(本実施形態のシフト操作装置を備えた車両)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態のシフト操作装置を備えた自動変速装置及び当該自動変速装置が搭載された車両1000のスケルトン図である。図1に示すように、車両1000は、エンジンEG、クラッチC、オートメイテッドマニュアルトランスミッションAMT(以下、AMTと略す)、デファレンシャルDF、駆動輪Wl、Wrを有する。
エンジンEGは、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であり、回転トルクを出力するものである。エンジンEGから出力された回転トルクは、駆動軸EG−1に伝達される。
(クラッチ)
クラッチCは、駆動軸EG−1とAMTの入力軸131との間に設けられ、駆動軸EG−1と入力軸131を断接するものであり、駆動軸EG−1と入力軸131間の伝達トルクを電子制御可能な任意のタイプのクラッチである。本実施形態では、クラッチCは、乾式単板ノーマルクローズクラッチであり、フライホイール121、クラッチディスク122、クラッチカバー123、プレッシャープレート124、ダイヤフラムスプリング125を有している。フライホイール121は、所定の質量を有する円板であり、駆動軸EG−1が接続し、駆動軸EG−1と一体回転する。クラッチディスク122は、その外縁部に摩擦部材122aが設けられた円板状であり、フライホイール121と離接可能に対向している。クラッチディスク122は、入力軸131と接続し、入力軸131と一体回転する。
クラッチカバー123は、フライホイール121の外縁と接続しクラッチディスク122の外周側に設けられた円筒部123aと、フライホイール121との接続部と反対側の円筒部123aの端部から径方向内側に延在する円環板状の側周壁123bとから構成されている。プレッシャープレート124は、円環板状であり、フライホイール121との対向面と反対側のクラッチディスク122に離接可能に対向して配設されている。
ダイヤフラムスプリング125は、所謂皿バネの一種で、その厚さ方向に傾斜するダイヤフラムが形成されている。ダイヤフラムスプリング125の径方向中間部分は、クラッチカバー123の側周壁123bの内縁と当接し、ダイヤフラムスプリング125の外縁は、プレッシャープレート124に当接している。ダイヤフラムスプリング125は、プレッシャープレート124を介して、クラッチディスク122をフライホイール121に押圧している。この状態では、クラッチディスク122の摩擦部材122aがフライホイール121及びプレッシャープレート124によって押圧され、摩擦部材122aとフライホイール121及びプレッシャープレート124間の摩擦力により、クラッチディスク122とフライホイール121が一体回転し、駆動軸EG−1と入力軸131が接続される。
クラッチアクチュエータ129は、AMT−ECU113によって駆動制御され、ダイヤフラムスプリング125の内縁部を、フライホイール121側に押圧又は当該押圧を解除し、クラッチCの伝達トルクを可変とするものである。クラッチアクチュエータ129には、電動式のものや油圧式のものが含まれる。クラッチアクチュエータ129が、ダイヤフラムスプリング125の内縁部を、フライホイール121側に押圧すると、ダイヤフラムスプリング125が変形して、ダイヤフラムスプリング125の外縁が、フライホイール121から離れる方向に変形する。すると、当該ダイヤフラムスプリング125の変形によって、フライホイール121及びプレッシャープレート124がクラッチディスク122を押圧する押圧力が徐々に低下し、クラッチディスク122とフライホイール121間の伝達トルクも徐々に低下し、駆動軸EG−1と入力軸131が切断される。このように、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動することにより、クラッチディスク122とフライホイール121間の伝達トルクを任意に可変させる。
(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)
AMTは、エンジンEGからの回転トルクを複数の変速段の変速比で変速して、デファレンシャルDFに出力する歯車機構式の自動変速機である。また、本実施形態のAMTは、後述するシンクロナイザ機構を有するシンクロ式自動変速機である。AMTは、AMT−ECU113、入力軸131、出力軸132、第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、リバースドライブギヤ146、第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、リバースドリブンギヤ156、出力ギヤ157、リバースアイドラギヤ161、第一選択機構100、第二選択機構200、第三選択機構300を有する。
入力軸131は、エンジンEGからの回転トルクが入力される軸であり、クラッチCのクラッチディスク122と一体回転する。出力軸132は、AMTに入力された回転トルクをデファレンシャルDFに出力する軸であり、入力軸131と平行に配設されている。入力軸131及び出力軸132は、それぞれ、図示しないAMTのハウジングに回転可能に軸支されている。
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142は、入力軸131に相対回転不能に固定された固定ギヤである。第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、リバースドライブギヤ146は、入力軸131に相対回転可能(遊転可能)に設けられた遊転ギヤである。
第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152は、出力軸132に相対回転可能(遊転可能)に取り付けられた遊転ギヤである。第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、リバースドリブンギヤ156、出力ギヤ157は、出力軸132に相対回転不能に固定された固定ギヤである。
第一ドライブギヤ141と第一ドリブンギヤ151は、互いに噛合し、1速段を構成するギヤである。第二ドライブギヤ142と第二ドリブンギヤ152は、互いに噛合し、2速段を構成するギヤである。第三ドライブギヤ143と第三ドリブンギヤ153は、互いに噛合し、3速段を構成するギヤである。第四ドライブギヤ144と第四ドリブンギヤ154は、互いに噛合し、4速段を構成するギヤである。第五ドライブギヤ145と第五ドリブンギヤ155は、互いに噛合し、5速段を構成するギヤである。
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145の順にギヤ径が大きくなっている。第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155の順にギヤ径が小さくなっている。
リバースアイドラギヤ161は、リバースドライブギヤ146とリバースドリブンギヤ156の間に配設され、リバースドライブギヤ146及びリバースドリブンギヤ156と噛合している。リバースアイドラギヤ161、リバースドライブギヤ146及びリバースドリブンギヤ156は、リバース用のギヤである。
出力ギヤ157は、デファレンシャルDFのリングギヤDF−1と噛合し、出力軸132に入力された回転トルクを、デファレンシャルDFに出力する。
(選択機構)
[第一選択機構]
第一選択機構100は、第一ドリブンギヤ151又は第二ドリブンギヤ152を選択して、出力軸132に相対回転不能に連結するものである。第一選択機構100は、図1及び図2に示すように、第一クラッチハブH1と、第一速係合部材E1と、第二速係合部材E2と、第一シンクロナイザリングR1、第二シンクロナイザリングR2と、第一スリーブS1とから構成されている。第一クラッチハブH1は、第一ドリブンギヤ151と第二ドリブンギヤ152との軸線方向間となる出力軸132にスプライン固定される。第一速係合部材E1及び第二速係合部材E2は、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152のそれぞれに、例えば圧入などにより固定される部材である。第一シンクロナイザリングR1は、第一クラッチハブH1と第一速係合部材E1の間に介在され、第二シンクロナイザリングR2は、第一クラッチハブH1と第二速係合部材E2の間に介在される。第一スリーブS1は、第一クラッチハブH1の外周に軸線方向移動自在にスプライン係合される。
この第一選択機構100は、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の一方と出力軸132との係合を可能とし、かつ、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の両者を出力軸132に対して離脱する状態にすることができる周知のシンクロナイザ機構を構成している。
第一選択機構100の第一スリーブS1は、図2に示す「中立位置」では第一速係合部材E1及び第二速係合部材E2のいずれにも係合されていない。第一スリーブS1の外周には、環状の第一係合溝S1−1が形成されている。第一係合溝S1−1には、第一シフトフォークF1(図3示)が係合している。
第一シフトフォークF1により第一スリーブS1が第一ドリブンギヤ151側にシフトされれば、第一スリーブS1は第一シンクロナイザリングR1にスプライン係合して出力軸132と第一ドリブンギヤ151の回転を同期させ、次いで第一速係合部材E1の外周の外歯スプラインと係合し、第一ドリブンギヤ151を出力軸132に相対回転不能に連結して1速段を形成する。また、第一シフトフォークF1により第一スリーブS1が第二ドリブンギヤ152側にシフトされれば、第二シンクロナイザリングR2は同様にして出力軸132と第二ドリブンギヤ152の回転を同期させた後に、この両者を相対回転不能に連結して2速段を形成する。
[第二選択機構]
第二選択機構200は、第三ドライブギヤ143又は第四ドライブギヤ144を選択して、入力軸131に相対回転不能に連結するものである。第二選択機構200は、第二クラッチハブH2と、第三速係合部材E3と、第四速係合部材E4と、第三シンクロナイザリングR3、第四シンクロナイザリングR4と、第二スリーブS2とから構成されている。
第二選択機構200は、第一選択機構100と同様のシンクロナイザ機構であり、第二クラッチハブH2が、第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144の間の入力軸131に固定され、第三速係合部材E3と第四速係合部材E4が、それぞれ第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144に固定されている点が異なっているだけである。第二選択機構200は、「中立位置」ではいずれの係合部材E3、E4とも係合されていない。第二スリーブS2の外周には、環状の第二係合溝S2−1が形成されている。第二係合溝S2−1には、第二シフトフォークF2が係合している。
第二シフトフォークF2により第二スリーブS2が第三ドライブギヤ143にシフトされれば、入力軸131と第三ドライブギヤ143の回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて3速段が形成される。また、第二シフトフォークF2により第二スリーブS2が第四ドライブギヤ144側にシフトされれば、入力軸131と第四ドライブギヤ144の回転が同期された後に、この両者が直結されて4速段が形成される。
[第三選択機構]
第三選択機構300は、第五ドライブギヤ145又はリバースドライブギヤ146を選択して、入力軸131に相対回転不能に連結するものである。第三選択機構300は、第三クラッチハブH3と、第五速係合部材E5と、リバース係合部材ERと、第五シンクロナイザリングR5、リバースシンクロナイザリングRRと、第三スリーブS3とから構成されている。
第三選択機構300は、第一選択機構100と同様のシンクロナイザ機構であり、第三クラッチハブH3が、第五ドライブギヤ145とリバースドライブギヤ146の間の入力軸131に固定され、第五速係合部材E5とリバース係合部材ERが、それぞれ第四ドライブギヤ144とリバースドライブギヤ146に固定されている点が異なっているだけである。第三選択機構300は、「中立位置」ではいずれの係合部材E5、ERとも係合されていない。第三スリーブS3の外周には、環状の第三係合溝S3−1が形成されている。第三係合溝S3−1には、第三シフトフォークF3が係合している。
第三シフトフォークF3により第三スリーブS3が第五ドライブギヤ145にシフトされれば、入力軸131と第五ドライブギヤ145の回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて5速段が形成される。また、第三シフトフォークF3により第三スリーブS3がリバースドライブギヤ146側にシフトされれば、入力軸131とリバースドライブギヤ146の回転が同期された後に、この両者が直結されてリバース段が形成される。
デファレンシャルDFは、AMTの出力軸132から入力された回転トルクを差動可能に駆動輪Wl、Wrに伝達する装置である。デファレンシャルDFは、出力ギヤ157と噛合するリングギヤDF−1を有する。このような構造により、出力軸132は、駆動輪Wl、Wrに回転連結されている。
AMT−ECU113は、AMTを制御する電子制御装置である。AMT−ECU113は、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等の「記憶部」を備えている。CPUは、後述する図9に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、「記憶部」は前記プログラムを記憶している。
(シフト操作装置の構造)
次に、図3〜図8を用いて、本実施形態のシフト操作装置90について説明する。シフト操作装置90は、AMTの選択機構100〜300を作動させるものである。図3〜図6に示すように、シフト操作装置90は、ハウジング10、シャフト20、回転部材30、シフト部材40、ディテント部材50、第一シフトフォーク部材61、第二シフトフォーク部材62、第三シフトフォーク部材63、ガイド機構80、モータ70、検出部75、ドライブギヤ81、ドリブンギヤ82を有している。
ハウジング10は、本実施形態では、AMTと共通であるが別体であっても差し支え無い。図4Aに示すように、ハウジング10にシャフト20が回転可能に取り付けられている。なお、以下の説明において、シャフト20の軸線方向を単に、”軸線方向”と表現する。図5や図6A、図6Bに示すように、シフト部材40は軸心方向を貫通する取付穴40pが形成された円筒形状である。図5に示すように、シフト部材40の取付穴40p内にシャフト20が挿通されて、シフト部材40とシャフト20を締結するボルト45によって、シフト部材40がシャフト20に相対回転不能、且つ、軸線方向に移動不能に固定されている。このような構造により、シフト部材40は、ハウジング10に回転可能に取り付けられている。図7に示すように、シフト部材40の外周面には、1周シフト溝40aが形成されている。
以下に、図11を用いて、シフト溝40aについて説明する。なお、図11において、線方向に関して同じ位置において、シフト部材40の外周面を1周する線を中立線とする。そして、中立線から軸線方向の一方側を奇数段側とし、中立線から軸線方向の他方側を偶数段側とする。
図11に示すように、開始位置(0°)から、中立線に沿って第一接続部40bが所定角度形成されている。第一接続部40bの末端から、中立線から奇数段側に傾斜した第一傾斜部40cが所定角度形成されている。第一傾斜部40cの末端から、奇数段側において中立線と平行な奇数段部40dが所定角度形成されている。奇数段部40dの末端から、中立線から偶数段側に傾斜した第二傾斜部40eが所定角度形成されている。
第二傾斜部40eの末端から、中立線に沿って第二接続部40fが所定角度形成されている。第二接続部40fの末端から、中立線から偶数段側に傾斜した第三傾斜部40gが所定角度形成されている。第三傾斜部40gの末端から、偶数段側において中立線と平行な偶数段部40hが所定角度形成されている。偶数段部40hの末端から、中立線から奇数段側に傾斜した第四傾斜部40iが所定角度形成されている。
後述するシフトピン30e(図5、図6A、図7示)が第一接続部40b又は第二接続部40fにあるシフト部材40の状態を、「中立状態」という。また、シフトピン30eが、奇数段部40dにあるシフト部材40の状態を、「奇数段状態」という。更に、シフトピン30eが偶数段部40hにあるシフト部材40の状態を「偶数段状態」という。「中立状態」では、いずれのシフトフォークF1〜F3も、図2に示す「中立位置」にあり、AMTがニュートラル状態となっている。「奇数段状態」では、図10に示すように、選択されたシフトフォークF1〜F3が奇数段側にあり、AMTが1速、3速、5速のいずれかとなっている。「偶数段状態」では、選択されたシフトフォークF1〜F3が偶数段側にあり、AMTが2速、4速、リバースのいずれかとなっている。
図5に示すように、シフト部材40の外周側には、円筒形状の回転部材30がシフト部材40と相対回転可能、且つ、軸線方向移動可能に取り付けられている。言い換えると、回転部材30は、ハウジング10に対して回転可能、且つ、軸線方向に移動可能に取り付けられている。図4Bに示すように、回転部材30の外周面には、一定角度をおいて、複数の係合部30i、30j、30kが形成されている。本実施形態では、係合部30i、30j、30kは、板状であり、回転部材30の半径方向に突出形成されている。また、第一〜第三係合部30i、30j、30kが、回転部材30の外周面に120°間隔をおいて、3つ形成されている。
図4Aに示すように、回転部材30の軸線方向の一方側は奇数段側となっていて、回転部材30の軸線方向の他方側は偶数段側となっている。なお、回転部材30及びシフト部材40の奇数段側と偶数段側の方向は一致している。
図3、図6A、図6Bに示すように、回転部材30の外周面には、複数のラッチ歯車30bが連続して1周形成されている。本実施形態では、ラッチ歯車30bは、回転部材30の外周面に30°間隔をおいて12個形成されている。図6A、図6Bに示すように、1つのラッチ歯車30bは、回転部材30の軸線方向に沿って半径方向に延在する係合面30cと、回転部材30の半径方向から傾斜した方向に延在し、その頂部が係合面30cの頂部と接続する傾斜面30dを有している。
ディテント部材50は、ハウジング10に取り付けられている。図3、図5、図6A、図6Bに示すように、ディテント部材50は、ラッチ歯車30bの係合面30cと係合している。図5に示すように、ディテント部材50は、筐体50a、歯止め部材50b、付勢部材50cとから構成されている。筐体50aは、ラッチ歯車30b側に開口した有底筒状であり、ハウジング10に取り付けられている。歯止め部材50bは、先端が半球形状であり、先端部が筐体50aの開口部から突出して、筐体50a内に摺動可能に取り付けられている。付勢部材50cは、コイルスプリング等であり、歯止め部材50bをラッチ歯車30b側に付勢している。
図6A、図6Bに示すように、歯止め部材50bの先端は、ラッチ歯車30bの係合面30cと当接して係合している。このため、回転部材30の逆回転方向の回転が規制される。また、歯止め部材50bの先端は、ラッチ歯車30bの傾斜面30dと当接している。回転部材30が正回転方向に回転すると、歯止め部材50bが、傾斜面30dによって押圧されて筐体50a側に摺動し、ラッチ歯車30bを乗り越える。このように、ラッチ歯車30bとディテント部材50は、回転部材30のハウジング10に対する逆回転方向のみの回転を規制し、回転部材30のハウジング10に対する正回転方向のみの回転を許容する「第二ワンウェイクラッチ」として機能する。
図5や図7に示すように、回転部材30の内周面には、回転部材30の内周側に突出し、シフト部材40のシフト溝40aと係合するシフトピン30eが取り付けられている。
図5や図6Bに示すように、シフト部材40の外周面には、キー用凹部40mが凹陥形成されている。キー用凹部40mには、ブロック状のキー41が、シフト部材40の半径方向に摺動可能に取り付けられている。図6Bに示すように、キー41の一方の側面には、軸線方向に沿って回転部材30の半径方向に延在する係合面41aが形成されている。係合面41aの反対側のキー41の側面には、軸線方向に沿って、回転部材30の半径方向から傾斜している傾斜面41bを有している。キー用凹部40mの底部と、キー41の間には、コイルスプリング等の付勢部材42が配設されている。
図5や図6Bに示すように、回転部材30の内周面には、キー41と係合するキー係合凹部30fが凹陥形成されている。図6Bに示すように、キー係合凹部30fは、キー41に対応した形状である。つまり、キー係合凹部30fは、回転部材30の軸線方向に沿って半径方向に延在し、キー41の係合面41aと当接して係合する被係合面30gが形成されている。
また、キー係合凹部30fは、被係合面30gと対向し、回転部材30の軸線方向に沿って半径方向から傾斜し、キー41の傾斜面41bと当接する傾斜面30hを有している。傾斜面30hとキー係合凹部30fの底面の交差角は、鈍角となっている。なお、被係合面30gは、シフト部材40に対して正回転側に形成され、傾斜面30hは、シフト部材40に対して逆回転側に形成されている。図5に示すように、キー係合凹部30fのシャフト20の軸線方向の幅寸法は、キー41の前記軸線方向の幅寸法よりも大きくなっている。このため、回転部材30はシフト部材40に対して、前記軸線方向に移動可能となっている。
キー41の係合面41aと回転部材30の被係合面30gが係合しているので、回転部材30がシフト部材40に対して逆回転方向に相対回転が規制される。キー41の傾斜面41bは、回転部材30の傾斜面30hに当接しているので、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向に相対回転に伴い、キー41が、キー用凹部40mの底部側に摺動されて、キー用凹部40m内に収納され、回転部材30がシフト部材40に対して正回転方向に相対回転する。このように、キー41とキー係合凹部30fは、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向のみの回転を規制し、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向のみの回転を許容する「第一ワンウェイクラッチ」として機能する。
なお、キー41がキー係合凹部30fと係合している状態から、シフト部材40が回転部材30に対して所定角度(本実施形態では180°未満)逆回転した位置から、シフト部材40が正回転方向に回転しても、キー41はキー係合凹部30fに係合していないので、回転部材30が正回転方向に回転しない。言い換えると、「第一ワンウェイクラッチ」は、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転に関して所定角度(本実施形態では、180°未満)バックラッシュ可能に構成されている。
なお、シフト部材40が回転部材30に対して、相対回転すると、シフト部材40は、回転部材30に固定されたシフトピン30eがシフト部材40のシフト溝40aに係合しているので、回転部材30が軸線方向に移動する。
図3に示すように、第一シフトフォーク部材61は、回転部材30の外周側に配設されている。第一シフトフォーク部材61は、軸部61aと、軸部61aの基端部に設けられた第一被係合部61bと、軸部61aの先端に設けられたシフトフォークF1とから構成されている。軸部61aは、軸線方向移動可能にハウジング10に取り付けられている。
第一被係合部61bには、第一〜第三係合部30i、30j、30kと係合又は離脱可能な係合凹部61cが凹陥形成されている。シフトフォークF1は、円弧形状であり、図2に示す、第一係合溝S1−1と係合している。
図示していないが、第一シフトフォーク部材61と、同じの構造の、第二シフトフォーク部材62、及び第三シフトフォーク部材63が、回転部材30の外周側に、第一シフトフォーク部材61から一定角度(本実施形態では30°)をおいて、ハウジング10に軸線方向摺動可能に取り付けられている。図4Bに示すように、第一被係合部61b、第二被係合部62b、第三被係合部63bが、軸線方向に関し、第一〜第三係合部30i、30j、30kが形成されている位置において、回転部材30の外周部に前記一定角度(本実施形態では30°)をおいて配設されている。これら、第一シフトフォーク部材61、第二シフトフォーク部材62、第三シフトフォーク部材63は、自身が軸線方向に移動して、自身に加えられた力を、それぞれ、第一スリーブS1、第二スリーブS2、第三スリーブS3に伝達させることにより、それぞれ、第一スリーブS1、第二スリーブS2、第三スリーブS3を移動させて、それぞれ、AMTの第一選択機構100、第二選択機構200、第三選択機構300を作動させる。
シャフト20には、ドリブンギヤ82が固定されている。モータ70は、その回転角が制御可能なモータである。モータ70は、AMT−ECU113(図1示)によって回転角が制御されて駆動される。モータ70の回転軸71には、ドリブンギヤ82と噛合するドライブギヤ81が取り付けられている。なお、ドリブンギヤ82の歯数は、ドライブギヤ81の歯数よりも多くなっていて、モータ70の回転が、減速されて、シャフト20に伝達される。
検出部75は、モータ70の回転角度を検出するセンサであり、例えば、回転軸71の近傍に設けられている。検出部75には、ホールIC等の磁気センサや、回転軸71の回転を検出するロータリーエンコーダ、或いは回転軸71の外周面に1周形成された凹凸や明暗の有る印刷部を読み取る撮像素子等のセンサが含まれる。検出部75は、AMT−ECU113と通信可能に接続され、検出したモータ70の回転角情報をAMT−ECU113に出力する。
AMT−ECU113は、検出部75から出力されたモータ70の回転角度情報に基づいて、シャフト20やシフト部材40の回転角度を認識することができる。シャフト20は、モータ70によって正逆回転されるが、AMT−ECU113は、検出部75から出力されたモータ70の回転角度情報の履歴から、現在のシャフト20やシフト部材40の回転角度を認識することができる。また、AMT−ECU113(回転部材回転角度演算部)は、検出部75から出力されたモータ70の回転角度情報の履歴から、回転部材30の回転角度を演算する。
図4Bに示すように、ガイド機構80は、シフトフォーク部材61〜63のうち正回転方向の先頭位置にある第三シフトフォーク部材63の被係合部63bに隣接して設けられている。図12に示すように、ガイド機構80は、シャフト86、ガイド部材87、スプリング88とから構成されている。シャフト86は、ハウジング10に取り付けられている。ガイド部材87は、ブロック状であり、挿通穴87aが形成されている。挿通穴87aにシャフト86が挿通して、ガイド部材87がシャフト86の軸線方向に移動可能且つシャフト86に対して回転不能にシャフト86に取り付けられている。なお、ガイド部材87の移動方向は、回転部材30の軸線方向、つまり、回転部材30の移動方向と同一となっている。ガイド部材87の回転部材30と対向する部分には、係合部30i、30j、30kが通過可能(係合又は離脱可能)な通過凹部87bが凹陥形成されている。
ガイド部材87の両側のシャフト86には、スプリング88が取り付けられている。このスプリング88によって、ガイド部材87は、その移動範囲の中央位置である原位置にセンタリングされる(図12の状態)。ガイド部材87が原位置に位置されている状態では、ガイド部材87は、シフトフォーク部材61〜63のうち正回転方向の先頭位置にある第三シフトフォーク部材63の被係合部63bに隣接して位置している(図4B示)。ガイド部材87が原位置に位置されている状態において、通過凹部87bは軸線方向に関して被係合凹部61c〜63cと同じ位置に形成されている。ガイド部材87が原位置にある状態では、後述のセレクト動作によって、回転部材30が回転した場合に、係合部30i、30j、30kは通過凹部87bを通過可能である。
[セレクト動作]
モータ70が逆回転して、シャフト20が正回転すると、上述したように、「第二ワンウェイクラッチ」(ラッチ歯車30bとディテント部材50)は、回転部材30のハウジング10に対する正回転方向の回転を許容し、「第一ワンウェイクラッチ」(キー41、キー係合凹部30f)は、回転部材30のシフト部材40に対する逆回転方向の回転を規制するので、シフト部材40と回転部材30が一体に正回転方向に回転する。
このように、回転部材30が正回転方向に回転し、歯止め部材50bが、ラッチ歯車30bを乗り越える度に、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第一被係合部61bと係合し、第一シフトフォーク部材61が選択されている状態(図8A示)、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第二被係合部62bと係合し、第二シフトフォーク部材62が選択されている状態(図8B示)、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第三被係合部63bと係合し、第三シフトフォーク部材63が選択されている状態(図8C示)、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれもが、いずれの第一被係合部61b〜第三被係合部63bと係合しておらず、ガイド部材87の通過凹部87bと係合している非選択状態(図8D示)のいずれかの状態となる。なお、以下の説明において、シフトフォーク部材61〜63のいずれかが選択されている回転部材30の位置(図8A〜図8D)を、「セレクト位置」とする。
AMT−ECU113は、検出部75から出力されたモータ70の回転角情報に基づいて、シフト部材40の回転角を認識することにより、第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれが選択されているか、又は、第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれもが選択されていない非選択状態を認識することができる。
なお、図8Dに示すように、係合部30iが被係合部61b、62b、63bを通過した場合に、次の係合部30jが被係合部61b、62b、63bの手前で待機しているので、小さい回転部材30の回転角で、係合部30jを被係合部61b、62b、63bに係合させることができる。
なお、「セレクト動作」では、シフト部材40と回転部材30が一体に正回転方向に回転し、シフト部材40と回転部材30が相対回転しないので、回転部材30が軸線方向に摺動しない。
[シフト動作]
モータ70が正回転して、シャフト20が逆回転すると、上述したように、「第二ワンウェイクラッチ」(ラッチ歯車30bとディテント部材50)は、回転部材30の逆回転方向の回転を規制し、「第一ワンウェイクラッチ」(キー41、キー係合凹部30f)は、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向の回転は許容するので、回転部材30が停止した状態で、シフト部材40のみが逆回転方向に回転し、シフト部材40が回転部材30に対して逆回転方向に相対回転する。
このように、シフト部材40が回転部材30に対して逆回転方向に相対回転すると、回転部材30に固定されているシフトピン30eがシフト溝40aに係合しているので、シフトピン30eのシフト溝40aに対する移動に伴い、回転部材30が軸線方向に摺動する。第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれが選択されている状態で、回転部材30が軸線方向に摺動すると、選択されている第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63が軸線方向に移動し、これに対応するシフトフォークF1〜F3が軸線方向に移動し、シフトが実行される。
AMT−ECU113は、検出部75から出力されたモータ70の回転角情報に基づいて、シフト部材40の回転角、回転部材30の回転角を認識し、シフト部材40(シフトピン30e)の回転角度が、奇数段側にあるか、中立位置にあるか、偶数段側にあるかを認識することができる。
(変速制御)
次に、AMT−ECU113が実行する変速制御について、図9に示すフロー及び図10を用いて説明する。車両1000が走行可能な状態になると、S11に進む。
S11において、AMT−ECU113が、「変速要求」が有ったと判断した場合には(S11:YES)、プログラムをS12に進め、「変速要求」が無いと判断した場合には(S11:NO)、S11の処理を繰り返す。なお、AMT−ECU11は、スロットル開度と車両1000の速度からなる車両1000の走行状態が、スロットル開度と速度との関係を表した変速線を越えたと判断した場合に、或いは、運転者が、図示しないシフトレバーを操作した場合に、「変速要求」有りと判断する。なお、S11においては、いずれかのシフトフォーク部材61〜63が選択され、いずれかの変速段が形成されている。
S12において、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動制御することにより、クラッチCの伝達トルクを0にして、クラッチCを切断する。S12が終了すると、プログラムは、S13に進む。
S13において、AMT−ECU113が、「変速要求」が2段アップ変速又は2段ダウン変速のいずれかであると判断した場合には(S13:YES)、プログラムをS31に進め、「変速要求」が2段アップ変速及び2段ダウン変速のいずれかでないと判断した場合には(S13:NO)、プログラムをS21に進める。なお、2段アップ変速とは、1速から3速にアップ変速する場合(図10の(1))、2速から4速にアップ変速する場合(図10の(2))、3速から5速にアップ変速する場合(図10の(3))である。また、2段ダウン変速とは、5速から3速にダウン変速する場合(図10の(4))、4速から2速にダウン変速する場合(図10の(5))、3速から1速にダウン変速する場合(図10の(6))である。
S21において、AMT−ECU113が、「セレクト動作」が必要であると判断した場合には(S21:YES)、プログラムをS22に進め、「セレクト動作」が必要で無いと判断した場合には(S21:NO)、プログラムをS26に進める。なお、AMT−ECU113は、2速から3速にアップ変速する場合(図10の(7))、4速から5速にアップ変速する場合(図10の(8))、5速から4速にダウン変速する場合(図10の(9))、3速から2速にダウン変速する場合(図10の(10))、1速からリバースにする場合(図10の(11))、リバースから1速にする場合(図10の(12))のように、シフトフォーク部材61〜63を選択し直す必要がある場合には、「セレクト動作」が必要であると判断する。
S22において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させることにより、シフトピン30eを第一接続部40b又は第二接続部40fに位置させて、選択されているシフトフォーク部材61〜63を「中立位置」に位置させ、AMTをニュートラル状態にする制御を開始する。S22が終了するとプログラムは、S23に進む。
S23において、AMT−ECU113は、検出部75からの検出信号に基づいて、AMTがニュートラル状態になったと判断した場合には(S23:YES)、プログラムをS24に進め、AMTがニュートラル状態になっていないと判断した場合には(S23:NO)、S23の処理を繰り返す。
S24において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を正回転させて、「変速要求」の変速段に対応するシフトフォーク部材61〜63のいずれかを選択する「セレクト動作」を開始する。S24が終了するとプログラムは、S25に進む。
S25において、AMT−ECU113は、検出部75からの検出信号に基づいて、回転部材30の回転角度を演算する。そして、AMT−ECU113が、回転部材30の回転角度に基づいて、「セレクト動作」が完了したと判断した場合には(S25:YES)、プログラムをS26に進め、「セレクト動作」が完了していないと判断した場合には(S25:NO)、S25の処理を繰り返す。
S26において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させて、シフト部材40を、シフトピン30eが「変速要求」のシフト位置(奇数段側又は偶数段側)に回転させる「シフト動作」を開始する。
なお、図11に示すように、第一接続部40b及び第二接続部40fは、中立線に対して傾斜していないので、シフトピン30eが第一接続部40bや第二接続部40fを摺動している限りにおいては、回転部材30及び選択されたシフトフォーク部材61〜63は、軸線方向に移動しない。また、シフト部材40を前記した余分の角度分正回転方向に回転させたとしても、「第一ワンウェイクラッチ」であるキー41、キー係合凹部30fによって、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転に関して所定角度バックラッシュ可能となっているので、シフト部材40の正回転方向の回転に伴い回転部材30が回転することが無い。S26が終了するとプログラムは、S51に進む。
S31において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させることにより、シフトピン30eを第一接続部40b又は第二接続部40fに位置させて、選択されているシフトフォーク部材61〜63を「中立位置」に位置させ、AMTをニュートラル状態にする制御を開始する。例えば、1速から3速にアップ変速する場合には、奇数段部40dにあるシフトピン30eを、第二接続部40fに移動させて、AMTをニュートラル状態にする。S31が終了するとプログラムは、S32に進む。
S32において、AMT−ECU113は、検出部75からの検出信号に基づいて、AMTがニュートラル状態になったと判断した場合には(S32:YES)、プログラムをS33に進め、AMTがニュートラル状態になっていないと判断した場合には(S32:NO)、S32の処理を繰り返す。
S33において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を正回転させて、回転部材30を非選択状態(図8D)にする制御を開始する。S33が終了するとプログラムは、S34に進む。
S34において、AMT−ECU113は、検出部75からの検出信号に基づいて、回転部材30の回転角度を演算する。そして、AMT−ECU113は、回転部材30に回転角度に基づいて、回転部材30が非選択状態になったと判断した場合には(S34:YES、図8D、図12の状態)、プログラムをS35に進め、回転部材30が非選択状態になっていないと判断した場合には(S34:NO)、S34の処理を繰り返す。
S35において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させて、シフト部材40を、シフトピン30eが「変速要求」の変速段手前の中立位置にある準備位置に回転させる制御を開始する。例えば、1速から3速にアップ変速する場合には、S31において第二接続部40fに位置されたシフトピン30eが、奇数段側の手前の準備位置である第一接続部40bに位置するように、シフト部材40が回転される。このS35の処理において、図13に示すように、第一〜第三係合部30i、30j、30kのいずれかと通過凹部87bで係合しているガイド部材87は、回転部材30の軸線方向(シフト方向)の移動に伴って移動する。S35が終了するとプログラムは、S36に進む。
S36において、AMT−ECU113が、検出部75からの検出信号に基づいて、シフト部材40が準備位置にあり、AMTがニュートラル状態になっていると判断した場合には(S36:YES)、プログラムをS24に進め、シフト部材40が準備位置に無いと判断した場合には(S36:NO)、S36の処理を繰り返す。
S51において、AMT−ECU113が、検出部75からの検出信号に基づいて、「シフト動作」が完了したと判断した場合には(S51:YES)、プログラムをS61に進め、「シフト動作」が完了していないと判断した場合には(S51:NO)、プログラムをS55に進める。
S55において、AMT−ECU113が、検出部75からの検出信号に基づいて、ギヤ段を形成することができずシフト不能であると判断した場合には(S55:YES)、プログラムをS56に進め、シフト不能でないと判断した場合には(S55:NO)、プログラムをS26に戻す。なお、シンクロナイザ機構のスリーブS1〜S3が、シンクロナイザリングR1〜R5、RRや係合部材E1〜E5、ERの外周の外歯スプラインと係合できず、変速段を形成することができない場合に、シフト不能となる。なお、上述したシフト不能となる原因の一つとして、係合部材E1〜E5、ERのコーン面とシンクロナイザリングR1〜R5、RRのコーン面が密着して、係合部材E1〜E5、ERとシンクロナイザリングR1〜R5、RRが相対回転不能になり、スリーブS1〜S3のスプラインが、シンクロナイザリングR1〜R5、RRのスプラインや係合部材E1〜E5、ERの外周の外歯スプラインに侵入できないことが有る。
S56において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を正回転させて、シフト部材40を「変速要求」の変速段手前の準備位置に回転させる逆シフト動作を行う。なお、係合部30i、30j、30kのいずれかが、第一シフトフォーク部材61の被係合部61b又は第二シフトフォーク部材62の被係合部62b係合している場合において、逆シフト動作によるシフト部材40の正方向の回転に伴い、回転部材30が正方向に連れ回った場合には、図15Aに示すように、被係合部61b、62bと係合している係合部30i、30j、30kがセレクト方向において次の被係合部62b、63bと当接して、回転部材30の更なる回転が防止され、係合部30i、30j、30kの被係合部61b、62bからの脱落が防止される。また、係合部30i、30j、30kのいずれかが、第三シフトフォーク部材63の被係合部63b係合している場合において、逆シフト動作によるシフト部材40の正方向の回転に伴い、回転部材30が正方向に連れ回った場合には、図15Bに示すように、被係合部63bと係合している係合部30i、30j、30kが、ガイド部材87に当接して、回転部材30の更なる回転が防止され、係合部30i、30j、30kの被係合部63bからの脱落が防止される。図14に示すように、逆シフト動作において、シフト部材40が「変速要求」の変速段手前の準備位置に位置するまでは、係合部30i、30j、30kは、ガイド部材87の通過凹部87bと合致していないので、係合部30i、30j、30kは、ガイド部材87の通過凹部87bを通過することができず、ガイド部材87に当接する。S56が終了すると、プログラムはS57に進む。
S57において、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動制御することにより、クラッチCを接続してから切断する。なお、クラッチCが接続されると、入力軸131にエンジンEGから正トルク又は負トルクが入力されて、係合部材E1〜E5、ERのコーン面とシンクロナイザリングR1〜R5、RRのコーン面の密着が解除され、係合部材E1〜E5、ERとシンクロナイザリングR1〜R5、RRが相対回転可能な状態となる、S57が終了すると、プログラムはS26に戻る。
S61において、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動制御することにより、クラッチCの伝達トルクを最大にして、クラッチCを接続する。S61が終了すると、プログラムは、S11に戻る。
(本実施形態の効果)
上述した説明から明らかなように、図4Bに示すように、ガイド部材87が、複数のシフトフォーク部材61〜63のうち正回転方向の先頭位置にある第三シフトフォーク部材63の被係合部63bに隣接して設けられている。これにより、係合部30i、30j、30kが、ガイド部材87の手前の被係合部63bと係合している状態で、逆シフト動作が実行されて、シフト部材40の正方向の回転に伴い、回転部材30が正方向に連れ回った場合に、係合部30i、30j、30kがガイド部材87に当接する(図15B、図14示)。このため、係合部30i、30j、30kの被係合部63bからの脱落が防止され、シフト部材40が回転部材30に対して確実に相対回転することにより、第三シフトフォーク部材63が確実にシフト動作前の原位置に復帰される。また、係合部30i、30j、30kの被係合部63bからの脱落が防止されるので、再び係合部30i、30j、30kを被係合部63bに係合させるためのセレクト動作が実行されず、変速時間が無駄に長くなってしまうことが防止される。
また、ガイド部材87の通過凹部87bは、軸線方向において被係合凹部61c〜63cと同じ位置に形成されている。これにより、セレクト動作において、回転部材30が回転した場合に、係合部30i、30j、30kが通過凹部87bを通過することができる。
また、図12に示すように、ガイド部材87は、軸線方向に移動可能に設けられている。これにより、図13に示すように、係合部30i、30j、30kがガイド部材87の通過凹部87bに係合している状態において、シフト動作に伴う回転部材30の軸線方向の移動が阻害されない。このため、2速アップ変速又は2速ダウン変速する場合において、係合部30i、30j、30kがガイド部材87の通過凹部87bに係合している状態、つまり、係合部30i、30j、30kがいずれの被係合部61b〜63bと係合していない非選択状態で(図8D示)、シフト動作をさせることにより、次のギヤ段のシフト動作を迅速に行うことができる。つまり、2速アップ変速又は2速ダウン変速する場合には、シフト動作を2回行わなければならないが、係合部30i、30j、30kがいずれの被係合部61b〜63bと係合していない状態でシフト動作させると、シフトフォーク部材61〜63が移動しないので、シンクロナイザリングR1〜R5、RRによる回転の同期時間を削減することができ、迅速に2速アップ変速又は2速ダウン変速を行うことができる。
ガイド機構80は、ガイド部材87をその移動範囲の中央位置に復帰させるスプリング88(付勢部材)を有する。これにより、ガイド部材87の通過凹部87bが、軸線方向において被係合凹部61c〜63cと同じ位置に位置される。これにより、セレクト動作において、回転部材30が回転した場合に、係合部30i、30j、30kが通過凹部87bを確実に通過することができる。
また、図15Aに示すように、被係合部61b〜63bは、回転部材30の回転方向に互いに隣接して設けられている。これにより、逆シフト動作時において、被係合部61b、62bと係合している係合部30i、30j、30kが、係合部30i、30j、30kと係合している被係合部61b、62bよりも正回転方向に進んだ側に有る被係合部62b、63bと当接することにより(図15A示)、係合部30i、30j、30kの被係合部61b、62bからの脱落が防止される。このため、シフト部材40が回転部材30に対して確実に相対回転することにより、シフトフォーク部材61、62が確実にシフト動作前の原位置に復帰される。また、係合部30i、30j、30kの被係合部61b、62bからの脱落が防止されるので、再び係合部30i、30j、30kを被係合部61b、62bに係合させるためのセレクト動作が実行されず、変速時間が無駄に長くなってしまうことが防止される。
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、モータ70が、ドライブギヤ81、ドリブンギヤ82、及びシャフト20を介して、シフト部材40を回転させている。しかし、モータ70が直接シフト部材40を回転させる実施形態であっても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、検出部75は、モータ70の回転角を検出することにより、シャフト20やシフト部材40の回転角を検出するセンサである。しかし、検出部75は、シャフト20やシフト部材40の回転角を直接検出するセンサであっても差し支え無い。本実施形態では、モータ70の回転はドライブギヤ81及びドリブンギヤ82によって減速され、検出部75はモータ70の回転角を検出するので、シフト部材40の回転角を精度高く(分解能が高く)検出することができる。
以上説明した実施形態では、「第一ワンウェイクラッチ」は、キー41とキー係合凹部30fとから構成され、「第二ワンウェイクラッチ」は、ラッチ歯車30bとディテント部材50とから構成されている。しかし、「第一ワンウェイクラッチ」や「第二ワンウェイクラッチ」は、アウターレースとインナーレースの間にスプラグが配設されたスプラグ式のワンウェイクラッチや、アウターレースとインナーレースの間にカムが配設されたカム式のワンウェイクラッチであっても差し支え無い。
また、図16に示すように、シフト部材40がシャフト20に回転可能に取り付けられ、シャフト20の回転部材30に対する正回転方向の回転を規制する第二ワンウェイクラッチ91、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向のみの回転を許容する第一ワンウェイクラッチ92と、及びシャフト20のシフト部材40に対する逆回転方向の回転を規制する第三ワンウェイクラッチ93が設けられた実施形態であっても差し支え無い。
このような実施形態であっても、シャフト20が正回転すると、第二ワンウェイクラッチ91によって、シャフト20と回転部材30とが一体に正回転し、第一ワンウェイクラッチ92によって、回転部材30とシフト部材40が一体に正回転し、「セレクト動作」を実行することができる。また、シャフト20が逆回転すると、第二ワンウェイクラッチ91によって、回転部材30がシャフト20に対して空回りし、第三ワンウェイクラッチ93によって、シャフト20とシフト部材40が一体回転し、第一ワンウェイクラッチ92によって、回転部材30とシフト部材40が相対回転し、「シフト動作」を実行することができる。
なお、シャフト20が正回転する場合には、第二ワンウェイクラッチ91は、回転部材30のハウジング10に対する正回転方向の回転を許容している。また、シャフト20が逆回転する場合には、第二ワンウェイクラッチ91は、シャフト20の回転部材30に対する逆回転方向の回転を許容することにより、シャフト20を回転部材30に対して空回りさせ、回転部材30のハウジング10に対する逆回転方向の回転を規制している。