JP2015147875A - 温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法、温間・熱間塑性加工における水性潤滑剤の循環方法、及び、被加工材の温間・熱間塑性加工方法 - Google Patents

温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法、温間・熱間塑性加工における水性潤滑剤の循環方法、及び、被加工材の温間・熱間塑性加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】原液のロスが少なく、潤滑剤を安定して循環使用することが可能な温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法及び循環方法、並びに、当該再生方法や循環方法を利用しながら被加工材を温間・熱間塑性加工する方法を提供する。
【解決手段】温間・熱間塑性加工を経た潤滑剤の動粘度を測定し、測定値に基づいて潤滑剤に添加する付着性向上剤の添加量を決定し、決定した添加量に基づいて、潤滑剤に付着性向上剤を添加することにより、潤滑剤を再生・循環使用するものとする。
【選択図】図2

Description

本発明は、温間・熱間塑性加工に使用された後の潤滑剤を再生する方法、及び、当該再生方法を利用して潤滑剤を循環させつつ、被加工材の温間・熱間塑性加工を行う方法に関する。
金属塑性加工の技術分野において、被加工材たる金属材料と工具や金型との間に生じる摩擦を低減して、金属材料の塑性変形を円滑に行うとともに、工具や金型の冷却及び保護、並びに、工具や金型からの金属材料の離型を容易にする目的で、様々なタイプの潤滑剤が使用されている。例えば、特許文献1に記載された水溶性潤滑剤組成物は、潤滑性と冷却性とに優れ、温間・熱間塑性加工用潤滑剤として好適である。
特許文献1に記載されたような温間・熱間塑性加工用潤滑剤は循環使用される場合が多い(例えば、特許文献2〜7)。塑性加工に供した潤滑剤を循環させて再利用する場合、潤滑剤の性能低下が問題となる。そのため、従来においては、循環使用時において潤滑剤の性能が低下する場合、適宜、潤滑剤原液を補給することで、潤滑剤の性能を復元させていた。ここで、原液を補給して性能を復元する場合、潤滑剤の導電率や糖度を指標として潤滑剤の管理を行っていた。
特許第3833578号 特開2008−231160号公報 特開2005−230887号公報 特開平7−328888号公報 特開2001−170733号公報 特開2002−224931号公報 実開平5−88850号公報
循環使用時に回収される潤滑剤使用液は使用前と比較して揮発等によって濃縮されている。この場合、水を補給して設定の濃度(上述の通り糖度或いは導電率で管理)に希釈するが、設定の糖度(導電率)に希釈すると潤滑剤としての性能を復元できない場合がある。従来においては、潤滑剤の性能を十分に復元するために、過剰の原液を補給して濃度を増大させる必要があり、原液のロスが多くコストが増大するという問題があった。また、潤滑剤の性能復元処理(再生処理)を定量的に行うことができず、潤滑剤の安定した循環使用が困難となっていた。
そこで本発明は、原液のロスが少なく、温間・熱間塑性加工において潤滑剤を安定して循環使用することが可能な潤滑剤の再生方法及び循環方法、並びに、当該再生方法や循環方法を利用しながら被加工材を温間・熱間塑性加工する方法を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1)温間・熱間塑性加工にて供給された後の潤滑剤使用液は、新液(使用前の潤滑剤)と比較して組成が変化している。
(2)潤滑剤使用液においては、特に付着性を担う成分である付着性向上剤の減少が認められる。
(3)潤滑剤に含まれる付着性向上剤の分析については、NMR、IR等のスペクトル分析にて実施可能であるが、当該分析機器は高価であり、また、温間・熱間塑性加工ラインの現場における実使用には向かない。
(4)潤滑剤に含まれる付着性向上剤の含有量については、潤滑剤の動粘度を測定することにより簡易的且つ定量的に求めることができる。
(5)すなわち、潤滑剤使用液の再生時及び循環使用時に、潤滑剤使用液の動粘度を指標として、使用前後における当該動粘度の変化に基づいて付着性向上剤を適宜添加するようにすれば、原液のロスを最小限にとどめつつ定量的に潤滑剤使用液を再生することができ、潤滑剤を安定して循環使用することができる。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。すなわち、
第1の本発明は、温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液の動粘度を測定する工程と、動粘度の測定値に基づいて、潤滑剤使用液に添加する付着性向上剤の添加量を決定する工程と、決定した添加量に基づいて、潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する工程と、を備えることを特徴とする、温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法である。
本発明において「温間・熱間塑性加工工程」とは、温間塑性加工工程及び/又は熱間塑性加工工程を意味する。「温間塑性加工工程」とは、例えば鋼を被加工材の材質とした場合は600℃以上1000℃未満の温度において被加工材の塑性加工を行う工程を意味する。「熱間塑性加工工程」とは1000℃以上1300℃以下の温度において被加工材の塑性加工を行う工程を意味する。「動粘度を測定する」とは、粘度計等を用いて動粘度を直接測定する形態の他、動粘度と相関関係のある物性を測定することにより動粘度を間接的に測定する形態も含まれるものとする。「被加工材」とは、温間・熱間組成加工工程によって加工され得る被加工材であれば特に限定されるものではない。例えば、各種金属材を用いることができる。「付着性向上剤」とは、被加工材表面や金型表面或いは工具表面へ潤滑剤成分が付着することを可能とし、さらに、付着量を増大させるものを意味する。
第1の本発明において、潤滑剤使用液を水で希釈する工程をさらに備えることが好ましい。特に、潤滑剤使用液の動粘度を測定する前に、潤滑剤使用液を水で希釈する工程を備えることが好ましい。通常、潤滑剤を温間・熱間塑性加工に用いた場合は揮発等によって全体として成分が濃縮される。このように濃縮された潤滑剤使用液を水で希釈することで、付着性の成分量を知るための適切な形態とすることができる。
潤滑剤使用液を水で希釈する際は、該潤滑剤使用液の糖度及び/又は導電率を指標とすることが好ましい。すなわち、潤滑剤使用液の糖度及び/又は導電率を測定し、糖度及び/又は導電率の測定値に基づいて該潤滑剤使用液の希釈率を決定し、決定した希釈率に基づいて該潤滑剤使用液を水で希釈するとよい。例えば、使用前の潤滑剤と糖度及び/又は導電率が同等となるように、潤滑剤使用液を水で希釈するとよい。
第1の本発明において、付着性向上剤が、水に溶解することで粘度を大きく増加させる化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。そのような化合物としては、イソブチレン−マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩;ポリアクリル酸のアルカリ金属塩;アクリル酸−マレイン酸共重合物のアルカリ金属塩;ヒドロキシエチルセルロース;カルボキシメチルセルロース及びそのアルカリ金属塩;などが挙げられる。このような付着性向上剤を含ませることにより、潤滑性に優れた温間・熱間塑性加工用潤滑剤とすることができる。
第1の本発明において、温間・熱間塑性加工工程にて用いられる潤滑剤には、付着性向上剤に加えて、耐熱性に優れる成分、潤滑性に優れる成分、冷却性を向上させる成分が含有されていることが好ましい。例えば、イソフタル酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)、アジピン酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)から選ばれる少なくとも1種以上が含有されていることが好ましい。或いは、アルカリ金属炭酸塩(特に炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム)が含有されていることが好ましい。これにより、潤滑性や冷却性に一層優れた温間・熱間塑性加工用潤滑剤とすることができる。
第2の本発明は、温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液を回収する工程と、第1の本発明に係る方法により、潤滑剤使用液を潤滑剤へと再生する工程と、再生した潤滑剤を再び温間・熱間塑性加工工程にて用いる工程と、を繰り返すことを特徴とする、温間・熱間塑性加工工程における潤滑剤の循環方法である。
第3の本発明は、第1の本発明に係る再生方法により再生した温間・熱間塑性加工用潤滑剤を用いて被加工材を加工する、被加工材の温間・熱間塑性加工方法である。
第4の本発明は、第2の本発明に係る循環方法により潤滑剤を循環させながら被加工材の温間・熱間塑性加工を行う、被加工材の温間・熱間塑性加工方法である。
本発明においては、潤滑剤使用液の再生時及び循環使用時に、潤滑剤使用液の動粘度を指標として、当該動粘度の変化に基づいて付着性向上剤を適宜添加するものとしている。これにより、再生時の原液のロスが少なく、また、潤滑剤使用液を定量的に再生することができる。これにより、温間・熱間塑性加工において潤滑剤を安定して循環使用することができ、被加工材を安定して温間・熱間塑性加工に供することができる。
温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法(S10)を説明するための図である。 温間・熱間塑性加工における潤滑剤の循環方法(S20)を説明するための図である。 実施例において使用した模擬装置を説明するための図である。 実施例において使用した模擬装置を説明するための図である。 実施例において使用した模擬装置を説明するための図である。
1.温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法
図1に一実施形態に係る本発明の温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法(再生方法S10)を示す。図1に示すように、再生方法S10は、温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液を水で希釈する工程(糖度及び/又は導電率を測定する工程)S1と、当該水で希釈した後の潤滑剤使用液の動粘度を測定する工程S2と、動粘度の測定値に基づいて、潤滑剤使用液に添加する付着性向上剤の添加量を決定する工程S3と、決定した添加量に基づいて、潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する工程S4とを備えている。
通常、温間・熱間塑性加工工程においては、被加工材と工具や金型との間に生じる摩擦を低減して、被加工材の塑性変形を円滑に行うとともに、工具や金型の冷却及び保護、並びに、工具や金型からの被加工材の離型を容易にするために工具或いは金型へと潤滑剤を供給する。工具或いは金型へと供給された潤滑剤は、その機能を発揮した後(または過剰に供給されて回収される潤滑剤も含む)、工具或いは金型から流れ落ち、系外へと排出される。再生方法S10は、このように系外へと排出された潤滑剤使用液を循環・再利用すべく、当該潤滑剤使用液を潤滑剤へと再生するものである。
1.1.工程S1
工程S1においては、被加工材の温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液を水で希釈する。
温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液は、使用前の潤滑剤と比較して濃縮されている場合がある。そのため、再生、再利用の際は、潤滑剤使用液を水で希釈することが好ましいといえる。
潤滑剤使用液を水で希釈する場合は、潤滑剤使用液の糖度及び/又は導電率を測定し、糖度及び/又は導電率の測定値に基づいて該潤滑剤使用液の希釈率を決定し、決定した希釈率に基づいて該潤滑剤使用液を水で希釈することができる。例えば、使用前の潤滑剤と糖度及び/又は導電率が同等となるように、潤滑剤使用液を水で希釈するとよい。糖度や導電率の測定手段は、特に限定されるものではなく、公知の手段を用いることができる。
1.2.工程S2
工程S2においては、水で希釈した後の潤滑剤使用液の動粘度を測定する。
本発明者らは繰り返しの研究により、潤滑剤使用液において、使用前の潤滑剤と比較して、特に付着性を担う成分である付着性向上剤が減少することを知見した。すなわち、潤滑剤使用液は付着性向上剤の減少の分だけ性能が劣化しており、潤滑剤使用液を潤滑剤に再生するにあたっては付着性向上剤の添加が効果的である。
潤滑剤及び潤滑剤使用液における付着性向上剤の分析については、NMR、IR等のスペクトル分析にて実施可能ともいえるが、当該分析機器は高価であり、また、温間・熱間塑性加工における実使用には向かない。一方、本発明者らが鋭意研究を進めたところ、潤滑剤における付着性向上剤の含有量と潤滑剤の動粘度との間には相関関係があることを知見した。そこで、本発明では、潤滑剤使用液における付着性向上剤の含有量(付着性向上剤の減少量)について、潤滑剤使用液の動粘度を測定することにより簡易的且つ定量的に求めることとしている。
工程S2において、潤滑剤使用液の動粘度を測定する手段としては、特に限定されるものではなく、公知の動粘度測定手段(粘度計)を用いて測定すればよい。或いは、潤滑剤使用液の動粘度と他の物性との関係を特定し、当該他の物性を測定することによって間接的に動粘度を測定してもよい。
1.3.工程S3
工程S3においては、工程S2において測定した潤滑剤使用液の動粘度の測定値に基づいて、潤滑剤使用液に添加する付着性向上剤の添加量を決定する。
上述の通り、温間・熱間塑性加工に供される前の潤滑剤と潤滑剤使用液とでは、付着性向上剤が減少したことによって動粘度が変化する。潤滑剤における付着性向上剤の含有量と潤滑剤の動粘度との間には相関関係があるため、例えば、当該含有量と動粘度との関係を予め数式化しておくことで、動粘度の変化量から付着性向上剤の減少量を容易に算出することができる。工程S3では、このようにして算出した付着性向上剤の減少量そのものを付着性向上剤の添加量として決定することができる。
ただし、算出された当該減少量と付着性向上剤の添加量とが、必ずしも一致する必要はない。例えば、被加工材の材質を途中で変更する場合や、温間・熱間塑性加工の温度設定を途中で変更する場合等、温間・熱間塑性加工の条件変化に応じて、付着性向上剤の添加量も適宜変更可能である。いずれにしても、工程S3では、潤滑剤使用液の動粘度を指標として、付着性向上剤の添加量を決定することが重要である。
1.4.工程S4
工程S4においては、工程S3において決定した添加量に基づいて、潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する。これにより、潤滑剤使用液は使用前の潤滑剤と同等の性能に復元され、改めて温間・熱間塑性加工用潤滑剤として使用可能となる。
以上の通り、再生方法S10によれば、潤滑剤使用液の再生時に、潤滑剤使用液の動粘度を指標として、当該動粘度の変化に基づいて付着性向上剤を適宜添加するものとしている。これにより、原液のロスが少なく、簡易的且つ定量的に潤滑剤を再生できるとともに、潤滑剤を安定して循環使用することが可能となる。
尚、上記説明においては、潤滑剤使用液を水で希釈する工程S1を備えるものとして説明した。しかしながら、例えば、金型の外部冷却水を使用する場合や、金型およびプレス機周辺を洗浄するために使用する水が潤滑剤使用液に混入するような場合は、必ずしも潤滑剤使用液は濃縮されない。このような場合は、工程S1を省略することも可能である。また、外部冷却水等が潤滑剤使用液に常に一定量混入するように制御した場合、糖度及び/又は導電率を測定して水希釈率を決定する必要もない。ただし、より精密に潤滑剤を管理する観点からは、動粘度を測定する前に濃縮された分だけ水で希釈する工程を備えることが好ましく、水希釈率については糖度及び/又は導電率を指標として決定することが好ましい。
また、上記説明においては、工程S2の前に、潤滑剤使用液を水で希釈する工程S1を備えるものとして説明した。しかしながら、工程S1を行うタイミングについてはこれに限定されるものではない。例えば、温間・熱間塑性加工工程にて用いられることにより濃縮された潤滑剤使用液と同等の糖度及び/又は導電率或いはその他物性を有する潤滑剤を別途用意し、当該別途用意した潤滑剤と同等の動粘度となるまで潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する。その後、実使用時の潤滑剤と同等の希釈率にまで、潤滑剤使用液を水で希釈することにより、所望の希釈率を有する潤滑剤として再生することができる。このように、工程S1は、工程S2の後で行ってもよい。
2.温間・熱間塑性加工用潤滑剤の循環方法
図2に一実施形態に係る本発明の温間・熱間塑性加工用潤滑剤の循環方法(循環方法S20)を示す。図2に示すように、循環方法S20においては、温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液を回収する工程S11と、再生方法S10により潤滑剤使用液を潤滑剤へと再生する工程(回収された潤滑剤使用液を水で希釈する工程S1、希釈した潤滑剤使用液の動粘度を測定する工程S2、動粘度の測定値に基づいて、潤滑剤使用液に添加する付着性向上剤の添加量を決定する工程S3、及び、決定した添加量に基づいて、潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する工程S4、ただし工程S1は任意工程)と、再生した潤滑剤を再び温間・熱間塑性加工工程にて用いる工程S12と、が繰り返し行われる。
2.1.工程S11
工程S11においては、潤滑剤を温間・熱間塑性加工工程にて供給した後、当該温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液を回収する。温間・熱間塑性加工工程から潤滑剤使用液を回収する手段・方法については特に限定されるものではない。金型或いは工具から流れ落ちた潤滑剤使用液を、配管等によって誘導して回収する形態等が挙げられる。
2.2.工程S1〜S4(工程S10)
循環方法S20において、回収した潤滑剤使用液は、上述した再生方法S10を経て潤滑剤へと再生される。再生方法S10については上述した通りであり、説明を省略する。
2.3.工程S12
工程S12においては、工程S1〜S4(或いは工程S2〜S4)を経て得られる潤滑剤を再び温間・熱間塑性加工工程における潤滑剤として用いる。本発明では、潤滑剤使用液に付着性向上剤を必要分だけ添加することで、潤滑性能等を十分に復元することができ、温間・熱間塑性加工工程を問題なく行うことができる。
循環方法S20では、このように工程S11、工程S10、工程S12、…を繰り返し行う。循環方法S20によれば、潤滑剤の循環時に、潤滑剤の動粘度を指標として、当該動粘度の変化に基づいて付着性向上剤を適宜添加して潤滑剤の性能を一定に保つものとしている。これにより、原液のロスが少なく、簡易的且つ定量的に潤滑剤使用液を再生することができ、潤滑剤を安定して循環使用することが可能となる。
3.温間・熱間塑性加工方法
本発明は、上記した再生方法や循環方法の他、温間・熱間塑性加工方法としての側面も有する。すなわち、上記の再生方法により再生してなる温間・熱間塑性加工用潤滑剤を用いて被加工材を加工する、被加工材の温間・熱間塑性加工方法である。或いは、上記の循環方法により潤滑剤を循環させながら被加工材の温間・熱間塑性加工を行う、被加工材の温間・熱間塑性加工方法である。
被加工材としては、塑性変形により加工可能なものを特に限定されることなく用いることができる。特に金属材が好ましく、中でも鉄鋼材、ステンレス鋼材、アルミニウム又はアルミニウム合金材、チタン又はチタン合金材、マグネシウム合金材、銅又は銅合金材等が好ましい。被加工材の形態は塑性加工に応じて適宜選択されるものであり、板状、塊状、棒状等の種々の形態が採用できる。
塑性加工としては、圧延加工、押出加工、鍛造加工、引抜加工、プレス加工、絞り加工等、種々の塑性加工を適用可能である。本発明がより好適に適用され、効果も顕著となる観点からは、特に、鍛造加工、中でも温間・熱間鍛造加工が好ましい。
塑性加工における条件(加工温度、加工時の圧力、加工時間等)は、被加工材の材質、用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、鉄鋼材の温間塑性加工を行う場合は、加工温度は600℃以上1000℃未満とすることが好ましい。一方、熱間塑性加工を行う場合は、加工温度は1000℃以上1300℃以下とすることが好ましい。
本発明に係る温間・熱間塑性加工方法においては、上記の再生方法や循環方法を利用することにより、潤滑剤の性能を維持することができ、潤滑剤を安定して循環させながら被加工材を温間・熱間塑性加工することができる。
4.潤滑剤について
本発明に適用可能な好ましい潤滑剤(温間・熱間塑性加工工程にて用いられる潤滑剤)について説明する。
温間・熱間塑性加工工程において用いられる水性の潤滑剤は、通常、潤滑剤原液を任意に水で希釈して得られるものである。潤滑剤には必須成分として付着性向上剤が含まれる。付着性向上剤は、潤滑剤の被加工材表面や金型表面或いは工具表面への付着性を向上させる成分である。このような付着性向上剤としては、温間・熱間塑性加工に用いられる潤滑剤において、従来から含まれていたものを特に限定されることなく用いることができる。特に、本発明による効果が顕著となる観点から、イソブチレン−マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩;ポリアクリル酸のアルカリ金属塩;アクリル酸−マレイン酸共重合物のアルカリ金属塩;ヒドロキシエチルセルロース;カルボキシメチルセルロース及びそのアルカリ金属塩;等が好ましい。
潤滑剤における付着性向上剤の含有量は特に限定されるものではないが、潤滑剤全体を基準(100質量%)として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。上述したように、本発明に係る各種方法においては、潤滑剤の使用後、潤滑剤使用液の動粘度を指標として付着性向上剤が適宜補給される。これにより、循環使用時において、潤滑剤には一定の量の付着性向上剤が含有されており、潤滑剤としての性能が維持される。
潤滑剤には、付着性向上剤の他、希釈水、並びに、任意に、潤滑性を向上させる成分(潤滑性向上成分、例えば、イソフタル酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)、トリメリット酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)、ピロメリット酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)、アジピン酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)、マレイン酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)、セバシン酸のアルカリ金属塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)等が好ましい)、ホウ酸およびそのアルカリ金属塩、冷却性を向上させる成分(冷却性向上成分、例えば、アルカリ金属炭酸塩(特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類等、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール類が好ましい)、そのほかに防腐剤、消泡剤、が含まれていてもよい。特に、付着性を向上させる成分、潤滑性を向上させる成分、希釈水が含まれていることが好ましい。これら成分によって、潤滑性や冷却性等の温間・熱間塑性加工用潤滑剤としての性能が一層向上する。
潤滑剤において、潤滑性を向上させる成分の含有量は、潤滑剤全体を基準(100質量%)として、1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。また、冷却性を向上させる成分の含有量は、潤滑剤全体を基準(100質量%)として、0.1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。
尚、本発明において、付着性向上剤以外のその他成分については、温間・熱間塑性加工後の潤滑剤使用液における減少量が少ない(むしろ、揮発により濃縮される場合が多い)。そのため、上記した本発明に係る各種方法において、これらその他成分の補給については任意である。言い換えれば、本発明では、動粘度を指標として付着性向上剤を適宜添加することを必須とし、それに加えて、何らかの指標を用いて上記したその他成分を適宜添加するものとしてもよい。例えば、潤滑剤の糖度や導電率を指標として、その他成分を適宜補給するものとしてもよい。
以下、実施例に基づいて、本発明についてさらに詳述する。
1.使用前後における潤滑剤の変化について
1.1.模擬実験の内容
潤滑剤原液1の10%水希釈液(潤滑剤原液が全体の10体積%となるように水を加えてなる新液。以下、「新液1」という場合がある)について、使用前後における組成の変化を確認すべく、模擬実験を行った。潤滑剤原液1の組成(すなわち10%希釈前の組成)は、下記表1に示した通りである。尚、付着性向上剤A1としてイソブチレン−マレイン酸共重合体のナトリウム塩(分子量約10万)を、潤滑性向上剤B1としてイソフタル酸のナトリウム塩を、冷却性向上剤C1として炭酸ナトリウムを用いた。
図3に示したような模擬装置を用いて、200〜300℃に加熱した鋼板上に上記新液1をスプレーして、鋼板上から流れ落ちた液を回収した。回収液は糖度及び導電率を測定することにより20〜30%に濃縮されていることが分かった。回収液について糖度及び導電率を指標として再び10%に希釈したうえで、200〜300℃に加熱した鋼板上にスプレーして、鋼板上から流れ落ちた液を回収した。この操作を3回繰り返して、評価用の回収液を得た。
1.2.回収液の分析
上述の通り回収液は濃縮して回収されているため、糖度及び導電率が使用前の新液1と同等となるように水で希釈を行った。このようにして希釈した回収液(以下、「評価液1」という)の組成と、新液1の組成とを比較した。結果を以下の表2に示す。
表2に示す結果から明らかなように、評価液1は、糖度及び導電率を新液1と一致させた場合、新液と比較して動粘度が大きく低下した。評価液1と新液1についてそれぞれ組成を分析した結果、評価液1においては付着性向上剤の減少が認められ、これが動粘度の低下に繋がっていることが確認された。
2.性能評価試験
2.1.潤滑剤の調製
(実施例1)
上記した評価液1の動粘度が新液1と同等となるまで、評価液1に付着性向上剤A1を添加し、実施例1に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液1(100質量部)に対して、付着性向上剤A1’を1質量部添加することで、動粘度が新液と同等である潤滑剤が得られた。
尚、付着性向上剤A1’は付着性向上剤A1(15質量%)と水(85質量%)とからなる混合液である。すなわち、実施例1に係る潤滑剤は、評価液1(100質量部)に対して付着性向上剤A1を0.15質量部、水を0.85質量部添加したものに相当する。
(比較例1)
評価液1(100質量部)に対して、潤滑剤原液1を1質量部添加し、比較例1に係る潤滑剤とした。
(比較例2)
評価液1の動粘度が新液と同等となるまで、評価液1に潤滑剤原液1を添加し、比較例2に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液1(100質量部)に対して、潤滑剤原液を3質量部添加することで、動粘度が新液1と同等である潤滑剤が得られた。
(参考例1)
上記の新液1をそのまま潤滑剤として用いた。
2.2.付着性試験
図4に示したような模擬装置を用いて、被加工材表面への潤滑剤の付着性を評価した。具体的には、200℃に加熱した鋼板の表面に潤滑剤を同条件にてスプレー塗布し、鋼板に付着した成分の重量を測定した。重量が多いほど付着性に優れるといえる。評価結果を下記表5に示す。
2.3.潤滑性試験
図5に示したような模擬装置を用いてスパイクテストを行い、潤滑剤の潤滑性を評価した。具体的には、加熱した金型上に潤滑剤をスプレー塗布したうえで被加工材(φ25mm、高さ30mmの円柱状のS45C材、加熱温度900℃)を載置し、プレスして塑性加工を行った。成形荷重が低いほど潤滑性に優れるといえる。スパイクテストの試験条件の詳細を下記表3に、潤滑剤のスプレー塗布の条件を下記表4に、評価結果を下記表5に示す。
表5に示す結果から明らかなように、評価液の動粘度を指標として付着性向上剤を補給した実施例1に係る潤滑剤は、参考例1に係る新液と同等の付着性能、潤滑性能を示した。
一方、評価液に実施例1における付着性向上剤の添加量と同量の原液を添加した比較例1に係る潤滑剤は、新液と比較して動粘度が十分に復元されず、付着性能及び潤滑性能ともに、新液よりも劣る結果となった。
また、評価液の動粘度が新液と同等となるまで評価液に原液を添加した比較例2に係る潤滑剤は、新液と同等の付着性能、潤滑性能を示したが、糖度や導電率が著しく上昇しており、付着性に関与しない潤滑成分を不要に添加する結果となり、原液のロスが多かった。
3.潤滑剤成分を変更した場合
付着性向上剤A1以外の付着性向上剤、潤滑性向上剤B1以外の潤滑性向上剤、或いは、冷却性向上剤C1以外の冷却性向上剤を用いた場合について、上記と同様の手法にて試験を行った。
潤滑剤原液2〜5の10%水希釈液(潤滑剤原液が全体の10体積%となるように水を加えてなる新液。以下、それぞれ「新液2」、「新液3」、「新液4」、「新液5」という場合がある。)について、上記した方法と同様の方法にて評価液を作製し、性能を評価した。
各潤滑剤原液の組成(すなわち10%希釈前の組成)は、下記表6〜9に示した通りである。尚、付着性向上剤A2としてアクリル酸−マレイン酸共重合体のナトリウム塩(分子量約7万)を、付着性向上剤A3としてヒドロキシエチルセルロース(分子量約9万)を、付着性向上剤A4として付着性向上剤A1と同じものを、付着性向上剤A5としてイソブチレン−マレイン酸共重合物のカリウム塩(分子量約10万)を、潤滑性向上剤B2としてアジピン酸のナトリウム塩を、潤滑性向上剤B3としてイソフタル酸のカリウム塩を、冷却性向上剤C2として炭酸カリウムを用いた。
図3に示したような模擬装置を用いて、200〜300℃に加熱した鋼板上に新液2〜5のいずれかをスプレーして、鋼板上から流れ落ちた液をそれぞれ回収した。回収液は糖度及び導電率を測定することにより濃縮されていることが分かった。回収液について糖度及び導電率を指標として再び10%に希釈したうえで、200〜300℃に加熱した鋼板上にスプレーして、鋼板上から流れ落ちた液を回収した。この操作を3回繰り返して、評価用の試料液を得た。すなわち、上述の通り回収液は濃縮して回収されているため、糖度及び導電率が使用前の新液2〜5と同等となるように水で希釈を行い、このようにして希釈した回収液をそれぞれ評価液2〜5とした。
3.1.潤滑剤の調製
(実施例2)
上記した評価液2の動粘度が新液2と同等となるまで、評価液2に付着性向上剤A2を添加し、実施例2に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液2(100質量部)に対して、付着性向上剤A2’を1質量部添加することで、動粘度が新液と同等である潤滑剤が得られた。
尚、付着性向上剤A2’は付着性向上剤A2(15質量%)と水(85質量%)とからなる混合液である。すなわち、実施例2に係る潤滑剤は、評価液2(100質量部)に対して付着性向上剤A2を0.15質量部、水を0.85質量部添加したものに相当する。
(実施例3)
上記した評価液3の動粘度が新液3と同等となるまで、評価液3に付着性向上剤A3を添加し、実施例3に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液3(100質量部)に対して、付着性向上剤A3’を1質量部添加することで、動粘度が新液と同等である潤滑剤が得られた。
尚、付着性向上剤A3’は付着性向上剤A3(15質量%)と水(85質量%)とからなる混合液である。すなわち、実施例3に係る潤滑剤は、評価液3(100質量部)に対して付着性向上剤A3を0.15質量部、水を0.85質量部添加したものに相当する。
(実施例4)
上記した評価液4の動粘度が新液4と同等となるまで、評価液4に付着性向上剤A4(付着性向上剤A1)を添加し、実施例4に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液4(100質量部)に対して、付着性向上剤A4’を1質量部添加することで、動粘度が新液と同等である潤滑剤が得られた。
尚、付着性向上剤A4’としては付着性向上剤A1’と同様のものを用いた。すなわち、実施例4に係る潤滑剤は、評価液4(100質量部)に対して付着性向上剤A1を0.15質量部、水を0.85質量部添加したものに相当する。
(実施例5)
上記した評価液5の動粘度が新液5と同等となるまで、評価液5に付着性向上剤A5を添加し、実施例5に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液5(100質量部)に対して、付着性向上剤A5’を1質量部添加することで、動粘度が新液と同等である潤滑剤が得られた。
尚、付着性向上剤A5’は付着性向上剤A5(15質量%)と水(85質量%)とからなる混合液である。すなわち、実施例5に係る潤滑剤は、評価液5(100質量部)に対して付着性向上剤A5を0.15質量部、水0.85質量部添加したものに相当する。
(比較例3)
評価液2(100質量部)に対して、潤滑剤原液2を1質量部添加し、比較例3に係る潤滑剤とした。
(比較例4)
評価液2の動粘度が新液2と同等となるまで、評価液2に潤滑剤原液2を添加し、比較例4に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液2(100質量部)に対して、潤滑剤原液を3質量部添加することで、動粘度が新液2と同等である潤滑剤が得られた。
(比較例5)
評価液3(100質量部)に対して、潤滑剤原液3を1質量部添加し、比較例5に係る潤滑剤とした。
(比較例6)
評価液3の動粘度が新液3と同等となるまで、評価液3に潤滑剤原液3を添加し、比較例6に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液3(100質量部)に対して、潤滑剤原液3を3質量部添加することで、動粘度が新液3と同等である潤滑剤が得られた。
(比較例7)
評価液4(100質量部)に対して、潤滑剤原液4を1質量部添加し、比較例7に係る潤滑剤とした。
(比較例8)
評価液4の動粘度が新液4と同等となるまで、評価液4に潤滑剤原液4を添加し、比較例8に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液4(100質量部)に対して、潤滑剤原液4を3質量部添加することで、動粘度が新液4と同等である潤滑剤が得られた。
(比較例9)
評価液5(100質量部)に対して、潤滑剤原液5を1質量部添加し、比較例9に係る潤滑剤とした。
(比較例10)
評価液5の動粘度が新液5と同等となるまで、評価液5に潤滑剤原液5を添加し、比較例10に係る潤滑剤とした。具体的には、評価液5(100質量部)に対して、潤滑剤原液5を3質量部添加することで、動粘度が新液5と同等である潤滑剤が得られた。
(参考例2)
上記の新液2をそのまま潤滑剤として用いた。
(参考例3)
上記の新液3をそのまま潤滑剤として用いた。
(参考例4)
上記の新液4をそのまま潤滑剤として用いた。
(参考例5)
上記の新液5をそのまま潤滑剤として用いた。
3.2.付着性試験
図4に示したような模擬装置を用いて、被加工材表面への潤滑剤の付着性を評価した。具体的には、200℃に加熱した鋼板の表面に潤滑剤を同条件にてスプレー塗布し、鋼板に付着した成分の重量を測定した。重量が多いほど付着性に優れるといえる。評価結果を下記表10〜13に示す。
3.3.潤滑性試験
図5に示したような模擬装置を用いてスパイクテストを行い、潤滑剤の潤滑性を評価した。具体的には、加熱した金型上に潤滑剤をスプレー塗布したうえで被加工材(φ25mm、高さ30mmの円柱状のS45C材、加熱温度900℃)を載置し、プレスして塑性加工を行った。試験条件やスプレー条件については上述した通りである。成形荷重が低いほど潤滑性に優れるといえる。評価結果を下記表10〜13に示す。
表10〜13示す結果から明らかなように、評価液の動粘度を指標として付着性向上剤を補給した実施例2〜5に係る潤滑剤は、それぞれ参考例2〜5に係る新液と同等の付着性能、潤滑性能を示した。
一方、評価液に、実施例2〜5における付着性向上剤の添加量と同量の原液を添加した比較例3、5、7及び9に係る潤滑剤は、新液と比較して動粘度が十分に復元されず、付着性能及び潤滑性能ともに、新液よりも劣る結果となった。
また、評価液の動粘度が新液と同等となるまで評価液に原液を添加した比較例4、6、8及び10に係る潤滑剤は、新液と同等の付着性能、潤滑性能を示したが、糖度や導電率が著しく上昇しており、付着性に関与しない潤滑成分を不要に添加する結果となり、原液のロスが多かった。
4.加工条件を変更した場合
上記実験では900℃における潤滑性を評価したが、それよりも低温或いは高温の条件においても、所望の効果が奏されることを確認すべく、さらに試験を行った。具体的には、実施例1、比較例1、2及び参考例1に係る潤滑剤を用いて、700℃における潤滑性評価、1100℃における潤滑性評価を行った。結果を以下の表14に示す。
表14に示す結果から明らかなように、評価液の動粘度を指標として付着性向上剤を補給した実施例1に係る潤滑剤は、700℃、900℃、1100℃のいずれの加工温度においても、新液1に匹敵する潤滑性を示すことが分かる。
以上の結果から、温間・熱間塑性加工に使用した潤滑剤を再生し、循環使用するにあたっては、使用前後における潤滑剤の動粘度の変化を指標として、当該動粘度が使用前の潤滑剤と同等となるように付着性向上剤を補給することが極めて有効であることが分かった。
尚、上記の実施例では、潤滑剤使用液に相当する評価液100質量部に対して、付着性向上剤を水とともに1量部(水0.85質量部、付着性向上剤0.15質量部)だけ添加したデータについて示したが、潤滑剤を再生するにあたっての付着性向上剤の添加量、添加方法についてはこれに限定されるものではない。
温間・熱間塑性加工の条件によって潤滑剤使用液の濃縮の度合い等が異なり、再生時に添加すべき付着性向上剤の最適添加量も自ずと異なる。本発明では、動粘度を指標として付着性向上剤を添加すればよく、付着性向上剤の添加量については新液と使用液との相対的な関係によって特定されるものである。
また、付着性向上剤の添加方法については、上記の実施例にて示したような「水とともに添加する形態」の他、固体の付着性向上剤をそのまま直接、潤滑剤使用液に添加する形態であってもよい。
5.補足実験
潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する場合に動粘度を指標とすることの重要性を示す。
付着性向上剤A1’の添加量を変化させたこと以外は実施例1と同様にして参考例6、7に係る潤滑剤を得て、実施例1と同様の条件にて付着性や潤滑性を評価した。結果を以下の表15に示す。
表15に示す結果から明らかなように、動粘度が新液から外れるように付着性向上剤を添加した場合、新液と同等の性能は得られない。
参考例6については、新液と比較して、付着性、潤滑性ともに悪化した。
一方、参考例7においては、潤滑剤の潤滑性能自体は良好な結果となったものの、付着性向上剤を過剰に添加したことによるコスト増大(付着性向上剤のロス)が懸念されるほか、付着量が過剰に増大することによって生じる製品の劣化(付着性向上剤の製品への残留)、金型の型堀部分へ成分が過剰に付着することによりその過剰付着成分による製品への転写傷等も懸念される。
すなわち、付着性向上剤を添加することで潤滑剤使用液の付着性及び潤滑性の向上(潤滑剤としての性能の復元)がある程度可能と言えるが、その添加量が不足すると性能は十分に復元せず、一方、その添加量が過剰となると、潤滑性能の復元自体は可能であるものの新たな問題が発生する。そのため、本発明のように動粘度を指標とすることで、はじめて、付着性向上剤を過不足なく添加でき、再生時の原液のロスが少なく、且つ、潤滑剤使用液を定量的に再生することができることが分かる。
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法、温間・熱間塑性加工における潤滑剤の循環方法、及び、被加工材の温間・熱間塑性加工方法もまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明は、温間・熱間塑性加工において潤滑剤の循環使用及び管理を行う場合に利用可能である。本発明によれば、潤滑剤の循環使用時に、原液のロスを低減しつつ潤滑剤の性能を維持でき、温間・熱間塑性加工を安定して行うことができる。

Claims (7)

  1. 温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液の動粘度を測定する工程と、
    前記動粘度の測定値に基づいて、前記潤滑剤使用液に添加する付着性向上剤の添加量を決定する工程と、
    決定した前記添加量に基づいて、前記潤滑剤使用液に付着性向上剤を添加する工程と、
    を備えることを特徴とする、温間・熱間塑性加工用潤滑剤の再生方法。
  2. 前記潤滑剤使用液の糖度及び/又は導電率を指標として、該潤滑剤使用液を水で希釈する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
  3. 前記付着性向上剤が、イソブチレン−マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩;アクリル酸−マレイン酸共重合物のアルカリ金属塩;ヒドロキシエチルセルロース;カルボキシメチルセルロース及びそのアルカリ金属塩からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記温間・熱間塑性加工にて用いられる潤滑剤には、前記付着性向上剤に加えて、イソフタル酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩、及び、アジピン酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩から選ばれるいずれか1種以上が含有されている、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 温間・熱間塑性加工工程にて用いられた後の潤滑剤使用液を回収する工程と、
    請求項1〜4のいずれかに記載の方法により、前記潤滑剤使用液を潤滑剤へと再生する工程と、
    再生した潤滑剤を再び温間・熱間塑性加工工程にて用いる工程と、
    を繰り返すことを特徴とする、温間・熱間塑性加工工程における潤滑剤の循環方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の再生方法により再生してなる温間・熱間塑性加工用潤滑剤を用いて被加工材を加工する、被加工材の温間・熱間塑性加工方法。
  7. 請求項5に記載の循環方法により潤滑剤を循環させながら被加工材の温間・熱間塑性加工を行う、被加工材の温間・熱間塑性加工方法。
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