JP2022063243A - 低吸油性食品素材、及びその利用 - Google Patents

低吸油性食品素材、及びその利用 Download PDF

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Koichi Nagasawa
浩一 八田
Koichi Hatta
美環子 伊藤
Miwako Ito
洋平 寺沢
Yohei Terasawa
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Abstract

【課題】グルテンや小麦澱粉を製造する際に副生する廃物について、新たな用途を提供する。またパン粉の吸油性を低減する方法を提供する。【解決手段】穀物由来であり、穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む、穀粉に混合して用いるための、食品素材を提供する。この食品素材は、乾物換算で3.0%以上のアラビノキシランを含む。本発明を適用して得られたパン粉は、吸油性が低く、外観や食感に優れている。【選択図】なし

Description

本発明は、パン粉等の食品の吸油を抑えることができる食品素材に関する。本発明は食品製造の分野等で有用である。
一般に、グルテンの製造に際しては、グルテン水洗工程から、小麦澱粉で乳濁した澱粉含有乳濁液が副生される。この澱粉含有乳濁液は、比重により、胚乳中に含まれる水不溶性繊維質繊維質を多く含む白粕層(白粕)、ふすまを含む赤粕層(くすんだ白色)、ふすま層(茶色)、大粒子澱粉層(白色)に分けることができる。澱粉含有乳濁液から得られる大粒子澱粉は小麦澱粉として菓子やミックス粉に使用されるが、それを除いた残渣の大半は有効な利用法がなく、取り扱いが検討されてきた。
特許文献1には、小麦粉由来の水不溶性繊維質を含有することを特徴とする卵焼きが記載されており、このような卵焼きが、色調と解凍時の離水が極めて少ないという利点を有し、食物繊維を含有しているので健康食品としても優れ、またそれまで有効な利用法がなかった小麦澱粉廃液中の水不溶性繊維質を有効利用するものである旨が記載されている。また特許文献2には、製パン工程において使用する水、イースト及び糖類の各々の一部又は全量に対して、水不溶性の食物繊維及び/又は胚芽を加えて混合液を形成し、この混合液を発酵させた後、得られた発酵液を用いてパン類を製造することを特徴とするパン類の製造方法が記載され、またここでいう水不溶性の食物繊維として、小麦粉由来の水不溶性繊維質である赤粕や白粕が使用できる旨が記載されている。特許文献3には、白粕を含有することを特徴とする麺類が記載されている。そして白粕を添加することにより、麺類の製造中や製造後に麺帯や麺線同士の付着を防止することができ、また付着が生じた場合でもその付着の程度を麺線が容易に分離できる弱い付着状態に保つことができる旨が記載されている。特許文献4には、粒径10μ以下の澱粉粒の含有割合が25重量%以上であることを特徴とする小麦澱粉が記載されており、このような小粒子の小麦澱粉が従来の小麦澱粉に比べて消化・吸収が緩やかであるため、糖尿病などの予防や防止のための素材として極めて有効であり、従来の小麦澱粉と同じように、種々の食品や飼料などに有効に且つ安全に使用することができる旨が記載されている。
一方、フライの衣に使用されるパン粉は、近年の健康志向への高まりから油で揚げた際の吸油性が低いことが望まれており、この観点から検討が為されてきている。例えば特許文献5には、焙焼式又は通電式製パン法を使用して得られるパン粉であって、小麦粉,水,イースト等の公知のパン生地原料に大豆から抽出した食物繊維を配合してなることを特徴とする吸油率の低いパン粉が記載されている。また、特許文献6には、パン生地を焼成し、そのパンを粉砕、乾燥して得られるパン粉であって、とうもろこし外皮から調製され、NDF値が50%以上で、粒度が80メッシュより細かい食物繊維を含有することを特徴とするフライ用パン粉が提案されており、このパン粉を油ちょうした際の含油量等が検討されている。さらに特許文献7には、とうもろこしから調製された食物繊維、及び、大豆から調製された蛋白質を含有することを特徴とする低吸油性フライ用パン粉が記載されている。
さらに、パン粉用パンの製造において、オキアミの殻及び/ 又はオキアミ成分をパン生地原料に添加して用いることを特徴とするパン粉の吸油性を低下させる方法(特許文献8)、澱粉分解物を含むパン生地を用いて発酵、焼成したパンを粉砕して得られるフライ用パン粉の製造において、パン生地にα澱粉を含有させることを特徴とする、低吸油性フライ用パン粉の製造方法(特許文献9)、(1)パン生地原料に、こんにゃくゲル及びこんにゃくゾルからなる群から選択される少なくとも1種を配合してパン生地を調製する工程、(2)調製したパン生地を発酵後、焼成する工程、及び(3)焼成したパンを粉砕する工程を有する、低吸油性パン粉の製造方法(特許文献10)、砂糖やぶどう糖、果糖、水飴などの糖類を80~180℃の温度下で加熱し、5重量%水溶液の480nmにおける吸光度が0.1~2.0になるように調製した糖加工品を、小麦粉重量に対し0.1~5%の割合で添加したことを特徴とする低吸油性パン粉(特許文献11)、パン粉中に大麦由来のβ-グルカンを大麦粉の形態で含有させ、β-グルカンの含有量が0.1~7.0g/100gの範囲であり、大麦粉は、パン粉中の小麦粉と大麦粉の総重量において10~60重量%を占めていることを特徴とする吸油量の少ないパン粉(特許文献12)が知られている。
特開平5-317003号公報 特開平5-316925号公報(特許第3150423号) 公開平5-316976号公報(特許第3046114号) 特開平6-311856号公報(特許第3222265号) 特開平2-20258号公報(特公平7-63325) 特開平5-61号公報(特許第3113320号) 特開平7-246072号公報 特開2008-011864号公報 特開2009-034065号公報 特開2009-291105号公報 特開2010-130907号公報 特開2015-133956号公報(特許第6029217号)
グルテンや小麦澱粉を製造する際に副生する廃物について、付加価値が高く、大量に消費できるような実用的な用途は、これまでに提案されていない。
上述のように、パン粉の吸油性を低減するための検討が種々為されてきたが、パンのふくらみを悪くして気泡を小さくすることで吸油を抑制するものは、パン粉の食感が硬くなるという問題がある。また縦長に伸びた気泡が少なくなるため、剣立ち(揚げた食品の表面に、縦長・針状のパン粉が多く立ち上がっている状態)が悪くなり、食感のみならず見た目にも劣ることとなる。さらに、添加される成分によっては、パン粉の揚げ色が濃くなるという問題がある。
本発明は、以下を提供する。
[1] 穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む、穀粉を含む食品の吸油を抑制するために用いられる、食品素材。
[2] 乾物換算で3.0%以上のアラビノキシランを含む、1に記載の食品素材。
[3] 硬質小麦由来である、1又は2に記載の食品素材。
[4] 下記を原材料として含む、食品:
穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む食品素材、及び穀粉。
[5] 原材料に穀粉を含む流動性がない生地を製造される食品に対し、原材料の穀粉に対する穀粉から分離した食品素材の置換割合が1~40%であり、水分調整により流動性がない生地に調製して製造される、4に記載の食品。
[6] 原材料の穀粉を含む流動性がある生地を用いて製造される食品に対し、原材料の穀粉に対する穀粉から分離した食品素材の置換割合が1~100%であり、水分調整により流動性がある生地に調製して製造される、4に記載の食品。
[7] 5及び6に記載の生地で被覆して製造される、食品。
[8] パンを細断したもの又はパン粉である、4又は5に記載の食品。
[9] 8に記載のパンを細断したもの又はパン粉を使用した、食品。
[10] 下記の工程を含む、穀粉を含む食品の製造方法:
(1) 穀物由来であり、穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む食品素材を準備し、
(2) 食品素材と穀粉を混合し、
(3) 混合物を油を用いて調理する。
[11] 細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を有効成分として含む、吸油抑制剤。
[12] 穀粉を含む食品の吸油を抑制する方法であって、
細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を、穀粉に混合する工程を含む、方法。
本発明により、吸油性の低い食品素材が提供される。本発明の食品素材の使用により、食品の吸油を少なく抑えたカロリーの低い食品が製造できる。特に本発明を適用して得られたパン粉は、吸油性が低く、外観や食感に優れている。本発明の食品素材の使用により、油の消費を減らすことができる。
本発明により、グルテンや小麦を製造する際に副生する画分の新規な用途が提供される。
不溶性画分を水に懸濁して強く撹拌をし、静置後上澄みから分離、回収した小粒子澱粉画分(凍結乾燥)の電子顕微鏡写真。細かい粒が小粒子澱粉である。一部大粒子澱粉が残っている。A:×300、B:×1000。 不溶性画分を水に懸濁して強く撹拌をし、静置後上澄みを除去して回収した沈殿を同じように水に懸濁、撹拌、上澄みの除去の操作を繰り返して得た沈殿を分離、回収した細胞壁断片画分(凍結乾燥)の電子顕微鏡写真。不溶性画分の細胞壁断片から小粒子澱粉の多くが除かれ、細胞壁断片が露出している状態。レンズ型の大きい粒子は結合、混入している大粒子澱粉。A:×300、B:×300、C:×500。 不溶性画分(A:生、B:凍結乾燥、C:凍結乾燥)の電子顕微鏡写真。細胞壁断片表面を小粒子澱粉が覆い、結合をしている状態、電子顕微鏡観察では遊離の澱粉の集合体もごく一部見られる。レンズ型の大きい粒子は結合、混入している大粒子澱粉。生では細胞壁断片が水分を含んでいるため凍結乾燥物よりも膨潤した状態で存在し、透明感が増した平面状の断片となる。A:×500、B:×300、C:×300 生パン粉の気泡壁の電子顕微鏡写真。 強力粉 不溶性画分無添加 ×1000 不溶性画分(凍結解凍)を添加して製造した生パン粉の気泡壁の電子顕微鏡写真。不溶性画分の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体が生地表面を覆って存在する部分と大粒子を取り囲むように分布している構造が認められる。 強力粉+白粕5% ×1000 図5に、不溶性画分由来の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体の箇所を示したもの。点線:不溶性画分由来の小粒子澱粉の集合体があり、細胞壁断片が認められる部分 餃子の皮(生)の電子顕微鏡写真。小麦粉(強力粉50%、薄力粉50%のブレンド) 餃子の皮(生)の電子顕微鏡写真。小麦粉(強力粉50%、薄力粉50%のブレンド)に10%の不溶性画分(生)を添加したものであり、図3Aの形状の不溶性画分が生地に混ざり生地表面を部分的に覆いながら存在しているのが確認できる。 図8に、不溶性画分由来の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体の箇所を示したもの。点線:不溶性画分由来の小粒子澱粉の集合体があり、細胞壁断片が認められる部分
本発明に関し、割合(%、部)を示すときは、特に記載した場合を除き、質量(重量)に基づく。数値範囲「x~y」は、両端の値x及びyを含む。
本発明は、穀物由来であり、グルテンが除去され、細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む、穀粉に混合して用いるための 、食品素材に関する。
[食品素材]
(原材料穀物)
本発明の食品素材は穀物を原材料とする。本発明の食品素材の原材料として用いる穀物の例として、小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦、ライ小麦、ハトムギ、そば、コーンが挙げられる。本発明の食品素材の原材料は、これらから選択される複数の穀物の組み合わせであってもよい。穀物は、本発明の食品素材を製造するための原材料として用いるに際しては、穀粉として用いるとよい。本発明の食品素材は、穀粉から分離したものである。
原材料の特に好ましい例の一つは小麦である。小麦を原材料とする場合、小麦の種類、品種、産地、栽培時期、小麦粉の種類、等級等は特に限定されない。原材料は、品種等の異なる小麦や小麦粉をブレンドしたものであってもよい。なお以下では、原材料が小麦(又は小麦粉)である場合を例に本発明を説明することがあるが、その説明は、当業者であれば、小麦以外を原材料とする場合にも適宜当てはめて理解することができる。
小麦の種類は、タンパク質の量、硬度、又は用途によって、硬質小麦、中間質小麦、軟質小麦、及びデュラム小麦に分類できるが、本発明の食品素材の原材料としては、特に限定されない。ブレンドされたものであってもよい。好ましい例として、硬質小麦及び硬質小麦を含むブレンドによる小麦、デュラム小麦を挙げることができる。
原材料とする小麦の品種及び系統の例として、LM 12、アイラコムギ、あおばの恋、あきたっこ、あけぼのもち、アブクマワセ、あやひかり、いぶきもち、イワイノダイチ、うららもち、きたさちほ、キタノカオリ、きたのちから、きたほなみ、きたもえ、きぬあかり、きぬあずま、きぬいろは、きぬの波、キヌヒメ、くまきらり、こしちから、コユキコムギ、さちかおり、さとのそら、さぬきの夢2000、さぬきの夢2009、しゅんよう、シラネコムギ、せときらら、タイセツコムギ、ダイチノミノリ、ダブル8号、タマイズミ、タマイズミR、チクゴイズミ、ちくごまる、ちくしW2号、つるきち、つるぴかり、トワイズミ、ナンブキラリ、ニシカゼコムギ、ニシノカオリ、にしのやわら、ニシハルカ、ニシホナミ、ネバリゴシ、はつもち、ハナマンテン、ハルイブキ、はるきらり、はるひので、はるみずき、ハルユタカ、はる風ふわり、バンドウワセ、びわほなみ、フウセツ、ふくあかり、フクオトメ、ふくさやか、ふくはるか、ふくほのか、フクワセコムギ、ホクシン、ミナミノカオリ、みなみのやわら、みのりのちから、もち乙女、もち姫、やわら姫、ゆきちから、ゆきはるか、ゆめあかり、ユメアサヒ、ゆめかおり、ゆめきらり、ユメシホウ、ユメセイキ、ゆめちから、ゆめちから2020、ワカマツコムギ、夏黄金、宮高1号、銀河のちから、春のあけぼの、春のかがやき、春よ恋、小麦中間母本農1号、小麦中間母本農2号、小麦中間母本農3号、小麦中間母本農4号、小麦中間母本農5号、小麦中間母本農6号、小麦中間母本農7号、小麦中間母本農8号、小麦中間母本農9号、早春、中国143号、長崎W2号、福井県大3号、北海259号、北海260号、北見92号、北見95号、農林3号、農林8号、農林29号、農林35号、農林61号、農林62号、農林75号が挙げられる。これらをブレンドして用いてもよい。好ましい品種及び系統の例として、ゆめちから、みのりのちから、ゆめちから2020、北海259号、銀河のちから、ハナマンテン、ゆめかおり、キタノカオリ、せときらら、春よ恋、ミナミノカオリが挙げられ、これら品種及び系統を含むブレンドも挙げられる。
原材料とする小麦は、輸入小麦であってもよい。輸入小麦は、用途に適した品質に管理するため、通常、複数の品種がブレンドされている。本発明において原材料とすることができるブレンドされた銘柄の例として、カナダ産ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)、アメリカ産ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)、アメリカ産ハード・レッド・ウィンター (HRW)、オーストラリア産スタンダード・ホワイト(ASW)、アメリカ産ウェスタン・ホワイト(WW)、オーストラリア産プライム・ハード(PH)が挙げられる。
小麦粉は含まれるタンパク質(グルテン)の質と量によって、強力粉(超強力粉、準強力粉を含む。タンパク質量の目安 10.5%以上)、中力粉(タンパク質量の目安 7.5~10.5%)、薄力粉(タンパク質量の目安 6.5~9.0%)に分類されるが、本発明の食品素材の原材料は、いずれであってもよい。食品素材をパン、パンを裁断したもの又はパン粉の原材料として用いる場合は、焼成したパンの体積が増し、パン粉としての食感が良くなることから、強力粉を用いることが好ましく、より特定すると、超強力粉を用いることが好ましい。超強力粉は通常の硬質コムギから得られる強力粉に比べて強靭なグルテンを持ち、国産銘柄の他にCanada Western Extra Strong Wheat (CWES)などが含まれる。また、超強力粉が得られ、本発明の食品素材の原材料小麦として特に好ましい品種及び系統の例として、ゆめちから、みのりのちから、ゆめちから2020、北海259号、北海263号、北海264号、北海266号、銀河のちから、KS831957、Wildcat、Victoria INTA、Glenlea、Bluesky及びこれらの小麦を母本として育成され強力粉に比べ強靭なグルテンを持つ小麦が挙げられる。
小麦粉は、特等粉(灰分 0.3~0.35%)、一等粉(灰分 0.35~0.45%)、二等粉(灰分 0.45~0.65%)、三等粉(灰分 0.7~1.0%)、末粉(灰分 1.2~2.0%)に分類されるが、本発明の食品素材の原材料は、いずれであってもよい。
本発明の食品素材の原材料は、一般にグルテン及び澱粉の製造のために使用される三等粉であってもよい。後述するように、グルテン及び澱粉の製造に際しては、不溶性の画分が副生されるが、この副生物から、本発明の食品素材を製造することができる。
(複合体、不溶性画分)
本発明の食品素材は、細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む。
細胞壁断片と澱粉に関し、複合体とは、細胞壁断片と澱粉が別々に存在するのではなく、例えば細胞壁表層に澱粉が多数結合している状態のように、両者が混在する状態を指す。すなわち本発明でいう複合体は細胞壁断片と澱粉が直接あるいは細胞壁断片表層の細胞膜やタンパク質、多糖類を介して非共有結合により結合して成るものをいい、細胞壁断片に結合している澱粉に別の澱粉がタンパク質、多糖類を介して非共有結合により結合して成る部分を一部含む。水あるいは水溶媒を使用した分離工程を経ても複合体化した状態で存在するものを示す。細胞壁断片に澱粉が結合している複合体は、生では細胞壁断片が水を含み、膨潤し、柔軟性のある構造物である。細胞壁断片に澱粉が結合している複合体は、パン粉の吸油を抑えるための従来技術の有効成分である、純度の高い多糖類や穀物由来の繊維質断片とは異なる。細胞壁断片に澱粉が結合している複合体は、それを含む食品素材と穀粉を混合して製造された食品において、通常、電子顕微鏡観察で存在を確認することができる。
原材料穀類として小麦を用いる場合、細胞壁断片に澱粉が結合している複合体は、小麦粉からのグルテン製造工程において、グルテンが除去された不溶性画分として得ることができる。なお以下では、細胞壁断片に澱粉が結合している複合体が小麦を原材料とした不溶性画分である場合を例に本発明を説明することがあるが、その説明は、当業者であれば、他の場合にも適宜当てはめて理解することができる。
不溶性画分は、詳細には、小麦粉からのグルテン及び澱粉の製造において副生される、小麦澱粉の乳濁液を比重により分離して得られる、細胞壁断片と比較的小粒子の澱粉の複合体を含む画分である。一般に小麦粉からのグルテン及び小麦澱粉の製造は、小麦粉に水を加えて混捏して小麦粉中に含まれるグルテンなどの蛋白質を水和膨潤させて粘着性でまとまりのある生地をつくり、この生地を水で洗浄し、生地中の澱粉を洗浄水中に洗い出し、澱粉粒子が懸濁されて乳濁した液を形成させてその澱粉含有乳濁液から塊状で残留するグルテンをさらに分離回収すると共に澱粉含有乳濁液から比較的粒子径の大きい小麦澱粉を分離回収することによる。不溶性画分は、この製造工程で得られる澱粉含有乳濁液(洗浄液)から、比較的粒子径の大きい小麦澱粉を分離回収した後の残渣に含まれる。澱粉含有乳濁液は、遠心分離により、胚乳中に含まれる水不溶性繊維質繊維質を多く含む白粕層(白粕)、ふすまを含む赤粕層(くすんだ白色)、ふすま層(茶色)、大粒子澱粉層(白色)に分けることができる(下図参照)。大粒子澱粉は菓子用ミックス粉等に配合されて用いられるが、現在のところ残渣の実用的な用途は見出されていない。
Figure 2022063243000001
不溶性画分の特に好ましい例の一つは、白粕及び赤粕である。
不溶性画分からは、グルテンのほか、大粒子澱粉が除去されていてもよい。除去され(ている)、とは、原材料穀物がその成分を含有する場合にはその一部又は全部が除去されていることをいう。一部が除去されているとは、例えば小麦粉中の大粒子澱粉の50%以上が除去されていることをいい、80%以上が除去されていてもよく、90%以上除去されていてもよく、できる限り除去されていてもよい。
また、不溶性画分には大粒子澱粉が含まれていてもよい。一般に、白粕及び赤粕からは大粒子澱粉が極力分離されているが、水を使用した分離作業を繰りかえし行っても細胞壁断片に結合している大粒子澱粉は除くことができず、不要性画分には大粒子澱粉がいくらか含まれることとなる。しかし、不溶性画分には大粒子澱粉が含まれることは、本発明の目的を達成するためには、特に問題はない。
典型的な不溶性画分においては、大粒子澱粉は粒数としては殆ど除去されており、細胞壁断片と複合体を形成している澱粉の粒子径は、比較的小さいということができる。一般に小麦澱粉の粒度分布は、1~40μmであり、粒径2~8μmの小粒子群(小粒子澱粉)と粒径20~30μmの大粒径群(大粒子澱粉)に大別でき、粒径の相違により糊状状況が相違することなどが知られている(高橋礼治, 島川忠夫, 渋谷新四郎. 小麦澱粉粒径の相違によるアミログラムの変化について. 澱粉工業学会誌, 1957, 第5巻, 第2号, p66-72)。なお、小麦澱粉の粒径及び粒度分布は、従来技術、例えば日機装株式会社製マイクロトラック粒径分布測定装置9200FRA等を用いて乾式で測定することができる。また、必要に応じ、平均粒径や粒径検出頻度等の算出を当業者によく知られた方法、例えばJISZ8825:2013 粒子径解析-レーザ回折・散乱法で行うことができる。また本明細書の実施例の項に記載の方法で行ってもよい。
本明細書に添付される図1に、本明細書の実施例の項に示す実験で得られた不溶性画分から分離、回収した小粒子澱粉画分の電子顕微鏡写真、図2に、本明細書の実施例の項に示す実験で得られた不溶性画分から分離、回収した細胞壁断片画分の電子顕微鏡写真、図3に、本明細書の実施例の項に示す実験で得られた不溶性画分の電子顕微鏡写真を示す。本発明の食品素材を原材料として用いてパン粉、餃子の皮を製造した場合、後述するように、製造されたパン粉、餃子の皮において不溶性画分の存在が電子顕微鏡により確認できる(図5、図8)。
(アラビノキシランの含有)
本発明の食品素材は、細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含むため、穀物(イネ科植物)細胞壁の主要マトリックス成分の一つであるアラビノキシランを含む。食品素材中のアラビノキシラン含量は、原材料にも拠るが、乾物換算で3.0%以上であり、4.0%以上であることがより好ましく、5.5%以上であることがさらに好ましく、7.0%以上であることがさらに好ましい。なお、本発明に関し、食品素材、複合体、不溶性画分、及びそれらに含まれる澱粉等の成分の量及び含量をいうときは、特に記載した場合を除き、乾物に換算した場合の値(水分量0%の乾燥質量に基づく値)として示している。
アラビノキシラン含量は、当業者によく知られた種々の方法により、測定することができる。アラビノキシラン含量はまた、アラビノキシランを適切な方法で抽出し、アラビノースとキシロースに適切な方法で加水分解し、生じたアラビノース及びキシロースの量を陰イオン交換樹脂カラム(HPAEC)等を用いて定量し、それらの和として算出することにより、求めてもよい。算出の際には、加水分解における水分子の取り込みを補正する。補正は、例えばアラビノース量とキシロース量の和の値に0.88を乗じることによる。
なお、通常の小麦粉のアラビノキシラン含量は乾物換算で2.5%以下である。例えば通常の強力粉のアラビノキシラン含量は、1.6%(市販品、輸入小麦)、又は2.1%(ゆめちから、歩留まり60%粉)である。小麦の粒では2%前後である。通常の大麦のアラビノキシラン含量は小麦の同等以上であり、大麦の粒のアラビノキシラン含量は2%~7%程度である。大麦の登録品種ビューファイバー(品種登録番号22118)のアラビノキシラン含量は、粒で約7%である。
(小粒子澱粉の含有)
本発明の食品素材に含まれる複合体は、澱粉を含み、粒数としては小粒子澱粉を多く含み、細胞壁断片表面を覆っている澱粉の面積の多くを占める。不溶性画分中の小粒子澱粉の含量(小粒子澱粉質量/澱粉質量)は、原材料にも拠るが、乾物換算で40%以下であり、30%以下である場合があり、20%以下である場合があり、15%以下である場合がある。澱粉含量は、当業者によく知られた種々の方法により、測定することができる。なお、通常の小麦粉の小粒子澱粉含量は10%以下である。強力粉で7%以下、超強力粉で3%以下である。不溶性画分中の小粒子澱粉の含量は、当業者であれば適切な方法を用いて測定・算出することができる。例えば、本明細書の実施例の項で説明した方法を用いてもよい。
(形態)
本発明の食品素材は、種々の形態であり得る。例えば、分離直後の水分を含む生の状態、懸濁物、乾燥物、凍結物、凍結乾燥物等であり得る。
本発明の食品素材は、目的の効果を発揮しうる限り、複合体以外の食品として許容される添加物を含んでいてもよい。
(製造方法)
本発明の食品素材は、上述のとおり、小麦粉からのグルテン及び澱粉の製造において副生される、小麦澱粉の乳濁液から、細胞壁断片と比較的小粒子の澱粉の複合体を含む画分として、製造することができる。
より詳細には、食品素材の製造方法の一例は、下記の工程を含んでいてよい。
穀粉に対し、1/2~2/3倍量の水を加え、混錬して生地を製造し;得られた生地を5~50倍量の水で洗浄してグルテンを取り出し;
グルテンを取り出した残りの液を比重により分離して沈殿画分を得て;そして
得られた沈殿画分において、ふすま層より上の層を回収する。
[用途]
本発明の食品素材は、様々な食品の原材料として、穀粉に混合して用いることができる。また本発明の食品素材は、穀粉を含む様々な食品の吸油を抑制するために用いることができる。
また本発明は、穀物由来であり、細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を有効成分として含む、吸油抑制剤を提供するものでもある。
本発明者らの検討によると、パンの製造において、小麦後から得た不溶性画分を、原材料小麦粉の一部に置換して用いることにより、パンの体積が増加し、また製造されたパンをパン粉にした際の吸油率を効果的に低減した(実施例1参照)。またパンの体積を増加させる効果、及びパン粉の吸油率を低減する効果は、小粒子澱粉画分、細胞壁断片画分を別々に用いた場合よりも、共存する複合体の状態で用いたほうが高かった(実施例3参照)。
また本明細書に添付される図4に、本発明の食品素材を含まない生パン粉の気泡壁の電子顕微鏡写真、図5に、本明細書の実施例の項に示す実験で得られた不溶性画分を食品素材として添加して製造した、生パン粉の気泡壁の電子顕微鏡写真、図6に、図5において不溶性画分由来の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体の箇所を示したものを掲載するが、不溶性画分に含まれる細胞壁断片表層には小粒子澱粉が多数結合している状態であるため、添加して製造したパン粉(生)の気泡壁表面には、膨潤した小粒子澱粉が集まった箇所が観察できる。また露出した細胞壁断片が所々で観察される。また、不溶性画分を添加せず、強力粉のみを用いて製造したパン粉の表面が滑らかであるが、不溶性画分を添加したものでは小麦粉の主成分の大粒子澱粉やグルテンの周りを不溶性画分が取り巻き、凹凸が見られ、滑らかさがない。このような観察結果から、パン生地の組織に練りこまれて分散した不溶性画分は、パン気泡壁表面に露出して吸油を妨げていると考えられる。また、元々、小麦種子や小麦粉の状態ではグルテンと共存しているためにグルテンとの親和性が高く、吸油性が特に高いグルテンと相互作用をし、グルテンを覆うことにより吸油を妨げていると考えられる。
このような機序による吸油の抑制は、パン以外の、穀粉を原材料とし、主として穀粉で構成される組織を有する食品、グルテンを含む穀粉を原材料とし、グルテン組織が形成されている食品、気泡を有する食品に広く応用することができると考えられる。したがって、本発明の食品素材は、穀粉を含む、様々な食品において吸油を抑制するために用いることができる。
吸油を抑制するとは、穀粉の一部を本発明の食品素材に置換して製造した食品の吸油率が、置換せずに製造した食品の吸油率より低いことをいう。吸油率とは、食品の単位量あたりに吸油される量として求めることができる。パン粉を油で揚げた場合の吸油率は、全国パン粉工業協同組合連合会によるパン粉の吸油率簡易測定法により求めることができる。またパン粉の吸油率の測定に際しては、含水試料換算を適用し、以下の式で求めてもよい。
[(油揚後パン粉質量(g)-パン粉乾物質量(g))/乾燥前パン粉質量(g)]×100=含水試料吸油率(%)
食品の吸油は、例えば、食品を油ちょう(油であげる)する際に生じる。また、それ以外に、油を用いた焼き・炒め等の調理工程、油脂含量の比較的多い食品との接触等によっても生じうる。
本発明の食品素材の使用による吸油の抑制は、食品素材の使用量にも拠り、様々な程度であり得るが、例えば-10%以下であり、-15%以下とすることができ、-20%以下とすることもでき、-25%以下とすることもできる。
本発明の食品素材をパン粉に適用した場合、吸油を抑制するのみならず、パン粉を用いた食品の、外観及び食感を優れたものとすることができる。従来技術のパン粉の吸油性を低減するための手段には、パンのふくらみを悪くして気泡を小さくすることで吸油を抑制するものがある(前掲特許文献5~12)。これに対し、穀粉の一部を本発明の食品素材に置換して製造したパンの体積は、置換せずに製造したパンの体積より大きい。これにより、パン粉の食感が軽くサクサクとなり、また縦長に伸びた気泡が多いために、剣立ち(揚げた食品の表面に、縦長・針状のパン粉が多く立ち上がっている状態)に優れたものとなる。すなわち、本発明の食品素材は、パン粉を使用した食品の食感と外観を優れたものとすることができる。
本発明の食品素材を天ぷらの衣やフライ食品のバッターに適用した場合、吸油を抑制するのみならず、食品の、外観及び食感を優れたものとすることができる。穀粉単独ではタンパク質含量、還元糖含量、低分子糖含量、アミノ酸含量が高いため着色しやすいが、本発明の食品素材の添加によりこの点の改善が期待できる。すなわち、本発明の食品素材は、パン粉を使用した食品の食感と外観を優れたものとすることができる。
[食品]
本発明はまた、下記を原材料として含む、食品を提供する。
・穀物由来であり、穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む食品素材、及び穀粉。
(食品)
本発明に関し、食品とは、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えばスープ、飲料及びドリンク剤を含む。また、特に記載した場合を除き、ヒトを対象としたもののみならず、非ヒト動物を対象としたもの、例えば飼料及びペットフードを含む。さらに、食品は、特に記載した場合を除き、一般食品、健康食品、サプリメント、保健機能食品(特定保健用食品(通称:トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品)を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、減塩食、介護食、減カロリー食、ダイエット食を含む。
(穀粉)
本発明の食品素材を含む食品は、穀粉を含む。穀粉の例として、小麦粉、ライ麦粉、大麦(モチ大麦)粉、オーツ麦粉、そば粉、コーンミール、米粉、大豆粉が挙げられ、芋類の粉や木の実の粉も含む。穀粉は、これらから選択される複数の穀物の組み合わせであってもよい。
(食品の具体的な形態)
本発明の食品素材はグルテンとの相互作用により吸油を抑えることから、本発明の食品の好ましい態様の一つは、原材料穀粉としてグルテンを含む穀粉を原材料として用いる食品である。グルテンを含む穀粉の例の一つは、小麦粉を多く含む穀粉であり、例えば、小麦粉を50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%含有する穀粉である。小麦粉は、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉であってもよい。
食品の特に好ましい例は、パン、パンを裁断したもの又はパン粉である。パン粉は、生パン粉であってもよく、乾燥パン粉であってもよい。パンの種類も特に制限されないが、食品素材が使用されていることにより吸油が抑えられることから、油を用いて調理されるパンであることが好ましい。例えば、パン粉製造に用いられるパン、クルトン製造に用いられるパン、揚げパン製造に用いられるパンが挙げられ、具体的には、角形食パン、山形食パン、フランスパン、ソフトフランスパン、コッペパンが挙げられる。
また、本発明の食品素材は、油と接触する食品の組織の表面に複合体が局在することにより吸油を抑えることから、本発明の食品の好ましい態様の一つは、油を使用して調理するための、ミックス粉、及びそれを使用した食品が挙げられる。ミックス粉の例として、天ぷら衣用、バッター用、ホームベーカリー用、蒸しパン用、ホットケーキ用、パンケーキ用、スポンジケーキ用、パウンドケーキ用、クッキー用、マフィン用、クレープ用、ブラウニー用、マドレーヌ用、シフォンケーキ用、お好み焼き用、たこ焼き用、唐揚げ用が挙げられる。
他の食品の例は、油を用いて調理される麺又は麺帯(例えば、中華麺、パスタ類、餃子の皮、春巻の皮、焼売の皮)及びそれらのいずれかを使用した食品、ドーナツ類(ケーキ・ドーナツ、イースト・ドーナツ)、油菓(かりんとう)、揚げ饅頭、かりんとう饅頭、焼菓子(ハード・ビスケット、ソフト・ビスケット、クッキー、クラッカー)等が挙げられる。
(食品素材の用法)
食品素材と穀粉を原材料として含む本発明の食品において、穀粉に対する食品素材の置換割合は、吸油を抑えるために有効な量であれば、特に限定されない。穀粉に対する食品素材の置換割合(乾物換算)は、例えば、1%以上とすることができ、2%以上であってもよく、3%以上であってもよく、5%以上であってもよい。通常、強力粉(乾物重量)に対して加水率が60%~70%で調製された流動性がない生地を用いて製造されるパン、パンを裁断したもの又はパン粉に用いる場合は、置換割合は1~20%とすることができ、1~10%とすることが好ましく、2~8%とすることがより好ましい。このような範囲であれば、十分に吸油が抑えられ、かつパンとしての体積も無添加の場合に比較して大きく低下することがないからである。また、通常、芋類の粉(乾物重量)に対して加水率が200%~250%で調製された流動性がない生地を用いて製造されるマッシュポテトに用いる場合は、置換割合は1~40%とすることができ、1~20%とすることが好ましく、5~20%とすることがより好ましい。このような範囲であれば、フライしたときに十分に吸油が抑えられるからである。また、通常、穀粉の乾物質量に対する加水率が80%以上、より特定すると薄力粉に対して加水率が150%~200%で調製された流動性がある生地を用いて製造される天ぷら衣、バッター等の食品材料のコーティング材に用いる場合は、置換割合は1%以上であってもよく、5~100%であってもよく、5~40%としてもよく、10~30%としてもよい。また、通常、小麦粉等に対して加水率が一般に20%~60%で調製された流動性がない生地からなる、麺、又は餃子の皮等の麺帯に用いる場合は、置換割合は3~40%とすることができ、4~35%とすることが好ましく、5%超30%以下とすることがより好ましく、6~25%以下とすることがさらに好ましい。このような範囲であれば、十分に吸油が抑えられるからである。本発明の食品素材は、加水率が比較的大きいために油調すると通常は吸油が多くなると考えられる食品に対して、穀粉の1%以上を、好ましくは5%以上を置換することで良好に吸油を抑えることができる。なお、本発明に関し、穀類に対する食品素材の置換割合をいうときは、特に記載した場合を除き、穀粉(乾物換算)100部において置き換えた食品素材(乾物換算)の割合をいい、例えば穀粉(乾物換算)100gのうち、5gを食品素材(乾物換算)に置換した場合(穀粉95gに対して食品素材を5g用いた場合)は、5%と計算される。
食品素材は、穀粉に対して用いるに際し、食品素材に含まれる複合体が、穀粉に由来する大粒子澱粉やグルテンの周りを取り巻くように用いるとよい。例えば、パンに用いる場合には、穀粉を加水して混錬して生地を調製する工程において食品素材を添加するとよい。このとき、食品素材は、用途によっては乾燥物としてより、水を含んだ状態で用いることが好ましい。含まれる細胞壁断片が水分を含んで膨潤し、グルテンを広く取り囲むことができると考えられるからである。また、乾燥状態よりも柔軟であるためグルテン形成の阻害しない効果が考えられる。さらに水を含むことにより粘着性が増し、生地のまとまりをよくする効果も考えられる。さらに、食品素材を被膜化、シート状に加工したもので食品を被覆して用いても良い。例えば麺帯を製造する場合、通常の配合の内層と食品素材を配合した外層(油ちょうの際に油にする接する層)からなる多層構造としてもよい。
(特徴ある成分の割合)
本発明の食品は、複合体に由来するアラビノキシランを含む。食品がパン、パンを裁断したもの又はパン粉であって、穀粉としてアラビノキシラン含量が比較的低い小麦粉(例えば、市販の、輸入小麦を原材料とする強力粉。アラビノキシラン含量は約1.6%)を用いた場合は、穀粉あたり1.7%以上、好ましくは1.9%以上、より好ましくは2.2%以上、さらに好ましくは3.0%以上、アラビノキシランを含有しうる。また同様に食品がパン、パンを裁断したもの又はパン粉であって、穀粉としてアラビノキシラン含量が比較的高い小麦粉(例えば、ゆめちからを原材料とする強力粉。アラビノキシラン含量は約2.1%)を用いた場合は、穀粉あたり2.2%以上、好ましくは2.4%以上、より好ましくは2.5%以上、さらに好ましくは2.6%以上、アラビノキシランを含有しうる。
(製造方法)
本発明の食品は、下記の工程を含む、製造方法により製造することができる:
(1) 穀物由来であり、穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む食品素材を準備し、
(2) 食品素材と穀粉を混合する。
この製造方法は、さらに下記の工程を含んでもよい。
(3) 混合物を、必要に応じ原材料を加えた上で、油を用いて調理する。
上記の(1)及び(2)の工程を、パン、パンを裁断したもの又はパン粉の製造方法として実施する場合、食品素材と穀粉の混合物からパン生地がつくられる。(2)の工程は、パン生地の主原料である穀粉と食品素材のほか、水、食塩、砂糖、イースト、無塩バター等を混合し、パン生地を得る工程として実施してもよい。得られたパン生地は数時間発酵させる。発酵は、1段階に限定されず、一次発酵し、ガス抜きを行い、二次発酵してもよい。発酵後のパン生地は、適切な焼成方式により、焼き上げる。パン粉用のパンを製造する際には、焼成の際に耳が着色しない条件とすることが好ましく、また通常の食パンよりも細く高い型を用い、縦方向に長いパンとすることが好ましい。焼成したパンは冷却後、粉砕、乾燥、篩い分けしてパン粉とすることができる。
上記の(3)の工程は、例えば、パン、パンを裁断したもの、パン粉、又はそれらを使用した食品の場合は、パン、パン粉等を使用した食品を油で揚げる等の調理を行うことにより実施できる。 (3)の工程は、天ぷらやバッターを使用した食品の場合は、食品素材と穀粉との混合物にさらに液体(水等)を混合したもの(バッター)を調製し、それで具材をコーティングし、油で揚げる等の調理を行うことにより実施できる。ここでの食品素材と穀粉との混合物には粘度調整に使用できる多糖類、小麦タンパク質等、食感を改良するための澱粉等を適宜使用することができる。
(パン粉等を使用した食品)
本発明は、本発明のパン粉を使用した食品を提供する。パン粉を使用した食品の例として、フライ、フライ調理しないフライ用食品(ノンフライ食品)が挙げられ、具体的には、カツ(例えば、トンカツ、チキンカツ、ビーフカツ、メンチカツ、魚フライ、エビフライ、カキフライ、ホタテフライ)、等が挙げられる。このような食品は、パン粉を含む衣が軽くサクサクした食感であり、また剣立ちに優れた外観を有しうる。本発明はまた、本発明の食品素材を衣等の油に触れる外表面に含む食品を提供する。このような食品の例として、天ぷら、本発明の食品素材を使用したバッターを用いたフライ食品、フリッター、ドーナツ、アメリカンドッグ(フレンチドッグ、ホットドッグ、コーンドッグということもある。)が挙げられる。
(その他)
本発明の食品には、添加される食品素材が目的の効果を発揮しうる限り、食品素材及び穀粉以外の他の原材料を配合することができる。他の原材料は、例えば食品がパン、パンを裁断したもの又はパン粉である場合、水、パン酵母、油脂、所望により前述の増粘多糖類及びその他の製パン原料を混合・混捏する工程を含むが、その他の製パン原料として、通常、パン類の製造に用いられるもの、例えばサワー種、ルバン種等の各種発酵種;イーストフード;砂糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、麦芽糖、乳糖等の糖類;卵又は卵粉;脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズ粉末、ヨーグルト粉末、ホエー粉末などの乳製品;ショートニングやバター、マーガリンやその他の動植物油等の油脂類;小麦タンパク質、乳化剤;膨張剤;増粘剤;甘味料;香料;着色料;アスコルビン酸;食塩等の無機塩類;グルコシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ等の酵素類;食物繊維を適宜使用することができる。
本発明の食品素材又はそれを用いた食品には、吸油性が低い旨や、それによりカロリーが抑えられていること、また摂取カロリーを抑えることが有効な疾患又は状態の処置のために適する旨を表示することができ、またそのような疾患又は状態にある対象に対して摂取を薦める旨を表示することができる。表示は、直接的に又は間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所又は手段による、広告・宣伝活動を含む。
[製造例1:小麦粉からの不溶性画分の分離回収]
小麦粉350gに蒸留水を小麦粉の種類に応じて適量(165mL~200mL)を添加し、イズミ電動製麺器 こね工房 IPM500で5分間捏ね上げて生地を作成した。この生地3個を、約5Lの水で洗浄し、生グルテンを取り出した残りの洗液を静置し、上澄み上部の濁りが薄い部分を除去し、残りを4000rpm.で5分間遠心分離した。沈殿画分のうち、底の大粒子澱粉層の上のふすま層よりも上の層を回収し、不溶性画分とし、以下の実験で用いた。不溶性画分の大部分を占める白い層は白粕に相当する。不溶性画分は生及び冷凍解凍、凍結乾燥などの乾燥物の状態のいずれも使用できる。また得られた生及び冷凍解凍、乾燥物の状態の不溶性画分を水に懸濁して強く撹拌するなどの操作で、細胞壁断片に結合している澱粉の一部を剥がし、懸濁液を静置後に上澄みを除去して沈殿画分を回収する工程を実施することにより、細胞壁断片に結合している澱粉の量を減らした複合体を使用しても良い。
上記不溶性画分を回収した残りのふすま層の上の画分はふすまの微細な断片を含み、淡い褐色を呈しているが、この部分を不溶性画分(赤粕)とする。不溶性画分(赤粕)は上記不溶性画分を回収した後のふすま層より上の画分を回収し、水に懸濁した後に4000rpm.で5分間遠心分離し、上部の白い層を除いた後にふすま層の上の画分を回収することにより得た。不溶性画分(赤粕)は生及び冷凍解凍、凍結乾燥などの乾燥物の状態のいずれも使用できる。また得られた生及び冷凍解凍、乾燥物の状態の不溶性画分(赤粕)を水に懸濁して強く撹拌するなどの操作で、細胞壁断片に結合している澱粉の一部を剥がし、懸濁液を静置後に上澄みを除去して沈殿画分を回収する工程を実施することにより、細胞壁断片に結合している澱粉の量を減らした複合体を使用しても良い。
[製造例2:大麦粉からの不溶性画分の分離回収]
大麦粉500gに蒸留水を大麦粉の種類に応じて適量(240mL~260mL)を添加し、イズミ電動製麺器 こね工房 IPM500で5分間捏ね上げて生地を作成した。この生地を約6Lの水に懸濁分散し、よく撹拌した後に静置し、十分吸水をさせた後に上澄み上部の濁りが薄い部分を除去した。残りを再度懸濁させて4000rpm.で5分間遠心分離した。上澄みを捨てて蒸留水を遠心管に添加して懸濁し、4000rpm.で5分間遠心分離した。沈殿画分のうち、底の大粒子澱粉層の上の層(小麦粉の場合のふすま層の上に相当する部分)を回収し、不溶性画分とし、以下の実験で用いた。
[実施例1]
(製パン、パン粉の作製)
製パン材料の配合を下表に示した。小麦粉200g、砂糖10g、食塩4g、ショートニング10g、イースト4g、L-アスコルビン酸0.02gとし、加水は配合によって最適な量とした。下表には加水量として不溶性画分の水分量+蒸留水の量を示す。小麦粉には強力粉(カメリヤ、日清製粉)を用い、不溶性画分は凍結解凍及び生の状態で材料に置換添加した。砂糖は三井製糖製のグラニュー糖,食塩は塩事業センターの精製塩,ショートニングはカネカ製のスノーライト,イーストは日本甜菜製糖製のレギュラーイースト,L-アスコルビン酸は和光純薬製の特級試薬を使用した。加水量は、小麦粉のファリノグラフでのミキシングテストで500B.U.を示す加水量を基本とし、実際のミキシング時の生地形成を確認しながら決定した。
Figure 2022063243000002
上記配合の材料をピンミキサー(ナショナル MFG製)でミキシング(捏ね上げ温度30℃)した。生地の最適ミキシング時間は,ミキシングモーターの電流値のピークを指標にして山内らの方法1)に準じて決定した。得られた生地から100gを2個分割し,製パン試験に供した。
製パン工程は,生地の丸め処理後,30℃,湿度85%の条件でベンチタイムを20分間とり,シーター,モルダー(ナショナルMFG製)を通した生地をワンローフ型に成型した。成型生地を型枠に入れ,38℃,湿度85%で70分の最終発酵を行った後,200℃で25分焼成した。焼成1時間後にパンの体積と質量を測定した。その後パンをポリ袋で密閉し、20℃で2日間保存した。
1.5cm厚にスライスした食パンのクラム部分をフードミキサーで粉砕し、篩にかけてサイズ分けをした。目開き4メッシュパス6.5メッシュオンの生パン粉を試験に供した。
(パン粉の吸油率の測定)
吸油率の測定は全国パン粉工業協同組合連合会によるパン粉の吸油率簡易測定法を用いた。生パン粉の粒度は4メッシュパス6.5メッシュオンのものを用いた。フライヤーに2.6Lのサラダオイル(日清オイリオ社製)を入れ、180℃に調温し、4.5g秤量したパン粉を茶こしに入れ、このセットを複数同時に2分間油揚げ後、3分間空中で茶こしのまま油切りをした。油切りしたパン粉をキムタオル上に均一に広げ、15分間放置し、余分な油を取り除き、正確にパン粉の質量を測定した。
パン粉の乾燥質量の計算に必要なパン粉の水分含量はアルミ秤量缶にパン粉を秤量し、110℃にて加熱後デシケーター内で15分放冷静置し、質量を測定した。この操作を質量変化が0.5%以下になるまで繰り返し、水分含量を求めた。
パン粉の吸油の評価は含水試料換算を適用し、以下の式で吸油率を求め、下表に示した
た。
[(油揚後パン粉質量(g)-パン粉乾燥質量(g))/乾燥前パン粉質量(g)]×100=含水試料吸油率(%)
パンの体積は菜種置換法で測定した。2)3)
Figure 2022063243000003
不溶性画分添加によりパンの吸油率が低減した。不溶性画分は凍結解凍よりも生の方が望ましい。
また、低分子糖、還元糖、アミノ酸、タンパク質含量がより高い従来技術の材料は、アミノカルボニル反応により焦げ付くような色になる懸念があるが、本実験では揚げ色が無添加よりも少しつくが、問題ないレベルであった。添加した不溶性画分は澱粉及び細胞壁からなり、還元末端が極めて少ない多糖により構成され、タンパク質、アミノ酸が除去されていること、またパン粉の場合は少ない添加量で効果を発揮できることも、揚げ色が濃くならない要因である。
本実施例で引用した文献:
1)Yamauchi, H., Nishio, Z., Takata, K., Oda, Y., Yamaki, K., Ishida, N. and Miura, H. (2001) The bread-making quality of a domestic flour blended with an extra strong flour and staling of the bread made from the blended flour, Food Sci. Technol. Res., 7, 120-125
2)新高橋幸資、山辺重雄 編. ポケット 食品・調理実験辞典 (2016)、p.97
3)森孝夫. 食品加工学実験書(2003)、p.22
[実施例2:パン粉の吸油率が低い小麦粉の使用例]
(製パン、パン粉の作製)
実施例1と同様の製パン方法とした。製パン材料の配合を下表に示す。小麦粉200g,砂糖10g,食塩4g,ショートニング10g,イースト4g,L-アスコルビン酸0.02gとし加水は配合によって最適な量とした。下表には加水量として不溶性画分の水分量+蒸留水の量を示す。小麦粉には強力粉(カメリヤ、日清製粉)を用い、不溶性画分は凍結解凍及び生の状態で材料に置換添加した(下表参照)。砂糖は三井製糖製のグラニュー糖,食塩は塩事業センターの精製塩,ショートニングはカネカ製のスノーライト,イーストは日本甜菜製糖製のレギュラーイースト,L-アスコルビン酸は和光純薬製の特級試薬を使用した。
加水量は、小麦粉のファリノグラフでのミキシングテストで500B.U.を示す加水量を基本とし、実際のミキシング時の生地形成を確認しながら決定した。
Figure 2022063243000004
上記配合の材料をピンミキサー(ナショナル MFG製)でミキシング(捏ね上げ温度30℃)した。生地の最適ミキシング時間は,ミキシングモーターの電流値のピークを指標にして山内らの方法1)に準じて決定した。得られた生地から100gを2個分割し,製パン試験に供した。
製パン工程は,生地の丸め処理後,30℃,湿度85%の条件でベンチタイムを20分間とり,シーター,モルダー(ナショナルMFG製)を通した生地をワンローフ型に成型した。成型生地を型枠に入れ,38℃,湿度85%で70分の最終発酵を行った後,200℃で25分焼成した。焼成1時間後にパンの体積と質量を測定した。その後パンをポリ袋で密閉し、20℃で2日間保存した。
パン粉の1.5cm厚にスライスした食パンのクラム部分をフードミキサーで粉砕し、篩にかけてサイズ分けをし、目開き4メッシュパス6.5メッシュオンのパン粉を試験に供した。
(パン粉の吸油率の測定)
吸油率の測定は全国パン粉工業協同組合連合会によるパン粉の吸油率簡易測定法を用いた。生パン粉の粒度は4メッシュパス6.5メッシュオンのものを用いた。
Figure 2022063243000005
超強力粉(ゆめちから)に不溶性画分(白粕)を添加するとパン粉の吸油率が28%(5%添加)低減した。「ゆめちから」に代表される超強力粉は製パン性に優れ、パンの体積が強力粉よりも著しく大きくなるため、それに伴い気泡壁が薄くなり、パン粉の食感も良くなる。特に「ゆめちから」は単独でも吸油が低いため4)低吸油性パン粉の材料として望ましい。
本実施例で引用した文献:
4)長澤幸一 et al.(2011) 超強力小麦「ゆめちから」を使用したパン粉の吸油率. 日本食品科学工学会大会講演集, 58;100
[実施例3]
(不溶性画分からの小粒子澱粉画分の分離回収)
不溶性画分50g(水分75%)を500mLビーカーに取り、蒸留水を約300mL添加し、スターラーで強く撹拌させた後に静置し、上澄み上層を回収した。これを5組用意し操作を20回繰り返した。上澄み上層は遠心分離(4000rpm. 5分)をし、沈殿画分を回収し、凍結乾燥した。
(不溶性画分からの細胞壁断片画分の分離回収)
上記残渣を50mLの遠沈管に入れ、適量の蒸留水を加えて、ホモジナイザー(T18 ULTRA-TURRAX (IKA))で強く撹拌(12000rpm.)し、静置し、上澄み上層を取り除いた。これを10回繰り返し、細胞壁断片画分を回収し、凍結乾燥した。
(製パン、パン粉の作製)
製パン方法は実施例1と同様とした。製パン材料の配合を下表に示す。小麦粉200g,砂糖10g,食塩4g,ショートニング10g,イースト4g,L-アスコルビン酸0.02gとし、加水は配合によって最適な量とした。下表には加水量として不溶性画分の水分量+蒸留水の量を示す。小麦粉には強力粉(カメリヤ、日清製粉)を用い、不溶性画分は凍結解凍及び生の状態で材料に置換添加した。砂糖は三井製糖製のグラニュー糖,食塩は塩事業センターの精製塩,ショートニングはカネカ製のスノーライト,イーストは日本甜菜製糖製のレギュラーイースト,L-アスコルビン酸は和光純薬製の特級試薬を使用した。
加水量は、小麦粉のファリノグラフでのミキシングテストで500B.U.を示す加水量を基本とし、実際のミキシング時の生地形成を確認しながら決定した。
Figure 2022063243000006
上記配合の材料をピンミキサー(ナショナル MFG製)でミキシング(捏ね上げ温度30℃)した。生地の最適ミキシング時間は,ミキシングモーターの電流値のピークを指標にして前述の山内らの方法に準じて決定した。得られた生地から100gを2個分割し,製パン試験に供した。
製パン工程は,生地の丸め処理後,30℃,湿度85%の条件でベンチタイムを20分間とり,シーター,モルダー(ナショナルMFG製)を通した生地をワンローフ型に成型した。成型生地を型枠に入れ,38℃,湿度85%で70分の最終発酵を行った後,200℃で25分焼成した。焼成1時間後にパンの体積と質量を測定した。その後パンをポリ袋で密閉し、20℃で2日間保存した。
パン粉の1.5cm厚にスライスした食パンのクラム部分をフードミキサーで粉砕し、篩にかけてサイズ分けをし、目開き4メッシュパス6.5メッシュオンのパン粉を試験に供した。
(パン粉の吸油率の測定)
吸油率の測定は全国パン粉工業協同組合連合会によるパン粉の吸油率簡易測定法を用いた。生パン粉の粒度は4メッシュパス6.5メッシュオンのものを用いた。
Figure 2022063243000007
小粒子澱粉はパン粉の吸油を低減する効果が細胞壁よりも高い一方でパンの膨らみを悪くする。細胞壁断片は生地の進展性を向上させてパンの膨らみを良くする(パン粉の良い食感につながり、軽いサクサク感をもたらす)。細胞壁断片と小粒子澱粉が結合した複合体の状態で共存すると食感が良く低吸油性のパン粉ができる。
(電子顕微鏡観察)
小粒子澱粉画分、細胞壁断片画分、及び不溶性画分の電子顕微鏡(卓上電子顕微鏡 TM3000(日立ハイテク))写真を図1~3に示した。
[実施例4:強力粉+不溶性画分の電子顕微鏡観察]
図4に、生パン粉の気泡壁の電子顕微鏡写真(強力粉 不溶性画分無添加 ×1000)を示した。図5に、不溶性画分(凍結解凍)を添加して製造した生パン粉の気泡壁の電子顕微鏡写真(強力粉+白粕5% ×1000)を示した。不溶性画分の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体が、大粒子を取り囲むように分布している構造が認められる。図6は、図5において不溶性画分由来の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体の箇所を示した。点線で示した箇所は、不溶性画分由来の小粒子澱粉の集合体があり、細胞壁断片が認められる部分である。
不溶性画分(凍結解凍)を添加して製造した生パン粉の気泡壁の組織は、小麦粉のグルテンや大粒子澱粉の周囲を多数の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体が取り巻き、生パン粉の気泡壁表面の多くを占める。したがって、生パン粉気泡壁の表面を覆う複合体が吸油を妨げていると考えられた。多数の小粒子澱粉と細胞壁断片からなる複合体は、生や凍結解凍のものをパン材料に添加したほうが凍結乾燥物を添加するよりも、パン粉の気泡壁表面に存在する面積が広い。このことは、生や凍結解凍では細胞壁断片が水分を多量に含んで(飽和状態で)膨潤し、面積が大きくなっているためと考えられる。
不溶性画分は、細胞壁断片表層に小粒子澱粉が多数結合している状態であるため、不溶性画分を添加した生パン粉の気泡壁表面には膨潤した小粒子澱粉が集まった箇所が観察できる。また露出した細胞壁断片が所々で観察される。強力粉(無添加)では表面が滑らかであるが(図4)、不溶性画分の添加では大粒子澱粉やグルテンの周りに不溶性画分が取り巻き、凹凸が見られ滑らかさがない(図5)。なお、水を含んだ不溶性画分を揚げると小麦粉の場合よりも吸油が低いことは明らかとなっている(実施例6)。
したがって、吸油性が低い細胞壁断片と小粒子澱粉から成る複合体がパン生地の組織に練りこまれて分散し、パン気泡壁表面に露出して吸油を妨げることと、吸油性が特に高いグルテンと相互作用をし、覆うことにより吸油を妨げていると考えられる(パン粉のグルテン含量が高まると吸油が高くなることを学会で発表済み(日本食品科学工学会 長澤ら 超強力小麦「ゆめちから」を使用したパン粉の吸油率(2011年))
[実施例5:澱粉及びアラビノキシラン含量]
不溶性画分及び小麦粉について、澱粉及びアラビノキシラン含量を求めた。アラビノキシラン含量は、アラビノース、キシロースの含量測定値から、脱水縮合を考慮し、計算により求めた。なおアラビノース、キシロースの測定は、日本食品分析センターに依頼した。
澱粉の測定は、日本食品分析センターに依頼し、酵素法で行った。不溶性画分から水溶性の低分子等を除去する操作をし、加熱糊化させた後にグルコアミラーゼを添加し、加水分解をさせた。その後定容してろ過をし、ろ液中のグルコースをムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法により定量した。グルコース含量から以下の式により澱粉含量を算出した。
澱粉含量(g/100g)=グルコース含量(g/100g)×0.9
Figure 2022063243000008
含量は乾物換算による。
白粕中の澱粉に占める10μm以下の小粒子澱粉粒数の百分率、及び10μmより大きい大粒子澱粉粒数の百分率は、各不溶性画分の電顕写真2枚から粒子数を数えて求めた平均値。
澱粉に占める10μm以下の小粒子澱粉、及び10μmより大きい大粒子澱粉の質量の百分率は、参考文献より小粒子澱粉の平均粒径3.4μmと大粒子澱粉の平均粒径25.1μmとし、大粒子澱粉の半径が小粒子澱粉の約7.4倍と算出した。電子顕微鏡写真から大粒子澱粉の厚さが小粒子澱粉の粒径の1.49倍であることから、大粒子澱粉の体積は小粒子澱粉の体積の81.1倍となる。この体積比を質量比として小粒子澱粉:大粒子澱粉=1:81.1(質量比)と試算した。
電子顕微鏡写真から数えた粒子数をそれぞれの質量比に乗じて、白粕中の澱粉に占める10μm以下の小粒子澱粉の質量の百分率及び10μmより大きい大粒子澱粉の質量の百分率(%)を求めた。
10μm以下の小粒子澱粉(%)及び10μmより大きい大粒子澱粉(%)は、白粕の澱粉含量と上記澱粉に占める10μm以下の小粒子澱粉の質量の百分率及び10μmより大きい大粒子澱粉の質量の百分率(%)から求めた。
参考文献 高橋ら「小麦澱粉粒径の相違によるアミログラムの変化について」澱粉工業学会誌 第5巻 第2号 20-26(1957)
Figure 2022063243000009
不溶性画分のアラビノキシラン含量は原料の小麦粉の銘柄や等級の違いにより差があるが、小麦自体のアラビノキシラン含量より高いことが認められた。不溶性画分の小粒子デンプン含量は原料の小麦粉の銘柄や等級の違いにより差があることが認められた。品種間で細胞壁の厚さが異なるため、アラビノキシラン含量とも関連する。
[実施例6:不溶性画分を含む揚げ物]
(揚げ玉の作製)
50mlの遠沈管に小麦粉2gと蒸留水を入れ、均一になるまで小麦粉を分散させてバッターを作製した。不溶性画分(白粕)を添加する際は20%~70%を置換添加した。蒸留水の加水量は小麦粉に対して200%を基本とし、バッターの粘性に応じて加水率を調整した。フライヤーに2.6Lのサラダオイル(日清オイリオ社製)を入れ、180℃に調温し、1ml用のマイクロピペットを用いてバッターをあらかじめ油中に設置している茶こしの中へ20秒間滴下した。180℃で3分間揚げた後に、3分間空中で茶こしのまま油切りをした。油切りした揚げ玉をキムタオル上に均一に広げ、15分間放置し、余分な油を取り除き回収した。
(揚げ玉の吸油率の測定)
揚げ玉の吸油率の測定は脂肪抽出装置(FOSS)を用いてソックスレー抽出法で行い、粗脂肪含量から吸油率を求めた。
揚げ玉に使用した小麦粉は市販の薄力粉と「ゆめちから」を用いた。置換添加する不溶性画分(白粕の凍結乾燥物)は超強力粉「ゆめちから」、「みのりのちから」及び「ゆめちから2020」由来を用いた。さらに、前述の製造例2で製造された大麦粉(ビューファイバー 豊橋糧食工業)由来の細胞壁断片と澱粉から成る不溶性画分(小麦粉から分離した白粕に相当する画分)を用いた。小麦粉由来の不溶性画分の置換添加では吸油性に品種間差が認められたが、いずれの品種の不溶性画分を添加しても揚げ玉の吸油率が低減した。一般に小麦粉に対する加水率が多い場合、吸油が増加する傾向にあるが、加水率が多い「みのりのちから」及び「ゆめちから2020」由来の不溶性画分添加でも吸油が低減した。また、「ゆめちから」の不溶性画分から分離した小粒子澱粉画分及び細胞壁断片画分を市販薄力粉に20%置換添加した場合、それぞれ吸油率の低減が11.4%、10.3%であり、分離前の白粕の細胞壁断片に澱粉が結合した状態である方が揚げ玉の吸油低減に効果的であることが強く示唆された。さらに、「ゆめちから」の小麦粉に対して「ゆめちから」の不溶性画分を50%置換添加した揚げ玉は市販薄力粉のものと比較して吸油率が41.7%低減した。「ゆめちから」のようなタンパク質含量が高く、質が強靭である小麦粉は、単独ではグルテンの粘りが強く膨化が悪いため小さい揚げ玉となる。したがって、食感が市販薄力粉よりも硬くなる欠点がある上、タンパク質含量が高いため着色もしやすいが、不溶性画分の添加によりグルテン含量が低減することでこれらの品質面の欠点も改善できた。また、大麦粉由来の不溶性画分の添加においても揚げ玉の吸油率が18.1%低減した。
Figure 2022063243000010
(不溶性画分の揚げ玉)
市販強力粉由来の不溶性画分(白粕)の凍結乾燥物に蒸留水を添加しバッターを作製した。バッターの粘性が市販薄力粉と同等になるように加水率は300%とした。フライヤーに2.6Lのサラダオイル(日清オイリオ社製)を入れ、180℃に調温し、1ml用のマイクロピペットを用いてバッターをあらかじめ油中に設置している茶こしの中へ20秒間滴下した。180℃で3分間揚げた後に、3分間空中で茶こしのまま油切りをした。油切りした揚げ玉をキムタオル上に均一に広げ、15分間放置し、余分な油を取り除き回収した。
(揚げ玉の吸油率の測定)
揚げ玉の吸油率の測定は脂肪抽出装置(FOSS)を用いてソックスレー抽出法で行い、粗脂肪含量から吸油率を求めた。
市販強力粉の不溶性画分(白粕)そのものは比較対照の市販薄力粉よりも加水率が高く吸油が高くなると考えられる条件であるが、吸油率が34.9%低かった。そのため不溶性画分そのものが吸油性の低い食品素材であることが示された。吸油性が低い不溶性画分を食品に添加することにより効果的に吸油を低減することが可能になる。また、不溶性画分を含むバッターで食品をコーティングすることにより食品の吸油性を低減でき、吸油性を低減した天ぷらやフライ食品などの製造に利用できる。
Figure 2022063243000011
[実施例7:不溶性画分を被覆した揚げ物]
(揚げ餃子の皮の作製)
市販餃子の皮(餃子の皮 なま、セブンプレミアム)1枚6gの表面(両面)に「ゆめちから」由来の不溶性画分1g(白粕、水分78.4%)及びこの不溶性画分に「ゆめちから」の小麦粉を25%混合したペースト1g(白粕43%添加(乾物換算))をそれぞれ均一に薄く塗布し、30分間静置した。フライヤーに2.6Lのサラダオイル(日清オイリオ社製)を入れ、180℃に調温し、あらかじめ油中に設置している金網へ餃子の皮3枚を入れ、2.5分間揚げた後に、3分間空中で金網のまま油切りをした。油切りした餃子の皮をキムタオル上に均一に広げ、15分間放置し、裏返しにしてさらに15分間放置して余分な油を取り除き回収した。
(揚げ餃子の皮の吸油率の測定)
揚げ餃子の皮の吸油率の測定は脂肪抽出装置(FOSS)を用いてソックスレー抽出法で行い、粗脂肪含量から吸油率を求めた。
Figure 2022063243000012
市販の餃子の皮を挙げた場合の吸油率に対して、吸油性が低い不溶性画分を薄く被覆した餃子の皮の吸油率は30.5%低かった。また、不溶性画分に「ゆめちから」の小麦粉を25%混合したペーストを同様に被覆した餃子の皮の吸油率は20.5%低かった。したがって、不溶性画分を含む食品素材の食品へのコーティングにより吸油を低減できることが示された。
[実施例8:不溶性画分を含む揚げ物]
(餃子の皮の作製)
揚げ餃子の皮を作製するための麺帯の配合を下表に示した。小麦粉50g(強力粉25g、薄力粉25g)、食塩0.75gとし、加水は配合によって吸水状態、生地形成を確認しながら最適な量とした。下表に配合を示す。小麦粉には強力粉(カメリヤ、日清製粉)及び薄力粉(フラワー、日清製粉)を等量ブレンドしたものを用い(タンパク質含量10%)、不溶性画分(白粕に相当)は「ゆめちから」3等粉由来のものを用い、凍結解凍及び凍結乾燥のものを材料に置換添加した。不溶性画分(赤粕)は「みのりのちから」3等粉由来のものを用い、凍結解凍の状態で材料に置換添加した。食塩は塩事業センターの精製塩を使用した。
Figure 2022063243000013
餃子の皮の作製は上記配合の材料を粉ねり機(KN-60)(エムケー精工製)で混ぜながら蒸留水を滴下し、生地をまとめ上げて、型枠(30mm×100mm)に押し込んで成形した直方体の生地を製麺機リッチメンI型 LM-5062(大和製作所製)により圧延して麺帯を作製した。圧延はロール幅3mm、2.2mm、1.4mm、1.1mm、0.8mmの順で行った。得られた麺帯から型枠を使用して直径58mmの円形に生地をくり抜いて餃子の皮とした。
(揚げ餃子の皮の作製)
フライヤーに2.6Lのサラダオイル(日清オイリオ社製)を入れ、180℃に調温し、あらかじめ油中に設置している金網へ餃子の皮を一組分同時に入れ、油中に沈めた状態で3.5分間揚げた後に、3分間空中で金網のまま油切りをした。油切りした餃子の皮をキムタオル上に均一に広げ、15分間放置し、裏返しにしてさらに15分間放置して余分な油を取り除き回収した。
(揚げ餃子の皮の吸油率の測定)
揚げ餃子の皮の吸油率の測定は脂肪抽出装置(FOSS)を用いてソックスレー抽出法で行い、粗脂肪含量から吸油率を求めた。
Figure 2022063243000014
小麦粉の餃子の皮を揚げた場合の吸油率に対して、ゆめちから不溶性画分(凍結解凍)を10%置換添加した餃子の皮の吸油率は21.5%低く、ゆめちから不溶性画分(凍結乾燥)を20%置換添加した餃子の皮の吸油率は35.6%低かった。また、みのりのちから不溶性画分(赤粕)を15%置換添加した餃子の皮の吸油率は15.7%低かった。したがって、不溶性画分を置換添加することにより餃子の皮の吸油を低減できることが示された。
電子顕微鏡写真の図7、図8はそれぞれ小麦粉及び不溶性画分(凍結解凍)を10%置換添加の餃子の皮の生地を示すが、図8より吸油性が低い不溶性画分(図3Aに代表される)が生地表面を部分的に覆うように露出して存在する他、生地内部にも分布することから餃子の皮の吸油性が低減すると考えられる。
[実施例9:不溶性画分を含む食品素材で被覆した揚げ物]
(揚げ餃子の皮の作製)
実施例8と同じ小麦粉の配合で作製した麺帯から調製した餃子の皮に対し、同じ小麦粉の配合の麺帯を内層に、不溶性画分を置換添加した配合で作製した麺帯を外層に用いた3層構造の麺帯から調整した餃子の皮の吸油性を比較した。揚げ餃子の皮を作製するための麺帯の配合を下表に示した。小麦粉による麺帯の配合は、小麦粉50g(強力粉25g、薄力粉25g)、食塩0.75gとし、加水は配合によって吸水状態、生地形成を確認しながら最適な量とした。小麦粉には強力粉(カメリヤ、日清製粉)及び薄力粉(フラワー、日清製粉)を等量ブレンドしたものを用いた(タンパク質含量10%)。不溶性画分(凍結乾燥、白粕に相当)は「ゆめちから」3等粉由来のものを用い、小麦粉に対し20%及び30%置換添加した。ベースとなる小麦粉には強力粉と薄力粉を等量ブレンドしたものと超強力粉(ゆめちから100、江別製粉)を用いた。超強力粉のタンパク質含量は13.5%であるため、不溶性画分20%、30%の置換添加した際に減少するタンパク質含量(グルテン形成能)を補い、生地のタンパク質含量を比較の小麦粉に近似した10%前後に調製するために使用した。食塩は塩事業センターの精製塩を使用した。
Figure 2022063243000015
餃子の皮の作製は上記配合の材料を粉ねり機(KN-60)(エムケー精工製)で混ぜながら蒸留水を滴下し、生地をまとめ上げて、型枠(30mm×100mm)に押し込んで成形した直方体の生地を製麺機リッチメンI型 LM-5062(大和製作所製)により圧延して麺帯を作製した。圧延は小麦粉(単層)の作製ではロール幅3mm、2.2mm、1.4mm、1.1mm、0.8mmの順で行った。3層構造の麺帯の作製では、内層(小麦粉)、外層(不溶性画分20%置換添加2種類及び30%添加、計3種類)となる生地からそれぞれロール幅3mm、2.2mmで圧延した麺帯を作製し、両者を重ねて2.2mmで圧延し、さらに外層となる面が外側になるように2つ折りにしてから2.2mmで圧延し、3層構造の麺帯を作製した。その後、ロール幅1.4mm、1.1mm、0.8mmの順で圧延を行った。得られた麺帯から型枠を使用して直径58mmの円形に生地をくり抜いて餃子の皮とした。
(揚げ餃子の皮の作製)
フライヤーに2.6Lのサラダオイル(日清オイリオ社製)を入れ、180℃に調温し、あらかじめ油中に設置している金網へ餃子の皮を一組分同時に入れ、油中に沈めた状態で3.5分間揚げた後に、3分間空中で金網のまま油切りをした。油切りした餃子の皮をキムタオル上に均一に広げ、15分間放置し、裏返しにしてさらに15分間放置して余分な油を取り除き回収した。
(揚げ餃子の皮の吸油率の測定)
揚げ餃子の皮の吸油率の測定は脂肪抽出装置(FOSS)を用いてソックスレー抽出法で行い、粗脂肪含量から吸油率を求めた。
Figure 2022063243000016
小麦粉(単層)の餃子の皮を揚げた場合の吸油率に対して、小麦粉にゆめちから不溶性画分を20%置換添加した餃子の皮の吸油率は20.6%低く、超強力粉にゆめちから不溶性画分を20%置換添加した餃子の皮の吸油率は18.4%低かった。超強力粉にゆめちから不溶性画分を30%置換添加した餃子の皮の吸油率は31.4%低く、添加量が多い方が吸油率を低減させる効果が大きかった。したがって、不溶性画分を置換添加した麺帯を外層に用い、麺帯の上下を被覆することにより餃子の皮の吸油を低減できることが示された。
本発明により、健康志向の高まりによるカロリー低減の消費者ニーズに合った食品を提供できる。
本発明は、グルテン及び小麦澱粉の工業生産において副生する、ほとんど利用されていない不溶性画分を有効利用するものであり、グルテン及び小麦澱粉の製造においてもメリットがある。
本発明により、良食感、良外観、及び低吸油性のパン粉が製造でき、パン粉、及びフライ食品の製造において有用である。また、フライ食品を製造する際に、油の消費が減らせるメリットがある。

Claims (12)

  1. 穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む、穀粉を含む食品の吸油を抑制するために用いられる、食品素材。
  2. 乾物換算で3.0%以上のアラビノキシランを含む、請求項1に記載の食品素材。
  3. 硬質小麦由来である、請求項1又は2に記載の食品素材。
  4. 下記を原材料として含む、食品:
    穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む食品素材、及び穀粉。
  5. 原材料に穀粉を含む流動性がない生地を用いて製造される食品に対し、原材料の穀粉に対する穀粉から分離した食品素材の置換割合が1~40%であり、水分調整により流動性がない生地に調製して製造される、請求項4に記載の食品。
  6. 原材料に穀粉を含む流動性がある生地を用いて製造される食品に対し、原材料の穀粉に対する穀粉から分離した食品素材の置換割合が5%以上であり、水分調整により流動性がある生地に調製して製造される、請求項4に記載の食品。
  7. 請求項5及び請求項6に記載の生地で被覆して製造される、食品。
  8. パンを細断したもの又はパン粉である、請求項4又は5に記載の食品。
  9. 請求項8に記載のパンを細断したもの又はパン粉を使用した、食品。
  10. 下記の工程を含む、穀粉を含む食品の製造方法:
    (1) 穀物由来であり、穀粉から分離した細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を含む食品素材を準備し、
    (2) 食品素材と穀粉を混合し、
    (3) 混合物を油を用いて調理する。
  11. 細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を有効成分として含む、吸油抑制剤。
  12. 穀粉を含む食品の吸油を抑制する方法であって、
    細胞壁断片に澱粉が結合している複合体を、穀粉に混合する工程を含む、方法。
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