JP2015140662A - 水力発電装置 - Google Patents

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宏明 水之江
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Abstract

【課題】農業用水路等の開水路に容易に設置でき、かつ、降雨等の影響により、水路の水位が著しく変化しても、水位の変化に影響を受けることなく動作し、さらに、流れて来る草や小枝等のゴミが水車の回転を阻害しない水車型の水力発電装置を提供する。
【解決手段】回転力を発生する、複数の羽根17を備えた水車3は、水流の力を受ける前記水車の羽根が、前記羽根17が水流の下流に向って回転する時は、水車軸15、16に対し、前記羽根17の角度が垂直になり、前記羽根17が水流の上流に向って回転する時は、前記羽根17の角度は、自動的に水に対し一番抵抗の少ない角度になるよう、前記羽根17の角度を変化させる機構を有する。さらに、前記水車3を回転させる水流が、前記水力発電装置の外側に沿って流れる構造となっている。
【選択図】図4

Description

本願の発明は、農業用水路等の開水路の水流を複数の羽根に受けて水車を回転させ、動力を発生する水力発電装置に関し、特に、前記羽根が、水流の下流に向って回転する時は、羽根の角度が、前記水車の軸(回転軸)に対し垂直な角度に固定され、羽根が水流の上流に向って回転する時は、羽根は回転自在となり、水の抵抗を利用して、水流に対し一番抵抗の少ない角度に変位する機構を有する水力発電装置に関する。
農業用水路等の開水路の水流で回転する水車を動力とする水力発電装置では、降雨等の影響により、水路の水位が著しく上昇したり、水路を流れて来る、草や木の枝その他のゴミが水車に引っ掛かって、水車の回転を阻害するといった問題がある。
ところが、従来の水力発電装置では、特開2009―127447号公報(特許文献1)に記載されているような、下掛け水車の技術を利用したものでは、水位が上昇して、水車の回転領域を満水で流れる状態になると、水車は回転力を著しく低下させるか、回転力を失ってしまうという問題がある。また、水位の上昇に対応するためには、水車の直径を大きくせざるを得ず、装置が大型化してしまうという問題もある。
また、実用新案登録第3179682号公報(特許文献2)に記載されている例では、水車内部に浮力体を設け、水位が上昇すると、水車が浮力によって上昇し、水車が水没しないという提案がなされているが、水位の変化及び波により上下動する水車と、発電機ユニットを連結するために、フレキシブルな動力伝達ワイヤを用いているので、水車の回転力のロスが大きい。
この、水位の上昇という問題を解決するために、水没型の水車を用いた水力発電装置が提案されているが、水没型の水車で問題になるのは、水路を流れて来る、草や木の枝その他のゴミである。この問題を解決するために、例えば、特開2013―7376号公報(特許文献3)では、水車への水の流入口に、湾曲したスクリーンを設け、ゴミの水車部への流入を防ぐ案が提案されている。また、例えば、特開2008―31879号公報(特許文献4)では、水流に対し傾斜した、スノコ状の筋状スクリーンを設けてゴミの水車部への流入を防ぐ案が提案されている。しかし、いずれの例でも、ゴミを防止するスクリーンを定期的に掃除しなければならないという問題がある。さらに、これらスクリーンの抵抗により、水車へ流入する水流の速度が低下するという問題もある。
特開2009―127447号公報 実用新案登録第3179682号公報 特開2013―7376号公報 特開2008―31879号公報
本願の発明は、従来の農業用水路等の水流で回転する水車を動力とする水力発電装置が有する前記のような問題点を解決して、水路に容易に設置でき、かつ、降雨等の影響により、水路の水位が著しく変化しても、水位の変化に影響を受けることなく動作し、さらに、流れて来る草や小枝等のゴミが水車の回転を阻害しない水車型の水力発電装置を提供することを課題とする。
前記のような課題は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載された次のような発明により解決される。
すなわち、その請求項1に記載された発明は、農業用水路等に設置される水車を利用した水力発電装置において、前記水車は、その全体が水に没する水没型の水車であり、前記水車の外縁部近傍であって、前記水車の回転軸と同心の同一円周上に等間隔に、かつ、前記水車の回転軸と平行に設けられた、回転自在の複数の羽根軸と、複数の前記羽根軸の各々に、水流を受ける羽根の、前記水車の外縁部側端部が固定されて、前記羽根軸と一体に回転する複数の羽根と、前記水車の中心部近傍であって、前記水車の回転軸と同心の同一円周上に等間隔に設けられ、複数の前記羽根の各々の、前記羽根軸と一体の回転を止める複数のストッパーと、を備え、複数の前記羽根の各々は、羽根が、前記水車と共に水流の下流に向って回転する時は、水流に押されて前記羽根軸と一体に前記ストッパーに当たるまで回転し、羽根が、前記水車の回転軸に対して垂直な角度に固定されると、水流を受けて水車の回転力を発生し、羽根が、前記水車と共に水流の上流に向って回転する時は、水流の抵抗により前記羽根軸と一体に回転して、自動的に水流に対し一番抵抗の少ない角度に変位する、ことを特徴とする水力発電装置である。
また、その請求項2に記載された発明は、前記水車の中心部に、前記水車の回転軸と同心に、円筒形のパイプを更に備え、前記パイプは、前記羽根が、前記水車の回転軸に対して垂直な角度にある時の、前記水車の回転軸に近い側の羽根の端部と前記水車の回転軸中心との間の距離よりわずかに小さい半径を有し、前記羽根が、前記水車の回転軸に対して垂直な角度にある時に、前記羽根に当たった水流が、前記水車の中心方向に流れるのを防ぐ、ことを特徴とする請求項1に記載の水力発電装置である。
また、その請求項3に記載された発明は、前記羽根の、前記水車の外縁部側端部が、前記羽根軸を前記水車の回転方向の前方側で越えて伸びて、これを内部に取り込みつつ、前記水車の回転方向の後方側で前記羽根軸側に鋭角に折り曲げられた、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水力発電装置である。
また、その請求項4に記載された発明は、前記水車の前部と後部(水流に対して上流部と下流部)とに、水ガイド板を設け、前記羽根が水流を受ける部分である前記水車の半分の部分のみを、前記水ガイド板から水流に向けて突出させた、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水力発電装置である。
さらに、その請求項5に記載された発明は、前記水車を2機、それぞれの回転軸が平行になるようにして備え、さらに、これらの水車の前部と後部とに、水ガイド板を設け、水流が、前記水力発電装置の外側に沿って流れて、2機の前記水車を回転させる、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の水力発電装置である。
さらに、その請求項6に記載された発明は、2機の前記水車は、それぞれの回転軸が、ギヤ等の動力伝達機構で連結された、ことを特徴とする請求項5に記載の水力発電装置である。
また、その請求項7に記載された発明は、水路の底から一定距離の隙間が設けられ、前記水路に開閉自在に取り付けられた、観音開き式のゲートの、下流側の開放端部のそれぞれに、前記水車及び前記水ガイド板を、それぞれの水車の回転軸が水面に対して垂直になるようにして取り付けた、ことを特徴とする請求項4に記載の水力発電装置である。
本願の発明は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
水車の回転力を発生する羽根が、水車の外縁部近傍に回転自在に設けられた羽根軸に取り付けられ、該羽根軸を中心に羽根軸と共に自由に回転でき、さらに、羽根が水流の圧力を受けて回転した時、羽根が前記水車の回転軸に対して垂直な角度で羽根の回転を止めるストッパーを備えている。
そのため、羽根が水流を受け、水車を回転させる力を発生する時、すなわち、羽根が水車と共に水流の下流に向って回転する時は、羽根は、水流の圧力で回転して前記ストッパーに当たり、前記水車の回転軸に対して垂直な角度で固定され、水流の力を受け止めて水車の回転力を発生することができる。
また、羽根が水流の上流に向って回転する時は、羽根は、水の抵抗により回転して、前記ストッパーより離れて自由に回転し、自動的に水に対し一番抵抗の少ない角度に変位し、羽根に対する水流の力を受け流して、羽根が水車の回転に対する抵抗になることを防ぐことができる。
このように、水車の羽根が水流の上流側に回転する時に、水車の回転を阻害する力を発生しないため、水車全体を水没した状態で使用することができるので、水路の水位が上下しても水車の回転に影響を受けることはない。さらに、水車が水没型であるため、前記水車の回転軸が水面に対し平行な状態でも、水面に対し直交な状態でも水車を設置することができる。
さらに、前記水車の中心部には、円筒形のパイプが配置されているので、羽根が水車の回転軸に対して垂直な角度の時に、羽根に当たった水流が、水車の中心方向へ流れるのを防ぎ、水流の力を、より羽根に集中させることができる。
また、前記羽根は、羽根の前記水車の外縁部側端部が、前記羽根軸を前記水車の回転方向の前方側で越えて伸びて、これを内部に取り込みつつ、前記水車の回転方向の後方側で前記羽根軸側に鋭角に折り曲げられているので、水車の回転と共に、羽根が水流の上流に向って回転する時、水が羽根の前記折り曲げ部に当たり、水車の前部と後部(上流部と下流部)とに設けられた水ガイド板の方に向って流され、羽根と水ガイド板の間を流れて羽根を押し上げて、羽根が水ガイド板に接触するのを防ぐことができる。
また、水車の前部と後部とに水ガイド板を設けることにより、水の流れ方向に対し浅い角度の位置の羽根に対し、上流より流れてきた水流を、前部の水ガイド板で導いて、羽根に対し深い角度で当てることができ、水車の回転力を増すことができる。
さらに、水車の前部と後部とに設けた水ガイド板から、前記羽根が水流を受ける部分である水車の半分の部分のみを突出させることにより、上流から流れてきたゴミは、羽根に当たっても、羽根(水車)の回転に伴って、スムーズに下流へ流れ去り、ゴミが水車に詰まったりすることがない。
また、前記水車を2機、それぞれの回転軸(水車軸)が平行になるように備えた、水力発電装置では、水路の中央部の、水流の速い部分を有効に利用できるとともに、その前部と後部とに設けられた水ガイド板により、前述のごとく、上流から流れてきたゴミは、前記水力発電装置の外側に沿って流れ去り、ゴミが水車に詰まったりすることがない。
また、小型の水車を2機とした場合と、直径が前記水車の2倍で、水流の力を受ける前記羽根の水車の半径方向の幅が2倍の、大型の水車を1機とした場合とを比べる(但し、水車の全長、すなわち、羽根の長さは同じとする)と、ロスの無い理想的な状態(計算上)では、水車の回転速度は、小型の水車の場合、大型の水車の回転速度の2倍になる。一方、羽根が発生する回転トルクは、大型の水車の1機の場合、小型の水車の1機が発生する回転トルクの4倍になる。
ここで、水車の発生する単位時間当たりの回転エネルギーを、(回転トルク)×(単位時間当たりの回転数)と定義すると、前記の2機の小型の水車の回転軸(水車軸)を、ギヤ等の動力伝達機構で連結することにより、小型の水車の合計回転トルクは2倍となり、さらに、小型の水車の単位時間当たりの回転数(回転速度)も2倍であるので、掛け合わせると、発電機ユニットへの回転エネルギーを、大型の水車と同じ値にまで増加させることができる。
しかしながら、発生する回転エネルギーは同じでも、小型の水車を2機使用した装置の方が、よりコンパクトに製作することができ、水路への設置も容易になる。
参考までに、上記を計算式で表すと、
水流流速 V
単位面積あたりの水の押す力 P
水車の羽根の数 小型水車=N 大型水車=N
水車の半径(羽根の先端部の半径)小型水車=D 大型水車=2D
羽根幅(水車半径方向の長さ) 小型水車=W 大型水車=2W
羽根長さ(水車軸方向の長さ) 小型水車=L 大型水車=L
水車の回転数 小型水車=Ra 大型水車=Rb
水車のトルク(羽根N枚) 小型水車=Ta 大型水車=Tb
水車の回転エネルギー 小型水車=Qa 大型水車=Qb
とすると、
水車が回転する時、理想的状態では、水流流速と水車の羽根の先端の速度は同じである。
したがって、
単位時間当たりの水車の回転数は、
小型水車では、V=2πDRa なので、 Ra=V/(2πD)
大型水車では、V=2π(2D)Rb=4πDRb なので、 Rb=V/(4πD)
すなわち、Rb=V/(4πD)=Ra/2 となり、
小型水車の単位時間当たりの回転速度は、大型水車の2倍になる。
次に、羽根N枚の発生するトルクを計算する。
羽根根元の水車中心からの距離=a、羽根の先端部の中心部からの距離=b とすると、
トルク T=NLP∫rdr=NLP(b/2−a/2) であるので、
小型水車では、a=D−W, b=D
Ta=NLP[{(D−(D−W)}/2]
=NLPW(2D−W)/2
大型水車では、a=2D−2W, b=2D
Tb=NLP[{(2D)−(2D−2W))}/2]
=2NLPW(2D−W)=4Ta となり、
大型の水車の単位時間当たりの回転エネルギーは、小型の水車の4倍になる。
水車の発生する単位時間当たりの回転エネルギーを、(回転トルク)×(単位時間当たりの回転数)と定義すると、
大型の水車では、Qb=TbRb=4Ta×(Ra/2)=2TaRa
小型水車を2機連結した、合計回転エネルギーは、2Qa=2TaRa=Qb
となり、発生する回転エネルギーは、理想的な条件の計算上は、同じになる。
また、水路の底から一定距離の隙間が設けられ、該水路に開閉自在に取り付けられた、観音開き式のゲートの、下流側の開放端部のそれぞれに、前記水車及び前記水ガイド板を取り付けた装置では、水路に、その開度を調整できるゲート備えているため、その開度を調節して水の流路を絞ることにより、水車の当たる水流の速度を上げることができるので、水流の速度が低い水路にも設置することができる。
また、ゲートで水の流路を絞ることにより、水がせき止められて水路の水位が上昇し、水車の羽根の全域に水を当てることができる。
さらに、ゲートと水路の底との間に隙間を設けてあるので、増水時に上流から流れて来る石ころなどを、ゲートの所に溜めずに下流に流すことができる。
本願の発明の第1の実施例の、水力発電装置の斜視図である。 同水力発電装置の水車ユニットの斜視図である。 同水力発電装置の水車ユニットの内部を示す斜視図である。 同水力発電装置の水車ユニットの中央断面図である。 同水力発電装置の水車ユニットの断面の部分拡大図である。 本願の発明の第2の実施例の、水力発電装置を設置した状態の平面図である。 同水力発電装置を川下側から見た斜視図である。
(第1の実施例)
次に、本願の発明の水力発電装置の第1の実施例を、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
本願の発明の水力発電装置は、農業用水路等の開水路に設置して、水路を流れる水の力を利用して水車を回して発電を行う装置である。
本実施例の水力発電装置1は、図1に示すように、水車3を2機備えた水車ユニット2と、これに取り付けられた、前記2機の水車3を連結する、動力伝達機構4と、これに接続された発電機ユニット5と、支持部材6とにより、概略構成されている。
水力発電装置1は、支持部材6によって保持され、図示しない、水路上部に設けられた固定部材に取り付けられる。
前記水車3が、水路を流れる水流7によって回転することにより発電する。
以下に、前記各部について、それぞれ詳細に説明する。
先ず、水力発電装置1の水車ユニット2の構造を、図2と図3で説明する。
図2は、水車ユニット2の外観を示す斜視図であり、該水車ユニット2の内部に、図の上下方向に2機の水車3が並列配置されている。それぞれの水車3には、水車3の両端に設けられた水車側板12の外縁部近傍に回転自在に保持された羽根軸21と、該羽根軸21に取り付けられ、羽根軸21を中心に羽根軸21と共に回転自在な羽根17と、水流7によって押された羽根17の回転を止めるストッパー13とが、それぞれ複数配置されている。ストッパー13は、前記両側の水車側板12に固定されている。
ここで、複数の羽根17の各々は、羽根軸21に、その水車3の外縁部側端部が固定されて取り付けられている。
また、複数の羽根軸21は、水車3の回転軸(以下、水車軸ともいう)と同心の同一円周上に等間隔に、かつ、水車3の回転軸と平行に設けられている。
さらに、複数のストッパー13は、水車3の中心部近傍であって、水車3の回転軸と同心の同一円周上に、複数の羽根軸21とそれぞれ位相を同じくして、等間隔に設けられている。
また、水車3の中心部には、羽根17が水車3の回転軸に対して垂直な角度をなす時に、羽根17に当たった水が水車3の中心方向へ流れるのを防ぐ円筒形筒状のパイプ18が、水車3の回転軸と同心に、配置されている。これにより、水流7の力を、より羽根17に集中させることができる。パイプ18も、前記両側の水車側板12に固定されている。
これらの羽根軸21及びパイプ18を保持する水車側板12は、水車軸に固定されており、羽根17が水流7によって押されることにより水車軸を回転させる。
前記水車3の前部、すなわち水流7の上流側に、前部水ガイド板8が配置され、水車3の後部、すなわち水流7の下流側に、後部水ガイド板9が配置されており、水流7が水車ユニット2の外側に沿ってスムーズに流れるよう、水流7を制御している。
これらの、水車3や前部水ガイド板8や後部水ガイド板9は、水車ユニット側板A10と水車ユニット側板B11によって保持されている。
前記2機の水車3の水車軸A15と水車軸B16には、ギヤ14が固定され、更に水車ユニット側板B11に取り付けられたアイドルギヤシャフト22に、回転自在に取り付けられた2個のギヤ14で、両水車軸は連結されている。
これにより、2機の水車3の回転力(回転トルク)を合わせて、前記発電機ユニット5への回転力を増大させることができる。
これらのギヤ14やそのカバーを含んだ、動力伝達機構4は、図1に示されている。
水車ユニット2の構造を、図3で更に詳しく説明する。
なお、図示された2機の水車3は、横間隔板19に対し上下対称で同じ構造なので、図の上側の水車3で説明する。
図に示す8枚の羽根17は、それぞれ羽根軸21に取付けられ、羽根軸21は、水車側板12の外縁部に回転自在に保持されている。また、羽根17が水車軸A15に対して垂直な角度をなす時に、羽根17に当たった水流が、水車軸A15の方に向って流れるのを防ぐために、パイプ18が、両側の水車側板12の間に配置されている。
また、水流7によって押された羽根17の回転を止める複数の羽根ストッパー13が、前記両側の水車側板12に固定されている。
羽根17は、水流7が当たる、図の水車3の上側に位置する時は、水流7の力で回転して前記羽根ストッパー13に当たってその回転を止められ、羽根17は、水車軸A15に対し、垂直な角度になるように固定され、水流7の力を受けて、上側の水車3を図3では左回転させる力を発生させる。
また、羽根17が水流7の上流に向って回転する、すなわち、図の水車3の下側に位置する時は、羽根17は、水の抵抗により羽根軸21に対して左回りに回転して、前記羽根ストッパー13より離れて自由に回転するようになり、自動的に水に対し一番抵抗の少ない角度に変位し、羽根17に対する水流の力を受け流して、羽根17が水車3の回転に対する抵抗になることを防ぐことができる。
前記水車3の前部(上流側)に設けられた前部水ガイド板8は、水流7の上流に向ってその断面が略楕円形の突出部と、水車ユニット2の内側に、水車3と同心円の曲面部とを持っている。
また、前記水車3の後部(下流側)に設けられた後部水ガイド板9は、水流7の下流に向って延びたスロープ状の部分と、水車ユニット2の内側に、水車3と同心円の曲面部とを持っている。
前記、図の上下2機の水車3や前部水ガイド板8や後部水ガイド板9は、水車ユニット側板A10と図示されていない水車ユニット側板B11(図の手前側の切り取られた部分)によって保持されている。さらに、水車ユニット2を補強するために、前記水車ユニット側板A10と水車ユニット側板B11の間に、横間隔板19と水車3の前後に2枚の縦間隔板20が配置されている。
図3の右側から流れてきた水流7は、前部水ガイド板8により、図の上下方向に分かれて、水車3の羽根17に当たり、上側の水車3は左回りに回転し、下側の水車3は右回りに回転する。
水車3を回転させた水流7は、後部水ガイド板9によって、スムーズに後方へ流れていく。
さらに、図に示すように、前記水車3の前部と後部に設けられた水ガイド板から、前記羽根17が水流7を受ける部分である、水車3の半分の部分のみを突出させることにより、上流から流れてきたゴミは、羽根17に当たっても、羽根17(水車3)の回転に伴って、スムーズに下流へ流れ去り、ゴミが水車3に詰まったりすることがない。
次に、水流7と羽根17の動きに関して、図4でその概略を説明し、図5で更に詳細に説明する。
図4は、水力発電装置1の水車ユニット2の中央断面図である。
図4の右から流れてきた水流7は、前記前部水ガイド板8の前部の、その断面が略楕円形の突出部によって図の上下に分かれる。
水の流れは、前記横間隔板19に対し、上下対称に同じ動きをするので、図4に図示される上側の水車3で説明する。
前記前部水ガイド板8の突出部に沿って流れてきた水流7は、水車3の羽根17に当たって、羽根17を羽根軸21を中心に右回転させ、羽根17は、前記羽根ストッパー13に当たって、水車軸A15に対して垂直な角度に固定され、水の圧力を受けて水車3を回転させる力を発生させる。
その後、水流7は、水車ユニット2の外周に沿って、羽根17を押しつつ流れて行き、前記後部水ガイド板9に沿って下流に流れ去る。
また、前記前部水ガイド板8の突出部に沿って流れてきて、水車3の羽根17に当たった水流7の一部は、図4に示すごとく、羽根17と羽根17の間を通って、水車3の下側の、水車ユニット2の内部へも流入する。
この水流7は、自由回転する羽根17の間を通って、前記後部水ガイド板9の、水車ユニット2の内側の、水車3と同心円の曲面部に沿って流れて、前記水車ユニット2の外部へ流出する。
なお、水車軸A15と水車軸B16には、ギヤ14が固定されており、これらのギヤ14は、図示されていない水車ユニット側板B11に備えられた、2つのギヤ14を介して連結され、発電機ユニット5への回転力を増加させている。
図5は、図4の上側の水車ユニット2の断面の部分拡大図である。
図5で、水流7と羽根17の動きについて、特に、水車3の下側を流れる、水車ユニット2の内部の水流7と羽根17の動きについて、更に詳しく説明する。
本図で、水流7は、図の右側から左側に向って流れ、水車3は、左回りに回転している。
前記のごとく、前記前部水ガイド板8の突出部に沿って流れてきた水流7は、羽根17に当たり、羽根17を羽根軸21を中心に右回転させるとともに、一部の水流7は、前記水車ユニット2の内部に流入する。
同時に、この水流7は、その流れが前記水車ユニット2の内部に流入する方向に、羽根17に当たって曲げられるとき、羽根17を押し上げて、水車3の回転力も生み出す。
この水流7は、水車3に備えた前記パイプ18と、前部水ガイド板8の水車ユニット2の内側の水車3と同心円の曲面部と、横間隔板19と、後部水ガイド板9の水車ユニット2の内側の水車3と同心円の曲面部とで形成される空間を通って、水車ユニット2の外部に流出する。
水が充満して流れる前記空間に、水車3の回転と共に羽根17が、前記空間の水が流出する開口部から進入してくると、羽根17は、水の抵抗により羽根軸21を中心に左回転して、前記羽根ストッパーから離れて自由に回転できるようになる。
その結果、羽根17は、水の抵抗により、自動的に水に対し一番抵抗の少ない角度に変位して移動していく。
さらに、前記羽根17の、前記水車3の外縁部側の端部が、前記羽根軸21側に鋭角に折れ曲がっているため、水車3の回転にともなって羽根17が移動していくと、この折り曲げ部分に当たった水は、前記前部水ガイド板8の水車ユニット2の内側の水車3と同心円の曲面部や、横間隔板19に向って流れ込み、羽根17を押し上げて、前記前部水ガイド板8や横間隔板19に、羽根17の他方の端部が接触するのを防ぐ。
(実施例の効果)
本実施例の水力発電装置1は、前記のように構成されていて、前記のように作動するので、次のような効果を奏することができる。
水車3の回転力を発生する羽根17が、水車3の外縁部近傍に回転自在に設けられた羽根軸21に取り付けられ、該羽根軸21を中心に羽根軸21と共に自由に回転でき、さらに、羽根17が水流7の圧力を受けて回転した時、羽根17が前記水車の回転軸に対して垂直な角度で羽根17の回転を止める羽根ストッパー13を備えている。
そのため、羽根17が水流7を受け、水車3を回転させる力を発生する時、すなわち、羽根17が水車3と共に水流7の下流に向って回転する時は、羽根17は、水流7の圧力で回転して前記羽根ストッパー13に当たり、前記水車の回転軸に対して垂直な角度で固定され、水流7の力を受け止めて水車3の回転力を発生することができる。
また、羽根17が水流7の上流に向って回転する時は、羽根17は、水の抵抗により回転して、前記羽根ストッパー13より離れて自由に回転し、自動的に水に対し一番抵抗の少ない角度に変位し、羽根17に対する水流7の力を受け流して、羽根17が水車3の回転に対する抵抗になることを防ぐことができる。
このように、水車3の羽根17が水流の上流側に回転する時に、水車3の回転を阻害する力を発生しないため、水車3全体を水没した状態で使用することができるので、水路の水位が上下しても水車3の回転に影響を受けることはない。さらに、水車3が水没型であるため、前記水車の回転軸が水面に対し平行な状態でも、水面に対し直交な状態でも水車3を設置することができる。
さらに、水車3の中心部には、円筒形のパイプ18が配置されているので、羽根17が水車の回転軸に対して垂直な角度の時に、羽根17に当たった水流7が、水車3の中心方向へ流れるのを防ぎ、水流7の力を、より羽根17に集中させることができる。
また、前記羽根17は、羽根17の前記水車3の外縁部側端部が、前記羽根軸21を前記水車3の回転方向の前方側で越えて伸びて、これを内部に取り込みつつ、前記水車3の回転方向の後方側で前記羽根軸21側に鋭角に折り曲げられているので、水車3の回転と共に、羽根17が水流7の上流に向って回転する時、水が羽根17の前記折り曲げ部に当たり、水車3の前部と後部(上流部と下流部)に設けられた水ガイド板の方に向って流され、羽根17と水ガイド板の間を流れて羽根17を押し上げて、羽根17が水ガイド板に接触するのを防ぐことができる。
また、水車3の前部と後部とに水ガイド板を設けることにより、水の流れ方向に対し浅い角度の位置の羽根17に対し、上流より流れてきた水流7を、前部水ガイド板8で導いて、羽根17に対し深い角度で当てることができ、水車3の回転力を増すことができる。
さらに、前記水車3の前部と後部とに設けた水ガイド板から、前記羽根17が水流7を受ける部分である水車3の半分の部分のみを突出させることにより、上流から流れてきたゴミは、羽根17に当たっても、羽根17(水車3)の回転に伴って、スムーズに下流へ流れ去り、ゴミが水車3に詰まったりすることがない。
また、前記水車3を2機、それぞれの回転軸(水車軸)が平行になるように備えた、水力発電装置1では、水路の中央部の、水流7の速い部分を有効に利用できるとともに、その前部と後部とに設けられた水ガイド板により、前述のごとく、上流から流れてきたゴミは、前記水力発電装置1の外側に沿って流れ去り、ゴミが水車3に詰まったりすることがない。
また、小型の水車3を2機とした場合と、直径が前記水車3の2倍で、水流7の力を受ける前記羽根17の水車3の半径方向の幅が2倍の、大型の水車3を1機とした場合とを比べる(但し、水車3の全長、すなわち、羽根17の長さは同じとする)と、ロスの無い理想的な状態(計算上)では、水車の回転速度は、小型の水車3の場合、大型の水車3の回転速度の2倍になる。一方、羽根17が発生する回転トルクは、大型の水車3の1機の場合、小型の水車3の1機が発生する回転トルクの4倍になる。
ここで、水車3の発生する単位時間当たりの回転エネルギーを、(回転トルク)×(単位時間当たりの回転数)と定義すると、前記の2機の小型の水車3の回転軸(水車軸)を、ギヤ14等の動力伝達機構4で連結することにより、小型の水車3の合計回転トルクは2倍となり、さらに、小型の水車3の単位時間当たりの回転数(回転速度)も2倍であるので、掛け合わせると、発電機ユニット5への回転エネルギーを、大型の水車3と同じ値にまで増加させることができる。
しかしながら、発生する回転エネルギーは同じでも、小型の水車3を2台使用した装置の方が、よりコンパクトに製作することができ、水路への設置も容易になる。
(第2の実施例)
次に、本願の発明の水力発電装置の第2の実施例について説明する。
本実施例2の水力発電装置で、水車3を1機備えた水車ユニット2を、水路に設けたゲート25の端部に設置した場合を説明する。
本実施例2を図6および図7に示す。
図6は、本実施例2の水力発電装置を設置した状態の平面図である。
図7は、本実施例2の水力発電装置を川下側から見た斜視図である。
本実施例2では、水路の両側の側面23の各々に、ゲートヒンジ26を介して回転可能で、水路の底24との間に、上流から流れてきた石ころなどを流すための隙間を設けて取り付けられたゲート25を設置し、該ゲート25の端部に、水車3を1機備えた水車ユニット2を設置したものである。
水車3の水車軸(水車軸A15、水車軸B16)は、前記ゲート25の上部に設置された、図示されていない発電機ユニット5にそれぞれが連結される。
本実施例2の水力発電装置は、以上の点で実施例1の水力発電装置と異なるが、その他の点で異なるところはなく、また水車ユニット2の作動も、本実施例1の水力発電装置における水車ユニット2と異なるところはないので、これ以上の詳細な説明を省略する。
本実施例2の水力発電装置は、前記のように構成されていて、前記のように作動するので、次のような効果を奏することができる。
水路にゲートヒンジ26を介して回転することにより、その開度を調整できるゲート25を備えているため、その開度を調節して水の流路を絞ることにより、水車3に当たる水流7の速度を上げることができるため、水流7の速度が低い水路にも設置することができる。
さらに、ゲート25で水の流路を絞ることにより、水がせき止められて水路の水位が上昇し、水車3の羽根17の全域に水を当てることができる。
また、ゲート25と水路の底24との間に隙間を設けてあるので、増水時に上流から流れて来る石ころなどを、ゲート25の所に溜めずに下流に流すことができる。
本願の発明は、以上の実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
1…水力発電装置、2…水車ユニット、3…水車、4…動力伝達機構、5…発電機ユニット、6…支持部材、7…水流、8…前部水ガイド板、9…後部水ガイド板、10…水車ユニット側板A、11…水車ユニット側板B、12…水車側板、13…羽根ストッパー、14…ギヤ、15…水車軸A、16…水車軸B、17…羽根、18…パイプ、19…横間隔板、20…縦間隔板、21…羽根軸、22…アイドルギヤシャフト、23…水路の側面、24…水路の底、25…ゲート、26…ゲートヒンジ。

Claims (7)

  1. 農業用水路等に設置される水車を利用した水力発電装置において、
    前記水車は、その全体が水に没する水没型の水車であり、
    前記水車の外縁部近傍であって、前記水車の回転軸と同心の同一円周上に等間隔に、かつ、前記水車の回転軸と平行に設けられた、回転自在の複数の羽根軸と、
    複数の前記羽根軸の各々に、水流を受ける羽根の、前記水車の外縁部側端部が固定されて、前記羽根軸と一体に回転する複数の羽根と、
    前記水車の中心部近傍であって、前記水車の回転軸と同心の同一円周上に等間隔に設けられ、複数の前記羽根の各々の、前記羽根軸と一体の回転を止める複数のストッパーと、
    を備え、
    複数の前記羽根の各々は、
    羽根が、前記水車と共に水流の下流に向って回転する時は、水流に押されて前記羽根軸と一体に前記ストッパーに当たるまで回転し、羽根が、前記水車の回転軸に対して垂直な角度に固定されると、水流を受けて水車の回転力を発生し、
    羽根が、前記水車と共に水流の上流に向って回転する時は、水流の抵抗により前記羽根軸と一体に回転して、自動的に水流に対し一番抵抗の少ない角度に変位する、
    ことを特徴とする水力発電装置。
  2. 前記水車の中心部に、前記水車の回転軸と同心に、円筒形のパイプを更に備え、
    前記パイプは、
    前記羽根が、前記水車の回転軸に対して垂直な角度にある時の、前記水車の回転軸に近い側の羽根の端部と前記水車の回転軸中心との間の距離よりわずかに小さい半径を有し、
    前記羽根が、前記水車の回転軸に対して垂直な角度にある時に、前記羽根に当たった水流が、前記水車の中心方向に流れるのを防ぐ、
    ことを特徴とする請求項1に記載の水力発電装置。
  3. 前記羽根の、前記水車の外縁部側端部が、前記羽根軸を前記水車の回転方向の前方側で越えて伸びて、これを内部に取り込みつつ、前記水車の回転方向の後方側で前記羽根軸側に鋭角に折り曲げられた、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水力発電装置。
  4. 前記水車の前部と後部とに、水ガイド板を設け、
    前記羽根が水流を受ける部分である前記水車の半分の部分のみを、前記水ガイド板から水流に向けて突出させた、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水力発電装置。
  5. 前記水車を2機、それぞれの回転軸が平行になるようにして備え、さらに、これらの水車の前部と後部とに、水ガイド板を設け、
    水流が、前記水力発電装置の外側に沿って流れて、2機の前記水車を回転させる、
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の水力発電装置。
  6. 2機の前記水車は、それぞれの回転軸が、ギヤ等の動力伝達機構で連結された、
    ことを特徴とする請求項5に記載の水力発電装置。
  7. 水路の底から一定距離の隙間が設けられ、前記水路に開閉自在に取り付けられた、観音開き式のゲートの、下流側の開放端部のそれぞれに、前記水車及び前記水ガイド板を、それぞれの水車の回転軸が水面に対して垂直になるようにして取り付けた、
    ことを特徴とする請求項4に記載の水力発電装置。








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