JP2015162304A - 非水電解質電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高電圧化が可能であり、しかも、容量維持率が高い非水電解質電池を提供すること。【解決手段】本発明のリチウムイオン電池は、正極活物質として下記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含む正極12と、負極活物質133として黒鉛を含む負極13と、添加剤としてホウ素系添加剤を含有する電解液とを備えたことを特徴とする。一般式(1)X[Li(Li1/3Mn2/3)O2]−(1−X)[Li(NiαCoβMnγ)O2](式(1)中、Xは、0<Xを満たす数であり、α、β及びγは、α+β+γ≰1.0を満たす数である。)【選択図】図2

Description

本発明は、非水電解質電池に関し、特に、高電圧化が可能な非水電解質電池に関する。
近年、電池寿命が長く、高電圧が得られるリチウムイオン電池が脚光を浴びている。一般的なリチウムイオン電池は、アルミニウムなどの容器の内部に正極及び負極が配置され、この容器内にリチウム塩を含有する非水溶媒系の電解液が充填されている。リチウムイオン電池の電解液としては、オキサレート系化合物を含有する有機電解液が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この有機電解液においては、オキサレート系化合物により電解液に含まれるリチウムイオンがキレートされるので、リチウムイオンの伝導度が向上して充放電効率を高めることが可能となる。
特開2004−172117号公報
ところで、一般的なリチウムイオン電池においては、充放電を繰り返すと正極及び負極の電極上での電解液の分解が促進されてガスが発生すると共に、電極にリチウムイオン伝導性が低い被膜が堆積して取り出せる可逆容量が減少する。この電解液の分解は、リチウムイオン電池の上限電圧を上昇させると、より加速されてリチウムイオン電池の容量維持率の大幅な低下につながる場合がある。このため、リチウムイオン電池の高電圧化を図りつつ、容量維持率が高い技術が望まれている実情がある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高電圧化が可能であり、しかも、容量維持率が高い非水電解質電池を提供することを目的とする。
本発明の非水電解質電池は、正極活物質として下記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含む正極と、負極活物質として黒鉛を含む負極と、添加剤としてホウ素系添加剤を含有する電解液とを備えたことを特徴とする。
一般式(1)
X[Li(Li1/3Mn2/3)O]−(1−X)[Li(NiαCoβMnγ)O
(式(1)中、Xは、0<Xを満たす数であり、α、β及びγは、α+β+γ≦1.0を満たす数である。)
このリチウムイオン電池によれば、上記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含む正極表面上に、電解液に含まれるリチウム塩及びホウ素系添加剤が酸化分解したアルキルリチウム層及び無機リチウム化合物を含むリチウムイオン伝導性を有するナノレベルの表面被膜が形成される。この表面被膜により、高電圧化を図った場合であっても、リチウムイオン伝導性が向上すると共に、電解液の過剰な酸化分解を抑制できると推定される。これにより、高電圧化が可能であり、しかも、容量維持率が高い非水電解質電池を実現できる。
本発明の非水電解質電池においては、前記一般式(1)において、Xが0.3<X<1.0を満たすことが好ましい。この構成により、リチウム系複合酸化物の組成が適度な範囲となるので、上述したナノレベルの表面被膜の形成による更なる高電圧化及び容量維持率の向上が可能となる。
本発明の非水電解質電池においては、前記ホウ素系添加剤が、下記式(2)で表されるリチウムジフルオロオキサレートボレート、下記式(3)で表されるリチウムビスオキサレートボレート及び下記式(4)で表されるリチウムテトラフルオロボレートからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。この構成により、上述した正極表面へのナノレベルの表面被膜が効率よく形成されるので、非水電解質電池の更なる高電圧化及び容量維持率の向上が可能となる。
Figure 2015162304
本発明の非水電解質電池においては、前記電解液における前記ホウ素系添加剤の配合量が、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この構成により、電解質中のホウ素系添加剤の濃度が適度な範囲となるので、上述した正極表面へのナノレベルの表面被膜が効率よく形成され、非水電解質電池の更なる高電圧化及び容量維持率の向上が可能となる。
本発明によれば、高電圧化が可能であり、しかも、容量維持率が高い非水電解質電池を実現できる。
図1は、本発明の実施の形態に係るリチウムイオン電池の模式的な斜視図である。 図2は、本発明の実施の形態に係るリチウムイオン電池の模式図である。 図3は、本発明の実施例及び比較例に係るリチウムイオン電池における添加剤の添加量と容量維持率との関係を示す図である。 図4Aは、本発明の実施例に係るリチウムイオン電池の充放電プロファイルを示す図である。 図4Bは、本発明の実施例に係るリチウムイオン電池の充放電プロファイルを示す図である。 図5は、本発明の比較例に係るリチウムイオン電池の充放電プロファイルを示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、リチウムイオン二次電池を例として説明するが、本発明は、リチウムイオン二次電池以外にもリチウム一次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、及びカルシウムイオン二次電池などの各種非水電解質電池に適用可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
まず、図1を参照して本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。図1は、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1の模式的な斜視図である。なお、図1においては、容器11の一部を破断して示している。
図1に示すように、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1は、アルミニウムなどの金属部材によって構成され、内部に電解液を貯蔵可能な容器11と、容器11内に配置されたシート状の正極12及び負極13と、正極12及び負極13の間に配置されるセパレータ15とを備える。正極12及び負極13は、正極12と負極13とが交互に複数配置されている。セパレータ15は、負極13を挟み込んだ状態で正極12と交互に複数積層されており、非水溶媒系の電解液に浸漬するように配置されている。なお、図1においては、説明の便宜上、正極12、負極13及びセパレータ15を板状部材として模式的に示している。なお、正極12、負極13及びセパレータ15の形状は、シート状に限定されず適宜変更可能である。容器11の上部には、正極端子16、及び負極端子17、及び安全弁18が設けられている。
正極12及び負極13の一端部には、タブ19A,19Bがそれぞれ配置される。このタブ19A,19Bは、セパレータ15に挟まれた際に、セパレータ15の外縁部から外側に突出するように設けられている。各タブ19A,19Bは、正極12及び負極13に対して偏在するように設けられている。正極12及び負極13は、互いのタブ19A,19Bが側面視にて相互に重ならないようにして積層されている。正極12のタブ19Aは、正極端子16に接続され、負極13のタブ19Bは、負極端子17に接続されている。
次に、図2を参照して、本実施の形態に係るリチウムイオン電池の概要について説明する。図2は、本実施の形態に係るリチウムイオン電池の模式図である。図2に示すように、正極12は、正極活物質層(電極活物質層)120と、この正極活物質層120内に設けられ、アルミ箔などによって構成される正極集電体(電極集電体)121とを備える。正極活物質層120は、リチウムイオン122、リチウム複合酸化物123及びバインダー124などの正極活物質を含有する。放電時に正極集電体121は、負極13側から流れてきた電子(e)を、当該正極集電体121を通じて正極活物質層120の内部に供給する機能を有する。正極12は、正極活物質層120の各正極活物質間及び正極集電体121と正極活物質との間がバインダー124によって結着されており、導電ネットワークが形成されている。正極12の空隙部は、電解液で充填されている。
負極13は、負極活物質層(電極活物質層)130と、この負極活物質層130内に設けられ、銅箔などによって構成される負極集電体(電極集電体)131とを備える。負極活物質層130は、リチウムイオン132、黒鉛などのカーボン系活物質、シリコン及びスズなどの合金系活物質、カーボン系活物質/合金系活物質の混合活物質、酸化物活物質などの負極活物質133及びカーボンブラックなどの導電助剤134などの負極活物質を含有する。導電助剤134は、充電時にはリチウムイオン132と反応して合金を形成して膨張する。負極13は、負極活物質間及び負極集電体131と負極活物質間がバインダー135によって結着されており、導電ネットワークが形成されている。負極13の空隙部は、電解液で充填されている。
リチウムイオン二次電池1においては、放電時には負極13の電子(e)が負極活物質133、導電助剤134及びバインダー135を介して負極集電体131から正極12の正極集電体121に向けて移動すると共に、負極13のリチウムイオン132がセパレータ15を介して正極12側に移動してリチウムイオン122となる。このリチウムイオン122は、負極13側から正極集電体121を介して移動して来た電子(e)を受け取る。また、リチウムイオン二次電池1においては、充電時には電子(e)が正極12側から負極13側に移動すると共に、正極12側のリチウムイオン122がセパレータ15を介して負極13側に移動して負極13の導電助剤134とリチウムイオン132とが反応する。
セパレータ15は、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンによって構成され、表面に細孔(不図示)を有する。セパレータ15は、正極12と負極13との間を分離して正極12と負極13との間の短絡を防ぐ機能を有すると共に、表面の細孔を介して負極13から正極12へ向けて電子が流れるように構成されている。以下、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1について詳細に説明する。
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1は、正極活物質120として下記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含有する正極12と、負極活物質133として黒鉛を含有する負極13と、添加剤としてホウ素系添加剤を含有する電解液とを備える。
一般式(1)
X[Li(Li1/3Mn2/3)O]−(1−X)[Li(NiαCoβMnγ)O
(式(1)中、Xは、0<Xを満たす数であり、α、β及びγは、α+β+γ≦1.0を満たす数である。)
このリチウムイオン電池によれば、上記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含む正極12表面上に、電解液に含まれるリチウム塩及びホウ素系添加剤が酸化分解したアルキルリチウム層及びホウ素などの無機リチウム化合物を含むリチウムイオン伝導性を有するナノレベルの表面被膜が形成される。この表面被膜により、高電圧化を図った場合であっても、リチウムイオン伝導性が向上すると共に、電解液の過剰な酸化分解を抑制できると推定される。これにより、高電圧化が可能であり、しかも、容量維持率が高い非水電解質電池を実現できる。
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1においては、電解液におけるホウ素系添加剤の配合量が、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この構成により、電解質中のホウ素系添加剤の濃度が適度な範囲となるので、上述した正極表面へのナノレベルの表面被膜が効率よく形成され、非水電解質電池の更なる高電圧化及び容量維持率の向上が可能となる。上述した効果を一層奏する観点から、電解液におけるホウ素系添加剤の配合量としては、0.75質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上がより更に好ましく、9.0質量%以下がより好ましく、7.0質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以下がより更に好ましい。以下、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1の各種構成要素について詳細に説明する。
正極12は、正極活物質、結着剤、導電助剤、及び必要に応じて用いられるN−メチルピロリドンなどの各種有機溶媒の混合物を、正極集電体121の表面に塗工及び乾燥させることにより設けられる。正極12の正極集電体121としては、アルミニウム箔、銅箔などの導体箔及び導体薄板などを用いることができる。
正極活物質としては、下記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含有するものであれば本発明の効果を奏する範囲で各種正極活物質を用いることができる。下記一般式(1)以外の正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル−コバルト−マンガン系複合酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムなどの各種リチウム系複合酸化物が挙げられる。これらの正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一般式(1)
X[Li(Li1/3Mn2/3)O]−(1−X)[Li(NiαCoβMnγ)O
(式(1)中、Xは、0<Xを満たす数であり、α、β及びγは、α+β+γ≦1.0を満たす数である。)
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1においては、正極のリチウム系複合酸化物が上記一般式(1)において、Xが0.3<X<1.0を満たすことが好ましい。この構成により、上述した正極におけるナノレベルの表面被膜がより容易に形成されるので、より高エネルギー密度化及び容量維持率が高いリチウムイオン二次電池1を実現できる。
結着剤(バインダー)としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、アクリル系バインダーポリイミド、及びフッ化エチレンフッ素樹脂(PTFE)などを用いることができる。また、正極活物質層120には、正極活物質とバインダーに加えて、必要に応じて、導電助剤が含有されていてもよい。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、及び炭素繊維などが挙げられる。正極活物質層には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及びポリイミダゾールなどの導電性高分子材料を添加しても良い。これらの導電性高分子材料は、電気化学的に安定であり、しかも電子伝導性に優れているため、正極活物質層の内部抵抗を低減することができる。
負極13は、負極活物質、結着剤、導電助剤、及びN−メチルピロリドンなどの各種有機溶媒を含む混合物を、集電体の表面に塗工及び乾燥させることにより設けられる。負極集電体131としては、正極集電体121と同様のものを用いることができる。負極活物質としては、天然黒鉛、グラファイト、コークス、熱分解炭素、ガラス状炭素、無定形炭素、黒鉛化炭素繊維、各種高分子材料の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、及び活性炭などの各種炭素材料、Si、Sn、及びInなどの合金又は金属酸化物・窒化物などを用いることができる。また、負極活物質層としては、負極の電極活物質とバインダーに加えて、導電助剤を含むものを用いることもできる。負極の導電助剤としては、正極の導電助剤と同様の材料を用いることができる。
本実施の形態に係るリチウムイオン電池においては、非水電解液は、非水溶媒、電解質及びホウ素系添加剤を含有する。非水溶媒としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限はない。非水溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などの鎖状カーボネート類、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。これらの非水溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
電解質としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiCFSO、及びLiAsFなどが挙げられる。これらの電解質は、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの電解質は、例えば、電解液を所望の伝導度及び粘度にする観点から、非水溶媒に通常0.1〜2M濃度で溶解されて使用される。これらの電解質は、リチウムイオンの供給源として作用して、正極12と負極13との間でのリチウムイオンの移動を促進するものである。
本実施の形態に係るリチウムイオン電池においては、ホウ素系添加剤としては、本発明の効果を奏する範囲で各種ホウ素系化合物を用いることができる。ホウ素系添加剤としては、例えば、フッ素、臭素などのハロゲン基、アルキル基、トリフルオロメチル基などのフッ素置換炭化水素基、オキサレート基、エステル基、エーテル基、ニトリル基、カーボネート基、カルボニル基、スルフィド基、スルホキシド基、及びスルホン基からなる群から選択された少なくとも一つの置換基を有するホウ素系化合物及びそれらのリチウム塩が挙げられる。
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1においては、ホウ素系添加剤が、下記式(2)で表されるリチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB)、下記式(3)で表されるリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)及び下記式(4)で表されるリチウムテトラフルオロボレート(LiBF)からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。この構成により、上述した正極表面へのナノレベルの表面被膜が効率よく形成されるので、リチウムイオン二次電池1の更なる高電圧化及び容量維持率の向上が可能となる。
Figure 2015162304
電解液の添加剤の配合量としては、リチウムイオン電池の高電圧化及び容量維持率を向上できる観点から、リチウムイオンの伝導度が1mS/cm以上であって、電解液の粘度が10mPa・s以下となる範囲とすることが好ましい。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例に基づいて本発明についてより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
負極の負極活物質層の原料粉末としては、黒鉛(MG1、日本黒鉛工業社製、平均粒径20μm)100質量部に対して、1.5質量部の水分散系バインダー(スチレンブタジエンゴム:SBR、日本ゼオン社製)、及び1.5質量部の増粘剤(カルボキシメチルセルロース:CMC、ダイセル化学工業社製)を配合したものを用いた。この原料粉末に溶剤(蒸留水)を添加して固形分濃度50%からなる原料粉末のスラリーを調整した後、銅箔(厚さ10μm、福田金属箔粉工業社製)上に原料粉末のスラリーを塗工した。その後、真空雰囲気下にて、120℃にて4時間乾燥させることにより負極を作製した。負極は、膜厚が86μmとなるようにして作製した。
正極の正極活物質層の原料粉末であるコバルト−ニッケル−マンガン系のリチウム複合酸化物(0.55[Li(Li1/3Mn2/3)O]−0.45[Li(Ni0.40Co0.26Mn0.34)O])としては、LiCO(和光純薬工業社製、特級)、MnO(キシダ化学社製、1級)、NiO(和光純薬工業社製)及びCo(キシダ化学社製)を化学両論比にて秤量後、φ5mmのジルコニアビーズミルを用いて,1時間回転混合したものを、大気中900℃で24時間焼成後、メノウ乳鉢を用いてらいかいし、窒素雰囲気下600℃で4時間焼成して合成したものを用いた。この正極原料粉末100質量部に対して、5質量部のアセチレンブラック及び5質量部の非水分散系バインダー(ポリフッ化ビニリデン、クレハ社製)を用いた。この原料粉末に溶剤(N−メチルピロリドン:キシダ化学社製)を添加して固形分濃度70%からなる原料粉末のスラリーを調整した後、アルミニウム箔(厚さ10μm、日本製箔社製)上に原料粉末のスラリーを塗工した。その後、真空雰囲気下にて、120℃で4時間乾燥させることにより正極を作製した。正極は、膜厚が54μmとなるように作製した。
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)33.3容量%、ジメチルカーボネート(DMC)53.3容量%、及びエチルメチルカーボネート(EMC)13.4容量%の混合溶媒に、1mol/dmのリチウム塩(LiPF)の濃度となるように溶解させたものに添加剤を加えたものを用いた。9種類の電解液における添加剤の添加量を以下に示す。
リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiDFOB):0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、3.0質量%
リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB):0.5質量%
リチウムテトラフルオロボレート:0.5質量%、4.0質量%、8.0質量%
以上のようにして作製した正極、負極及び9種類の電解液、セパレータ(ポリプロピレン製)を用いてコインセルを作製して電池性能を評価した。電池性能は、25℃の環境下において、初回は充電上限電圧4.8Vまで0.2C(0.1mA/cm)の定電流定電圧法で充電した後、放電終止電圧2.0Vまで定電流で放電し、2回目以降は、充電上限電圧4.5Vまで0.2Cの定電流定電圧法で充電した後、放電終止電圧2.0Vまで定電流で放電する初期サイクルを3回実施した。その後、55度の高温環境下において,1℃(3.75mA/cm)の電流密度で4.5V−2.0Vの電圧範囲で充放電を実施する高温サイクル試験を実施した。55度高温サイクル試験の20回充放電実施後の容量維持率と添加剤の添加量との関係を図3に示す。初期3サイクル結果の充電プロファイルを図4Aに示す。また、初期充電電圧を4.5Vとしたこと以外は同様にして測定した初期3サイクル結果の充電プロファイルを図4Bに示す。なお、図4A及び図4Bに示した初期3サイクル結果の充電プロファイルは、電解液の添加剤としては、LiDFOB:1.5質量%の条件にて測定したものである。
図3に示すように、実施例1のリチウムイオン電池は、いずれも20サイクル後の容量維持率が高く、また添加剤の添加量を増やすにつれて著しく容量維持率が向上することが分かる。また、図4A及び図4Bに示すように、実施例1のリチウムイオン電池は、4.5Vの高電圧の条件下であっても、初回4.8V又は4.5V上限充電時に現れる充電電圧平坦部Lにより高容量活性特性が発揮され、段階的な充電処理を行わなくとも200mAh/g以上の容量密度(電池容量)が得られ、高い放電容量を維持できることが分かる。また、充放電サイクルを3回繰り返しても容量密度の低下は見られなかった。これらの結果は、上記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含む正極及びホウ素系添加剤を含む電解液を用いたので、上述したように、リチウムイオン伝導性を有するナノレベルの表面被膜が形成されて電解液の過剰な酸化分解を抑制できたためと考えられる。
(比較例1)
電解液の添加剤として、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO)を0.5質量%、1.0質量%配合したリチウムジフルオロオキサレートホスフェート(LiDFBOP)を0.5質量%、トリス(トリメチルシリル)ホスフェートを0.5質量%配合した4種類の電解液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、高温サイクル試験を実施して電池特性を評価した結果を図3に示す。図3に示すように、比較例1のリチウムイオン電池は、いずれも20サイクル後の容量維持率が低く、また添加剤の添加量を増やした場合でも容量維持率が略一定であることが分かる。
(比較例2)
正極活物質層の原料粉末に用いたコバルト−ニッケル−マンガン系のリチウム複合酸化物の固溶体(Li1.27Ni0.19Co0.12Mn0.63、戸田工業社製)に代えて、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン系複合酸化物(Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、初期3サイクルの充電プロファイル結果を測定した。結果を図5に示す。
図5に示すように、比較例2のリチウムイオン電池は、4.5Vの高電圧の条件下で充電した場合には、図4Bに示した実施例1の場合とは異なり充電電圧の平坦部が現れず、十分な電池特性が得られないことが分かる。また、比較例2のリチウムイオン電池は、容量密度が約160mAh/g程度しか得られないことが分かる。この結果は、電極にナノレベルの表面被膜が形成される実施例1とは異なり、比較例2のリチウムイオン電池では、高電圧条件で充電すると電極材料の骨格構造が歪み、可逆の充放電容量を取り出すことができなかったためと考えられる。
1 リチウムイオン二次電池
11 容器
12 正極
120 正極活物質層
121 正極集電体
122 リチウムイオン
123 リチウム複合酸化物
124 バインダー
13 負極
130 負極活物質層
131 負極集電体
132 リチウムイオン
133 負極活物質
134 導電助剤
135 バインダー
15 セパレータ
16 正極端子
17 負極端子
18 安全弁
19A、19B タブ

Claims (4)

  1. 正極活物質として下記一般式(1)で表されるリチウム系複合酸化物を含む正極と、
    負極活物質として黒鉛を含む負極と、
    ホウ素系添加剤を含有する電解液とを備えたことを特徴とする、非水電解質電池。
    一般式(1)
    X[Li(Li1/3Mn2/3)O]−(1−X)[Li(NiαCoβMnγ)O
    (式(1)中、Xは、0<Xを満たす数であり、α、β及びγは、α+β+γ≦1.0を満たす数である。)
  2. 前記一般式(1)において、Xが0.3<X<1.0を満たす、請求項1に記載の非水電解質電池。
  3. 前記ホウ素系添加剤が、下記式(2)で表されるリチウムジフルオロオキサレートボレート、下記式(3)で表されるリチウムビスオキサレートボレート及び下記式(4)で表されるリチウムテトラフルオロボレートからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1又は請求項2に記載の非水電解質電池。
    Figure 2015162304
  4. 前記電解液における前記ホウ素系添加剤の配合量が、0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
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