン(40mL)溶液に、0℃でn−ブチルリチウム(2.5M、12mL、30mmol)を滴下した。その混合物を室温まで徐々に昇温し、さらに1時間室温で撹拌した。その後、その混合物を−30℃まで冷却し、そこに(2)で得たB−114_5)のテトラヒドロフラン溶液を滴下した。滴下後、混合物を室温まで徐々に昇温して、室温で終夜撹拌した。その混合物に水(50mL)添加し、10分間撹拌した後、減圧下で有機溶媒を除去した。その後、酢酸エチル(50mLx3)で抽出した後、抽出液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製し、メトキシメチル(2−(2,6−ジフェノキシフェニル)(2−フェノキシフェニル)ホスファニルフェニル)エーテルを得た(B−114_7、2g、純度62%)。
そして、(3)を繰り返すことでB−114_7を8.1g(純度75%)得た。それをジエチルエーテルから再結晶することで、B−114_7を得た(5.5g、純度92%)。
(4)B−114_7(5.5g,9.2mmol)の脱水テトラヒドロフラン(50mL)溶液に、n−ブチルリチウム(2.5M,3.2mL,9.2mmol)を0℃で滴下した。混合物を室温まで徐々に昇温した後、さらに2時間室温で撹拌した。その後、その混合物を0℃まで冷却し、それにヘキサフルオロベンゼン(5.4mL,46mmol)をゆっくり滴下し、その混合物を室温まで徐々に昇温後、室温で終夜撹拌した。反応溶液にメタノール(20mL)添加し、10分間撹拌後、減圧下で有機溶媒を除去した。その後、酢酸エチル(50mLx3)で抽出した後、抽出液を濃縮し、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=100:1)で精製し、メトキシメチル(2−(2,6−ジフェノキシフェニル)(2−フェノキシフェニル)ホスファニル−6−(ペンタフルオロフェニル)フェニル)エーテルを得た(B−114_8、1.6g、純度94%)。
そして、(4)を繰り返すことB−114_8(10g,純度85%)を得、その後HPLC精製によってB−114_8を得た(6g,7.8mmol)。
(5)(4)で得られた化合物(B−114_8,6.0g,7.8mmol)を、塩化水素の酢酸エチル溶液(4M、100mL)に0℃で添加した。得られた混合物を徐々に室温まで昇温し、引き続き室温で2時間攪拌を行った。溶媒を除去し、残渣に酢酸エチル(50mL)と炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(50mL)を加えた後、30分間攪拌した。その後、酢酸エチルで抽出操作を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水させた後、硫酸ナトリウムを濾別し、減圧下に溶媒を留去して濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=40:1)で精製し、2−(2,6−ジフェノキシフェニル)(2−フェノキシフェニル)ホスファニル−6−(ペンタフルオロフェニル)フェノールを得た(5.0g、6.9mmol、88%)
H NMR(CDCl、δ、ppm):6.55−6.65(m、2H),6.70−6.74(m,1H),6.75−6.82(m,4H),6.82−6.87(m,2H),6.87−6.95(m,1H),6.95−7.30(m,15)、7.65−7.77(m、1H);31P NMR(CDCl、δ、ppm):−54.0(s)。
Figure 2015163657
錯体の形成
充分に窒素置換した50mlのナス型フラスコに、下記B−114を145mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)トルエン溶液全量(20ml)を、B−114の入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−114とNi(COD)の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
エチレンと4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4−HBAGE)との共重合
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエンを1000mlと、トリn−オクチルアルミニウム(TNOA)を36.6mg(0.10mmol)及び4−HBAGEを1.8ml(10mmol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを90℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.5MPaになるよう圧力が2.8MPaまでエチレンを供給した。温度と圧力が安定した後、先に調製したB−114‐Ni錯体溶液を2.0ml(20μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を90℃に保った。46分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下、60℃で恒量になるまで乾燥を行なうことで、極性基含有共重合体中に残存していた極性基含有モノマーを取り除き、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を32g回収した。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。
なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。表1において重合活性は、重合に用いた錯体1molあたりの共重合体収量(g)を表す。この重合方法においてはエチレンの補給を行わない為、重合終了時のエチレン分圧が、重合開始時と比較して低下する。表1中のエチレン分圧が、「2.5→1.5」のような表記になっているのは、重合開始時のエチレン分圧が2.5MPa、重合終了時のエチレン分圧が1.5MPaであったことを表している。
なお、重合活性は、B−114とNi(COD)が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。
また、共重合に用いた4−HBAGEは、モレキュラーシーブ3Aにより脱水したものを使用した。
〔製造例3〕極性基含有オレフィン共重合体(A−3)の製造
SHOP系配位子:B−27DMの合成
WO2010−050256記載(合成例4)の方法に従い、下記の配位子B−27DMを得た。
Figure 2015163657
錯体の形成
充分に窒素置換した50mlのナス型フラスコに、下記B−27DMを112mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)2と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−27DMとNi(COD)2の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
エチレンと4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4−HBAGE)との共重合
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエンを1000mlと、トリn−オクチルアルミニウム(TNOA)を36.6mg(0.10mmol)及び4−HBAGEを2.7ml(15mmol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを105℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.5MPaになるよう圧力が2.8MPaまでエチレンを供給した。温度と圧力が安定した後、先に調製したB−27DM‐Ni錯体溶液を2.5ml(25μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を105℃に保った。170分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下、60℃で恒量になるまで乾燥を行なうことで、極性基含有共重合体中に残存していた極性基含有モノマーを取り除き、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を33g回収した。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。表1において重合活性は、重合に用いた錯体1molあたりの共重合体収量(g)を表す。この重合方法においてはエチレンの補給を行わない為、重合終了時のエチレン分圧が、重合開始時と比較して低下する。表1中のエチレン分圧が、「2.0→1.0」のような表記になっているのは、重合開始時のエチレン分圧が2.0MPa、重合終了時のエチレン分圧が1.0MPaであったことを表している。
なお、重合活性は、B−27DMとNi(COD)が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。
また、共重合に用いた4−HBAGEは、モレキュラーシーブ3Aにより脱水したものを使用した。
〔製造例4〕極性基含有オレフィン共重合体(A−4)の製造
エチレンと4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4−HBAGE)との共重合
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエンを1000mlと、トリn−オクチルアルミニウム(TNOA)を36.6mg(0.10mmol)及び4−HBAGEを2.7ml(15mmol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを50℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.5MPaになるよう圧力が2.8MPaまでエチレンを供給した。温度と圧力が安定した後、先に調製したB−27DM‐Ni錯体溶液を2.0ml(20μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を50℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。50分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下、60℃で恒量になるまで乾燥を行なうことで、極性基含有共重合体中に残存していた極性基含有モノマーを取り除き、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を41g回収した。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。表1において重合活性は、重合に用いた錯体1molあたりの共重合体収量(g)を表す。
なお、重合活性は、B−27DMとNi(COD)が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。
また、共重合に用いた4−HBAGEは、モレキュラーシーブ3Aにより脱水したものを使用した。
〔製造例5〜製造例7〕極性基含有オレフィン共重合体(A−5〜A−7)の製造
製造例4に記載の方法のうち、配位子量、極性基含有モノマー濃度、重合温度、重合時間、をそれぞれ変更して重合することにより、製造例5〜製造例7の極性基含有オレフィン共重合体を調製した。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。
〔製造例8〕極性基含有オレフィン共重合体(A−8)の製造
製造例3に記載の方法のうち、配位子量、極性基含有モノマー濃度、重合温度、重合時間、をそれぞれ変更して重合することにより、製造例8の極性基含有オレフィン共重合体を調製した。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。
極性基含有オレフィン共重合体(A−9)
エチレンとグルシジルメタクリレートの共重合体であって、高圧法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体(住友化学(株)製 銘柄:ボンドファーストE)である。物性測定の結果を表2に記載した。
Figure 2015163657
Figure 2015163657
〔実施例1〕
極性基含有オレフィン共重合体(A−1)7.0gとエチレン−ブテン共重合体(三井化学社製、商品名:タフマー(A−4085S))3.0gとをドライブレンドし、小型二軸混練機(DSM Xplore社製 型式:MC15)に投入し、5分間溶融混練した。その際のバレル温度は180℃、スクリュー回転数は100rpmとした。5分経過後、樹脂吐出口から棒状の樹脂組成物を押出し、ステンレス製トレーの上に載せ、室温で冷却して固化させた。冷却した樹脂組成物をペレット状に裁断して、オレフィン系樹脂組成物のペレットを製造し、得られたオレフィン系樹脂組成物を各種物性試験に供した。使用したオレフィン系樹脂のメーカー、グレード、商品名、樹脂分類、重合に供されたモノマー種、および樹脂物性を表3に、オレフィン系樹脂組成物中の配合比率を表4に、物性評価結果を表5に示す。
表3中の、「LDPE」は高圧法低密度ポリエチレン、「LLDPE」は線状低密度ポリエチレン、「EEA」はエチレン−エチルアクリレート共重合体、「EVA」はエチレン−酢酸ビニル共重合体、「EPR」はエチレンプロピレンゴムをそれぞれ表す。
〔実施例2〜実施例12、比較例1〜比較例3〕
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体、オレフィン系樹脂の種類、極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂の配合比率をそれぞれ変更して製造することにより実施例2〜実施例12、比較例1〜比較例3の樹脂組成物を製造した。使用したオレフィン系樹脂のメーカー、グレード、商品名、樹脂分類、重合に供されたモノマー種、および樹脂物性を表3に、オレフィン系樹脂組成物中の配合比率を表4に、物性評価結果を表5に示す。
Figure 2015163657
Figure 2015163657
Figure 2015163657
〔実施例と比較例の結果の考察〕
実施例1、実施例3〜実施例8、実施例10、実施例11は極性基含有オレフィン共重合体(A−1、A−3、A−4、A−6、A−7)各々100重量部に対し、融点が124℃以下のオレフィン系樹脂を1〜99,900重量部の配合比率で適宜ブレンドしたオレフィン系樹脂組成物であり、フッ素樹脂に対して十分に優れた接着性を示し、接着強度比も1.0以上と十分な接着性向上効果を示している。更に、融点が110℃以下のオレフィン系樹脂をブレンドした実施例1、実施例3〜実施例8、実施例11は、フッ素樹脂に対する接着強度比が2.0以上であり飛躍的な接着性向上効果を示した。
オレフィン系樹脂として融点が124℃を上回るものを用いた比較例1はフッ素樹脂に対する接着性が非常に弱く、また接着強度比も1.0を下回っており、接着性向上効果が見られなかった。
比較例2、比較例3は、同様に高圧ラジカル法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体(A−9)100重量部に対し、特定範囲の融点であるオレフィン系樹脂を1〜99,900重量部の配合比率で適宜ブレンドしたオレフィン系樹脂組成物であるが、フッ素樹脂に対する接着強度は非常に低く、接着強度比も劣っていた。この事実より、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、高圧ラジカル重合法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体と比較し、融点が124℃以下のオレフィン系樹脂を配合せしめた場合の接着性能の向上が大きく、本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対し、融点124℃以下のオレフィン系樹脂を1〜99,900重量部ブレンドしさえすれば、高い接着性向上効果が得られることが示された。
直鎖構造を有する極性基含有オレフィン共重合体に融点が124℃以下のオレフィン系樹脂をブレンドしたオレフィン系樹脂組成物の接着性が、極性基含有オレフィン共重合体単体と比較して向上する理由は明確ではないが、おそらく、オレフィン系樹脂組成物中に含まれる極性基含有オレフィン共重合体の分子構造が直鎖構造であることが必要であると考えられる。極性の高い異種材料とオレフィン共重合体との接着性能は、JIS K6854−1〜4「接着材−はくり接着強さ試験法」で例示されるような剥離試験により測定される数値で評価されるが、この方法で測定される数値は、異種材料同士の界面での化学的、及び物理的な結合力と、材料の凝集力若しくは変形する際の応力との合算であると考えられる。高圧ラジカル重合法プロセスで製造された極性基含有オレフィン共重合体は、短鎖分岐と長鎖分岐を過多に含む、分岐の多い分子構造を有している。この様な構造を持ったオレフィン系樹脂は、直鎖構造を有するオレフィン系樹脂と比較して、その機械物性や凝集力、耐衝撃性等が劣ることが知られており、極性基含有オレフィン共重合体においても、その傾向を有する事が推察される。高圧ラジカル重合法プロセスで製造された極性基含有オレフィン共重合体が異種材料と十分な化学結合を有したとしても、凝集力は直鎖構造を有する極性基含有オレフィン共重合体よりも劣るものとなり、結果として接着性は低下すると考えられる。
実施例2、実施例9、実施例12は極性基含有オレフィン共重合体(A−2、A−5、A−8)各々に対し、融点が124℃以下のオレフィン系樹脂を特定範囲の配合比率でブレンドしたオレフィン系樹脂組成物であり、ポリアミドに対して十分な接着性を示し、接着強度比が2.0以上と飛躍的な接着性向上効果を示した。この事実より、直鎖構造を有する極性基含有オレフィン共重合体に融点が124℃以下のオレフィン系樹脂をブレンドすることで得られるオレフィン系樹脂組成物の接着性向上効果は、特定の基材に限定されないことを示した。
実施例1〜実施例12は極性基含有オレフィン共重合体に対し、融点が124℃以下のオレフィン系樹脂が配合されている。オレフィン系樹脂のMFR、重合に供されたモノマー種、配合割合がいずれであっても、オレフィン系樹脂組成物に対し、十分な接着性向上効果が得られる事を示した。
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対照により、本発明の構成(発明特定事項)の有意性と合理性及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、特定の分子構造及び樹脂物性を有する極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)とが特定範囲の配合比率でブレンドされたことにより他の基材との高い接着性を発現し、工業的に有用な積層体の製造を可能にした。本発明によって製造することが可能な樹脂組成物は、接着性だけでなく機械的かつ熱的な物性に優れ、有用な多層成形体として応用可能であり、各種の基材に積層されて、広く包装材、包装容器分野、繊維、パイプ、燃料タンク、中空容器、ドラム缶などの産業資材分野、止水材料などの土木分野、電子・家電部材などの電子分野、電線・ケーブルなどの電線分野などにおいて活用される。

Claims (10)

  1. エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる、分子構造が直鎖状でかつランダム共重合である極性基含有オレフィン共重合体(A)と、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、30〜124℃以下であることを特徴とするオレフィン系樹脂(B)とを含むオレフィン系樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、1〜99,900重量部であることを特徴とするオレフィン系樹脂組成物。
  2. 該エポキシ基を含む極性基含有モノマーが、下記構造式(I)または下記構造式(II)で表されるエポキシ基を含む極性基含有モノマーであることを特徴とする請求項1記載のオレフィン系樹脂組成物。
    一般式(I)
    Figure 2015163657
    (式中、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基を示し、R〜Rのいずれか1つはエポキシ基を含む特定の官能基である。
    特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)

    構造式(II)
    Figure 2015163657
    (式中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基を示し、R〜Rのいずれか1つはエポキシ基を含む特定の官能基である。また、mは0〜2である。
    特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
  3. 該極性基含有オレフィン共重合体(A)における、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位量が99.999〜80mol%、エポキシ基を含む極性基含有モノマーに由来する構造単位量が20〜0.001mol%であることを特徴とする請求項1又は2記載のオレフィン系樹脂組成物。
  4. 該オレフィン系樹脂(B)が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれるモノマーを重合する事で得られる単独重合体及び/又は共重合体であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  5. 該極性基含有オレフィン共重合体(A)の、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、50〜140℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  6. 該極性基含有オレフィン共重合体(A)が、キレート性配位子を有する第5〜11族金属の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  7. 該極性基含有オレフィン共重合体(A)が、パラジウム又はニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物と、基材層とを少なくとも含むことを特徴とする積層体。
  9. 該基材層が、オレフィン系樹脂、極性の高い熱可塑性樹脂、金属、無機酸化物の蒸着フィルム、紙類、セロファン、織布、不織布から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載された積層体。
  10. 該基材層が、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂であることを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載された積層体。
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