JP2015149916A - 撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物とその製造法 - Google Patents

撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物とその製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】 撥水性を賦与した、改質穀粒又は改質穀粒破砕物と、その製造法とを提供することを目的とする。
【解決手段】 穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液と接触処理する工程;接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程;分離処理後の原料を乾燥処理する工程;さらに必要に応じて、乾燥処理工程により得られた改質穀粒又は改質穀粒破砕物を破砕処理する工程;を行うことを特徴とする、撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、撥水性を賦与した、改質穀粒又は改質穀粒破砕物と、その製造法と、に関する。
ここで「穀粒」とは、コメ、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、エンバク、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、ソバ、アマランサス等の穀物および疑似穀物の粒子(種子)を指しており、原則として外側の穀皮(籾殻などのいわゆる殻と呼ばれる部分)を除いたものであって、内側の胚乳、胚芽の他、外皮(種皮、果皮)を含む概念である。例えば、コメでは籾殻を除いた玄米、コムギでは原麦を指すが、六条皮麦、二条大麦のように頴(いわゆる殻の部分)が癒着して外れないものにあっては、穀皮を含む。
[発明の背景]
穀粒は、食料及び飼料として不可欠な食品素材である。穀粒の主要な用途としては、次の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)ご飯のような「粒食」としての食料・飼料用途、
(2)小麦粉のような粉末化後の食品素材等(「粉末及びその加工食品」)としての用途、
(3)コーンスターチや米澱粉のように、澱粉を取り出した後の食品素材や糖化原料等(「澱粉原料」)としての用途、
これらの用途のうち、特に(1),(2)の用途に関して、穀粒の食品素材としての付加価値を向上せしめるために、これまで穀粒自体の特性を改質する多様な取組みがなされてきた。
上記(1)の「粒食」の用途については、例えば、米については、食味の向上を指標とした品種開発の他、栄養成分量や難消化性澱粉含量の制御、玄米の生物学的処理(発芽処理)によるγ-アミノ酪酸(GABA)量の増強技術、無洗米製造などの品質改良技術が開発されてきた。
次に、上記(2)の「粉末及びその加工食品」の用途については、主として製パン適性や製麺適性に注目した小麦品種改良が行われており、我が国では、モチ小麦や超強力小麦などの開発に成功している。
また、米粉についても、我が国では米の消費拡大に係る政策的後押しもあり、米粉利用のための技術開発が急速に進んでいる。これまでに、米粉製造に適した稲品種開発の他、損傷澱粉量を減らし製パン適性を向上するための湿式気流粉砕技術(非特許文献1参照)や、ペクチナーゼなどの酵素によって前処理する技術(非特許文献2参照)、などが開発されてきた。
また、トウモロコシ穀粒については、ドライミリングを行うことで、コーングリッツ、コーンミール、コーンフラワー等として利用する技術が開発されてきた。当該加工物は、コーンフレーク等のシリアル原料、ビール副原料、スナック等の膨化菓子原料、ミックス粉(パン製品、天ぷら粉、唐揚げ粉等)に配合して利用されている。
また、穀物需要を増すためには、消費量の拡大に向けた取組のみならず、市場展開の多様化が重要になる。例えば、米の需要を増すために、和食の奨励、より良食味な主食用米の開発・普及のみならず、パン、麺類などの需要を形成する小麦粉に置き換えた米粉用途拡大や飼料用途への展開が検討されており、これらの用途に適した特性をもつ穀粒の開発が進められている(非特許文献3参照)。
[社会のニーズ]
このような背景の中で、多様な価値をもつ穀物製品を創造する手段を産業界に提供するため、穀粒素材の品質改変技術のさらなる高度化が求められている。特に、穀粒全般に横断的に適用可能な技術の開発が期待されている。そのような技術が開発されれば、産業界への波及効果は広範囲に及ぶものと期待されている。
そのような技術の一つとして、これまでに、吸水特性に着目した素材特性の解析について、米粒の浸漬時やスパゲッティー茹で上げ時における水分分布変化をMRIによって解析した例(非特許文献4、5参照)や、米粉の製パン適性に関連して吸水特性の簡易解析技術の開発(非特許文献6参照)などが報告されている。また、米粉の吸水性を低減するために、米粉パン生地作成時の油脂添加を水と同時に行う「福盛式シトギ法」の提案など(非特許文献7、8参照)がなされている。
しかしながら、これまで穀粉の吸水特性の改変に係る研究は行われていない。
江川和徳「新たな利用開発のための米微細製粉の技術開発」、技術と普及, 40-43. 2001.12 宍戸功一、江川和徳「ペクチナーゼ処理による米粉の製造法及びその製パン適性(第1報)米の粉食化に関する研究」、新潟県食品研究所・研究報告, 27, 21-28. 1992 三浦清之「米粉用米の品種開発の実例と今後の展開」、農林水産技術研究ジャーナル 34(12), 11-15, 2011 Horigane, A. K., Naito, S., Kurimoto, M., Irie, K., Yamada, M., Motoi, H. and Yoshida, M. 「Moisture distribution and diffusion in cooked spaghetti studied by NMR imaging and diffusion model」 Cereal Chemistry, 83(3), 236-242. 2006 Horigane, A K., Takahashi, H., Maruyama, S., Ohtsubo, K., Yoshida, M.「Water penetration into rice grains during soaking observed by gradient echo magnetic resonance imaging」, Journal of Cereal Science 44 (2006) 307-316 松木順子「米粉利用のための特性評価の現状と課題」、応用糖質科学, 2(1), 7-11. 2012 福盛幸一「福盛シトギパン」、食品加工総覧4、加工品編追録1号、478の48-478の55、2004、農山漁村文化協会 瀧尾佳明「米粉食品の普及と米粉パン」、月刊フードケミカル、38-44、2007-4
本発明は、上記従来の課題を解決し、穀粉の吸水特性の改変に係る新たな技術、特には撥水性を賦与した、改質穀粒又は改質穀粒破砕物と、その製造法とを提供することを目的とするものである。
即ち、本発明の目的は、穀粒及びその破砕物に対して、吸水特性を改変した、特には撥水性を賦与した素材の製造技術を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を進めた結果、水酸化カルシウム処理した穀粒の吸水特性が大幅に改変するという知見を得、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、水酸化カルシウムを用いて穀粒および穀粒を破砕して得た粉に処理を施したときに、処理後の穀粒、穀粒を処理後に破砕して得た粉、破砕して得た粉を処理したものが撥水性を示すという新たな現象を見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
本発明は、次の(1)から(13)に係るものである。
(1)穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液と接触処理する工程;前記接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程;前記分離処理後の原料を乾燥処理する工程;さらに必要に応じて、前記乾燥処理工程により得られた改質穀粒又は改質穀粒破砕物を破砕処理する工程;を行うことを特徴とする、撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(2)前記「穀粒」或いは前記「穀粒破砕物」における「穀粒」が、コメ粒、コムギ粒、トウモロコシ粒、オオムギ粒、エンバク粒、ライムギ粒、キビ粒、アワ粒、ヒエ粒、ソバ粒、及びアマランサス粒のうち少なくとも一種類である、前記(1)に記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(3)前記「水酸化カルシウムと水を主成分とする溶液又は懸濁液」が、水に対する水酸化カルシウムの存在比が0.025%(w/v)以上のものであり、かつ穀粒又は穀粒破砕物に対する水酸化カルシウムの存在比が0.1%(w/w)以上のものである、前記(1)又は(2)に記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(4)前記「接触処理する工程」が、温度0℃以上であり、かつ穀粒又は穀粒破砕物を構成する澱粉の糊化温度未満の温度範囲内で、1分間以上の時間接触させるものである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(5)前記「溶液又は懸濁液から分離処理する工程」が、接触工程後の穀粒又は穀粒破砕物と;溶液又は懸濁液の主成分である水酸化カルシウム水溶液、未溶解の水酸化カルシウム粒子及び遊離成分とを;両者のサイズ差又は比重差により分離回収するものである、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(6)前記「溶液又は懸濁液から分離処理する工程」として、接触処理後の穀粒又は穀粒破砕物と;溶液又は懸濁液の主成分である水酸化カルシウム水溶液、未溶解の水酸化カルシウム粒子及び遊離成分とを;両者のサイズ差又は比重差により分離回収した後、得られた穀粒又は穀粒破砕物を洗浄する操作を行うものである、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(7)前記「乾燥処理する工程」が、前記「乾燥処理後の穀粒又は穀粒破砕物」を、水分含量30%以下まで乾燥するものである、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。

(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造法により得られた、撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物。

(9)吸水特性又は消化特性のいずれか一つ以上が改変され、かつカルシウム量が増強されている、前記(8)に記載の撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物。

(10)前記(8)又は(9)に記載の撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物を、酸、キレート剤、エタノール又はアセトンを用いて処理し、任意のタイミングで撥水性を低下させることを特徴とする改質穀粒又は改質穀粒破砕物の構造制御方法。

(11)前記(8)に記載の撥水性を賦与された改質穀粒破砕物を用いた打ち粉。

(12)前記(8)に記載の撥水性を賦与された改質穀粒破砕物を用いた揚げ衣。

(13)穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液に接触処理する工程;前記接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程;前記分離処理後の原料を乾燥処理する工程;を行うことを特徴とする、穀粒又は穀粒破砕物について撥水性を賦与する方法。
本発明によれば、穀粉の吸水特性の改変に係る新たな技術が提供される。
すなわち、本発明によれば、穀粒及びその破砕物に対して、吸水特性や水分布特性を改変した素材の製造技術が提供される。
穀粒及びその破砕物について、吸水の有無、吸水量や速度を制御することにより、澱粉糊化工程の制御を高度化するのみならず、水・油脂等との相互作用の制御を可能とする。また、吸水の制御は分解酵素の浸入速度や水交換速度に影響することから、消化性あるいは生分解性の制御を行うことができる。
試験例9における、改質米粉(試料9-1)と対照米粉(試料9-2)とについての穀粒破砕物吸水量の経時変化を示すグラフである。 試験例10における、水酸化カルシウム量の違いによる吸水特性の経時変化を示すグラフである。 試験例11における、水酸化カルシウム処理時間の違いによる吸水特性の経時変化を示すグラフである。 試験例12における、水酸化カルシウム処理による加温時粘度特性の変化を示すグラフである。 試験例14における、改質米粉(試料14-1)と対照米粉(試料14-2)とについての人工消化液による消化性の評価を示すグラフである。
本発明の第1の態様によれば、穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液に接触処理する工程(以下、「接触処理工程」と称することがある。);前記接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程(以下、「分離処理工程」と称することがある。);前記分離処理後の原料を乾燥処理する工程(以下、「乾燥処理工程」と称することがある。);さらに必要に応じて、前記乾燥工程により得られた改質穀粒又は改質穀粒破砕物を破砕処理する工程(以下、「破砕処理工程」と称することがある。);を行うことを特徴とする、撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法が提供される。
前記したように、「穀粒」とは、コメ、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、エンバク、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、ソバ、アマランサス等の穀物および疑似穀物の粒子(種子)を指しており、原則として外側の穀皮(籾殻などのいわゆる殻と呼ばれる部分)を除いたものであって、内側の胚乳、胚芽の他、外皮(種皮、果皮)を含む概念である。例えば、コメでは籾殻を除いた玄米、コムギでは原麦を指すが、六条皮麦、二条大麦のように頴(いわゆる殻の部分)が癒着して外れないものにあっては、穀皮を含む。
本発明においては、「穀粒」として、コメ粒、コムギ粒、トウモロコシ粒、オオムギ粒、エンバク粒、ライムギ粒、キビ粒、アワ粒、ヒエ粒、ソバ粒、アマランサス粒のうち少なくとも一種類を用いることが好ましい。
本発明においては、このように外側の籾殻などの穀皮を取り除いた穀粒に関し、(1)穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、さらに(2)外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、(3)穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用いる。
このようなものを原料として用いる理由は、穀粒内部が吸水できる状態にすることにある。従って、(1)穀皮を除去した状態の穀粒そのもの(例えば、玄米など)よりも、一層穀粒内部が吸水できる状態になることから、(2)外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒か、(3)穀粒破砕物のいずれかであることがより好ましい。これにより、次に行う接触工程での水酸化カルシウムにての改質処理がより容易となる。
ここで「(1)穀皮を除去した状態の穀粒そのもの」、例えば玄米などは、外側の籾殻などの穀皮が取り除かれており、比較的容易に吸水できる状態となっている。従って、後記する接触処理により、十分に改質可能である。しかし、処理にやや時間がかかるきらいがある。
次に、「(2)外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒」とは、外皮(種皮、果皮)を全部除去したものであってもよいし、一部除去したものであってもよく、また、胚芽を全部除去したものであってもよいし、一部除去したものであってもよく、さらに外皮と胚芽を全部除去してもよいし、外皮と胚芽を一部除去するだけであってもよいという意味である。また、この際に、糠部分を部分的又は完全に除去してもよい。例えば、米であれば、搗精などの方法により糠や胚芽を除いたもの、それらの表面を剥離或いは研削(表面に微細な擦過傷をつける方法)したものなどがあり、より具体的には例えば、精白米、分つき米、胚芽米、表面研削玄米などがこれに相当する。
さらに、本発明においては、原料として、「(3)穀粒破砕物」を用いることもできる。
穀粒の破砕は、例えばサイクロンミル等を用いて行うことができる。破砕の程度は、穀物の種類や、所望する破砕物のサイズに応じて適宜選定すればよい。
本発明においては、このような穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を用い、これを水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液に接触処理する工程(接触処理工程)を初めに行う。
ここで水は、通常、蒸留水など純水が用いられるが、水道水であってもよい。
なお、本発明においては、水酸化カルシウムを用いることが必要不可欠であって、多種のアルカリ、例えば水酸化ナトリウムや水酸化マグネシウムなどを用いても、本発明の目的を達成することはできない。
また、本発明においては、水酸化カルシウムを用いることが必要不可欠であって、塩化カルシウムや炭酸カルシウムなどを用いても、本発明の目的を達成することはできない。
ここで「接触処理」とは、要するに、上記の穀粒又は穀粒破砕物からなる原料(固体)と、水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液(液体)と、を近づいて触れ合いさせる方法であれば特に制限されない。具体的には例えば、穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を、水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液に浸漬する方法;穀粒又は穀粒破砕物からなる原料に、水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液をスプレーする方法;などが挙げられる。
なお、上記の穀粒又は穀粒破砕物からなる原料に、水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液を浸透させやすいことから、浸漬する方法が好ましい。
このように浸漬する方法を採用する場合には、同様の理由から撹拌下に浸漬して上記の穀粒又は穀粒破砕物からなる原料に、水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液をよく浸透させることもできる。
この接触処理工程における「水酸化カルシウムと水を主成分とする溶液又は懸濁液」については、水に対する水酸化カルシウムの濃度が0.025%(w/v)以上となる割合で用いることが好ましく、より好ましくは0.125%(w/v)以上、さらに好ましくは0.5%(w/v)以上、特に好ましくは1%(w/v)以上、一層好ましくは1.25%(w/v)以上である。水に対する水酸化カルシウムの濃度が0.025%(w/v)未満であると、穀粒又は穀粒破砕物に必要とする最低限度の撥水性を付与することはできない。
一方、水に対する水酸化カルシウムの濃度の上限値は、必要とする撥水性の程度や、水酸化カルシウムを洗浄除去したい場合の操作性(操作の難易性)等に応じて、適宜選定されるため、一義的に決定することは困難であるが、通常、5%(w/v)以下、より好ましくは2.5%(w/v)以下である。
また、この接触処理工程における接触処理の時間は、10秒以上であればよいが、1分以上とすることが好ましい。接触処理の時間の上限は特に制限されないが、処理効率等の観点から、通常、24時間までとされる。従って、接触処理の時間は、好ましくは10秒〜24時間、より好ましくは1分〜24時間である。
この接触処理に用いる水酸化カルシウムの濃度(水に対する濃度)と接触処理時間については、その条件を組み合わせることにより、吸水性を制御することが可能である。濃度が高く、処理時間が長いほど、撥水性は高まるが、処理効率や腐敗抑制を考えると、水に対して0.025%から10%(w/v)の水酸化カルシウム濃度の濃度範囲に収め、処理時間は1分から24時間以内に収めることが望ましい。
この接触処理における処理温度としては、試料中の主成分である澱粉が糊化した場合には処理中に溶解して回収が困難となる場合があることから、0℃から糊化する温度未満の範囲に設定することが望ましく、作業性を考慮すると30℃以下とすることが望ましい。従って、処理温度としては、好ましくは0〜30℃、より好ましくは15〜30℃であり、常温(15〜25℃)付近が最も好ましい。
また、この接触処理工程における「水酸化カルシウムと水を主成分とする溶液又は懸濁液」について、穀粒又は穀粒破砕物の質量に対する水酸化カルシウムの質量が、0.1%(w/w)以上となる割合で用いることが好ましく、より好ましくは0.5%(w/w)以上、さらに好ましくは2%(w/w)以上、特に好ましくは5%(w/w)以上である。穀粒又は穀粒破砕物の質量に対する水酸化カルシウムの質量が、0.5%(w/v)未満であると、穀粒又は穀粒破砕物に必要とする最低限度の撥水性を付与することはできない。
一方、穀粒又は穀粒破砕物の質量に対する水酸化カルシウムの質量の上限値は、必要とする撥水性の程度や、水酸化カルシウムを洗浄除去したい場合の操作性(操作の難易性)等に応じて、適宜選定されるため、一義的に決定することは困難であるが、通常、20%(w/v)以下、より好ましくは10%(w/v)以下である。
なお、穀粒又は穀粒破砕物への「アルカリ処理」ということに関連しては、例えば、米澱粉の精製工程において苛性ソーダ水溶液処理が行われている。アルカリ処理により蛋白質の遊離、非澱粉生糖類の遊離、米の軟化が起こることにより、澱粉の単離を容易にするとされているが、何ら本発明を示唆するものではない。
また、水酸化カルシウムは、主としてこんにゃくの製造に用いられる他、水あめを製造する際の硫酸の中和剤、糖蜜の脱糖や砂糖の精製等に使用される食品添加物として用いられているが、水酸化カルシウム処理した穀粒の吸水特性が大幅に改変するという本発明の知見を示唆するような報告は、これまで全くなされていない。
次に、本発明においては、前記接触処理後の原料を、水酸化カルシウムと水を主成分とする溶液又は懸濁液から分離処理する工程(分離処理工程)を行う。
ここで「分離処理」としては、沈澱分離、濾過分離、遠心分離等の方法を用いることができ、これにより前記「接触処理」における穀粒又は穀粒破砕物からなる原料と;水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液;との接触を断ち切る。
例えば、水酸化カルシウム由来の微粒子や水に対して、穀粒又は穀粒破砕物をサイズの差で分離するのが容易であるが、破砕物の粒度が細かい場合には、適切なサイズのメッシュを選択するか、又は遠心分離方式により水分と分離しながら、水酸化カルシウムを溶解させて水側に移行させる方法等を選択することができる。
特に前記「溶液又は懸濁液から分離処理する工程」として、接触処理後の穀粒又は穀粒破砕物と;溶液又は懸濁液の主成分である水酸化カルシウム水溶液、未溶解の水酸化カルシウム粒子及び遊離成分とを;両者のサイズ差又は比重差により分離回収することが好ましい。
水酸化カルシウムによる接触処理を行った後の穀粒またはその破砕物については、pHを低下させるため、また、穀粒又は穀粒破砕物に含まれるカルシウムの濃度を1%以下とするため、水酸化カルシウムと水を主成分とする溶液又は懸濁液(即ち、水酸化カルシウム水溶液または懸濁液)から分離し、分離した後、さらに洗浄することが望ましい。洗浄操作は、1回でもよいが、必要に応じて複数回行うこともできる。
この洗浄操作により、不要な水酸化カルシウムが除去される。
なお、水酸化カルシウムによる接触処理後の穀粒又は穀粒破砕物を素材として利用する際に、水酸化カルシウムの残存が許される場合には、その許容範囲に応じて、適宜、分離処理工程を簡素化することが可能となる。水酸化カルシウムを用いたアルカリ処理によって、蛋白質や有色成分などの遊離が観察されることがあり、その混在が望ましくない場合には、分離処理工程において、さらには分離処理工程後に適宜行われる洗浄工程において除去することにより、得られる素材の品質が高くなる。
本発明においては、このようにして「分離処理」した後の原料を「乾燥処理」する。
分離処理工程、さらに分離処理工程後に適宜行われる洗浄工程を経て得た、水酸化カルシウムによる接触処理後の穀粒又は穀粒破砕物は、乾燥したときに撥水性を発揮するようになるため、水分含量が30%以下となるように乾燥させる必要がある。腐敗抑制を考えて、処理後の穀粒又は穀粒破砕物の水分含量が15%以下となるように調整することが望ましい。
このような乾燥処理工程により水分含量を調整し、乾燥させることによって、目的とする、撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物が得られるが、本発明においては、さらに必要に応じて(即ち、ここまでの工程において穀粒を破砕していないか、或いは破砕の程度が十分でない場合などには)、得られた改質穀粒又は改質穀粒破砕物を破砕処理する工程(破砕処理工程)を行うことができる。
この破砕処理工程は、例えばサイクロンミル等の破砕処理機を用いることにより、行うことができる。破砕の程度は、目的に応じて適宜選定すればよい。
この破砕処理工程を行い粉末化することにより、粒食以外の多様な用途に供することが可能となる。水分含量の調整値については破砕機の種類や性能によって異なるが、30%以下に下げた後に破砕を行うことが望ましい。乾式粉砕時の苛酷度により澱粉糊化、加熱変質などの望まざる変質が起こる可能性があることから、破砕機の選定や運転条件については用途に応じた最適化を行うことが望ましい。
このようにして、撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物が得られる。
本発明において得られた改質穀粒又は穀粒破砕物の撥水性については、改質処理後に吸水性が低下する性質として定義することができる。
例えば、改質穀粒又は改質穀粒破砕物に対しては、穀粒上あるいは一定条件で水平に広げた破砕物に、一定量の水滴をのせたときの接触角を測定することや、のせた水滴が穀粒内あるいは穀粒破砕物に浸透するまでの時間を測定することによって、その改質が行われたことを評価することができる。また、改質穀粒あるいは穀粒破砕物に対して、底に穴の空いた容器に一定条件で詰め、水を張ったバットの上に置き、底の穴を通して水を吸収させたときの初速度、最終吸水量、半吸水時間を測定することによってその改質が行われたことを評価することができる。
また、このようにして得られた、改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、上記改質処理前と比較して、カルシウム含量が増加しており、カルシウム量が増強されたものとなっている。
なお、このようにして得られた、改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、中和することにより、撥水性が失われたものとなる。しかしながら、このように中和して撥水性が失われた場合でも、改質穀粒又は改質穀粒破砕物中のカルシウム含量は高いままである。
上記改質処理後の穀粒又は改質穀粒破砕物のカルシウム含量は、上記改質処理に用いた水酸化カルシウムの量によって異なり、例えば、処理を行わない米に含まれるカルシウム量が50ppm程度であるのに対し、0.025%水酸化カルシウム溶液で処理した場合には1000ppm程度、10%水酸化カルシウム懸濁液で処理した場合には30000ppm以上となる。一方、10%水酸化カルシウム懸濁液で処理した後にクエン酸で中和した結果撥水性を示さなくなった穀粒にも30000ppm以上のカルシウムが含まれていることから、改質穀粒中のカルシウム含量が高いことは、改質にとって必要条件であるが十分条件ではない。
この現象は、他のアルカリである水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウムや、カルシウム塩である炭酸カルシウム、塩化カルシウムでは見出されなかったことから、pHがアルカリ側という点のみならず、カルシウムイオンが機能することが重要と考えられる。
さらに、このようにして得られた、改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、改質処理前と比較して、吸水特性のみならず、消化特性も改変されたものとなっている。
すなわち、このようにして得られた、改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、改質処理前の素材と比較して、アミラーゼ消化性が穏やかになることから、消化特性あるいは生分解性も改変されたものとなっており、血糖値の上昇を穏やかにし、あるいは生分解性を穏やかにするものと考えられる。
このように、少なくとも穀皮を貫通する傷を付けた穀粒、穀皮及び/又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液に接触処理する工程;前記接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程;前記分離処理後の原料を乾燥処理する工程;を行うことにより、穀粒又は穀粒破砕物について撥水性を賦与することができ、新たな特性を有する新素材が提供される。
本発明の原理については、今後の詳細な解析が不可欠となるが、本発明における新素材の性質は、精製澱粉粒では観察されなかったことから、その特性改変に係わる少なくとも一部の要因は、澱粉以外の成分に由来すると考えられる。
また、穀粒の組織構造が維持されたものでは、水酸化カルシウム処理の効果が顕著であったことから、破砕前の水浸入経路に対して水酸化カルシウム水溶液が入り込むことにより、狭い空間内での蛋白質や脂質膜などのアルカリ変性、そしてカルシウムのもつイオン結合や高次構造形成作用の両者が関与している可能性が考えられる。穀粒を水酸化カルシウム処理後に破砕して得た粉は撥水性を有しており、この粉を水中で激しく攪拌すると撥水性が低減すること、懸濁液にエタノールやアセトンなどの極性の高い溶媒を添加した場合にも撥水性が失われることから、粉の表面を疎水性成分が覆っており、物理的衝撃又は徐々に溶解することにより剥がれ落ちて親水性が回復している可能性が考えられる。
また、この粉の水懸濁液に塩酸、クエン酸等の酸の添加、二酸化炭素の吹きつけなどによって中和した場合、EDTAなどのキレート剤を添加した場合には撥水性は速やかに失われて親水性を示すようになることから、疎水性成分はアルカリ性であり、カルシウムイオンが存在することが必要であると考えられる。米粉からタンパク質のアルブミン、グロブリン、プロラミン、酸性グルテリン、塩基性グルテリン画分をそれぞれ除去した米粉を用いて改質処理を行い、吸水特性を評価したところ、アルブミン、グロブリン画分を除去した改質米粉は撥水性を示したが、プロラミン、酸性グルテリン、塩基性グルテリン画分を除去した改質米粉は撥水性を示さなかった。このことから、撥水性を示すためにはプロラミンおよびグルテリン画分の存在が必要であると考えられる。
従って、本発明においては、上記のようにして得られた、撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物を、酸、キレート剤、エタノール又はアセトンを用いて処理し、任意のタイミングで撥水性を低下させることにより、改質穀粒又は改質穀粒破砕物の構造を制御することができる。
本発明により得られる改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、アルカリ性、かつカルシウムイオンが存在するときに撥水性を発揮するが、逆に、酸により中和する;或いはキレート剤によりカルシウムイオンを除去する;エタノールやアセトンで処理する;ことで、撥水性を軽減させ、親水性をもたせることができるようになるため、穀粒(穀粉)に吸水させるタイミングを自在に制御することが可能となる。
このようにして製造された、改質穀粒又は改質穀粒破砕物については、カルシウム含有量が増加している他に、素材の吸水特性が改変された新素材となりうる。
穀粒の種類、剥皮等の前処理の度合い、水酸化カルシウムによるアルカリ処理条件などによって、吸水特性の有無やその程度が変化する。吸水特性としては、撥水性の他、初期吸水速度の低下、粒子内部への吸水阻止など、複数の特性が含まれる。これらの性質に関連して、粒子が水相から油相に移行する性質、加熱処理時に遅延して吸水するために澱粉の糊化が遅れる性質、吸水が阻止されるために粒子内部のpHがアルカリ性に維持されるという性質などが観察される。また、粒子内の澱粉がアルカリによって部分的に糊化する条件下では、最終的な吸水量の増加が観察される。また、前記したように、本素材を用いると、処理前の素材と比較してアミラーゼ消化性が穏やかになることから、血糖値の上昇を穏やかにするものと考えられる。
従って、本発明により得られる改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、様々な用途に広く用いることが可能となる。
一般的に、穀粒あるいは穀粉の利用法としては、穀粒(穀粉)に水、油脂、熱を加える順序と方法によって分類することができる。
(1)穀粒(穀粉)を加熱するもの:ポップコーン、ポン菓子、はったい粉など。
(2)前記(1)のうち加熱時に油を用いるもの:揚げ衣、ムニエルの衣など。
(3)穀粒(穀粉)を吸水させてから加熱するもの:炊飯米、かゆ、団子、餅、おかき、蒸しパン、うどんなど。
(4)前記(3)のうち、加熱時に油を加えるもの:天ぷら、パイ、クッキー、パン、揚げあられなど。
(5)穀粒(穀粉)に油を加えて加熱し、さらに吸水させて加熱するもの:ピラフ、ルー、ソースなど。
(6)穀粒(穀粉)を吸水させて加熱したもの、即ち前記(2)のものをさらに加熱するもの:焼き餅、ビーフン、トルティーヤなど。
(7)前記(6)のうち加熱時に油を加えるもの:チャーハン、タコシェル、チュロスなど。
本発明の改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、処理の程度により、吸水性と親水性、或いは親油性にバラエティをもたせることができるため、吸水特性を利用した、或いは油脂又は水分との親和性の違いを利用し、前記(1)〜(7)に挙げた調理に新たな機能を持たせた利用法が考えられる。例えば、前記(2)の衣について、改質穀粉の親油性が高く、撥水性があることを利用して、素材の水分を奪わずに調理を完成させることができる。
従って、本発明の撥水性を賦与された、改質穀粒又は改質穀粒破砕物は、打ち粉や揚げ衣などとして有効に用いることができる。
このように、吸水特性を改変した素材はこれまでに知られておらず、水酸化カルシウムに接触させるという簡単な方法により製造できることから、食品開発を中心とした多様な用途開発が進むものと期待される。
以下、本発明を試験例および実施例等によって詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらにより何ら限定されるものではない。
なお、下記の実施例で行った‘穀粒の部分搗精’とは、穀皮(コメでいう籾殻部分)を除去した穀粒そのものについて、精米装置(例えば、小型試験用精米器パーレスト、ケット科学研究所)を用いて、穀粒の外皮に部分的に傷をつける処理を指す用語である。
また、‘穀粒の含水量’は、湿潤基準(wet base)の重量含水率である「%(w.b.)」で示した。当該値は、‘水分の重量’を‘水分と固形分の重量の和’で除して100を乗じた値である。
[試験例1]『水酸化カルシウム処理が穀粒の親水性に与える影響』
穀粒原料に対して水酸化カルシウム処理を行い、‘穀粒’の親水性に与える影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、表1に示す穀粒である、‘うるち米の精白米’、‘もち米の精米’、‘小麦乾燥穀粒の部分搗精品’、を調製して準備した。
当該各穀粒原料10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]及び純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて12時間静置した。
静置処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が15%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
対照として、各穀粒原料に水酸化カルシウムを含まない純水のみを加えて静置、洗浄、及び乾燥を行った。
(2)「穀粒の親水性評価」
‘穀粒’の親水性を次のように評価した。穀粒の表面にマイクロピペットを用いて6μLの純水の水滴を破砕物の上に落とし、水滴が穀粒表面に浸透するまでにかかる時間を測定した。結果を表1に示した。
その結果、穀粒を水酸化カルシウムで処理することによって、穀粒表面に水滴が馴染むまでの時間が大幅に増加することが示された。
このことから、水酸化カルシウム処理により穀粒の親水性が低下し、撥水性を示すようになることが明らかになった。
[試験例2]『水酸化カルシウム処理が穀粒破砕物の親水性に与える影響』
穀粒原料に対して水酸化カルシウム処理を行い、その後に破砕して得た‘穀粒破砕物’の親水性に与える影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、表2に示す穀粒である‘うるち米精白米’、‘うるち米玄米の部分搗精品’、‘もち米精米’、‘小麦乾燥穀粒の部分搗精品’、を調製して準備した。
当該各穀粒原料10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]及び純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃, 12時間の静置処理を行った。
静置処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
対照として、各穀粒原料に水酸化カルシウムを含まない純水のみを加えて静置、洗浄、乾燥、粉砕、及び乾燥を行った。
(2)「穀粒破砕物の親水性評価」
‘穀粒破砕物’の親水性の度合いは、次のように評価した。破砕物0.2gを、水平な面に直径2.5cm程度になるように水平に広げた。マイクロピペットを用いて6μLの純水の水滴を破砕物の上に落とし、水滴が破砕物と馴染んで浸透するまでの時間(水平に広げた穀粒破砕物に水滴が浸透するまでにかかる時間である。以下、単に「穀粒破砕物に水滴が浸透するまでにかかる時間」と称する。)を測定した。結果を表2に示した。
その結果、表2に示すように、穀粒の表面に傷をつけて外皮の一部を除去した場合には、破砕物の親水性が低下した。外皮の一部を除去することによって、穀粒への水酸化カルシウムの浸透が容易になることから、処理後の生成物の親水性を低下させるために有効であることが示された。
このことから、穀粒の水酸化カルシウム処理物を破砕物にした場合でも、その破砕物の親水性が低下して撥水性を示すことが明らかになった。
[試験例3]『穀皮を除去した状態の穀粒原料』
試験例2において、穀粒原料として、穀皮を除去した状態の‘うるち米玄米’又は‘トウモロコシ乾燥穀粒’を用いたこと以外は、試験例1と同様にして行い、穀粒の親水性を評価したところ、十分な撥水性が得られなかったが、これは穀皮を除去した状態の‘うるち米玄米’又は‘トウモロコシ乾燥穀粒’にとっては、浸漬・静置時間が短いことによるものではないかと思われた。
そこで、試験例2における浸漬・静置時間(12時間)をさらに延ばして試験を行った。
即ち、‘うるち米玄米’又は‘トウモロコシ乾燥穀粒’を一晩(16時間)吸水させ、その後に水酸化カルシウムを加えてさらに二日間(48時間)低温(4℃)下に静置し、水洗い(水洗浄)をした後、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させ、その後、粉砕し、さらに水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
対照として、各穀粒原料に水酸化カルシウムを含まない純水を加えて静置、洗浄、乾燥、粉砕、及び乾燥を行った。
その結果、表3に示すように、穀皮を除去した状態の‘うるち米玄米’又は‘トウモロコシ乾燥穀粒’であっても、十分な時間をかければ吸水し、これら穀皮を除去した状態の「穀粒」にも撥水性を付与できることが分かった。
[試験例4]『穀粒破砕物への水酸化カルシウム処理』
穀粒破砕物に直接水酸化カルシウム処理を行った場合において、当該穀粒破砕物の吸水特性に与える影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒破砕物として、‘うるち米の米粉’、‘トウモロコシ破砕物’、‘ソバ穀粒破砕物’、‘アマランサス穀粒破砕物’を調製した。当該穀粒破砕物10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の緩やかな撹拌処理を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで5回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀粒破砕物の親水性評価」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’の親水性の度合いを、試験例2に記載の方法と同様にして評価した。結果を表4に示した。
その結果、当該穀粒破砕物に水酸化カルシウム処理を行った処理物では、水滴が浸透する時間が劇的に増大することが示された。
このことから、穀粒そのものにではなく、穀粒破砕物に対して‘直接’水酸化カルシウム処理を行った場合でも、吸水特性が変化して撥水性が付与できることが示された。
[試験例5]『アルカリ化合物の種類』
穀粒に対して各種アルカリ化合物を用いた処理を行い、穀粒破砕物の親水性に与える影響を検討した。
(1)「アルカリ化合物処理」
穀粒原料として、表3に示す穀粒である‘うるち米精白米’(試料3-1, 3-2, 3-3)を調製して準備した。
当該各穀粒原料10gを容器に量り取り、純水40mL及び各種アルカリ化合物を濃度が0.34 Mとなるように加えて加えてよく撹拌し、20℃, 12時間の静置処理を行った。
静置処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄してアルカリ化合物を除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
(2)「穀類破砕物の親水性評価」
‘穀粒破砕物’の親水性の度合いを、試験例2に記載の方法と同様にして評価した。結果を表5に示した。
なお、対照として、水酸化カルシウム処理を行わなかった上記試料2-2の結果を合わせて表5に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理物(試料5-1)のみが撥水性を示し、他種のアルカリ化合物での処理物(試料5-2, 試料5-3)では、撥水性を示さないことが示された。
このことから、穀粒や穀粒破砕物の親水性を低下させて撥水性を付与する作用は、アルカリ化合物全般に奏される作用ではなく、水酸化カルシウムに特異的な作用であることが示唆された。
[試験例6]『カルシウム化合物の種類』
穀粒に対して各種カルシウム化合物を用いた処理を行い、その穀粒粉砕物の親水性に与える影響を検討した。
(1)「カルシウム化合物処理」
穀粒原料として、表6に示す穀粒である‘うるち米精白米’を調製した。
当該各穀粒原料10gを容器に量り取り、純水40mL及び各種カルシウム化合物を濃度が0.34 Mとなるように加えて加えてよく撹拌し、20℃, 12時間の静置処理を行った。
静置処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄してカルシウム化合物を除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
(2)「穀粒破砕物の親水性評価」
‘穀粒破砕物’の親水性の度合いを、試験例2に記載の方法と同様にして評価した。結果を表6に示した。
なお、対照として、水酸化カルシウム処理を行わなかった上記試料2-2の結果を合わせて表6に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理物(試料6-1)のみが撥水性を示し、他種のカルシウム化合物での処理物(試料6-2, 6-3)では、撥水性を示さないことが示された。
このことから、穀粒や穀粒破砕物の親水性を低下させて撥水性を付与する作用は、カルシウム化合物全般に奏される作用ではなく、水酸化カルシウムに特異的な作用であることが明らかとなった。
[試験例7]『水酸化カルシウム添加量の検討』
穀粒粉砕物を水酸化カルシウム処理するにあたり、水酸化カルシウム添加量が穀粒粉砕物の吸水特性に与える影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒破砕物として、‘うるち米の米粉’を調製した。当該穀粒破砕物10gを容器に量り取り、表7に示す量の水酸化カルシウム粉末[原料に対して0.1〜10%(w/w)相当量、純水に対して0.025〜2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の緩やかな撹拌処理を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで5回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀類破砕物の親水性評価」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’の親水性の度合いを、試験例2に記載の方法と同様にして評価した。結果を表7に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理に用いる水酸化カルシウム量の割合を多くするのに伴って、穀粒破砕物に水滴が浸透する時間が増大することが示された。特に、穀粒重量に対して5%(w/w)以上[純水に対して1.25%(w/v)以上]の水酸化カルシウムを添加して処理することによって、浸透時間が劇的に増大することが示された。
このことから、当該穀粒破砕物の吸水特性を変化させて撥水性を付与する作用は、水酸化カルシウム添加量の増加に伴い増強される作用であることが示唆された。特に穀粒重量に対して5%(w/w)以上[純水に対して1.25%(w/v)以上]の水酸化カルシウムを添加することが有効であることが示された。
また、この結果から、改質処理に用いる水酸化カルシウムの濃度を調節することによって、吸水特性を調節可能であることが示された。
なお、当該知見は、穀粒そのものに対する水酸化カルシウム処理についても、原理的に適用可能な知見であると認められる。
[試験例8]『水酸化カルシウム処理時間の検討』
水酸化カルシウム処理を行うにあたり、水酸化カルシウム処理時間が穀粒粉砕物の吸水特性に与える影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒破砕物として、‘うるち米の米粉’を調製した。当該穀粒破砕物10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて表8に示す時間の間、緩やかな撹拌処理を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで5回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀類破砕物の親水性評価」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’の親水性の度合いを、試験例2に記載の方法と同様にして評価した。結果を表8に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理を10秒以上行うことによって、穀粒破砕物に水滴が浸透するまでにかかる時間が劇的に増大することが示された。
このことから、当該穀粒破砕物の吸水特性を変化させて撥水性を付与する作用は、10秒程度の短時間の水酸化カルシウム処理を行っただけでも容易に付与される作用であることが示された。
また、長時間(24時間)の水酸化カルシウム処理を行った場合でも、吸水特性に悪影響がないことが示された。
なお、当該知見は、穀粒そのものに対する水酸化カルシウム処理についても、原理的に適用可能な知見であると認められる。
[試験例9]『穀類破砕物の吸水特性』
水酸化カルシウム処理を行って得た穀粒破砕物について、その吸水の経時変化すなわち吸水特性を評価した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒破砕物として、‘うるち米の米粉’を調製した。当該穀粒破砕物10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて12時間の間、穏やかな撹拌処理を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで5回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀粒破砕物吸水量の経時変化」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’について、穴あき缶を用いた吸水性簡易評価法を用いて吸水特性の評価を行った。具体的には、底に1cm間隔で1〜2mmの穴を開けたアルミ製容器(例えばラピッドビスコアナライザーのカップ)に水酸化カルシウム処理後の穀粒破砕物を5g入れ、水を張ったバットに容器を浸し、初期は30秒間隔、その後は2〜10分毎に水から容器を引き上げ、質量を測定した。
吸水量から乾物重に対する全吸水量を計算して、時間を横軸、全吸水率を縦軸としたグラフにプロットした。結果を図1に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理をしなかった穀粒破砕物(対照米粉:試料9-2)では速やかに静置吸水したが、水酸化カルシウム処理後の穀粒破砕物(改質米粉:試料9-1)では静置吸水はおこらず、測定を行った30分間では吸水量に変化が見られなかった。
このことから、水酸化カルシウム処理によって穀粒破砕物に付与された撥水性は、長時間保持される性質であることが示された。
なお、当該知見は、穀粒そのものに対する水酸化カルシウム処理についても、原理的に適用可能な知見であると認められる。
[試験例10]『水酸化カルシウム量の違いによる吸水特性の変化』
水酸化カルシウム量を変化させて水酸化カルシウム処理を行って得た穀粒破砕物について、その吸水特性の変化を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒破砕物として、‘うるち米の米粉’を調製した。当該穀粒破砕物10gを容器に量り取り、図2に示す量の水酸化カルシウム粉末[原料に対して0.1〜10%(w/w)相当量、純水に対して0.025〜2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の緩やかな撹拌処理を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで5回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀類破砕物吸水量の経時変化」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’について、吸水量の経時変化を試験例9に記載の方法と同様にして測定した。結果を図2に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理において、穀粒質量に対して水酸化カルシウムを2%以上(純水に対して0.5%(w/v)以上)添加した試料では(試料10-1〜10-3)、静置吸水はおこらず、測定を行った20分間では吸水量に変化が見られなかった。
このことから、水酸化カルシウム処理においては、特に穀粒質量に対して2%(w/w)以上(純水に対して0.5%(w/v)以上)の水酸化カルシウムを添加することにより、穀類破砕物に安定した撥水性を付与できることが示された。
また、水酸化カルシウム添加量を敢えて低く調節[0.1〜2%(w/w穀粒)の間で調節]することにより、穀粒破砕物の吸水特性を自在に改変できることが示された。
なお、当該知見は、穀粒そのものに対する水酸化カルシウム処理についても、原理的に適用可能な知見であると認められる。
[試験例11]『水酸化カルシウム処理時間の違いによる吸水特性の変化』
水酸化カルシウム処理の処理時間を変化させて得た穀粒破砕物について、その吸水特性の経時変化を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、‘うるち米’を準備した。当該穀粒10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて図3に示す時間の間、静置を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀粒破砕物吸水量の経時変化」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’について、吸水量の経時変化を試験例9に記載の方法と同様にして測定した。結果を図3に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理を2時間以上行った試料では(試料11-4〜11-5)、静置吸水はおこらず、測定を行った120分間では吸水量に変化が見られなかった。
このことから、水酸化カルシウム処理を2時間以上行うことにより、穀粒破砕物に安定した撥水性を付与できることが示された。
また、水酸化カルシウム処理時間を敢えて短く調節(0〜2時間の間で調節)することにより、穀粒破砕物の吸水特性を自在に改変できることが示された。
なお、当該知見は、穀粒破砕物に直接そのものに対する水酸化カルシウム処理についても、原理的に適用可能な知見であると認められる。
[試験例12]『水酸化カルシウム処理による加温時粘度特性の変化』
水酸化カルシウム処理して得た穀粒破砕物について、その加温時粘度特性の変化を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、‘うるち米’を準備した。当該穀粒10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末0.2g[原料に対して2%(w/w) 相当量]又は0.5g[原料に対して5%(w/w) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の間、静置を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「加温時粘度特性の経時変化」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’について、ラピッドビスコアナライザー(Newport Scientific社製)を用いて、加温に伴う粘度特性の評価を行った。
具体的には、AACC公定法61-02.01に従い、測定容器に水分含量12%(w.b.)の時のサンプル量が3.00gとなるように量り取った穀粒破砕物と、全水分量が25.0mLとなるように水を加え、羽を差し込み、50℃に設定した測定槽にセットした。
960回転/分のスピードで10秒間羽を回転させた後に、160回転/分にし、その後測定中はこのスピードを保持した。当該状態にて羽を回転させながら50℃で1分間保持した後、3分45秒の間に95℃まで温度を上昇させ、2分30秒95℃で保持した。その後、3分45秒間で50℃まで温度を下降させ、1分30秒50℃で保持した。このときに羽にかかる力を検出することにより、粘度を経時的に測定した。結果を図4に示した。
その結果、水酸化カルシム処理を行った穀粒破砕物(改質米粉)は、その撥水性のために水と馴染みにくいため、加温しても粘度が上昇しにくいことが示された。
具体的には、穀粒質量に対して2%(w/w)[純水に対して0.5%(w/v) 相当量]の水酸化カルシウムで処理した試料(試料12-3)では、加温に伴う粘度上昇が大幅に低減することが示された。特に、穀粒質量に対して5%(w/w) [純水に対して1.25%(w/v) 相当量]の水酸化カルシウムで処理した試料(試料12-2)では、粘度上昇はほとんど見られなかった。
なお、穀粒質量に対して2%(w/w)[純水に対して0.5%(w/v) 相当量]の水酸化カルシウムで処理した試料を24時間水浸漬した後に測定を行った場合(試料12-4)では、最高粘度が3800cPという高い値を示した。但し、当該粘度上昇のパターンは、対照米粉(試料12-1)とは異なり、最高粘度到達時間が短く、最高粘度値も低い値であった。
このことから、穀粒の吸水特性の度合いを調節することによって、加熱に伴う粘度特性パターンの制御が可能となることが示された。
[試験例13]『水酸化カルシウム処理が親水性及び親油性に与える影響』
穀粒原料に対して水酸化カルシウム処理を行い、その後に破砕して得た穀粒粉砕物の親水性及び親油性に与える影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、‘うるち米’を準備した。当該穀粒10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の間、静置を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「穀粒破砕物の親水性及び親油性の評価」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’について、親水性及び親油性の評価を行った。評価の方法は、試料に対して表9に記載の各工程A〜Eのいずれかを行い、性状を目視にて評価した。水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物(改質米粉)の結果を表9-1に、対照(対照米粉)の結果を表9-2に、それぞれ示した。
その結果、水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物(改質米粉)は、親油性が強く、工程B〜Eを行った試料(試料13-2〜13-5)では上層である油層に沈殿した。また、工程Aを行った試料では、水となじまなかった(試料13-1)。
一方、水酸化カルシウム処理を行わない穀粒破砕物(対照米粉)は、親水性が強く、工程A〜Dを行った試料(試料13-6〜13-9)では下層である水層に沈殿した。また、工程Eを行った試料では、油となじみ油層で沈殿した(試料13-10)。
この結果から、水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物では、本来は親水性を示す特性であったものが、親油性が強い特性に、改質されていることが示された。
[試験例14]『人工消化液による消化性の評価』
穀粒原料に対して水酸化カルシウム処理を行い、その後に破砕して得た穀粒粉砕物のアミラーゼ消化性への影響を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、‘うるち米’を準備した。当該穀粒10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の間、静置を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「アミラーゼ消化性の評価」
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’について、Englystらの方法(Am J Clin Nutr 1999;69:448-54)の改変法を用いてアミラーゼによる消化性の評価を行った。
具体的には、糖含量が約0.6gとなるように米粉を50mL遠沈管に量り取り、5mLの純水及び10mLのペプシン塩酸溶液を加え、37℃で30分間静置した。ここで、ペプシン塩酸溶液は、0.05N塩酸にペプシン(P7000、Sigma、USA)を0.5 g/mLとなるように懸濁して作成した。
0.5M酢酸ナトリウム溶液を用いてpHを5.2±0.5となるように調製し、1%アジ化ナトリウム溶液を0.5 mL加え、総液量が20 mLとなるように純水を加えて調製した。
直径10mmのガラス玉3個を遠沈管に入れ、5mLのパンクレアチン溶液を加え、37℃で振とう(100往復/分)した。ここで、パンクレアチン溶液は次のように調製した。3gのパンクレアチン(P7545、Sigma、USA)を20 mLの純水に懸濁し、10分間撹拌した後、1500回転で10分間遠心分離し、上清を15 mL回収した。この上清に0.67 mLアミログルコシダーゼ(A7095、Sigma、USA)と1 mLインベルターゼ(104738、Merck、Germany)を加えて、パンクレアチン溶液とした。
パンクレアチン溶液を投入した後、一定時間毎に200μLサンプリングし、直ちに4mLのエタノールを加えて反応を停止した。この溶液のグルコース量を、グルコーステストキット(例えば、グルコースCII-テストワコー,和光純薬工業)を用いて測定した。結果を図5に示した。
その結果、水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物(改質米粉:試料14-1)は、水酸化カルシウム処理を行わなかった穀粒破砕物(対照米粉:試料14-2)と比較して、20分消化後及び120分消化後のいずれにおいても、消化率が低くなっていることが示された。
このことから、水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物(改質米粉:試料14-1)では、ペプシン、パンクレアチン、アミログルコシダーゼ、インベルターゼからなる人工消化液による消化性が穏やかであることが示された。
[試験例15]『各種穀粒特性の評価』
穀粒原料に対して水酸化カルシウム処理を行い、その後に破砕して得た穀粒粉砕物の各種特性を検討した。
(1)「水酸化カルシウム処理」
穀粒原料として、‘うるち米’を準備した。当該穀粒10gを容器に量り取り、水酸化カルシウム粉末1g[原料に対して10%(w/w) 相当量、純水に対して2.5%(w/v) 相当量]を加え、次いで純水40mLを加えてよく撹拌し、20℃にて16時間の間、静置を行った。
当該処理後の溶液を捨て、純水40mLで3回洗浄して水酸化カルシウムを除去し、水分含量が30%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
その後、0.5mmスクリーンを装着したサイクロンミル(Cyclotec 1093, Tecator, Sweden)を用いて高速粉砕(破砕)し、水分含量が14%(w.b.)程度になるまで乾燥させた。
なお、対照として、水酸化カルシウムを加えずに同様の処理を行ったものを調製した。
(2)「各種穀粒特性の評価」
・加熱膨潤及び糊化の抑制
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’0.1gを試験管に量り取り、純水4mLを加えて撹拌し、80℃に温度設定したヒートブロックに入れた。
その結果、水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物(改質米粉:試料15-1)は、温度が上昇しても純水と馴染まず、水面で浮遊した状態のまま維持されていた。即ち、加熱による膨潤及び糊化が抑制された特性となった。
一方、対照穀粒破砕物(対照米粉:試料15-2)では、純水中で沈澱して温度が上昇するにつれて膨潤し糊化した。
上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’0.1gを試験管に量り取り、純水4mLを加えた試験管を7本準備した。これらを80℃に温度設定したヒートブロックに入れ、(i)0.5 mLの0.5 M塩酸(試料15-3)、(ii)0.5 M酢酸ナトリウム(pH 3.8)(試料15-4)、(iii) 0.5 M エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(試料15-5)、(iv)エタノール(試料15-6)、(v)アセトン(試料15-7)、をそれぞれ加えて撹拌した。
その結果、これらの全ての試料において、水酸化カルシウム処理した穀粒破砕物が水となじんで沈澱するようになり、糊化が進行した。
このことから、酸や有機溶媒を加えることによって、任意のタイミングで賦与された撥水性を低下することができることが示された。
一方、上記(1)の処理を経た‘穀粒破砕物’0.1gを試験管に量り取り、純水4mLを加えた試験管に、(i) シクロヘキサン(試料15-8)、(ii) トルエン(試料15-9)、(iii) 食用サラダ油(試料15-10)、をそれぞれ加えて撹拌して、80℃に温度設定したヒートブロックに入れた。
その結果、シクロヘキサン、トルエン、食用サラダ油を加えた場合には、加えた液と改質米粉がなじみ、水相との界面に集まったが、水となじむことはなかった。
[実施例1;うどん生地への打ち粉としての評価]
以下に、本発明の改質米粒粉砕物の調製方法を示す。
精米したコシヒカリの米粒1 kgに、50 gの水酸化カルシウム[原料に対して5%(w/w) 相当量、蒸留水に対して1.25%(w/v) 相当量]を懸濁した蒸留水4 Lを添加し、20℃で18時間放置した。
次に、米粒をざるにあげて、沈澱している水酸化カルシウムを分離し、さらに表面に付着した水酸化カルシウムを蒸留水ですすぎ、余剰の水酸化カルシウムを除去した。得られた米粒をバットに広げて水分含量30%程度になるまで室温で風乾し、試験用粉砕器で粉砕した。得られた粉砕物をバットに広げ、水分含量が14%程度になるまで室温で風乾し、改質米粒粉砕物とした。
比較用の米粒粉砕物として、コシヒカリ米粒1 kgに蒸留水4 Lを添加し、20℃前後で18時間放置した後に米粒をざるにあげ、蒸留水ですすぎ、水分含量30%程度になるまで風乾し、試験用粉砕器で粉砕し、さらに水分含量14%程度になるまで風乾したものを用いた。
上記本発明の改質米粒粉砕物と比較用の米粒粉砕物とについて、以下のようにしてうどん生地への打ち粉としての評価を行った。うどん生地の打ち粉として要求される性質として、生地上に均質に広がり、生地同士の付着を抑えること、ゆであげ時の湯の濁りと粘度の上昇の程度が低いことが挙げられる。
小麦粉として中力粉(日清中力粉)300 gに、蒸留水145 mLに食塩15 gを溶かして作製した食塩水を加え、家庭用パン捏ね機で15分間混捏し、30分間寝かせてうどん生地とした。パスタマシンを用いて圧延、裁断し、打ち粉を振って生めんとした。
このときの打ち粉の生めんへの付着率は、本発明の改質米粒粉砕物は2.2%、比較用の米粒粉砕物は3.1%であった。
また、このときの打ち粉の付着の様子として、本発明の改質米粒粉砕物は生地上に薄く均一に広がっており、比較用の米粒粉砕物は生地上にダマになって付着しているところがあった。一方、生地同士の付着は、本発明の改質米粒粉砕物と比較用の米粒粉砕物とで大きな違いは見られなかった。
生めん50 gを500 mLの沸騰水に投入したところ、本発明の改質米粒粉砕物を打ち粉として用いた場合、打ち粉がはがれて水に浮き、次第に一部が沈澱した。ゆで汁の粘性に大きな影響はなかった。一方、比較用の米粒粉砕物を打ち粉として用いた場合、はがれた打ち粉はすぐに糊化し、ゆで汁は透明度が高いものの、粘性が生じた。このように、本発明の改質米粒粉砕物は、比較用の米粒粉砕物と比べて生地上に均質に広がり、ゆであげ時の湯の粘度が上昇しないという打ち粉としての性質を兼ね備えていることが示された。
[実施例2;揚げ衣としての評価]
精米したコシヒカリの米粒1 kgに、50 gの水酸化カルシウム[原料に対して5%(w/w) 相当量、蒸留水に対して1.25%(w/v) 相当量]を懸濁した蒸留水4 Lを添加し、20℃で18時間放置した。
次に、米粒をざるにあげて、沈澱している水酸化カルシウムを分離し、さらに表面に付着した水酸化カルシウムを蒸留水ですすぎ、余剰の水酸化カルシウムを除去した。得られた米粒をバットに広げて水分含量30%程度になるまで室温で風乾し、試験用粉砕器で粉砕した。得られた粉砕物をバットに広げ、水分含量が14%程度になるまで室温で風乾し、改質米粒粉砕物とした。
比較用の米粒粉砕物として、コシヒカリ米粒1 kgに蒸留水4 Lを添加し、20℃前後で18時間放置した後に米粒をざるにあげ、蒸留水ですすぎ、水分含量30%程度になるまで風乾し、試験用粉砕器で粉砕し、さらに水分含量14%程度になるまで風乾したものを用いた。
上記本発明の改質米粒粉砕物と比較用の米粒粉砕物とについて、以下のようにして揚げ衣としての評価を行った。
木綿豆腐を3×4×1 cm程度の大きさに切り、軽く水気を取った。豆腐に揚げ衣として上記本発明の改質米粒粉砕物又は比較用の米粒粉砕物をまぶした。各粉砕物をバットに広げ、豆腐をその上において押しつけ、余分な粉砕物は軽くはたいて落とした。これを170℃に熱した揚げ油に投入し、3分間加熱した。
比較用の米粒粉砕物をまぶした豆腐は、豆腐から水分が抜け、油揚げのような食感になっていた。一方、本発明の改質米粒粉砕物をまぶした豆腐は、3分間揚げても豆腐の水分が抜けずに、噛むと豆腐から水分がしみ出した。
[実施例3;クッキーとしての評価]
精米したコシヒカリの米粒1 kgに、50 gの水酸化カルシウム[原料に対して5%(w/w) 相当量、蒸留水に対して1.25%(w/v) 相当量]を懸濁した蒸留水4 Lを添加し、20℃で18時間放置した。
次に、米粒をざるにあげて、沈澱している水酸化カルシウムを分離し、さらに表面に付着した水酸化カルシウムを蒸留水ですすぎ、余剰の水酸化カルシウムを除去した。得られた米粒をバットに広げて水分含量30%程度になるまで室温で風乾し、試験用粉砕器で粉砕した。得られた粉砕物をバットに広げ、水分含量が14%程度になるまで室温で風乾し、本発明の改質米粒粉砕物とした。
比較用の米粒粉砕物として、コシヒカリ米粒1 kgに蒸留水4 Lを添加し、20℃前後で18時間放置した後に米粒をざるにあげ、蒸留水ですすぎ、水分含量30%程度になるまで風乾し、試験用粉砕器で粉砕し、さらに水分含量14%程度になるまで風乾したものを用いた。
上記本発明の改質米粒粉砕物と比較用の米粒粉砕物とについて、クッキーとしての評価を行った。
ボウルに室温にした無塩バター40 gを電動ミキサーで90秒撹拌し、上白糖30 gを加え、さらにミキサーで90秒撹拌した。よく撹拌してストレーナーで漉した鶏卵30 gを加え、60秒撹拌した。これに、本発明の改質米粒粉砕物又は比較用の米粒粉砕物を加え、手でこねて一つにまとめ、ラップに包んで4℃の冷蔵庫で30分寝かせた。生地の上下をラップではさみ、厚さ0.4 cm程度にのばし、直径3 cmの丸い抜き型で抜き、オーブンシートを敷いた天板に並べた。200 ℃に熱した電気オーブンで13分間焼成した。
本発明の改質米粒粉砕物を用いたクッキーは、比較用の米粒粉砕物を用いたものと比べてさくさく感が強く、さらに色づきが濃かった。
[実施例4;揚げ菓子としての評価]
精米したコシヒカリの米粒1 kgに、50 gの水酸化カルシウム[原料に対して5%(w/w) 相当量、蒸留水に対して1.25%(w/v) 相当量]を懸濁した蒸留水4 Lを添加し、20℃で18時間放置した。
次に、米粒をざるにあげて、沈澱している水酸化カルシウムを分離し、さらに表面に付着した水酸化カルシウムを蒸留水ですすぎ、余剰の水酸化カルシウムを除去した。得られた米粒をバットに広げて水分含量30%程度になるまで室温で風乾し、試験用粉砕器で粉砕した。得られた粉砕物をバットに広げ、水分含量が14%程度になるまで室温で風乾し、本発明の改質米粒粉砕物とした。
比較用の米粒粉砕物として、コシヒカリ米粒1 kgに蒸留水4 Lを添加し、20℃前後で18時間放置した後に米粒をざるにあげ、蒸留水ですすぎ、水分含量30%程度になるまで風乾し、試験用粉砕器で粉砕し、さらに水分含量14%程度になるまで風乾したものを用いた。
上記本発明の改質米粒粉砕物と比較用の米粒粉砕物とについて、揚げ菓子としての評価を行った。卵1個(約50 g)に上白糖50 gを加え、泡立て器でよくすり混ぜ、サラダ油を10 g加えてさらにすり混ぜ、牛乳を50 ml加えてよく混ぜ合わせた。これに、ベーキングパウダー8 gと本発明の改質米粒粉砕物又は比較用の米粒粉砕物を150 g加え、ゴムへらで混ぜ合わせた。約20 g分の生地を取り、丸く成形し、160℃に熱した揚げ油に投入し、3分間加熱した。
本発明の改質米粒粉砕物を用いた揚げ菓子は、比較用の米粒粉砕物を用いたものと比べて色づきが濃く、膨らみが小さく、噛み応えがあった。
[実施例5;天ぷら粉としての評価]
精米したコシヒカリの米粒1 kgに、50 gの水酸化カルシウム[原料に対して5%(w/w) 相当量、蒸留水に対して1.25%(w/v) 相当量]を懸濁した蒸留水4 Lを添加し、20℃で18時間放置した。
次に、米粒をざるにあげて沈澱している水酸化カルシウムを分離し、さらに表面に付着した水酸化カルシウムを蒸留水ですすぎ、余剰の水酸化カルシウムを除去した。得られた米粒をバットに広げて水分含量30%程度になるまで室温で風乾し、試験用粉砕器で粉砕した。得られた粉砕物をバットに広げ、水分含量が14%程度になるまで室温で風乾し、本発明の改質米粒粉砕物とした。
比較用の米粒粉砕物として、コシヒカリ米粒1 kgに蒸留水4 Lを添加し、20℃前後で18時間放置した後に米粒をざるにあげ、蒸留水ですすぎ、水分含量30%程度になるまで風乾し、試験用粉砕器で粉砕し、さらに水分含量14%程度になるまで風乾したものを用いた。
上記本発明の改質米粒粉砕物と比較用の米粒粉砕物とについて、天ぷら粉としての評価を行った。卵1個(約50g)に水150 mlを加えてよく混ぜ、ここに本発明の改質米粒粉砕物又は比較用の米粒粉砕物を120g加え、よく混ぜたものを天ぷら衣とした。厚さ10 mm程度に切ったサツマイモに天ぷら衣をつけ、160℃に熱した揚げ油に投入し、3分間加熱した。
比較用の米粒粉砕物を用いた天ぷら衣は、サツマイモから大きく離れることなかったが、本発明の改質米粒粉砕物を用いた天ぷら衣は、サツマイモから浮き上がり、衣とサツマイモの間に空間ができてふくれた天ぷらとなった。

[実施例6;ポップコーンとしての評価]
ポップコーン用のトウモロコシ粒100 gを、5 gの水酸化カルシウム[原料に対して5%(w/w) 相当量、蒸留水に対して1.25%(w/v) 相当量]を懸濁した蒸留水400 mLに入れ、20℃で18時間放置した。
次に、トウモロコシをざるにあげ、沈澱している水酸化カルシウムを分離し、さらに表面に付着した水酸化カルシウムを蒸留水ですすぎ、余剰の水酸化カルシウムを除去した。得られたトウモロコシ粒をバットに広げて水分含量15%程度になるまで室温で風乾し、本発明の改質トウモロコシ粒を得た。比較用のトウモロコシ粒として、蒸留水400 mLに入れ、20℃で18時間放置した後に水を切り、水分含量15%程度になるまで室温で風乾したものを用いた。
上記本発明の改質トウモロコシ粒と比較用のトウモロコシ粒について、ポップコーンとしての評価を行った。フライパンに20gのサラダ油を入れ、改質トウモロコシ粒または比較用トウモロコシ粒50gを入れてフタをし、フライパンを弱火にかけた。トウモロコシ粒が焦げ付かないようにフライパンを揺すりながら、トウモロコシ粒がはじけるまで加熱を続けた。
本発明の改質トウモロコシ粒から作ったポップコーンは、比較用のトウモロコシ粒のものより香ばしい香りがあったが、食感は両者でほぼ同等であった。
本発明は、撥水性などの吸水特性をはじめとする各種特性が改良された改質穀粒又は改質穀粒破砕物とその製造法に係るものであり、本素材の特性を利用した多様な食品・非食品への開発が期待される。特に、疎水性、消化性などに注目した用途展開が加速すると期待される。

Claims (13)

  1. 穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液と接触処理する工程;前記接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程;前記分離処理後の原料を乾燥処理する工程;さらに必要に応じて、前記乾燥処理工程により得られた改質穀粒又は改質穀粒破砕物を破砕処理する工程;を行うことを特徴とする、撥水性を賦与した改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  2. 前記「穀粒」或いは前記「穀粒破砕物」における「穀粒」が、コメ粒、コムギ粒、トウモロコシ粒、オオムギ粒、エンバク粒、ライムギ粒、キビ粒、アワ粒、ヒエ粒、ソバ粒、及びアマランサス粒のうち少なくとも一種類である、請求項1に記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  3. 前記「水酸化カルシウムと水を主成分とする溶液又は懸濁液」が、水に対する水酸化カルシウムの存在比が0.025%(w/v)以上のものであり、かつ穀粒又は穀粒破砕物に対する水酸化カルシウムの存在比が0.1%(w/w)以上のものである、請求項1又は2に記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  4. 前記「接触処理する工程」が、温度0℃以上であり、かつ穀粒又は穀粒破砕物を構成する澱粉の糊化温度未満の温度範囲内で、1分間以上の時間接触させるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  5. 前記「溶液又は懸濁液から分離処理する工程」が、接触工程後の穀粒又は穀粒破砕物と;溶液又は懸濁液の主成分である水酸化カルシウム水溶液、未溶解の水酸化カルシウム粒子及び遊離成分とを;両者のサイズ差又は比重差により分離回収するものである、請求項1〜4のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  6. 前記「溶液又は懸濁液から分離処理する工程」として、接触処理後の穀粒又は穀粒破砕物と;溶液又は懸濁液の主成分である水酸化カルシウム水溶液、未溶解の水酸化カルシウム粒子及び遊離成分とを;両者のサイズ差又は比重差により分離回収した後、得られた穀粒又は穀粒破砕物を洗浄する操作を行うものである、請求項1〜5のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  7. 前記「乾燥処理する工程」が、前記「乾燥処理後の穀粒又は穀粒破砕物」を、水分含量30%以下まで乾燥するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の改質穀粒又は改質穀粒破砕物の製造法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造法により得られた、撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物。
  9. 吸水特性又は消化特性のいずれか一つ以上が改変され、かつカルシウム量が増強されている、請求項8に記載の撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物。
  10. 請求項8又は9に記載の撥水性を賦与された改質穀粒又は改質穀粒破砕物を、酸、キレート剤、エタノール又はアセトンを用いて処理し、任意のタイミングで撥水性を低下させることを特徴とする改質穀粒又は改質穀粒破砕物の構造制御方法。
  11. 請求項8に記載の撥水性を賦与された改質穀粒破砕物を用いた打ち粉。
  12. 請求項8に記載の撥水性を賦与された改質穀粒破砕物を用いた揚げ衣。
  13. 穀皮を除去した状態の穀粒そのもの、外皮又は胚芽の少なくとも一部を除去した穀粒、及び、穀粒破砕物のいずれか一種以上を原料として用い、この穀粒又は穀粒破砕物からなる原料を水酸化カルシウムと水とを主成分とする溶液又は懸濁液に接触処理する工程;前記接触処理後の原料を前記溶液又は懸濁液から分離処理する工程;前記分離処理後の原料を乾燥処理する工程;を行うことを特徴とする、穀粒又は穀粒破砕物について撥水性を賦与する方法。
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