JP2015140645A - 道路標識柱 - Google Patents
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Abstract
【課題】親水性の汚染物質に対して有効な防汚性を有する道路標識柱を提供する。【解決手段】フッ素系ガスを用いたプラズマ処理によりCF結合の割合を増加させた道路標識柱表面を形成してなる疎水防汚性を付与された道路標識柱、好ましくは、CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面のF/Cの比率が0.6〜2.0である道路標識柱、さらに好ましくは、CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面における水の接触角が100?以上とする。【選択図】なし
Description
本発明は道路標識柱に関し、詳しくは、疎水防汚処理された道路標識柱に関する。
道路標識柱(道路用標示体)は、視線誘導や車両進入抑止用途として、歩道、中央分離帯、センターライン(車線分離)、分流箇所などの道路上、駐車場、公園や施設内の出入り口などに設置され、日々交通を円滑にすること等のために寄与している。道路用標示体は、一般に屋外に設置するため、自動車の排気ガスや塵埃などにより表面に汚れが付着し、主機能である視認性が低下してしまうことがある。
そのため、道路用標示体に汚れ払拭のための部材や装置を設置し、物理的に払い落とす方法が考えられている(特許文献1〜4)。即ち、特許文献1、2の技術は、標識部部分を外側から覆うように、柱本体の外周に沿って暖簾状に配置されその外周面に接触して不規則に揺動可能な多数の払拭部材を用い、自然風や車両通過時の風圧を利用して払拭部材を不規則に揺動させ、特に反射シートの表面に付着した塵埃や泥を自動的に払拭する。
また、特許文献3に関する技術は、反射標識を備えたポールの頂部付近に、相互に形状を異にする複数種類のリボンを前記ポールの周囲方向に並べて固定的に取り付ける構成とし、吊り下げられた柔軟なリボンが風などで揺れ動いたとき、リボン同志が絡まらないで、汚れを除去する。さらに、特許文献4に記載される方法で製造される道路標識用払拭防塵装置は、簾状に形成された複数の柔軟性のある払拭部材と、該各払拭部材が当該各払拭部材間に間隔部を設けて一体的に形成される基幹部とを有し、略矩形の前記払拭部材の自由端に丸みを設けた構成で、前記特許文献1から3に示すと同様に払拭部材で、汚れを払い落としている。
一方、素材表面を塗膜等で覆うことで汚染物質が付着しにくくする技術も開示されている(特許文献5〜8)。即ち、特許文献5に示す技術は、光触媒含有層を使用し、紫外光照射することにより光触媒が活性化されてその表面が親水化され、降雨等によって表面に付着した汚染物質が洗浄されるようになされた道路標識柱である。また、反射標識体を具備する視線誘導標識柱の表面に、透明塗料による塗膜層を有するものが提案されている。
さらに、特許文献6は、視線誘導標識柱の表面に、反応硬化型樹脂、該反応硬化型樹脂の硬化剤、及びテトラアルコキシシラン化合物等の溶剤を媒体とする透明塗料による塗膜層を開示している。特許文献7は、水酸基含有フッ素樹脂組成物、イソシアネート系硬化剤、フッ素系界面活性剤、紫外線吸収剤、オルガノシリケート化合物、及び光触媒微粒子を含有するコーティング組成物を含有させる被覆層を用いている。また、特許文献8は、ポールに蛍光着色剤を含有させると共に、ポールの表面に紫外線吸収剤を含有する親水性層を設ける構成としている。
前述のように、特許文献1〜4に示すように払拭部材を使用する技術では、払拭が部分的な除去ができない場所がある場合が多く、払拭部材の環境等により寿命に影響がある場合がある。
他方、特許文献5〜8に示す技術では、寿命等において、極めて有効な技術ではある。しかし、道路上で付着する汚染物質は、親水性のものが多くあり、親水化された素材表面に親水性の汚染物質が付着すると親和性によって汚れ面積が広がってしまったり、降雨が少ないときは除染効果を期待できなかった。
そこで、本発明は、親水性の汚染物質に対して有効な防汚性を有する道路標識柱を提供することを課題とする。
また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
上記課題は以下の各発明によって解決される。
1.フッ素系ガスを用いたプラズマ処理によりCF結合の割合を増加させた道路標識柱表面を形成してなる疎水防汚性を付与された道路標識柱。
2.前記CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面のF/Cの比率が0.6〜2.0であることを特徴とする前記1記載の道路標識柱。
3.前記CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面における水の接触角が100°以上であることを特徴とする前記1または2記載の道路標識柱。
4.前記CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面が、200Pa以下の低圧下でのプラズマ処理により形成されたことを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の道路標識柱。
本発明によれば、親水性の汚染物質に対して有効な防汚性を有する道路標識柱を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の道路標識柱は、道路標識柱本体の表面の一部または全部を、フッ素系のガスを用いて、プラズマによる表面改質処理(以下、必要により「プラズマ処理」と略す。)を施し、疎水防汚性を付与したものである。
本発明において、疎水防汚性とは、親水性の汚染物質に対して有効な防汚性を有する特性のことをいい、さらには油性の汚染物質に対しても防汚性を有する特性のことをいう。
プラズマ処理は、例えば図1に示す低圧プラズマ装置を用いて、道路標識柱の表面に対して行われる。プラズマ装置は、表面改質処理を行なえるものであればどのような装置であってもよく、特に限定されない。
図1に示された低圧プラズマ装置は、内部空間の真空状態を維持可能なチャンバ1と、チャンバ1内に平行に配置した電極2、3は、チャンバ外に設けている高周波電源4に接続している。そして、チャンバ1には、プラズマ処理の原料となるフッ素系ガスの原料タンクA1、遮断弁A2、A4、流量計A3よりなる原料ガス供給ラインAと、遮断弁B1を経由し真空ポンプB2に接続し、チャンバ1内の気体を外部に排出する排出ラインBが設けられている。また、生成したプラズマの空間内に位置するように被処理物5を載置可能としている。
なお、図中6は、チャンバ1内の真空状態を破壊する真空破壊弁である。
ここで、チャンバ1は、処理する真空状態である10〜200Paを維持でき、リークがないことが要求される。また高周波電源4は、例えば、40KHzまたは13.56MHzなどの高周波電源、あるいは2.45GHz等のマイクロ波電源を使用することができる。
原料タンクA1に使用されるフッ素系ガスとしては、例えば、4フッ化メタン、6フッ化エタン、8フッ化プロパン、ヘキサフルオロ1,3ブタジエン、パーフルオロシクロブタン、オクタフルオロシクロペンテン、トリフルオロメタン、ジフルオロメタン、フルオロメタン、ペンタフルオロエタン、6フッ化硫黄、4フッ化ケイ素、3フッ化窒素などが挙げられる。この中でも、安全面から、4フッ化メタンガス、パーフルオロシクロブタンなどが好ましく用いられる。
また、チャンバ内で安定したプラズマ状態の維持等に必要な場合は、窒素ガス、アルゴンガスをさらに供給しても良い。
真空ポンプB2は、真空度が5Pa程度まで引くことができることが必要であることより、一般的に広く使用されているロータリーポンプ(油回転真空ポンプ)を用いることができる。
本発明において、プラズマ改質処理を行なうには、先ず前記低圧プラズマ装置のチャンバ1内に被処理物5を載置する。この後、チャンバ1内の空気を真空ポンプB2で、処理する真空度より真空度の高い5〜100Pa、好ましくは5〜50Pa、あるいはこれ以下に減圧することで、内部の残存空気を排除し、この後加えるガス雰囲気を高めることができる。この後、真空ポンプB2を作動させながら、遮断弁A2、A4を開き流量計A3を調節しながら、チャンバ1内へフッ素系ガスを注入し、チャンバ1内の真空度を、処理する真空状態である10〜200Paに維持する。チャンバ1内のガス雰囲気がフッ素系ガスとなった後に、処理物および処理装置の大きさに応じて、高周波電源4を、電極2、3に印加すると、放電が開始される。この放電エネルギーによりチャンバ1内のフッ素系ガスは、真空中でプラズマ化する。この状態で1〜30分電圧を印加し続け処理を行う。この後、高周波電源4の印加を止めた後、真空破壊弁6を開きチャンバ1を大気圧に戻し、チャンバ1内から、被処理物5を取り出し処理が終了する。
プラズマ照射処理は上記した通り200Pa以下で行なわれることが好ましく、200Paを超えた状態で処理が行なわれると、安定的にプラズマが発生しないようになり好ましくない。
また、低圧プラズマ処理であるため、原料ガスが少量ですむ。
なお、電力、圧力、用いられるガスの種類以外の条件、すなわち電源プラズマ励起電界周波数、照射の際の温度条件、照射時間については、被処理物に影響を与えない範囲で調整されればよく、特に限定されない。
本発明においては、フッ素系ガスによってプラズマ処理することにより、被処理物(本発明では道路標識柱)表面に、フッ素基が導入された層が形成されている。つまり、非処理物の表面は共有結合したCF結合の割合が増加しており、フッ素化している。かかる状態はXPS(X線光電子分光法)によって確認される。
XPS(X線光電子分光法)によってナロー測定し、求められた元素比率よりF/Cを求め、値が好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上であれば、防汚性が期待できる程度に樹脂表面がフッ素化していると評価できる。
プラズマ処理によって得られるCF結合の割合F/C値の上限は、特に限定されるわけではないが、本発明において、2.0であることが好適である。
また、フッ素化した被対象物表面はフッ素コートされた状態となり、疎水化される。水との接触角が小さくなっており、撥水性である。
水との接触角はJIS R3257(1999)「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準じ、樹脂表面の水に対する接触角を協和界面科学株式会社製Drop Master500によって確認することができる。
接触角度は100°以上が好ましく、さらに好ましくは120°以上である。接触角度が100°以上であると撥水性に優れ、親水性物質からなる汚染物質を好適に防汚することができ好ましい。
このように表面をフッ素化させることで、疎水性(撥水性)を付与でき、親水性の汚染物に対して防汚性を付与できる。
また、フッ素化させることで、撥油効果も望めるため、油性の汚染物に対しても防汚性が期待できる。
本発明に使用される表面フッ素化加工によると、塗膜を形成しないため、塗膜剥れや塗膜自身の耐候性の心配もなく、耐久性に優れる。
道路標識柱に使用される材料の特性を変えずにごく表面だけを改質し、防汚性を付与することができ、好ましい。
また、プラズマ処理によって表面をフッ素化加工するため、スプレーコーティングに比べて、工程が簡略化できる。
本発明の道路標識柱に用いる樹脂としては、格別限定されるわけではないが、衝撃や曲げにより割れやクラックが発生すると、その部位に汚れが入り込むため、道路用標識柱として用いる上では、柔軟性のあるウレタン樹脂を用いることが好ましい。
本発明の実施例について説明する。かかる実施例によって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
試験片として、20mm×20mm×2mmにカットしたポリウレタン製の道路標識柱を使用した。
試験片として、20mm×20mm×2mmにカットしたポリウレタン製の道路標識柱を使用した。
ポリウレタン試験片を低圧プラズマ処理装置のチャンバ1内の電極2,3間に処理物5を静置し、チャンバ1内を真空度10Paとなるまで排気した。この後、真空度10Paになった時点で4フッ化メタンガスを60sccm(1atm、0℃)導入し、周波数40kHzの高周波電源から、1000Wの電力を上側電極に3分間供給し、4フッ化メタンガスをプラズマ化してポリウレタン樹脂表面の改質処理を行い、改質ポリウレタン試験片を得た。
<評価方法>
実施例1で得られた改質ポリウレタン試験片に対して、下記の項目について評価を行い、結果を表1に示した。
実施例1で得られた改質ポリウレタン試験片に対して、下記の項目について評価を行い、結果を表1に示した。
(1)樹脂表面のフッ素化
樹脂表面をXPS(アルバックファイ株式会社製PHI Quantera SXM)でナロー測定し、求められた元素比率よりF/Cを求めた。
求めたF/C比が0.6以上であれば、本発明の目的を達成する程度に樹脂表面がフッ素化していると評価できる。
樹脂表面をXPS(アルバックファイ株式会社製PHI Quantera SXM)でナロー測定し、求められた元素比率よりF/Cを求めた。
求めたF/C比が0.6以上であれば、本発明の目的を達成する程度に樹脂表面がフッ素化していると評価できる。
(2)親水性
JIS R3257(1999)「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準じ、樹脂表面の水に対する接触角を協和界面科学株式会社製Drop Master500により測定した。
接触角度は100°以上が好ましく、さらに好ましくは120°以上である。接触角度が100°以上であると撥水性に優れ、親水性物質による汚染物質を防汚することができ好ましい。
JIS R3257(1999)「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準じ、樹脂表面の水に対する接触角を協和界面科学株式会社製Drop Master500により測定した。
接触角度は100°以上が好ましく、さらに好ましくは120°以上である。接触角度が100°以上であると撥水性に優れ、親水性物質による汚染物質を防汚することができ好ましい。
(3)防汚性評価
樹脂表面の防汚性試験は土木研究センター試験方法に準じ以下の手順により行った。
ポリウレタン試験片を、恒温恒湿槽で50℃、RH95%の条件で、24時間加湿を行なった。次に恒温恒湿槽で23℃、RH50%の条件で24時間乾燥を行なった後、5wt%のカーボンブラック懸濁液(レジノカラー工業社製ピグダイブラックLN−720N)の溶液を試験片表面に塗布した。その後、試験片を60℃オーブンで1時間乾燥させ、イオン交換水にてシャワー洗浄(圧力:0.3MPa)し、以下の基準により防汚性を評価した。
○:汚れなし
△:一部汚れあり
×:汚れあり
樹脂表面の防汚性試験は土木研究センター試験方法に準じ以下の手順により行った。
ポリウレタン試験片を、恒温恒湿槽で50℃、RH95%の条件で、24時間加湿を行なった。次に恒温恒湿槽で23℃、RH50%の条件で24時間乾燥を行なった後、5wt%のカーボンブラック懸濁液(レジノカラー工業社製ピグダイブラックLN−720N)の溶液を試験片表面に塗布した。その後、試験片を60℃オーブンで1時間乾燥させ、イオン交換水にてシャワー洗浄(圧力:0.3MPa)し、以下の基準により防汚性を評価した。
○:汚れなし
△:一部汚れあり
×:汚れあり
(実施例2)
実施例1において、処理時間を6分に変更してポリウレタン樹脂表面の改質処理を行なった以外は同様にポリウレタン試験片をプラズマ処理し、同様に評価した。その結果を表1に示した。
実施例1において、処理時間を6分に変更してポリウレタン樹脂表面の改質処理を行なった以外は同様にポリウレタン試験片をプラズマ処理し、同様に評価した。その結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1において、プラズマ処理を行わないで評価を行なった。その結果を表1に示した。
実施例1において、プラズマ処理を行わないで評価を行なった。その結果を表1に示した。
(参考例)
実施例1において、電力を300Wに変更してポリウレタン樹脂表面の改質処理を行なった以外は同様にポリウレタン試験片をプラズマ処理し、同様に評価した。その結果を表1に示した。
実施例1において、電力を300Wに変更してポリウレタン樹脂表面の改質処理を行なった以外は同様にポリウレタン試験片をプラズマ処理し、同様に評価した。その結果を表1に示した。
表1からもわかるように水に対する接触角が、実施例1では、122.5°、実施例2では、129.7°となり、比較例1の79.6°に比べ親水性が大幅に改善された。
フッ素系ガスとして、4フッ化メタンガスではなく、パーフルオロシクロブタンを用いて同様に実験を行なったところ、4フッ化メタンガスと同様の効果が得られることを確認した。
また、実施例1および2は、防汚性評価において汚れがないのに比べ、比較例は汚れがあり、本発明によるプラズマ処理を行なった実施例に関しては汚染性評価が改善されたことが確認できた。
さらに、参考例によると、一定の電力に満たない場合は、表面のフッ素化が十分ではなく、防汚性に劣る。十分な防汚性を発揮するためには、水の接触角が100°以上となる疎水性(撥水性)が付与できるF/C値0.6以上であることが望ましい。
1:チャンバ
2、3:電極
4:高周波電源
5:被処理物
6:真空破壊弁
A:原料ガス供給ライン
A1:フッ素系ガスの原料タンク
A2、A4:遮断弁
A3:流量計
B:排出ライン
B1:遮断弁
B2:真空ポンプ
2、3:電極
4:高周波電源
5:被処理物
6:真空破壊弁
A:原料ガス供給ライン
A1:フッ素系ガスの原料タンク
A2、A4:遮断弁
A3:流量計
B:排出ライン
B1:遮断弁
B2:真空ポンプ
Claims (4)
- フッ素系ガスを用いたプラズマ処理によりCF結合の割合を増加させた道路標識柱表面を形成してなる疎水防汚性を付与された道路標識柱。
- 前記CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面のF/Cの比率が0.6〜2.0であることを特徴とする請求項1記載の道路標識柱。
- 前記CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面における水の接触角が100°以上であることを特徴とする請求項1または2記載の道路標識柱。
- 前記CF結合の割合を増加させた道路標識柱表面が、200Pa以下の低圧下でのプラズマ処理により形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の道路標識柱。
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- 2014-01-30 JP JP2014016069A patent/JP2015140645A/ja active Pending
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