JP2015151647A - 撥水耐油紙及び撥水耐油紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、塗工状態が良好であり、かつ耐油性と耐水性に優れた耐油紙を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、基材の少なくとも片面に非フッ素系耐油層を有し、前記耐油層が、顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む少なくとも1層の耐油層を設けた耐油紙であって、前記耐油層のうち少なくとも1層中にアクリル系撥水剤を含有させたことを特徴とする撥水耐油紙である。また、撥水剤の配合率が、全固形分に対して1〜20質量%である撥水耐油紙である。アクリル系撥水剤が、メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体である撥水耐油紙である。

【選択図】なし

Description

本発明は、撥水耐油紙及び撥水耐油紙の製造方法に関する。具体的には、本発明は、動植物性油脂等の油脂成分の浸透を防ぐことができるとともに優れた撥水性を発現する耐油層を有する撥水耐油紙及び該撥水耐油紙の製造方法に関する。
食品などの包装材料には、紙あるいは板紙が幅広く用いられている。特にチョコレートやピザ、ドーナツなどの動植物性油脂由来の油脂成分が多く含まれる食品の包装紙には、耐油性を有する紙や板紙が使用されており、食品の油脂成分が包装用紙に浸透しないように工夫されている。食品に含まれる油脂成分が包装用紙に浸透すると紙の表面にまで油が浸透し、表面に油しみができて外観を損ねたり、印刷部分が油しみで黒くなり文字が判読できなかったり、バーコード、QRコード(登録商標)等のOCR適性が低下するおそれがある。
また、衣服に油が転移し汚染を引き起こす等の問題もある。このため、油脂成分を含む食品の包装用紙には、食品に接する部分に耐油性を付与した紙や板紙が使用されている。
耐油紙は、耐油性を発揮するために耐油剤を含有しており、従来、耐油剤にはフッ素樹脂系の耐油剤が用いられていた(例えば、特許文献1)。例えば、紙、板紙の表面にフッ素樹脂系耐油剤を塗工して耐油層を設けた耐油紙や、紙層間にフッ素樹脂系耐油剤層を設けた耐油紙が知られている。しかし、フッ素樹脂系耐油剤を使用した耐油紙を100〜180℃の調理温度で加熱した場合、炭素数8〜10のフッ素系アルコール化合物等の長期に残留しやすい成分が発生することが確認されている。
また、これらフッ素樹脂系耐油剤を使用した耐油紙を使用後に焼却した際には、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロスルホン酸等のフッ素化合物が発生し、健康又は環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
これらの問題を解決するために、非フッ素系耐油剤としてポリビニルアルコール系樹脂を使用した耐油紙が開発されている(例えば、特許文献2及び3)。ポリビニルアルコール系樹脂は親水性の強固な皮膜を形成するため、油の浸透を防ぐことができ、優れた耐油性を発揮することができる。フッ素系耐油剤では、フッ素に由来する撥油性を利用して耐油性を発現していたのに対し、ポリビニルアルコール系樹脂は塗工層皮膜によるバリアー効果により耐油性を発揮するものである。非フッ素系耐油剤を含む耐油紙は、加熱した際にフッ素化合物等を発生することがないため、安全性が高く、環境への負荷が少ないという利点を有している。
しかし、ポリビニルアルコール系樹脂は、塗工液が泡立ち、耐油層に泡が発生するなどの塗工欠陥が生じることがあった。さらに、泡立ちが酷い場合には、塗りムラが生じることとなり、耐油層の耐油性を低下させてしまうことがあった。これらの問題に対処するため、特定のジオレイン酸ポリエチレングリコールや、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーを添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3)。
特開2009−120996号公報 特開2011−26745号公報 特開2011−184812号公報
上述したように、非フッ素系耐油剤を含む塗工液に消泡剤等を添加することにより、塗工時の泡立ちをある程度抑えることができる。しかしながら、ポリビニルアルコール系樹脂はその粘度の高さから、特にフィルムトランスファーコーターでの塗工では安定した塗膜を得るために濃度を下げる必要があり、必要な皮膜を得るための塗工量を確保するのが難しいという課題があった。
すなわち、従来の非フッ素系耐油剤を含む塗工液においては、塗工安定性と耐油性が両立されていなく、さらなる改善が求められていた。
また、ポリビニルアルコール系樹脂は親水性の強固な皮膜を形成するため、油の浸透を防ぐことはできる一方で、水分を浸透させる場合があり、十分な撥水性(耐水性)を発揮することができないという問題もあった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、塗工面状態が良好であり、かつ耐油性と撥水性に優れた耐油紙を提供することを目的として検討を進めた。また、本発明者らは、塗工安定性に優れた塗工液から撥水耐油紙を形成することにより、撥水耐油紙の生産効率を高めることも目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、耐油層を形成する塗工液に特定の化学組成を有するアクリル系撥水剤、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体と顔料を添加することにより、塗工安定性を高めることができることを見出した。さらに、本発明者らは、このようにして得られた耐油層を有する撥水耐油紙は、塗工面状態が良好であり、かつ耐油性と撥水性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]基材の少なくとも片面に非フッ素系耐油層を有し、前記耐油層が、顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む少なくとも1層の耐油層を設けた耐油紙であって、前記耐油層のうち少なくとも1層中にアクリル系撥水剤を含有させた撥水耐油紙。
[2]前記撥水剤の配合率が、全固形分に対して1〜20質量%である[1]に記載の撥水耐油紙。
[3]前記アクリル系撥水剤が、メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体である[1]または[2]に記載の撥水耐油紙。
[4]前記顔料がカオリンである[1]〜[3]のいずれか1項に記載の撥水耐油紙。
[5]前記スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移温度が30℃以下である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の撥水耐油紙。
[6]前記スチレン−ブタジエン共重合体の含有率は、前記耐油層の全固形分質量に対して20〜50質量%である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の撥水耐油紙。
[7]前記耐油層に含まれるポリビニルアルコールとスチレン−ブタジエン共重合体の質量比は、1:9〜5:5である[1]〜[6]のいずれか1項に記載の撥水耐油紙。
[8]前記基材はパルプを主成分とする[1]〜[7]のいずれかに記載の撥水耐油紙。
[9]基材の少なくとも片面に、顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む塗工液を塗工する工程を含み、前記塗工液の少なくとも1つにアクリル系撥水剤を含有させることにより撥水耐油層を形成する工程を含み、前記耐油層または撥水耐油層を形成する工程では、前記塗工液は、フィルムトランスファーコーターを用いて塗工される撥水耐油紙の製造方法。
[10][9]に記載の製造方法により製造される撥水耐油紙。
本発明によれば、塗工面状態が良好であり、かつ耐油性と撥水性に優れた耐油紙を得ることができる。本発明では、耐油剤を含む耐油層の塗工液は、塗工安定性に優れているため、耐油紙の生産効率を格段に高めることができる。さらに、本発明の耐油紙は、耐油性と撥水性(耐水性)を兼ね備えているため、油脂成分や水分を多く含む食品等の包装用紙として好ましく用いられる。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
(撥水耐油紙)
本発明は、基材の少なくとも片面に非フッ素系耐油層を有する耐油紙であって、耐油層が特定の化学組成を有するアクリル系撥水剤、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体と顔料を含む撥水耐油紙に関する。本発明の撥水耐油紙は、油脂成分や水分を含む食品等の包装用紙として用いることができ、食品等に接する側に撥水耐油層がくるようにして食品を包装することにより、食品等の油脂成分や水分が浸み出してくることを抑制することができる。なお、本発明の撥水耐油紙は包装用紙としての用途のみならず、クッキングペーパー等のシート類や紙製容器、撥水耐油性能が必要とされるキッチン向けの建材用紙等に用いることもできる。
また、本発明の撥水耐油紙は、耐油剤として非フッ素系耐油剤を用いているため、耐油紙を加熱したり、焼却した場合であってもフッ素化合物が発生することがない。このため、本発明の撥水耐油紙は安全性が高く、環境への負荷が少ないという利点を有する。
本発明において、非フッ素系耐油層とは、耐油層に対してフッ素系耐油剤の含有率が、5質量%以下ものをいい、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。非フッ素系耐油層は、耐油剤として非フッ素系の耐油剤を用いることが好ましく、非フッ素系の耐油剤として、後述するようなポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体を含むことが好ましい。
本発明の撥水耐油紙は、基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む少なくとも1層の耐油層を設けたものであって、前記耐油層のうち少なくとも1層中にアクリル系撥水剤を含有させた構成をとる必要がある。
(撥水耐油層)
本発明でいうアクリル系撥水剤とは、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーを必須成分として含み、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーからなる共重合体である。
本発明のアクリル系撥水剤において用いられる(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルフマル酸、モノアルキルイタコン酸等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、撥水性の点でメタクリル酸が特に好ましい。
本発明のアクリル系撥水剤において用いられる(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが好ましい。
本発明のアクリル系撥水剤において用いられる(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、酸ホスホキシエチル(メタ)アクリレートエタノールアミンハーフ塩、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミド、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロオキシアルキルプロペナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、耐水性の点でスチレンが特に好ましい。
本発明において用いられるアクリル系撥水剤は公知の乳化重合法によって得ることができる。例えば、所定の反応容器に上記の各種モノマー類、乳化剤および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、攪拌下、加温することにより得られる。
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤を前記ラジカル重合開始剤と組合せて(レドックス系重合開始剤)用いることができる。
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対して、通常0.02〜3質量部であるが、好ましくは0.05〜1質量部である。
使用する乳化剤としては、特に限定はなく、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、反応性乳化剤が挙げられる。
アニオン性乳化剤としては、オレイン酸カリウム等の脂肪酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
反応性乳化剤としては、種々の分子量(EO付加モル数の異なる)のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリエチレングリコールのモノマレイン酸エステルおよびその誘導体、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、通常、モノマー成分100質量部に対して、0.1〜10質量部程度使用すればよく、好ましくは0.2〜5質量部である。乳化剤の使用量がこの範囲にあることによって、凝固物を生じることなく、適度な平均粒子径のアクリル系撥水剤エマルションが得られる。
本発明において用いられるアクリル系撥水剤は前記のように水媒体中で乳化重合法により得られるが、アクリル系撥水剤エマルションの固形分濃度を30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%程度として行うことができる。重合反応は単一重合開始の場合では通常40〜95℃、好ましくは60〜90℃程度の反応温度で、1〜10時間、好ましくは4〜8時間程度行えばよい。また、レドックス系重合開始剤の場合では反応温度はより低く、通常5〜90℃、好ましくは20〜70℃程度である。モノマーの添加方法としては、一括添加法、分割添加法、連続添加法等で、モノマータップ法、モノマープレ乳化タップ法等の方法で行うことができる。なかでも、好ましくは連続添加法で、モノマープレ乳化タップ法である。
本発明においてはフィルムトランスファーコーターでの塗工適性を確保するため、撥水耐油層塗液のハイシェア粘度を調整することが好ましい。そこで、アクリル系撥水剤を乳化重合する際に分子量(重量平均分子量)を反応温度、反応時間、平均粒子径、酸価の調整等により適宜実施することができる。さらに、公知の連鎖移動剤を用いることは好ましい実施態様である。
このような連鎖移動剤としては、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、イソプロピルアルコール、メタノール、四塩化炭素等が挙げられる。その使用量は、モノマー成分100質量部に対して0.001〜2.0質量部であり、好ましくは0.05〜1.0質量部である。
本発明において用いられるアクリル撥水剤の配合率は1〜20質量%であることが好ましく、更に5〜12質量%が好ましい。1質量%に満たないと必要な撥水度が得られず20質量%以上添加しても、それ以上の撥水度が得られず不経済であるだけでなく、耐油剤の配合比が下がるため、耐油性能が落ちる恐れがある。
本発明では、撥水耐油層は、ポリビニルアルコールを含む。本発明において用いられるポリビニルアルコールとしては、未変性の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコールや変性ポリビニルアルコールが挙げられ、変性ポリビニルアルコールとしては、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。なかでも、未変性の完全ケン化ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールは耐油性に優れるため好ましい。
さらに、エチレン変性ポリビニルアルコールは塗工液の増粘を抑制することができる。これにより、塗工適性に優れた塗工液を得ることができ、耐油層の塗工面状態を良化させることができる。
耐油層の全固形分質量(塗工液の全固形分質量)に対して、ポリビニルアルコール系樹脂の含有率は、0.5〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、耐油層の耐油性を十分に高めることができる。さらに、耐油層を形成するための塗工液の増粘を抑制することができ、塗工欠陥の発生を抑制することができる。
耐油層に含まれる顔料としては、無機顔料や有機顔料等の各種顔料を使用することができる。無機顔料の具体例としては、カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、焼成カオリン等のカオリン類、合成マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物等が挙げられる。なかでもカオリンは優れた耐油性と耐水性を示すため好ましく用いられる。また、有機顔料の具体例としては、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等が挙げられる。これらの顔料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、カオリンの平均粒子径は0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
カオリンの平均粒子径を上記範囲内とすることにより、塗工安定性を高めることができ、かつ耐油性と撥水性(耐水性)に優れた耐油層を形成することができる。
なお、平板形状である無機顔料の粒子径の測定方法には、マイクロトラックレーザー回折法や、マイクロシーブ網篩法により平均粒子径を求める方法、電子顕微鏡の観察によって求める方法等がある。測定方法によって粒子径の数値に差があるが、マイクロシーブ網篩法と電子顕微鏡の観察によって求められる粒子径が実際の粒子径に近く、マイクロトラックレーザー回折法によって求められる粒子径は実際よりやや大きい値となる。しかし、本発明のカオリンの平均粒子径は測定のし易さや再現性の高さ等からマイクロトラックレーザー回折法により測定した。
耐油層の全固形分質量(塗工液の全固形分質量)に対して、顔料の含有率は、20〜70質量%であることが好ましく、40〜65質量%であることがさらに好ましい。顔料の含有率を上記範囲内とすることにより、耐油性と耐水性に優れた耐油層を形成することができる。
本発明では、撥水耐油層は優れた耐水性(撥水性)を発現させるためスチレン−ブタジエン共重合体を含有させることが必要である。
スチレン−ブタジエン共重合体は高度の耐水性(撥水性)を有する塗被層の形成に寄与するもので、モノマーとしてスチレンとブタジエンを共重合させることにより得られるものである。なお、本発明で用いることができるスチレン−ブタジエン共重合体としては、広く使用されているスチレン−ブタジエン共重合体を用いることができ、例えば旭化成社から市販されている「A6160」等を用いることができる。スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移温度は30℃以下であることが好ましく、20℃以下であってもよく、0℃以下であってもよい。このように、ガラス転移温度(Tg)を30℃以下とすることにより、耐油層は、高い成膜能力と優れた撥水耐油性を発揮することができる。なお、本発明においてTgは、JIS K 7121−1987 プラスチックの転移温度測定方法に準じて示差走査熱量測定(DSC)により得られるものである。
本発明において用いられるスチレン−ブタジエン共重合体は、平均粒子径が0.01〜1.0μmであるものが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあれば水分散性が良好となる。なお、平均粒子径が0.01μm未満であると、塗工時の機械的安定性が悪くなるおそれがあり、1.0μmを超えるとハイシェア粘度が低く、所望の塗布量が得られなかったり、塗工面にストリーク等の塗工欠陥が発生するおそれがある。なお、ここでは、スチレン−ブタジエン共重合体の平均粒子径は光散乱法粒子径分布測定機(HORIBA社製、商品名:LA−950)で測定したものである。
本発明においては、フィルムトランスファーコーターにおける塗工適性を確保するため、耐油層塗工液の粘度を制御することが好ましい。このため、スチレン−ブタジエン共重合体の分子量(重量平均分子量)を5万〜200万とすることが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体の分子量は、重合時の反応温度、反応時間、平均粒子径、酸価の制御により適宜調節することができる。さらに、公知の連鎖移動剤を用いてもよい。このような連鎖移動剤としては、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、イソプロピルアルコール、メタノール、四塩化炭素等が挙げられる。その使用量は、モノマー成分100質量部に対して0.001〜2.0質量部であり、好ましくは0.05〜1.0質量部である。
耐油層の全固形分質量(塗工液の全固形分質量)に対して、スチレン−ブタジエン共重合体の含有率は、20〜50質量%であることが好ましく、25〜45質量%であることがさらに好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体の含有率を上記範囲内とすることにより、耐油性に加えて耐水性(撥水性)も付与することができ、耐油性と耐水性(撥水性)に優れた耐油層を形成することができる。
本発明では、耐油層に含まれるポリビニルアルコールとスチレン−ブタジエン共重合体の質量比は、1:9〜5:5であることが好ましい。ポリビニルアルコールとスチレン−ブタジエン共重合体の質量比を上記範囲内とすることにより、適正な濃度と粘度範囲の塗工液とすることができ、塗工面質に優れた耐油層を形成することができる。
なお、本発明の撥水耐油層塗工液には、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤等の通常用いられている各種助剤を添加することとしてもよい。これらの助剤の含有率は、撥水耐油層の全固形分質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
(基材)
本発明の耐油紙に用いられる基材としては、少なくとも一方の表面に耐油層を設けることができるものであれば良く、特に限定されないが、例えば植物由来のパルプを主成分とするものを用いることが好ましい。例えば、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、片艶紙、晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙、白板紙などを用いることができる。基材の坪量は特に制限はないが、包装紙用としては20〜150g/m、箱等の成型容器用としては150〜500g/mが好適である。
基材を構成するパルプとしては、通常製紙用として使用されるあらゆるものが使用できる。例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(GP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の未晒、半晒、あるいは晒パルプ、亜硫酸パルプ、古紙パルプ等が使用できる。
本発明で用いることができる基材の王研式透気度は70秒以上であることが好ましい。基材のJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した王研式透気度が70秒未満になると、原紙に対する撥水耐油層塗工液の浸透が大きくなり、耐油性が低下しやすくなる。なお、王研式透気度の上限値は特に制限はないが、600秒以下であることが好ましい。
さらに、基材の透気度を高めるため、使用するパルプの叩解度をJIS P 8121−1995に準じて測定したカナダ標準フリーネスが300ml以下とすることが好ましい。叩解度のより好ましい範囲は80〜250mlである。叩解度を上記範囲内とすることにより、撥水耐油層塗工液の基材への浸透を抑え、耐油紙全体の耐油性を高めることができる。
なお、使用するパルプは、例えばビーター、ジョルダン、シングルディスク・リファイナー、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、デラックス・ファイナー、ダブル・ディスク・リファイナー(DDR)、媒体攪拌ミル、振動式ミル等の叩解機により上述した叩解度となるように調整される。叩解の条件は特に限定されないが、各種リファイナーの刃の形状、回転数、パルプの濃度、パルプの繊維長、パルプの粗度等が叩解後のパルプ物性に影響するので、所望の叩解度が得られるように適宜叩解条件が選択される。
また、基材の透気度を高めるために、基材の密度を0.8〜1.2g/cmとすることが好ましく、0.85〜1.1g/cmとすることがより好ましい。基材の密度を上げる具体的方法としては、基材の抄造時に湿紙状態で圧力を加えること、乾燥後にマシンカレンダーやソフトニップカレンダー、グロスカレンダーを使用すること、あるいは基材抄造後にスーパーカレンダーを使用することが挙げられる。
基材にはさらに、添加剤を含有させてもよい。添加剤としてはロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸等に代表されるサイズ剤、硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等に代表される定着剤、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、無定形シリカ、尿素−ホルマリン樹脂粒子等に代表される填料類、ポリアクリルアミド系ポリマー、澱粉等に代表される紙力増強剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂等に代表される湿潤紙力増強剤、その他、濾水剤、青み付けなどの色調調整用の染料、顔料、蛍光染料など各種助剤類を挙げることができる。
(耐油紙の製造方法)
<基材の製造方法>
基材は、常法により各種抄紙機により抄紙され、湿紙を形成した後、乾燥させることにより得ることができる。なお、基材には、必要により澱粉、ポリビニルアルコール、ゼラチン、填料等を含むことが好ましく、表面サイズプレス処理マシンカレンダー等による平滑化処理等、常法による処理工程を経て製造されることが好ましい。
本発明において使用される抄紙機としては、エアクッションヘッドボックスあるいはハイドロリックヘッドボックスを有する長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ型ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
<撥水耐油層の製造方法>
撥水耐油層は、基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む少なくとも1種の塗工液を塗工することにより形成される。なお、前記塗工液の少なくとも1種中にアクリル系撥水剤を含有させ、塗工装置により塗布、乾燥させる。撥水耐油層の塗工方法としては、一般に公知の塗工装置を用いることができ、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、ツーロールあるいはメータリングブレード方式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、キャレンダーによるニップコーター等が適宜用いられる。中でも、生産効率を高めるために、ゲートロールコーター又はロッドメタリングサイズプレスコーターといったフィルムトランスファータイプのコーターを用いることが好ましい。
耐油層の塗工量は、0.5〜20.0g/mの範囲であることが好ましく、1.0〜18.0g/mの範囲であることがより好ましい。耐油層の塗工量を上記範囲内とすることにより、十分な耐油性能を発揮し得る耐油層を得ることができる。
本発明では、耐油層は、基材の少なくとも片面に1層のみ設けられていてもよいが、基材の少なくとも片面に複数層設けられていてもよい。同じ塗工量を塗工する場合、複数層構成とした方が単層構成よりも耐油層が得られ易い傾向となる。耐油層を複数層構成とする場合、層数は、2〜5層であることが好ましく、2〜4層であることがより好ましい。 複数層構成の場合、各層は同じ構成(組成)でもよいし、異なっていてもよい。なお、耐油層が複数層の場合はその合計の塗工量が上記範囲内であることが好ましい。
基材の片面に耐油剤を塗工した後には、その耐油剤を乾燥させる工程が設けられる。
また、本発明では耐油層形成後、必要に応じて平滑化処理を行うことができる。平滑化処理は通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の平滑化処理装置を用いて、オンマシン又はオフマシンで行われる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
(耐油層塗料の調製)
エチレン変性ポリビニルアルコール(商品名HR3010 クラレ社製)の溶解液を6質量部(固形)、カオリン(商品名:「HTクレー」、BASFジャパン社製)の水分散液を54質量部(固形)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:「A6160」Tg:20℃、粒径135nm、旭化成社製)を31質量部(固形)、メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体であるアクリル系撥水剤(商品名:カルタシールHFU、アークロマジャパン社製)を9質量部(固形)混合し、調製水を加えて40%濃度とした耐油層塗料を得た。
(耐油紙の製造)
坪量50g/m、透気度200秒の非塗工紙に、ロッドメタリングサイザーにて片面に上記(耐油層塗料の調製)で得た耐油層塗料を乾燥後の塗工量が4g/mとなるように塗工乾燥して、耐油紙を得た。
<実施例2>
実施例1において、アクリル系撥水剤の配合量を5質量部(固形)とした以外は実施例1と同様に耐油紙を得た。
<実施例3>
実施例1において、エチレン変性ポリビニルアルコールの配合量を10質量部(固形)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量を27質量部(固形)とした以外は実施例1と同様に耐油紙を得た。
<実施例4>
実施例1において、カオリンの配合量を44質量部(固形)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量を41質量部(固形)とした以外は実施例1と同様に耐油紙を得た。
<実施例5>
実施例1において、エチレン変性ポリビニルアルコールの配合量を5質量部(固形)、カオリンの配合量を44.5質量部(固形)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量を25.5質量部(固形)、アクリル系撥水剤の配合量を25質量部とした以外は実施例1と同様に耐油紙を得た。
<比較例1>
実施例1において、アクリル系撥水剤を無配合とした以外は実施例1と同様に耐油紙を得た。
<比較例2>
実施例1において、アクリル系撥水剤の代わりに、パラフィンワックス系撥水剤(商品名:SPW116H、荒川化学製)を9質量部(固形)添加した以外は、実施例1と同様に耐油紙を得た。
<比較例3>
実施例1において、エチレン変性ポリビニルアルコールの配合量を25質量部(固形)、カオリンの配合量を66質量部(固形)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量を無配合とした以外は、実施例1と同様に耐油紙を得た。
<比較例4>
実施例1において、エチレン変性ポリビニルアルコールを無配合とし、カオリンの配合量を54質量部(固形)、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの配合量を37質量部(固形)とした以外は、実施例1と同様に耐油紙を得た。
実施例及び比較例で得た各耐油紙を以下の方法で評価した。評価結果は表1に示す。
[評価方法]
(塗料物性)
塗料調製後、塗料温度25℃でのB型粘度の測定を行った。
○:ロッドメタリングサイザーでの塗工に適した粘度
△:上記より高粘度で、塗工面にオレンジピールなどが見られるが、塗工は可能。
×:高粘度のため、塗工液濃度を下げなければ、塗工できない。
(塗工面状態)
塗工面の状態として、目視にて、検査を行った。
○:欠陥が目視では観察されない。
△:オレンジピールなどの塗工ムラが見られる。耐油性への影響は無い。
×:オレンジピールや、ロッド筋などの塗工欠陥が見られ、耐油性の低下要因となっている。
(耐油性評価法)
耐油性の評価として、TAPPI UM−557法(キット法)により耐油層の塗工面の耐油度を測定した。なお、本発明において必要とされる耐油度は6級以上である。
(撥水性評価法)
撥水性の評価として、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.68:2000 紙及び板紙 −はっ水性試験方法に準拠して、耐油層の塗工面の撥水性を測定した。なお、本発明において必要とされる撥水度は5級以上である。
Figure 2015151647
本発明によれば、塗工面状態が良好であり、かつ耐油性と耐水性に優れた耐油紙を得ることができる。このため、本発明の耐油紙は、油脂成分や水分を含有する食品の包装用紙や容器の耐油紙として好ましく用いられ、産業上の利用可能性が高い。

Claims (5)

  1. 基材の少なくとも片面に非フッ素系耐油層を有し、
    前記耐油層が、顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む少なくとも1層の耐油層を設けた耐油紙であって、前記耐油層のうち少なくとも1層中にアクリル系撥水剤を含有させたことを特徴とする撥水耐油紙。
  2. 前記撥水剤の配合率が、全固形分に対して1〜20質量%であることを特徴とする請求項1に記載の撥水耐油紙。
  3. 前記アクリル系撥水剤が、メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水耐油紙。
  4. 基材の少なくとも片面に、顔料、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアルコールを含む塗工液を塗工する工程を含み、前記塗工液の少なくとも1つにアクリル系撥水剤を含有させることにより撥水耐油層を形成する工程を含み、前記耐油層または撥水耐油層を形成する工程では、前記塗工液は、フィルムトランスファーコーターを用いて塗工されることを特徴とする撥水耐油紙の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法により製造されることを特徴とする撥水耐油紙。
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