(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照しつつ説明する。なお、図2では、1つのインクジェットヘッド2に対する、インク供給機構30、及び排気機構40の接続態様についてのみ図示している。図1に示すように、インクジェットプリンタ120は、ヘッドユニット1と、搬送機構10と、インク供給機構30と、6つの排気機構40と、パージ機構50(図2参照)と、プリンタ120全体の動作を司る制御装置100とを備える。
搬送機構10は、図1中上方から下方に向かう搬送方向に沿って用紙Pを搬送する機構であり、第1搬送部11、及び第2搬送部12を有している。第1搬送部11及び第2搬送部12は、それぞれ、一対の搬送ローラからなるローラ対である。第1搬送部11は、給紙機構(不図示)から供給された用紙Pを挟持しつつ、当該用紙Pを搬送方向に挟持搬送する。第2搬送部12は、第1搬送部11により搬送された用紙Pを受け取って、当該用紙Pを挟持しつつ、搬送方向にさらに挟持搬送する。
ヘッドユニット1は、6つのインクジェットヘッド2(以下、単にヘッド2)と、ヘッド保持板3とを備えている。ヘッド保持板3は、水平面と平行であり、且つ、主走査方向を長手方向とする略矩形の、金属材料などからなる板状体である。ヘッド2それぞれの下面は、ブラックのインクが吐出される複数の吐出口84(図3参照)が形成された吐出面2a(図2参照)となっている。また、6つのヘッド2は、ヘッド保持板3において、互いに離隔しつつ主走査方向に千鳥状に配列された貫通孔から吐出面2aが露出するように、ヘッド保持板3に取り付けられている。
各ヘッド2は、搬送機構10により搬送される用紙Pが、当該ヘッド2のすぐ下方を通過する際に、吐出口84からインク滴を吐出して、用紙P上に所望のモノクロ画像を記録する。つまり、このインクジェットプリンタ120は、ヘッド2が固定された状態で記録を行うライン式のものである。画像が記録された用紙Pは、搬送機構10により、搬送方向に沿って更に搬送されて、排紙トレイ(不図示)に積載される。本実施形態において、副走査方向とは搬送機構10による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって、水平面に沿った方向である。ヘッド2については、後で詳細に説明する。
インク供給機構30は、各ヘッド2にインクを供給するための機構であり、ヘッド2に供給されるインクを貯留するためのインクタンク31と、各ヘッド2とインクタンク31とを連通するためのインク供給管32とを備える。図2に示すように、インクタンク31の上壁には、インクタンク31内と大気とを連通する大気連通口31aが形成されている。また、インクタンク31の一側面における鉛直方向下方の位置には、インク供給管32に接続された排出口31bが形成されている。インクタンク31内のインクは、この排出口31bからインク供給管32を経由して、各ヘッド2に供給される。
また、インクタンク31は、ヘッド2の吐出面2aよりも鉛直方向下方に配置されている。これにより、吐出口84近傍に形成されるインクメニスカスと、インクタンク31内のインクの液面とに水頭差が生じて、インクメニスカスのインク側が大気圧に比べ負圧となる。その結果、画像記録時以外のときに、吐出口84からインクが吐出されるのを防止することができる。例えば、ヘッド2の後述するリザーバ70内の圧力は大気圧よりも0.3kPa低い圧力になる。
6つの排気機構40は、6つのヘッド2にそれぞれ対応しており、対応するヘッド2内の気体を排出する排出処理を行うための機構である。排気機構40については、後で詳細に説明する。
パージ機構50は、インク増粘等によってヘッド2の吐出特性が低下したときに、その性能を回復させるパージ処理を行うための機構であり、図2に示すように、キャップ部材51、廃液管52、廃液タンク53、吸引ポンプ54、及びキャップ移動機構55(図4参照)等を備えている。
キャップ部材51は、ヘッド2の吐出面2aに吐出口84を囲んで密着可能な弾性部材である。キャップ移動機構55は、画像記録のときには、キャップ部材51を用紙Pと対向する領域よりも外側の待機位置(図2参照)に移動させ、パージ処理のときには、キャップ部材51をヘッド2の吐出面2aと対向して密着されるメンテナンス位置(図6参照)に移動させる。
廃液管52は、キャップ部材51と廃液タンク53とを連通する。また、この廃液管52には、吸引ポンプ54が設けられている。吸引ポンプ54は、パージ処理において、キャップ部材51がメンテナンス位置に配置されている状態で、キャップ部材51内の気体を吸引して内部を減圧することで、インクタンク31から強制的にリザーバ70内へインクを供給しつつ、ヘッド2の吐出口84からキャップ部材51内へインクを排出する。これにより、ヘッド2の吐出特性を回復させることができる。尚、パージ処理によって吐出口84からキャップ部材51に排出されたインクは、廃液管52を経由して廃液タンク53に排出される。本実施形態においては、パージ機構が供給手段に相当する。
制御装置100は、図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、制御回路104、バス105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。制御回路104には、ヘッド2の後述するドライバIC93、搬送機構10等、プリンタ120の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、制御回路104は、PC等の外部装置20と接続されている。CPU101は、外部装置20から送信された記録指令に基づいて、ヘッド2や搬送機構10等を、制御回路104を介して制御して、用紙Pに画像を記録させる。また、CPU101は、パージ機構50における、吸引ポンプ54及びキャップ移動機構55を、制御回路104を介して制御して、パージ処理を実行する。加えて、CPU101は、排気機構40における、大気連通弁45、排気ポンプ46及び開閉弁47を、制御回路104を介して制御して、排出処理を実行する。パージ処理及び排出処理については、後で詳細に説明する。
次に、ヘッド2について、図2,図3を参照しつつ詳細に説明する。なお、図2では、ヘッド本体60については断面図とせず、側面図で示している。図2に示すように、ヘッド2は、ヘッド本体60と、リザーバ70とを有している。
リザーバ70は、ヘッド本体60の吐出口84に供給されるインクを貯留するための部材であり、リザーバ本体71と、排気室72とを備える。リザーバ本体71は、ヘッド本体60の上面に固定されている。リザーバ本体71の上面には、流入口71aと連通口71bとが形成されている。リザーバ本体71はインクタンク31に連通しており、流入口71aを介して、インクタンク31からインクが供給される。また、リザーバ本体71には、4個のインク流出流路71cが形成されている。インク流出流路71cのそれぞれは、ヘッド本体60の後述の流路ユニット61に形成されたインク供給口85(図3(a)参照)のそれぞれに接続されている。画像記録時においては、インク供給機構30からのインクは、インク流出流路71cを通過して、インク供給口85から流路ユニット61に供給される。なお、図2においては、1つのインク流出流路75のみが表れている。
排気室72は、連通口71bを介してリザーバ本体71と連通している。また、排気室72は、リザーバ本体71よりも鉛直方向上方に配置されている。このため、リザーバ70内に存在する気体は、排気室72に滞留されることとなる。
ヘッド本体60は、図3(a)に示すように、流路ユニット61と、圧電アクチュエータ64とを備えている。図3(c)に示すように、流路ユニット61は、5枚のプレート65〜69が積層された構造を有する。5枚のプレート65〜69のうちの最下層のプレート69は、複数の吐出口84が形成されたノズルプレート69である。一方、上側の残り4枚のプレート65〜68には、複数の吐出口84に連通するマニホールド86や圧力室87等の流路が形成されている。
図3(a)に示すように、流路ユニット61の上面には、4つのインク供給口85が副走査方向に並んで形成されている。4つのインク供給口85はリザーバ本体71のインク流出流路75と接続されており、リザーバ70内からインクがそれぞれ供給される。また、流路ユニット61は、その内部に、それぞれ主走査方向に延在する4本のマニホールド86を有する。4本のマニホールド86は、4つのインク供給口85に接続されている。
さらに、流路ユニット61は、その下面に開口した複数の吐出口84と、これら複数の吐出口84にそれぞれ連通する複数の圧力室87とを有する。図3(a)に示すように、平面視で、複数の吐出口84は、4本のマニホールド86にそれぞれ対応して4列に配列されている。複数の圧力室87も、複数の吐出口84と同様に、4本のマニホールド86に対応して4列に配列されている。図3(c)に示すように、各圧力室87は対応するマニホールド86に連通している。以上の構成より、図3(c)に矢印で示すように、流路ユニット61内には、各マニホールド86から分岐して、圧力室87を経て吐出口84に至る個別流路が複数形成されている。
圧電アクチュエータ64は、振動板90と、圧電層94,95と、複数の個別電極92と、共通電極96とを備えている。振動板90は、複数の圧力室87を覆った状態で流路ユニット61の上面に接合されている。2枚の圧電層94,95は、振動板90の上面に積層されている。複数の個別電極92は、図3(b)に示すように、上層の圧電層95の上面において、複数の圧力室87とそれぞれ対向するように配置されている。共通電極96は、2枚の圧電層94,95の間において、複数の圧力室87に跨って配置されている。
制御装置100からの信号を受けて、ドライバIC93から個別電極92に対して駆動信号が供給されると、上層の圧電層95の圧力室87と対向する部分に圧電歪が生じることで、振動板90が撓むように変形する。このとき、圧力室87の容積が変化することによって、個別流路内のインクに圧力が付与されて吐出口84からインクが吐出される。
次に、排気機構40について、図2を参照しつつ詳細に説明する。排気機構40は、気体室41、気体透過膜42、気体排気管43、大気連通管44、大気連通弁45、排気ポンプ46、及び開閉弁47を備えている。
気体室41は、リザーバ70よりも鉛直方向上方に設けられており、その内部には気体が満たされている。気体室41は、リザーバ70における排気室72と、気体透過膜42を介して接続されている。また、気体室41の上面には、排気口41aが形成されている。
気体透過膜42は、気体室41と排気室72との間で気体の透過を許容しつつインクや固体物の透過を阻止するための膜であり、例えば、多孔質のフッ素樹脂膜などが用いられる。なお、気体透過膜42における、この気体透過膜42を気体が通過するときの圧力損失値(例えば、0.1kPa。但し、厳密な圧力損失値は気体透過膜42を通過する気体の速度に比例するため、この値は本実施形態の圧力範囲における平均値である。なお、後述の記載においても簡易化のため、圧力損失値を一定値として表現する場合がある。)は、上述したインクタンク31と吐出面2aとの水頭差により生じるリザーバ70内の圧力と大気圧との差圧の絶対値(例えば、0.3kPa)よりも小さくなるように設定されている。このため、気体室41の圧力を、大気圧以上にした場合、気体室41の気体を、気体透過膜42を介してリザーバ70内に移送させることができる。一方で、気体室41の圧力を、リザーバ70内の圧力から上記圧力損失値を減算した圧力よりも低い圧力(例えば、リザーバ70内の圧力よりも9.7kPa低い圧力)にした場合、リザーバ70内の気体を気体室41に移送させることができる。
気体排気管43は、気体室41における排気口41aと外部(大気)とを連通する。気体排気管43には、気体室41側から順に、排気ポンプ46及び開閉弁47が設けられている。排気ポンプ46は、正逆回転可能なポンプであり、制御装置100の制御の下、気体室41の圧力を調整することが可能に構成されている。具体的には、この排気ポンプ46を正回転で駆動させると気体室41の圧力を低下させることができ、排気ポンプ46を逆回転で駆動させると気体室41の圧力を上昇させることができる。開閉弁47は、制御装置100の制御の下、気体排気管43の流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能なバルブである。
大気連通管44は、気体排気管43における排気ポンプ46よりも気体室41側の位置と外部(大気)とを連通する。この大気連通管44には、大気連通弁45が設けられている。即ち、大気連通弁45は、一端を、気体排気管43及び大気連通管44を介して気体室41に接続し、他端を大気に連通させる弁である。この大気連通弁45は、制御装置100の制御の下、大気連通管44の流路を閉塞する状態及び閉塞しない状態を選択的に切り替え可能である。
次に、CPU101がROM102に記憶されたプログラムに従って実行する排出処理について詳細に説明する。ここで、リザーバ70内は常に負圧環境下に置かれているので、経時により外部の気体がリザーバ70を構成する部材を透過してリザーバ70内に進入する。また、ヘッド2のリザーバ70内に貯留されているインクは、経時によりインク中の水分が蒸発する。インク中の水分が蒸発すると、リザーバ70内には、蒸発した水分だけ気体(エア)が生成される。このような原因などにより、リザーバ70内には、経時により気体が存在することとなる。リザーバ70内に気体が多く存在すると、ヘッド本体60内の流路が閉塞されてヘッド2のインクの吐出特性が低下する可能性が高いため、リザーバ70内に存在する気体を除去する必要がある。排出処理は、このリザーバ70内に存在する気体を気体室41に排出させる処理である。本実施形態において、排出処理は、上述のパージ処理が行われる際に実行される。また、この排出処理は、第1処理と第2処理とを含む。以下、第1処理及び第2処理について説明する。
第1処理は、気体室41の圧力をリザーバ70内の圧力よりも低い圧力(以下、第1圧力)にすることにより、リザーバ70内の気体を、気体透過膜42を透過して気体室41に排出させる処理である。具体的には、CPU101は、第1処理では、開閉弁47を開弁させ、且つ大気連通弁45を閉弁させた状態で、気体室41の圧力が第1圧力となるまで下降するよう排気ポンプ46を正回転で駆動する。なお、第1圧力とは、リザーバ70内の圧力から上記圧力損失値を減算した圧力よりも低い圧力である。例えば、第1圧力は大気圧よりも10kPa低い圧力に設定される。これにより、リザーバ70内から気体室41に確実に気体を移送させることができる。このとき、リザーバ70内から気体室41に移送された気体の体積分だけ、インク供給機構30からリザーバ70内にインクが供給される。
ここで、本実施形態においては、CPU101は、リザーバ70内に滞留する気体の量に関わらず、一定の排出必要時間の間、排気ポンプ46を正回転で駆動する。ここで、排出必要時間とは、排出処理開始時において想定されるリザーバ70内に滞留する気体の量のうち、最も多い気体の量を気体室41に排出させるのに必要な時間である。具体的には、リザーバ70の容量を10ccとすると、この10ccの気体を気体室41へ排出するのに必要な時間となる。なお、リザーバ70内に滞留する気体の想定量が1ccとなるタイミングで排出処理を開始してもよい。通常、この気体の量は、リザーバ70内に滞留した気体がヘッド本体60内の流路に移動して、この流路が閉塞されない程度の量に設定される。また、この排出必要時間は実験などにより設定されるが、リザーバ70に蓄えられる気体の量は、前回の第1処理(排出処理)からの経過時間が長くなるほど、また、リザーバ70内のインクの温度が高くなるほど多くなるので、リザーバ70に蓄えられる気体の量が多くなることに応じてこの時間が長くなるように設定してもよい。また、本実施形態では、排出必要時間の開始時点は、排気ポンプ46の駆動を開始した時点とされてるが、気体室41の圧力が第1圧力(後述する第2圧力、第3圧力も同様)となった時点であってもよい。この場合、気体室41の圧力が第1圧力となるまでにリザーバ70内から気体室41に移送される気体の移送量を考慮して排出必要時間が設定される。
第1処理において、排気ポンプ46を排出必要時間の間駆動することで、リザーバ70内に滞留する気体を全て気体室41に排出させることができ、且つ、リザーバ70内のインクを気体透過膜42に接触させることができる。また、CPU101は、この第1処理を行うことで、リザーバ70内に貯留されるインクの量を検出するセンサ等を用いずに、第1処理後においては、リザーバ70内に気体は存在していない、即ち、リザーバ70内にインクが満杯に貯留されていると判断することができる。
ところで、気体透過膜42は、インクと接していると時間の経過とともにインクが気体透過膜内に浸透しインク中の固体成分(例えば、顔料。)が気体透過膜内に留まることで気体透過膜内の気体流路を目詰まりさせる。その結果、気体透過膜42がインクと接している状態では、インクと接していない状態と比べて、気体透過性能の劣化が進む。上述したように、第1処理が行われると、リザーバ70内のインクが気体透過膜42に接触した状態となるため、この状態が長期間続くと、気体透過膜42の気体透過性能の劣化が進むことになる。そこで、本実施形態においては、CPU101は、第1処理の後に、第1処理においてリザーバ70内から気体室41に排出された気体の量よりも少ない量の気体を、気体室41からリザーバ70内に移送させる第2処理を行う。以下、第2処理について詳細に説明する。
本実施形態において、第2処理は、第1気体移送処理と第2気体移送処理とを含む。第1気体移送処理は、気体室41の圧力をリザーバ70内の圧力よりも高い圧力(以下、第2圧力)にすることにより、気体室41からリザーバ70内に気体を移送させる処理である。ここで、第2圧力は、リザーバ70内の圧力に対して気体透過膜42の圧力損失値を加算した圧力よりも高い圧力である。これにより、気体室41からリザーバ70内に確実に気体を移送させることができる。また、第1気体移送処理は、気体透過膜42の気体透過性能を回復させることも目的とされており、そのため、第2圧力は、気体室41からリザーバ70内へ所定量の気体を移送させた際に、気体透過膜42内の気体流路に詰まったインク中の固体成分をリザーバ70内へ排出させて、気体透過膜42の気体透過性能を回復させることが可能な圧力に設定されている。本実施形態において、例えば、第2圧力は、大気圧である。
CPU101は、第1気体移送処理では、開閉弁47を閉弁させ、且つ排気ポンプ46の駆動を停止させた状態で、大気連通弁45を開弁させる。これにより、気体室41の圧力が大気圧となるため、気体室41からリザーバ70内へ気体が移送される。なお、このとき、CPU101は、大気連通弁45を開弁させる時間等を制御することで、気体室41からリザーバ70内へ移送される気体の量が、気体透過膜42の気体透過性能を回復させるのに必要な上記所定量となるよう調整する。
ここで、上述したように、第1気体移送処理は、気体透過膜42の気体透過性能を回復させることも目的とされている。従って、第1気体移送処理において、気体室41からリザーバ70内に多くの量の気体が移送されて、リザーバ70内にヘッド2のインクの吐出特性に影響を与える量の気体がリザーバ内に滞留する可能性がある。そこで、本実施形態においては、第1気体移送処理の後、気体室41の圧力をリザーバ70内の圧力よりも低い圧力(以下、第3圧力)にすることで、リザーバ70内の気体を気体室41へ移送させる第2気体移送処理を行う。この第3圧力は、リザーバ70内の圧力から、気体透過膜42の圧力損失値を減算した値よりも低い圧力であり、例えば、リザーバ70内の圧力よりも4.7kPa低い圧力に設定される。
続けて、第1処理、並びに第2処理の第1気体移送処理及び第2気体移送処理それぞれの、処理時間、及び気体室41とリザーバ70との差圧の設定方法について説明する。第1処理によりリザーバ70内から気体室41へ移送される気体の最大量は、第1処理におけるリザーバ70内と気体室41との、気体透過膜42の圧力損失値を除いた差圧の平方根に、上記排出必要時間(第1処理の処理時間)を乗算して得られる値(以下、A値)に比例する。同様に、第2処理における第1気体移送処理により気体室41からリザーバ70内に移送される気体の最大量は、第1気体移送処理におけるリザーバ70内と気体室41との、気体透過膜42の圧力損失値を除いた差圧の平方根に、第1気体移送処理の処理時間を乗算して得られる値(以下、B値)に比例する。また、第2処理における第2気体移送処理によりリザーバ70内から気体室41に移送される気体の最大量は、第2気体移送処理におけるリザーバ70内と気体室41との、気体透過膜42の圧力損失値を除いた差圧の平方根に、第2気体移送処理の処理時間を乗算して得られる値(以下、C値)に比例する。本実施形態では、上記B値から上記C値を減算した値が上記A値よりも小さい関係(A値>(B値―C値))が保たれるように、第1処理、並びに第2処理の第1気体移送処理及び第2気体移送処理それぞれの、処理時間、及び気体室41とリザーバ70との差圧が設定される。より詳細には、上記B値から上記C値を減算した値が上記A値よりも小さい関係を考慮しつつ、第1処理によりリザーバ70内から気体室41へ移送される気体の量よりも、第2処理により気体室41からリザーバ70内へ移送される気体の量が少なくなるように、それぞれの処理に係る処理時間及び気体室41とリザーバ70との差圧が、実験などにより設定されている。
ここで、第1処理、並びに第2処理の第1気体移送処理及び第2気体移送処理それぞれにおける、処理時間及びリザーバ70内の圧力設定の一例について示す。第1処理において、排気ポンプ46を制御して、気体室42の圧力が大気圧よりも10kPa低い状態を4秒間継続する。そうすることによりリザーバ70内が全て気体で満たされていたとしても全ての気体が気体室42に移送される。次に、第2処理の第1気体移送処理において、大気連通弁45を開弁させて、気体室42の圧力を大気圧にした状態で、2.1秒間放置する。そうすると第1気体移送処理により気体室42からリザーバ70内に1ccの気体が移送される。最後に第2気体移送処理では、排気ポンプ46を制御して、気体室42の圧力が大気圧よりも5kPa低い状態を、0.4秒間継続する。そうするとリザーバ70内から気体室42に0.8ccの気体が移送され、リザーバ70内には0.2ccの気体が残ることになる。
なお、第1処理において、リザーバ70内に滞留している気体の想定量が1ccとした場合は、気体室42の圧力が大気圧よりも10kPa低い状態を0.4秒間継続させればよい。実際にリザーバ70に滞留している気体の量はわからないため、想定量に対して多めの気体がリザーバ70から気体室42に移送されるように排気ポンプ46を駆動する時間を設定するのが望ましい。
また、リザーバ70内に滞留する実際の気体の量が想定量よりも少なく第1処理の処理時間が長くなったとしても、気体透過膜42の存在によりリザーバ70内から気体室42にインクが入り込むという問題が生じることはない。これに対して、第1気体移送処理においては気体室42からリザーバ70に10cc以上の気体を移送すると、ヘッド本体60内の流路に気体が移送される可能性が高いので、10cc未満の気体量を移送(例えば1cc)させている。
CPU101は、第2気体移送処理では、開閉弁47を開弁させ、且つ大気連通弁45を閉弁させた状態で、気体室41の圧力が第3圧力となるまで下降するよう排気ポンプ46を正回転で駆動する。このとき、CPU101は、第2気体移送処理においてリザーバ70内から気体室41に移送される気体の量が、第1気体移送処理において気体室41からリザーバ70内に移送された気体の量よりも少なくなるよう排気ポンプ46等を制御する。本実施形態においては、排気ポンプ46及び大気連通弁45が、第1圧力調整手段に相当する。
次に、CPU101がROM102に記憶されたプログラムに従って実行する、排出処理及びパージ処理の一例について、図5を参照しつつ説明する。まず、初めに、CPU101は、パージ処理が必要か否かを判断する(S1)。具体的には、CPU101は、プリンタ120に電源が投入されたとき、又は、ヘッド2の吐出口84からインクが長時間の間吐出されていないときに、パージ処理が必要であると判断する。そして、CPU101は、パージ処理が必要でないと判断した場合(S1:NO)には、ステップS1の処理を繰り返す。
一方、パージ処理が必要であると判断した場合(S1:YES)には、CPU101は、開閉弁47を開弁させ、且つ大気連通弁45を閉弁させた状態で、気体室41の圧力が第1圧力となるよう排気ポンプ46を正回転で駆動して、第1処理を開始する(S2)。
次に、CPU101は、第1処理を開始してから、上記排出必要時間経過したか否かを判断する(S3)。第1処理を開始してから排出必要時間経過していないと判断した場合(S3:NO)には、ステップS3の処理を繰り返す。一方で、第1処理を開始してから排出必要時間経過したと判断した場合(S3:YES)には、リザーバ70内に滞留する気体が全て気体室41に排出されたとして、CPU101は、開閉弁47を閉弁させ、排気ポンプ46の駆動を停止させて、第1処理を終了する(S4)。
次に、CPU101は、パージ機構50を制御して、パージ処理を実行する(S5)。具体的には、CPU101は、キャップ移動機構55を制御してキャップ部材51をメンテナンス位置に配置させる。そして、CPU101は、吸引ポンプ54を駆動して、キャップ部材51内の空気を吸引して内部を減圧することで、ヘッド2の吐出口84からキャップ部材51内へインクを強制的に排出する。その後、CPU101は、吸引ポンプ54の駆動を停止して、キャップ移動機構55を制御してキャップ部材51を待機位置に配置させることで、パージ処理を終了する。ここで、パージ処理を開始するときには、上述したように排出処理における第1処理により、リザーバ70内の気体は全て気体室41に排出されている。このため、パージ処理により、リザーバ70内の気体が、ヘッド本体60に移動してヘッド本体60の流路を閉塞することはない。
次に、CPU101は、大気連通弁45を開弁させることで、第1気体移送処理を実行する(S6)。これにより、気体室41の圧力が大気圧となるため、気体室41からリザーバ70内へ気体が移送される。その結果、気体透過膜42内の気体流路に詰まったインク中の固体成分がリザーバ70内へ排出され、気体透過膜42の気体透過性能が回復する。その後、CPU101は、大気連通弁45を閉弁させることで第1気体移送処理を終了する。なお、CPU101は大気連通弁45の開弁時間等に基づき、第1気体移送処理により気体室41からリザーバ70内へ移送された気体の量を算出することができる。
次に、CPU101は、開閉弁47を開弁させ、且つ大気連通弁45を閉弁させた状態で、気体室41の圧力が第3圧力となるよう排気ポンプ46を正回転で駆動して、第2気体移送処理を実行する(S7)。なお、CPU101は、第2気体移送処理においてリザーバ70内から気体室41に移送させる気体の量は、排気ポンプ46の駆動時間等で調整することができる。そして、第2気体移送処理では、CPU101は、第1気体移送処理において気体室41からリザーバ70内に移送された気体の量よりも少ない量の気体が、リザーバ70内から気体室41に移送されるよう排気ポンプ46等を制御する。具体的には、CPU101は、第2気体移送処理の後において、リザーバ70内にインクの吐出特性の低下に影響を与えない程度の少量の気体が滞留するように排気ポンプ46等を制御する。これにより、第2気体移送処理の後においては、リザーバ70内に貯留されるインクは、気体透過膜42には接触しない。その結果、気体透過膜42の気体透過性能がインクとの接触により劣化することを抑制することができる。ステップS7の処理が終了すると、本処理を終了する。
以上、本実施形態によると、排出処理を行うことで、この排出処理を行う前と比べて、リザーバ70内に滞留する気体の量を低減することができる。また、排出処理における第2処理後においては、リザーバ70には少量の気体が滞留することになるため、気体透過膜42にはインクが接触しない。その結果、気体透過膜42の気体透過性能の劣化を抑制することができる。
また、本実施形態によると、第2処理における第1気体移送処理においては、気体透過膜42の性能が回復するように気体室41からリザーバ70内に所定量の気体が移送されるため、気体透過膜42の気体透過性能の劣化をさらに抑制することができる。加えて、第1気体移送処理後に第2気体移送処理を行うことで、リザーバ70内に滞留する気体の量を少なくすることができる。その結果、リザーバ70内に滞留する気体によりヘッド2の吐出性能が低下することを抑制することができる。加えて、第2処理における第1気体移送処理は、大気連通弁45の開閉という簡易な制御で実行することができる。
また、本実施形態によると、第1処理は、排出処理開始時において想定されるリザーバ70内に滞留する気体の量のうち、最も多い気体の量を気体室41に排出させるのに必要な時間の間行われる。即ち、排出処理開始時におけるリザーバ70内に貯留されるインクの量に関わらず、第1処理後においては、リザーバ70内に貯留されるインクが気体透過膜42に接触される。また、第2処理では、リザーバ70と気体室41との間で移送される気体の量は、排気ポンプ46の駆動時間等を制御することで調整することができる。従って、本実施形態では、リザーバ70内に貯留するインクの量を検出するセンサ等を設けない簡易な構成で、排出処理後にリザーバ70内に滞留する気体の量を調整することができる。
また、本実施形態によると、パージ処理が行われる前に排出処理の第1処理が行われる。このため、パージ処理開始時において、リザーバ70内に滞留する気体の量を低減することができるので、ヘッド本体60に気体が侵入することを抑制することができる。その結果、ヘッド2の吐出性能が低下することをさらに抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るインクジェットプリンタについて、図6及び図7を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態における排気機構40は大気連通管44及び大気連通弁45を備えていたが、第2実施形態における排気機構140では、大気連通管及び大気連通弁を備えていない。また、第2実施形態では、排気機構140は、リザーバ70と気体室41との間に、開閉弁141及び圧力検出センサ142を備えている。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
図6に示すように、排気機構140における開閉弁141は、リザーバ70における排気室72と気体室41との間における、気体透過膜42よりも気体室41側に設けられている。そして、開閉弁141は、制御装置100の制御の下、気体透過膜42と気体室41とを連通させる状態と連通させない状態とを選択的に切り替え可能に構成されている。本実施形態では、排出処理における第1気体移送処理において、開閉弁141を閉弁させた状態で排気ポンプ46を逆回転で駆動することで、気体室41の圧力を上昇させる。そして、気体室41の圧力が第2圧力となったときに開閉弁141を開弁させることで、気体室41の気体をリザーバ70内に移送させる。本実施形態では、第2圧力は大気圧よりも高い圧力である。これにより、気体室41とリザーバ70内との圧力差が大きい状態で、気体室41の気体をリザーバ70内に移送させることができるので、気体透過膜42の気体通路に詰まったインク中の固体成分を効率よくリザーバ70に排出させることができる。その結果、気体透過膜42の気体透過性能を効率よく回復させることができる。また、気体室41からリザーバ70内への気体が高圧力で移送されるため、気体透過膜42の気体透過性能を回復させるために必要な気体の移送量を低減することができ、その結果、第1気体移送処理の時間を短くすることができる。
加えて、本実施形態では、排出処理における第1気体移送処理において、パージ機構50を制御して、リザーバ70内の圧力を、画像記録のときよりも低くさせる。具体的には、CPU101は、キャップ部材51をメンテナンス位置に配置させた状態で、吸引ポンプ54を駆動させることで、リザーバ70内の圧力を低下させる。これにより、第1気体移送処理時における、気体室41とリザーバ70内との圧力差をより大きくすることができるので、気体透過膜42の気体通路に詰まったインク中の固体成分を効率よくリザーバ70内に排出させることができる。本実施形態においては、排気ポンプ46及び開閉弁141が第1圧力調整手段に相当する。また、パージ機構50が第2圧力調整手段に相当する。
圧力検出センサ142は、リザーバ70における排気室72と、気体室41との間における、気体透過膜42よりも排気室72側の圧力を検出するためのセンサであり、その検出結果を制御装置100に出力する。圧力検出センサ142の圧力検出位置は、気体透過膜42の近傍であり、且つ気体透過膜42よりも鉛直方向下方の位置である。ここで、リザーバ70内から気体室41へ気体を移送させる第1処理の開始前においては、リザーバ70内には気体が滞留されている。このため、圧力検出センサ142の圧力検出位置は、リザーバ70内に貯留されるインクの液面よりも鉛直方向上方となる。この後、第1処理が開始されて、リザーバ70内の気体が気体室41に移送されて、リザーバ70内に満杯のインクが貯留されると、圧力検出センサ142の圧力検出位置はリザーバ70内に貯留されるインクの液面よりも鉛直方向下方となる。また、第1処理を実行している際において、リザーバ70内に貯留されるインクの液面が、圧力検出センサ142の圧力検出位置よりも鉛直方向下方にあるときには、圧力検出センサ142により検出される圧力の値は、時間の経過とともに降下する(負圧が大きくなる)。その後、リザーバ70内に貯留されるインクの液面が上昇して、圧力検出センサ142の圧力検出位置よりも鉛直方向上方になると、圧力検出センサ142により検出される圧力の値は上昇して、インクの液面が圧力検出位置よりも鉛直方向上方となる直前の圧力の値よりも大きくなる。そこで、本実施形態において、CPU101は、第1処理を実行している際に、圧力検出センサ142から出力される圧力が、第1処理を実行している際におけるインクの液面が圧力検出位置よりも鉛直方向上方となるときの圧力である所定値(第2所定値)以上となった場合に、リザーバ70内に貯留されているインクが気体透過膜42に接触したと判断して、第1処理を終了する。
次に、CPU101がROM102に記憶されたプログラムに従って実行する、排出処理及びパージ処理の一例について、図7を参照しつつ説明する。ステップA1及びA2の処理は、図5における上述のステップS1及びS2の処理と略同様なので説明を省略する。ステップA2の処理の後、CPU101は、圧力検出センサ142から出力された圧力が上記第2所定値以上であるか否かを判断する(A3)。圧力検出センサ142から出力された圧力が第2所定値未満であると判断した場合(A3:NO)には、リザーバ70内に貯留されているインクが気体透過膜42に接触していないとして、ステップA3の処理を繰り返す。一方で、圧力検出センサ142から出力された圧力が第2所定値以上であると判断した場合(A3:YES)には、CPU101は、リザーバ70内に貯留されているインクが気体透過膜42に接触したと判断して、ステップA4の処理に移る。
ステップA4及びA5の処理は、図5における上述のステップS4及びS5の処理と略同様なので説明を省略する。ステップA5の処理の後、CPU101は、第1気体移送処理を実行すべく、開閉弁47を開弁させ、且つ開閉弁141を閉弁させた状態で、排気ポンプ46を逆回転で駆動させる(A6)。これにより、気体室41の圧力が上昇する。また、このとき、CPU101は、キャップ部材51をメンテナンス位置に配置させた状態で、吸引ポンプ54を駆動させる。これによりリザーバ70内の圧力を低下させることができる。
次に、CPU101は、排気ポンプ46の駆動時間等に基づき気体室41の圧力を算出し、気体室41の圧力が第2圧力となったか否かを判断する(A7)。変形例として、気体室41の圧力を検出する圧力検出センサを設け、CPU101が、当該圧力検出センサからの検出結果に基づき、気体室41の圧力が第2圧力となったか否かを判断してもよい。気体室41の圧力が第2圧力未満であると判断した場合(A7:NO)には、ステップA7の処理を繰り返す。一方で、気体室41の圧力が第2圧力であると判断した場合(A7:YES)には、CPU101は、開閉弁47を閉弁させ、且つ排気ポンプ46の駆動を停止させた後、開閉弁141を開弁させる(A8)。これにより、気体室41の気体がリザーバ70へ移送される。その後、CPU101は、開閉弁141を閉じて、第1気体移送処理を終了する。このステップA8の処理が終了すると、図5における上述のステップS7と略同様なステップA9の処理を行って、本処理を終了する。
以上、本実施形態においても、排出処理を行うことで、リザーバ70内に滞留する気体の量を低減しつつ、気体透過膜42の気体透過性能の劣化を抑制することができる。また、第1気体移送処理では、開閉弁141を閉弁させた状態で排気ポンプ46を逆回転で駆動させて、気体室41の圧力を第2圧力まで上昇させた後、開閉弁141を開弁させている。これにより、気体室41からリザーバ70内への気体移送を高圧力で行うことができるので、気体透過膜42の気体透過性能を効率よく回復させることができる。加えて、第1気体移送処理に要する時間を短くすることができる。また、第1気体移送処理では、キャップ部材51をメンテナンス位置に配置させた状態で吸引ポンプ54を駆動させることで、リザーバ70内の圧力を低下させている。これにより、気体室41からリザーバ70内への気体移送をより高圧力で行うことができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るインクジェットプリンタについて、図8及び図9を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、第3実施形態では、インク供給管32に接続されたリザーバ170と、リザーバ170に滞留する気体を排出させるための排気機構240とを更に備えている点である。なお、排気機構240は、第1実施形態における排気機構40と略同様の構成であるため、対応する構成要素については、排気機構40の構成要素の符号に200を加算した符号を付して、その説明を適宜省略する。また、リザーバ170に係る排出処理も、上述したヘッド2のリザーバ70に係る排出処理と略同様であるため、その説明を適宜省略する。
ここで、ヘッド2とインクタンク31とを連通するインク供給管32においても、経時によりインク中の水分が蒸発して気体が生成される。このようにインク供給管32に生成された気体は、インクタンク31からヘッド2へのインク供給時に、インクと共にヘッド2に供給されることになるため、ヘッド2の流路の目詰まり等の要因になり得る。そこで、本実施形態では、インク供給管32に生成された気体を、リザーバ170を介して、排気機構240により排出させる。なお、このリザーバ170に係る排出処理は、所定時間間隔毎に実行される。
本実施形態では、図8に示すように、インク供給機構30は、インク供給管32から分岐して、リザーバ170の流入口170aに至る接続管33を備えている。リザーバ170は、ヘッド2に供給されるインクを一時的に貯留する部材であり、リザーバ本体171と、排気室172とを備える。リザーバ本体171の下面には流入口170aが形成され、上面には連通口171bが形成されている。リザーバ本体71には、流入口170aを介して、インクタンク31からインクが供給される。排気室172は、リザーバ本体171の上面において、連通口171bを介してリザーバ本体71と連通している。また、排気室172は、リザーバ本体171よりも鉛直方向上方に配置されている。
排気機構240の気体室241は、リザーバ170よりも鉛直方向上方に設けられている。また、排気機構240の大気連通管244には、大気連通弁の代わりにリリーフ弁150が設けられている。即ち、リリーフ弁150は、一端を気体排気管243及び大気連通管244を介して気体室241に接続し、他端を大気に連通させている。ところで、リザーバ170内の気体を気体室241に排出させる第1処理において、リザーバ170内に気体が全て気体室241に排出されると、リザーバ170内に気体が滞留しているときと比べて、気体室241の圧力が急激に降下する(気体室241の圧力が上記第1圧力よりも降下する)。その結果、リザーバ170内の圧力と気体室241との圧力差が大きくなり、気体透過膜42の故障等が生じる虞がある。
そこで、本実施形態においては、リリーフ弁150のリリーフ圧が、気体室241の圧力と大気圧との差が、大気圧と上記第1圧力との差である第1所定値以下である場合には閉弁し、気体室241の圧力と大気圧との差が第1所定値よりも大きい場合には開弁するように設定されている。これにより、気体室241の圧力が第1圧力よりも低くなった場合には、リリーフ弁150が開弁され気体室241と大気とが連通することになるため、気体室241の圧力が第1圧力よりも著しく低くなることはない。
また、本実施形態では、リリーフ弁150は制御装置100に接続されており、制御装置100はリリーフ弁150の開閉を検知可能に構成されている。そして、制御装置100は、第1処理を実行している際に、リリーフ弁150が開弁されたときには、リザーバ170内のインクが気体透過膜42に接触したと判断して、第1処理を終了する。
次に、CPU101がROM102に記憶されたプログラムに従って実行する、リザーバ170に係る排出処理の一例について、図9を参照しつつ説明する。まず、CPU101は、前回のリザーバ170に係る排出処理から所定時間経過したか否かを判断する(B1)。所定時間経過していないと判断した場合(B1:NO)には、ステップB1の処理を繰り返す。一方で、所定時間経過したと判断した場合(B1:YES)には、CPU101は、開閉弁247を開弁させた状態で、気体室241の圧力が降下するよう排気ポンプ246を正回転で駆動して、第1処理を開始する(B2)。その後、CPU101は、リリーフ弁150が開弁したか否かを判断する(B3)。リリーフ弁150が開弁していないと判断した場合(B3:NO)には、リザーバ70内に貯留されているインクが気体透過膜42に接触していないとして、ステップB2の処理を繰り返す。一方で、リリーフ弁150が開弁したと判断した場合(B3:YES)には、CPU101は、リザーバ70内に貯留されているインクが気体透過膜42に接触したと判断して、排気ポンプ246の回転を停止して第1処理を終了し(B4)、その後、排気ポンプ246を逆回転で駆動して、第1気体移送処理を実行する(B5)。これにより、気体室41の圧力が第2圧力となるため、気体室41からリザーバ70内へ気体が移送される。その結果、気体透過膜42内の気体流路に詰まったインク中の固体成分がリザーバ70内へ排出されて、気体透過膜42の気体透過性能が回復する。
その後、CPU101は、排気ポンプ246を正回転で駆動して、第2気体移送処理を実行する(B6)。第2気体移送処理では、CPU101は、第1気体移送処理において気体室241からリザーバ170に移送された気体の量よりも少なくない量の気体が、リザーバ170から気体室241に移送されるよう排気ポンプ246等を制御する。これにより、第2気体移送処理の後においては、リザーバ170内に貯留するインクは、気体透過膜242には接触しない。その結果、気体透過膜242の気体透過性能がインクとの接触により劣化することを抑制することができる。ステップB6の処理が終了すると、本処理を終了する。
以上、本実施形態においては、排出処理を行うことで、リザーバ170内に滞留する気体の量を低減しつつ、気体透過膜242の気体透過性能の劣化を抑制することができる。また、本実施形態では、リリーフ弁150のリリーフ圧が、気体室241の圧力と大気圧との差が、大気圧と第1圧力との差である第1所定値以下である場合には閉弁し、気体室241の圧力と大気圧との差が第1所定値よりも大きい場合には開弁するように設定されている。これにより、圧力検出センサやリザーバ170内のインクの貯留量を検出するセンサ等を設けずに簡易な構成で、CPU101が、リザーバ170内のインクが気体透過膜242に接触したか否かを判断することができる。
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。例えば、上述の実施形態では、第1処理はリザーバ内のインクが気体透過膜に接触するまで行われているが、リザーバ内のインクが気体透過膜に接触される前に第1処理を終了してもよい。即ち、第1処理によりリザーバ内に滞留する気体を全て気体室に排出させる必要がない。この場合においても、第2処理では、第1処理においてリザーバ内から気体室に排出された気体の量よりも少ない量の気体が、気体室からリザーバ内に移送されるため、排出処理を行う前と比べて、リザーバ内に滞留する気体の量を低減することができる。
また、上述の第1及び第2実施形態では、パージ処理が行われるときに排出処理が行われるよう構成されているが、排出処理は別の契機に実行されるように構成されていてもよい。また、上述の第1実施形態における、第1気体移送処理において、排気ポンプ46を逆回転で駆動して気体室41の圧力(第2圧力)を大気圧よりも高い圧力にしてもよい。
また、上述の実施形態では、第2処理において、第2気体移送処理を行わずに第1気体移送処理のみが行われるように構成されていてもよい。この場合、第1気体移送処理は、気体透過膜242の気体透過性能を回復させることを目的としていなくてもよい。このとき、第1処理、及び第2処理の第1気体移送処理それぞれの、処理時間、及び気体室41とリザーバ70との差圧は、上記B値が上記A値よりも小さい関係(A値>B値)が保たれるように、実験等により設定される。また、このとき、第1気体移送処理において、排気ポンプ46を逆回転で駆動して気体室41の圧力(第2圧力)を大気圧よりも高い圧力にしてもよい。なお、具体例としては、第1実施形態における第1気体移送処理において、大気連通弁45を開弁させて、気体室42の圧力を大気圧にした状態で、0.42秒間放置させる。これによりリザーバ内に0.2ccの気体が移送されてリザーバ70内に残存することになる。
また、上述の実施形態では、第1気体移送処理では、気体室からリザーバ内への気体の移送は、気体透過膜を透過して行われているが、気体室とリザーバとの間にバイパス流路を設け、気体室からリザーバ内への気体の移送を、気体透過膜を介さずにこのバイパス流路を介して行ってもよい。この場合、バイパス流路に、気体室からリザーバ内へ流体が流れる方向の流れのみを許容する逆止弁を設けることが好ましい。
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。
また、上述の実施形態において、CPUが単一のCPUにより各処理を実行してもよいし、複数のCPU、あるいは特定のASIC(application specific integrated circuit)、CPUと特定のASICの組み合わせにより処理を実行してもよい。