JP2015142720A - 止血材 - Google Patents
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Abstract
Description
1つの実施形態において、上記自己組織化ペプチドの濃度が、1.0重量%〜3.0重量%である
1つの実施形態において、上記止血材のpHが、5〜8である。
1つの実施形態において、上記止血材の可視光透過率が80%以上である。
1つの実施形態において、上記自己組織化ペプチドを構成するアミノ酸残基のpH7.0における電荷の総和が、−3〜−1または+1〜+3である。
1つの実施形態において、上記止血材は、0.03重量%〜0.5重量%の濃度でさらに強酸と塩基との塩を含む。
本発明の止血材は、自己組織化ペプチドと水とを含み、該自己組織化ペプチドの自己組織化によって形成されたゲル(以下、「自己組織化ペプチドゲル」と称する)からなる。本明細書において、ゲルとは、粘性的な性質と弾性的な性質とを併せ持つ粘弾性物質を意味する。具体的には、動的粘弾性測定を行なって、貯蔵弾性率G’および損失弾性率G’’を測定したときに、「G’>G’’」となる物質をゲルということができる。
自己組織化ペプチドとしては、水溶液中においてペプチド分子同士の相互作用を介して自発的に集合してゲルを形成し得る任意の適切なペプチドが用いられ得る。ペプチド分子同士の相互作用としては、例えば、水素結合、イオン間相互作用、ファンデルワールス力等の静電的相互作用および疎水性相互作用が挙げられる。
a1b1c1b2a2b3db4a3b5c2b6a4 (I)
(上記アミノ酸配列中、a1〜a4は、塩基性アミノ酸残基であり;b1〜b6は、非電荷極性アミノ酸残基および/または疎水性アミノ酸残基であり、ただし、そのうちの少なくとも5個は、疎水性アミノ酸残基であり;c1およびc2は、酸性アミノ酸残基であり;dは、疎水性アミノ酸残基である。)
n−RLDLRLALRLDLR−c(配列番号1)
n−RLDLRLLLRLDLR−c(配列番号2)
n−RADLRLALRLDLR−c(配列番号3)
n−RLDLRLALRLDAR−c(配列番号4)
n−RADLRLLLRLDLR−c(配列番号5)
n−RADLRLLLRLDAR−c(配列番号6)
n−RLDLRALLRLDLR−c(配列番号7)
n−RLDLRLLARLDLR−c(配列番号8)
n−RASARADARASARADA−c(配列番号9)
n−RANARADARANARADA−c(配列番号10)
n−RAAARADARAAARADA−c(配列番号11)
n−RASARADARADARASA−c(配列番号12)
n−RADARASARASARADA−c(配列番号13)
n−RASARASARASARADA−c(配列番号14)
n−RASARADARASA−c (配列番号15)
n−KASAKAEAKASAKAEA−c(配列番号16)
n−SAEAKAEASAEAKAEA−c(配列番号17)
n−KLSLKLDLKLSL−c (配列番号18)
n−KLALKLDLKLAL−c (配列番号19)
水としては、イオン交換水、蒸留水等の精製された水が好ましく用いられ得る。
本発明の止血材は、貯蔵弾性率を調整するために塩をさらに含み得る。具体的には、所定の濃度の塩を含むことにより、単純に塩を含まない場合と比較すると、止血材(実質的には、自己組織化ペプチドゲル)の貯蔵弾性率が増加し、所望の貯蔵弾性率を獲得し得る。このような効果が奏される理由は定かではないが、以下のように推測される。すなわち、プラスに帯電したペプチドの場合、塩が水溶液中で解離することによりマイナス電荷を有するアニオンが生じ、該アニオンが正電荷アミノ酸にカウンターイオンとして結合することで、プラス電荷を遮蔽するようになる。その結果、ペプチド間の斥力の過剰分が減殺されて、ナノファイバー同士の結合がより強固になるためにゲルの貯蔵弾性率が350Pa〜3000Paの範囲内に調整可能となると推測される。
本発明の止血材は、必要に応じて任意の適切な添加物をさらに含み得る。例えば、本発明の止血材は、好ましくはpH調整剤を含む。
本発明の止血材の製造方法は、代表的には、自己組織化ペプチドと水と任意に塩および/または添加物とを混合して自己組織化ペプチド水溶液を得ること(混合工程)、および、得られた水溶液を静置することにより自己組織化ペプチドを自己組織化させて自己組織化ペプチドゲルを得ること(ゲル化工程)を含む。必要に応じて、混合工程の後であってゲル化工程の前に、自己組織化ペプチド水溶液を脱泡および/または脱気すること(脱泡工程)をさらに含み得る。
本発明の止血材は、止血材単独で出血部位に適用されてもよく、任意の適切な支持体(例えば、透明フィルム)に塗布されて止血フィルムとして出血部位に貼付されてもよい。止血材単独で出血部位に適用する方法としては、シリンジ内に配置された止血材をプランジャで押し出して出血部位に配置する方法、チューブや袋などの容器内に配置された止血材をヘラ等の塗布用の器具に移してから出血部位に塗布する方法等が挙げられる。本発明の止血材は、出血部位を圧迫して止血し得る十分な貯蔵弾性率を維持しつつ、出血部位の形状に沿って密着し得る柔軟性を有するので、止血性に優れる。
動的粘弾性測定装置である回転式レオメーター(TA instruments社製、製品名「ADVANCED RHEOMETER AR 1000」)を用いて、止血材の貯蔵弾性率G’を測定した。具体的には、以下のとおりである。まず、試料に接触させるためのジオメトリー(アルミニウム製コーン、直径20mm、コーン角1°、ギャップ24μm)と試料台を一定の温度に保つための恒温槽とをレオメーターに取り付けた。次いで、温度:37℃、トルク:1μN・m、周波数:0.5rad/s〜100rad/sの測定条件下、以下の測定手順で1つの試料について3回測定し、1rad/sのときの値の平均値を貯蔵弾性率G’とした。
(1)ピペットを用いて55μLの試料をレオメーターの試料台に配置する。
(2)ジオメトリーを試料台から24μmのギャップまで移動させ、試料と接触させる。
(3)ジオメトリーをわずかに動かし、試料となじませる。
(4)ジオメトリーの動きを止めてから15秒後(この15秒の間に、試料からの溶媒の揮発を防止するためのソルベントトラップを取り付ける)に、測定を開始する。
pHは、ポータブルpHメーター(堀場製作所社製、製品番号「B−712」)を用いて測定した。
得られた止血材の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
良好:気泡および白濁が認められず、透明である。
不良:気泡および/または白濁が認められる。
表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材1とした。具体的な手順は以下のとおりである。すなわち、自己組織化ペプチド(SPG−178:N末端がアセチル化され、C末端がアミド化された配列番号1のペプチド)およびトレハロース・二水和物を容器に秤り入れた。次いで、該容器に水を投入し、蓋をした。該容器を自転公転撹拌装置(株式会社シンキー製、製品番号「ARE−310」)にセットし、撹拌した。
表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材2とした。具体的な手順は以下のとおりである。すなわち、自己組織化ペプチド(SPG−178)および塩化ナトリウムを秤量し、遠沈管に投入した。次いで、水を投入し、超音波型ホモジナイザー(Sonic&Material,Inc.社製、製品番号「Vibra−Cell VC−505」)を用いて500Wの出力で5分処理して混合した。
自己組織化ペプチドと塩化ナトリウムに加えてスクロースも遠沈管に投入したこと以外は実施例2と同様の手順で表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材3とした。
自己組織化ペプチドとして、SPG−220(N末端がアセチル化され、C末端がアミド化された配列番号18のペプチド)を用いたこと以外は実施例1と同様の手順で表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材4とした。
塩化ナトリウムを用いずに、自己組織化ペプチドとスクロースとを遠沈管に投入したこと以外は実施例2と同様の手順で表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材C1とした。
実施例2と同様の手順で表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材C2とした。
塩化ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例2と同様の手順で表1に示す組成の自己組織化ペプチドゲルを調製し、止血材C3とした。
実施例1で得られた止血材1を用いて止血効果を評価した。具体的には、モルモットの肝臓をメスで5mm程度切開し、切開口に実施例1で得られた自己組織化ペプチドゲルを配置した。その結果、止血材を出血部位に配置してから10秒以内に止血が完了した。なお、止血材が透明であったために、出血部位を確認しながらその上に止血材を容易に配置することができた。また、出血部位に配置された止血材を介して目視で止血の完了を確認することができた。
自転公転撹拌装置または超音波ホモジナイザーを用いて、表2に記載の組成の自己組織化ペプチド水溶液を調製し、該水溶液から自己組織化ペプチドゲルを形成させた。自転公転撹拌装置および超音波ホモジナイザーを用いた自己組織化ペプチド水溶液およびゲルの調製方法および条件はそれぞれ、実施例1および実施例2と同様とした。得られた自己組織化ペプチドゲルに関して、HATRサンプリングアクセサリーとセレン化亜鉛結晶からなるトラフプレートを設置したフーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、製品名「Spectrum One」)を用いて全反射吸収法にて以下の条件でIR測定を行った。IR測定結果のグラフを図1に示す。
<IR測定条件>
scan number:32回
波数の範囲:400〜4000cm−1
分解能:4cm−1
OPD velocity:0.2cm/sec
測定温度:室温
セレン化亜鉛結晶への赤外線入射角:45°
Claims (6)
- 自己組織化ペプチドと水とを含み、該自己組織化ペプチドの自己組織化によって形成されたゲルからなる止血材であって、
該ゲルの37℃における回転式レオメーターによって測定される貯蔵弾性率が、350Pa〜3000Paである、止血材。 - 前記自己組織化ペプチドの濃度が、1.0重量%〜3.0重量%である、請求項1に記載の止血材。
- pHが、5〜8である、請求項1または2に記載の止血材。
- 可視光透過率が80%以上である、請求項1から3のいずれかに記載の止血材。
- 前記自己組織化ペプチドを構成するアミノ酸残基のpH7.0における電荷の総和が、−3〜−1または+1〜+3である、請求項1から4のいずれかに記載の止血材。
- 0.03重量%〜0.5重量%の濃度でさらに強酸と塩基との塩を含む、請求項1から5のいずれかに記載の止血材。
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