JP2015160994A - 電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用導電部品および端子 - Google Patents

電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用導電部品および端子 Download PDF

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Abstract

【課題】耐応力緩和特性が確実かつ十分に優れているとともに強度、曲げ加工性に優れた電子・電気機器用銅合金を提供する。【解決手段】Znを2.0mass%超えて36.5mass%以下、Snを0.10mass%以上0.90mass%以下、Niを0.15mass%以上1.00mass%未満、Pを0.005mass%以上0.100mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、原子比で3.0<Ni/P<100.0、0.10<Sn/Ni<2.90を満たし、NiとPとを含有するNi−P系析出物を有し、粒子径が1nm以上100nm以下のNi−P系析出物が1μm3あたり平均で10個以上、100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物が1μm3あたり平均で0.005個以上10個以下存在し、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1以上50μm以下の範囲内である。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体装置のコネクタや、その他の端子、あるいは電磁リレーの可動導電片や、リードフレームなどの電子・電気機器用導電部品として使用されるCu−Zn―Sn系の電子・電気機器用銅合金と、それを用いた電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用導電部品及び端子に関するものである。
上述の電子・電気用導電部品として、強度、加工性、コストのバランスなどの観点から、Cu−Zn合金が従来から広く使用されている。
また、コネクタなどの端子の場合、相手側の導電部材との接触の信頼性を高めるため、Cu−Zn合金からなる基材(素板)の表面に錫(Sn)めっきを施して使用することがある。Cu−Zn合金を基材としてその表面にSnめっきを施したコネクタなどの導電部品においては、Snめっき材のリサイクル性を向上させるとともに、強度を向上させるため、Cu−Zn―Sn系合金を使用する場合がある。
ここで、例えばコネクタ等の電子・電気機器用導電部品は、一般に、厚みが0.05〜1.0mm程度の薄板(圧延板)に打ち抜き加工を施すことによって所定の形状とし、その少なくとも一部に曲げ加工を施すことによって製造される。この場合、曲げ部分付近で相手側導電部材と接触させて相手側導電部材との電気的接続を得るとともに、曲げ部分のバネ性により相手側導電部材との接触状態を維持させるように使用される。
このような電子・電気機器用導電部品に用いられる電子・電気機器用銅合金においては、導電性、圧延性や打ち抜き加工性が優れていることが望まれる。さらに、前述のように、曲げ加工を施してその曲げ部分のバネ性により、曲げ部分付近で相手側導電部材との接触状態を維持するように使用されるコネクタなどの場合は、曲げ加工性、耐応力緩和特性が優れていることが要求される。
そこで、例えば特許文献1〜4には、Cu−Zn―Sn系合金の耐応力緩和特性を向上させるための方法が提案されている。
特許文献1には、Cu−Zn―Sn系合金にNiを含有させてNi−P系化合物を生成させることによって耐応力緩和特性を向上させることができるとされ、またFeの添加も耐応力緩和特性の向上に有効であることが示されている。
特許文献2においては、Cu−Zn―Sn系合金に、Ni、FeをPとともに添加して化合物を生成させることにより、強度、弾性、耐熱性を向上させ得ることが記載されており、上記の強度、弾性、耐熱性の向上は、耐応力緩和特性の向上を意味していると考えられる。
また、特許文献3においては、Cu−Zn―Sn系合金にNiを添加するとともに、Ni/Sn比を特定の範囲内に調整することにより耐応力緩和特性を向上させることができると記載され、またFeの微量添加も耐応力緩和特性の向上に有効である旨、記載されている。
さらに、リードフレーム材を対象とした特許文献4においては、Cu−Zn―Sn系合金に、Ni、FeをPとともに添加し、(Fe+Ni)/Pの原子比を0.2〜3の範囲内に調整して、Fe―P系化合物、Ni―P系化合物、Fe―Ni―P系化合物を生成させることにより、耐応力緩和特性の向上が可能となる旨、記載されている。
特開平5−33087号公報 特開2006−283060号公報 特許第3953357号公報 特許第3717321号公報
ところで、最近では、電子・電気機器のさらなる小型化及び軽量化が図られており、電子・電気機器用導電部品に用いられる電子・電気機器用銅合金においては、さらなる強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性の向上が求められている。
しかしながら、特許文献1、2においては、Ni、Fe、Pの個別の含有量が考慮されているだけであり、このような個別の含有量の調整だけでは、必ずしも耐応力緩和特性を確実かつ十分に向上させることができなかった。
また、特許文献3においては、Ni/Sn比を調整することが開示されているが、P化合物と耐応力緩和特性との関係については全く考慮されておらず、十分かつ確実な耐応力緩和特性の向上を図ることができなかった。
さらに、特許文献4においては、Fe、Ni、Pの合計量と、(Fe+Ni)/Pの原子比とを調整しただけであり、耐応力緩和特性の十分な向上を図ることができなかった。
以上のように、従来から提案されている方法では、Cu−Zn―Sn系合金の耐応力緩和特性を十分に向上させることができなかった。このため、上述した構造のコネクタ等においては、経時的に、もしくは高温環境で、残留応力が緩和されて相手側導電部材との接触圧が維持されず、接触不良などの不都合が早期に生じやすいという問題があった。このような問題を回避するために、従来は材料の肉厚を大きくせざるを得ず、材料コストの上昇、重量の増大を招いていた。そこで、耐応力緩和特性のより一層の確実かつ十分な改善が強く望まれている。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、耐応力緩和特性が確実かつ十分に優れているとともに強度、曲げ加工性に優れた電子・電気機器用銅合金、それを用いた電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用導電部品及び端子を提供することを課題としている。
本発明者らは、鋭意実験・研究を重ねたところ、Cu−Zn―Sn系合金に、Niを適量添加するとともに、Pを適量添加し、Niの含有量とPの含有量との比Ni/Pと、Snの含有量とNiの含有量との比Sn/Niとを、それぞれ原子比で適切な範囲内に調整することにより、NiとPとを含有するNi−P系析出物を適切に析出させ、同時に粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1μm以上50μm以下の範囲内であることによって、耐応力緩和特性を確実かつ十分に向上させると同時に、強度、曲げ加工性に優れた銅合金が得られることを見い出した。
さらに、上記のNi、Pと同時に適量のFe及びCoを添加し、Ni,FeおよびCoの合計含有量とPの含有量との比(Ni+Fe+Co)/Pと、Snの含有量とNi,FeおよびCoの合計含有量との比Sn/(Ni+Fe+Co)と、FeとCoの合計含有量とNiの含有量との比(Fe+Co)/Niとを、それぞれ原子比で適切な範囲内に調整することにより、FeとCoとNiからなる群から選択される少なくとも一種の元素とPとを含有する〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を適切に析出させ、同時に粒子径が1nm以上100nmの範囲内の〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内の〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1μm以上50μm以下の範囲内であることによって、耐応力緩和特性及び強度をより一層向上させることができることを見い出した。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
本発明に係る電子・電気機器用銅合金は、Znを2.0mass%超えて36.5mass%以下、Snを0.10mass%以上0.90mass%以下、Niを0.15mass%以上1.00mass%未満、Pを0.005mass%以上0.100mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、Niの含有量とPの含有量との比Ni/Pが、原子比で、3.0<Ni/P<100.0を満たし、かつ、Snの含有量とNiの含有量との比Sn/Niが、原子比で、0.10<Sn/Ni<2.90を満たし、さらに、NiとPとを含有するNi−P系析出物を有しており、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内の前記Ni−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1μm以上50μm以下の範囲内であることを特徴としている。
前述の構成の電子・電気機器用銅合金によれば、NiをPとともに添加し、Sn、Ni、およびPの相互間の添加比率を規制し、母相(α相主体)から析出したNiとPとを含有するNi−P系析出物を有しており、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物を1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物を1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在させるとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径を0.1μm以上50μm以下の範囲内としているので、耐応力緩和特性が確実かつ十分に優れ、しかも強度(耐力)も高い。
なお、ここでNi−P系析出物とは、Ni―Pの2元系析出物であり、さらにこれらに他の元素、例えば主成分のCu、Zn、Sn、不純物のO、S、C、Co、Cr、Mo、Mn、Mg、Zr、Tiなどを含有した多元系析出物を含むことがある。また、このNi−P系析出物は、リン化物、もしくはリンを固溶した合金の形態で存在する。
また、本発明に係る電子・電気機器用銅合金は、Znを2.0mass%超えて36.5mass%以下、Snを0.10mass%以上0.90mass%以下、Niを0.15mass%以上1.00mass%未満、Pを0.005mass%以上0.100mass%以下含有するとともに、0.001mass%以上0.100mass%未満のFe及び0.001mass%以上0.100mass%未満のCoのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、Ni、FeおよびCoの合計含有量(Ni+Fe+Co)とPの含有量との比(Ni+Fe+Co)/Pが、原子比で、3.0<(Ni+Fe+Co)/P<100.0を満たし、かつ、Snの含有量とNi、FeおよびCoの合計含有量(Ni+Fe+Co)との比Sn/(Ni+Fe+Co)が、原子比で、0.10<Sn/(Ni+Fe+Co)<2.90を満たすとともに、FeとCoの合計含有量とNiの含有量との比(Fe+Co)/Niが、原子比で、0.002≦(Fe+Co)/Ni<1.500を満たし、さらに、FeとCoとNiからなる群から選択される少なくとも一種の元素とPとを含有する〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を有しており、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内の前記〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内の〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1以上50μm以下の範囲内であることを特徴としている。
前述の構成の電子・電気機器用銅合金によれば、NiをPとともに添加し、さらに適量のFe及びCoを添加し、Sn、Ni、Fe、CoおよびPの相互間の添加比率を規制し、母相(α相主体)から析出したFeとCoとNiからなる群から選択される少なくとも一種の元素とPとを含有する〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を有しており、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内の〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内の〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在させるとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径を0.1μm以上50μm以下の範囲内としているので、耐応力緩和特性が確実かつ十分に優れ、しかも強度(耐力)も高い。
なお、ここで〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物とは、Ni―P、Fe―PもしくはCo―Pの2元系析出物、Ni―Fe―P、Ni―Co―PもしくはFe−Co―Pの3元系析出物、あるいはNi−Fe―Co―Pの4元系析出物であり、さらにこれらに他の元素、例えば主成分のCu、Zn、Sn、不純物のO、S、C、Cr、Mo、Mn、Mg、Zr、Tiなどを含有した多元系析出物を含むことがある。また、この〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物は、リン化物、もしくはリンを固溶した合金の形態で存在する。
本発明の電子・電気機器用銅合金薄板は、上述の電子・電気機器用銅合金の圧延材からなり、厚みが0.05mm以上1.0mm以下の範囲内にあることを特徴とする。
このような厚みの圧延板薄板(条材)は、コネクタ、その他の端子、電磁リレーの可動導電片、リードフレームなどに好適に使用することができる。
ここで、本発明の電子・電気機器用銅合金薄板においては、表面にSnめっきが施されていてもよい。
この場合、Snめっきの下地の基材は0.10mass%以上0.90mass%以下のSnを含有するCu−Zn―Sn系合金で構成されているため、使用済みのコネクタなどの部品をSnめっきCu−Zn系合金のスクラップとして回収して良好なリサイクル性を確保することができる。
本発明の電子・電気機器用導電部品は、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする。
さらに、本発明の電子・電気機器用導電部品は、上述の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴とする。
なお、本発明における電子・電気機器用導電部品とは、端子、コネクタ、リレー、リードフレーム等を含むものである。
本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする。
さらに、本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴とする。
なお、本発明における端子は、コネクタ等を含むものである。
これらの構成の電子・電気機器用導電部品及び端子によれば、特に耐応力緩和特性に優れているので、経時的にもしくは高温環境で、残留応力が緩和されにくく、信頼性に優れている。
本発明によれば、耐応力緩和特性が確実かつ十分に優れているとともに、強度、曲げ加工性に優れた電子・電気機器用銅合金、それを用いた電子・電気機器用銅合金薄板、電子・電気機器用導電部品及び端子を提供することができる。
本発明の電子・電気機器用銅合金の製造方法の工程例を示すフローチャートである。 実施例において析出物の観察例を示すTEM(透過型電子顕微鏡)観察写真(倍率150,000倍)、及び、この観察写真を2値化処理した画像である。 実施例において析出物の観察例を示すTEM(透過型電子顕微鏡)観察写真(倍率15,000倍)、及び、この観察写真を2値化処理した画像である。
以下に、本発明の一実施形態である電子・電気機器用銅合金について説明する。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、Znを2.0mass%超えて36.5mass%以下、Snを0.10mass%以上0.90mass%以下、Niを0.15mass%以上1.00mass%未満、Pを0.005mass%以上0.100mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる組成を有する。
そして、各合金元素の相互間の含有量比率として、Niの含有量とPの含有量との比Ni/Pが、原子比で、次の(1)式
3.0<Ni/P<100.0 ・・・(1)を満たし、さらにSnの含有量とNiの含有量との比Sn/Niが、原子比で、次の(2)式
0.10<Sn/Ni<2.90 ・・・(2)を満たすように定められている。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、上記のZn、Sn、Ni、Pのほかに、さらに0.001mass%以上0.100mass%未満のFe及び0.001mass%以上0.100mass%未満のCoのいずれか一方又は両方を含有してもよい。
この場合、各合金元素の相互間の含有量比率として、Ni、FeおよびCoの合計含有量(Ni+Fe+Co)とPの含有量との比(Ni+Fe+Co)/Pが、原子比で、次の(1´)式
3.0<(Ni+Fe+Co)/P<100.0 ・・・(1´)を満たし、さらにSnの含有量とNi、FeおよびCoの合計含有量(Ni+Fe+Co)との比Sn/(Ni+Fe+Co)が、原子比で、次の(2´)式
0.10<Sn/(Ni+Fe+Co)<2.90 ・・・(2´)を満たし、さらにFeおよびCoの合計含有量とNiの含有量との比(Fe+Co)/Niが、原子比で、次の(3´)式
0.002≦(Fe+Co)/Ni<1.500 ・・・(3´)を満たすように定められている。
ここで、上述のように成分組成を規定した理由について以下に説明する。
(Zn:2.0mass%超えて36.5mass%以下)
Znは、本実施形態で対象としている銅合金において基本的な合金元素であり、強度およびばね性の向上に有効な元素である。また、ZnはCuより安価であるため、銅合金の材料コストの低減にも効果がある。Znが2.0mass%以下では、材料コストの低減効果が十分に得られない。一方、Znが36.5mass%を超えれば、耐食性が低下するとともに、冷間圧延性も低下してしまう。
したがって、Znの含有量は2.0mass%超えて36.5mass%以下の範囲内とした。なお、Znの含有量は、上記の範囲内でも5.0mass%以上33.0mass%以下の範囲内が好ましく、7.0mass%以上27.0mass%以下の範囲内がさらに好ましい。
(Sn:0.10mass%以上0.90mass%以下)
Snの添加は強度向上に効果があり、Snめっき付きCu−Zn合金材のリサイクル性の向上に有利となる。さらに、SnがNiと共存すれば、耐応力緩和特性の向上にも寄与することが本発明者等の研究により判明している。Snが0.10mass%未満ではこれらの効果が十分に得られず、一方、Snが0.90mass%を超えれば、熱間加工性および冷間圧延性が低下し、熱間圧延や冷間圧延で割れが発生してしまうおそれがあり、導電率も低下してしまう。
したがって、Snの含有量は0.10mass%以上0.90mass%以下の範囲内とした。なお、Snの含有量は、上記の範囲内でも特に0.20mass%以上0.80mass%以下の範囲内が好ましい。
(Ni:0.15mass%以上1.00mass%未満)
Niは、Pとともに添加することにより、Ni−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができ、また、Fe及びCoの一方又は両方とPとともに添加することにより、〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができる。これらNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物によって再結晶の際に結晶粒界をピン止めする効果により、平均結晶粒径を小さくすることができ、強度、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。さらに、これらの析出物の存在により、耐応力緩和特性を大幅に向上させることができる。加えて、NiをSn、(Fe,Co)、Pと共存させることで、固溶強化によっても向上させることができる。ここで、Niの添加量が0.15mass%未満では、耐応力緩和特性を十分に向上させることができない。一方、Niの添加量が1.00mass%以上となれば、固溶Niが多くなって導電率が低下し、また高価なNi原材料の使用量の増大によりコスト上昇を招く。
したがって、Niの含有量は0.15mass%以上1.00mass%未満の範囲内とした。なお、Niの含有量は、上記の範囲内でも特に0.20mass%以上0.80mass%未満の範囲内、さらには0.50mass%を超えて0.80mass%未満の範囲内とすることが好ましい。より好ましくは0.55mass%以上0.80mass%未満の範囲内である。
(P:0.005mass%以上0.100mass%以下)
Pは、Niとの結合性が高く、Niとともに適量のPを含有させれば、Ni−P系析出物を析出させることができ、また、Fe及びCoの一方又は両方とPとともに添加することにより、〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができる。これらNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の存在によって耐応力緩和特性を向上させることができる。ここで、P量が0.005mass%未満では、十分にNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を析出させることが困難となり、十分に耐応力緩和特性を向上させることができなくなる。一方、P量が0.10mass%を超えれば、P固溶量が多くなって、導電率が低下するとともに圧延性が低下して冷間圧延割れが生じやすくなってしまう。
したがって、Pの含有量は、0.005mass%以上0.100mass%以下の範囲内とした。Pの含有量は、上記の範囲内でも特に0.010mass%以上0.080mass%以下の範囲内が好ましい。
なお、Pは、銅合金の溶解原料から不可避的に混入することが多い元素であることから、Pの含有量を上述のように規制するためには、溶解原料を適切に選定することが望ましい。
(Fe:0.001mass%以上0.100mass%未満)
Feは、必ずしも必須の添加元素ではないが、少量のFeをNi、Pとともに添加すれば、〔Ni,Fe〕−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができ、さらに少量のCoを添加することにより、〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができる。これら〔Ni,Fe〕−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物によって再結晶の際に結晶粒界をピン止めする効果により、平均結晶粒径を小さくすることができ、強度、曲げ加工性、耐応力腐食割れ性を向上させることができる。さらに、これらの析出物の存在により、耐応力緩和特性を大幅に向上させることができる。ここで、Feの添加量が0.001mass%未満では、Fe添加による耐応力緩和特性のより一層の向上効果が得られない。一方、Feの添加量が0.100mass%以上となれば、固溶Feが多くなって導電率が低下し、また冷間圧延性も低下してしまう。
そこで、本実施形態では、Feを添加する場合には、Feの含有量を0.001mass%以上0.100mass%未満の範囲内とした。なお、Feの含有量は、上記の範囲内でも特に0.002mass%以上0.080mass%以下の範囲内とすることが好ましい。なお、Feを積極的に添加しない場合でも、不純物として0.001mass%未満のFeが含有されることがある。
(Co:0.001mass%以上0.100mass%未満)
Coは、必ずしも必須の添加元素ではないが、少量のCoをNi、Pとともに添加すれば、〔Ni,Co〕−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができ、さらに少量のFeを添加することにより、〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を母相(α相主体)から析出させることができる。これら〔Ni,Co〕−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物によって耐応力緩和特性をより一層向上させることができる。ここで、Co添加量が0.001mass%未満では、Co添加による耐応力緩和特性のより一層の向上効果が得られず、一方、Co添加量が0.100mass%以上となれば、固溶Coが多くなって導電率が低下し、また高価なCo原材料の使用量の増大によりコスト上昇を招く。
そこで、本実施形態では、Coを添加する場合には、Coの含有量を0.001mass%以上0.100mass%未満の範囲内とした。Coの含有量は、上記の範囲内でも特に0.002mass%以上0.080mass%以下の範囲内とすることが好ましい。なお、Coを積極的に添加しない場合でも、不純物として0.001mass%未満のCoが含有されることがある。
以上の各元素の残部は、基本的にはCuおよび不可避的不純物とすればよい。ここで、不可避的不純物としては、(Fe),(Co),Mg,Al, Mn,Si,Cr,Ag,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Re,Ru,Os,Se,Te,Rh,Ir,Pd,Pt,Au,Cd,Ga,In,Li,Ge,As,Sb,Ti,Tl,Pb,Bi,S,O,C,Be,N,H,Hg, B、Zr、希土類等挙げられる。これらの不可避不純物は、総量で0.3mass%以下であることが望ましい。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、各合金元素の個別の添加量範囲を上述のように調整するばかりではなく、それぞれの元素の含有量の相互の比率が、原子比で、前記(1)、(2)式、あるいは(1´)〜(3´)式を満たすように規制することが重要である。そこで、以下に(1)、(2)式、(1´)〜(3´)式の限定理由を説明する。
(1)式: 3.0<Ni/P<100.0
Ni/P比が3.0以下では、固溶Pの割合の増大に伴って耐応力緩和特性が低下し、また同時に固溶Pにより導電率が低下するとともに、圧延性が低下して冷間圧延割れが生じやすくなり、さらに曲げ加工性も低下する。一方、Ni/P比が100.0以上となれば、固溶したNiの割合の増大により導電率が低下するとともに高価なNiの原材料使用量が相対的に多くなってコスト上昇を招く。そこで、Ni/P比を上記の範囲内に規制することとした。なお、Ni/P比の上限値は、上記の範囲内でも、50.0以下、好ましくは40.0以下、さらに好ましくは20.0以下、さらには15.0未満、最適には12.0以下とすることが望ましい。
(2)式: 0.10<Sn/Ni<2.90
Sn/Ni比が0.10以下では、十分な耐応力緩和特性向上効果が発揮されず、一方、Sn/Ni比が2.90以上の場合、相対的にNi量が少なくなって、Ni−P系析出物の量が少なくなり、耐応力緩和特性が低下してしまう。そこで、Sn/Ni比を上記の範囲内に規制することとした。なお、Sn/Ni比の下限は、上記の範囲内でも、特に0.20以上、好ましくは0.25以上、最適には0.30超えとすることが望ましい。また、Sn/Ni比の上限は、上記の範囲内でも、2.50以下、好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.50以下とすることが望ましい。
(1´)式: 3.0<(Ni+Fe+Co)/P<100.0
Fe及びCoの一方又は両方を添加した場合、Niの一部がFe,Coで置き換えられたものを考えればよく、(1´)式も基本的には(1)式に準じている。ここで、(Ni+Fe+Co)/P比が3.0以下では、固溶Pの割合の増大に伴って耐応力緩和特性が低下し、また同時に固溶Pにより導電率が低下するとともに、圧延性が低下して冷間圧延割れが生じやすくなり、さらに曲げ加工性も低下する。一方、(Ni+Fe+Co)/P比が100.0以上となれば、固溶したNi、Fe、Coの割合の増大により導電率が低下するとともに高価なCoやNiの原材料使用量が相対的に多くなってコスト上昇を招く。そこで、(Ni+Fe+Co)/P比を上記の範囲内に規制することとした。なお、(Ni+Fe+Co)/P比の上限値は、上記の範囲内でも、50.0以下、好ましくは40.0以下、さらに好ましくは20.0以下、さらには15.0未満、最適には12.0以下とすることが望ましい。
(2´)式: 0.10<Sn/(Ni+Fe+Co)<2.90
Fe及びCoの一方又は両方を添加した場合の(2´)式も、前記(2)式に準じている。Sn/(Ni+Fe+Co)比が0.10以下では、十分な耐応力緩和特性向上効果が発揮されず、一方、Sn/(Ni+Fe+Co)比が2.90以上となれば、相対的に(Ni+Fe+Co)量が少なくなって、〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の量が少なくなり、耐応力緩和特性が低下してしまう。そこで、Sn/(Ni+Fe+Co)比を上記の範囲内に規制することとした。なお、Sn/(Ni+Fe+Co)比の下限は、上記の範囲内でも、特に0.20以上、好ましくは0.25以上、最適には0.30超えとすることが望ましい。また、Sn/(Ni+Fe+Co)比の上限は、上記の範囲内でも、2.50以下、好ましくは2.00以下、さらに好ましくは1.50以下とすることが望ましい。
(3´)式: 0.002≦(Fe+Co)/Ni<1.500
Fe及びCoの一方又は両方を添加した場合には、NiとFe及びCoの含有量の合計とNiの含有量との比も重要となる。(Fe+Co)/Ni比が1.500以上の場合には、耐応力緩和特性が低下するとともに高価なCo原材料の使用量の増大によりコスト上昇を招く。(Fe+Co)/Ni比が0.002未満の場合には、強度が低下するとともに高価なNiの原材料使用量が相対的に多くなってコスト上昇を招く。そこで、(Fe+Co)/Ni比は、上記の範囲内に規制することとした。なお、(Fe+Co)/Ni比は、上記の範囲内でも、特に0.002以上1.200以下の範囲内が望ましい。さらに好ましくは0.002以上0.700以下の範囲内が望ましい。
以上のように各合金元素を、個別の含有量だけではなく、各元素相互の比率として、(1)、(2)式もしくは(1´)〜(3´)式を満たすように調整した電子・電気機器用銅合金においては、Ni−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が、母相(α相主体)から分散析出したものとなり、このような析出物の分散析出によって、耐応力緩和特性が向上するものと考えられる。
また、本発明の電子・電気機器用銅合金においては、その成分組成を上述のように調整するだけではなく、Ni−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の個数が規定されている。具体的には、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するものとされている。析出物の個数を上述のように規定した理由について以下に説明する。
(析出物の個数)
母相(α相主体)から析出したNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物は、単位体積あたりの数密度が高くかつ微細であれば、転位に対してピン止め効果を発揮し、強度および耐応力緩和特性を向上させる。
ここで、Ni−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の粒子径が100nmよりも大きければ単位体積あたりの数密度が低くなり、転位に対して十分なピン止め効果が発揮できず、粒子径が1nm未満であればピン止め効果を発揮できないため強度および耐応力緩和特性の向上が図れない。
また、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の単位体積あたりの個数は、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の密度分布に影響を与える。すなわち粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個未満であれば、母材中において粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の密度の高い領域と低い領域が生じ、結果としてサンプル採取位置により析出物密度の低い部分では耐応力緩和特性が十分に向上しない。また粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個を超えて存在すると、粒子径が1nm以上100nm以下の析出物の密度が相対的に低くなるため、その領域で、耐応力緩和特性が低くなる。
そこで、本実施形態では、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下と、析出物の個数を規定している。このように、Ni−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の個数を規定することにより、耐応力緩和特性が確実かつ十分に優れ、しかも強度(耐力)も高く、特性が均一な電子・電気機器用銅合金を得ることが可能となるのである。
なお、粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物は、1μmあたり平均で30個以上存在することが好ましく、さらに1μmあたり平均で50個以上であることが好ましく、1μmあたり平均で100個以上存在することがより好ましい。また、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物は、1μmあたり平均で0.005個以上5個以下存在することが好ましく、さらには1μmあたり平均で0.010個以上3個以下存在することが好ましい。
さらに、本発明の電子・電気機器用銅合金においては、その成分組成を上述のように調整するだけではなく、合金の母相、すなわちCuを主体としてZn及びSnが固溶しているα相の結晶粒の平均粒径を0.1μm以上50μm以下の範囲内に規制することも重要である。Cuを主体としてZn及びSnが固溶しているα相の結晶粒の平均粒径を上述のように規定した理由について以下に説明する。
(α相の結晶粒の平均粒径)
耐応力緩和特性には、材料の結晶粒径もある程度の影響を与えることが知られており、一般には結晶粒径が小さいほど耐応力緩和特性は低下する。一方、強度と曲げ加工性は、結晶粒径が小さいほど向上する。本発明の合金の場合、成分組成と各合金元素の比率の適切な調整によって良好な耐応力緩和特性を確保できるため、結晶粒径を小さくして、強度と曲げ加工性の向上を図ることができる。ここで、製造プロセス中における再結晶および析出のための仕上げ熱処理後の段階で、α相の結晶粒の平均粒径が0.1μm以上50μm以下であれば、耐応力緩和特性を確保しつつ、強度と曲げ加工性を向上させることができる。α相の結晶粒の平均粒径が50μmを越えれば、充分な強度と曲げ加工性を得ることができず、一方、α相の結晶粒の平均粒径が0.1μm未満では、成分組成と各合金元素の比率を適切に調整しても、耐応力緩和特性を確保することが困難となる。なお、α相の結晶粒の平均粒径は、耐応力緩和特性と、強度および曲げ加工性のバランスを向上させるためには、0.5μm以上20μm以下の範囲内が好ましく、さらに0.5μm以上10μm以下の範囲内がより好ましい。
次に、前述のような実施形態の電子・電気機器用銅合金の製造方法の好ましい例について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
〔溶解・鋳造工程:S01〕
まず、前述した成分組成の銅合金溶湯を溶製する。銅原料としては、純度が99.99mass%以上の4NCu(無酸素銅等)を使用することが望ましいが、スクラップを原料として用いてもよい。また、溶解には、大気雰囲気炉を用いてもよいが、添加元素の酸化を抑制するために、真空炉、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いてもよい。
次いで、成分調整された銅合金溶湯を、適宜の鋳造法、例えば金型鋳造などのバッチ式鋳造法、あるいは連続鋳造法、半連続鋳造法などによって鋳造して鋳塊を得る。
〔加熱工程:S02〕
その後、必要に応じて、鋳塊の偏析を解消して鋳塊組織を均一化するために均質化熱処理を行う。または晶出物、析出物を固溶させるために溶体化熱処理を行う。この熱処理の条件は特に限定しないが、通常は600℃以上1000℃以下において5分以上24時間以下加熱すればよい。熱処理温度が600℃未満、あるいは熱処理時間が5分未満では、十分な均質化効果または溶体化効果が得られないおそれがある。一方、熱処理温度が1000℃を超えれば、偏析部位が一部溶解してしまうおそれがあり、さらに熱処理時間が24時間を超えることはコスト上昇を招くだけである。熱処理後の冷却条件は、適宜定めればよいが、通常は水焼入れすればよい。なお、熱処理後には、必要に応じて面削を行う。
〔熱間加工工程:S03〕
次いで、粗加工の効率化と組織の均一化のために、前述の加熱工程S02の後に、鋳塊に対して熱間加工を行ってもよい。この熱間加工の条件は特に限定されないが、通常は、開始温度600℃以上1000℃以下、終了温度300℃以上850℃以下、加工率10%以上99%以下程度とすることが好ましい。なお、熱間加工開始温度までの鋳塊加熱は、前述の加熱工程S02と兼ねてもよい。すなわち、加熱工程S02で加熱した後に室温近くまで冷却せずに、上述の熱間加工開始温度において熱間加工を開始してもよい。熱間加工後の冷却条件は、適宜定めればよいが、通常は水焼入れすればよい。なお、熱間加工後には、必要に応じて面削を行う。熱間加工の加工方法については、特に限定されないが、最終形状が板や条の場合は熱間圧延を適用して、0.5mm以上50mm以下程度の板厚まで圧延すればよい。また、最終形状が線や棒の場合には押出や溝圧延を、最終形状がバルク形状の場合には鍛造やプレスを適用すればよい。
〔粗加工工程:S04〕
次に、加熱工程S02で均質化処理を施した鋳塊、あるいは熱間圧延などの熱間加工工程S03を施した熱間加工材に対して、粗加工を施す。この粗加工における温度条件は特に限定はないが、冷間又は温間加工となる−200℃から+200℃の範囲内とすることが好ましい。粗加工の加工率も特に限定されないが、通常は50%以上99%以下程度とする。加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は、圧延を適用すればよい。また、最終形状が線や棒の場合には、押出や溝圧延、さらに最終形状がバルク形状の場合には、鍛造やプレスを適用することができる。なお、溶体化の徹底のために、S02〜S04を繰り返してもよい。
〔中間熱処理工程:S05〕
冷間もしくは温間での粗加工工程S04の後に、溶体化熱処理および再結晶処理を兼ねた中間熱処理を施す。ここで、中間熱処理においては、バッチ式の加熱炉を用いてもよいし、連続焼鈍ラインを用いてもよい。そして、バッチ式の加熱炉を用いて中間熱処理を実施する場合には、200℃以上800℃以下の温度で5分以上24時間以下加熱することが好ましい。また、連続焼鈍ラインを用いて中間熱処理を実施する場合には、加熱到達温度を350℃以上800℃以下とし、かつこの範囲内の温度で、保持なし、若しくは1秒以上5分以下程度保持することが好ましく、加熱到達温度を400℃以上800℃以下とし、かつこの範囲内の温度で、保持なし、若しくは1秒以上5分以下程度保持することがさらに好ましい。さらに650℃以上800℃以下とすることが好ましい。以上のように、中間熱処理工程S05における熱処理条件は、熱処理を実施する具体的手段によって異なることになる。
また、中間熱処理の雰囲気は、非酸化性雰囲気(窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、あるいは還元性雰囲気)とすることが好ましい。
中間熱処理後の冷却条件は、特に限定しないが、通常は100℃/時〜2000℃/秒間程度の冷却速度で冷却すればよい。連続焼鈍ラインを用いて中間熱処理を実施する場合には、150℃以下の温度になるまで、100℃/分〜2000℃/秒間程度の冷却速度で冷却することが好ましい。
〔中間加工工程:S06〕
次に、中間熱処理工程S05を施した中間熱処理材に対して、中間加工を施す。この中間加工工程S06において加工率は45%以上が好ましい。加工率を45%以上とすることによって加工による転位密度の増加が図られ、析出核生成サイトが増加することにより、微細な析出物を母相に高密度に生成させることができる。ここで、加工方法は特に限定されないが、最終形態が板や条である場合、圧延を採用する。他には鍛造やプレス、溝圧延を採用しても良い。加工温度も特に限定されないが、冷間または温間となる−200〜200℃とすることが好ましい。
〔仕上熱処理工程:S07〕
中間加工工程S06の後に、再結晶処理と析出処理を兼ねた仕上熱処理を施す。この仕上熱処理を実施することで、微細なNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が高密度で析出する。
仕上熱処理の具体的手法としては、バッチ式の加熱炉を用いてもよい。あるいは連続焼鈍ラインを用いて連続的に加熱してもよい。バッチ式の加熱炉を使用する場合は、300℃以上800℃以下の温度で、5分以上24時間以下加熱することが好ましく、350℃以上700℃以下の温度で、5分以上24時間以下加熱することがさらに好ましい。
また連続焼鈍ラインを用いる場合は、加熱到達温度を350℃以上800℃以下とし、かつその範囲内の温度で、保持なし、もしくは1秒以上5分以下程度保持することが好ましく、加熱到達温度を400℃以上800℃以下とし、かつその範囲内の温度で、保持なし、もしくは1秒以上5分以下程度保持することがさらに好ましい。
また、仕上熱処理の雰囲気は、非酸化性雰囲気(窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元性雰囲気)とすることが好ましい。
なお、析出物の数密度を増加させるために、S06〜S07を繰り返してもよい。
〔仕上加工工程:S08〕
次に、仕上熱処理工程S07を施した材料に対して、最終寸法、最終形状まで仕上加工を行ってもよい。仕上加工における塑性加工方法は特に限定されないが、最終製品形態が板や条である場合には、圧延(冷間圧延)を適用すればよい。その他、最終製品形態に応じて、鍛造やプレス、溝圧延などを適用してもよい。加工率は最終板厚や最終形状に応じて適宜選択すればよいが、1%以上95%以下、特に5%以上90%以下の範囲内が好ましい。また、Zn量が20mass%未満の場合は35%以上85%以下、Zn量が20mass%以上では20%以上80%以下とすることがさらに好ましい。加工率が1%未満では、耐力を向上させる効果が十分に得られない。一方、加工率が95%を超えれば、再結晶組織が失われ、加工組織となることで曲げ加工性が低下してしまう。仕上加工後は、これをそのまま製品として用いてもよいが、通常は、さらに低温焼鈍を施すことが好ましい。
〔低温焼鈍工程:S09〕
仕上加工後には、必要に応じて、耐応力緩和特性の向上および低温焼鈍硬化のために、または残留ひずみの除去のために、低温焼鈍を行う。この低温焼鈍は、150℃以上800℃以下の範囲内の温度で、0.1秒以上24時間以下行うことが望ましい。なお、熱処理温度が低い場合は長時間、熱処理温度が高い場合は短時間の熱処理をすればよい。熱処理の温度が50℃未満、または熱処理の時間が0.1秒未満では、十分な歪み取りの効果が得られなくなるおそれがあり、一方、熱処理の温度が800℃を超える場合は再結晶のおそれがあり、さらに熱処理の時間が24時間を超えることは、コスト上昇を招くだけである。なお、仕上加工工程S08を行わない場合には、低温焼鈍工程S09は省略してもよい。
以上のようにして、本実施形態である電子・電気機器用銅合金を得ることができる。この電子・電気機器用銅合金においては、0.2%耐力が300MPa以上とされている。
また、加工方法として圧延を適用した場合、板厚0.05〜1.0mm程度の電子・電気機器用銅合金薄板(条材)を得ることができる。このような薄板は、これをそのまま電子・電気機器用導電部品に使用してもよいが、板面の一方、もしくは両面に、膜厚0.1〜10μm程度のSnめっきを施し、Snめっき付き銅合金条として、コネクタその他の端子などの電子・電気機器用導電部品に使用するのが通常である。この場合のSnめっきの方法は特に限定されない。また、場合によっては電解めっき後にリフロー処理を施してもよい。
以上のような構成とされた本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、α相主体の母相からNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が適切に存在すると同時に、さらに粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上存在し、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在し、さらに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1以上50μm以下の範囲内とされているので、耐応力緩和特性が均一で確実かつ十分に優れ、しかも強度(耐力)も高く、曲げ加工性も優れることになる。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、0.2%耐力が300MPa以上の機械特性を有するので、例えば電磁リレーの可動導電片あるいは端子のバネ部のごとく、特に高強度が要求される導電部品に適している。より好ましくは0.2%耐力が450MPa以上である。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金薄板は、上述の電子・電気機器用銅合金の圧延材からなることから、耐応力緩和特性に優れており、コネクタ、その他の端子、電磁リレーの可動導電片、リードフレームなどに好適に使用することができる。
また、表面にSnめっきを施した場合には、使用済みのコネクタなどの部品をSnめっきCu−Zn系合金のスクラップとして回収して良好なリサイクル性を確保することができる。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用導電部材及び端子は、上述の電子・電気機器用銅合金薄板によって構成されているので、耐応力緩和特性に優れており、経時的に、もしくは高温環境で、残留応力が緩和されにくい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、製造方法の一例を挙げて説明したが、これに限定されることはなく、最終的に得られた電子・電気機器用銅合金が、本発明の範囲内の組成であり、さらに粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の1μmあたりの平均の個数、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の1μmあたりの平均の個数、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が、本発明の範囲内に設定されていればよい。
以下、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果を示す。なお以下の実施例は、本発明の効果を説明するためのものであって、実施例に記載された構成、プロセス、条件が本発明の技術的範囲を限定するものでない。
まず、Cu−40%Zn母合金および純度99.99mass%以上の無酸素銅(ASTM B152 C10100)からなる原料を準備し、これを高純度グラファイト坩堝内に装入して、Nガス雰囲気において電気炉を用いて溶解した。銅合金溶湯内に、各種添加元素を添加して、表1、2、3に示す成分組成の合金溶湯を溶製し、カーボン鋳型に注湯して鋳塊を製出した。なお、鋳塊の大きさは、厚さ約30mm×幅約50mm×長さ約200mmとした。
続いて各鋳塊について、均質化処理として、Arガス雰囲気中において、表4、5、6に記載した温度で所定時間(1時間〜24時間)保持後、水焼き入れを実施した。
次に、粗加工および中間熱処理を実施した。具体的には、粗加工は鋳塊の幅方向が圧延方向となるようにして圧延率50%以上の冷間圧延を行った。その後、再結晶のための中間熱処理を表4、5、6で示した温度で1時間〜24時間実施し、水焼入れした。その後、圧延材を切断し、酸化被膜を除去するために表面研削を実施した。
その後、中間加工として圧延率50%以上の冷間圧延を実施した後、仕上熱処理をする工程を2回繰り返した、表4、5、6に示す温度で所定時間(1秒〜24時間)実施した。1時間未満の熱処理時間の場合はソルトバス炉を用いて熱処理を行った。また、実施例16および比較例105については仕上げ熱処理後に150℃まで1℃/時で徐冷した後、水焼入れした。次に、仕上圧延を表4、5、6に示す圧延率で実施した。
最後に、低温焼鈍を実施した。低温焼鈍は、表4、5、6に示す温度で所定時間(1秒〜24時間)保持後、水焼入れした。1時間未満の熱処理時間の場合はソルトバス炉を用いて熱処理を行った。そして、切断および表面研磨を実施した後、厚さ0.2mm×幅約160mmの特性評価用条材を製出した。
これらの特性評価用条材について導電率、機械的特性(耐力)を調べるとともに、耐応力緩和特性を調べ、さらに組織観察を行った。各評価項目についての試験方法、測定方法は次の通りであり、また、その結果を表7、8、9に示す。
〔結晶粒径観察〕
圧延の幅方向に対して垂直な面、すなわちTD面(Transverse direction)を観察面として、EBSD測定装置及びOIM解析ソフトによって、次のように結晶粒界および結晶方位差分布を測定した。
耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.5.3)によって、電子線の加速電圧20kV、測定間隔0.1μmステップで1000μm以上の測定面積で、各結晶粒の方位差の解析を行った。解析ソフトOIMにより各測定点のCI値を計算し、結晶粒径の解析からはCI値が0.1以下のものは除外した。結晶粒界は、二次元断面観察の結果、隣り合う2つの結晶間の配向方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界として結晶粒界マップを作成し、JIS H 0501の切断法に準拠し、結晶粒界マップに対して、縦、横の所定長さの線分を5本ずつ引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を平均結晶粒径とした。
〔析出物の観察〕
各特性評価用条材について、透過型電子顕微鏡(TEM:日立製作所製、H−800、HF−2200をおよびEDX分析装置(Noran製、EDX分析装置SYSTEM SIX)を用いて、次のように析出物観察を実施した。
圧延材の表面および裏面から耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、電解液を用いたツインジェット法にてTEM観察試料を作製した。TEM観察試料は圧延材の表面と裏面の2箇所それぞれから厚み方向で1/4入った2箇所から作製した。
粒子径が20nmから50nm程度の析出物について電子線回折を行い、これらの析出物が、FeP系またはNiP系の結晶構造を持つ六方晶(space group:P−62m(189))もしくはCoP系またはFeP系の斜方晶(space group:P−nma(62))であることを確認した。さらに、EDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いて、析出物の組成を分析した結果、その析出物が、FeとCoとNiからなる群から選択される少なくとも一種の元素とPとを含有するもの、すなわち既に定義した〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の一種であることが確認された。
〔1μmあたりの析出物個数〕
粒子径が1nm以上100nm以下の析出物及び粒子径が100nmを超えて500nm以下の析出物の1μmあたりの析出物個数の決定については、以下のようにして算出した。
粒子径が1nm以上100nm以下の析出物観察においては、150,000倍の視野(約0.5μm)で撮影したTEM写真から析出物のみを2値化した。TEM写真の一例とその2値化したものを図2に示した。2値化したものから画像解析ソフト「Win ROOF」を用いて析出物の面積から円相当径を求め、これを粒子径とした。
観察視野の体積を求めるためにコンタミネーション法を用いて、試料膜厚を測定した。コンタミネーション法では、試料の一部にコンタミネーションを付着させ、試料をθだけ傾斜させたときのコンタミネーションの長さの増加分ΔLより以下の式を用いて、試料厚さtを決定した。
t=ΔL/sinθ
これにより決定した厚さtと観察視野面積を乗じて、観察視野体積を算出した。析出物の個数の測定は観察視野体積が表面および裏面から採取したサンプルそれぞれで0.5μm以上になるようにして行った。
また、粒子径が100nmを超えて500nm以下の析出物観察では15,000倍の視野(約50μm2)で撮影したTEM写真から析出物のみを2値化した。TEM写真の一例とその2値化したものを図3に示した。2値化したものから画像解析ソフト「Win ROOF」を用いて析出物の面積から円相当径を求め、これを粒子径とし、上述のコンタミネーション法を用いて、試料膜厚を測定した。析出物の個数の測定は観察視野体積が表面および裏面から採取したサンプルそれぞれで50μm以上になるようにして行った。
〔機械的特性〕
特性評価用条材からJIS Z 2201に規定される13B号試験片を採取し、JIS Z 2241のオフセット法により、ヤング率E、0.2%耐力σ0.2を測定した。なお、試験片は、引張試験の引張方向が特性評価用条材の圧延方向に対して直交する方向となるように採取した。
〔導電率〕
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
〔耐応力緩和特性〕
耐応力緩和特性試験は、日本伸銅協会技術標準JCBA−T309:2004の片持はりねじ式に準じた方法によって応力を負荷し、Zn量が2.0mass%を超えて15mass%未満の試料(表7,8,9中の「2−15Zn評価」の欄に記入したもの)については、150℃の温度で500時間保持後、Zn量が15.0mass%以上36.5mass%以下の試料(表7,8,9中の「15−36.5Zn評価」の欄に記入したもの)については、120℃の温度で500時間保持後の残留応力率を測定した。
試験方法としては、各特性評価用条材の圧延方向の先端部、中央部、後端部から圧延方向に対して直交する方向に試験片(幅10mm)をそれぞれ採取し、試験片の表面最大応力が耐力の80%となるよう、初期たわみ変位を2mmと設定し、スパン長さを調整した。上記表面最大応力は次式で定められる。
表面最大応力(MPa)=1.5Etδ0/Ls 2
ただし、
E:ヤング率(MPa)
t:試料の厚み(t=0.20mm)
δ:初期たわみ変位(2mm)
:スパン長さ(mm)
である。
また、残留応力率はそれぞれの試験片から次式を用いて算出した。
残留応力率(%)=(1−δt0)×100
ただし、
δ:120℃で500h保持後、もしくは150℃で500h保持後の永久たわみ変位(mm)−常温で24h保持後の永久たわみ変位(mm)
δ:初期たわみ変位(mm)
である。
圧延方向に対して、先端部、中央部、後端部それぞれから採取した試験片の残留応力率の平均値が、80%以上のものを○、80%未満ものを×と評価した。
〔均一性〕
上述の耐応力緩和特性試験において、圧延方向の先端部、中央部、後端部のそれぞれから採取した試験片の残留応力率のうち最大値と最小値の値の差が5%以内のとき均一性を○とし、5%より高いときを×とした。
〔曲げ加工性〕
JCBA(日本伸銅協会技術標準)T307−2007の4試験方法に準拠して曲げ加工を行った。圧延方向と試験片の長手方向が直交するように、特性評価用条材から幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、曲げ角度が90度、曲げ半径が0.20mmのW型の治具を用い、W曲げ試験を行った。
上記の各組織観察結果、各評価結果について、表7,8,9中に示す。
比較例101においては、Sn量が本発明範囲を超えており、またNiおよびPが添加されておらず、さらに1μm当たりの1nm以上100nmの以下の[Ni,(Fe、Co)]-P系析出物の個数が本発明の範囲外であったため、耐応力緩和特性評価が「×」評価であった。
比較例102においては、1μm当たりの1nm以上100nmの以下の[Ni,(Fe、Co)]-P系析出物の個数が本発明の範囲外であったため、耐応力緩和特性評価も「×」評価であった。さらに曲げ加工性も「×」評価であった。
比較例103においては、Niが添加されておらず、さらに1μm当たりの1nm以上100nmの以下の[Ni,(Fe、Co)]-P系析出物の個数が本発明の範囲外であったため、耐応力緩和特性評価が「×」評価であった。
比較例104においては、1μm当たりの100nmを超えて500nm未満のNi−P系析出物および[Ni,(Fe、Co)]-P系析出物の平均個数が本発明の範囲外であったため、耐応力緩和特性評価および均一性評価が「×」評価であった。
比較例105においては、1μm当たりの100nmを超えて500nm未満のNi−P系析出物および[Ni,(Fe、Co)]-P系析出物の平均個数が本発明の範囲外であったため、均一性評価が「×」評価であった。
これに対して、表7,8に示しているように、各合金元素の個別の含有量が本発明で規定する範囲内であるばかりでなく、各合金成分の相互間の比率が本発明で規定する範囲内とされ、さらに粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の1μmあたりの平均の個数、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内のNi−P系析出物もしくは〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物の1μmあたりの平均の個数、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が、本発明の範囲内とされた本発明例No.1〜31は、いずれも耐応力緩和特性が優れており、さらに耐力、曲げ加工性、均一性にも優れており、コネクタやその他の端子に十分に適用可能であることが確認された。

Claims (8)

  1. Znを2.0mass%超えて36.5mass%以下、Snを0.10mass%以上0.90mass%以下、Niを0.15mass%以上1.00mass%未満、Pを0.005mass%以上0.100mass%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、
    Niの含有量とPの含有量との比Ni/Pが、原子比で、
    3.0<Ni/P<100.0
    を満たし、
    かつ、Snの含有量とNiの含有量との比Sn/Niが、原子比で、
    0.10<Sn/Ni<2.90
    を満たし、
    さらに、NiとPとを含有するNi−P系析出物を有しており、
    粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内の前記Ni−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内の前記Ni−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1以上50μm以下の範囲内であることを特徴とする電子・電気機器用銅合金。
  2. Znを2.0mass%超えて36.5mass%以下、Snを0.10mass%以上0.90mass%以下、Niを0.15mass%以上1.00mass%未満、Pを0.005mass%以上0.100mass%以下含有するとともに、
    0.001mass%以上0.100mass%未満のFe及び0.001mass%以上0.100mass%未満のCoのいずれか一方又は両方を含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、
    Ni、FeおよびCoの合計含有量(Ni+Fe+Co)とPの含有量との比(Ni+Fe+Co)/Pが、原子比で、
    3.0<(Ni+Fe+Co)/P<100.0
    を満たし、
    かつ、Snの含有量とNi、FeおよびCoの合計含有量(Ni+Fe+Co)との比Sn/(Ni+Fe+Co)が、原子比で、
    0.10<Sn/(Ni+Fe+Co)<2.90
    を満たすとともに、
    FeとCoの合計含有量とNiの含有量との比(Fe+Co)/Niが、原子比で、
    0.002≦(Fe+Co)/Ni<1.500
    を満たし、
    さらに、FeとCoとNiからなる群から選択される少なくとも一種の元素とPとを含有する〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物を有しており、
    粒子径が1nm以上100nm以下の範囲内の前記〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で10個以上、粒子径が100nmを超えて500nm未満の範囲内の前記〔Ni,(Fe,Co)〕−P系析出物が1μmあたり平均で0.005個以上10個以下存在するとともに、Cu、ZnおよびSnを含有するα相の結晶粒の平均粒径が0.1以上50μm以下の範囲内であることを特徴とする電子・電気機器用銅合金。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金の圧延材からなり、厚みが0.05mm以上1.0mm以下の範囲内にあることを特徴とする電子・電気機器用銅合金薄板。
  4. 表面にSnめっきが施されていることを特徴とする請求項3に記載の電子・電気機器用銅合金薄板。
  5. 請求項1または請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする電子・電気機器用導電部品。
  6. 請求項1または請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする端子。
  7. 請求項3または請求項4に記載の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴とする電子・電気機器用導電部品。
  8. 請求項3または請求項4に記載の電子・電気機器用銅合金薄板からなることを特徴とする端子。
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