JP2015143810A - 電子機器、透光性カバー基板および透光性カバー基板の製造方法 - Google Patents

電子機器、透光性カバー基板および透光性カバー基板の製造方法 Download PDF

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幹裕 梅原
雅弘 奥村
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Abstract

【課題】透過する光の散乱が少なく、反対側に配置された被観察体の状態を比較的明確に視認することができるサファイア部材を提供する。【解決手段】画像表示面を有する画像表示デバイスと、前記画像表示面に対向する一方主面と、前記一方主面と反対側の他方主面とを有する透光性カバー基板とを備える電子機器であって、前記透光性カバー基板はアルミナ(Al2O3)を主成分とする単結晶体からなり、少なくとも前記他方主面が、算術平均粗さRaが0.01μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上の表面領域を有することを特徴とする。【選択図】図6

Description

本発明は、電子機器、透光性カバー基板および透光性カバー基板の製造方法に関する。
従来より、いわゆる液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示デバイスを内蔵した、デジタルカメラや携帯電話等の電子機器が用いられている。近年では、比較的大きな画像を表示するとともにタッチパネル等の入力装置を備える、いわゆるスマートフォン端末やタブレット端末といわれる携帯型の電子機器が急速に普及し始めている。例えば特許文献1には、このようないわゆるスマートフォンに関する技術が開示されている。これら携帯型の電子機器には、内蔵された液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示デバイスの画像表示面を保護する透光性カバー基板が、電子機器の外装の一部に配置されて用いられている。この透光性カバー基板には、例えばアミノケイ酸ガラス等からなるいわゆる強化ガラスが主に用いられている。
特開2011−61316号公報
透光性カバー基板には、外部から衝撃が加わった場合に割れ難いこと、放熱性が高く電子機器が備える内部の電子回路等から発した熱を外部に放出し易いこと等の特性が求められているが、これらの特性を全て高いレベルで満足する透光性カバー基板は得られていなかった。
上記課題を解決するために、本願発明は、画像表示面を有する画像表示デバイスと、前記画像表示面に対向する一方主面と、前記一方主面と反対側の他方主面とを有する透光性カバー基板とを備える電子機器であって、前記透光性カバー基板はアルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、少なくとも前記他方主面が、算術平均粗さRaが0.01μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上の表面領域を有することを特徴とする電子機器を提供する。
また、画像表示デバイスの画像表示面に、少なくとも一部が対向するよう配置された透光性カバー基板の製造方法であって、アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなる基本部材を加工し、加工した表面の少なくとも一部を、算術平均粗さRaを0.1μm以上とする工程と、機械加工した前記基本部材を1800℃以上に加熱する工程と、前記加熱する工程の後、6時間以上かけて室温まで降温させる工程とを有することを特徴とする透光性カバー基板の製造方法を併せて提供する。
本発明によれば、外部から衝撃が加わった場合に割れ難く、かつ放熱性が高いので電子回路等から発した熱を外部に効率的に放出することができる。また、外部から衝撃が加わった場合に割れ難く、かつ放熱性が高いので電子回路等から発した熱を外部に効率的に放出することができる透光性カバー基板を比較的低コストで製造することができる。
(a)は本発明の電子機器の一実施形態について説明する斜視図であり、(b)は(a)に示す電子機器が備える、本発明の透光性カバー基板の斜視図である。 図1に示す電子機器の前面図である。 図1に示す電子機器の裏面図である。 図1に示す電子機器の概略断面図である。 図1に示す電子機器の電気的構成を示すブロック図である。 本発明の透光性カバー基板の製造方法の一実施形態の工程フロー図である。 圧電振動素子を示す平面図である。 圧電振動素子を示す側面図である。 圧電振動素子が撓む様子を示す図である。 圧電振動素子が撓む様子を示す図である。 透光性カバー基板を示す平面図である。 気導音及び伝導音を説明するための図である。 本発明の透光性カバー基板を含む実験例1〜4の各板状部材の加工された主面のレーザー顕微鏡写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。 本発明の透光性カバー基板を含む実験例1〜4の各板状部材の加工された主面の電子顕微鏡写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。 本発明の透光性カバー基板を含む実験例5〜8の各板状部材の加工された主面のレーザー顕微鏡写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。 本発明の透光性カバー基板を含む実験例5〜8の各板状部材の加工された主面の電子顕微鏡写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。 実験例2と同一条件の板状部材について、一方の主面から他方の主面に透過する光の状態を比較して示した写真画像である。 (a)は実験例1のX線回折試験結果を示すグラフであり、(b)は実験例2のX線回折試験結果を示すグラフである。
<電子機器の外観>
図1〜4に示されるように、本発明の一実施形態である電子機器100は、透光性カバー基板1とケース部分2と画像表示面52aを有する画像表示デバイス52とを備えている。透光性カバー基板1は、平面視において略長方形状の基板である。透光性カバー基板1とケース部分2とは組み合わされることによって機器ケース3を構成している。透光性カバー基板1は、画像表示面52aに対向する一方主面1A、および一方主面1Aと反対の側の他方主面1Bを有する。透光性カバー基板1には、文字、記号、図形等の各種情報が表示される表示部分1aが設けられている。表示部分1aは例えば平面視で長方形を成している。透光性カバー基板1における、表示部分1aを取り囲む周縁部分1bは、例えばフィルム等が貼られることによって黒色となっており、情報が表示されない非表示部分となっている。透光性カバー基板1の内側主面には後述するタッチパネル53が貼り付けられており、使用者は、透光性カバー基板1の他方主面1Bの表示部分1aを指等で操作することによって、電子機器100に対して各種指示を与えることができる。
図5は電子機器100の電気的構成を示すブロック図である。図5に示されるように、電子機器100は、制御部50、無線通信部51、画像表示デバイス52、タッチパネル53、圧電振動素子55、外部スピーカ56、マイク57、撮像部58及び電池59を備えており、これらの構成要素は、機器ケース3内に収められている。
制御部50は、CPU50a(図4にも図示している)及び記憶部50b等を備えており、電子機器100の他の構成要素を制御することによって、電子機器100の動作を統括的に管理する。記憶部50bは、ROM及びRAM等で構成されている。制御部50には、CPU50aが記憶部50b内の各種プログラムを実行することによって、様々な機能ブロックが形成される。
アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体は一般的にはサファイアと呼ばれ、強化ガラス等と比較して傷がつき難く、割れ難い。本明細書では、アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体を単にサファイアともいう。本明細書において「主成分」として含む場合は、具体的には少なくとも50質量%、好ましくは70質量%含むことをいう。傷がよりつき難く、割れや欠け等をより確実に抑制する点で、透光性カバー基板1のAl純度(含有量)は99質量%以上であることが好ましい。
ケース部分2は、電子機器100の前面部分の周縁部分、側面部分及び裏面部分を構成している。本実施形態においては、ケース部分2は、ポリカーボネート樹脂で形成されているが、電子機器を覆う部材であれば特に制限されない。例えば、透光性カバー基板1と同じ材料を用いてもよい。
図3に示されるように、電子機器100の裏面101、言い換えれば機器ケース3の裏面には、スピーカ穴20及びマイク穴21があけられている。また電子機器100の裏面101からは、後述する撮像部58が有する撮像レンズ58aが露出している。
電子機器100は、上述のように、画像表示デバイス52を内部に備えている。画像表示デバイス52は後述する制御部50によって制御されて、文字、記号、図形などを表す画像情報を画像表示面52aに表示する。
画像表示デバイス52は、いわゆる液晶表示パネルであって、図示しないバックライトユニットと図示しない液晶層とを有している。このバックライトユニットのLEDランプとしては、主に青色LED素子に蛍光体が組み合わされた、白色光を発するLEDランプが用いられている。画像表示デバイス52の画像表示面52aに表示される画像情報は、バックライトユニットのLEDランプから発せられた白色光が画像表示デバイス52が備える液晶層を透過することで部分的に着色されることで形成されている。すなわち、LEDランプから発せられた白色光が液晶層を通過する際に、透過する光の波長範囲が部分毎に制限されることで透過光の色が変更されることで、様々な色や形をもつ文字、記号、図形などを表す画像情報が画像表示面52aに形成される。このように画像表示面52aに形成された画像情報を表す光は、透光性カバー基板1の一方主面1Aの一方表面領域1αから入射して他方主面1Bの他方表面領域1βから出射して電子機器100の操作者(使用者)の眼に入り、この操作者は画像情報が表す文字、記号、図形等を認識する。
《透光性カバー基板の第1の実施形態》
第1の実施形態の透光性カバー基板1は、アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、少なくとも他方主面1Bが、算術平均粗さRaが0.01μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上の他方表面領域1βを有する。本実施形態では、他方主面1Bのうち、表示部分1aを全て含む比較的広い範囲に他方表面領域1βが設定されている。より具体的には、他方表面領域1βの算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが7μm以上となっている。また、他方表面領域1βの粗さ曲線の最大高さRzが2.5μm未満となっている。
本実施形態では、一方主面1Aも、他方主面1Bと同様に、算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが7μm以上である一方表面領域1
αを有し、また、一方表面領域1αの粗さ曲線の最大高さRzが2.5μm未満である。一方主面1Aの一方表面領域1αは、他方主面1Bに垂直な方向からの平面視において他方表面領域1βに対応する。また、一方主面1Aの一方表面領域1αと他方表面領域1βとを透過する光線についてのヘイズ率が70%未満となっている。加えて、一方主面1Aの一方表面領域1αと他方表面領域1βとを透過する光線についての全透過率Ttが80%以上となっている。
なお、本明細書における算術平均粗さRaは、2001年度改訂版のJIS規格B0601に準拠する値である。同様に、後述する粗さ曲線要素の平均長さRsm、粗さ曲線の最大高さRzも、2001年度改訂版のJIS規格B0601に準拠する値である。これらの算術平均粗さRa、粗さ曲線要素の平均長さRsm、粗さ曲線の最大高さRzは、例えばキーエンス社製レーザー顕微鏡装置VK−9510等を用いて測定することができる。
上述のように、第1の実施形態の透光性カバー基板1では、一方主面1Aの表面領域1αおよび他方主面1Bの表面領域1βの算術平均粗さRaが0.01μm以上と比較的大きな表面粗さを有する一方で、粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上と比較的大きくなっている。
制御部50は各構成要素から多様かつ大量の情報を受け取り、これら情報を比較的短時間で処理(情報処理)する。この情報処理の際、CPU50aは比較的多くの熱を発生する。CPU50aが発した熱が機器ケース3内にとどまると、機器ケース3内の温度が上昇して、CPU50aの動作が遅くなったり動作不良が生じる場合があり、また機器ケース3内の各部のその他の構成要素の動作不良も発生する場合がある。
サファイアからなる透光性カバー基板1は、熱伝導率が約42W/(m・K)であり、例えば熱伝導率が1W/(m・K)程度である石英ガラス等と比べて熱伝導率が大きい。このため電子機器100では、CPU50aから発した熱を、透光性カバー基板1を介して機器ケース3の外に効率的に放出することができる。透光性カバー基板1の算術平均粗さRaが0.01μm以上と比較的大きな表面粗さを有するので、他方主面1Bの算術平均粗さRaを0.01μm未満と高精度に平坦化した場合とくらべて表面積が大きくなっている。すなわち、透光性カバー基板1では、熱の放出面である他方主面1Bの表面積が大きいので、他方主面1Bが高精度に平坦化されている場合に比べて、透光性カバー基板1Bから放出される単位時間当たりの熱量がさらに大きい。透光性カバー基板1を備える電子機器100では、CPU50aが発した熱は機器ケース3の外部に素早く放出されるので、機器ケース3内の温度上昇が抑制されて、CPU50aおよびその他の構成要素の動作不良も抑制される。また、サファイアからなる透光性カバー基板1は非常に硬度も高く傷がつき難く、また割れ難い。
粗さ曲線要素の平均長さRsmは、いうなれば表面のうねりの周期の大きさの程度を表しており、このRsmの値よりも細かい周期の凹凸は比較的少ないといえる。可視光線の波長領域はおおよそ0.3μm〜0.8μm程度であり、例えばある透光体の表面に、おおよそ0.3μm〜0.8μm程度の周期をもつ凹凸があれば、この凹凸は可視光線を積極的に散乱させる。この透光体の表面の粗さ曲線要素の平均長さRsmが0.3μm〜0.8μmに近いほど、可視光線を積極的に散乱させる程度の凹凸が多いといえる。すなわち、ある透光体の表面の粗さ曲線要素の平均長さRsmが0.3μm〜0.8μmに近いほど、この透光体を透過する光は散乱されて、観察者からは白く濁ったように視認されてしまう傾向にある。
透光性カバー基板1は、表示部分1aを含む範囲に規定された、他方主面1Bの他方表
面領域1βの表面粗さが0.01μm程度と比較的大きくなっている一方で、粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上と比較的大きくなっているので、透光性カバー基板1を透過する可視光領域の光の散乱は少なくなっている。透光性カバー基板1の他方主面1Bの他方表面領域1βは、より詳しくは、算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが7μm以上であり、可視光領域の光の散乱はより確実に抑制されている。本実施形態では、一方主面1Aの一方表面領域1αも、表面粗さが0.1μm程度と比較的大きくなっている一方で、粗さ曲線要素の平均長さRsmが7μm以上と比較的大きくなっているので、透光性カバー基板1を透過する透過する可視光領域の光の散乱はより少なくなっている。透光性カバー基板1ではこのように、透光性カバー基板1を透過する可視光Lについて、一方主面1Aおよび他方主面1Bでの散乱が少ないので、他方主面1Bを視認しながら電子機器1を操作する操作者は、画像表示デバイス12の画像表示面12aに表示される画像情報(文字、記号、図形等)を比較的明確に視認することができる。
《第1の実施形態の透光性カバー基板1のその他の作用》
第1の実施形態の透光性カバー基板1ではまた、他方表面領域1βおよび一方表面領域1αにおいて、粗さ曲線の最大高さRzが2.5μm未満である。粗さ曲線の最大高さは、表面の凹凸構造における平均線からの高さの程度を表しており、この凹凸の高さが大きいほど、凹凸部分を通過する光の距離が大きくなるので、光が凹凸部分を屈折する回数が増加して散乱の程度がより大きくなってしまう傾向にある。透光性カバー基板1では、粗さ曲線の最大高さRzが2.5μm未満であるので、この透光性カバー基板1を透過する光の散乱がより少なくされている。
サファイアを主成分とする部材を加工(研削等)した後に簡単に研磨しただけでは、加工および研磨後の表面には、0.3〜0.8μm程度の周期の凹凸が比較的多く存在し、加工および研磨後の表面は、粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm未満と比較的小さい。また、数μmの高さを有する凹凸も大きく、粗さ曲線の最大高さRzも2.5μm以上と比較的大きい。本願のサファイア部材は、このような加工および研磨後の表面状態を改質する後述する工程によって初めて得られるものである。
このような透光性カバー基板1では上述するように光の散乱が少ない。具体的には、透光性カバー基板1では、一方表面領域1αおよび他方表面領域1βの算術平均粗さRaが0.01μm以上でありながら、一方表面領域1αと他方表面領域1βとを透過する光線Lについてのヘイズ率が70%未満となっており、画像表示デバイス12の画像表示面12aに表示される画像情報(文字、記号、図形等)が白く濁ることが抑制され、操作者はこの画像情報を比較的明確に視認することができる。ここでヘイズ率とは、1981 年
に制定のJISK7105に準拠する値である(なお、JIS規格では「ヘーズ値」とも呼ばれている)。また、後述する全透過率Ttおよび直接透過率Tpの値も、同様に1981 年に制定のJISK7105に準拠する値である。これらヘイズ率や全透過率Tt
および直接透過率Tpの値は、例えばスガ試験機株式会社製ヘイズメーター装置HGM−2B等を用いて測定することができる。
透光性カバー基板1はまた、一方主面1Aの表面領域1αと他方主面1Bの表面領域1βとを透過する光線Lについての全透過率Ttが80%以上である。透光性カバー基板1は元々透過率の高いサファイアを主成分とするとともに、表面における光の散乱が少なくいので透過率Ttが大きくなっており、透光性カバー基板1を透過して電子機器100を操作する操作者に届く、画像表示面12aからの光の光量は大きい。このため観察者は、画像表示面12aに表示される画像情報(文字、記号、図形等)を比較的明確に視認することができる。透光性カバー基板1はまた、一方主面1Aの表面領域1αと他方主面1Bの表面領域1βとを透過する光線Lについての直接透過率Tpが20%以上である。すな
わち、他方主面1Bの表面領域1βを観察する操作者に届く光のうち、透光性カバー基板1の表面(一方主面1Aおよび他方主面1B)や内部で散乱されることなく操作者に直接届く光の成分が比較的大きいので、操作者は画像表示面52aに表示される画像情報を比較的明確に視認することができる。
《透光性カバー基板の第2の実施形態》
次に、透光性カバー基板の他の実施形態(第2の実施形態)について、第1の実施形態と同じ図面を参照して説明する。第2の実施形態の透光性カバー基板も、透光性カバー基板1として説明する。第2の実施形態の透光性カバー基板1は、アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、ステップ部と、幅が1μm以上のテラス部とが交互に繰り返し並んだ周期的段差構造を有する表面領域を有する。この表面領域は、算術平均粗さRaが0.1μm未満であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1.9μm以上となっている。
この第2の実施形態の透光性カバー基板1は例えば、アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体(サファイア)からなる基本部材を加工し、加工した表面の少なくとも一部を、算術平均粗さRaを0.1μm未満とする工程と、機械加工した基本部材を1800℃〜2000℃に加熱する工程と、加熱する工程の後、6時間以上かけて室温まで降温度させる工程とを経て製造することができる。例えば板状のサファイアからなる透光性カバー基板の主面を、コロイダルシリカを用いたCMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨によって、算術平均粗さRaが例えば0.1μm未満となるように高精度に平坦化する研磨を行った後、研磨したサファイア部材(研磨体)について、上述の実施形態と同様に、1800℃〜2000℃に加熱する工程(加熱工程)と、加熱後に6時間以上かけて室温まで降温度させる工程(徐冷工程)とを行うことで、この第2の実施形態の透光性カバー基板を得ることができる。
これら加熱工程および降温工程は例えば、研磨したサファイア部材(研磨体)を希ガス雰囲気中に配置した状態で行うことができる。加熱工程および徐冷工程は、研磨体を加熱炉内に配置して行う。加工工程ではまず、加熱炉のチャンバー内に研磨体を配置し、チャンバー内を希ガスであるアルゴン(Ar)ガスで置換する。その後、約14時間かけてチャンバー内の温度を徐々に1950℃まで昇温させ、1950℃の状態で約5時間維持する。サファイアの融点は約2070℃程度である。加熱工程ではこのように、研磨体をサファイアの融点に近い温度に昇温させて長時間維持する。この加熱工程によって、サファイアからなる研磨体の最表面部分は、一部が溶融するなど原子単位で移動し易い状態となり、原子位置の再配列が進行していく。この過程において、算術平均粗さRaが例えば0.1μmと高精度に平坦化されていた研磨体の表面のアルミニウム(Al)原子や酸素(O)原子が、サファイアの結晶格子の状態に応じた位置に再配列される。これによって上述の、ステップ部と、幅が1μm以上のテラス部とが交互に繰り返し並んだ周期的段差構造が形成される。
例えば、機械研磨や化学的機械研磨(いわゆるCMP)によって基板状のサファイア部材の表面を高精度に平坦化する研磨を行い、研磨したサファイア部材を例えば約500℃〜1500℃程度の温度で熱処理することで、この前駆体の表面の原子を結晶構造に応じて再配列させて、ステップ高さが約1×10−11〜10−9(m)、テラス幅が約1×
10−8〜10−6(m)程度のいわゆるナノステップ構造が形成できることが知られて
いる。これに対して第2の実施形態の透光性カバー基板は、例えばサファイアの融点により近い温度での熱処理によって形成することができ、第2の実施形態の透光性カバー基板は、ステップ部と、1μm以上の非常に大きな幅のテラス部とが、交互に繰り返し並んだ周期的段差構造を有する表面領域を形成している。
このような周期的段差構造を有する透光性カバー基板1は、算術平均粗さRaが0.1μm未満であって平坦度が高く、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1.9μm以上と可視光の波長と比べて大きいので、透光性カバー基板1の表面での反射光やサファイア部材を透過する透過光の散乱が大きい。すなわち、この他の実施形態の透光性カバー基板1は、反射光の濁りや透過光の濁りが少ない透明度の高い部材でありながら、観察者が知覚しないレベルの大きさの周期的段差構造を有する。このような周期的段差構造を有するサファイア部材は、表面が高精度に平坦化されたサファイア部材と比べて表面積が大きく、表面からの放熱性が比較的高い。
またこのような第2の実施形態の透光性カバー基板1は、周期的段差構造のように微細な凹凸を有するので、使用者が透光性カバー基板1の表面を指等で触って操作した場合に、透光性カバー基板1の表面に皮脂等の油が付着した場合も、この凹凸に沿っての皮脂等の汚れが分散し易い。このため、例えば人物が指で触れた場合も、透光性カバー基板1の表面に、皮脂等の汚れからなる指紋の後が付着し難い。
〈電子機器100のその他構成〉
無線通信部51は、電子機器100とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続されたウェブサーバ等の通信装置からの信号を基地局を介してアンテナ51aで受信する。無線通信部51は、受信信号に対して増幅処理及びダウンコンバートを行って制御部50に出力する。制御部50は、入力される受信信号に対して復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる、音声や音楽などを示す音信号などを取得する。また無線通信部51は、制御部50で生成された、音信号等を含む送信信号に対してアップコンバート及び増幅処理を行って、処理後の送信信号をアンテナ51aから無線送信する。アンテナ51aからの送信信号は、基地局を通じて、電子機器100とは別の携帯電話機あるいはインターネットに接続された通信装置で受信される。
タッチパネル53は、例えば、投影型静電量容量方式のタッチパネルであって、透光性カバー基板1の表示部分1aに対する使用者の操作を検出する。タッチパネル53は、透光性カバー基板1の内側主面に貼り付けられており、互いに対向配置されたシート状の2つの電極センサーを備えている。2つの電極センサーは透明粘着性シートによって貼り合わされている。
一方の電極センサーには、それぞれがX軸方向(例えば電子機器100の左右方向)に沿って延在し、かつ互いに平行に配置された複数の細長いX電極が形成されている。他方の電極センサーには、それぞれがY軸方向(例えば電子機器100の上下方向)に沿って延在し、かつ互いに平行に配置された複数の細長いY電極が形成されている。透光性カバー基板1の表示部分1aに対して使用者の指が接触すると、その接触箇所の下にあるX電極及びY電極の間の静電容量が変化することによって、タッチパネル53において透光性カバー基板1の表示部分1aに対する操作が検出される。タッチパネル53において生じる、X電極及びY電極の間の静電容量変化は制御部50に伝達され、制御部50は当該静電容量変化に基づいて透光性カバー基板1の表示部分1aに対して行われた操作の内容を特定し、それに応じた動作を行う。
圧電振動素子55は、受話音を電子機器100の使用者に伝えるためのものである。圧電振動素子55は、制御部50から与えられる駆動電圧によって振動させられる。制御部50は、受話音を示す音信号に基づいて駆動電圧を生成し、当該駆動電圧を圧電振動素子55に印加する。圧電振動素子55が、制御部50によって受話音を示す音信号に基づいて振動させられることによって、電子機器100の使用者には受話音が伝達される。このように、制御部50は、音信号に基づいて圧電振動素子55を振動させる駆動部として機能する。圧電振動素子55については後で詳細に説明する。
外部スピーカ56は、制御部50からの電気的な音信号を音に変換して出力する。外部スピーカ56から出力される音は、電子機器100の裏面101に設けられたスピーカ穴20から外部に出力される。
マイク57は、電子機器100の外部から入力される音を電気的な音信号に変換して制御部50に出力する。電子機器100の外部からの音は、当該電子機器100の裏面101に設けられたマイク穴21から当該電子機器100の内部に取り込まれて、マイク57に入力される。
撮像部58は、撮像レンズ58a及び撮像素子などで構成されており、制御部50による制御に基づいて、静止画像及び動画像を撮像する。
電池59は、電子機器100の電源を出力する。電池59から出力された電源は、電子機器100が備える制御部50や無線通信部51などに含まれる各電子部品に対して供給される。
<圧電振動素子の詳細>
図7、8は、それぞれ、圧電振動素子55の構造を示す上面図及び側面図である。図7、8に示されるように、圧電振動素子55は一方向に長い形状を成している。具体的には、圧電振動素子55は、平面視で長方形の細長い板状を成している。圧電振動素子55は、例えばバイモルフ構造を有しており、シム材55cを介して互いに貼り合わされた第1圧電セラミック板55a及び第2圧電セラミック板55bを備えている。
圧電振動素子55では、第1圧電セラミック板55aに対して正の電圧を印加し、第2圧電セラミック板55bに対して負の電圧を印加すると、第1圧電セラミック板55aは長手方向に沿って伸び、第2圧電セラミック板55bは長手方向に沿って縮むようになる。これにより、図9に示されるように、圧電振動素子55は、第1圧電セラミック板55aを外側にして山状に撓むようになる。
一方で、圧電振動素子55では、第1圧電セラミック板55aに対して負の電圧を印加し、第2圧電セラミック板55bに対して正の電圧を印加すると、第1圧電セラミック板55aは長手方向に沿って縮み、第2圧電セラミック板55bは長手方向に沿って伸びるようになる。これにより、図10に示されるように、圧電振動素子55は、第2圧電セラミック板55bを外側にして山状に撓むようになる。
圧電振動素子55は、図9の状態と図10の状態とを交互にとることによって、撓み振動を行う。制御部50は、第1圧電セラミック板55aと第2圧電セラミック板55bとの間に、正の電圧と負の電圧とが交互に現れる交流電圧を印加することによって、圧電振動素子55を撓み振動させる。
なお、図8〜10に示される圧電振動素子55では、シム材55cを間に挟んで貼り合わされた第1圧電セラミック板55a及び第2圧電セラミック板55bから成る構造が一つだけ設けられていたが、複数の当該構造を積層させても良い。
<圧電振動素子の配置位置>
図11は、透光性カバー基板1を一方主面1A側から見た際の平面図である。圧電振動素子55は、両面テープ等の接着剤によって、透光性カバー基板1の一方主面1Aに貼り付けられている。圧電振動素子55は、透光性カバー基板1の一方主面1Aにおいて、この透光性カバー基板1を一方主面1A側から見た平面視で画像表示デバイス52及びタッ
チパネル53とは重ならない位置に配置されている。
<圧電振動素子の振動による受話音の発生について>
本実施の形態では、圧電振動素子55が透光性カバー基板1を振動させることによって、当該透光性カバー基板1から気導音及び伝導音が使用者に伝達されるようになっている。言い換えれば、圧電振動素子55自身の振動が透光性カバー基板1に伝わることにより、当該透光性カバー基板1から気導音及び伝導音が使用者に伝達されるようになっている。
ここで、気道音とは、外耳道孔(いわゆる「耳の穴」)に入った音波(空気振動)が鼓膜を振動させることによって、人の脳で認識される音である。一方で、伝導音とは、耳介が振動させられ、その耳介の振動が鼓膜に伝わって当該鼓膜が振動することによって、人の脳で認識される音である。以下に、気導音及び伝導音について詳細に説明する。
図12は気導音及び伝導音を説明するための図である。図12には、電子機器100の使用者の耳の構造が示されている。図12においては、波線400は気道音が脳で認識される際の音信号(音情報)の伝導経路を示しており、実線410が伝導音が脳で認識される際の音信号の伝導経路を示している。
透光性カバー基板1に取り付けられた圧電振動素子55が、受話音を示す電気的な音信号に基づいて振動させられると、透光性カバー基板1が振動して、当該透光性カバー基板1から音波が出力される。使用者が、電子機器100を手に持って、当該電子機器100の透光性カバー基板1を当該使用者の耳介200に近づけると、あるいは当該電子機器100の透光性カバー基板1を当該使用者の耳介200に当てると、当該透光性カバー基板1から出力される音波が外耳道孔210に入る。透光性カバー基板1からの音波は、外耳道孔210内を進み、鼓膜220を振動させる。鼓膜220の振動は耳小骨230に伝わり、耳小骨230が振動する。そして、耳小骨230の振動は蝸牛240に伝わって、蝸牛240において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経250を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、透光性カバー基板1から使用者に対して気導音が伝達される。
また、使用者が、電子機器100を手に持って、当該電子機器100の透光性カバー基板1を当該使用者の耳介200に当てると、耳介200が、圧電振動素子55によって振動させられている透光性カバー基板1によって振動させられる。耳介200の振動は鼓膜220に伝わり、鼓膜220が振動する。鼓膜220の振動は耳小骨230に伝わり、耳小骨230が振動する。そして、耳小骨230の振動は蝸牛240に伝伝わり、蝸牛240において電気信号に変換される。この電気信号は、聴神経250を通って脳に伝達され、脳において受話音が認識される。このようにして、透光性カバー基板1から使用者に対して伝導音が伝達される。図12では、耳介200内部の耳介軟骨200aも示されている。
なお、ここでの伝導音は、骨導音(「骨伝導音」とも呼ばれる)とは異なるものである。骨導音は、頭蓋骨を振動させて、頭蓋骨の振動が直接蝸牛などの内耳を刺激することによって、人の脳で認識される音である。図12においては、例えば下顎骨300を振動させた場合において、骨伝導音が脳で認識される際の音信号の伝達経路を複数の円弧420で示している。
このように、本実施の形態に係る電子機器100では、圧電振動素子55が前面の透光性カバー基板1を適切に振動させることによって、透光性カバー基板1から電子機器100の使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができる。本実施の形態に係る圧電振
動素子55では、使用者に対して適切に気導音及び伝導音を伝達できるように、その構造が工夫されている。使用者に対して気導音及び伝導音を伝えることができるように電子機器100を構成することによって様々メリットが発生する。
例えば、使用者は、透光性カバー基板1を耳に当てれば音が聞こえることから、電子機器100において耳を当てる位置をそれほど気にすることなく通話を行うことができる。
また、使用者は、周囲の騒音が大きい場合には、耳を透光性カバー基板1に強く押し当てることによって、伝導音の音量を大きくしつつ、周囲の騒音を聞こえにくくすることができる。よって、使用者は、周囲の騒音が大きい場合であっても、適切に通話を行うことができる。
また、使用者は、耳栓やイヤホンを耳に取り付けた状態であっても、透光性カバー基板1を耳(より詳細には耳介)に当てることによって、電子機器100からの受話音を認識することができる。また、使用者は、耳にヘッドホンを取り付けた状態であっても、当該ヘッドホンに透光性カバー基板1を当てることによって、電子機器100からの受話音を認識することができる。
<受話口の穴(レシーバ用の穴)について>
携帯電話機などの電子機器では、当該電子機器の内部に設けられたレシーバ(受話用スピーカ)から出力される音を当該電子機器の外部に取り出すために、前面の透光性カバー基板1に受話口の穴があけられることがある。
本実施の形態に係る電子機器100では、透光性カバー基板1が振動することによって受話音が発生することから、電子機器100に受話口の穴が無くても、受話音を適切に使用者に伝えることができる。透光性カバー基板1はアルミナ(Al)を主成分とする単結晶体であって、強化ガラス等とも比べて非常に硬い。さらに、各種薬品に対する耐性も非常に高い。このようなアルミナ(Al)を主成分とする単結晶体を加工して、例えが受話口の穴をあける加工を行う場合は、例えばレーザー加工装置等の高額な製造装置が必要となったり、加工に要する時間が長くなってしまい、製造コストが比較的大きくなる場合がある。本実施形態の透光性カバー基板1は受話口の穴を有さないので、この穴加工にかかるコストが生じず、電子機器100の製造コストが小さい。また、透光性カバー基板1に受話口の穴を有さないので、透光性カバー基板1の強度が比較的高く維持されている。また、本実施の形態では、電子機器100の表面に受話口の穴がないことから、受話口の穴から水やほこり等が入るといった問題が発生しない。よって、電子機器100では、この問題に対する防水構造や防塵構造が不要となり、電子機器100のさらなるコストダウンを図ることができる。
以下、本発明の透光性カバー基板の実施例を示すとともに、本発明の効果について説明する。まず、サファイアからなる板状部材を複数用意し、各板状部材の表面をそれぞれ異なる4種類の方法で研磨した。板状部材の形状は、いずれも、縦15mm、横16mm、高さ3.5mmの略四角柱状とした。4枚それぞれの研磨条件は以下の通りとした。
実験例1:研磨板として鋳鉄板を使い、平均粒径25μmのダイヤモンドスラリーを用いて共立精機株式会社製ラッピング装置によって自重モードで研磨を行った。この条件による研磨を板状部材の主面の両面について行った。
実験例2:研磨板としてレジンダイヤモンド板#200を用いて、三井ハイテック社製平面研削装置を用いて0.05mm/トラバースモードで研磨(研削)をおこなった。こ
の条件による研磨を板状部材の主面の両面について行った。
実験例3:研磨板としてレジンダイヤモンド板#325を用いて、三井ハイテック社製平面研削装置を用いて0.05mm/トラバースモードで研磨(研削)をおこなった。この条件による研削を板状部材の主面の両面について行った。
実験例4:研磨板として、B4C研磨板を用いて、共立精機株式会社製ラッピング装置を用いて研磨をおこなった。B4Cとは炭化ホウ素のことをいう。この研磨を板状部材の片側の主面のみ行い、他方の主面はCMP研磨装置を用いて鏡面研磨を行った。鏡面研磨面の表面粗さRaは2nm以下と高精度に平坦化されている。
実験例5:CMP研磨装置を用いて鏡面研磨を行った。鏡面研磨面の表面粗さRaは0.02μm以下と高精度に平坦化されている。
実験例6:研磨板としてレジンダイヤモンド板#230を用いて、ワイダ社製立型両頭研削盤WGL−35を用いて0.05mm/トラバースモードで研磨(研削)をおこなった。この条件による研削を板状部材の主面の両面について行った。
実験例7:研磨板として銅板を使い、平均粒径2μmのダイヤモンドスラリーを用いて共立精機株式会社製ラッピング装置によって自重モードで研磨を行った。この条件による研磨を板状部材の主面の両面について行った。
実験例8:研磨板として錫(Sn)板を使い、平均粒径2μmのダイヤモンドスラリーを用いて共立精機株式会社製ラッピング装置によって自重モードで研磨を行った。この条件による研磨を板状部材の主面の両面について行った。
これら実験例1〜8の板状部材それぞれについて、キーエンス社製レーザー顕微鏡装置VK−9510を用いて表面の粗さ曲線を測定し、研磨加工直後の算術平均粗さRa(μm)、粗さ曲線要素の平均長さRsm(μm)、粗さ曲線の最大高さRz(μm)の値をそれぞれ求めた。また、実験例1〜4の板状部材については、スガ試験機株式会社製ヘイズメーター装置HGM−2B等を用いて、板状部材の両主面を透過する光線に対するヘイズ率(%)、全透過率Tt(%)、直接透過率Tp(%)をそれぞれ測定した。
次に、これら実験例1〜4の板状部材それぞれについて、上述の実施形態と同じ条件で、上述の加熱工程と徐冷工程とを実施し、透光性カバー基板を得た。そして、各実験例1〜4の板状部材(透光性カバー基板)について、加熱工程と徐冷工程の後にも、加工直後と同じ条件で、表面の粗さ曲線を測定し、研削加工直後の算術平均粗さRa(μm)、粗さ曲線要素の平均長さRsm(μm)、粗さ曲線の最大高さRz(μm)の値をそれぞれ求めた。また実験例1〜4それぞれの板状部材については、板状部材の両主面を透過する光線に対するヘイズ率(%)、全透過率Tt(%)、直接透過率Tp(%)もそれぞれ同様に測定した。
図13は、キーエンス社製レーザー顕微鏡装置VK−9510を用いて撮影された、実験例1〜4の各板状部材(透光性カバー基板)の研削加工された主面の写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。図13(a−1)は実験例1の加工後の板状部材の写真であり、図13(a−2)は実験例1の加熱・徐冷後の透光性カバー基板の写真である。また図13(b−1)は実験例2の加工後の板状部材の写真であり、図13(b−2)は実験例2の加熱・徐冷後の透光性カバー基板の写真である。図13(c−1)は実験例3の加工後の板状部材の写真であり、図13(c−2)は実験例3の加熱・徐冷後の透光性カバー基板
の写真である。図13(d−1)は実験例4の加工後の板状部材の写真であり、図13(d−2)は実験例4の加熱・徐冷後の透光性カバー基板の写真である。
また図14は、日本電子社製走査電子顕微鏡JSM−7001Fを用いて撮影された、実験例1〜4の各板状部材の研削加工された主面の写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。図14(a−1)は実験例1の加工後の写真であり、図14(a−2)は実験例1の加熱・徐冷後の写真である。また図14(b−1)は実験例2の加工後の写真であり、図14(b−2)は実験例2の加熱・徐冷後の写真である。図14(c−1)は実験例3の加工後の写真であり、図14(c−2)は実験例3の加熱・徐冷後の写真である。図14(d−1)は実験例4の加工後の写真であり、図14(d−2)は実験例4の加熱・徐冷後の写真である。
また図15は、キーエンス社製レーザー顕微鏡装置VK−9510を用いて撮影された、実験例5〜8の各板状部材の研削加工された主面の写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。図15(a−1)は実験例5の加工後の写真であり、図15(a−2)は実験例5の加熱・徐冷後の写真である。また図15(b−1)は実験例6の加工後の写真であり、図15(b−2)は実験例6の加熱・徐冷後の写真である。図15(c−1)は実験例7の加工後の写真であり、図15(c−2)は実験例7の加熱・徐冷後の写真である。図15(d−1)は実験例8加工後の写真であり、図15(d−2)は実験例8の加熱・徐冷後の写真である。
また図16は、日本電子社製走査電子顕微鏡JSM−7001Fを用いて撮影された、実験例5〜8の各板状部材の研削加工された主面の写真であり、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示している。図16(a−1)は実験例5の加工後の写真であり、図16(a−2)は実験例5の加熱・徐冷後の写真である。また図16(b−1)は実験例6の加工後の写真であり、図16(b−2)は実験例6の加熱・徐冷後の写真である。図16(c−1)は実験例7の加工後の写真であり、図16(c−2)は実験例7の加熱・徐冷後の写真である。図16(d−1)は実験例8の加工後の写真であり、図16(d−2)は実験例8の加熱・徐冷後の写真である。
また下記表1は、実験例1〜4の各板状部材(および透光性カバー基板)について測定した値を、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示した表である。
図13の各写真を比較して分かるように、加熱・徐冷工程を経ることで、実験例1〜4のいずれにおいても、加工工程において表面に形成された、サファイアが機械的に破壊されてできた非常に細かい割れやヒビ等は修復されていくように平坦化されて、凹凸の周期が比較的大きい、なだらかな表面が再構築されている。
これにより、表1に示されているように、実験例1〜4のいずれにおいても、加工・徐冷後の透光性カバー基板は、粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上、より詳しくは7μm以上に変化している。また、粗さ曲線の最大高さRzも2.5μm未満に変化している。このような粗さ曲線要素の平均長さRsmや、粗さ曲線の最大高さRzの値は、実験例1〜4における加工直後の板状部材では達成できておらず、従来の研削加工や研磨加工では得られなかった値であることが分かる。
また下記表2は、実験例5〜8の各板状部材について測定した値を、加工工程直後(加工後)と、加熱工程および徐冷工程直後(加熱・徐冷後)とに分けてそれぞれ纏めて示した表である。
加熱・徐冷工程を経ることで、実験例5〜8のいずれにおいても、算術平均粗さの大きさはそれほど大きな変化を確認できないが、粗さ曲線要素の平均長さRsm(μm)はいずれも大きくなり、粗さ曲線要素の平均長さRsmが1.9μm以上となっている。
図16から分かるように、加熱・徐冷工程を経ることで、実験例1〜8のいすれにおいても、サファイアを主成分とし、ステップ部と、幅が1μm以上のテラス部とが交互に繰り返し並んだ周期的段差構造を有する表面領域が形成されていることが確認できる。
また、実験例5〜8のいずれにおいても、このように加熱・徐冷工程を経ることで得られた透光性カバー基板を透過する光についてのヘイズ率が70%未満であり、全透過率Ttは80%以上、かつ直接透過率Tpが20%以上であることがわかる。これらの光学特性も、実験例5〜8における加工直後の板状部材では達成できておらず、従来の研削加工や研磨加工では得られなかった値であることが分かる。
図17は、実験例2と同一条件の板状部材(および透光性カバー基板)について、一方の主面から他方の主面に透過する光の状態を比較して示した写真画像である。図14の左側の板状部材は、両方の主面が加工後の状態であり、図14の右側の透光性カバー基板は、両方の主面が加熱・徐冷された状態である。図14の左側の板状部材と右側の透光性カバー基板の下側には、同一濃度で同一形状の文字記号(121212・・・)が標記された紙が置かれている。図14から分かるように、加工工程直後の板状部材(図14の左側の板状部材)では、一方の主面から他方の主面に透過する可視光の散乱が大きいので、下側の主面に対向する紙に標記された文字記号の白濁の度合いが大きい。一方、加熱・徐冷を施した後の、図14の右側の透光性カバー基板は、一方の主面から他方の主面に透過する可視光の散乱が小さいので、下側の主面に対向する紙に標記された文字記号の白濁の度合いが小さく、文字記号が視認し易いことが確認できる。
図18(a)は実験例1のX線回折試験結果であり、図18(b)は実験例2のX線回折試験結果である。図18(a)および(b)のいずれも、PANalytical社製X‘Pert PRO−MRDを用いて、X線出力を45kV/40mAとして測定して得られた値である。図18(a)(b)いずれにも、加熱・徐冷前および加熱・徐冷後それぞれの状態のX線回折試験結果を示している。
図18(a)および(b)からわかるように、表面にX線を照射して測定されるアルミナ単結晶を示すX線回折ピークの半値幅が、加工直後の板状部材に比べて、加熱・徐冷後の透光性カバー基板の方が顕著に小さくなっている(結晶性が高くなる)。加工工程で破壊された最表面層の結晶は、加熱・徐冷によって再結晶化されているといえる。
下記表3は、実験例1のサンプル10個について、JIS K71714に準拠する方法で四点曲げ強度を測定した結果を示している。また下記表4は、実験例1のサンプル5個についてJIS R1607に準拠する方法で破壊靭性を測定した結果を示している。表3および表4から分かるように、加熱工程と徐冷工程とを経ることで、四点曲げ強度と破壊靭性とが向上している。これは、加熱・徐冷工程による表面の再結晶化によって、表面部分を中心に機械強度が向上した為だと考えることができる。
また、実験例1のサンプルについて、150℃の炉内で加熱後に25℃の水の中に落下させる、昇温と降温を繰り返す熱サイクル試験を実施した。、加工工程直後の部材は、この熱サイクル試験を実施した5個のうち4個のサンプルでクラックが発生したのに対して、上述の加熱・徐冷工程を経た後の部材は、この熱サイクル試験を40個実施しても1つもクラックが確認できなかった。これら特性の向上は、本発明の加熱・徐冷工程による細かい傷やヒビの修復や、表面の最結晶化の結果によるものと考えることができる。
なお、上述の例では、本願発明を携帯電話機に適用する場合を例にあげて説明したが、本願発明は携帯電話機以外の電子機器にも適用することができる。例えば、本願発明は、ゲーム機、ノートパソコン、ポータブルナビゲーションシステムなどに適用することができる。また、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
1 透光性カバー基板
1A 一方主面
1B 他方主面
50 制御部
52 画像表示デバイス
52a 画像表示面
53 タッチパネル
55 圧電振動素子
100 電子機器

Claims (11)

  1. 画像表示面を有する画像表示デバイスと、
    前記画像表示面に対向する一方主面と、前記一方主面と反対側の他方主面とを有する透光性カバー基板とを備える電子機器であって、
    前記透光性カバー基板はアルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、少なくとも前記他方主面が、算術平均粗さRaが0.01μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上の表面領域を有することを特徴とする電子機器。
  2. 前記表面領域の算術平均粗さRaが0.1μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが7μm以上であることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
  3. 前記表面領域の粗さ曲線の最大高さRzが2.5μm未満であることを特徴とする請求項1または2記載の電子機器。
  4. 前記一方主面と前記他方主面の前記表面領域とを透過する光線についてのヘイズ率が70%未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。
  5. 前記一方主面と前記他方主面の前記表面領域とを透過する光線についての全透過率Ttが80%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子機器。
  6. 画像表示デバイスの画像表示面に、少なくとも一部が対向するよう配置された透光性カバー基板であって、
    アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、少なくとも前記他方主面が、算術平均粗さRaが0.01μm以上であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1μm以上の表面領域を有することを特徴とする透光性カバー基板。
  7. 画像表示デバイスの画像表示面に、少なくとも一部が対向するよう配置された透光性カバー基板の製造方法であって、
    アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなる基本部材を加工し、加工した表面の少なくとも一部を、算術平均粗さRaを0.1μm以上とする工程と、
    機械加工した前記基本部材を1800℃以上に加熱する工程と、
    前記加熱する工程の後、室温まで降温させる工程とを有することを特徴とする透光性カバー基板の製造方法。
  8. 画像表示面を有する画像表示デバイスと、
    前記画像表示面に対向する一方主面と、前記一方主面と反対側の他方主面とを有する透光性カバー基板とを備える電子機器であって、
    前記透光性カバー基板はアルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、ステップ部と、幅が1μm以上のテラス部とが交互に繰り返し並んだ周期的段差構造を有する表面領域を有することを特徴とする電子機器。
  9. 前記表面領域は、算術平均粗さRaが0.1μm未満であり、かつ粗さ曲線要素の平均長さRsmが1.9μm以上であることを特徴とする請求項8記載の電子機器。
  10. 画像表示デバイスの画像表示面に、少なくとも一部が対向するよう配置された透光性カバー基板であって、
    アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなり、ステップ部と、幅が1μm以上のテラス部とが交互に繰り返し並んだ周期的段差構造を有する表面領域を有することを特徴とする透光性カバー基板。
  11. 画像表示デバイスの画像表示面に、少なくとも一部が対向するよう配置された透光性カバー基板の製造方法であって、
    アルミナ(Al)を主成分とする単結晶体からなる基本部材を加工し、加工した表面の少なくとも一部を、算術平均粗さRaを0.1μm未満とする工程と、
    機械加工した前記基本部材を1800℃〜2000℃に加熱する工程と、
    前記加熱する工程の後、6時間以上かけて室温まで降温させる工程とを有することを特徴とする透光性カバー基板の製造方法。
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