JP2015160266A - 切削インサート及び刃先交換式バイト - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、すくい面と逃げ面との交差稜線部に切れ刃を有する切削インサートであって、前記切れ刃には、前記すくい面のコーナ部に位置するコーナ刃が含まれており、前記逃げ面における前記切れ刃に隣り合う領域のうち、少なくとも前記コーナ刃に隣り合う部分に、複数の溝が形成されていることを特徴とする。
また本発明は、切削インサートと、前記切削インサートが着脱可能に装着される工具本体と、を備える刃先交換式バイトであって、前記切削インサートとして、上述した切削インサートが用いられ、前記工具本体には、該工具本体に装着された前記切削インサートの前記逃げ面に向けて開口するクーラント供給孔が形成されているとともに、前記逃げ面を挟んだ前記クーラント供給孔の開口とは反対側に、前記切れ刃のうち少なくとも前記コーナ刃が配置されていることを特徴とする。
具体的に、例えば本発明とは異なり、逃げ面に複数の溝が形成されていない場合には、この逃げ面上を流れるクーラントは逃げ面と被削材との間の狭い空間に入るため、層流となりやすく、クーラントの攪拌効果が十分に得られずに、該クーラントは切れ刃近傍を早期に通過して冷却効果が得られにくくなる。
一方、本発明によれば、逃げ面に複数の溝が形成されていることにより、該逃げ面上を流れるクーラントは溝の作用により乱流となりやすく、クーラントの攪拌効果が十分に得られて、該クーラントは切れ刃近傍の熱伝達効率の向上に効果的に寄与して、冷却効果が高められる。
すなわち、クーラントが溝を乗り越える際に生じる二次流れや流れの剥離によって圧力損失が起こるため、該クーラントは溝に沿って流れやすくなり、切れ刃近傍に案内されやすくなって、冷却効率を高めることができる。
具体的には、切削インサートの逃げ面上から切れ刃のコーナ刃に向けてクーラントを供給することで、複数の溝によってクーラントが逃げ面上に保持されつつ、コーナ刃へ向けてガイドされやすくなり、クーラントをより確実に刃先まで送り込むことができる。
具体的には、切削インサートの逃げ面上から切れ刃のコーナ刃に向けてクーラントを供給することで、複数の溝によってクーラントの流れがかき乱されるとともに乱流となり、該クーラントが熱交換に効果的に寄与することとなって、切れ刃の冷却効率が向上する。
また、逃げ面において複数の溝が、コーナ刃の稜線方向に向かうに従い該コーナ刃に対して接近及び離間する、例えば凹曲線部と凸曲線部とが連続的に繰り返されるサインカーブ(正弦曲線)形状等の波形状となるように延びていてもよく、この場合にも熱交換効率が高められることになる。
或いは、複数の溝が、コーナ刃から離間する向き(コーナ刃稜線に対して垂直な向き)に延びた後、コーナ刃の稜線に沿う向き(コーナ刃稜線に対して平行な向き)に延び、さらにコーナ刃に接近する向き(コーナ刃稜線に対して垂直な向き)に延びており、このようにコーナ刃に対して垂直な向きと平行な向きとが繰り返されることで、溝が波形状をなしていてもよく、この場合、上記波形状による作用効果とともに、上述した垂直溝及び平行溝の両効果も得られやすくなる。
このように、逃げ面において複数の溝が波形状に形成されている(波形状溝とされている)ことにより、切れ刃の冷却効率を高めることができる。
具体的に、本発明の上記構成とは異なり、例えば逃げ面の複数の溝がコーナ刃に到達している場合には、クーラントを安定供給することができる一方、刃先欠損が生じやすくなるおそれがある。
一方、本発明の上記構成によれば、切れ刃のコーナ刃にクーラントを安定供給することができ、かつ、刃先欠損を抑制することも可能になって、工具寿命を長寿命化でき、高効率に切削加工が行える。
本実施形態の切削インサート1が装着された刃先交換式バイト30は、金属材料等からなる被削材Wに旋削加工を施すものであり、特に被削材Wとして、例えばSUS304等のステンレス鋼やチタン、インコネル(登録商標)などの難削材を切削加工するのに適したバイト工具である。
図1及び図2において、被削材Wは、円盤状や柱状、棒状等をなしている。刃先交換式バイト30は、被削材Wをその回転軸線O回りの被削材回転方向Tに回転させつつ、工具本体31の先端から突出する切削インサート1の切れ刃5により、被削材Wの周面(図示の例では被削材Wの外周面。又は被削材Wに形成した下穴の内周面でもよい)に周面加工を施したり、被削材Wの回転軸線O方向を向く端面に端面加工を施す。
尚、図1に示されるように、本実施形態において工具本体31は、インサート取付座32に配設された切削インサート1のすくい面7が鉛直方向に沿う下方を向くように、工作機械に装着される。
ここで、本明細書では、刃先交換式バイト30の工具本体31が延びる方向のうち、被削材Wの加工面に向かう方向を工具先端側、被削材Wの加工面とは反対側へ向かう方向を工具基端側という。また、工具本体31が延びる方向に直交する方向のうち、切削インサート1のすくい面7が向く方向を下方といい、すくい面7とは反対側を向く方向を上方という。
また、インサート取付座32の底壁37は、シート部材35よりも工具先端側へ向けて突出するL字面状の部分を有しており、該部分には、クーラント供給孔36の開口(ノズル孔部)が形成されている。
そして、工具本体31のインサート取付座32に装着された切削インサート1の逃げ面8を挟んだクーラント供給孔36の開口とは反対側に、後述する切削インサート1の切れ刃5のうち少なくともコーナ刃9が配置されている。
また、クーラント供給孔36において底壁37に開口する部分とは反対側の端部は、工具本体31において上方(図3における下方)を向く面に開口しており、該端部には、不図示のクーラント供給手段が接続される。
具体的には、図5(a)に示される表裏面3を正面に見たインサート平面視において、インサート本体2の表裏面3における各コーナ部は凸曲線状をなしており、これに伴い、外周面4において互いに隣り合う前記矩形状面同士の間の部分は、インサート軸線Cに垂直な断面が凸曲線状とされた凸曲面状(図示の例では円筒体の外周面の一部)をなすように形成されている(図4を参照)。
またインサート本体2の外周面4のうち、切れ刃5に隣接する部位は、逃げ面8とされている。
また切削インサート1は、表裏反転対称形状であってもよく、又は非表裏反転対称形状(つまり表裏反転対称形状でない)であってもよい。
また図7(b)において、複数の溝12は、切れ刃5のコーナ刃9との間に間隔Lをあけて形成されている。本実施形態では、切れ刃5のコーナ刃9から溝12の形成領域(該形成領域のうち切れ刃5側の端縁)までのインサート軸線C方向に沿う間隔(距離)Lが、0.3mm以上となっている。
尚、溝12の形成領域は、本実施形態で説明したものに限定されるものではなく、例えばインサート周方向については、コーナ刃9に隣り合う部分から、インサート周方向の両側へ向けて突出する長さ(つまり溝12の形成領域のうち、各直線刃10、11に隣り合う部分同士のインサート周方向に沿う長さ)が、互いに等しくされていてもよい(図8を参照)。
また、溝12の内壁12cが前記垂直壁とされていることにより、隣り合う溝12同士の間に形成されるリブ状部分は、その断面が長方形状に形成されて、リブ幅Rがリブ高さ(溝深さD)方向に沿って一定とされている。
本実施形態では、溝12の溝幅Gが50〜200μm、隣り合う溝12同士の間に形成されるリブ状部分のリブ幅Rが50μm、溝深さD(リブ高さ)が5〜50μmとなっている。
図8(a)に示される複数の溝12は、切れ刃5のコーナ刃9に対して垂直な向きに沿うように延びており、具体的にこれらの溝12は、コーナ刃9の稜線、及び直線刃10、11のうち該コーナ刃9に隣接する部分の稜線に対して、垂直な向きに沿うように延びている。また、これら溝12同士は、インサート周方向に隣り合って配列している。
また、溝12の内壁12cが前記傾斜壁とされていることにより、隣り合う溝12同士の間に形成されるリブ状部分は、その断面が台形状に形成されて、リブ幅Rがリブ高さ(溝深さD)方向に沿って基部(台形の下底部分)から頂部(台形の上底部分)へ向かうに従い漸次狭くされている。
またこの場合、溝12の形成領域全体としての断面(溝12に垂直な断面)は、溝12(凹曲線部)とリブ状部分(凸曲線部)とが連続的に繰り返されるサインカーブ形状等の波形状となる。
具体的に、例えば本実施形態とは異なり、逃げ面に複数の溝が形成されていない場合には、この逃げ面上を流れるクーラントは逃げ面と被削材との間の狭い空間に入るため、層流となりやすく、クーラントの攪拌効果が十分に得られずに、該クーラントは切れ刃近傍を早期に通過して冷却効果が得られにくくなる。
一方、本実施形態によれば、逃げ面8に複数の溝12が形成されていることにより、該逃げ面8上を流れるクーラントは溝12の作用により乱流となりやすく、クーラントの攪拌効果が十分に得られて、該クーラントは切れ刃5近傍の熱伝達効率の向上に効果的に寄与して、冷却効果が高められる。
すなわち、クーラントが溝12を乗り越える際に生じる二次流れや流れの剥離によって圧力損失が起こるため、該クーラントは溝12に沿って流れやすくなり、切れ刃5近傍に案内されやすくなって、冷却効率を高めることができる。
すなわちこの場合、逃げ面8において複数の溝12が、切れ刃5のコーナ刃9の稜線に平行となるように延びているので、これら溝12によってクーラントに乱流を生じさせやすくすることができ(乱流促進効果の向上)、切削熱の効率的な除去が行える。
具体的には、切削インサート1の逃げ面8上から切れ刃5のコーナ刃9に向けてクーラントを供給することで、複数の溝12によってクーラントの流れがかき乱されるとともに乱流となり、該クーラントが熱交換に効果的に寄与することとなって、切れ刃5の冷却効率が向上する。
より好ましくは、切れ刃5に平行な向きに沿うように延びる溝12の溝深さDは、本実施形態で説明した5〜30μmであり、さらに望ましくは、6μmを超え15μm以下である。
すなわちこの場合、逃げ面8において複数の溝12が、切れ刃5のコーナ刃9の稜線に垂直となるように延びているので、これら溝12によってクーラントが刃先まで案内されやすくなり(ガイド効果の向上)、該クーラントの浸透性が高められる。
具体的には、切削インサート1の逃げ面8上から切れ刃5のコーナ刃9に向けてクーラントを供給することで、複数の溝12によってクーラントが逃げ面8上に保持されつつ、コーナ刃9へ向けてガイドされやすくなり、クーラントをより確実に刃先まで送り込むことができる。
望ましくは、切れ刃5に垂直な向きに沿うように延びる溝12の溝深さDは、15〜50μmである。
すなわちこの場合、逃げ面8において複数の溝12が、切れ刃5のコーナ刃9の稜線に垂直な向きに対して傾斜するように延びているので、上述したガイド効果の向上、及び乱流促進効果の向上の両効果が高められる。
すなわちこの場合、逃げ面8において複数の溝12が、切れ刃5のコーナ刃9の稜線方向に向かうに従い該コーナ刃9に対して接近及び離間する、例えばW字状、M字状、ジグザグ形状等の波形状となるように延びる斜交波面(斜交波状面)等に形成することができる。このような斜交波面は、熱伝達を大きくしつつ圧力損失を小さくすることができ、熱交換効率がよい。
また、逃げ面8において複数の溝12が、コーナ刃9の稜線方向に向かうに従い該コーナ刃9に対して接近及び離間する、例えば凹曲線部と凸曲線部とが連続的に繰り返されるサインカーブ(正弦曲線)形状等の波形状となるように延びていてもよく、この場合にも熱交換効率が高められることになる。
或いは、複数の溝12が、コーナ刃9から離間する向き(コーナ刃9稜線に対して垂直な向き)に延びた後、コーナ刃9の稜線に沿う向き(コーナ刃9稜線に対して平行な向き)に延び、さらにコーナ刃9に接近する向き(コーナ刃9稜線に対して垂直な向き)に延びており、このようにコーナ刃9に対して垂直な向きと平行な向きとが繰り返されることで、溝12が波形状をなしていてもよく、この場合、上記波形状による作用効果とともに、上述した垂直溝及び平行溝の両効果も得られやすくなる。
このように、逃げ面8において複数の溝12が波形状に形成されていることにより、切れ刃5の冷却効率を高めることができる。
すなわちこの場合、複数の溝12により切れ刃5のコーナ刃9にクーラントを安定供給できつつ、該コーナ刃9の刃先強度を十分に確保できる。
具体的に、本実施形態の上記構成とは異なり、例えば逃げ面の複数の溝がコーナ刃に到達している場合には、クーラントを安定供給することができる一方、刃先欠損が生じやすくなるおそれがある。
一方、本実施形態の上記構成によれば、切れ刃5のコーナ刃9にクーラントを安定供給することができ、かつ、刃先欠損を抑制することも可能になって、工具寿命を長寿命化でき、高効率に切削加工が行える。
すなわちこの場合、溝12の内壁(溝12内の側壁)12cは、該溝12の溝深さD方向に対して傾斜して形成されたり(つまり開口部12bへ向けて溝幅Gが漸次広くなる)、又は段差を有して形成される(つまり開口部12bへ向けて溝幅Gが段階的に広くなる)ため、溝12の内壁12cの表面積を大きく確保することができ、熱交換効率を向上することが可能になる。また、溝12の底部12aから開口部12bへ向けて溝幅Gが大きくなるので、この溝12内にクーラントが流入しやすくなって、上述した複数の溝12による冷却効果がより安定的に、かつ確実に得られやすくなる。
本発明の実施例として、前述の実施形態で説明した切削インサート1及び刃先交換式バイト30を用意した。
具体的には、本実施例の切削インサート1として、逃げ面8において複数の溝12が、切れ刃5のコーナ刃9に対して平行な向きに沿うように延びているもの(平行溝タイプ)、垂直な向きに沿うように延びているもの(垂直溝タイプ)、コーナ刃9の稜線方向に向かうに従い該コーナ刃9に対して接近離間する波形状とされ、これら溝12の形成領域が斜交波面(斜交波状面)とされたもの(斜交波溝タイプ)を用意した。
被削材:SUS304(平均ビッカース硬さ302HV)、切削速度:240m/min、送り速度:0.2mm/rev、切込み量:1.0mm、工具寿命基準:最大逃げ面摩耗(VBmax)>0.20mm、クーラント流速:7.7m/s、クーラント流量:1450ml/min。
尚、比較例では、クーラント供給方法として、上記JC法による内部給油と、一般的な外部給油(Wet)とによりそれぞれ試験を行った。尚、上記外部給油については、クーラント流速:1.3m/s、クーラント流量:5090ml/minである。
図10〜図12に示されるように、本発明の実施例(JC平行溝、JC垂直溝、JC斜交波溝が形成されたもの)においては、最大逃げ面摩耗量が0.20mmに達したときの切削距離(切削長)が、比較例(JC微細加工無し、Wet微細加工無し)における前記切削距離よりもすべて長く、良好な結果が得られた。
5 切れ刃
7 すくい面
8 逃げ面
9 コーナ刃
12 溝
12a 底部
12b 開口部
30 刃先交換式バイト
31 工具本体
36 クーラント供給孔
G 溝幅
L 間隔
Claims (8)
- すくい面と逃げ面との交差稜線部に切れ刃を有する切削インサートであって、
前記切れ刃には、前記すくい面のコーナ部に位置するコーナ刃が含まれており、
前記逃げ面における前記切れ刃に隣り合う領域のうち、少なくとも前記コーナ刃に隣り合う部分に、複数の溝が形成されていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1に記載の切削インサートであって、
前記複数の溝が、前記コーナ刃に対して垂直な向きに沿うように延びていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1に記載の切削インサートであって、
前記複数の溝が、前記コーナ刃に対して平行な向きに沿うように延びていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1に記載の切削インサートであって、
前記複数の溝が、前記コーナ刃に垂直な向きに対して、傾斜する向きに沿うように延びていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削インサートであって、
前記複数の溝が、前記コーナ刃の稜線が延びる方向に向かうに従い該コーナ刃に対して接近及び離間を繰り返す波形状となるように延びていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の切削インサートであって、
前記複数の溝は、前記コーナ刃との間に間隔をあけて形成されていることを特徴とする切削インサート。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の切削インサートであって、
前記溝の溝幅が、該溝の底部から開口部へ向かうに従い広くされていることを特徴とする切削インサート。 - 切削インサートと、
前記切削インサートが着脱可能に装着される工具本体と、を備える刃先交換式バイトであって、
前記切削インサートとして、請求項1〜7のいずれか一項に記載の切削インサートが用いられ、
前記工具本体には、該工具本体に装着された前記切削インサートの前記逃げ面に向けて開口するクーラント供給孔が形成されているとともに、前記逃げ面を挟んだ前記クーラント供給孔の開口とは反対側に、前記切れ刃のうち少なくとも前記コーナ刃が配置されていることを特徴とする刃先交換式バイト。
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