表面実装型の水晶発振器に代表される水晶デバイスは、小型・軽量、かつ低背であることから各種の携帯機器に広く用いられている。その典型である水晶発振器は、動作周波数及び時間の基準源として多用されている。以下では、水晶デバイスとして水晶発振器を例として説明するが、本発明は水晶振動子や水晶フィルタを含め、他の水晶デバイスにも同様に適用できるものであることは言うまでもない。水晶発振器は、水晶振動子の収容部と電子部品の収容部とを有する二部屋型(H型とも称する)のパッケージ(容器本体)を用いているものが多い。また、水晶デバイスと呼ばれるものには、単一容器に水晶振動子のみ、あるいは水晶振動子とサーミスタなどの温度制御素子を封止して一戸の部品としてユニット化したものもある。なお、以下では、このようなユニット化した水晶振動子と区別するため、水晶発振器を水晶発振器デバイスと表記する場合もある。
図15は、二部屋型の容器本体を用いた表面実装型の水晶発振器の従来例を説明する断面図である。この水晶発振器1は、グリーンシート(セラミックシート、以下セラミックシート)の基板2aの一方の主面(表面)と他方の主面(背面)に、同じくセラミックシートの枠壁2b,2cを積層し、焼成して、それぞれの主面の凹部13,14が形成された容器本体を有する。表面側の凹部13と背面側の凹部14を形成した容器本体の断面は、図示したようにH型となる。そして、表面側の凹部13の底面には水晶振動子保持端子8が形成されており、この水晶振動子保持端子8には導電性接着剤9により水晶振動子7が固定されている。
水晶振動子保持端子8に水晶振動子7を固定した表面側の凹部13の開口端面(枠壁2bの開放端面)には金属リング15がロウ付けされている。この金属リング15を介して金属カバー10をシーム溶接し、水晶振動子7を封止する。背面側の凹部14の開口端面には半田層19aが形成されている。IC実装基板16の他方の主面にはICチップ5がIC実装用バンプ17と異方性導電樹脂18により固定されている。
また、IC実装基板16の背面側の凹部14の開口端面と対向する側の周端面には半田層19bが形成されている。このIC実装基板16は、凹部14の開口端面の半田層19aに半田層19bを合わせ、加熱して固定する。図15は半田層19aと半田層19bが溶融して一体に固化した状態を示す。IC実装基板16の他方の主面の周面には、実装端子3が複数設けられている。
図15で説明したような、セラミックシートの積層体(多層セラミックシート)で水晶振動子と発振器を構成するICチップなどの電子部品を収容する容器本体を構成するものでは、全体の厚み低減に限界があるため、低背化の妨げとなっている。また、従来の水晶発振器は、底壁から枠壁までを、多層のセラミックシートで成形した容器本体を用いるものが殆どなので製造コストが高く、低背化にも自ずと限界がある。最近の各種携帯端末等の薄型指向に沿って、これら端末等に実装される水晶発振器などの電子部品も大幅な低背化が要求されている。
図16は、表面実装型の水晶デバイスとしての水晶振動子デバイスの従来例を説明する断面図である。この水晶デバイスは水晶振動子を一個の部品としてユニット化したものであり、平板状のセラミック基板2と凹状の金属カバー10で容器が構成される。水晶振動子(ここでは、水晶片)7は基板2の主面に設けた水晶保持端子8に導電性接着剤9で固定される。凹状の金属カバー10は、基板2の表面に対向する開放端の端面が内側から外側に斜めに開いた形状で折り曲げられている。この開放端の端面を傾斜させた形状とし、その外端を絶縁性の溶融樹脂(あるいは溶融ガラス)に浸して持ち上げることで、開放端の端面に溶融樹脂を付着させる。
溶融樹脂を付着させた後、凹状の金属カバー10を水晶振動子が搭載された基板2の上面に載置し、固化させて接着層18Aとしている。これにより、金属カバー10と水晶保持端子8を絶縁した状態で水晶振動子7を封止することができる。
なお、この種の従来技術を開示したものは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7などを挙げることができる。これらの先行技術は、複数のセラミックシートで形成した容器を用いた水晶発振器を開示している。特許文献1、特許文献2には、H型本体容器の一方の凹部を構成する底面に直接水晶振動子を固定し、他方の凹部に搭載するICチップは容器本体とは別個の基板に搭載した状態で他方の凹部に設置する構造とした水晶発振器が記載されている。
特許文献1、特許文献3は、水晶等の圧電振動子をICチップとは別のユニットとして、圧電振動子のユニットとは別にICチップを搭載した基板を貼り合わせた圧電発振器を開示する。また、特許文献4には、水晶振動子を収容する凹部のみを積層セラミックシートの一方の主面(表面)に形成し、ICチップは別個に容易したセラミックシートに搭載したものを上記の積層セラミックシートの他方の主面(背面)に接合した構造の水晶発振器も開示されている。
特許文献5は、セラミック基板の対角部に設けた貫通孔に水晶保持端子を設け、この水晶保持端に水晶振動子の対角部に設けた引き出し電極を接続することで小型化した表面実装水晶振動子を開示する。特許文献6は、前記図16で説明した従来の水晶振動子を開示する。そして、特許文献7は、特許文献6と同様に帽状の開口を有するごとく加工した導電性キャップ(金属カバー)を水晶振動子の封止部材としたものにおいて、金属カバーの上記開口の端面をエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性合成樹脂で被覆し、基板との間に絶縁性接着剤で固定した水晶振動子を開示する。
上記図15を例示して説明した従来技術では、パッケージとして高価なセラミックシートを多層で用いるため、コスト削減に限界があり、多層のセラミックシートを用いること自体、低背化を促進することは困難である。また、基板となるセラミックシートを単一のシート(単板)とし、水晶振動子を一方の面に直接固定し、他方の面にICチップを搭載する構造とすることも考えられる。しかし、その場合、水晶振動子側には帽子状のカバーで封止しても、ICチップを搭載するための空間(凹部、キャビティー)を確保するためにセラミックシートの枠壁が必要となる。結果的に、高価な多層セラミックシート構造になってしまう。
また、図16で説明した従来技術の水晶振動子デバイスでは、水晶保持端子8を実装端子3に接続する側面電極8D,8Eが接着層18Aの中を通る。そのため、水晶振動子7を搭載した空間の気密性が劣化する恐れがある。また、金属カバーが電気的に浮いた状態にあるため、これがアンテナとして振る舞い、電磁波の結合が発生し易くなって外部電磁波の影響を受け易くなると同時に、外部への放射ノイズも大きくなる。さらに、開口部の傾斜形状を精密に形成する必要があることから、加工コストが大きくなる。このことは、水晶振動子に限らず、水晶発振デバイス等の他の圧電デバイスについても同様である。
本発明の目的は、上記従来技術における諸課題を解決するもので、一枚のセラミックシート単板を用いて、携帯端末の小型化、低背化(薄型化)に対処でき、また、カバーに金属を用いることにより外来電磁波の影響と自身からの電磁放射ノイズを抑制すると共に、製造コストを削減可能とした水晶発振器、水晶振動子などの水晶デバイスを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、一方の主面に水晶振動子(水晶片)を固定し、他方の主面に上記水晶振動子と共に水晶発振デバイスを構成するICチップ等の電子部品を搭載する基板に一枚のセラミックシート(セラミックシート単板)を用いる。上記セラミックシート単板には、プレス加工等により水晶振動子を固定して収容するための凹部が形成されている。なお、この凹部形成時に、水晶保持端子を他方の主面に搭載されるICチップなどの電子部品に接続するためのスルーホールも形成される。この種のセラミックシートは、グリーンシートとも呼ばれる。この単一グリーンシート(セラミックシート単板)の上面に上記キャビティを形成後、高温焼成して前記水晶振動子を収容する凹部を有する成形セラミックシート単板を得る。
上記成形セラミックシート単板(単一グリーンシート)の水晶振動子を固定した凹部の開口は、当該凹部の開口端面に金属を好適とする板状カバーを橋渡し、溶着により固着し、あるいは封止材で固着して密閉する。そして、他方の主面には印刷法を用いた導体ペーストの導電膜で実装端子を形成する。凹部の背面にICチップ等の電子部品を搭載するものでは、この実装端子は当該ICチップ等の電子部品の搭載厚と同等以上の厚みに形成することで、ICチップの搭載スペースを確保する。
水晶振動子とICチップ等の電子部品を搭載する基板として、一方の主面に水晶振動子を収容する凹部を形成したセラミックシート単板からなる基板を用いる。上記凹部の開口を板状カバーで固着して水晶振動子を密封する。セラミックシート単板の他方の主面にはICチップなどの電子部品がFCBにて実装される。電子部品との他方の主面との間、及び電子部品の周りにはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が充填される。この構造とすることで、セラミックシート単板の機械的強度が補強され、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての剛性を向上できる。
本発明に係る水晶デバイスの代表的構成を記述すると次のとおりである。
(1)一枚のセラミックシートの一方の主面に水晶振動子を収容する凹部を有して、当該凹部の底壁に水晶振動子を固着する水晶保持端子を有すると共に、前記セラミックシートの前記他方の主面の端部周面の複数個所に設けた実装端子を有する成形セラミックシート単板と、前記成形セラミックシート単板の前記凹部を形成する開口を覆う如く当該開口端面に固着されて、前水晶振動子を収容した凹部を密封する板状のカバーと、前記凹部の開口端面と前記カバーの間に介在して、前記カバーを前記開口端面に固着する封止材を有することを特徴とする。
(2)上記1における前記成形セラミックシート単板の開口端面に金属層を設け、前記水晶振動子を収容した凹部を密封する板状カバーは金属からなり、前記封止材は低融点合金材からなることを特徴とする。
(3)上記(2)における前記成形セラミックシート単板の開口端面に設けた前記金属層は、前記成形セラミックシート単板の前記他方の主面の端部周面の複数個所に設けた実装端子の内の1個以上の端子に電気的接続されたことを特徴とする。
(4)上記(1)乃至(3)の何れかにおける前記成形セラミックシート単板の前記他方の主面に配線パターンを有し、前記水晶振動子と共に発振回路及び/又は温度補償回路などの付帯回路を備えた発振回路等を集積したICチップ等の電子部品を搭載してなり、前記水晶振動子、前記電子部品および前記実装端子との間を前記配線パターンで電気的に接続してなり、前記実装端子の前記成形セラミックシート単板の前記他方の主面から見た高さが、前記電子部品の高さ以上であることを特徴とする。
(5)上記(4)における前記実装端子は、前記配線パターンと同層の薄膜導電層と、この薄膜導電層の上にさらに追加の導電層を設けた多層導電層で形成されてなり、前記実装端子の前記多層導電層を構成する前記薄膜導電層は、前記配線パターンと同層の薄膜印刷層であり、前記追加の導電層は、厚膜印刷層であることを特徴とする。
(6)上記(5)における前記実装端子を構成する前記追加の導電層の上面にはんだ層が形成されていることを特徴とする。
(7)上記(5)における前記実装端子の前記多層導電層を構成する前記薄膜導電層は、前記配線パターンと同層の薄膜印刷層であり、前記追加の導電層は、半田材からなる半田層或いは、半田ボールであることを特徴とする。
(8)上記(4)乃至(7)の何れかにおける前記他方の主面に搭載された前記電子部品と前記成形セラミックシート単板との間およびその周囲にアンダーフィル樹脂を有することを特徴とする。
(9)上記(1)乃至(8)の何れかにおける前記成形セラミックシート単板の厚み方向に貫通する貫通電極を有し、前記水晶保持端子を前記他方の主面に引き出すことを特徴とする。
(10)上記(1)乃至(9)の何れかにおける前記成形セラミックシート単板の厚み方向に貫通する貫通電極を有し、当該成形セラミックシート単板の前記一方の主面に設けた水晶保持端子と前記他方の主面に有する実装端子と配線パターンを電気的に接続することを特徴とする。
(11)上記(1)乃至(10)の何れかにおける前記水晶振動子を収容する凹部は、前記単一グリーンシートの上面にキャビティを形成後、高温焼成にて形成されたことを特徴とする。
(12)また、本発明の水晶デバイスは、次のように構成することもできる。すなわち、水晶振動子収容凹部を形成した一方の主面に水晶振動子を固着する水晶振動子保持端子を有し、平坦な他方の主面に前記水晶振動子と共に発振回路及び/又は温度補償回路などの付帯回路を備えた発振回路等を集積したICチップ等の電子部品を搭載した成形セラミックシート単板と、前記成形セラミックシート単板の前記一方の主面の前記凹部を形成する開口を覆う如く当該開口端面に固着され、前水晶振動子を収容した凹部を密封する板状カバーと、前記成形セラミックシート単板の前記他方の主面の端部周面の複数個所に設けた実装端子と、前記成形セラミックシート単板の前記他方の主面に設けられて、前記水晶振動子、電子部品および前記実装端子との間を電気的に接続する配線パターンを有し、前記実装端子は、前記配線パターンと同層の薄膜導電層と、この薄膜導電層の上にさらに追加の導電層を設けた多層導電層で形成されてなり、前記実装端子の前記成形セラミックシート単板の前記他方の主面から見た高さを、前記電子部品の高さ以上としたことを特徴とする。
(13)また、本発明は、上記(12)において、前記実装端子の前記多層導電層を構成する前記薄膜導電層は、前記配線パターンと同層の薄膜印刷層であり、前記追加の導電層は、厚膜印刷層とすることができる。
(14)また、本発明は、上記(12)において、前記実装端子を構成する前記追加の導電層の上面にはんだ層を有するものとすることができる。
(15)また、本発明は、上記(12)において、前記実装端子の前記多層導電層を構成する前記薄膜導電層は、前記配線パターンと同層の薄膜印刷層であり、前記追加の導電層を、半田材からなる半田層或いは半田ボールとすることができる。
(16)また、本発明は、上記(12)において、前記他方の主面に搭載された前記電子部品と前記成形セラミックシート単板との間およびその周囲にアンダーフィル樹脂を充填してもよい。
(17)また、本発明は、上記(12)において、前記成形セラミックシート単板の底壁を厚み方向に貫通し、当該成形セラミックシート単板の前記一方の主面に設けた水晶振動子保持端子と前記他方の主面に有する配線パターンを電気的に接続するためのスルーホールを有するものとすることができる。
上記構成としたことで、本発明により、一枚のセラミックシートをプレス加工等で凹部を成形した成形セラミックシート単板と、前記凹部の端面に差し渡して固着した金属平板からなるカバーとで一体化した容器を用いることで、全体として剛性の高い圧電デバイスが得られる。
本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
一方の主面に水晶振動子を固着し、他方の主面にICチップ等の電子部品を搭載する基板として、上記一方の主面の水晶振動子を収容する凹部をプレス加工で成形した成形セラミックシート単板用い、該凹部の開口を板状カバーで覆い、適宜の封止材で固着して密封し、他方の主面に設ける実装端子として、厚膜印刷により形成した追加の導電層としたことで、ICチップ等の電子部品の搭載スペースが確保され、積層パッケージを使用することなく、簡単な単板基板にて水晶デバイスが実現でき、部材コストを低減と同時に大幅な低背化が実現できる。本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図ることができる。
多層の実装端子を形成する厚膜印刷法として、広く知られているマスク印刷法やシリコーン凹版を用いた超厚膜印刷法を用いることができるため、蒸着法やスパッタリング法などにおけるような真空環境を必要としないので、製造コストを大幅に低減できる。
電子部品の前記高さに応じて、厚膜導電層を複数回の重ね塗りで対応でき、例えば、厚みの大きいICチップなどにも対応可能である。また、厚膜導電層を複数回の重ね塗りで対応不足の場合は、追加の導電層として半田ボールを用いることもできる。
また、繰り返しになるが、水晶振動子のユニットを構成する容器本体を凹部加工したセラミックシート単板とし、平板の金属カバーと組み合わせることで、薄い厚みとしたセラミックシート単板の剛性を改善することができる。これにより、低背でありながら、機械的強度を向上した水晶デバイスを提供できる。
以下、本発明の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る水晶デバイスの実施例1を説明するための水晶発振器デバイスの(a)全体断面図、(b)実装端子を形成した他方の主面の平面図である。(a)全体断面図は(b)他方の主面のX−X’線に沿った断面に相当する。実施例1の水晶発振器は、所謂温度補償型水晶発振器(TCXO)を想定している。なお、説明のために形状やサイズを誇張した部分もある。また、図2は、図1に示した水晶発振器の水晶振動子を収容した一方の主面にカバーで封止した状態の平面図である。
図1に示したように、本発明の実施例1に係る水晶発振器1は、水晶振動子の収容凹部をプレス加工で成形した成形セラミックシート単板2を用いている。この成形セラミックシート単板2の一方の主面(図1(a)の紙面上側:表面)に水晶振動子7が固定され、他方の主面(図1(a)の紙面下側:背面、同図(b))に電子部品であるICチップ5が搭載されている。このICチップ5には、水晶振動子7と共に発振器を構成する発振回路と、周囲温度の変化による水晶振動子の振動数のずれを補償する温度補償回路などの付帯回路が集積されている。
成形セラミックシート単板2の一方の主面には、水晶振動子保持端子8が形成されており、この水晶保持端子8に水晶振動子7が導電性接着剤9で電気的かつ機械的に固定されている。水晶振動子7を固定したセラミックシート単板2の水晶振動子保持端子8の直下には、当該セラミックシート単板2を貫通して設けたスルーホール8A,8Bが形成されている。このスルーホール8A,8Bには導体(電極柱、図示せず)が埋設されており、水晶保持端子8を他方の主面に形成された配線パターン41に電気的に接続している。
成形セラミックシート単板2の他方の主面において、水晶振動子保持端子8に接続するスルーホール8A,8Bに繋がる配線パターン41には、それぞれ水晶検査端子6a,6bが形成されている。また、当該他方の主面の四隅には、実装端子3がそれぞれ設けられている。この実施例における実装端子3は、図1(a)に示したように、3層で構成されている。最下層の実装端子パッド3aは、IC接続パッド4、配線パターン41、水晶検査端子6a,6bと同時の薄膜印刷などのパターニングで形成された薄膜導電層である。この薄膜導電層を形成する薄膜印刷は、銀(Ag)粒子、銀−パラジューム(Ag−Pd)や金(Au)粒子、銅(Cu)粒子などの既知の金属粒子入りペースト(導体ペースト)をマスク印刷(スクリーン印刷)、インクジェット印刷などの薄膜印刷法で形成する。
この実装端子パッド3aの上に、上記と同様の導体ペーストを、マスクを介して印刷する厚膜印刷あるいは凹版印刷法等の超厚膜印刷法で厚膜導電層3bを形成する。この厚膜導電層3bは、当該他方の主面に搭載する電子部品の高さサイズに応じて、複数回のマスク印刷で積み重ね、あるいは凹版の深さ設定で所望の膜厚とする。そして、この厚膜導電層3bの上にはんだメッキを施してはんだ層3cを形成する。
ICチップ5は、当該ICチップの集積回路形成面の電極パッドに設けられた金属バンプを配線41に設けたIC接続パッド4に加熱で接続して、所謂FCBで搭載される。なお、金属バンプとしては、スタッドバンプ、メッキバンプ、はんだバンプなどが想定される。成形セラミックシート単板2の他方の主面とICチップ5の間およびその周囲にエポキシ樹脂を好適とする熱硬化樹脂が充填されて、ICチップ5の接続の補強が行なわれる。
水晶振動子7を固着した成形セラミックシート単板2の一方の主面に形成された凹部の外縁には板状カバー10が封止材11で固着され、水晶振動子7を凹部内に密封する。この板状カバー10は、コバールを好適とする金属板、ガラス板、水晶板が用いられる。封止材11には、金属板、ガラス板、水晶板とセラミックシートとの接合効果が良好な適宜の接合材を用いる。
図3及び図4を参照して、本発明の実施例1に係る水晶発振器の製造工程を説明する。図3は、本発明に係る水晶デバイスの製造工程における成形セラミックシート単板の主たる加工プロセスの説明図である。また、図4は、IC接続パッド4や水晶検査端子6(6a,6b)、実装端子パッド3aを同層で構成する薄膜導電層を形成した成形セラミックシート単板2の他方の主面を示す平面図である。この薄膜導電層は、導体ペーストを用いた薄膜印刷法で形成される。
図3の(a)は、成形セラミックシート単板2を加工する前のセラミックシート母材を示す。符号2’は個々の成形セラミックシート単板の領域である。このセラミックシート母材2’は、バリウム添加アルミナセラミックを好適とする、所謂グリーンシートである。例えば、アルミナ粉末と炭酸バリウム粉末に、既知の有機バインダ、溶剤、可塑剤などを混合して適度の粘度に調整したスラリーとする。このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法で平坦なシート状とすることで形成される。
図3の(b)は、セラミックシート母材にプレス加工を施した状態を示す成形セラミックシート単板の一方の主面の平面図である。平坦なセラミックシート母材2’にプレス加工を施して、個片となるセラミックシート領域の中央部分に枠部2WLで囲まれて水晶振動子を収容するための凹部2ALを有する窪み形状を成形する。
この成形では、プレス機により、少なくとも上記凹部2ALと枠部2WLを有する金型をセラミックシート母材2’の一方の面(一方の主面となる面)に押圧する。その押圧力で図3の(b)、図3の(c)に示した成形セラミックシート単板2を得る。
この成形加工時に、上記の金型にピンを設けておき、凹部2ALの水晶振動子保持端子の形成位置に貫通孔(スルーホール8A,8B)を同時に形成するのが望ましい。貫通孔8A,8Bは、セラミックシート母材の一方の主面から他方の主面に貫通する。なお、図中、Cx,Cyは分割溝、2RFはセラミックシート母材を成形セラミックシート単板の個片となるように正確に分割するための分割基準孔を示す。
次に、上記プレス加工した成形セラミックシート単板2を焼成炉で焼成する。この焼成では、アルミナが焼結し得る所定の温度(例えば、1400℃乃至1800℃程度)とする。これにより、セラミックシート母材2’に、枠部2WLで囲まれた凹部2ALを有する多数の成形セラミックシート単板2が得られる。
その後、成形セラミックシート単板2のそれぞれに、所要の配線パターンや電極等の薄膜導体層の形成を行なう。これらの導体層の形成は、マスク印刷やインクジェット法などの薄膜印刷法を用いる。この薄膜導体層の形成は、成形セラミックシート単板2を個片に分割する前のセラミックシート母材の状態で行なう。成形セラミックシート単板2の一方の主面に形成された凹部2ALの底面に有する貫通孔8A,8Bの開口部分には、銀(Ag)粒子、銀―パラジューム(Ag−Pd)や金(Au)粒子、銅(Cu)粒子などの既知の金属粒子入りペースト(導体ペースト)をマスク印刷(スクリーン印刷)、インクジェット印刷などの薄膜印刷法で水晶振動子保持端子8を形成する。そして、他方の主面には、IC接続パッド4、検査端子6a,6b、実装端子パッド3a、これらを繋ぐ配線パターン41を、上記と同様の金属粒子入りペーストを用いて薄膜印刷法で塗布し、焼成して固化する。
図3の(c)は図3の(b)のX−X’に沿って切断した断面図で、貫通孔8A,8Bの一方の主面側に水晶振動子保持端子8を形成し、他方の主面にIC接続パッド4、検査端子6a,6b、実装端子パッド3a、これらを繋ぐ配線パターン41を形成した状態を示す。水晶振動子保持端子8は、導体ペースト(金属粒子入りペースト)を用いたマスク印刷法、導電性インクのインクジェット法などで形成できる。また、図3の(d)は図3の(b)の長辺側を矢印A方向から見た側面図である。成形セラミックシート単板2の一方の主面に水晶振動子保持端子を形成する印刷工程と他方の主面に配線パターン等を印刷する工程の順序は問わない。
図4は、IC接続パッド4や水晶検査端子6(6a,6b)、実装端子パッド3aを同層で構成する薄膜導電層を形成した成形セラミックシート単板2の他方の主面を示す平面図である。図4に示されたように、この成形セラミックシート単板2の他方の主面には、実装端子パッド3a、配線パターン41、水晶検査端子6aが金属粒子入りペーストの薄膜印刷で同層に形成された薄膜導電層である。点線5’はICチップの搭載位置を示す。ICチップは配線パターン41に設けたIC接続パッド4にそのICの電極パッドに設けられた金属バンプを接続することで搭載される。
この他方の主面に実装端子パッド3aや配線パターン41等を薄膜印刷する際に、導体ペーストをスルーホール8A,8B内に充填して導体層(導体柱)を形成させるようにすることができる。そして、一方の主面に水晶振動子保持端子8を印刷等で形成する際にも同様に、導体ペーストをスルーホール8A,8B内に充填して上記した他方の主面からの導体層と電気的に接続する方法を採用できる。なお、メッキにより貫通孔8A,8B内の導体層を形成してもよいことは言うまでもない。
実施例1では、成形セラミックシート単板2の他方の主面に形成した実装端子パッド3aの上に、上記と同様の導体ペーストを厚膜印刷で形成する。この厚膜印刷は、マスク印刷法、導電性インクのインクジェット法などの複数回の重ね塗り、或いはシリコーン凹版を用いた直刷法、シリコーン凹版を用いた超厚膜印刷(転写法)等で形成することができる。塗布した印刷膜を焼成して印刷厚膜(図1の3b)とする。この印刷厚膜3bの上に、さらにはんだ膜(図1の3c)を形成する。
上記の実装端子は薄膜導体の上に厚膜導体を印刷・焼成後、さらに半田層を形成した構造となっておりますが、焼成した薄膜導体の上に直接半田層を厚塗りして加熱硬化にて実装端子とするのもよい。この方が、工程が簡潔で、コストメリットがある。
実装端子3を形成した後、成形セラミックシート単板2の一方の主面に形成された凹部2ALの水晶振動子保持端子8に水晶振動子7を固定し、他方の主面にある水晶検査端子を用いて、水晶振動子の周波数を測定しながら、水晶発振周波数の合わせ込みを行う。水晶振動子の発振周波数を合わせ込み後、成形セラミックシート単板2の水晶振動子7を固定した凹部の開口は、板状のカバー10が封止材11で固着される。これによって、水晶振動子は気密封止され、外部環境から隔離される。その後、他方の主面にICチップ5を搭載する。前記したように、成形セラミックシート単板2の他方の主面からの実装端子3の高さはICチップ5等の電子部品の高さ以上となるようにしている。このような水晶発振器に適用されるICチップ(ベアチップ)等の厚みは厚くても0.2mm程度で、0.1mm以下のものも実現されている。従って、実装端子3の高さは0.1乃至0.3mm程度とする。
本実施例によれば、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、水晶発振器などの電子デバイスの大幅な低背化を実現できる。また、多層の実装端子を形成する厚膜印刷法として、広く知られているマスク印刷法やシリコーン凹版を用いた超厚膜印刷法を用いることができるため、蒸着法やスパッタリング法などにおけるような真空環境を必要としないので、製造コストを大幅に低減できる。
図5は、本発明に係る水晶デバイスの実施例2を説明する水晶発振器の(a)断面図、(b)実装端子を形成した他方の主面の平面図である。実施例2では、成形セラミックシート単板2の一方の主面に形成された凹部2ALに水晶振動子7を固定し、他方の主面に形成した実装端子パッド3aの上に厚膜導電層としてのはんだボール3dを設けたものである。
図3で説明したセラミックシート基板の成形や水晶振動子保持端子8、IC接続パッド4、検査端子6a,6b、実装端子パッド3a、スルーホール8A,8B、及びこれらを繋ぐ配線パターン41の形成は、上記と同様である。本実施例では、実装端子を構成する実装端子パッド3aの上に、はんだボール3dを設ける。このはんだボールは既知のはんだボール供給機を用いて実装端子パッド3aの上に搭載する。
はんだボールの搭載前又は後に、ICチップ5などの電子部品を成形セラミックシート単板2の他方の主面に搭載する。搭載したICチップと他方の主面との間、及びICチップ5の周囲にエポキシ樹脂を好適とする熱硬化性樹脂を充填してアンダーフィル12とする。このアンダーフィル12は、ICチップ5の固定と水晶発振器全体の剛性の向上に資する。
本実施例によっても、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、水晶発振器などの電子デバイスの大幅な低背化を実現できる。また、ICチップの搭載スペースと実装端子の厚みをはんだボールで確保するため、製造工程の簡素化が図られ、製造コストを大幅に低減できる。
図6は、本発明に係る水晶デバイスの実施例3を説明する水晶振動子デバイスの断面図である。すなわち、実施例3は本発明を独立した容器に水晶振動子のみ、または水晶振動子とサーミスタなどの温度補償部品を収容したデバイスとしての一個のデバイスとしてユニット化した水晶振動子に本発明を適用したものである。水晶発振器に搭載される水晶振動子(水晶片)と区別するため、ここでは水晶振動子デバイスと表記する。なお、説明のために形状やサイズを誇張した部分もあるのは前記の各実施例と同様である。
本発明の実施例3に係る水晶振動子デバイスは、図1と同様に、水晶振動子7を収容する凹部2ALをプレス加工で成形した成形セラミックシート単板2用いている。この成形セラミックシート単板2の一方の主面(図6の紙面上側:表面)の凹部2ALに水晶振動子(水晶片)7が固定される。凹部2ALの開口端面には板状の金属カバー10が封止材11で固着され、水晶振動子(水晶片)7を凹部2AL内に密封する。この板状カバー10は、コバールを好適とする金属板が好適であるが、ガラス板、水晶板を用いることもできる。
封止材11には、金属材料からなる金属リング、またはガラス板や水晶板を用いる場合は、セラミックシートとの接合効果が良好な適宜の接合材を用いる。本実施例では金属リングを用いた。なお、他方の主面(図6の紙面下側:背面)には、その四隅に実装端子3がそれぞれ設けられている。この実施例における実装端子3は銀(Ag)粒子、銀―パラジューム(Ag−Pd)や金(Au)粒子、銅(Cu)粒子などの既知の金属粒子入りペースト(導体ペースト)をマスク印刷(スクリーン印刷)、インクジェット印刷などの薄膜印刷法で形成される。
本実施例によれば、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶振動子デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、大幅な低背化を実現できる。
本発明の実施例4は、特に図示して説明はしないが、前記図1で説明した実施例1におけるICチップ5に替えて周囲温度を測定する温度補償部品としてのサーミスタを凹部に収容したものである。このサーミスタは図1のICチップ5と同じ位置(成形セラミックシート単板2の他方の主面)に設けるものに代えて、図6の凹部2ALの内部の適宜の位置に取り付けてもよい。その他の構成は実施例1と同様なので、重複する説明はしない。
本実施例によっても、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、大幅な低背化を実現できる。
図7は、本発明に係る水晶デバイスの実施例5を説明する水晶振動子デバイスの断面図である。図8は、図7のX−X’線に沿った断面図である。実施例5も実施例4と同様に電子部品としての水晶振動子デバイスに本発明を適用したものである。なお、説明のために形状やサイズを誇張した部分もあるのは前記の各実施例と同様である。本実施例の水晶振動子(水晶片)7は、その表裏のそれぞれに設けた励振電極7a,7b(7bは図示せず)の引き出し電極7d,7eを、矩形をなす水晶片の両端辺(本実施例では両短辺)に引き出して端縁に帯状に形成し、この引き出し電極7d,7eを水晶保持端子8に固定して両持ちタイプとしたものである。
本実施例の水晶振動子デバイスも、水晶振動子(水晶片)7を収容する凹部2ALを、一枚のセラッミックシートをプレス加工で凹部を形成した成形セラミックシート単板2用いている。この成形セラミックシート単板2の一方の主面(図8の紙面上側:表面)の凹部2ALの対角に設けた一対の水晶保持端子8,8に水晶振動子(水晶片)7の引き出し電極7d,7eを導電性接着剤9で固定する。凹部2ALの開口には板状の金属カバー10が封止材(金属リング)11を介して固着され、水晶振動子7を凹部2ALの内部に密封する。この板状の金属カバー10は、コバールを好適とする金属板であり、その少なくとも周囲に金属膜、例えば、Au-Snなどの合金膜が形成されている。封止材となる金属リング11も金属カバー10と同様のコバールにAu-Sn合金膜が形成されている。
すなわち、成形セラミックシート単板2の凹部2ALの開口端面には、タングステンやモリブデンなどの高融点金属を好適とする金属膜が設けられている。成形セラミックシー
ト単板2の凹部2ALの底面には、その底面の対角部分に当該成形セラミックシート単板2を貫通する貫通電極8Cを有し、この貫通電極8Cに電気的に接続する如く、それぞれの貫通電極8Cを覆って水晶保持端子8が形成されている。この水晶保持端子8に、前記した水晶振動子(水晶片)7の引き出し電極7d,7eを導電性接着剤9で接着固定されている。
水晶振動子(水晶片)7の引き出し電極7d,7eは、貫通電極8Cから当該水晶振動子(水晶片)7の短辺中央部分において導電性接着剤9で水晶保持端子8に接着され、水晶振動子(水晶片)7は、その長軸方向の中央線上で両持ち固定される。貫通電極8Cは成形セラミックシート単板2の背面に設けた4個の実装端子の内の2個の実装端子3に接続している。また、封止材11で固着された板状の金属カバー10は封止材となる金属リング15と残りの実装端子の他の一つ(接地端子)に側面電極8Dを通して接続している。
なお、図9は、成形セラミックシート単板の背面に設けた実装端子の配置を説明する図である。成形セラミックシート単板2の背面に(他方の主面、図8の紙面下側)に設けられる実装端子は4個である。4個の実装端子のうち、貫通電極8Cに接続する一対の実装端子は水晶振動子(水晶片)の励振端子/振動出力端子となる。図9の右上に位置する実装端子は側面電極8Dを通して金属カバー10に接続する接地(GND)端子となる。この実施例における実装端子3も、銀(Ag)粒子、銀―パラジューム(Ag−Pd)や金(Au)粒子、銅(Cu)粒子などの既知の金属粒子入りペースト(導体ペースト)をマスク印刷(スクリーン印刷)、インクジェット印刷などの薄膜印刷法で形成される。
本実施例によっても、容器本体を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、大幅な低背化を実現できる。
本発明の実施例6は、特に図示して説明はしないが、前記図5の水晶振動子(片)と共に、サーミスタ等の周囲温度を測定する温度補償部品を凹部に収容したものである。このサーミスタは図8の凹部2ALの内部の適宜の位置に取り付ける。その他の構成は実施例5と同様なので、重複する説明はしない。
本実施例によっても、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、大幅な低背化を実現できる。
図10は、本発明に係る水晶デバイスの実施例7を説明する水晶振動子デバイスの平面図である。本実施例は、実施例6と同様に、電子部品としてユニット化した水晶振動子デバイスに本発明を適用したものである。なお、説明のために形状やサイズを誇張した部分もあるのは前記の各実施例と同様である。本実施例の水晶振動子(水晶片)7は、その表裏のそれぞれに設けた励振電極7a,7b(7bは図示せず)の引き出し電極7d,7eを、矩形をなす水晶片の一方の対角線上で、かつ貫通電極8C上で導電性接着剤9により接着固定した両持ちタイプとしたものである。その他の構成は実施例5と同様である。なお、実施例6と同様にサーミスタ等の周囲温度を測定する温度補償部品を凹部に収容したものとすることもできる。
本実施例によっても、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状の金属カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、大幅な低背化を実現できる。
図11は、上記した実施例5乃至7の水晶振動子デバイスに搭載される水晶振動子(水晶片)の構成を説明する(a)斜視図、(b)(a)のX−X’線に沿った断面図である。この水晶振動子(水晶片)は両持ちタイプであり、成形セラミックシート単板の凹部の底面に設けた水晶保持端子8に両持ち型で固定される。水晶振動子(水晶片)7は、水晶基板7cの表裏に励振電極7a,7bを有し、それぞれの励振電極7a,7bから引き出し電極7d,7eが引き出されている。この引き出し電極7d,7eを水晶保持端子8にそれぞれ導電性接着剤で接着固定する。なお、この両持ちタイプの水晶振動子は、図1乃至図6で説明した片持ち固定タイプの水晶振動子と置換することもできることはいうまでも無い。
図12は、本発明に係る水晶デバイスの実施例8を説明する水晶振動子デバイスの平面図である。本実施例は、実施例6や実施例3と同様に、電子部品としてユニット化した水晶振動子デバイスに本発明を適用したものである。
成形セラミックシート単板2の構成は図8と同様であるが、凹部に収容する水晶振動子(水晶片)7は実施例1乃至3で説明したものと同様の片持ち固定型である。この成形セラミックシート単板2の凹部底面には、図8と同様に、その対角線上に貫通電極8Cが穿設されている。そして、水晶保持端子8は凹部底面の一方の短辺側に2つ設けてあり、それぞれが貫通電極8Cに一方に接続している。図12の紙面上方の水晶保持端子は、同右上にある貫通電極まで凹部底面の上隅を這って延びている。水晶振動子(水晶片)7の引き出し電極のそれぞれは、図の左側で水晶保持端子8に導電性接着剤9で接着固定されている。
本実施例によっても、本体基板を成形セラミックシート単板で構成し、板状カバーにて全体強度を補強することで、低背化を実現しながら水晶デバイス全体としての形状変形を抑制し、剛性の向上を図る構造であるため、大幅な低背化を実現できる。
図13は、図8、図10、図12に示した貫通電極部分の構造例を説明する要部断面図である。貫通電極8Cは、成形セラミックシート単板2の凹部底壁を貫通して背面に有する実装端子3まで穿設される。穿設した孔にAg−Pd,Cu等の導体を充填して形成される。この貫通電極8Cは、背面では実装端子3に接続し、凹部底面側では水晶保持端子8に接続する。図10に示した実施例のように、その直上に引き出し電極7d,7eを導電性接着剤で固定する。これにより、貫通電極8C部分での気密は保持される。
しかし、図7や図12に示したように、引き出し電極7d,7eを貫通電極8Cの位置とは異なる部分で水晶保持端子8に接着固定するものでは、その上方は水晶保持電極8のみであることで、十分な気密保持は難しい。その対策として、本発明では、貫通電極8Cの部分に導電性接着剤が塗布されない形式の場合には、この貫通電極8Cの部分を覆って、ガラスなどを塗布してガラス膜8Fを形成する。ガラス膜8Fは貫通電極8Cを通しての気密漏れを十分に阻止する機能を有する。なお、ガラスに限らず、これと同様の気密保持性能を有し、水晶デバイスの構成要素に悪影響を及ぼさないものであれば、そのような塗布膜を用いることができることは言うまでもない。
図14は、本発明に係る水晶デバイスの1例である温度補償型水晶発振器の回路構成例を説明するブロック図である。この水晶発振器は、水晶振動子7と共に発振器を構成する水晶発振回路23を備える。そして、温度補償回路は、温度補償電圧を発生させる温度センサ回路20と、温度センサ回路20の出力を用いて温度補償電圧を発生させる温度補償回路21と、温度補償量を決定するための不揮発性メモリ25と、水晶発振回路23と、水晶発振回路23に接続された制御入力調整回路26と、定電圧回路27と、水晶発振回路23が出力するアナログ信号を出力するための出力バッファ回路24と、から構成されている。
温度センサ回路20は、温度変化に対し出力が1次関数的に変化する電圧を発生し、温度補償回路21は、温度センサ回路20の出力電圧から水晶振動子2の周波数温度変化分を補償するための電圧を発生する。不揮発性メモリ25は、温度補償に用いるデータを格納し、自動周波数制御入力調整回路26は、制御電圧入力端子(イネーブル/デスエーブル端子兼用)Vcon or E/Dからの入力電圧に対する電圧利得を調整し、制御電圧による周波数可変幅を調整する。また、水晶発振回路23は、ICチップ5の外部に接続された水晶振動子2と内蔵した増幅器、可変容量素子により電圧制御水晶発振器を構成している。さらに、定電圧回路27は、DC電源電圧から温度や電源電圧に依存しないICチップ内部で使用する電圧を発生し、出力バッファ回路24は、水晶発振回路の出力をバッファし、発振出力として出力する。
上記で説明した実施例により、セラミックシート単板でありながら、熱工程での基板の反り等の変形や破壊などのダメージが抑制され、低背で剛性の高い水晶発振デバイス、水晶振動子デバイスなどの水晶デバイスを得ることができる。
上記の実施例において、成形セラミックシート単板の凹部を気密封止する板状カバーとして、金属板を用い、その封止材に金属リングを用いるものとして説明したが、先にも記載したように、板状カバーとしてガラス板や水晶板などの部材を用いることもできる。その場合は、封止材としてはセラミックとの固着性が良好な接着剤を用いる。そして、このような絶縁材を用いたものにおいて封止した水晶振動子などに電磁遮蔽を施す必要がある場合には、板状カバーの表裏面の少なくとも一方に導体膜を設けて、これを図8の側面電極とおなじような構成で接地端子に接続すればよい。